JP7328941B2 - グラファイト積層体、グラファイトプレート、およびグラファイト積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
熱伝導性の優れた素材としては金属材料の銀、銅、アルミニウムが良く知られ、放熱用ヒートシンク部材として大量に用いられている。さらに上記材料以外には、グラファイト(黒鉛)が近年注目されている。グラファイトは結晶粒子が並んだ面方向ではダイヤモンドに次いで高い熱伝導性があり、銅の3倍近い熱伝導率を有している。また逆に、結晶面の垂直方向では熱伝導率は結晶面に比べ1/200以下と低くいわゆる異方性熱伝導の特性を有しており、結晶が配向されているグラファイトフィルムを用いてグラファイトの異方性熱伝導性を最大限利用する検討が精力的に進められている。
従来、グラファイトフィルムは、天然黒鉛粒子の層間を硫酸などにより膨張させたのち粉砕し、鱗片状にしたものを、紙と同様な工程で抄くことにより、天然黒鉛のグラファイトフィルムが作られる。
また、ポリイミドフィルムを炭化したのちさらに3000℃近い高熱処理で黒鉛化させた合成黒鉛のグラファイトフィルムも製造販売されており、製造コストは高いものの、密度および結晶配向が天然グラファイトフィルムより格段に優れ、面方向の熱伝導率は黒鉛の理論値に近い1200W/m・K以上の熱伝導率を有している。
グラファイトフィルム間に溶融金属を圧入する方法は、圧入する装置が大がかりで投資が大きい難点があり、製造コスト面で不利となる。さらに緻密度が高い合成グラファイトフィルムに圧入法を用いると溶融銅との濡れが悪いため製造が難しく、天然グラファイトフィルムを用いたときのみ製造可能であった。このため熱伝導率は合成グラファイトフィルム使用時の熱伝導率より大幅に劣った結果となる。
このように、市場の要求を十分に満たす性能・コストのバランスの取れたグラファイト積層体の製法はまだ確立されていなかった。
本発明は、上記要望に対応可能な、簡単な工程で容易に高熱伝導性のグラファイト積層体、グラファイトプレート、およびグラファイト積層体の製造方法を新たに提供するものである。
なお、金属ナノ粒子とは、平均粒径がナノメーター単位の微細な金属粒子のことであり、本発明では平均粒径100nm以下の金属粒子を金属ナノ粒子という。とくに平均粒径が20nm以下の銀ナノ粒子は100℃前後の低温で焼結する現象、いわゆる粒子の曲率が焼結温度に反比例するギブス-トムソン効果を起こすことが知られている。
また銀ナノ粒子を溶剤に分散させた銀ナノペーストは導電回路材料として用いるプリンティッド・エレクトロニクス技術にて応用展開されている。この特徴は低温でナノ銀粒子の焼結反応が進行して銀の導電回路が出来ることが特長である。
本発明に用いられるグラファイトフィルムの面内方向は炭素間の強い結合を持っているが厚み方向は層状となってファンデルワールス力のみの弱い結合である。このため表面エネルギーが極めて弱く、金属との濡れが悪いことが知られている。例えばグラファイトフィルム上に溶けた金属を乗せると拡がらずに球状に丸まってしまう。
本発明者らは上記グラファイトフィルムの接着性改善策を種々検討し、銀ナノ粒子を用いてグラファイト表面の炭素六員環とのアンカー的な効果が起り、表面の親和性が改善されることを期待し、ナノ銀ペーストをグラファイトフィルム上に塗布することを試みた。すると250℃の加熱処理をすることにより、均一の銀ナノ焼結膜がグラファイト表面に出来ることを確認し、銀ナノ粒子により特別な効果が得られることを見出した。さらにこの効果を応用し、銀ナノペーストを塗布したグラファイトフィルムを多段に積層し、約50KPaの荷重を掛けながら250℃で1時間加熱することで銀ナノ粒子が焼結して新規なグラファイト積層体を得ることが出来た。
上記グラファイト積層体は、前記金属ナノ粒子焼結層が銀ナノ粒子を含むペースト材由来である構成とすることができる。
上記グラファイト積層体は、前記金属ナノ粒子焼結層の成分において、少なくとも30重量%以上が銀ナノ粒子由来である構成とすることができる。
上記グラファイト積層体の製造方法において、前記ペースト材を塗布する工程が、前記グラファイトフィルムの片面または両面に前記ペースト材を塗布する工程である構成とすることができる。の回路基板を用いたサーマルプリントヘッド。
グラファイトフィルム層10は、グラファイトフィルムを出発原料とする。出発原料は、例えば、面方向にグラファイト結晶が配向しているフィルム状のグラファイトであるが、グラファイトの配向方向は面内であればその方向は限定されない。グラファイトフィルム層10の出発原料とするフィルムには、天然グラファイトおよび合成グラファイトのいずれも好適に用いることができる。天然のグラファイトフィルムは、黒鉛原石を硫酸などの酸処理で層間を膨らませたのち粉砕して鱗片状粉体とし、その後、液相において抄くことにより、任意の厚さで得ることができる。また、合成グラファイトフィルムは、ポリイミドフィルムを不活性雰囲気にて炭化したのち、3000℃近い高温で黒鉛化処理を施すことにより製造することができる。特に、ポリイミドフィルムを炭化・黒鉛化した合成グラファイトフィルムは、高い熱伝導率を有しており、面内方向の熱伝導率は、理論値に近い性能を示すことができる。
金属ナノ粒子焼結層20は、マイクロフィルム層10に金属ナノ粒子を含むペースト材を塗布し、焼結することで形成された層である。金属ナノ粒子焼結層20に含まれる金属ナノ粒子の種類は、銀、銅、アルミニウムなど熱伝導性の高い金属であれば特に限定されないが、銀ナノ粒子を用いることが好ましい。本実施形態に係る金属ナノ粒子焼結層20は、出発原料とするグラファイトフィルムに銀ナノペースト材料を塗布して形成された塗布膜を出発材料とし、加熱焼結することにより形成される。金属ナノ粒子焼結層20に含有される銀ナノ粒子は、加熱により焼結を起こす平均粒径100nm以下の銀ナノ粒子であれば特に限定されず、銀焼結層の特性を維持するためには加熱後の固形分のうち30%以上は銀ナノ粒子が含まれていることが好ましい。本実施形態では、銀ナノペースト材料をグラファイトフィルム層10の出発原料であるグラファイトフィルムに塗布することで形成される塗布膜が出発材料である。銀ナノペースト材料としては、銀ナノ粒子を100%含有時は、250℃以下、好ましくは200℃以下で焼結して連続膜を生成するものであれば、特に限定されない。銀ナノ粒子は特に20nm以下とすることで低温焼結性が発揮できる。このような銀ナノ粒子を含むペースト材料は、プリンティッド・エレクトロニクス技術の分野にて塗布や印刷で電気回路が形成することが検討されており、市場での入手が可能となっている。特に、平均粒径20nm以下の銀ナノ粒子は100℃前後の低温で銀が焼結するため耐熱性のないプラスチックフィルムに回路が直接描ける利点を有している。
次に、グラファイト積層体1の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係るグラファイト積層体1および後述するグラファイトプレート2を示す図である。まず、図2(a),(b)に示すように、グラファイトフィルム層10の出発原料のグラファイトフィルムの面上に金属ナノ粒子ペースト(本実施形態では銀ナノ粒子ペースト)を塗布する。金属ナノ粒子ペーストの塗布方法は、通常のコーティング方法、例えばスクリーン印刷、ロールコート、バーコート、フレキソ印刷、グラビア印刷などで塗布することができる。
また、上述した実施形態で得られたグラファイト積層体1を、図2(e)に示すように、当該グラファイト積層体1の積層方向に切断し薄片化することで、当該グラファイト積層体1の切断面に垂直な方向に高熱伝導性を有するグラファイトプレート2を製造することができる。グラファイトプレート2の厚さは、特に限定されないが、コストダウンおよび強度保持の観点で可能な限り薄い厚さにすることが好ましく、0.1mmから1.0mmとすることが好ましい。このようなグラファイトプレート2は、たとえば発熱する電子素子に接合させることで、有用な熱放散材料となるものと期待される。
厚さ100μmの天然グラファイトフィルム(東洋炭素株式会社製)を用い、この表面に、銀含有量40%および粘度1800mPa・Sの銀ナノペースト(長瀬ケムテックス社製)を、バーコーターを用いて塗布厚さ約50μmで塗布した。さらに、この上に、銀ナノペーストを同様に塗布したグラファイトフィルムを19層重ね、グラファイトシート/銀ペーストを20層重ねた積層体を作成した。そして、常温にて8時間乾燥した後、0.5MPs・m2相当で加重を掛けながら、5℃/分の昇温速度で100℃まで昇温させながら1時間保持し、その後、5℃/分の昇温速度で250℃まで昇温させながら2時間保持し、焼結反応を行った後、徐々に徐冷した。
(比較例1)
平均粒径約1μmの銀ペースト標準グレード(田中貴金属株式会社製TR-3025)を用い、これ以外は実施例1と全く同じ材料および手段でグラファイトプレート2を作成した。
このように、本実施例1によるグラファイト積層体1は、グラファイトフィルム層10間に銀ナノペーストを塗布して焼結することで、グラファイトフィルム層10と銀ナノ粒子焼結層20との界面が強固に接着し、グラファイトフィルム層10の層内で高い密着強度が得られることがわかった。
また、実施例2では、厚さ40μmの合成グラファイトフィルム(株式会社カネカ製)を用い、実施例1と同様にこのフィルム上に平均粒径50nmの銀ナノペースト(長瀬ケムテックス社製)を塗布し、次にこれを積層し、グラファイトシート/銀ナノペーストを50層重ねた積層体を作成した。そして、作成した積層体を、250℃で2時間、加熱処理を行った。
また、実施例2のグラファイプレートでは、合成グラファイトそのものの高熱伝導性を引き継いで切断面に垂直な方向において、1100W/K・mの高い熱伝導性が確認された。
10…グラファイトフィルム層
20…金属ナノ粒子焼結層
2…グラファイトプレート
Claims (6)
- グラファイトフィルム層と、平均粒径が100nm以下のナノ金属由来の金属ナノ粒子焼結層とが交互に積層され、異方性熱伝導性を有するグラファイト積層体であって、
前記金属ナノ粒子焼結層が前記グラファイトフィルム層の表面の微小な凹凸表面に噛みこんだ状態で焼結している、グラファイト積層体。 - 前記金属ナノ粒子焼結層が銀ナノ粒子を含むペースト材由来である請求項1に記載のグラファイト積層体。
- 前記金属ナノ粒子焼結層の成分において、少なくとも30重量%以上が銀ナノ粒子由来であることを特徴とする請求項1または2に記載のグラファイト積層体。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のグラファイト積層体を、前記グラファイトフィルム層の積層方向に切断し薄片化したグラファイトプレートであって、切断面方向よりも、前記切断面に垂直な方向において高い熱伝導性を有することを特徴とする、グラファイトプレート。
- グラファイトフィルム面上に金属ナノ粒子を含むペースト材を塗布する工程、
ペースト材が面上に塗布されたグラファイトフィルムを乾燥して金属ナノ粒子を含むペースト材を塗布したグラファイトフィルムとする工程、
前記ペースト材を塗布したグラファイトフィルムを多層に積層し、加圧下、250℃以下の条件において加熱処理することで、前記ペースト材が前記グラファイトフィルムの表面の微小な凹凸表面に噛みこんだ状態で焼結し、グラファイトフィルム層と金属ナノ粒子焼結層とが交互に積層されたグラファイト積層体を得る工程、を具備することを特徴とするグラファイト積層体の製造方法。 - 前記ペースト材を塗布する工程が、グラファイトフィルムの片面または両面に前記ペースト材を塗布する工程である、請求項5記載のグラファイト積層体の製造方法。
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