JP4711165B2 - 高熱伝導・低熱膨脹複合体およびその製造方法 - Google Patents
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また、最近では、炭素粒子又は炭素繊維と金属との複合材を放熱基板として使用する試みが数多く提案されている。例えば、特許文献1(特開平10-168502号公報)には、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、フラーレン又はカーボンナノチューブから選ばれた1種類以上からなる結晶性カーボン材1〜200重量部と、Fe、Cu、Al、Ag、Be、Mg、W、Ni、Mo、Si、Zn及びこれらの合金からなる群から選ばれた金属の粉末100重量部とを混合し、ホットプレス成形することにより得られた高熱伝導率複合材を開示している。この複合材によれば金属マトリックスに結晶性カーボン材が分散した構造を有した高熱伝導率の複合体が得られている。
また、特許文献2(特開2000-203973号公報)には、炭素質マトリックス中にアルミニウム、マグネシウム、錫、亜鉛、銅、銀、鉄、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属が含浸されてなる炭素基金属複合材であって、炭素質マトリックスの気孔の90体積%以上に前記金属が含浸し、前記金属の含有量が前記炭素基金属複合材全体の35体積%以下である炭素基金属複合材を開示している。
また、特許文献3(特開2001-58255号公報)には、黒鉛結晶を含む炭素粒子又は炭素繊維を含む炭素成形体にアルミニウム、銅、銀又はこれらの合金を溶湯鍛造法で加圧含浸させることにより製造された炭素基金属複合材であって、室温における厚さ方向の熱伝導率が150 W/mK以上であり、熱膨張率が4×10-6/K〜12×10-6/Kである炭素基金属複合材を開示している。これらの炭素基金属複合材は、高剛性で高熱伝導率及び低熱膨張率を有する黒鉛マトリックスを骨格とし、その気孔に金属が含浸した構造を有するので、黒鉛の低熱膨張率と金属の高熱伝導率を兼備する。
また、特許文献1のようにカーボン材と金属の複合体の場合は、単純に混合しただけでは、カーボン材がいかなる金属とも濡れないために、緻密な複合体が得られず、期待通りの特性が得られていなかった。一方、特許文献2、3の溶浸法による場合は、緻密化の問題は改善することができるが、溶浸に絶え得る強固なプリフォームの作製を必要としていた。
すなわち、本発明の高熱伝導・低熱膨脹複合体は、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、フラーレン又はカーボンナノチューブから選ばれた少なくとも1種からなるテープ状、シート状、フィルム状、マット状の結晶性カーボン材層と、Cu、Ag、Alから選ばれた金属又はこれらの金属を含む合金の粉末あるいは箔の少なくとも1種からなるテープ状、シート状、フィルム状、マット状の金属層とを層状に交互に積層してなる複合体であって、前記結晶性カーボン材層は、あらかじめ、めっき法にてAg層、Cu層、Zn層で被覆し、またはCVD法、PVD法にてCu、Ag、Mg、W、Mo、Si、Znを1種以上含む金属層が被覆してあり、前記複合体の積層方向の熱伝導率が120W/(m・K)以下であり、前記積層方向の熱伝導率がそれと直交する方向の熱伝導率に対して0.7以下の比率であることが望ましい。また、前記複合体の積層方向の熱膨張係数が8〜30×10−6/Kで、それと直交する方向の熱膨張係数が8×10−6/K以下であることが望ましい。さらに、前記金属層と結晶性カーボン材層との割合が、体積割合で1:1〜1.2:8.8であることは望ましい態様である。
また、本発明は、上記した複合体をパルス通電加圧焼結することにより製造する高熱伝導・低熱膨脹複合体の製造方法である。
また、本発明は、上記した複合体をHIP焼結することにより製造する高熱伝導・低熱膨脹複合体の製造方法である。
先ず、本発明で用いる金属としては、Cu、Al、Ag、Mg、W、Mo、Si、Zn等の金属単体又はこれらの金属を1種類以上含む合金の粉末や箔を使用することができる。金属粉末の場合は、あらかじめシート状に成形するかあるいは焼結して使用することができる。熱伝導率の高い金属、例えば、Cu、Ag、Al等を使用することにより、より熱伝導率の高い複合体を得ることができる。
(実施例1)
銅箔上に平均粒径50μmの人造黒鉛粒子を銅:黒鉛の体積比率が、15:85となるようにシート成形、乾燥した黒鉛粒子層と銅箔からなるシートを厚さ5〜10mmとなるように黒鉛型に積層して積めた後、パルス通電加圧焼結法にて溶融焼結した。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
50mm以上の繊維長を有するピッチ系炭素繊維の束を並べた層とAl泊とを厚さ5〜10mmとなるように交互に積層し、パルス通電加圧焼結炉にて溶融焼結した。Alと黒鉛の体積比率は、20:80とした。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
アーク放電法で作製されたテープ状のカーボンナノチューブと銅箔を厚さ5〜10mmとなるように交互に積層し、パルス通電加圧焼結炉にて溶融焼結した。銅と黒鉛の体積比率は、40:60とした。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
ピッチ系炭素繊維の束を並べた層とAl−12Si%粉末を成形し、シート状にした層を厚さ5〜10mmとなるように交互に積層し、ホットプレス焼結した。加圧力は60MPa、、焼結条件は、真空中、550℃×1hrにて行った。Al-12Si%合金と黒鉛の体積比率は、50:50とした。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
アーク放電法にて作製されたテープ状のカーボンナノチューブとAl箔を厚さ5〜10mmとなるように交互に積層し、鉄容器に積め、気密封止をおこなった試料にてHIP焼結した。焼結条件は1000MPa、500℃×1hrにて行った。Alと黒鉛の体積比率は、40:50とした。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
銅と平均粒径50μmの人造黒鉛粉末の体積比率が15:85の混合粉を作製し、パルス通電加圧焼結法にて溶融焼結した。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
繊維長の平均が200μmのピッチ系炭素繊維とAl粉末の体積比率が20:80の混合粉を作製し、パルス通電加圧焼結法にて溶融焼結した。得られた試料を室温でレーザーフラッシュ法による熱伝導率を、熱機械分析装置にて熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
Claims (3)
- 黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、フラーレン又はカーボンナノチューブから選ばれた少なくとも1種からなるテープ状、シート状、フィルム状、マット状の結晶性カーボン材層と、Cu、Ag、Alから選ばれた金属又はこれらの金属を含む合金の粉末あるいは箔の少なくとも1種からなるテープ状、シート状、フィルム状、マット状の金属層とを層状に交互に積層してなる複合体であって、前記結晶性カーボン材層は、あらかじめ、めっき法にてAg層、Cu層、Zn層で被覆し、またはCVD法、PVD法にてCu、Ag、Mg、W、Mo、Si、Znを1種以上含む金属層が被覆してあり、前記複合体の積層方向の熱伝導率が120W/m・K以下であり、前記積層方向の熱伝導率がそれと直交する方向の熱伝導率に対して0.7以下の比率であり、かつ前記複合体の積層方向の熱膨張係数が15〜30×10−6 /Kであり、それと直交する方向の熱膨張係数が8×10−6 /K以下であり、前記複合体を構成する金属層と結晶性カーボン材層との割合が、体積割合で1:1〜1.2:8.8であることを特徴とする高熱伝導・低熱膨脹複合体。
- 前記あらかじめ、めっき法にてAg層、Cu層、Zn層で被覆し、またはCVD法、PVD法にてCu、Ag、Mg、W、Mo、Si、Znを1種以上含む金属層が被覆してあるテープ状、シート状、フィルム状、マット状の結晶性カーボン材層と前記テープ状、シート状、フィルム状、マット状の金属層を微細に積層させた複合体は、半導体素子と同等の熱膨張率を有するとともに、一方向の熱伝導率を大きくしたものであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導・低熱膨脹複合体。
- 前記積層体の複合化は、不活性ガス雰囲気中、あるいは真空中でホットプレス焼結、パルス通電加圧焼結、あるいはHIP焼結により実施するとともに、複合化時の圧力は2000MPa以下であり、冷却後、使用した金属の溶融温度より10℃以上低い温度で、かつ200℃以上の温度において昇温速度30℃/分以下、冷却速度20℃/分以下の条件で熱処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の高熱伝導・低熱膨脹複合体。
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