次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1〜3は、本発明の第1実施形態に係るアルミニウムと炭素粒子との複合体1及びその製造方法を説明するための図である。図4は、本第1実施形態の複合体1で形成された層を備えた絶縁基板20の一例を説明するための図である。
まず、図4に示した絶縁基板20について以下に説明する。
絶縁基板20は、電子モジュール用基板(例:パワーモジュール用基板)等として用いられるものであり、複数の絶縁基板構成層21、22、23、24が上下方向に積層された状態で接合一体化されて形成されたものである。複数の構成層は、配線層21、絶縁層22、緩衝層23及び冷却層24を含んでいる。そして、上から下へ順に、配線層21、絶縁層22、緩衝層23及び冷却層24が水平に且つ積層状に配置されるとともに、これらが所定の接合手段により接合一体化されている。
接合手段は限定されるものではなく、例えばろう付けや拡散接合が用いられる。
発熱素子25は、半導体素子等の電子素子(例:IGBT素子)を含むものであり、絶縁基板20の搭載面20aにワイヤーボンディング等のはんだ付けにより接合されて搭載されるものである。
配線層21は、回路層とも呼ばれているものであり、その平坦な上面が絶縁基板20の搭載面20aを構成している。すなわち、搭載面20aは配線層21の上面から形成されている。配線層21の形状は例えば平面視で略方形状であり、配線層21の一辺長さは例えば10〜100mmである。配線層21の厚さは例えば0.1〜2mmである。
絶縁層22は、電気絶縁性を有しており、具体的には、AlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化ケイ素)、Al2O3(アルミナ)等のセラミック製である。絶縁層22の形状は例えば平面視で略方形状であり、絶縁層22の一辺長さは配線層21の一辺長さよりも若干大きく設定されており、具体的には例えば10.5〜100.5mmである。絶縁層22の厚さは例えば0.2〜1.5mmである。
緩衝層23は、絶縁基板20に発生する熱応力等の応力を緩和するための層である。緩衝層23の形状は平面視で略方形状であり、緩衝層の一辺長さは例えば10〜100mmである。緩衝層23の厚さは例えば0.2〜3mmである。
冷却層24は、発熱素子25の動作に伴い発熱した発熱素子25を冷却するものである。本実施形態では、冷却層24として冷却部材が用いられており、具体的には、発熱素子25の熱を放散することで発熱素子25を冷却する放熱部材(例:ヒートシンク)が用いられている。放熱部材はアルミニウム等の金属製であり、複数の放熱フィン24aを有している。
なお本発明では、冷却層24は放熱部材であることに限定されるものではなく、その他に例えば、冷却流体(例:冷却液)が流通する流通路を有する冷却器であっても良い。
上記の絶縁基板20では、発熱素子25で発生した熱は、発熱素子25から配線層21、絶縁層22、緩衝層23及び冷却層24に順次伝導する。その結果、発熱素子25が冷却されてその温度が低下する。
本1実施形態では、上記の絶縁基板20の複数の構成層のうち例えば配線層21が本第1実施形態の複合体1で形成されている。
次に、本第1実施形態の複合体1について以下に説明する。
図1に示すように、複合体1は、アルミニウムと炭素粒子が所定の焼結法により焼結複合化されてなる複合体本体2を備えている。複合体1及び複合体本体2の形状は、略平板状であり、平面視で略方形状である。
図1において、「6a」は炭素粒子を示しており、「5a」は複合体本体2内のアルミニウム領域(ドットハッチングで示す)を示している。
焼結法は限定されるものではないが、放電プラズマ焼結法、ホットプレス法等の加熱加圧焼結法を用いることが望ましい。本第1実施形態では、焼結法として加熱加圧焼結法が用いられている。
複合体本体2は、アルミニウム層5と炭素粒子層6が交互に複数積層された状態で焼結複合化されたものである。なお、炭素粒子層6は炭素粒子6aで形成された層である。
複合体本体2の厚さ方向の両面のうち少なくとも一方には、アルミニウム表面層3が形成されている。本第1実施形態では、アルミニウム表面層3は複合体本体2の厚さ方向の両面にそれぞれその全体を覆う状態にして焼結固着されている。
ここで、本発明に係る複合体1(複合体本体2)の上下方向は限定されるものではないが、本第1実施形態では、複合体1(複合体本体2)の構成を理解し易くするため、複合体1(複合体本体2)の厚さ方向を複合体1(複合体本体2)の上下方向と定義する。したがって、アルミニウム表面層3は複合体本体2の上面2a及び下面2aにそれぞれその全体を覆う状態にして形成されている。すなわち、複合体本体2の上面2aの全体及び下面2aの全体はそれぞれアルミニウム表面層3で覆われている。
各アルミニウム表面層3の厚さは限定されるものではないが、アルミニウム層5よりも大きく設定されることが望ましく、特に10〜300μmであることが望ましい。その理由は、複合体1の上面及び下面の機械的強度を確実に高めることができるし、複合体本体2中に含まれる炭素粒子6aが複合体1の上面及び下面から脱落するのを確実に抑制できるからである。
さらに、複合体本体2の外周側面2bにはアルミニウム表面層3の塑性流動層4(クロスハッチングで示す)が複合体本体2の外周側面2bの全体を覆う状態にして焼結固着されている。すなわち、複合体本体2の外周側面2bの全体はアルミニウム表面層3の塑性流動層4で覆われている。
塑性流動層4は、アルミニウムと炭素粒子6aとの焼結時に加圧及び加熱された各アルミニウム表面層3の一部が複合体本体2の外周側面2bに塑性流動(塑性変形を含む。以下同じ)して外周側面2bに層状に焼結固着することで形成されたものである。
塑性流動層4の厚さは限定されるものではないが、10〜100μmであることが特に望ましい。その理由は、複合体1の外周側面の機械的強度を確実に高めることができるし、複合体本体2中に含まれる炭素粒子6aが複合体1の外周側面から脱落するのを確実に抑制できるからである。
さらに、各アルミニウム表面層3は、互いに積層状に配置された複数のアルミニウム板8(図2A参照)がアルミニウムと炭素粒子6aとの焼結時に同時に互いに一体に焼結されて形成されたものである。
次に、本第1実施形態の複合体1をその望ましい製造方法に基づいて図2A及び2Bを参考にして以下に説明する。
複合体1の製造方法は、アルミニウムと炭素粒子6aを含むプリフォーム9を加熱加圧焼結法によって焼結することにより、アルミニウムと炭素粒子6aを複合化する焼結工程を備えるとともに、更に、焼結工程の際に又は前にプリフォーム9を形成するプリフォーム形成工程を備えている。
プリフォーム9を形成する方法としては、図2A及び2Bに示すように、アルミニウム層5と炭素粒子層6が交互に複数積層された状態のプリフォーム(これを説明の便宜上「積層プリフォーム9A」という)を形成する方法、アルミニウム粉末と炭素粒子(炭素粉末)が混合された状態のプリフォーム(これを説明の便宜上「粉末混合プリフォーム」という)を形成する方法などが用いられる。
以下では、前者の方法を「積層プリフォーム形成方法」、後者の方法を「粉末混合プリフォーム形成方法」という。
積層プリフォーム形成方法は、アルミニウム表面層3を容易に形成できる点で優れている。
粉末混合プリフォーム形成方法では、アルミニウム粉末及び/又は炭素粒子は表面処理が施されたものであっても良い。表面処理として、複合化を良好にするためNiめっき処理もしくはCuめっき処理を採用することが望ましい。アルミニウム粉末の平均粒子径は限定されるものではないが、5〜100μmであることが特に望ましい。
複合体1の製造に用いられる炭素粒子6aの種類は限定されるものではないが、なるべく高い熱伝導率を有するもの、即ち高熱伝導性のものであることが望ましい。特に、炭素粒子6aは、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種であることが望ましく、更に、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン及び天然黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種であることがより望ましい。その理由は、複合体1の熱伝導率を確実に向上させることができるし、アルミニウムと炭素粒子6aとの複合化を確実に行えるからである。
炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが用いられる。
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標))等が用いられる。
天然黒鉛粒子としては、鱗片状黒鉛粒子等が用いられる。
人造黒鉛粒子としては、等方性黒鉛粒子、異方性黒鉛粒子、熱分解黒鉛粒子等が用いられる。
炭素粒子6aの大きさは限定されるものではない。しかるに、炭素粒子6aが炭素繊維である場合、平均繊維長が10μm以上2mm以下の短炭素繊維が特に好適に用いられる。炭素粒子6aがカーボンナノチューブである場合、平均長さが1μm以上10μm以下のカーボンナノチューブが特に好適に用いられる。炭素粒子6aが天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子である場合、平均粒子径が10μm以上3mm以下の天然黒鉛粒子及び人造黒鉛粒子が特に好適に用いられる。
複合体1の製造に用いられるアルミニウムの種類は限定されるものではなく、高純度アルミニウム(例:その純度3N、4N、5N)、JIS(日本工業規格)のアルミニウム合金記号A1000系(純アルミニウム系)、A3000系、A6000系等のアルミニウムが用いられる。
ここで、アルミニウム表面層3のアルミニウムの純度は複合体本体2のアルミニウムの純度よりも高いことが特に望ましい。その理由は、焼結時にアルミニウム表面層3の一部が塑性流動し易くなり、これにより塑性流動層4を確実に形成できるからである。
本第1実施形態の複合体1では、プリフォーム9として積層プリフォーム9Aが用いられるとともに、プリフォーム形成方法として積層プリフォーム形成方法が用いられ、更に、炭素粒子6aとして炭素繊維(詳述すると短炭素繊維)が用いられている。
この場合において、望ましい積層プリフォーム形成工程は以下のとおりである。
すなわち、図2Aに示すように、アルミニウム板からなるアルミニウム層5の片面又は両面上に炭素粒子層(詳述すると炭素繊維層)6を塗工し、これにより塗工アルミニウム層7を得る。次いで、塗工アルミニウム層7を複数積層し、これにより図2Bに示すように積層プリフォーム本体(プリフォーム本体)としての積層体10を形成する。塗工アルミニウム層7の積層枚数は限定されるものではないが、5〜500枚であることが特に望ましい。
さらに、積層体10の厚さ方向の両面、即ち積層体10の上面及び下面のうち少なくとも一方に、アルミニウム表面層3を形成する複数のアルミニウム板8を積層状に配置し、これにより積層プリフォーム9Aを形成する。
本第1実施形態では、図2Aに示すように、各塗工アルミニウム層7において、炭素粒子層6は、アルミニウム層5の片面(詳述すると上面)上に、炭素粒子層6中の炭素粒子(炭素繊維)6aの長さ方向が一方向に揃う状態になるように塗工されている。そして、図2Bに示すように、互いに重なり合う二つの塗工アルミニウム層7、7において一方の塗工アルミニウム層7の炭素粒子層6中の炭素粒子(炭素繊維)6aの長さ方向と他方の塗工アルミニウム層7の炭素粒子層6中の炭素粒子(炭素繊維)6aの長さ方向とが平面視で約90°の角度をなす態様にして、複数の塗工アルミニウム層7が上下方向に積層されている。
さらに、本第1実施形態では、図2Bに示すように、アルミニウム表面層3を形成する複数のアルミニウム板8は、積層体10の上面及び下面にそれぞれ積層状に配置される。これにより、積層プリフォーム9Aはその上面及び下面にそれぞれアルミニウム表面層3が設けられる。
アルミニウム層5の厚さは限定されるものではないが、5〜200μmであることが特に望ましい。
炭素粒子層6の厚さは限定されるものではないが、1〜100μmであることが特に望ましい。
また、炭素粒子層6中に含まれる炭素粒子(詳述すると炭素繊維)6aの塗工量は限定されるものではないが、1g/m2以上30g/m2以下であることが特に望ましい。塗工量が1g/m2以上であることにより、複合体1の熱伝導率を確実に向上させることができる。塗工量が30g/m2以下であることにより、複合体1内の層間剥離を確実に抑制することができる。
さらに、炭素粒子層6は、複合体1に対する炭素粒子6aの体積含有率が2体積%以上70体積%以下になるように塗工されることが望ましい。炭素粒子6aの体積含有率が2体積%以上であることにより、複合体1の熱伝導率を確実に向上させることができる。炭素粒子6aの体積含有率が70体積%以下であることにより、積層状に配置された複数の塗工アルミニウム層7を確実に一体に焼結することができる。炭素粒子6aの体積含有率の特に望ましい下限値は3体積%であり、その特に望ましい上限値は50体積%である。
炭素粒子層6の塗工方法は限定されるものではないが、特に、炭素粒子(炭素繊維)6aとバインダーとバインダー用溶剤とが混合されてなる塗工液をロールコータ等の塗工装置(図示せず)によりアルミニウム層5上に連続的に塗工する方法であることが望ましい。この塗工方法の場合、アルミニウム層5上に塗工された炭素粒子層6を塗工後に乾燥及び加熱処理し、これにより炭素粒子層6中に含まれる溶剤及びバインダーを除去することが望ましい。
各アルミニウム表面層3を形成する複数のアルミニウム板8において、アルミニウム板8として、上述したアルミニウム層5を形成するアルミニウム板と同じものを用いても良い。この場合、複合体1の製造に必要なアルミニウム板の種類(大きさ及び材質)を減らすことができ、これにより複合体1の製造を容易に行うことができる。
さらに、アルミニウム板8の枚数は限定されるものではない。しかるに、アルミニウム板8が上述したアルミニウム層5を形成するアルミニウム板と同じものである場合には、アルミニウム板8の枚数は3〜5枚であることが特に望ましく、即ちアルミニウム板8の合計厚さが15〜500μmになるようにアルミニウム板8の枚数を設定することが特に望ましい。
望ましい焼結工程は以下のとおりである。
焼結工程では、各アルミニウム表面層3を形成する複数のアルミニウム板8が一体に焼結されて各アルミニウム表面層3が形成されるように且つ各アルミニウム表面層3の一部が積層プリフォーム9Aの外周側面に塑性流動するように密閉金型内で積層プリフォーム9Aをその厚さ方向に加圧及び加熱しながら、焼結する。これにより、図1に示した本第1実施形態の複合体1が製造される。
すなわち、密閉金型内で積層プリフォーム9Aをその厚さ方向に加圧及び加熱することにより、積層プリフォーム9Aの積層体10が焼結されて複合体本体2が形成され、これと同時に、複数のアルミニウム板8が一体に焼結されてアルミニウム表面層3が形成されるとともにアルミニウム表面層3が複合体本体2の上面2a及び下面2aに焼結固着され、更に、各アルミニウム表面層3の一部が密閉金型の内壁面に沿って積層プリフォーム9Aの積層体10(即ち複合体本体2)の外周側面へ塑性流動して外周側面にその全体を覆う状態にして塑性流動層4として焼結固着される。
さらには、焼結時に積層プリフォーム9Aが加圧及び加熱されることにより、アルミニウム層5の一部が積層プリフォーム9A内に存在する微細な空隙(例:炭素粒子層6中の炭素粒子6a間の隙間)に塑性流動して当該空隙(隙間)に充填される。これにより、当該空隙(隙間)が略消滅するとともに複合体本体2内にアルミニウム領域5aが形成される。
加熱加圧焼結法としては限定されるものではないが、焼結金型として上述したように密閉金型を用いた加熱加圧焼結法であることが望ましい。
そのような加熱加圧焼結法として放電プラズマ焼結法を用いる場合の焼結法について以下に説明する。
図3に示すように、加熱加圧装置として放電プラズマ焼結装置11を準備する。
放電プラズマ焼結装置11は、導電性を有する筒状金型(例:黒鉛製筒状金型)12、導電性を有する一対のパンチ(例:黒鉛製上パンチ及び黒鉛製下パンチ)13、13等を密閉金型として備えている。
両パンチ13、13は互いに対向状に配置されている。詳述すると、一方のパンチ13は上側に他方のパンチ13は下側にそれぞれ配置されている。各パンチ13の加圧面13aは、各パンチ13の積層プリフォーム9Aへの加圧方向14に対して垂直面に形成されている。
そして、筒状金型12内に積層プリフォーム(図示せず)を配置し、不活性ガス(例:窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気等の非酸化性雰囲気又は真空(真空度:例えば0.01〜100Pa)中にて上パンチ13と下パンチ13とで積層プリフォームをその厚さ方向に加圧しつつ両パンチ13、13間にパルス電流を通電することにより、積層プリフォームを加熱焼結する。
放電プラズマ焼結法における望ましい焼結条件は以下のとおりである。
焼結温度は450〜640℃、焼結時間(即ち焼結温度の保持時間)は10〜300min、積層プリフォーム9Aへの加圧力は5〜40MPaである。
上述したように、本第1実施形態では、図4に示した絶縁基板20における配線層21が本第1実施形態の複合体1で形成されている。なおこの場合、配線層21の上面からなる絶縁基板20の搭載面20aには、搭載面20aにおける発熱素子25とのはんだ付け性を高めるためニッケル−リンめっき膜等のニッケルめっき膜(図示せず)が形成されることが望ましい。
さらに本第1実施形態では、配線層21と絶縁層22はろう付けにより接合されている。この場合、ろう付けに用いるろう材としてブレージングシート(図示せず)やろう材板(図示せず)が好適に用いられる。
さらに、複合体1の下面にろう材板(図示せず)を固着しておき、このろう材板を配線層21と絶縁層22とのろう付けに用いるろう材として用いても良い。この場合、ろう材板は、上述の焼結工程における積層プリフォーム9Aの焼結時に同時に複合体1の下面に焼結固着されたものであることが特に望ましい。
さらに、ろう材はアルミニウム系ろう材であることが望ましく、特にAl−Si系ろう材であることが、ろう付け性を確実に向上させ得る点で望ましい。
さらに、ろう材は、Mg、Bi及びSrからなる群より選択される少なくとも一つの元素が添加されたAl−Si系ろう材であることが特に望ましい。その理由は次のとおりである。
すなわち、Al−Si系ろう材にMgが添加されることにより、ろう付けを例えば真空ろう付けで行う場合でも、配線層21と絶縁層22を確実に強固に接合することができる。さらに、Al−Si系ろう材にBiやSrが添加されることにより、ろう材の流動性が向上し、これにより配線層21と絶縁層22を確実に強固に接合することができる。
好ましいMg添加量は0.1質量%〜3質量%である。好ましいBi添加量は0.01質量%〜2質量%である。好ましいSr添加量は0.0001質量%〜0.3質量%である。
ここで本発明では、絶縁基板20を構成する複数の構成層のうち配線層21が本第1実施形態の複合体1で形成されることに限定されるものではなく、その他に例えば、緩衝層23が本第1実施形態の複合体1で形成されていても良いし、配線層21と緩衝層23がそれぞれ本第1実施形態の複合体1で形成されていても良い。
上記第1実施形態の複合体には次の利点がある。
複合体1の複合体本体2が、アルミニウムと炭素粒子6aが焼結複合化されたものなので、複合体1は高い熱伝導率を有する。
さらに、複合体本体2の上面2a及び下面2aにそれぞれアルミニウム表面層3が固着しているので、複合体1の上面及び下面の機械的強度を高めることができるし、複合体本体2中に含まれる炭素粒子6aが複合体1の上面及び下面から脱落するのを抑制することができる。
さらに、複合体本体2の外周側面2bにアルミニウム表面層3の塑性流動層4が焼結固着しているので、複合体1の外周側面の機械的強度が向上するし、外周側面からの炭素粒子6aの脱落を抑制することができる。
さらに、塑性流動層4は、複合体本体2におけるアルミニウムと炭素粒子6aとの焼結時(即ち積層プリフォーム9Aの焼結時)にアルミニウム表面層3の一部が複合体本体2(積層プリフォーム9A)の外周側面2bに塑性流動して焼結固着することで形成されたものなので、塑性流動層4の形成を容易に行うことができる。
さらに、複合体本体2が、アルミニウム層5と炭素粒子層6が交互に複数積層された状態で焼結複合化されたものなので、複合体1を製造する際においてアルミニウム表面層3を積層プリフォーム9Aの上面及び下面にそれぞれ容易に配置することができる。そのため、複合体1を容易に製造することができる。
さらに、アルミニウム表面層3は、互いに積層状に配置された複数のアルミニウム板8が複合体本体2におけるアルミニウムと炭素粒子6aとの焼結時(即ち積層プリフォーム9Aの焼結時)に同時に一体に焼結されて形成されたものなので、複合体本体2の外周側面2bに塑性流動するアルミニウム表面層3の塑性流動量を容易に増加させることができるし、アルミニウム表面層3を容易に形成することができる。これにより、複合体1の外周側面の機械的強度を確実に且つ容易に向上させることができるし、外周側面からの炭素粒子6aの脱落を確実に抑制することができる。
また、上記の絶縁基板20によれば、複合体1で形成された構成層(配線層21等)の外周側面からの炭素粒子6aの脱落が抑制されるので、脱落した炭素粒子による絶縁基板20の電気短絡も抑制することができる。
図5は、本発明の第2実施形態に係るアルミニウムと炭素粒子との複合体101の概略断面図である。同図では、上記第1実施形態の複合体1の要素と同等の要素にはその符号に100を加算した符号が付されている。なお、炭素粒子106aとして炭素繊維(詳述すると短炭素繊維)が用いられている。
本第2実施形態の複合体101は、その複合体本体102の下面102aにその全体を覆う状態にしてアルミニウム表面層103が焼結固着されるとともに、アルミニウム表面層103の塑性流動層104が複合体本体102の外周側面102bにその全体を覆う状態にして焼結固着されたものである。一方、複合体101(複合体本体102)の上面102aにはアルミニウム表面層103は形成されていない。
複合体101の製造方法における積層プリフォーム形成工程では、塗工アルミニウム層107を複数積層して形成された積層体の上面ではなく下面だけにアルミニウム表面層103を形成する複数のアルミニウム板を積層状に配置する。
そして、焼結工程では、アルミニウム表面層103の一部が積層プリフォームの外周側面に塑性流動するように積層プリフォームをその厚さ方向に加圧及び加熱しながら焼結する。これにより、本第2実施形態の複合体101が製造されている。
図6は、本発明の第3実施形態に係るアルミニウムと炭素粒子との複合体201の概略断面図である。同図では、上記第1実施形態の複合体1の要素と同等の要素にはその符号に200を加算した符号が付されている。なお、炭素粒子206aとして炭素繊維(詳述すると短炭素繊維)が用いられている。
本第3実施形態の複合体201は、その複合体本体202の上面202aにその全体を覆う状態にしてアルミニウム表面層203が焼結固着されるとともに、アルミニウム表面層203の塑性流動層204が複合体本体202の外周側面202bにその全体を覆う状態にして焼結固着されたものである。一方、複合体201(複合体本体202)の上面202aにはアルミニウム表面層203ではなくアルミニウム層205が形成されている。
複合体201の製造方法における積層プリフォーム形成工程では、塗工アルミニウム層207を複数積層して形成された積層体の下面ではなく上面だけにアルミニウム表面層203を形成する複数のアルミニウム板を積層状に配置する。
そして、焼結工程では、アルミニウム表面層203の一部が積層プリフォームの外周側面に塑性流動するように積層プリフォームをその厚さ方向に加圧及び加熱しながら焼結する。これにより、本第3実施形態の複合体201が製造されている。
図7は、本発明の第4実施形態に係るアルミニウムと炭素粒子との複合体301の概略断面図である。同図では、上記第1実施形態の複合体1の要素と同等の要素にはその符号に300を加算した符号が付されている。なお、炭素粒子306aとして炭素繊維(詳述すると短炭素繊維)が用いられている。
本第4実施形態の複合体301は、プリフォーム形成工程としての粉末混合プリフォーム形成工程を行い、次いで、焼結工程を行って製造されたものである。
すなわち、粉末混合プリフォーム形成工程では、アルミニウム粉末と炭素粒子(炭素粉末)306を混合してなる粉末混合プリフォーム本体(プリフォーム本体)としての略板状の粉末混合物(例えば略板状の圧粉体)の上面及び下面にそれぞれアルミニウム表面層303を形成する複数のアルミニウム板を積層状に配置し、これにより粉末混合プリフォームを形成する。
なお、粉末混合プリフォームは焼結金型内で形成しても良いし、焼結金型の外に設置された所定のプリフォーム形成場所で形成しても良い。
次いで、焼結工程では、各複数のアルミニウム板が一体に焼結されて各アルミニウム表面層303が形成されるように且つ各アルミニウム表面層303の一部が粉末混合プリフォームの外周側面に塑性流動するように粉末混合プリフォームをその厚さ方向に加圧及び加熱しながら焼結する。これにより、本第4実施形態の複合体301が製造されている。この複合体301の複合体本体302は、粉末混合プリフォームの粉末混合物が焼結されることで形成されている。
複合体301では、各アルミニウム表面層303は、複合体本体302の上面302a及び下面302aにそれぞれその全体を覆う状態にして焼結固着されている。さらに、複合体本体302の外周側面302bには各アルミニウム表面層303の塑性流動層304が複合体本体302の外周側面302bの全体を覆う状態にして焼結固着されている。
図8は、本発明の第5実施形態に係るアルミニウムと炭素粒子との複合体401の概略断面図である。同図では、上記第1実施形態の複合体1の要素と同等の要素にはその符号に400を加算した符号が付されている。なお、炭素粒子406aとして鱗片状黒鉛粒子(鱗片状黒鉛粉末)が用いられている。
本第5実施形態の複合体401及びその製造方法は、炭素粒子406aが鱗片状黒鉛粒子であることを除いて、上記第4実施形態の複合体301及びその製造方法と同じである。
以上で本発明の幾つかの実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
上記実施形態では、プリフォームを焼結する焼結法として放電プラズマ焼結法が用いられている。しかるに、本発明は焼結法としてその他に例えば真空焼結法を用いることを排除するものではない。
また上記実施形態では、アルミニウム表面層3を形成するアルミニウム板8の枚数は複数である。しかるに、本発明はアルミニウム板8の枚数が1枚であることを排除するものではない。この場合、アルミニウム板8はアルミニウム層5を形成するアルミニウム板よりも厚いものであることが、アルミニウム表面層3の塑性流動層4を確実に形成できる点等で特に望ましい。
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例について以下に示す。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、実施例を理解し易くするため、実施例の複合体の要素に上記第1実施形態で用いた符号を付して説明する。
<実施例>
実施例1では、図1〜3に示した上記第1実施形態の複合体1を以下の製造方法で製造した。
アルミニウム板からなる長尺なアルミニウム層5の片面上に炭素粒子層6を塗工し、これを平面視で正方形状に複数切断することで複数の塗工アルミニウム層7を得た。
アルミニウム層5を形成するアルミニウム板の材質はA1100であり、その厚さは20μmであった。塗工アルミニウム層7の寸法は縦25mm及び横25mmであった。
炭素粒子としてはPAN系炭素繊維(詳述するとPAN系短炭素繊維)を使用した。炭素粒子層6中に含まれる炭素粒子6aであるPAN系炭素繊維の平均繊維長は150μmであり、PAN系炭素繊維の塗工量は21g/m2であった。
次いで、塗工アルミニウム層7を上下方向に30枚積層して積層体10を形成するとともに、積層体10の上面及び下面にそれぞれアルミニウム表面層3を形成する5枚のアルミニウム板8を積層状に配置し、これにより、プリフォーム9としての積層プリフォーム9Aを形成した。
アルミニウム表面層3を形成するアルミニウム板8の材質は高純度アルミニウムであり、その純度は3N(即ち99.9質量%)であった。したがって、アルミニウム板8のアルミニウムの純度はアルミニウム層5を形成するアルミニウム板のアルミニウムの純度よりも高かった。さらに、アルミニウム板8の寸法はアルミニウム層5を形成するアルミニウム板の寸法と同じであり、即ち縦25mm、横25mm及び厚さ20μmであった。
次いで、図3に示した放電プラズマ焼結装置11を用いて、各5枚のアルミニウム板8が一体に焼結されて各アルミニウム表面層3が形成されるように且つ各アルミニウム表面層3の一部が積層プリフォーム9Aの外周側面に塑性流動するように積層プリフォーム9Aをその厚さ方向に加圧しながら、放電プラズマ焼結法により加熱焼結し、これによりアルミニウムと炭素粒子(炭素繊維)6aとの複合体1を製造した。
この焼結に適用した焼結条件は以下のとおりであった。
焼結温度は620℃、焼結時間は60min、積層プリフォーム9Aへの加圧力は20MPa、真空度は10Paであった。
製造された複合体1では、各アルミニウム表面層3は、複合体本体2の上面2a及び下面2aにそれぞれその全体を覆う状態にして焼結固着されていた。さらに、複合体本体2の外周側面2bには各アルミニウム表面層3の塑性流動層4が複合体本体2の外周側面2bの全体を覆う状態にして焼結固着されていた。そのため、複合体1の外周側面からの炭素粒子6aの脱落は見られなかった。
<比較例>
比較例では、積層体10の上面及び下面にそれぞれアルミニウム表面層3を形成する5枚のアルミニウム板8を配置しなかったことを除いて、上記実施例と同じ製造方法でアルミニウムと炭素粒子(炭素繊維)との複合体を製造した。
製造された複合体では、複合体の複合体本体の外周側面にはアルミニウム表面層の塑性流動層は形成されていなかった。そのため、複合体の外周側面からの炭素粒子の脱落が見られた。