JP2016204218A - フルオロスルホニルイミド化合物の製造方法 - Google Patents

フルオロスルホニルイミド化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温で長時間の反応を必要とせず、原料や生成物等の分解を抑制し、副反応による収率の低下を低減したフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法を提供する。【解決手段】本発明のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法は、ハロスルホニル基を有し、かつ下記化学式(1)で表されるイミド化合物と、無水フッ化水素酸を反応させることにより、前記ハロスルホニル基をフルオロスルホニル基に変換してフルオロスルホニルイミド化合物を生成させる。Z(YN−SO2−X)n (1)(式中、前記Xはフッ素原子以外のハロゲン原子を表し、前記Yは−SO2−X、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアルキルカルボニル基又はシアノスルホニル基の何れかを表し、前記Zは水素イオン、金属イオン又はオニウムイオンの何れかを表す。また、前記nは前記Zの価数をkとしたとき、n=kである。)【選択図】 なし

Description

本発明は、フルオロスルホニル基を有するフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法に関し、より詳細には色素増感太陽電池、電気二重層キャパシタ若しくは電解コンデンサ等の電気化学デバイス用の電解液又は電解質、あるいは帯電防止剤等の電解質として有用なフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法に関する。
従来、ハロスルホニル基(−SO−X。但し、前記Xはフッ素原子以外のハロゲン原子である。)をフルオロスルホニル基に変換する方法としては、フッ素化剤を用いる手法が挙げられる。例えば、下記特許文献1においては、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルと、KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表されるフッ素化剤をスルホラン等の極性有機溶媒中で反応させることにより、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを製造する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、フッ素化剤としての金属フッ化物と、ハロスルホニル基を有する原料とを反応させ、S−F結合及び/又はP−F結合を有するアニオン化合物を製造する、フッ素化合物の製造方法が開示されている。さらに、下記特許文献3には、フッ素化剤としての金属フッ化物と、ハロスルホニル基を有する化合物とを反応させ、当該化合物をフッ素化する方法が開示されている。
これらのハロゲン交換フッ素化法は、フッ素化剤であるフッ化物塩(金属フッ化物)の入手が容易であり、かつ安価であることから、工業的にも有用なフッ素化方法として、従来より行われてきた。しかしながら、フッ素化剤として利用されるフッ化物塩は溶媒に難溶であり、原料に対し反応性が低いケースも多い。また、高温で長時間の反応が必要となり、原料や生成物の分解等の副反応が生じ易くなるという問題がある。
また、従来のハロゲン交換フッ素化法においては、フッ素化の反応性を向上させるために、第4級アンモニウム塩等を相関移動触媒として用いる場合もある。しかしながら、フッ素化剤として用いられるフッ化カリウムなどのフッ化物塩は強力な塩基として作用するため、特に高温反応条件下では第4級アンモニウム塩の分解が生じ、触媒機能が維持できなくなるという問題がある。
また、第4級アンモニウム塩以外の相関移動触媒としてはクラウンエーテル等も知られているが、ハロゲン交換フッ素化法においては200℃を超えるような高温で行うことが必要な場合もあり、その場合、原料の分解や生成物の分解を伴うことが多く精製が困難となる。
特開2006−137725号 特開2007−182410号 特表2004−522681号
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、高温で長時間の反応を必要とせず、原料や生成物等の分解を抑制し、副反応による収率の低下を低減したフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法を提供することにある。
本願発明者等は、前記従来の課題を解決すべく、フルオロスルホニルイミド化合物の製造方法について検討した。その結果、下記の構成を採用することにより、フッ素化剤を用いて高温で長時間の反応を行うことなく、かつ、原料や生成物等の分解を抑制して、高純度で簡便にフルオロスルホニルイミド化合物を製造できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法は、前記の課題を解決する為に、ハロスルホニル基を有し、かつ下記化学式(1)で表されるイミド化合物と、無水フッ化水素酸を反応させることにより、前記ハロスルホニル基をフルオロスルホニル基に変換してフルオロスルホニルイミド化合物を生成させることを特徴とする。
Z(YN−SO−X)n (1)
(式中、前記Xはフッ素原子以外のハロゲン原子を表し、前記Yは−SO−X、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアルキルカルボニル基又はシアノスルホニル基の何れかを表し、前記Zは水素イオン、金属イオン又はオニウムイオンの何れかを表す。また、前記nは前記Zの価数をkとしたとき、n=kである。)
前記構成に於いては、前記イミド化合物と前記無水フッ化水素酸との反応を有機溶媒中で行うことが好ましい。
さらに、前記構成に於いては、前記金属イオンがアルカリ金属イオンであることが好ましい。
また、前記構成に於いては、前記イミド化合物と前記無水フッ化水素酸を反応させて得られるフルオロスルホニルイミド化合物を、当該フルオロスルホニルイミド化合物に対し反応性の低い有機溶媒に溶解させた後に再結晶化して精製することができる。
さらに、前記構成に於いては、前記フルオロスルホニルイミド化合物に対し反応性の低い有機溶媒がエタノールであることが好ましい。
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法によれば、ハロスルホニル基を有する前記化学式(1)で表されるイミド化合物に対し、フッ化物塩(金属フッ化物)ではなく無水フッ化水素酸を用いて反応させるので、従来のハロゲン交換フッ素化法と比較して、低温で時間を短縮してフルオロスルホニルイミド化合物を製造することが可能になる。また、原料である前記イミド化合物やフルオロスルホニルイミド化合物が分解等の副反応を生じることもないので、収率の低下も抑制することができ、高純度のフルオロスルホニルイミド化合物を得ることができる。すなわち、本発明のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法によれば、高純度のフルオロスルホニルイミド化合物を簡便に製造することができる。
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
本実施の形態のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法は、ハロスルホニル基を有し、かつ下記化学式(1)で表されるイミド化合物(以下、「イミド化合物」という。)に対し、無水フッ化水素酸を作用させることにより、フルオロスルホニルイミド化合物を製造するものである。
Z(YN−SO−X)n (1)
(式中、前記Xはフッ素原子以外のハロゲン原子を表し、前記Yは−SO−X、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアルキルカルボニル基又はシアノスルホニル基の何れかを表し、前記Zは水素イオン、金属イオン又はオニウムイオンの何れかを表す。また、前記nは前記Zの価数をkとしたとき、n=kである。)
前記イミド化合物を表す化学式(1)中、(YN−SO−X)の部分はハロスルホニル基を有する1価のイミドアニオンを表す。一方、前記化学式(1)中、Zは水素イオン、金属イオン又はオニウムイオンの何れかであって、無水フッ化水素酸との反応により副生物が生成したり沈殿等を生じたりしない範囲内で、反応目的物に応じて適宜選択されるものである。
前記Zにおける前記金属イオンとしては特に限定されず、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、その他種々の金属元素のイオンが挙げられる。前記アルカリ金属イオンとしては特に限定されず、Na、K、Li、Rb、Csから適宜選択される。前記アルカリ土類金属イオンとしては特に限定されず、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Rd2+から適宜選択される。また、その他の金属イオンとしては特に限定されず、例えば、 Zn2+、Ag2+等が挙げられる。これらの金属イオンの内、無水フッ化水素酸との反応性やエタノールに対する溶解性の観点からは、アルカリ金属イオンが好ましく、特にNa、Kが好ましい。
前記Zにおける前記オニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン等が挙げられる。さらに、前記第4級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、チアゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン等が挙げられる。また、前記第4級ホスホニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
前記Yが−SO−Xで表される場合、前記イミド化合物におけるイミドアニオンとしては特に限定されず、例えば、ビスクロロスルホニルイミドイオン、ビスブロモスルホニルイミドイオン、ビスヨードスルホニルイミドイオン等が挙げられる。
前記Yにおけるパーフルオロアルキルスルホニル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基、テトラフルオロエタンスルホニル基等が挙げられる。
また前記Yにおけるパーフルオロアルキルカルボニル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメタンカルボニル基、ペンタフルオロエタンカルボニル基、テトラフルオロエタンカルボニル基等が挙げられる。
前記イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応においては、種々の態様を採用することができる。例えば、有機溶媒(詳細については後述する。)中で前記イミド化合物と無水フッ化水素酸を反応させてもよい。これにより、イミド化合物と無水フッ化水素酸の反応において、無水フッ化水素酸の沸点である20℃以上の熱を必要とする際、温度調整を可能にすると共に、有機溶媒を加えることでイミド化合物と無水フッ化水素酸との反応をより均一化できる。また、無水フッ化水素酸は、液体状又はガス状の何れの態様でもイミド化合物と反応させることができる。液体状の無水フッ化水素酸の場合、当該無水フッ化水素酸をイミド化合物に添加してもよく、又は無水フッ化水素酸に前記イミド化合物を添加してもよい。前記イミド化合物の無水フッ化水素酸に対する安定性が低い場合は、前記イミド化合物に無水フッ化水素酸を逐次的に加えていくことが好ましい。
前記有機溶媒としては特に限定されないが、本実施の形態に於いては非プロトン性溶媒を用いるのが好ましい。アルコール等のプロトン性溶媒を用いた場合のように、ハロスルホニル基(−SO−X)がアルコキシスルホニル基(−SO−OR(Rはアルキル鎖))に変換されるといった副反応が生じるのを防止することができる。
前記非プロトン性溶媒としては特に限定されず、例えば、ニトリル類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
前記ニトリル類としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。前記エステル類としては特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等が挙げられる。前記ケトン類としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。前記エーテル類としては特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコール等が挙げられる。前記ハロゲン化炭化水素としては特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。さらにその他の非プロトン性溶媒としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの非プロトン性溶媒は一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
前記有機溶媒の使用量は特に限定されず、反応性や反応種に応じて適宜設定することができる。通常、無水フッ化水素酸と有機溶媒の割合は、質量基準で10:90〜50:50の範囲内であり、操作性や有機溶媒使用量の観点からは30:70〜40:60の範囲内が好ましい。
本実施の形態において、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応温度は、前記有機溶媒の使用の有無にかかわらず、フッ素化が進行する限りにおいて特に限定されるものではないが、イミド化合物と無水フッ化水素酸の間の反応性の観点から−20℃〜150℃、より好ましくは20℃〜150℃であり、特に好ましいのは25℃〜120℃である。−20℃以上で反応をさせることにより、原料の未反応分の発生を抑制することができる。その一方、150℃以下で反応させることにより、原料の分解等を抑制することができる。尚、反応温度によっては、前記範囲内であっても、無水フッ化水素酸や、場合によっては使用する有機溶媒も、揮発が顕著になることがある。例えば、無水フッ化水素酸の沸点は約20℃であるため、無水フッ化水素酸の揮発が顕著な場合には、イミド化合物と無水フッ化水素酸とを反応させる際に、当該無水フッ化水素酸の還流操作により反応を促進させるのが好ましい。
本実施の形態において、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応時間は、前記有機溶媒の使用の有無にかかわらず、フッ素化が進行する限りにおいて特に限定されるものではない。但し、イミド化合物と無水フッ化水素酸の間の反応性の観点からは、0.5〜20時間が好ましく、より好ましくは1〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。反応時間を0.5時間以上にすることにより、原料の未反応分を抑制することができる。その一方、反応時間を20時間以下にすることにより、過度のエネルギーロスなどを防ぐことができる。
本実施の形態において、無水フッ化水素酸を単独で用いる場合、無水フッ化水素酸の添加量は原料であるイミド化合物に対して50モル当量以上が好ましく、50〜200モル当量がより好ましく、50〜150モル当量がさらに好ましく、100〜150モル当量が特に好ましい。この場合、無水フッ化水素酸はフッ素化剤としての機能の他に、溶媒としての機能も果たす。前記添加量を50モル当量以上にすることにより、反応性の低下に起因してフルオロスルホニルイミド化合物の収率が低下するのを防止することができる。また、無水フッ化水素酸の添加量の上限については特に限定されないが、必要以上に添加すると、過剰の無水フッ化水素酸を留去し回収するための工程が必要になる。その結果、工業的な観点からは不利となるので、無水フッ化水素酸の添加量については、反応種に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、前記無水フッ化水素酸を前記有機溶媒に混合して用いる場合は、当該無水フッ化水素酸の添加量は原料であるイミド化合物に対して2モル当量以上が好ましく、2〜100モル当量がより好ましく、3〜50モル当量がさらに好ましく、5〜10モル当量が特に好ましい。2モル当量以上にすることにより、反応性の低下に起因してフルオロスルホニルイミド化合物の収率が低下するのを防止することができる。また、無水フッ化水素酸の添加量の上限については特に限定されないが、必要以上に添加すると、過剰の無水フッ化水素酸を留去し回収するための工程が必要になる。その結果、工業的な観点からは不利となるので、無水フッ化水素酸の添加量については、反応種に応じて適宜設定するのが好ましい。
尚、無水フッ化水素酸を過剰に用いた場合には、電解質材料の用途においては、残留する無水フッ化水素酸が問題になることがある。しかしながら、このような場合には、熱時下、窒素等の不活性ガス気流下による乾燥処理や、真空乾燥等の一般的な工業操作を行うことにより、残留する無水フッ化水素酸を低減又は除去することが可能である。
本実施の形態に於いては、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応工程の後に、生成物(フルオロスルホニルイミド化合物)の精製工程を行ってもよい。精製方法としては特に限定されず、例えば、蒸留、乾燥等の操作によって、また活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤等の使用により純度を高めることができる。
さらに、前記精製工程においては、生成物の再結晶を行ってもよい。具体的には、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応により得られた生成物を、他の有機溶媒に溶解させ、その後減圧濾過により不溶解分を除去し、濾液を濃縮することにより再結晶化させる。これにより、高純度のフルオロスルホニルイミド化合物を製造することができる。
前記他の有機溶媒としては、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応により得られる生成物(フルオロスルホニルイミド化合物)を溶解させることができ、当該生成物に対し反応性が低いものであれば特に限定されない。具体的には、例えばエタノール等が挙げられる。
他の有機溶媒としてエタノールを用いる場合、溶解させる(イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応により生成した)生成物の濃度としては特に限定されないが、通常は、全質量に対し10質量%〜30質量%であり、好ましくは10質量%〜20質量%である。濃度を10質量%以上にすることにより、濃縮によってフルオロスルホニルイミド化合物を再結晶化する際に、過剰に残留するエタノールの除去に要する手間を低減することができ、製造コストの改善が図れる。その一方、濃度を30質量%以下にすることにより、フルオロスルホニルイミド化合物が過飽和となって溶解が不十分になるのを防止し、収率の低下を抑制することができる。
さらに、フルオロスルホニルイミド化合物の再結晶化の際の濃縮率については、全質量に対し30質量%〜50質量%が好ましく、40質量%〜50質量%がより好ましい。濃縮率を30質量%以上にすることにより、フルオロスルホニルイミド化合物の結晶の析出率が低下して収率が悪くなるのを防止することができる。その一方、濃縮率を50質量%以下にすることにより、析出したフルオロスルホニルイミド化合物の結晶と他の有機溶媒との分離の際の操作性が低下するのを防止することができる。
尚、フルオロスルホニルイミド化合物のアルカリ金属塩、又はフルオロスルホニルイミド化合物のオニウム塩を製造する場合には、アルカリ金属ハライド、又はオニウムハライドを、無水フッ化水素酸の添加前にイミド化合物に添加しておくのが好ましい。前記アルカリ金属ハライドとしては特に限定されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオダイド、ブロマイド、クロライド、フルオライドが挙げられる。また、前記オニウムハライドとしては特に限定されず、例えば、テトラアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、トリアゾリウム、ピリダジニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム等の第4級アンモニウムのイオダイド、ブロマイド、クロライド、フルオライドが挙げられる。また、テトラアルキルホスホニウム等の第4級ホスホニウムのイオダイド、ブロマイド、クロライド、フルオライドが挙げられる。
前記アルカリ金属ハライド又はオニウムハライドの添加量としては、前記イミド化合物に対して1mol当量以上が好ましく、イミド化合物を完全に反応させるという観点からは1.1mol当量以上がより好ましい。尚、アルカリ金属ハライド等を添加したことにより副生する不純物や、過剰に残った原料由来の不純物については、従来公知の精製操作により除去することが可能である。
また、本実施の形態においては、イミド化合物と無水フッ化水素酸との反応工程において、水分の混入を極力回避するのが好ましい。水分はフッ素化の反応を阻害したり、イミド化合物のハロスルホニル基や生成物であるフルオロスルホニルイミド化合物のフルオロスルホニル基と反応するからである。例えば、原料であるイミド化合物が水分と反応すると、当該イミド化合物のハロスルホニル基が分解して、容易にスルホン酸基に変換され、ハロゲン化水素が生成する。従って、原料であるイミド化合物中、無水フッ化水素酸中、及びイミド化合物と無水フッ化水素酸との反応雰囲気中には、水分が混入しないように留意するのが好ましい。これにより、イミド化合物に対する無水フッ化水素酸の反応性の低下や、目的物であるフルオロスルホニルイミド化合物の収率低下を防止することができる。尚、無水フッ化水素酸中における水分量は1%以下であることが好ましく、より好ましくは5000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
本実施の形態において、イミド化合物と無水フッ化水素酸の反応工程に使用する反応器としては、フッ素樹脂製の反応器が好ましく、また、内面がフッ素樹脂でコーティングされた、ステンレス製の反応器も使用可能である。ガラス製の反応器や金属性の反応器は、無水フッ化水素酸や副生するハロゲン化水素によって腐食する恐れがあるので好ましくない。
本実施の形態の製造方法により製造されるフルオロスルホニルイミド化合物は、例えば、リチウム二次電池、色素増感型太陽電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学的デバイスの電解液や電解質に好適に用いることができる。特に、前記フルオロスルホニルイミド化合物のうち、フルオロスルホニルイミドリチウムは、リチウムイオン電池やリチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ等の電解質として利用することができる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定するものではない。
(ビスクロロスルホニルイミド酸の合成)
先ず、窒素雰囲気下でアミド硫酸48.5gをフラスコ内に仕込み、続いて、当該フラスコ内に塩化チオニル164.2gを滴下した。次に、58.3gのクロロ硫酸をフラスコ内に滴下した。その後、130℃にて24時間加熱することで、108gの褐色透明液からなる反応混合物を得た。この反応混合物を蒸留することにより、ビスクロロスルホニルイミド酸を得た。尚、当該合成方法については、Z.Anorg.Allg.Chem.2005.631.55−59に開示されている方法に準じて行った。
(実施例1)
PFA容器に前記ビスクロロスルホニルイミド酸を11.8g入れ、続いて塩化カリウム4.1gと無水フッ化水素酸120gを投入して、室温にて2時間(反応時間)攪拌した。その後、窒素気流下、60℃で3時間乾燥させると、液体成分は除去され、白色固体11.5gが得られた。これはビスクロロスルホニルイミド酸を基準にした場合、収率96%に相当する。
この白色固体について、アニオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、商品名:DX−500 GP)を用いて分析したところ、主成分としてビスフルオロスルホニルイミドイオンが含まれ、不純物としてフッ化物イオン及び塩化物イオンが含まれていた。また、カチオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、商品名:ICS−1500)による分析ではカリウムイオンのみが検出された。
続いて、得られた白色固体11.5gを70gのエタノールに溶解させ、不溶解分を減圧ろ過により濾別した。濾液のエタノール溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて40℃で減圧濃縮していくと、溶液中に白色結晶が析出し始め、重量比で50%まで濃縮した後、析出結晶を濾別した。濾別された結晶を窒素気流下、60℃で2時間乾燥することによって、6.1gの白色結晶が得られた。
前記白色結晶について、前記アニオンクロマトグラフィーを用いてアニオン分析を行い、白色結晶中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積比をビスフルオロスルホニルイミドの純度の指標とした。その結果、得られた白色結晶中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積濃度は98%であった。また、前記カチオンクロマトグラフィーによる分析では、カリウムイオンのみが検出された。
(実施例2)
PFA容器に前記ビスクロロスルホニルイミド酸10.0g入れ、続いてジメチルカーボネート10.0gを投入した。さらに、塩化カリウム3.83gを投入し、ガスの発生を確認した。ガス発生がとまったのを確認してから、重量比率でジメチルカーボネート:無水フッ化水素酸溶液=65:35の溶液20.8gを投入し、反応温度90℃で加熱還流を1時間(反応時間)行った。その後、窒素雰囲下2時間乾燥を行った。液体成分は除去され、9.6gの白色ゲル状の固体が得た。収率は、ビスクロロスルホニルイミド酸を基準にした場合、94%であった。
この白色ゲル状の固体について、前記アニオンクロマトグラフィーを用いて分析したところ、主成分としてビスフルオロスルホニルイミドイオンが含まれ、不純物としてフッ化物イオン及び塩化物イオンが含まれていた。また、前記カチオンクロマトグラフィーによる分析ではカリウムイオンのみが検出された。
続いて、得られた白色固体9.6gを60gのエタノールに溶解させ、不溶解分を減圧ろ過により濾別した。濾液のエタノール溶液をロータリーエバポレーターを用いて40℃で減圧濃縮していくと、溶液中に白色結晶が析出し始め、重量比で50%まで濃縮した後、析出結晶を濾別した。濾別された結晶を窒素気流下、60℃で2時間乾燥することによって、5.7gの白色結晶が得られた。
前記白色結晶について、前記アニオンクロマトグラフィーを用いてアニオン分析を行い、白色結晶中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積比をビスフルオロスルホニルイミドの純度の指標とした。その結果、得られた白色結晶中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積濃度は98%であった。また、前記カチオンクロマトグラフィーによる分析では、カリウムイオンのみが検出された。
(実施例3)
PFA容器に前記ビスクロロスルホニルイミド酸5.0gを入れ、続いてジメチルカーボネート5gを投入した。さらに、重量比率でジメチルカーボネート:無水フッ化水素酸溶液=65:35の溶液を11.4g投入した。その後、反応温度90℃で加熱還流を1時間(反応時間)行った。
この反応液について、前記アニオンクロマトグラフィーにて分析したところ、主成分としてビスフルオロスルホニルイミドイオンが含まれ、不純物としてフッ化物イオン及び塩化物イオンが含まれていた。続いて、得られた褐色の液体を減圧下で蒸留精製し、3.7gの無色透明の生成物を得た。
この生成物について、前記アニオンクロマトグラフィーを用いてアニオン分析を行い、生成物中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積比をビスフルオロスルホニルイミド酸の純度の指標とした。その結果、得られた生成物中のビスフルオロスルホニルイミドイオンの相対面積濃度は97%であった。
(実施例4)
PFA容器に前記ビスクロロスルホニルイミド酸10gを入れ、続いてジメチルカーボネート10gを投入した。さらに、塩化ナトリウム3.0gを投入し、ガスの発生を確認した。ガス発生がとまったのを確認してから、重量比率でジメチルカーボネート:無水フッ化水素酸溶液=65:35の溶液20.8gを投入し、反応温度90℃で加熱還流を1時間(反応時間)行った。その後、窒素雰囲下2時間乾燥を行った。これにより、液体成分は除去され、8.9gの白色固体が得られた。収率は、ビスクロロスルホニルイミド酸を基準にした場合、94%であった。
この白色固体について、前記アニオンクロマトグラフィーを用いて分析したところ、主成分としてビスフルオロスルホニルイミドイオンが含まれ、不純物としてフッ化物イオン及び塩化物イオンが含まれていた。また、前記カチオンクロマトグラフィーによる分析でナトリウムイオンのみが検出された。
得られた微黄色固体8.9gをエタノール50gに溶解させ、不溶解分を減圧ろ過により濾別した。濾液のエタノール溶液をロータリーエバポレーターを用いて40℃で減圧濃縮していくと、液成分をほぼ完全に除去することができた。さらに、得られた白色ゲル状固体にヘキサン20gを投入した。ヘキサンと白色固体を濾過により分離した。濾別された結晶を窒素気流下、60℃で2時間乾燥することによって、8.3gのナトリウムビスフルオロスルホニルイミドを得た。
このナトリウムビスフルオロスルホニルイミドについて、前記アニオンクロマトグラフィーを用いてアニオン分析を行い、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド中のビスフルオロスルホニルイミドアニオンの相対面積比をナトリウムビスフルオロスルホニルイミドの純度の指標とした。その結果、得られたナトリウムビスフルオロスルホニルイミド中のビスフルオロスルホニルイミドアニオンの相対面積濃度は96%であった。また、前記カチオンクロマトグラフィーによる分析ではナトリウムイオンのみが検出された。

Claims (5)

  1. ハロスルホニル基を有し、かつ下記化学式(1)で表されるイミド化合物と、無水フッ化水素酸を反応させることにより、前記ハロスルホニル基をフルオロスルホニル基に変換してフルオロスルホニルイミド化合物を生成させるフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法。
    Z(YN−SO−X)n (1)
    (式中、前記Xはフッ素原子以外のハロゲン原子を表し、前記Yは−SO−X、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアルキルカルボニル基又はシアノスルホニル基の何れかを表し、前記Zは水素イオン、金属イオン又はオニウムイオンの何れかを表す。また、前記nは前記Zの価数をkとしたとき、n=kである。)
  2. 前記イミド化合物と前記無水フッ化水素酸との反応を有機溶媒中で行う請求項1に記載のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法。
  3. 前記金属イオンがアルカリ金属イオンである請求項1又は2に記載のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法。
  4. 前記イミド化合物と前記無水フッ化水素酸を反応させて得られるフルオロスルホニルイミド化合物を、当該フルオロスルホニルイミド化合物に対し反応性の低い有機溶媒に溶解させた後に再結晶化して精製する請求項1〜3の何れか1項に記載のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法。
  5. 前記フルオロスルホニルイミド化合物に対し反応性の低い有機溶媒がエタノールである請求項4に記載のフルオロスルホニルイミド化合物の製造方法。
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