JP2016200794A - 反射フィルム、及びこれを備えてなる液晶表示装置、照明装置、装飾用物品 - Google Patents

反射フィルム、及びこれを備えてなる液晶表示装置、照明装置、装飾用物品 Download PDF

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Abstract

【課題】反射率を高めることができ、しかも、厚みが薄くても、フィルム強度を保持することができる、新たな反射フィルムを提供する。【解決手段】ポリエステル系樹脂(A)及び充填材を含有し、且つ空隙を有する反射層Xと、該反射層Xの表裏両側に配置され、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えており、空隙率が実質上ゼロである反射層Y、Yとを備えた反射フィルムであって、貫孔強度が140N/mm〜1000N/mmであることを特徴とする反射フィルムを提案する。【選択図】なし

Description

本発明は、光を反射する反射フィルムに関し、例えば液晶表示装置、照明器具或いは照明看板などの構成部材として好適に使用することができる反射フィルムに関する。
液晶表示装置をはじめ、照明器具或いは照明看板など多くの分野で反射材が使用されている。最近では、特に液晶ディスプレイの分野において装置の大型化及び表示性能の高度化が進み、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させることが求められている。そのために反射材に対しては、バックライトユニットの輝度向上及び輝度均一性の点から、より一層優れた光反射性(単に「反射性」ともいう)及び光拡散性(単に「拡散性」ともいう)が求められている。
高い反射性及び拡散性を示す反射フィルムとしては、例えば、樹脂に充填材を添加して形成されたフィルムを延伸することによって、フィルム内に微細な空隙を形成させ、光散乱反射を生じさせた白色フィルムが知られている。
この種の反射フィルムにおいて、光反射性は、ベース樹脂と充填材の屈折率差、ベース樹脂と空隙の屈折率差、並びに、充填材と空隙の屈折率差などで決定され、屈折率差が大きいほど高い光反射性が得られるため、屈折率の高い充填材として酸化チタンが用いられている。
例えば特許文献1には、屈折率が1.52未満である樹脂と、酸化チタンとを含有する樹脂組成物Aから成るA層を有する面積倍率が1.2未満の実質無延伸のフィルムであり、該酸化チタンは屈折率が2.5以上であって、該酸化チタン中のバナジウム含有量が5ppm以下であり、かつ、該フィルムの550nmの波長の光に対する反射率が98.1%以上、かつ、80℃で180分間処理を行った後の熱収縮率が縦方向(MD)及び横方向(TD)が共に−0.1%より大きく、1.0%未満であることを特徴とする反射フィルムが開示されている。
また、海島構造を有する層を備えた反射フィルムも開示されている。
例えば特許文献2には、少なくとも2種の熱可塑性樹脂を含有し、連続相(I)と分散相(II)による海島構造を有する層を少なくとも1層有する反射フィルムであって、前記分散相(II)の流れ方向の平均寸法(L1)、及び、幅方向の平均寸法(L2)が、0.45μm以上、100μm以下であり、前記分散相(II)の厚み方向の平均寸法(L3)が、0.01μm以上、0.45μm以下であり、該連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(A)と、該分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(B)の平均屈折率差が0.05以上であり、該フィルムの測定波長400nm〜700nmにおける平均反射率が80%以上であることを特徴とする反射フィルムが開示されている。
同じく、海島構造を有する層を備えた反射フィルムに関し、特許文献3には、少なくとも2種の熱可塑性樹脂を含有し、連続相(I)と分散相(II)による海島構造を有する層を少なくとも1層有する反射フィルムであって、前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(A)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(B)のどちらか一方が、ポリエステル系樹脂を主成分としてなり、もう一方が、フッ素系樹脂を主成分としてなり、該フッ素系樹脂の融解吸熱ピーク温度が130℃以上250℃以下であることを特徴とする反射フィルムが開示されている。
特開2012−77311号公報 特開2014−186318号公報 特開2014−186319号公報
近年、液晶表示装置などの小型化乃至薄肉化の開発が進むにつれて、反射フィルムに対しても厚みを薄くする要求が為されている。しかし、反射フィルムの厚みが薄くなると、反射フィルムの強度が低下するため、この点を改善する必要があった。
また、内部に空隙を多く有する反射フィルムは、反射率を高めることができても、強度を保つことが難しいという課題を抱えていた。他方、海島構造を有する層を備えた反射フィルムは、反射率を十分に高めることができないという課題を抱えていた。
そこで本発明は、反射率を高めることができ、しかも、厚みが薄くても、フィルム強度を保持することができる、新たな反射フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、ポリエステル系樹脂(A)及び充填材を含有し、且つ空隙を有する反射層Xと、該反射層Xの表裏両側に配置され、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えており、空隙率が実質上ゼロである反射層Y、Yとを備えた反射フィルムであって、貫孔強度が140N/mm〜1000N/mmであることを特徴とする反射フィルムを提案する。
本発明が提案する反射フィルムは、反射率を高めることができ、しかも、厚みが薄くても、フィルム強度を保持することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、下記に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本反射フィルム>
本発明の実施形態の一例に係る反射フィルム(「本反射フィルム」と称する)は、ポリエステル系樹脂(A)及び充填材を含有する反射層Xと、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えた反射層Y、Yとの2種3層構造を備えた反射フィルムである。
<反射層X>
反射層Xは、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂(A)と充填材とを含有し、空隙を含有する層である。
反射層Xは、充填材を含有することで、ポリエステル系樹脂(A)との屈折率差による屈折散乱のほか、充填材の周囲に形成される空洞(正確には空洞内の空気。後述する空洞についても同様。)との屈折率差による屈折散乱、さらに充填材の周囲に形成される空洞と充填材との屈折率差による屈折散乱などからも光反射性を得ることができる。ポリエステル系樹脂(A)と充填材との屈折率差による屈折散乱のほか、充填材の周囲に形成される空洞との屈折率差による屈折散乱、さらに充填材の周囲に形成される空洞と充填材との屈折率差による屈折散乱などからも光反射性を得ることができる。
(ポリエステル系樹脂(A))
ポリエステル系樹脂(A)は、脂環構造を有するジオール成分をモル比で5〜50%含有するのが好ましい。当該ジオール成分をモル比で5〜50%含有するポリエステル系樹脂(A)であれば、通常のポリエステル樹脂と比較して高いTgを得られるため、後述の反射層Yとのガラス転移温度の差を所望の範囲に調節出来る点で好ましい。
かかる観点から、ポリエステル系樹脂(A)は、脂環構造を有するジオール成分をモル比で5〜50%の割合で含有するのが好ましく、中でも10%以上或いは45%以下、その中でも15%以上或いは40%以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)は、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂であればよい。例えばスピログリコール、イソソルビド、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールから選ばれる少なくとも1種の脂環構造を有するジオール成分を有する樹脂を挙げることができる。
ポリエステル系樹脂(A)として、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂を用いることにより、他のポリエステル系樹脂を用いた場合に比べて、より均一な大きさ及び形の空隙をより均一に分散させることができ、光反射性をさらに高めることができる。
また、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂は、低い屈折率、優れた透明性及び優れた柔軟性を備えていると共に高いTgを有するという点でも好ましい。
但し、ガラス転移温度(Tg)や屈折率を調整する観点から、上記樹脂以外に、その他のポリエステル系樹脂や添加剤を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、100〜130℃であるのが好ましく、中でも105℃以上或いは125℃以下、その中でも110℃以上或いは120℃以下であるのが特に好ましい。
(充填材)
反射層Xに用いる充填材としては、無機質微粉体、有機質微粉体等を挙げることができる。
無機質微粉体としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等を挙げることができる。これらは、いずれか1種を用いることもできるし、または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、ポリエステル系樹脂との屈折率差を考慮すると、屈折率の大きいものが好ましく、屈折率が1.6以上である、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン又は酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。
中でも、酸化チタンは、他の充填材に比べて屈折率が顕著に高く、ポリエステル系樹脂との屈折率差が顕著に大きいため、他の充填材を使用した場合よりも少ない配合量で優れた反射性を得ることができる。さらに、酸化チタンを用いることにより、反射層X又は本反射フィルムの厚みを薄くしても高い光反射性を得ることができる。
従って、少なくとも酸化チタンを主成分として含む充填材を用いるのがより好ましく、この場合、酸化チタンの量は、無機充填材の合計質量の30質量%以上、又は有機充填材と無機充填材とを組み合わせて使用する場合はその合計質量の30質量%以上とするのが好ましい。
無機質微粉体の樹脂への分散性を向上させるために、充填材の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用してもよい。
他方、上記の有機質微粉体としては、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等を挙げることができ、これらのうちのいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて用いてもよい。
反射層Xにおける充填材は、平均粒径(D50)が0.05μm〜15μmであることが好ましく、中でも0.1μm以上或いは10μm以下であるのがより好ましい。充填材の平均粒径(D50)が0.05μm以上であれば、ポリエステル系樹脂への分散性が低下することがないので、均質な層が得られる。他方、充填材の平均粒径(D50)が15μm以下であれば、ポリエステル系樹脂と充填材との界面が緻密に形成されて、反射性をさらに高めることができる。
前記反射層Xにおいて、前記ポリエステル系樹脂(A)と充填材との含有割合(質量部)は、光反射性、機械的強度及び生産性等の観点から、ポリエステル系樹脂(A):充填材=20:80〜80:20であるのが好ましい。充填材の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)80質量部に対して20質量部以上であれば、ベース樹脂と充填材との界面の面積を充分に確保することができ、反射材に高反射性を付与することができる。他方、充填材の含有量がポリエステル系樹脂(A)20質量部に対して80質量部以下であれば、反射シートに必要な機械的強度を確保することができる。
かかる観点から、前記反射層Xにおいて、ポリエステル系樹脂(A):充填材は20:80〜80:20であるのが好ましく、中でも40:60〜60:40質量部であるのが特に好ましい。
(形成方法)
反射層Xは、例えば、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂(A)と充填材とを含有するフィルムを、一軸又は二軸延伸して得られたフィルムから形成することができる。但し、これに限定するものではない。
延伸方法としては、フィルムの流れ方向(以下、MDと表記することがある)及び幅方向(以下、TDと表記することがある)の二軸方向に配向されていることが好ましい。
この際、反射層Xの延伸倍率としては、フィルムの流れ方向、及び/又は、フィルムの幅方向に2〜9倍延伸されてなるものが好ましい。
(空隙)
反射層Xは空隙を有する層である。
反射層Xの空隙は、反射層Yの分散層と同様に平板状構造であるのが好ましい。その場合、反射層Xの空隙の厚みは、反射層Yの分散層の厚みに比べて厚いことが好ましい。
反射層Xの空隙率は5%〜70%であるのが好ましく、中でも10%以上或いは65%以下、その中でも15%以上或いは60%以下であるのがさらに好ましい。
反射層Xに空隙を形成させる方法としては、例えば、少なくとも一軸方向に延伸させることによる方法や、発泡性粒子を添加し、溶融押出することによってフィルム内部にて発泡させる方法のほか、不活性ガスを高圧で溶解させ、その後、圧力を開放することにより多孔質層を形成させる方法などを挙げることができる。なお、これらの方法の何れか一種の方法を採用してもよいし、複数の方法を組み合わせて採用してもよい。
<反射層Y>
反射層Yは、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えた層である。
上記の樹脂(B)は、前記ポリエステル系樹脂(A)とのガラス転移温度の差が15℃以下である熱可塑性樹脂であるのが好ましい。
反射層Yが、前記ポリエステル系樹脂(A)とのガラス転移温度の差が15℃以下である熱可塑性樹脂(B)を主成分樹脂として含有する層であれば、後述するように、反射層Xと反射層Yとを共押出して積層することができるから、生産効率が高くなるばかりではなく、反射層Xと反射層Yとを接着層などの中間層を介さずに直接積層することができ、本反射フィルムをより薄く形成することができる。
かかる観点から、前記ポリエステル系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度の差(絶対値)は15℃以下であるのが好ましく、中でも13℃以下、その中でも11℃以下であるのが特に好ましい。
反射層Yは、前記熱可塑性樹脂(B)からなる連続相(I)と、これと非相溶の熱可塑性樹脂(C)からなる分散相(II)による海島構造を有するものであるのが好ましい。
海島構造とは、複数成分の片方が連続する相の中に、もう一方が粒子状(島状)に分散している構造を言い、通常、分散相である島部は、不連続であり、かつ、微小な略球状構造を示すものである。本反射フィルムにおける反射層Yの島部は、流れ方向及び幅方向に延伸されるため、扁平した楕円状構造、又は、円盤状構造を示すのが好ましい。このような構造の有無は、反射層YのMD断面、もしくは、TD断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより、確認することができる。
反射層Yにおける前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)に関しては、該連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、該分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)との平均屈折率差が0.05以上であることが好ましい。
両者の平均屈折率差が0.05以上であることにより、連続相と分散相との界面における光の反射が生じやすくなるため、より高い反射特性を付与することが可能となる。
かかる理由により、該連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、該分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)の平均屈折率差は、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。
また、反射層Yは、少なくとも一軸方向に配向しているフィルムから形成するのが好ましく、中でもフィルムの流れ方向(以下、MDと表記することがある)と幅方向(以下、TDと表記することがある)の二軸方向に配向していることがさらに好ましい。
延伸操作等により、フィルムに配向を付与させることにより、前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)の屈折率を変化させることにより、前記(B)と前記(C)の屈折率差を更に増大させることが可能となる。また、前記分散相(II)の流れ方向、幅方向、および厚み方向の平均寸法を調節することができ、本反射フィルムにより高い反射特性を付与することができる。
前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)は、一種類の熱可塑性樹脂であってもよいし、二種類以上の熱可塑樹脂の混合樹脂であってもよい。
中でも、前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)の少なくとも一方が、結晶性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。少なくとも一方が結晶性の熱可塑性樹脂であれば、高分子鎖が配向しやすく、配向方向に対する連続相(I)と分散相(II)の屈折率差を増大させやすく、反射特性を向上させやすいため好ましい。また、熱処理の際に、結晶性の熱可塑性樹脂は、配向結晶化しやすくなり、寸法安定性の観点からも好ましい。
なお、結晶性の熱可塑性樹脂とは、一般に結晶融解ピーク温度(融点)が存在するとされる熱可塑性樹脂を指し、より具体的にはJIS K7121に準拠して行う示差走査熱量測定(DSC)において融点が観測される熱可塑性樹脂であって、いわゆる半結晶性の状態のものを包含する。逆に、DSCにおいて融点が観測されない熱可塑性樹脂を「非晶性」と称する。
このような結晶性の熱可塑性樹脂としては、特にその種類を限定するものではない。例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクタム等のポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレンや低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチン−αオレフィン共重合体等のエチレン系共重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンや、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン系樹脂等のフッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等のエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。これらの中でもポリエステル系樹脂が好ましく、結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂であることがさらに好ましい。
以上の観点から、反射層Yは、ポリエステル系樹脂とフッ素系樹脂との組み合わせによって海島構造を形成してなるものが好ましい。
中でも、連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)がポリエステル系樹脂であり、分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)がフッ素系樹脂である組合せが好ましい。
一般にポリエステル系樹脂、特に芳香族ポリエステル系樹脂は平均屈折率が高く、フッ素系樹脂は平均屈折率が低いため、連続相(I)と分散相(II)の屈折率差を増大させやすく、反射特性を向上させやすいため好ましい。
(ポリエステル系樹脂)
反射層Yの構成材料としての上記ポリエステル系樹脂は、結晶性のポリエステル系樹脂であることが好ましい。
結晶性のポリエステル系樹脂は、延伸を行うと、高分子鎖が配向しやすく、配向方向に対する連続相(I)と分散相(II)の屈折率差を増大させやすく、反射特性を向上させやすいため好ましい。また、熱処理の際に、配向結晶化しやすくなり、寸法安定性の観点からも好ましい。
一般に、ポリエステル系樹脂は、固有複屈折率が正となることが多く、中でも芳香族ポリエステル系樹脂は高い複屈折率を有する為、配向方向に対する連続相(I)と分散相(II)の屈折率差を増大させやすく、反射特性を向上させやすいため好ましい。
このようなポリエステル系樹脂としては、特にその種類を限定するものではない。例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクタム等のポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
これらの中でも、結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂であることが好ましく、特にポリエチレンナフタレート系樹脂であることが、高い平均屈折率と高い複屈折率を有するという観点から好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)や屈折率を調整する観点から、上記樹脂を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)との混合樹脂も好ましい一例である。PENとPETは相溶するためで、PENにPETを混ぜることによって、Tgや屈折率が調整することができる。
ポリエチレンナフタレート系樹脂を使用する場合、該樹脂の重量平均分子量は、耐衝撃性や製膜性の観点から、3万以上であることが好ましく、4万以上であることがより好ましい。
上記ポリエステル系樹脂の固有粘度は、製膜性の観点から、0.5dl/g以上であることがより好ましい。
上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、70℃〜120℃の範囲が好ましく、80℃〜120℃の範囲であることがより好ましい。ガラス転移温度が70℃以上であれば、フィルムの剛性を保持することができ、120℃以下であれば延伸が容易となるため好ましい。
さらに、上記ポリエステル系樹脂の融点(Tm)は、240℃〜270℃の範囲が好ましく、250℃〜270℃の範囲であることがより好ましい。融点が240℃以上であれば、十分な耐熱性を付与することができ、270℃以下であれば溶融押出時に、ポリエチレンナフタレート系樹脂以外の共存する熱可塑性樹脂の熱分解を抑制するため好ましい。
上記ポリエステル系樹脂としてポリエチレンナフタレート系樹脂を使用する場合、YI値が−10〜10の範囲内、特に−3〜3の範囲内であるものを用いるのが好ましい。また、ポリエチレンナフタレート系樹脂が各々混合物からなる場合には、各樹脂ともにYI値が−10〜10の範囲内であることが好ましい。YI値が−10〜10の範囲内であれば、例えば液晶ディスプレイ等に組み込むことにより、画像の精彩性をより一層良好にすることができ、輝度向上率をより一層高めることができる。
ポリエチレンナフタレート系樹脂としては、市販品を用いることもできる。例えば、テオネックスTN8065S(ポリエチレンナフタレートのホモポリマー、帝人化成(株)製、固有粘度0.71dl/g)、テオネックスTN8065SC(ポリエチレンナフタレートのホモポリマー、帝人化成(株)製、固有粘度0.55dl/g)、テオネックスTN8756C(ポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートのコポリマー、帝人化成(株)製、固有粘度0.65dl/g)などを好ましい例として挙げることができる。
(フッ素系樹脂)
一方、反射層Yの構成材料としての上記フッ素系樹脂は、融点(Tm)が130℃以上250℃以下であるのが好ましい。
フッ素系樹脂の融点が130℃未満の場合、ポリエステル系樹脂との混練・押出の際に表面荒れが生じたり、反射フィルムの耐熱性が低下したりするため、好ましくない。反射フィルムは、その性質上、光源周辺に配置されることが多いため、耐熱性が求められる。そのため、前記フッ素系樹脂の融点が130℃以上であることが好ましく、中でも好ましくは150℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
また、フッ素系樹脂の融点が300℃を超える場合、ポリエステル系樹脂との混練・押出の際に、ポリエステル系樹脂の分解が促進されやすくなり、成形が困難となるため好ましくない。さらに、フッ素系樹脂の融点が250℃より大きく300℃未満の場合、表面荒れが生じたり、分散相(II)のモルフォロジーが粗雑になりやすくなったりするため、好ましくない。かかる理由により、フッ素系樹脂の融点は、245℃以下であることがさらに好ましく、240℃以下であることがより好ましく、235℃以下であることが特に好ましい。
前記フッ素系樹脂は、低い平均屈折率を有する点、優れた延伸性を有することから、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系樹脂、または、エチレン−テトラフルオロエチレン系樹脂であることが好ましい。
例えば、前記テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系樹脂、または、エチレン−テトラフルオロエチレン系樹脂を使用する場合、該フッ素系樹脂の融点(Tm)は、耐熱性付与の理由において、130℃〜250℃の範囲が好ましく、中でも180℃〜240℃以下の範囲が更に好ましい。
テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系樹脂やエチレン−テトラフルオロエチレン系樹脂は、市販品を用いることもできる。例えば、Dyneonシリーズ(3M社製)、Fluon ETFE、Fluon LM−ETFE、Fluon LM−ETFE AHシリーズ(旭硝子社製)、ネオフロンETFE EPシリーズ(ダイキン工業社製)などを好ましい例として挙げることができる。
(熱可塑性樹脂(B)(C)の割合)
反射層Yを構成する、前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と、前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(C)の混合質量比は、(B)/(C)=90/10〜50/50であることが好ましく、中でも80/20〜55/45、その中でも75/25〜60/40であるのが特に好ましい。このような混合質量比とすることにより、分散相が少なくなり過ぎず、連続相と分散相との界面における散乱が小さくなり反射特性が低下するなどのおそれがないため好ましい。
なお、反射層Yは、前記熱可塑性樹脂(B)及び前記熱可塑性樹脂(C)以外の他の熱可塑性樹脂を含有しても構わない。例えば前記熱可塑性樹脂(C)に該当する熱可塑性樹脂を2種以上含んでいても構わない。
(その他成分)
反射層Yは、分散性を向上させる目的で、必要に応じて相溶化剤などの添加剤を含有してもよい。
相溶化剤としては、反射層Yにおける連続相及び分散相の種類に応じて慣用の相溶化剤から選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、エステル系樹脂、エポキシ基を持つ樹脂、オキサゾリン環を持つ樹脂、アズラクトン基を持つ樹脂から選ばれた少なくとも1つの樹脂と、スチレン系樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリアミドから選ばれた少なくとも1つの樹脂とからなるブロックコポリマー、あるいはグラフトコポリマーを挙げることができる。中でも、分散性向上の点で、エポキシ基やオキサゾリン基を持つ樹脂などが特に好ましく、特にエポキシ変性のものが好ましい。
相溶化剤を添加する場合の配合割合は、前記熱可塑性樹脂(B)及び前記熱可塑性樹脂(C)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部、特に0.2〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部とするのが好ましい。
また、前記相溶化剤以外の添加剤として、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および本反射フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される添加剤、例えば難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜P294に記載されている滑剤などが挙げられる。
(形成方法)
反射層Yは、例えば、二種類の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えたフィルムを、一軸又は二軸延伸して形成することができる。
(空隙)
反射層Yは、空隙率が実質上ゼロであるのが好ましい。
ここでの「実質上ゼロ」とは、反射層Yに空隙を設ける意図を有しておらず、不可避的に形成された空隙を含有することを許容する意図である。かかる観点から、反射層Yの空隙率が3%未満、中でも2%未満、その中でも1%未満であれば、実質上ゼロであるとみなすことができる。
(本反射フィルムの厚み)
本反射フィルムの厚みは、40μm〜300μmであるのが好ましい。本反射フィルムの厚みが40μm以上であれば、十分な反射率と正反射特性を得ることができ、300μm以下であれば十分な実用面の取扱い性を有することができる。かかる観点から、より好ましくは50μm以上或いは200μm以下であり、さらに好ましくは60μm以上或いは100μm以下である。
(反射層X、Yの厚み)
反射層Xの厚みは、反射率を高める観点から、本反射フィルムの全体厚みの50〜95%を占めるのが好ましく、中でも60%以上或いは93%以下、その中でも特に70%以上或いは92%以下を占めるのがさらに好ましい。
他方、反射層Yの厚みは、強度を高める観点から、本反射フィルムの全体厚みの5〜50%を占めるのが好ましく、中でも7%以上或いは40%以下、その中でも8%以上或いは30%以下を占めるのがさらに好ましい。
各層の厚み比が上記範囲であれば、本反射フィルムに正反射特性と高反射率とを効率よく付与することができる。また、積層後の強度及びハンドリング性を十分に確保することができる。
なお、上記反射層X、Yの厚みとは、反射層X、Yがそれそれ2層以上存在する場合にはその合計厚みを意味するものである。
<本反射フィルムの積層構成>
本反射フィルムは、反射層Xと反射層Y、Yとの2種3層構造を備えた積層構成であればよく、反射層Xと、反射層Yとが、共押出により積層一体化された構成であるのが特に好ましい。
本反射フィルムは、反射層Xと反射層Y、Yとの2種3層構造を備えた積層構成であればよく、必要に応じて他の層Pを適宜導入してもよい。例えば、力学特性向上のため金属板と重ね合わせることができる。
例えば、Y/X/Yのほか、Y/P/X、Y/P/Y/X/Y、Y/P/X/P/Y、Y/X/P/X/P/Yなどの構成を例示することができる。ただし、これらに限定するものではない。
なお、積層構成とするにあたり、各層の樹脂組成に関しては同一であっても異なっていてもよい。
<本反射フィルムの形状および物性>
(貫孔強度)
本反射フィルムは、後述する実施例で示した測定方法に準拠して測定される貫孔強度が140N/mm〜1000N/mmであるのが好ましい。貫孔強度が140N/mm以上であればフィルムは十分な強度を持ち、1000N/mm以下であれば二次加工やハンドリング性の面から好ましい。
かかる観点から、本反射フィルムの貫孔強度は140N/mm〜1000N/mmであるのが好ましく、中でも150N/mm以上或いは700N/mm以下、その中でも160N/mm〜1000N/mm以上或いは500N/mm以下であるのが特に好ましい。
本反射フィルムの貫孔強度を上記範囲に調整するには、空隙率が実質上ゼロである反射層Y、Yを積層すると共に、反射層Yの厚み比などを調整するのが好ましい。ただし、かかる方法に限定するものではない。
(平均反射率および平均透過率)
本反射フィルムは測定波長400nm〜700nmの平均の平均反射率が90%以上であることが好ましい。前記平均反射率が90%以上であることにより、フィルムの反射特性を担保することができる。かかる理由により、93%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。このような反射性能を有するものであれば、反射材として良好な反射特性を示し、この反射材を組み込んだ液晶ディスプレイ等はその画面が十分な明るさを実現することができる。
また、本反射フィルムは、測定波長400nm〜700nmでの平均透過率が当該全領域の波長にわたり5%以下であるのが好ましい。これにより、反射面の裏側の光の透過を抑制でき、光隠蔽性に優れた反射フィルムを得ることができる。
<本反射フィルムの形態>
本反射フィルムの形態は特に限定するものではなく、板状、シート状、フィルム状その他の形態であってもよい。
<本反射フィルムの製膜方法>
本反射フィルムの製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。以下に、積層構成を備えた本反射フィルムの製造方法について、一例を挙げて説明するが、下記製造方法に何ら限定されるものではない。
本反射フィルムの製造方法の一例として、反射層X形成用樹脂組成物及び反射層Y形成用樹脂組成物を調製し、共押出により反射層X及びYを積層一体化した後、一軸又は二軸延伸して作製する方法を挙げることができる。
(反射層X形成用樹脂組成物の調製)
ポリエステル系樹脂に、充填材、および、必要に応じてその他添加剤を予め配合しておく。具体的には、ポリエステル系樹脂に充填材その他酸化防止剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸又は2軸押出機等を用いて、樹脂の流動開始温度以上の温度で混練することにより、反射層X形成用の樹脂組成物を得ることができる。
また、ポリエステル系樹脂、充填材等を別々のフィーダー等により所定量を添加して混練することにより得ることができる。
また、ポリエステル系樹脂とその他の酸化防止剤等を予めに高濃度に配合したいわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチとポリエステル系樹脂や充填材とを混合して所望の濃度に調整することもできる。
(反射層Y形成用樹脂組成物の調製)
他方、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)に、必要に応じて相溶化剤(D)、酸化防止剤等を添加しシート(Y)用の樹脂組成物とする。具体的にはリボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸又は2軸押出機等を用いて、樹脂の流動開始温度以上の温度で混練することにより、得ることができる。また、熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)とその他の相溶化剤(D)や酸化防止剤等を予めに高濃度に配合したいわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)とを混合して所望の濃度に調整することもできる。
(共押出)
次に、このようにして得られた反射層X形成用樹脂組成物、及び、反射層Y形成用樹脂組成物を乾燥させた後、共にそれぞれ別の押出機に供給し、それぞれ所定の温度以上に加熱して溶融させる。
押出温度等の条件は、各層に用いる熱可塑性樹脂により異なるが、いずれの樹脂を用いる場合においても分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要である。例えば、各層において、上述の例に挙げた熱可塑性樹脂を用いる場合には、前記反射層Y形成用樹脂組成物の押出温度は270℃〜290℃であることが好ましい。
その後、溶融した各樹脂組成物を2種2層あるいは、2種3層用のTダイに合流させ、Tダイのスリット状の吐出口から積層状に共押出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
(延伸)
次に、少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。
延伸方向としては、MDとTDのいずれかでも、両軸でもよい。但し、本反射フィルムの有する特性をより効果的に発現させるためには、MD、TD両方向に延伸し、フィルムを配向させること好ましい。延伸することにより、樹脂組成物Aにおいて内部のポリエステル系樹脂と充填材の界面が剥離して空隙が形成され、シートの白化が進行して、フィルムの光反射性を高めることができる。
なお、MD、TD両方向にフィルムを配向させる方法としては、上述の延伸による方法以外にも、例えば、Tダイキャスト法において製膜する際に、引き取り速度(キャストロールの速度)を速くすることによってMDにドラフトをかけた後にTDに延伸する方法、インフレーション法によって製膜する際に、引き取り速度を速くすることによってMDにドラフトをかけた後にTDに延伸する方法などを例示できる。
中でも、製膜安定性や生産効率化を考慮する場合には、上述の通りTダイキャスト法によって製膜したシートを、MD、TDに二軸延伸する方法を選択することが好ましい。
このように二軸延伸することにより、例えば反射層Yにおいて連続相(I)中に分散相(II)をほぼ一定方向に配列させて固定させることができるため、連続相(I)と分散相(II)との屈折率差は延伸方向に大きくなるとともに、分散相(II)が延伸方向に伸長される。そのため、分散相(II)が擬似的な超多層構造を有するようになり、金属のような光沢を有する反射フィルムを作製することができる。また、2軸延伸することによって、反射層X形成用樹脂組成物におけるポリエステル系樹脂(A)と充填材との界面の剥離面積が増大し、シートの白化がさらに進行し、その結果、フィルムの光反射性をさらに高めることができる。
また、2軸延伸するとフィルムの収縮方向の異方性が少なくなるので、フィルムに耐熱性を向上させることができ、またフィルムの機械的強度を増加させることもできる。
延伸方法は、引っ張り延伸法、ロール間延伸法、ロール圧延法、その他の方法のいずれを採用してもよい。
延伸温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)程度から(Tg+50℃)の範囲内の温度とするのが好ましい。延伸温度がこの範囲であれば、延伸時に破断することなく安定して延伸を行うことができる。
延伸倍率は、特に限定するものではない。例えば、MD及び/又はTDに2〜9倍好ましくはMD及び/又はTDに3〜9倍、特にMD及び/又はTDに4〜7倍とするのが好ましい。延伸倍率が、MD及び/又はTDに2倍以上であれば、反射層Yにおける分散相(II)が伸長し、かつ反射層(X)におけるポリエステル樹脂と充填材との界面の剥離面積が増大するため好ましい。また、配向が付与され、連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(B)と分散相を形成する熱可塑性樹脂(C)との屈折率差が増大し、反射率向上の効果が得られるため好ましい。一方、9倍以下であれば、フィルムの破断を抑制できる為、好ましい。
延伸したシートは、耐熱性及び寸法安定性を付与するべく、熱処理するのが好ましい。熱処理温度は、使用する樹脂にもよるが、上述の例に挙げた樹脂組成物を使用する場合には、140〜170℃とするのが好ましく、150〜160℃とするのがさらに好ましい。熱処理に要す処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。
<用途>
本反射フィルムを利用することにより、本反射フィルムを備えてなる液晶表示装置、照明装置、装飾用物品などを構成することができる。
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「主成分」「主成分樹脂」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。また、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、特に記載しない限り、主成分は組成物中の同種材料(充填材であれば充填材、樹脂であれば樹脂)の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
但し、2種類以上の材料が主成分を構成する場合、各材料の組成物中の割合は10質量%以上、好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であればよい。
また、本発明において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
さらにまた、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
(1)熱可塑性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の平均屈折率差
アタゴ製アッベ屈折率計を用い、ナトリウムD線(589nm)を光源とし、JIS K7124により、実施例、及び、比較例に用いたそれぞれの原料の平均屈折率を測定した後、平均屈折率差を算出した。
(2)フィルム全体厚みおよび反射層Xの厚み比
得られた反射フィルムの全厚みについては、1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
反射層Y、反射層Xの各層厚みについては、走査型電子顕微鏡(SEM)にて得られたフィルムの断面を観察し、得られた写真を用いて測定した。
(3)空隙率
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率(%)を求めた。なお、反射層Xの空隙率は、反射層Yの空隙率がゼロであるため、反射フィルムの空隙率および反射層Xの厚み比から算出した。
空隙率(%)={(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
(4)反射率の評価方法
分光光度計(「U―3900H」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、アルミナ白板を100%とした時の反射率を、波長300nm〜800nmにわたって0.5nm間隔で測定し、反射率を得た。得られた測定値をもとに各波長領域での平均値を計算し、この値を平均反射率(%)とした。得られた結果より、下記基準にて判定した。
○(good):波長700nm〜400nmの平均反射率が90%以上である。
×(poor):波長700nm〜400nmの平均反射率が90%未満である。
(5)透過率の評価方法
分光光度計(「U―3900H」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長300nm〜800nmにわたって0.5nm間隔で測定し、透過率(%)を得た。なお、測定前にアルミナ白板を標準板として校正を行った。得られた結果より、下記基準にて判定した。
○(good):波長700nm〜400nmの平均透過率が5%以下である。
×(poor):波長700nm〜400nmの平均透過率が5%を超える。
(6)貫孔強度
島津製作所AGS−Xを用い、直径1mm、先端半径0.5mmの突刺し針を速度200mm/minの速度で固定した試験片に対し垂直に突刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定し、得られた最大応力値を試験片の厚さで除した値を貫孔強度とした。また、下記基準にて判定した。
○(good):貫孔強度が130N/mm以上である。
×(poor):貫孔強度が130N/mm未満である。
<実施例1>
ポリエステル系樹脂(A)として、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール34.5mol%、Tg:117℃、以下「A−1」と表記)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2450」、平均粒径D50:0.31μm)と、60:40の質量割合で混合した後、酸化防止剤(ADEKA PEP36AおよびAO−80)を混合質量100に対して、0.1部添加し、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、反射層X形成用樹脂組成物を作製した。
熱可塑性樹脂(B)としてのポリエチレンナフタレート樹脂(平均屈折率:1.646、Tg:118℃、Tm:261℃、固有粘度0.71dl/g、重量平均分子量5万、固有複屈折率:正、以下「B−1」と表記)と、熱可塑性樹脂(C)としてのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系樹脂(平均屈折率:1.3547、Tm:223℃、以下「C−1」と表記)とをそれぞれ70:30の質量混合比で配合し、十分混合した後、290℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、反射層Y形成用樹脂組成物を作製した。
上記反射層X形成用樹脂組成物及び反射層Y形成用樹脂組成物をそれぞれ、290℃に加熱された押出機A、Bに供給し、各押出機において、290℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、反射層Y/反射層X/反射層Yの3層構成になるようにシート状に押出し、ロール温度130℃のキャストロールにて冷却固化して、積層シートを得た。
得られたキャストシートを、予熱ロール、延伸ロール、冷却ロールからなる縦延伸機にて、予熱温度120℃、延伸温度133℃、冷却温度60℃にて、延伸ロール間でのロール速度差によりMDに2.5倍延伸した。
その後、得られた縦延伸フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンからなるテンターにて、予熱130℃、延伸130℃、熱処理130℃にてTDに3倍延伸して反射フィルム(サンプル)を得た。予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンの通過時間はそれぞれ32秒であった。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、反射層X形成用樹脂組成物を作製する過程において、A−1のペレットと酸化チタンの混合割合を40:60の質量割合とし、二軸押出機の加熱温度を280℃とし、MDへの延伸温度を143℃、冷却温度を70℃、延伸倍率を3.5倍とし、TDへの予熱、延伸、熱処理温度を137℃とし、延伸倍率を4.25倍とし、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンの通過時間をそれぞれ19秒とした以外は、実施例1と同様にして反射フィルム(サンプル)を得た。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、ポリエステル系樹脂A−1の代わりに、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール21mol%、Tg:107℃、以下「A−2」と表記)を用い、MD延伸温度を120℃、MD延伸倍率を3倍、TD延伸時の予熱、延伸、熱固定それぞれの温度を120℃にした以外は、実施例1と同様にして反射フィルム(サンプル)を得た。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例3において、MD延伸倍率を2倍とした以外は、実施例3と同様にして反射フィルム(サンプル)を得た。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例4において、TD延伸倍率を4倍とした以外は、実施例3と同様にして反射フィルム(サンプル)を得た。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<比較例1>
ポリエステル系樹脂(A)として、A−1のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2450」、平均粒径D50:0.31μm)と、60:40の質量割合で混合した後、酸化防止剤(ADEKA PEP36AおよびAO−80)を混合質量100に対して、0.1部添加し、270℃で加熱された二軸押出機を用いてTダイに導きシート状に押出し、ロール温度110℃のキャストロールにて冷却固化して、単層シートを得た。
得られたキャストシートを、予熱ロール、延伸ロール、冷却ロールからなる縦延伸機にて、予熱温度110℃、延伸温度120℃、冷却温度70℃にて、延伸ロール間でのロール速度差によりMDに2倍延伸した。
その後、得られた縦延伸フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンからなるテンターにて、予熱120℃、延伸120℃、熱処理120℃にてTDに2倍延伸して反射フィルム(サンプル)を得た。予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンの通過時間はそれぞれ32秒であった。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
比較例1において、ポリエステル系樹脂(A)として、A−2のペレットを用い、TDの延伸倍率を4倍とする以外は、比較例1と同様にして反射フィルム(サンプル)を得た。得られた反射フィルム(サンプル)の評価結果を表1に示す。
Figure 2016200794
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果などから、ポリエステル系樹脂(A)及び充填材を含有し、且つ空隙を有する反射層Xと、該反射層Xの表裏両側に配置され、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えており、空隙率が実質上ゼロである反射層Y、Yとを備えた反射フィルムにおいて、貫孔強度が140N/mm〜1000N/mmであれば、反射率を高めることができ、しかも、厚みが薄くても、フィルム強度を保持することができることが分かった。
なお、実施例1〜5で得られた反射フィルムを電子顕微鏡で観察したところ、反射層Xの空隙及び反射層Yの分散相は、ともに平板状構造であることが観察された。

Claims (9)

  1. ポリエステル系樹脂(A)及び充填材を含有し、且つ空隙を有する反射層Xと、該反射層Xの表裏両側に配置され、2種の樹脂(B)(C)からなる海島構造を備えており、空隙率が実質上ゼロである反射層Y、Yとを備えた反射フィルムであって、
    貫孔強度が140N/mm〜1000N/mmであることを特徴とする反射フィルム。
  2. 上記反射フィルムの全体厚みに対する反射層Y、Yの合計厚みが5〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の反射フィルム。
  3. フィルム全体の厚さが40μm〜300μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射フィルム。
  4. 上記反射層Yにおいて、連続相を樹脂(B)が構成し、分散相を樹脂(C)が構成し、且つ、該樹脂(B)はポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射フィルム。
  5. 上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)と、上記反射層Yにおいて連続相を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)との差が15℃以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の反射フィルム。
  6. 上記反射層Xにおいて、前記ポリエステル系樹脂(A)と充填材との含有割合(質量部)は、ポリエステル系樹脂(A):充填材=20:80〜80:20であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の反射フィルム。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の反射フィルムを備えてなる液晶表示装置。
  8. 請求項1〜6の何れかに記載の反射フィルムを備えてなる照明装置。
  9. 請求項1〜6の何れかに記載の反射フィルムを備えてなる装飾用物品。
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