JP2016196057A - 研磨パッド及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドレス処理性及び研磨傷の発生抑制に優れる研磨パッド及びその製造方法を提供すること。【解決手段】ポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドであって、測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))が、0.25以下であり、前記ポリウレタン樹脂シートの、45〜65℃での貯蔵弾性率E’が、200MPa以下である、前記研磨パッド。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関する。特には、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス基板等の化学機械研磨(CMP)加工用研磨パッド及びその製造方法に関する。
光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス基板などの材料の表面には平坦性が求められるため、研磨パッドを用いた遊離砥粒方式の研磨が行われている。遊離砥粒方式は、研磨パッドと被研磨物の間に砥粒を含むスラリー(研磨液)を供給しながら被研磨物の加工面を研磨加工する方法である。
半導体デバイス用の研磨パッドには、その研磨パッド表面に、砥粒を保持するための開孔と、半導体デバイス表面の平坦性を維持する剛性と、半導体デバイス表面のスクラッチを防止する弾性とが要求される。これらの要求に応える研磨パッドとして、ウレタン樹脂発泡体から製造された研磨層を有する研磨パッドが利用されている。
ウレタン樹脂発泡体は、通常、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物を含むプレポリマと硬化剤との反応により硬化して成形される(乾式法)。そして、この発泡体をシート状にスライスすることにより研磨パッドが形成される。このように乾式法で成形された硬質の研磨層を有する研磨パッド(以下、硬質(乾式)研磨パッドと略すことがある)は、ウレタン樹脂硬化成形時に発泡体内部に比較的小さな略球状の気泡が形成されるため、スライスにより形成される研磨パッドの研磨表面には、研磨加工時にスラリーを保持することができる開孔(開口)が形成される。
ウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドとしては、例えば、IC1000(登録商標、ニッタ・ハース社製)などの研磨パッドも知られている。また、30℃のtanδ30の値が0.1以下であり、且つ30℃のtanδ30と60℃のtanδ60との比(tanδ30/tanδ60)が1〜2である研磨パッドが知られている(特許文献1)。
特開2006−142439号公報
研磨パッドには、高いドレス処理性や、研磨傷の発生抑制などの優れた研磨特性が求められる。
しかしながら、IC1000(登録商標、ニッタ・ハース社製)の研磨パッドは、研磨傷(スクラッチ)が発生しやすいという問題点を有している。
また、特許文献1の研磨パッドは、tanδ30の値が低いためドレス処理性(ドレス処理時には研磨パッドの研磨表面は摩擦熱により25℃前後になる)には優れるものの、tanδ60がtanδ30よりも小さいため、研磨加工時に熱が発生すると(研磨加工時には研磨パッドの研磨表面は45℃〜65℃程度になる)、軟化しづらくなる。そのため、研磨時に局所的に異物(研磨屑や砥粒の凝集物)が発生すると、被研磨物に研磨傷が生じやすいという問題点が存在する。
このように従来の研磨パッドはドレス処理性と研磨傷の発生抑制のいずれかの点で劣っていた。従って、ドレス処理性と研磨傷の発生抑制のいずれにも優れる研磨パッドに対する高い需要が存在する。
本発明者は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドレス時の温度と研磨中の摩擦による発熱時の温度の違いを利用し、ドレス処理性にも研磨時の研磨傷発生抑制性にも優れる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
[1] ポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドであって、
測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))が、0.25以下であり、
前記ポリウレタン樹脂シートの、45〜65℃での貯蔵弾性率E’が、200MPa以下である、前記研磨パッド。
[2] 測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))と、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))との比であるtanδ(25℃)/tanδ(65℃)が、0.95以下である、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
前記ポリウレタン樹脂シートの、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))が0.12〜0.30の範囲内である、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] 少なくとも1種類の中空体を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5] 前記中空体が、平均粒径5〜60μmの第1の中空体と平均粒径70〜150μmの第2の中空体を含む、[4]に記載の研磨パッド。
[6] 少なくとも、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)と、硬化剤(D)と、中空体(E)とを混合して成形体成形用混合液を得る工程;及び
前記成形体成形用混合液からポリウレタン樹脂成形体を成形してポリウレタン樹脂シートを得る工程、を含み、
前記硬化剤(D)が、ポリアミン化合物(D−1)及びポリオール化合物(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種を含み、且つ
前記ポリウレタン樹脂シートの、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤(D)に存在する活性水素基の当量比であるR値が、0.60〜1.40となるように各成分を混合する、
[1]〜[5]のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法。
[7] 前記中空体(E)が、平均粒径5〜60μmの第1の中空体と平均粒径70〜150μmの第2の中空体とを含む、[6]に記載の研磨パッドの製造方法。
[8] ポリイソシアネート化合物(B)とポリオール化合物(C)とを反応させて、プレポリマとしての前記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)を得る工程を更に含み、且つ
前記ポリオール化合物(C)が、数平均分子量600〜1300のポリ(オキシテトラメチレン)グリコールを含む、[6]又は[7]に記載の研磨パッドの製造方法。
本発明によれば、ドレス処理性にも研磨傷の発生抑制にも優れる研磨パッドを得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドであって、測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))が、0.25以下であり、前記ポリウレタン樹脂シートの、45〜65℃での貯蔵弾性率E’が、200MPa以下であることを特徴とする。
前記ポリウレタン樹脂シートは、少なくとも2つ以上のウレタン結合を分子内に有するシート状の樹脂を意味する。前記ポリウレタン樹脂シートは、好ましくは、少なくとも2つ以上のウレタン結合と少なくとも2つ以上のウレア結合を分子内に有する。本発明のポリウレタン樹脂シート及び該樹脂シートを含む研磨パッドは、例えば、後述する本発明の製造方法に従って製造することが出来る。
また、ポリウレタン樹脂シートは、略球状の微小気泡を有することが好ましい。略球状とは、乾式法で成形される成形体に存在する通常の気泡形状(等方性があり、球状、楕円状、あるいはこれらに近い形状である)を意味する概念であり、湿式法で成形される成形体に含まれる気泡形状(異方性があり、研磨パッドの研磨表面から底部に向けて径が大きい構造を有する)とは明確に区別される。
(貯蔵弾性率E’及びtanδ)
本明細書及び特許請求の範囲において、貯蔵弾性率E’とは、正弦的に変化する応力をポリウレタン樹脂シートに加えた場合における、荷重サイクルの間に貯えられかつ回復されるエネルギーの尺度である。また、損失弾性率E”とは、荷重サイクルの間に失われる(消費される)エネルギーの尺度である。
本明細書及び特許請求の範囲において、tanδとは、貯蔵弾性率E’に対する損失弾性率E”の割合であり、ある温度条件での粘性の程度を表す指標である。
貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”は、それぞれ、JIS K7244に準じ、所定の温度(℃)、測定周波数10ラジアン/秒、引っ張りモードにおける、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”である。
本明細書及び特許請求の範囲において、上記所定の温度が25℃の場合の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”及びtanδを、それぞれ貯蔵弾性率E’(25℃)、損失弾性率E”(25℃)及びtanδ(25℃)と記載することがある。また、所定の温度が45℃、65℃の場合も同様に、貯蔵弾性率E’(45℃)、損失弾性率E”(45℃)及びtanδ(45℃)、並びに貯蔵弾性率E’(65℃)、損失弾性率E”(65℃)及びtanδ(65℃)と記載することがある。
本発明の研磨パッドは、測定周波数10ラジアン/秒、引張モードで測定したときにおける、ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))が、0.25以下である。tanδ(25℃)は、0.01〜0.25であることが好ましく、0.05〜0.23であることがより好ましく、0.08〜0.22であることがさらにより好ましい。tanδ(25℃)が上記範囲内であると、研磨パッドのドレス処理性を向上させることができる。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))が0.12〜0.30の範囲内であることが好ましい。tanδ(65℃)は、0.12〜0.25の範囲内であることがより好ましい。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの、45〜65℃での貯蔵弾性率E’が、200MPa以下である。45〜65℃での貯蔵弾性率E’は、1〜200MPaであることが好ましく、10〜180MPaであることがより好ましく、30〜165MPaであることがさらにより好ましい。
貯蔵弾性率E’(45℃)は、200MPa以下であり、1〜200MPaであることが好ましく、10〜180MPaであることがより好ましく、30〜165MPaであることがさらにより好ましく、50〜165MPaであることがさらにより好ましく、70〜165MPaであることがさらにより好ましい。
65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)が、200MPa以下であり、1〜200MPaであることが好ましく、10〜180MPaであることがより好ましく、30〜165MPaであることがさらにより好ましく、30〜130MPaであることがさらにより好ましく、30〜100MPaであることがさらにより好ましい。
45℃〜65℃の貯蔵弾性率E’が上記範囲内であると、研磨傷(スクラッチ)の発生を充分抑制することができる。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))と、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))との比であるtanδ(25℃)/tanδ(65℃)が、0.95以下であることが好ましい。tanδ(25℃)/tanδ(65℃)は、0.50〜0.95であることが好ましく、0.65〜0.95であることがより好ましい。
tanδ(25℃)/tanδ(65℃)が上記範囲内であると、研磨パッドのドレス処理性と研磨傷(スクラッチ)の発生抑制とを向上させることができる。
(中空体)
本明細書及び特許請求の範囲において、中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。
本発明の研磨パッドは、前記ポリウレタン樹脂シートが、中空体を有することが好ましい。中空体は、平均粒径5〜150μmであることが好ましく、10〜140μmであることがより好ましく、15〜130μmであることがさらにより好ましい。
中空体は、1種類の中空体を用いてもよく、2種類以上の中空体を組み合わせて用いてもよい。また、2種類以上の中空体を組み合わせて用いる場合、平均粒径5〜70μmの第1の中空体と、平均粒径70〜150μmの第2の中空体とを含むことが好ましい。第1の中空体の平均粒径は、10〜55μmであることがより好ましく、15〜50μmであることがさらにより好ましい。第2の中空体の平均粒径は、80〜140μmであることがより好ましく、90〜130μmであることがさらにより好ましい。
中空体を含むことにより、研磨加工時に発生する熱が研磨表面付近に集中し、研磨表面付近を軟質化させるため、研磨加工時に局所的に異物が発生しても研磨傷が生じにくくすることができる。
(厚み)
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの厚みに特に制限はないが、例えば、0.5〜3.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmの範囲で用いることができる。
(ポリウレタン樹脂の構成成分)
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリウレタン樹脂の構成成分とは、その後の重合反応によりポリウレタン樹脂を構成する鎖の一部として組み込まれるポリウレタン樹脂の原料成分を意味する。
本発明の研磨パッドのポリウレタン樹脂シートを構成するポリウレタン樹脂の構成成分としては、ポリウレタン樹脂の原料成分、すなわち、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、及び、任意成分としてのポリアミン成分が挙げられる。ポリイソシアネート成分としては、後述する(B)ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、(C)ポリオール化合物及び(D−2)プレポリマ合成後に用いられてもよいポリオール化合物が挙げられる。ポリアミン成分としては、(D−1)ポリアミン化合物が挙げられる。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートは、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として、数平均分子量600〜1300のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)を含むことが好ましい。ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールは、数平均分子量が700〜1100であることがより好ましく、800〜1050であることがさらにより好ましい。
本発明の研磨パッドは、シリコン、ハードディスク、ガラス基板、薄型液晶ディスプレイ用マザーガラス、半導体ウェハ、半導体デバイスなどの研磨、特に半導体デバイスの化学機械研磨(CMP)に好適に用いることが出来る。
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドは、例えば、本発明の製造方法により得ることができる。本発明の製造方法は、少なくとも、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)と、硬化剤(D)と、中空体(E)とを混合して成形体成形用混合液を得る工程(混合工程);及び、前記成形体成形用混合液からポリウレタン樹脂成形体を成形してポリウレタン樹脂シートを得る工程(成形体成形工程)、を含み、前記硬化剤(D)が、ポリアミン化合物(D−1)及びポリオール化合物(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種を含み、且つ前記ポリウレタン樹脂シートの、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤(D)に存在する活性水素基の当量比であるR値が、0.60〜1.40となるように各成分を混合することを特徴とする。
以下、各工程について説明する。
<混合工程>
混合工程では、ポリウレタン樹脂シートの原料として、少なくとも、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)、硬化剤(D)、中空体(E)を混合する。また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を併せて用いてもよい。
以下、各成分について説明する。
[(A)ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物]
プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)は、下記ポリイソシアネート化合物(B)とポリオール化合物(C)とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物(B)とポリオール化合物(C)とを反応させて合成したものを用いてもよい。前記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法及び条件を用いて付加重合反応すればよい。例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
[(B)ポリイソシアネート化合物]
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
ポリイソシアネート化合物(B)としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、中でも2,4−TDI、2,6−TDI、MDIがより好ましく、2,4−TDI、2,6−TDIが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物(B)は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
[(C)ポリオール化合物]
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物(C)しては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。PTMGの数平均分子量(Mn)は、600〜1300であることが好ましく、700〜1100であることがより好ましく、800〜1050であることがさらにより好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定することができる。なお、ポリウレタン樹脂からポリオール化合物の数平均分子量を測定する場合は、アミン分解等の常法により各成分を分解した後、GPCによって推定することもできる。
上記第1のポリオール化合物(C)は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
(プレポリマのNCO当量)
また、“(ポリイソシアネート化合物(B)の質量部+ポリオール化合物(C)の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物(B)1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物(B)の質量部/ポリイソシアネート化合物(B)の分子量)−(ポリオール化合物(C)1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物(C)の質量部/ポリオール化合物(C)の分子量)]”で求められるプレポリマのNCO当量は、NCO基1個当たりのPP(プレポリマ)の分子量を示す数値である。該NCO当量は、200〜800であることが好ましく、300〜700であることがより好ましく、400〜600であることがさらにより好ましい。
[(D)硬化剤]
本発明の製造方法では、混合工程において硬化剤(鎖伸長剤ともいう)をポリウレタン結合含有イソシアネート化合物などと混合させる。硬化剤を加えることにより、その後の成形体成形工程において、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の主鎖末端が硬化剤と結合してポリマー鎖を形成し、硬化する。
硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物(D−1)及び/又はポリオール化合物(D−2)を用いることが出来る。
((D−1)ポリアミン化合物)
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味する。
ポリアミン化合物(D−1)としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス−o−クロロアニリンともいう)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物(D−1)は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物(D−1)を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物(D−1)は、他の成分と混合し易くするため及び/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。
硬化剤(鎖伸長剤)として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
((D−2)プレポリマ合成後に用いられてもよいポリオール化合物)
また、本発明においては、前記プレポリマとしてのイソシアネート基含有化合物を形成するために用いられるポリオール化合物(C)とは別に、硬化剤としてポリオール化合物(D−2)を用いてもよい。
該ポリオール化合物(D−2)としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、プレポリマを形成するのに用いられるポリオール化合物(C)と同一であっても異なっていてもよい。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物(D−2)は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物(D−2)を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤(D)としては、ポリアミン化合物(D−1)を用いてもよく、ポリオール化合物(D−2)を用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。なかでも、ポリアミン化合物(D−1)を用いることが好ましい。
(R値)
本発明の研磨パッドの製造方法では、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤(D)に存在する活性水素基(アミノ基及び水酸基)の当量比であるR値が、0.60〜1.40となるように各成分を混合する。R値は、0.65〜0.1.30が好ましく、0.70〜1.20がより好ましい。
[(E)中空体]
本発明の研磨パッド製造方法においては、中空体(E)を用いて、ポリウレタン樹脂成形体内部に気泡を内包させる。
中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。微小球体には、球状、楕円状、及びこれらに近い形状のものが含まれる。中空体の例としては、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体を、加熱膨張させたものが挙げられる。
前記ポリマー殻としては、特開昭57−137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
本発明の研磨パッドの製造方法では、平均粒径5〜150μmの中空体(E)を用いることが好ましく、10〜140μmの中空体(E)を用いることがより好ましく、15〜130μmの中空体(E)を用いることがさらにより好ましい。
また、2種類の中空体を用いる場合、第1の中空体は、平均粒径5〜60μmであることが好ましく、10〜55μmであることがより好ましく、15〜50μmであることがさらにより好ましい。第2の中空体は、平均粒径70〜150μmであることが好ましく、80〜140μmであることがより好ましく、90〜130μmであることがさらにより好ましい。
第1の中空体の例としては、EXPANCEL461DE20d70(エクスパンセル社製)(塩化ビニリデン−アクリロニトリル系のシェル組成で、平均粒径が15〜25μm、密度が70±6kg/m3である膨張済み微小中空球状体)、EXPANCEL551DE20d42(エクスパンセル社製)(塩化ビニリデン−アクリロニトリル系のシェル組成で、平均粒径が30〜50μm、密度が42±4kg/m3である膨張済み微小中空球状体)が挙げられる。
第2の中空体の例としては、マツモトマイクロスフィアF−80DE(松本油脂製薬(株)製)(アクリロニトリル系のシェル組成で、平均粒径が90〜130μm、密度25±5kg/m3である、膨張済みの微小中空球状体)が挙げられる。
なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)により測定することができる。
中空体(E)は、プレポリマ1000質量部あたり10〜40質量部含むことが好ましく、15〜30質量部含むことがより好ましい。
また、中空体(E)が第1の中空体と第2の中空体を有する場合には、第1の中空体と第2の中空体との質量比は、10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜90:10がより好ましく、40:60〜90:10がさらにより好ましく、50:50〜80:20がさらにより好ましい。
また、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来使用されている発泡剤を、前記微小中空球体と併用してもよく、下記混合工程中に前記各成分に対して非反応性の気体を吹き込んでもよい。該発泡剤としては、水や、炭素数5又は6の炭化水素を主成分とする発泡剤が挙げられる。該炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサンなどの鎖状炭化水素や、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素が挙げられる。
また、前記各成分に加えて、公知の整泡剤、難燃剤、着色剤、可塑剤等を添加してもよい。
混合工程では、少なくとも、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)、硬化剤(D)及び中空体(E)を、混合機内に供給して攪拌・混合する。混合順序に特に制限はないが、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)と中空体(E)とを混合した混合液と、硬化剤(D)及び必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹拌することが好ましい。このようにして、成形体成形用の混合液が調製される。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
例えば、前記中空体(E)を含む40〜80℃に加温したプレポリマ(ポリウレタン結合含有イソシアネート)溶液と、80〜130℃に加温した硬化剤(D)とを混合機に投入し、攪拌することが出来る。攪拌時間は混合機の歯数や回転数、クリアランス等によって適宜調整するが、例えば0.5〜4秒である。
<成形体成形工程>
成形体成形工程では、前記混合工程で調製された成形体成形用混合液を50〜100℃の型枠内に流し込み、硬化させることによりポリウレタン樹脂を成形する。このとき、プレポリマと硬化剤が反応してポリウレタン樹脂を形成することにより、中空体が前記樹脂中に略均一に分散された状態で該混合液は硬化する。これにより、略球状の気泡を多数含むポリウレタン樹脂成形体が形成される。
前記成形体成形工程により得られたポリウレタン樹脂成形体は、その後シート状にスライスされてポリウレタン樹脂シートを形成する。スライスされることにより、シート表面に開孔が設けられることになる。このとき、耐摩耗性に優れ目詰まりしにくい研磨表面の開孔を形成するために、80〜120℃で1時間〜10時間程度エイジングしてもよい。
このようにして得られたポリウレタン樹脂シートは、その後、研磨面とは反対側の面に両面テープが貼り付けられ、所定形状、好ましくは円板状にカットされて、本発明の研磨パッドとして完成する。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートのみからなる単層構造であってもよく、ポリウレタン樹脂シート(研磨層)の研磨面とは反対側の面に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。他の層の特性は特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂シートの研磨面とは反対側の面にポリウレタン樹脂シートよりも軟らかい(A硬度又はD硬度の小さい)層が張り合わされていることが好ましい。ポリウレタン樹脂シートよりも軟らかい層が設けられることにより、研磨平坦性が更に向上する。
複層構造を有する場合には、複数の層同士を両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。
さらに、本発明の研磨パッドは、必要に応じて、ポリウレタン樹脂シートの研磨面及び/又は研磨面とは反対側の面を研削処理したり、溝加工やエンボス加工や穴加工(パンチング加工)を研磨面に施してもよく、基材及び/又は粘着層をポリウレタン樹脂シートと張り合わせてもよく、光透過部を備えてもよい。
研削処理の方法に特に制限はなく、公知の方法により研削することができる。具体的には、サンドペーパーによる研削が挙げられる。
溝加工及びエンボス加工の形状に特に制限はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型などの形状が挙げられる。
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドをポリウレタン樹脂シートの研磨面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、研磨剤スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ハードディスク、ガラス基板、薄型ディスプレイ用マザーガラス、半導体ウェハ、半導体デバイスなどが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスを化学機械研磨(CMP)加工するのに好適に用いられる。
上記の通り、本発明の研磨パッドは、ドレス処理性にも研磨傷の発生抑制にも優れる。その理由は明らかではないが、次のように推測される。すなわち、ドレス処理時の温度(約25℃)では、研磨パッドが硬く十分にドレッシングが行われる一方、研磨加工時の温度(約45℃〜65℃)では、研磨パッドが軟質化し、局所的に異物(研磨屑や砥粒の凝集物)が発生しても被研磨物が傷つきにくい。そのため、本発明の研磨パッドは、ドレス処理性にも研磨傷の発生抑制にも優れるものと考えられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
各実施例及び比較例並びに表1〜2において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
また、表1〜2の各略号は以下のものを意味する。
NCO当量とは、“(ポリイソシアネート化合物(B)の質量(部)+ポリオール化合物(C)の質量(部))/[(ポリイソシアネート化合物(B)1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物(B)の質量(部)/ポリイソシアネート化合物(B)の分子量)−(ポリオール化合物(C)1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物(C)の質量(部)/ポリオール化合物(C)の分子量)]”で求められるNCO基1個当たりのプレポリマ(PP)の分子量を示す数値である。
R値とは、上述したように、プレポリマ中の末端イソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基及び水酸基)の当量比を示す数値である。
[実施例1]
2,4−トリレンジイソシアネート770部を分子量850のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)1000部とジエチレングリコール155部の混合グリコールに反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマを得た。得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマ1000部に、殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された粒子の大きさが15〜25μmの膨脹させた微小中空球状体(商品名:EXPANCEL 461 DE20d70(エクスパンセル社製))12部と、殻部分がアクリロニトリル系からなり殻内にペンタンガスが内包された粒子の大きさが90〜130μmの膨脹させた微小中空球状体(商品名:マツモトマイクロスフェアF−80DE(松本油脂製薬(株)製))12部を添加混合し、混合液を得た。得られた混合液を第1液タンクに仕込み、80℃で保温した。次に、第1液とは別途に、硬化剤としての3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(商品名:パンデックスE(DIC社製))を、調整し、第2液タンク内で120℃で保温した。第1液タンク,第2液タンクの夫々の液体を、注入口を2つ具備した混合機に夫々の注入口からプレポリマのイソシアネートと硬化剤のアミンの当量比を表わすR値が0.70となるように注入した。注入した2液を混合攪拌しながら100℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、110℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて130℃で2時間二次硬化し、ウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を25℃まで放冷した後に、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから1.3mmの厚みにスライスし、研磨パッドを得た。
[実施例2〜5]
R値を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で作製し、研磨パッドを得た。
Figure 2016196057
[実施例6]
2,4−トリレンジイソシアネート770部を分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)1242部とジエチレングリコール69部の混合グリコールに反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマを得た。得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマ1000部に、殻部分がアクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された粒子の大きさが30〜50μmの膨脹させた微小中空球状体(商品名:EXPANCEL 551 DE20d42(エクスパンセル社製))18部と、殻部分がアクリロニトリル系からなり殻内にペンタンガスが内包された粒子の大きさが90〜130μmの膨脹させた微小中空球状体(商品名:マツモトマイクロスフェアF−80DE(松本油脂製薬(株)製))4.5部とを添加混合し、混合液を得た。得られた混合液を第1液タンクに仕込み、80℃で保温した。次に、第1液とは別途に、硬化剤としての3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(DIC社製、商品名:パンデックスE)および3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンとポリエーテルポリオールの混合硬化剤(DIC社製、商品名:パンデックスE50)を1:1の比で混合したものを調整し、第2液タンクに仕込み120℃で保温した。第1液タンク,第2液タンクの夫々の液体を、注入口を2つ具備した混合機に夫々の注入口からR値が0.85の比率で注入した。注入した2液を混合攪拌しながら80℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、型温80℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で5時間二次硬化し、ウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を1.3mmの厚みにスライスし、研磨パッドを得た。
[実施例7〜9]
R値を表2の通り変更した以外は、実施例6と同様の方法で作製し、研磨パッドを得た。
Figure 2016196057
[比較例1]
比較例1では、ニッタ・ハース社製IC1000研磨パッドを用いた。
[比較例2]
プレポリマとして日本ポリウレタン社製「DC−6912」(TDI系プレポリマ、NCO当量540)1000部を第1液タンクに仕込み、80℃で保温した。次に、第1液とは別途に、硬化剤としてのDIC社製「パンデックスE50」274部を第2液タンクに仕込み120℃で保温した。さらに、第3液タンクには硬化剤としてのDIC社製「ハイプロックスTG−3000」(分子量3000のポリプロピレングリコール)42部と発泡剤としての水12部とを混合し50℃で保温した。第1液タンク,第2液タンクおよび第3液タンクの夫々の液体を、注入口を3つ具備した混合機に夫々の注入口から前記部数の比率で注入した。注入した3液を混合攪拌しながら100℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、型温度100℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて130℃で5時間二次硬化し、ウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を1.3mmの厚みにスライスし、研磨パッドを得た。
<物性>
上記の各実施例及び比較例について、ティー・エイ・インスツルメント社製のRSAIIIにより、初期荷重10〜700g、歪範囲0.1〜1.0%、測定周波数10ラジアン/秒、昇温速度3℃/分にて20℃から100℃まで昇温させたときの25℃、45℃及び65℃での試験片5mm×10mmにおける貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”、tanδを測定した。細かい条件は以下の通りである。
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン RSAIII
試験方向:引っ張り
試験片:5×10mm
荷重:200g
歪:0.1%
周波数:10ラジアン/秒(=1.59Hz)
温度:20〜100℃
試料厚み:1.3mm
その結果を表3に示す。
Figure 2016196057
<<評価試験>>
<1.ドレス処理試験>
各実施例・比較例について、以下の条件でドレス処理・評価を行った。
(ドレス処理条件)
・使用研磨機::荏原製作所社製、F−REX300
・回転数:(定盤)80rpm、(ドレッサー)36rpm
・圧力:30N
・研磨剤:水
・研磨剤温度:20℃
・研磨剤吐出量:500ml/min
・研磨時間:30分
・ドレッサー:住友3M A188 ダイヤドレス(外径4.25inch)
・アトマイザー:不使用
(ドレス性評価)
ドレス処理前後の研磨面をレーザーCCDで撮像した。レーザーCCD画像はKEYENCE社製VK−X200(倍率:対眼×10 接眼×20、測定ピッチ:6μm、明るさ:6207)を用いた。その後、撮像画像を二値化処理して、ドレス面の増加量を測定した。二値化処理は解析ソフトWinRoof ver 6.5(測定範囲:1mm×1.4mm、メディアン:フィルター5*5、コントラスト:75、自動二値化:判別分析法 しきい値88)を用いた。
ドレス処理後のドレス面増加量がドレス処理前のドレス面と比べて、10%以下の研磨パッドはドレス性が悪い(×)、10%超過から30%未満の研磨パッドはドレス性が不十分(△)、30%以上の研磨パッドはドレス性が良好(○)と判断した。その結果を表3に示す。
<2.研磨試験(スクラッチの有無)>
各実施例及び比較例の研磨パッドについて、以下の研磨条件で研磨加工を行い、研磨傷(スクラッチ)の評価を行った。被研磨物としては、TEOS膜を用いた。
25枚の基板を研磨し、研磨加工後の21〜25枚目の基板5枚について、ウェハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP1DLS)の高感度測定モードにて測定し、基板表面におけるスクラッチの有無を、スクラッチが観察されなかったものを○、スクラッチが観察されたものを×として評価した。その結果を表3に示す。
なお、上記試験で用いた研磨条件は以下の通りである。
・使用研磨機:荏原製作所製、F−REX300
・研磨パッド径:740φ
・回転数:(定盤)70rpm、(トップリング)71rpm
・研磨圧力:3.5psi
・研磨剤:キャボット社製 SS25(SS25原液:純水=1:1の混合液を使用)
・研磨剤温度:20℃
・研磨剤吐出量:200ml/min
・使用ワーク(被研磨物):TEOS膜 12インチφシリコンウェハ上にテトラエトキシシランをPECVDで絶縁膜1μmの厚さになるように形成した基板
・研磨時間:60sec
<試験結果>
ドレス処理試験の結果、実施例1〜9の研磨パッドは、tanδ(25℃)の値が0.25以下であり、ドレス処理後のドレス面の増加量が30%以上と高かった。一方、比較例2の研磨パッドは、tanδ(25℃)の値が高く、ドレス性が悪かった。
また、研磨試験の結果、実施例1〜9の研磨パッドは、E’(45℃)及びE’(65℃)の値が200MPa以下であり、スクラッチの発生が見られなかった。一方、比較例1の研磨パッドは、E’(45℃)及びE’(65℃)の値が高く、スクラッチの発生が確認された。
従って、本発明の研磨パッドは、tanδ(25℃)、E’(45℃)及びE’(65℃)が所定の範囲内であるため、ドレス性にもスクラッチの発生抑制にも優れていることが判った。
本発明の研磨パッドは、ドレス処理性にも研磨傷の発生抑制にも優れる。よって、本発明の研磨パッド及びその製造方法は、産業上の利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. ポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドであって、
    測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
    前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))が、0.25以下であり、
    前記ポリウレタン樹脂シートの、45〜65℃での貯蔵弾性率E’が、200MPa以下である、前記研磨パッド。
  2. 測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
    前記ポリウレタン樹脂シートの、25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)に対する損失弾性率E”(25℃)の割合(tanδ(25℃))と、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))との比であるtanδ(25℃)/tanδ(65℃)が、0.95以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 測定周波数10ラジアン/秒および引張モードで測定したときにおいて、
    前記ポリウレタン樹脂シートの、65℃での貯蔵弾性率E’(65℃)に対する損失弾性率E”(65℃)の割合(tanδ(65℃))が0.12〜0.30の範囲内である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 少なくとも1種類の中空体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  5. 前記中空体が、平均粒径5〜60μmの第1の中空体と平均粒径70〜150μmの第2の中空体を含む、請求項4に記載の研磨パッド。
  6. 少なくとも、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)と、硬化剤(D)と、中空体(E)とを混合して成形体成形用混合液を得る工程;及び
    前記成形体成形用混合液からポリウレタン樹脂成形体を成形してポリウレタン樹脂シートを得る工程、を含み、
    前記硬化剤(D)が、ポリアミン化合物(D−1)及びポリオール化合物(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種を含み、且つ
    前記ポリウレタン樹脂シートの、プレポリマとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤(D)に存在する活性水素基の当量比であるR値が、0.60〜1.40となるように各成分を混合する、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
  7. 前記中空体(E)が、平均粒径5〜60μmの第1の中空体と平均粒径70〜150μmの第2の中空体とを含む、請求項6に記載の研磨パッドの製造方法。
  8. ポリイソシアネート化合物(B)とポリオール化合物(C)とを反応させて、プレポリマとしての前記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物(A)を得る工程を更に含み、且つ
    前記ポリオール化合物(C)が、数平均分子量600〜1300のポリ(オキシテトラメチレン)グリコールを含む、請求項6又は7に記載の研磨パッドの製造方法。
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