JP2016195101A - 燃料電池用部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属基材11の表面の一部分にCoおよびMn成分を含有する保護膜材料層12aを湿式成膜する成膜工程、低酸素分圧雰囲気下において保護膜材料層12aおよび金属基材11を焼結して金属基材11に保護膜12を形成する焼結工程、保護膜12の表面に、コバルト補充層41を設けるコバルト補充層形成工程、コバルト補充層41と他セル31との間に接合層42を形成する接合層形成工程、金属基材11、保護膜12、接合層42、他セル31をともに焼結して接合するスタッキング工程を順に行う。
【選択図】図4
Description
そして、このようなSOFC用セルは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。
上記目的を達成するための本発明の燃料電池用部材の製造方法の特徴構成は、
固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCoおよびMn成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料層を湿式成膜する成膜工程、
前記保護膜材料層および前記金属基材を焼結して前記金属基材に保護膜を形成する焼結工程、
前記保護膜に対して接合材からなる接合層を設けて他セルを接合する接合工程、
前記金属基材、前記保護膜、前記接合層、前記他セルをともに焼結して接合するスタッキング工程、を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
前記焼結工程は、低酸素分圧雰囲気下において前記保護膜材料層および前記金属基材を焼結して前記金属基材に前記保護膜を形成する工程であり、
前記接合工程は、前記保護膜と前記接合層との間に、金属コバルトを含有してなるコバルト補充層を設けた状態で、前記保護膜に対して前記接合層にて前記他セルを接合する工程である点にある。
たとえば、SOFCに用いられる金属基材の一方面に保護膜を形成するとともに、保護膜に空気極を接合形成してある平板形燃料電池セルは、スタック構造の燃料電池セルを構成する際に、金属基材の一方面に保護膜を形成して、SOFCの運転に伴い金属基材が加熱されても、金属基材から揮発、飛散する成分が空気極に悪影響を与えないように保護膜を介在させた状態で、空気極、固体電解質、燃料極の積層構造を形成することができる。
また、金属基材の他の部分に上記積層された燃料極を接続して積層することによって、燃料極と金属基材とを直接導電する形態で接続することができる。また、SOFCに用いられる金属基材には、他にも部分的に保護膜を形成する部材があり、本発明は、金属基材の形状によらず、また、上記保護膜に空気極を接合形成してある燃料電池セルに限らず、いわゆる燃料と空気を隔てるセパレータとしての役割を果たすために使われる部材、すなわち片側が燃料雰囲気、反対側が空気雰囲気で使われる部材等、金属基材の一部分に保護膜を形成してなる燃料電池用部材一般にも適用できる。
また、前記接合工程が、前記保護膜の表面に、金属コバルトを含有してなるコバルト補充層を設けるコバルト補充層形成工程と、前記コバルト補充層を形成してなる前記保護膜と他セルとの間に前記接合層を形成する接合層形成工程とを含むものとすることができる。
金属コバルトを含有するコバルト補充層としては、接合層とは、別途調整したものとしてもよいし、接合層を調整する際に、保護膜材料層の金属基材から離間した表面側に配置し、同時に熱処理をおこなってもよい。
前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製であってもよい。
金属基材としては、耐熱性が高くSOFCの運転環境に耐える材料が好適と考えられ、オーステナイト系、フェライト系等のステンレス鋼や、インコネル等のNi基合金が好ましく、中でもフェライト系ステンレス鋼はSOFCの他の構成部材との熱膨張率の整合性や耐熱性に優れる。ただし、フェライト系ステンレス鋼は、Cr成分を含んでおり、このCr成分の飛散を防止するために保護膜を形成して空気極を接合することが好ましいので、本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しかつ保護膜の変質を抑制することができ、特にフェライト系ステンレス鋼製金属基材の利用機会を増やすことにつながり、高性能のSOFCセルを安価に提供するうえで有利である。
前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物とすることができる。
前記保護膜としては、Co−Mn系スピネル酸化物が、高導電性かつSOFCセル材料と熱膨張係数が一致、Cr成分の飛散抑制に特に有効であることが知られている。そのため、本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しかつ保護膜の変質を抑制することができ、金属基材からのCr飛散防止をより一層抑制することができるようになるので、高性能のSOFCセルを提供するうえで有利である。
前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.5O4、Co2MnO4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであれば特に好ましい。
Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物として、さらに具体的には、Zn(Co,Mn)O4、Co1.5Mn1.5O4、CoMn2O4、MnCo2O4などを主成分として含有するものが好適に用いられる。その中でも、前記無機酸化物粒子として、Co1.5Mn1.5O4、Co2MnO4は高導電性かつSOFCセル材料と熱膨張係数が一致しており、Co−Mn系スピネル酸化物のなかでもCr成分の飛散抑制に特に有効である。
前記焼結工程は、500℃〜1050℃で行うことができる。
前記焼結工程における焼結温度は、金属基材や、保護膜の組成によって異なるが、概して500℃以上であれば、保護膜材料層に必要的に適宜添加されるアクリル系バインダ等を分解消失させることができる。一方、あまり高温になると、金属基材の表面に高抵抗膜が形成されやすくなり劣化が進むおそれが生じることや、保護膜材料が金属基材から剥離しやすくなるなどの問題が生じやすくなることから1050℃以下とすることが好ましい。
また、本発明の燃料電池用部材の特徴構成は、燃料電池における600℃〜1000℃の温度範囲で使用される点にある。
上記構成によると、保護膜は、使用環境において、スピネル酸化物構造を再生し、緻密でかつ十分な導電性を確保することができるため、燃料電池用部材として発電能力を高く維持することができるものとして利用できる。
本発明にかかる燃料電池用部材としてのSOFC用セル間接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金からなる金属基材11としてのセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル間接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。なお、42は接合材42aからなる接合層42であり、セル間接続部材1と空気極31との間の電気的な接続を担保するために使用される。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板形SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板形SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
セル間接続部材1は、図1、図3に示すように、例えば、フェライト系ステンレス合金製のセル間接続部材用の金属基材11(以下単に金属基材11と呼ぶ場合もある)の一方側の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。基材11の表面には、酸化被膜13が形成されている。
保護膜12は、図3に示すように、たとえば、Crを22%、Mnを約0.1〜0.5%含むフェライト系ステンレス鋼等からなる金属基材11の一方側表面に、保護膜材料層12aとしての電着塗膜を形成する電着工程(成膜工程の一例)を行い、保護膜材料層12aとしての電着塗膜を金属基材11とともに焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。
保護膜材料層12aは、たとえば、無機酸化物粒子からなる保護膜材料としてのZnCoMnO4、Co1.5Mn1.5O4、CoMn2O4、MnCo2O4等のCo−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物と、アクリル系バインダとしてのポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(2:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により保護膜材料層12aとしての電着塗膜を形成する電着工程(成膜工程の一例)を行うことにより形成される。
成膜工程では、形状が断面長方形の単純形状である金属基材11の試験片に、必要に応じて脱脂処理、酸洗処理、電解研磨などを施した後、保護膜材料の混合液に浸漬し、通電を行うことによって、金属基材11表面に未硬化の保護膜材料層12aとしての電着塗膜が形成される。
得られた保護膜材料層12aは金属基材11とともに低酸素分圧雰囲気下において焼結される。
電着塗装を行うに先立って、各電極には以下の1〜7を順に行う前処理を行った。
1. 電解洗浄剤による陰極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
2. 水洗
3. 電解洗浄剤による陽極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
4. 水洗
5. 酸中和(硝酸200mL/L)
6. 水洗
7. 純水洗
脱脂処理は、たとえば、金属基材11の表面にアルカリ水溶液を供給することにより行われる。アルカリ水溶液の供給は、たとえば、金属基材11にアルカリ水溶液を噴霧するかまたは金属基材11をアルカリ水溶液に浸漬させることにより行われる。アルカリとしては金属の脱脂に常用されるものを使用でき、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩などが挙げられる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、たとえば、処理する金属の種類、金属基材11の汚れの度合いなどに応じて適宜決定される。さらにアルカリ水溶液には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤の適量が含まれていてもよい。脱脂は、20〜50℃程度の温度下(アルカリ水溶液の液温)に行われ、1〜5分程度で終了する。
1,4ジオキサン50部を、還流冷却器と温度計と撹拌機と滴下ロートとを付けた4つ口フラスコ中で約82℃に加熱し、撹拌しながら滴下ロートから下記表1に示す混合物と1,4ジオキサン50部を3時間かけて連続滴下する。
滴下完了後同温度でさらに3時間反応を続行して、アニオン性をもつアクリル樹脂バインダ(固形分50%)を合成する。得られたアニオン型樹脂のTgは、−27℃(計算上の推定値)、分子量MW12万〜15万であった。
シラン系カップリング剤として、イソシアネート官能性シラン(OCN-C3H6-Si(OC2H5)3)を用い、この溶剤nMP(nメチルピロリドン)3質量部と(1)で作成したアニオン型樹脂120質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)60部を混ぜた後、スズ系触媒(DBTDL0.2部)を添加し60℃で1時間反応させることにより、シラン系カップリング剤のイソシアネート基とアニオン型樹脂のOH基が反応し、シラン系カップリング剤がアニオン型樹脂に付加する。(表2第一成分)
さらに、トリエチルアミン1.4質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)10質量部と消泡剤(サーフィノール104)10質量部を添加し攪拌する。
均一混合した後、イオン交換水500質量部を少しずつ加えて、Co2MnO4微粒子とアニオン型樹脂との混合液を作成する。24時間攪拌し、シラン系カップリング剤の加水分解反応を促したのち、イオン交換処理で不純物を除去し、pH9.0±0.2浴電導度200±50μS/cmの混合液が得られる。得られた分散液は、Co2MnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)の混合液として用いられる。
上記(3−2)で作成したアニオン型分散剤組成物をその中の分散剤粒子が、電着液1リットル当り100gになるように分散させ、25℃の溶液において、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)下で電着塗装を行った。
なお、電着塗装は下記のようにして行った。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。
電着塗装条件も特に制限されず、金属基材11である金属の種類、混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(混合液温度)10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、混合液の液温10〜45℃とすればよい。
混合液としてCo2MnO4微粒子(粒子径0.5μm):樹脂=2:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、5%H2/N2ガスを流通させた酸素分圧1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下の低酸素分圧雰囲気下で、電気炉中において500℃〜1050℃程度に保持してアクリル樹脂を分解消失させる。具体的には、950℃で2hr保持してアクリル樹脂を分解消失させるとともに、Co2MnO4粒子の焼結および金属基材11の試験片の表面との反応を起こさせる焼結工程を行う。その結果、金属基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12を形成した(図4(a)参照)。得られた保護膜12を5%H2/N2ガスを流通する条件下で、室温まで冷却して取り出したところ、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
図より、保護膜12のうち、金属基材11に近い表面部分にコバルト成分が高濃度に含有され、金属基材11から離間した表面側にマンガン成分が高濃度に含有されていることがわかる。また、保護膜12の金属基材11から離間した表面側にコバルト補充層41として供給されたコバルトは、マンガン成分と反応してCo−Mn系スピネル構造を再生するのに寄与しているものと考えられる。
保護膜12に対して接合材42aからなる接合層42を設けて隣接する単セル3に設けられた空気極31との間を接合する接合工程を行う。
接合工程は、前記保護膜12の表面に、金属コバルトを含有してなるコバルト補充層41を設けるコバルト補充層形成工程と、前記コバルト補充層41を形成してなる前記保護膜12と他セルとして隣接する単セル3の空気極31との間に前記接合層42を形成する接合層形成工程とを順に行う。
コバルト補充層41は、定法に従い、金属コバルト粒子41aを主成分として、グリセリン等の溶剤41bに分散させてペースト状にした金属コバルトペーストを、低酸素分圧で焼成した保護膜12の表面に塗布したのち、溶剤41bを揮発除去して塗膜状に形成する(図4(b)参照)。
具体的には、コバルトペーストとして、金属コバルト粒子41aを出発原料とし、グリセリンを溶剤41bとして重量比1:1で混合したものをコバルトペーストとして用いた。金属基材11の表面に均一な厚み0.5mmのコバルトペーストを塗布し、室温で乾燥しコバルト補充層41を形成することができた。
得られたコバルト補充層41の表面側に、接合材42aを主成分として、グリセリン等の溶剤42bに分散させてペースト状にした接合材ペーストをからなる接合層42を設ける。(図4(c)参照)接合材42aとしては、空気極31と類似のペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物を利用することができる。具体的に接合層42を構成する接合材42aとしては、La,Sr,Pr,Sm,Fe,Co,Mn,およびNiから選ばれる金属を含むペロブスカイト型酸化物を主材とする、空気極31と近似する組成の導電性セラミックス材料が好適に用いられる。
コバルト補充層41を室温乾燥後、コバルト補充層41の表面に接合材ペーストを塗布し、接合層42を形成した。前記接合層42がペースト状に維持された状態で前記接合層42に、他セルとしての隣接する単セル3の空気極31が接合される形態で、複数の単セル3が接続された状態とされる。
この複数の単セル3は、全体として焼結されて、セルスタック(SOFCセル3)とされる。セルCの焼結は、を1000℃〜1150℃で2時間の条件で行われ、これにより接合層42が焼結されるとともに、複数の単セル3が一体に接合される(図4(d)参照)。
この工程はスタックの構造、設計思想により異なるが、500℃以上、1050℃以下で行われることが一般的である(1050℃を超えると合金のセル間接続部材1の劣化が起きてしまう)。そこで、得られたセル間接続部材1を大気中800℃の環境下に置き、保護膜12の抵抗変化を測定したところ、図7のようになった。比較として上記実施形態におけるセル間接続部材1(実施例)にかえ、保護膜12の表面側にコバルト補充層41を設けずに、焼結後の厚さが同程度の保護膜12に形成したもの(比較例)についても同様に保護膜12の抵抗変化を測定した。
上記実施形態において、無機酸化物粒子としてCo2MnO4を用いたが、Co1.5Mn1.5O4を用いても同様に燃料電池用部材の使用環境において、焼結により初期に保護膜12中に生成するMnOをCo−Mn系スピネル酸化物構造に変換することができることが実験的に明らかになっており、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物であれば、同様に緻密かつ低抵抗で安定な保護膜12としてCr成分の飛散を抑制できる緻密な保護膜12として使用できるものと考えられる。このようなCo−Mn系スピネル酸化物としては、Zn(Co,Mn)O4、Co1.5Mn1.5O4、CoMn2O4、MnCo2O4などを主成分として含有するものが好適に用いられる。
なお、下記組成の金属コバルト分散液を用いて保護膜12にディップコートによりコバルト補充層41を形成し、焼結した保護膜12を作成した場合、保護膜12の金属基材11近傍における初期の抵抗値が約90mΩcm2程度となり、ペーストを塗布した上記実施例(125.6mΩcm2)に優る低い抵抗値を示すことが明らかとなっている。
図9は、図7に示した実施例および比較例の抵抗変化の測定を、4000時間を越えて行った結果を示すグラフである。図9には、図7の測定に用いたセル間接続部材1と同一サンプルの結果を「実施例第1サンプル」「比較例サンプル」として示し、上述の別実施例のサンプルについての結果を「実施例第2サンプル」として併せて示している。
上述した長期の抵抗変化の測定を行った後、実施例第2サンプルと比較例サンプルを切断し、断面をSEM(電子顕微鏡)で観察した。実施例第2サンプルの結果を図10に、比較例サンプルの結果を図11に示す。図10に示す実施例第2サンプルでは、基材11と保護膜12との間にクラック等は見られず、セル間接続部材1を長期に渡って使用しても基材11と保護膜12との間の接合が強固に保たれることが示された。なおコバルト補充層41と接合層42との間の境界は、判別不可能な状態となっており、コバルト補充層41と接合層42との間で元素拡散が生じていることが伺われる。図11の比較例サンプルと図10の実施例第2サンプルとの間で酸化被膜13について比較すると、比較例サンプルに比べて実施例第2サンプルの方が酸化被膜13が薄い。酸化被膜13が薄い理由はコバルト補充層41から保護膜12側にコバルトが元素拡散しており、保護膜12をより緻密な膜として形成させたことから、酸化被膜13の成長を抑制しているためと考えられる。酸化被膜13が薄いことにより電気抵抗は小さくなるから、実施例第2サンプルの方がセル間接続部材1として好適であるといえる。
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :金属基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :セル
Claims (7)
- 固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCoおよびMn成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料層を湿式成膜する成膜工程、
前記保護膜材料層および前記金属基材を焼結して前記金属基材に保護膜を形成する焼結工程、
前記保護膜に対して接合材からなる接合層を設けて他セルを接合する接合工程、
前記金属基材、前記保護膜、前記接合層、前記他セルをともに焼結して接合するスタッキング工程、を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
前記焼結工程は、低酸素分圧雰囲気下において前記保護膜材料層および前記金属基材を焼結して前記金属基材に前記保護膜を形成する工程であり、
前記接合工程は、前記保護膜と前記接合層との間に、金属コバルトを含有してなるコバルト補充層を設けた状態で、前記保護膜に対して前記接合層にて前記他セルを接合する工程である燃料電池用部材の製造方法。 - 前記接合工程が、前記保護膜の表面に、金属コバルトを含有してなるコバルト補充層を設けるコバルト補充層形成工程と、前記コバルト補充層を形成してなる前記保護膜と他セルとの間に前記接合層を形成する接合層形成工程とを含む請求項1に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製である請求項1または2に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.5O4およびCo2MnO4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項4に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記焼結工程を、500℃〜1050℃で行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法により得られた燃料電池用部材であって、600℃〜1000℃の酸素雰囲気環境で使用される燃料電池用部材。
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