JP7080060B2 - セル間接続部材、及び、固体酸化物形燃料電池用セル、及び、固体酸化物形燃料電池、及び、sofcモノジェネレーションシステム、及び、sofcコージェネレーションシステム - Google Patents
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Description
前記金属基材の表面に形成された、Cr2O3を主成分とし、TiO2を含む酸化物被膜と、
前記酸化物被膜上に形成された、Zn,Co,Mnのうちの少なくとも2種類以上を含む導電性セラミックス材料によって構成される導電性コーティング膜とを備え、
前記酸化物被膜でのTiの含有率が0.9質量%以上であり、
前記合金部材でのTiの含有率が0.20質量%以上である点にある。
つまり本特徴構成によれば、セル間接続部材が、Fe及びCrを主成分とし、Ti,Si,Alを含む合金部材で構成される金属基材と、金属基材の表面に形成された、Cr2O3を主成分とし、TiO2を含む酸化物被膜と、酸化物被膜上に形成された、Zn,Co,Mnのうちの少なくとも2種類以上を含む導電性セラミックス材料によって構成される導電性コーティング膜とを備えることにより、セル間接続部材の電気抵抗を低減して、発電性能の高い固体酸化物形燃料電池用セルを実現できる。
図1は固体酸化物形燃料電池用セルの概略図である。図2は固体酸化物形燃料電池の作動時の反応の説明図である。図1及び図2に示すように、SOFC用セルCは、酸素イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸素イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金または酸化物からなるセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31側の溝2が空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能する。燃料極32とセル間接続部材1が密着配置されることで、燃料極32側の上記溝2が燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。
図3は、セル間接続部材の構造を示す断面図である。セル間接続部材1は、金属基材11と、その金属基材11の表面に形成された酸化物被膜13と、その酸化物被膜13上に形成された保護膜12とを備えて構成される。そして、セル間接続部材1が、接着層4を間に挟んで単セル3と接合されている。このように、金属基材11の表面を覆うように保護膜12を設けることでCr被毒を抑制でき、固体酸化物形燃料電池用セルCとして好適である。
金属基材11の表面には、酸化物被膜13が形成される。酸化物被膜13は、周囲雰囲気中の酸素によって金属基材11の合金部材の表面が酸化されて生じる。本実施形態のようにCrを含有するステンレス合金の場合は、酸化物被膜13は、クロミア(Cr2O3)を主成分とし、TiO2を含む緻密な被膜として形成される。酸化物被膜13は、後述する保護膜12の焼結工程や接着層4の焼き付け(接合工程)等における熱処理に伴って形成される。
金属基材11の上には保護膜12が形成されている。保護膜12は、Zn,Co,Mnのうちの少なくとも2種類以上を含む導電性セラミックス材料によって構成される導電性コーティング膜である。例えば、導電性コーティング膜は、ZnとMnとCoとを含む金属酸化物、例えば、亜鉛コバルトマンガン系酸化物のZnx(CoyMn1-y)(3-x)O4(0<x<1、0<y×(3-x)≦2)を含む金属酸化物を主材料とする。或いは、導電性コーティング膜はZnCoMnO4を主材料としてもよい。他にも、導電性コーティング膜は、MnとCoとを含むコバルトマンガン系の金属酸化物:MnxCoyO4(0<x,y<3、x+y=3)である、例えばMnCo2O4などを主材料としてもよい。尚、「主材料」とは主たる材料であることを意味し、複数の種類の金属酸化物を混合して用いたり、他の成分を混合して用いることも可能である。このような導電性コーティング膜である保護膜12を用いることで、保護膜12の熱膨張率と金属基材11や空気極31の熱膨張率との不一致を小さくでき、SOFC用セルCの耐久性を高めることができる。
金属酸化物微粒子を電着液1リットル当り100gになるように分散し、ポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを含有している混合液を用いて電着塗装を行う。ここでは、(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(1:1)(質量比)とした。電着塗装は、例えば混合液を満たした通電槽中に金属基材11を完全にまたは部分的に浸漬し、金属基材11をプラス、対極としてSUS304の極板をマイナスの極性として通電を行うことによって、金属基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。電着塗装条件も特に制限されず、金属基材11である金属の種類、混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(混合液温度)10~40℃程度、印加電圧10V~450V程度、電圧印加時間1分~10分程度、混合液の液温10℃~40℃とすればよい。尚、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。また、金属基材11に対して、種々前処理を行うこともできる。
接着層4により、セル間接続部材1と単セル3の空気極31とが接合される。詳しくは、セル間接続部材1の金属基材11の表面に形成された保護膜12と、単セル3の空気極31とが、接着層4により接着・接合されている。接着層4の主材料としては、空気極31と類似のペロブスカイト型酸化物や、スピネル型酸化物が用いられる。たとえばLSCF6428(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ)が用いられる。
次に固体酸化物形燃料電池用セルCの製造方法について説明する。固体酸化物形燃料電池用セルCの製造方法は、セル間接続部材1を製造する過程(以下の「保護膜形成工程」)と、そのセル間接続部材1を空気極31及び燃料極32と接合する過程(以下の「接合工程」)とを含む。
本発明のセル間接続部材1の製造方法である保護膜形成工程は、製膜工程と焼結工程とを有する。保護膜形成工程では、セル間接続部材1の金属基材11の表面に保護膜12を形成する。
接合工程では、上記保護膜形成工程(製膜工程及び焼結工程)によって得られたセル間接続部材1と、単セル3の空気極31とを接着層4を介して接合する。同様に、単セル3の燃料極32とセル間接続部材1とを接着層4を介して接合する。詳しくは、上述の接着層4の材料を含有するペーストをセル間接続部材1に塗布して単セル3と接合し、熱処理を施して焼き付けにより接着層4を形成する。熱処理は通常であれば、燃料電池の作動温度~950℃の低温で行うが、この温度に限定される訳ではない。
以上のようにして、セル間接続部材1と空気極31とを接合してなるSOFC用セルCが製造される。
本実施形態では、セル間接続部材1を製造する際に用いる金属基材11に、Ti含有率の高い材料を採用することの効果を検証した。特に抵抗の高い酸化物被膜13内部の電子導電性を、TiをCr2O3内に拡散することで改善できたことを検証した。具体的には、上述した固体酸化物形燃料電池用セルCの製造方法に沿って実験サンプルを作成し、電気抵抗の経時変化の測定、及び、セル間接続部材1の断面のSEM観察を行って、効果を検証した。
〔サンプル1:実施例〕
金属基材11として用いた、Fe及びCrを主成分とし、Ti,Si,Alを含む合金材料の板の表面に、MnCo2O4の微粉末を含有するスラリーを用いてアニオン電着塗装法にて塗膜(保護膜材料層)を製膜した(製膜工程)。このサンプル1に用いた合金材料でのCrの含有率は22.2(質量%)であり、Tiの含有率は0.200(質量%)であった。
その板を1050℃の大気雰囲気下にて2時間加熱する焼結工程を行って、MnCo2O4を主材料とする保護膜12を形成した。板の両面にLSCF6428を塗布し、乾燥させ、1000℃で2時間焼き付けを行い、接着層4を模擬した層を形成した。以上の様にして、固体酸化物形燃料電池用セルのセル間接続部材1を模したサンプル1を作成した。上記焼結工程を行った後に形成された酸化物被膜(Cr2O3)13でのTiの含有率は0.98(質量%)であった。
実施例としてのサンプル2に用いた金属基材11の合金材料でのCrの含有率は22.2(質量%)であり、Tiの含有率は0.234(質量%)であった。その他の条件はサンプル1と同様にして、サンプル2を作成した。上記焼結工程を行った後に形成される酸化物被膜(Cr2O3)13でのTiの含有率は1.13(質量%)であった。
比較例としてのサンプル3に用いた金属基材11の合金材料でのCrの含有率は22.2(質量%)であり、Tiの含有率は0.146(質量%)であった。その他の条件はサンプル1と同様にして、サンプル3を作成した。上記焼結工程を行った後に形成される酸化物被膜(Cr2O3)13でのTiの含有率は0.56(質量%)であった。
表1及び表2から分かるように、金属基材11の合金材料中のTi含有率が増大するとともに、酸化物被膜13内のTi含有率、即ち、TiO2含有率が増加していることが確認できる。
サンプル1~3について、電気抵抗値の経時変化を測定した。この通電試験結果を図6のグラフに示す。測定は、図5に示す通電試験治具5に各サンプルをセットし、800℃の環境下、定電流状態にて経時的に電気抵抗を測定して行った。通電試験治具5は、一対の金属板51の間にサンプルを挟んで、ネジ52で固定した構造である。接着層4にPtメッシュ53が接した状態とされ、この一対のPtメッシュ53の間の抵抗値を測定することで、サンプルの抵抗値を測定した。
例えば、サンプル1(実施例)を基準とした場合、金属基材11の合金材料でのTiの含有率が少ないサンプル3(比較例)では、初期抵抗が増大することがわかった。それに対して、金属基材11でのTiの含有率を増加させたサンプル2(実施例)は初期抵抗の低減ならびに経時的な抵抗低下も確認された。これはサンプル作製時に行われた熱処理によってTiが酸化物被膜(Cr2O3)13内に拡散することで、電子導電性が向上し性能が向上したためだと考えられる。また、通電試験中の800℃の環境下でTiが徐々に酸化物被膜(Cr2O3)13内に拡散することによる効果もあると考えられる。
また、酸化物被膜13でのTiの含有率が0.9質量%以上であると、セル間接続部材1の電気抵抗の低減効果が大きくなる点で好ましい。ここで、酸化物被膜13でのTiの含有率が1.1質量%以上であると、セル間接続部材1の電気抵抗の低減効果が更に大きくなる点で好ましい。
更に、金属基材11を構成する合金部材でのTiの含有率が0.20質量%以上であることで、その表面に形成される酸化物被膜13に含まれるTiの含有率を高めて、酸化物被膜13の電気抵抗を低減できる点で好ましい。ここで、金属基材11を構成する合金部材でのTiの含有率が0.23質量%以上であると、その表面に形成される酸化物被膜13に含まれるTiの含有率を更に高めることができる点で好ましい。
<1>
上記実施形態では、本発明のセル間接続部材及び固体酸化物形燃料電池用セル及び固体酸化物形燃料電池及びSOFCモノジェネレーションシステム及びSOFCコージェネレーションシステムについて具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)20を備えたコージェネレーションシステムを構築する例を説明したが、SOFC20を備えたモノジェネレーションシステムを構築することもできる。即ち、固体酸化物形燃料電池20を備え、固体酸化物形燃料電池20で発生した電力を電力負荷に供給するSOFCモノジェネレーションシステムを構築することもできる。
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
11 金属基材
12 保護膜
13 酸化物被膜
20 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
23 電力負荷装置
26 熱負荷装置
31 空気極
C 固体酸化物形燃料電池用セル(SOFC用セル)
Claims (9)
- Fe及びCrを主成分とし、Ti,Si,Alを含む合金部材で構成される金属基材と、
前記金属基材の表面に形成された、Cr2O3を主成分とし、TiO2を含む酸化物被膜と、
前記酸化物被膜上に形成された、Zn,Co,Mnのうちの少なくとも2種類以上を含む導電性セラミックス材料によって構成される導電性コーティング膜とを備え、
前記酸化物被膜でのTiの含有率が0.9質量%以上であり、
前記合金部材でのTiの含有率が0.20質量%以上であるセル間接続部材。 - 前記導電性コーティング膜がZnとMnとCoとを含む金属酸化物を主材料とする請求項1に記載のセル間接続部材。
- 前記導電性コーティング膜がZnx(CoyMn1-y)(3-x)O4(0<x<1、0<y×(3-x)≦2)を含む金属酸化物を主材料とする請求項1に記載のセル間接続部材。
- 前記導電性コーティング膜がZnCoMnO4を主材料とする請求項1に記載のセル間接続部材。
- 前記導電性コーティング膜が電着塗装により形成されている請求項1~4の何れか一項に記載のセル間接続部材。
- 請求項1~5の何れか一項に記載のセル間接続部材と空気極とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セル。
- 請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池用セルを搭載する固体酸化物形燃料電池。
- 請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池を備え、前記固体酸化物形燃料電池で発生した電力を電力負荷に供給するSOFCモノジェネレーションシステム。
- 請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池を備え、前記固体酸化物形燃料電池で発生した電力及び熱を電力負荷及び熱負荷に供給するSOFCコージェネレーションシステム。
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