JP2017063012A - 燃料電池用部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を製造できる、燃料電池用部材の製造方法を提供すること。【解決手段】CrとTiとを含有する金属基材11の表面の少なくとも一部分に無機酸化物微粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程と、金属基材11を900℃以下の還元雰囲気下で加熱して金属基材の表面に保護膜12を焼結形成する焼結工程とを行って固体酸化物形燃料電池で用いられる部材を製造する。【選択図】図3

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の少なくとも一部分に保護膜を形成してある燃料電池用部材の製造方法に関する。このような燃料電池用部材は、主には固体酸化物形燃料電池(以下、適宜「SOFC」と記載する。)のセルスタックに用いられる。しかし本発明はセルスタックに限らず、保護膜を形成してSOFCに用いられる金属基材に広く適用できる。それらを総称して燃料電池用部材と呼ぶ。
SOFC用セルは、電解質膜の一方面側に空気極を接合し、同電解質膜の他方面側に燃料極を接合してなる単セルを、空気極・燃料極に対して電子の授受を行う電子伝導性の金属基材(セル間接続部材)により挟み込んだ構造を有する。そしてこのようなSOFC用セルは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極間に起電力が発生する。その起電力を外部に取り出すことで、燃料電池として利用することができる。
近年の開発の進展に伴い、燃料電池の作動温度が下がってきている。従来の燃料電池の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性の観点からランタンクロマイトに代表される金属酸化物が使用されていた。最近は作動温度が700℃〜800℃まで下がっており、金属基材を使用することができる。金属基材の使用により、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
SOFCで金属基材を使用する場合には、金属基材からのCrの飛散を抑制する必要がある。特許文献1の技術では、金属中に含まれるCrが酸化されて飛散し易い6価の酸化物となることを抑制するため、単一系酸化物に不純物をドープしてなるn型半導体保護膜を金属基材の表面に形成している。
国際公開第2007/083627号
発明者らは、金属基材・保護膜の材質や、保護膜の焼結の条件について評価実験を進めている。作成した燃料電池用部材をSOFCの使用環境下におき、抵抗値の経時変化を調べたところ、燃料電池用部材の電気抵抗が長時間に渡って増加し続けた。例えばセル間接続部材の電気抵抗が増加すると、燃料電池の発電出力が低下してしまうから、このような電気抵抗の経時的な増加は抑制しなければならない。
本発明は、電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を製造できる、燃料電池用部材の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための燃料電池用部材の製造方法の特徴構成は、CrとTiとを含有する金属基材の表面の少なくとも一部分に無機酸化物微粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程と、前記金属基材を900℃以下の還元雰囲気下で加熱して前記金属基材の表面に保護膜を焼結形成する焼結工程とを行って固体酸化物形燃料電池で用いられる部材を製造する点にある。
発明者は鋭意検討・実験の末、CrとTiを含有する金属基材を用いる場合に、上述した電気抵抗の経時的な増加が生じることを見いだした。これは次のプロセスで発生すると考えられる。保護膜の焼結の際、金属基材の表面に酸化クロム(Cr23)を主成分とする酸化皮膜が形成される。このとき、Tiも酸化皮膜へ拡散し、含有される。酸化クロムにチタンが含有されると、導電率が向上する。しかしこのTiは、SOFCの使用環境下に長時間おかれると徐々に再拡散して、酸化皮膜中のTiの濃度が減少する。そうすると酸化皮膜の導電率が低下するから、燃料電池用部材の電気抵抗が増加することになる。
そして発明者は、焼結工程を行う温度により電気抵抗の経時的増加の度合いが変化することを突き止め、焼結工程を900℃以下の温度で実行すれば電気抵抗の増加が実用上問題のないレベルまで抑制できることを実験的に確かめた。すなわち上記の特徴構成によれば、CrとTiとを含有する金属基材の表面の少なくとも一部分に無機酸化物微粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程と、金属基材を900℃以下の還元雰囲気下で加熱して金属基材の表面に保護膜を焼結形成する焼結工程とを行うことで、電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を製造することができる。
前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製であってもよい。
金属基材としては、耐熱性が高くSOFCの運転環境に耐える材料が好適と考えられ、オーステナイト系、フェライト系等のステンレス鋼や、インコネル等のNi基合金が好ましい。中でもフェライト系ステンレス鋼はSOFCの他の構成部材との熱膨張率の整合性や耐熱性に優れる。ただし、フェライト系ステンレス鋼は、Cr成分を含んでおり、このCr成分の飛散を防止するために保護膜を形成して空気極を接合することが好ましい。本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、Crの飛散を抑制しつつ部材の電気抵抗の経時的な増加が抑制されるので、特にフェライト系ステンレス鋼製金属基材の利用機会を増やすことにつながり、高性能のSOFCセルを安価に提供するうえで有利である。
前記金属基材が、Tiを0.10重量%以上0.25重量%以下含有してもよい。
チタンはたとえばフェライト系ステンレス鋼の場合、精錬工程で脱酸のために添加されることがある。添加されたチタンにより電気抵抗増加の問題が生じる。本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用する事により、耐食性を向上しつつ部材の電気抵抗の経時的な増加が抑制されるので、SOFCの耐久性を向上させることができ有用である。
前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含んでいてもよい。
金属基材に保護膜材料を湿式成膜するにあたっては、無機酸化物微粒子の液体への分散性や基材への密着性を確保するためにバインダを用いることが好ましい。本発明の焼結工程は金属基材の過度な酸化劣化を抑制するため還元雰囲気で行われるが、特にアクリル系バインダは還元性雰囲気であっても還元熱分解して消失し、保護膜の焼結の際に残留しにくい。すなわちアクリル系バインダを用いることで焼成プロセスの簡略化を図りながら保護膜の品質を向上し、ひいては燃料電池用部材の耐久性を高めることができる。
前記成膜工程が、アニオン電着塗装法により行われると好適である。
アニオン電着塗装法によれば、強固で均一な塗膜を金属基材に成膜することができる。
SOFCに用いられる部材は複雑な形状である場合が多いため、アニオン電着塗装法を適用することが特に有用である。
前記無機酸化物微粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物であってもよい。
金属基材に設ける保護膜の組成としては、Co−Mn系スピネル酸化物が、焼結性が高く緻密膜を形成しやすいこと、基材のフェライト系ステンレス鋼との熱膨張率が近いこと、Cr成分の飛散抑制に効果が高いこと、など様々な特性を持っているため、適している。そのため、本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、金属基材の酸化を抑制することによる電気抵抗増大の抑制、緻密膜の形成による金属基材からの高いCr飛散防止効果が実現できるようになるので、高性能のSOFCセルを提供するうえで有利である。Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物としては、たとえば、コバルトマンガン系酸化物CoxMny4(0≦x、y≦3、x+y=3)または、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMny4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)の金属酸化物微粒子が用いられる。
前記無機酸化物微粒子が、Co1.5Mn0.54およびCo2MnO4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであれば特に好ましい。
Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物として、さらに具体的には、Zn(Co,Mn)O4、Co1.5Mn1.54、CoMn24、MnCo24、Co34などを主成分として含有するものが保護膜材料として好適に用いられる。特にCo1.5Mn1.54、Co2MnO4、Co34は緻密な保護膜が得られ、Co−Mn系スピネル酸化物のなかでもCr成分の飛散抑制に特に有効である。
前記焼結工程が、500℃以上900℃以下で行われると好ましい。また前記焼結工程が、800℃以上900℃以下で行われるとさらに好ましい。
500℃以上であれば、一般的な無機酸化物微粒子を焼結させることができ好適である。また800℃以上であれば、保護膜を実用上十分な膜強度を持つ程度に焼結形成し、電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を製造できることが実験的に確認されている。
このように、CrとTiとを含有する金属基材の表面の少なくとも一部分に無機酸化物微粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程と、前記金属基材を900℃以下の還元雰囲気下で加熱して前記金属基材の表面に保護膜を焼結形成する焼結工程とを行って固体酸化物形燃料電池で用いられる部材を製造することにより、電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を製造することができる。
固体酸化物形燃料電池のセル間接続部材の使用形態を示す図 固体酸化物形燃料電池の概略図 保護膜を形成したセル間接続部材の断面図 セル間接続部材の抵抗値の経時変化の測定結果を示すグラフ セル間接続部材の抵抗値の経時変化の測定結果を示すグラフ
以下、燃料電池用部材の製造方法について説明する。特に、燃料電池用部材の一例として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルスタックに用いられるセル間接続部材について説明する。まず、固体酸化物形燃料電池の概要について説明する。
<固体酸化物形燃料電池>
図1および図3に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金からなる金属基材としてのセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル間接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。なお、4は接合材であり、インターコネクタと空気極31間の電気的な接続を担保するために使用される。
なお、上記SOFC用セルCを構成する各要素で利用される一般的な材料について説明を加えると、例えば、上記空気極31の材料としては、LaMO3(例えばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができ、上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、さらに、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。接合材としては、空気極31と類似のペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物を利用することができる。
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルトおよびナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板形SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板形SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するセル間接続部材1に形成された空気流路2aを介して空気を供給するとともに、燃料極32に対して隣接するセル間接続部材1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、例えば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2-が生成され、そのO2-が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2-と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のセル間接続部材1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。
<セル間接続部材>
セル間接続部材1は、図1、図3に示すように、金属基材11(以下単に基材と呼ぶ)の表面に保護膜12を設けて構成してある。基材11の表面には、酸化皮膜13が形成されている。そして、各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
金属基材11の材料としては、CrとTiとを含有する金属を用いる。例えば、電子伝導性および耐熱性に優れたFe−Cr合金、具体的にはフェライト系ステンレス鋼に、Tiを添加したものを用いる。具体的には、Crを22重量%、Tiを0.10重量%以上0.25重量%以下含有するSUS445J1相当の合金を好適に用いることができる。
この他にも、オーステナイト系ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni合金や、ニッケル基合金であるNi−Cr合金などのCrを含有する合金に、Tiを添加した合金を用いることができる。
<保護膜>
保護膜12は、無機酸化物微粒子としての導電性セラミックス材料を含有する保護膜材料を基材11に電着塗装し、これを焼結することにより形成する。具体的には、基材11の表面に、たとえば、無機酸化物微粒子としてのZnCoMnO4、Co1.5Mn1.54、CoMn24、MnCo24等のCo-Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物と、アクリル系バインダとしてのポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(2:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により電着塗膜を形成する電着工程(成膜工程の一例)を行い、電着塗膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。
<成膜工程および焼結工程:実験例1(実施例)>
(1)アニオン型樹脂の合成
1,4ジオキサン50部を、還流冷却器と温度計と撹拌機と滴下ロートとを付けた4つ口フラスコ中で約82℃に加熱し、撹拌しながら滴下ロートから下記表1に示す混合物と1,4ジオキサン50部を3時間かけて連続滴下する。滴下完了後同温度でさらに3時間反応を続行して、アニオン性をもつアクリル樹脂バインダ(固形分50%)を合成する。
得られたアニオン型樹脂のTgは、−27℃(計算上の推定値)、分子量MW12万〜15万であった。
Figure 2017063012
表1中のAIBNは、重合開始剤である。L−SHは、連鎖移動剤である。配合割合は、質量部である。
アニオン型樹脂の化学的性状については、Tg:−50℃〜+25℃および分子量(MW質量平均分子量):5万〜20万の範囲内が好適である。一般にアニオン型樹脂のTgは+20℃前後、MWは3万〜7万程度である。なお、多量の無機微粒子を電気泳動共析させて、電解ガスを局所発生させて共析率を向上するためには、低Tgで高分子量のアニオン型樹脂とすることが好ましい。Tgが−50℃以下の場合、析出塗膜の粘性が強すぎ焼付硬化後に流動が大きく、+25℃以上になると流動性が低下しCo2MnO4微粒子共析時に発生したガス跡を消すことができずピンホール状となる。MWが5万以下ではCo2MnO4微粒子の分散性が低下する。また20万以上になると流動性が低下し塗膜中のCo2MnO4微粒子の均一な分散が悪くなり、見た目も不均一な外観となる。
また後述のシラン系カップリング剤を用いて、アニオン型樹脂と金属酸化物微粒子とをカップリング反応させると、Co2MnO4微粒子に代表される金属酸化物微粒子の析出効率を飛躍的に向上させることができる。
(2)混合液の作成
シラン系カップリング剤として、イソシアネート官能性シラン(OCN−C36−Si(OC253)を用い、この溶剤nMP(nメチルピロリドン)3質量部と(1)で作成したアニオン型樹脂120質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)60部を混ぜた後、スズ系触媒(DBTDL0.2部)を添加し60℃で1時間反応させることにより、シラン系カップリング剤のイソシアネート基とアニオン型樹脂のOH基が反応し、シラン系カップリング剤がアニオン型樹脂に付加する。(表2第一成分)
Figure 2017063012
表2中、配合割合は質量部である。
Co2MnO4微粒子(平均粒径0.5μm)100質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)200部と3ミリ径のジルコニアビーズ750質量部を混合し、撹拌機で湿式分散を行いスラリー状のCo2MnO4微粒子を得る。(表3中の第二成分)
Figure 2017063012
表3中、配合割合は質量部である。
第二成分の中に第一成分を添加し均一混合する。
さらに、トリエチルアミン1.4質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)10質量部と消泡剤(サーフィノール104)10質量部を添加し攪拌する。
均一混合した後、イオン交換水500質量部を少しずつ加えて、Co2MnO4微粒子とアニオン型樹脂との混合液を作成する。24時間攪拌し、シラン系カップリング剤の加水分解反応を促したのち、イオン交換処理で不純物を除去し、pH9.0±0.2浴電導度200±50μS/cmの混合液が得られる。得られた分散液は、Co2MnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)の混合液として用いられる。
なお、下記の配合物第一成分および第二成分の混合割合を変えることでCo2MnO4微粒子:樹脂=0.5:1(質量比)〜2:1(質量比)の作成ができる。
(3)電着塗装
上記(2)で作成したアニオン型分散剤組成物をその中の分散剤粒子が、電着液1リットル当り100gになるように分散させ、25℃の溶液において、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)下で電着塗装を行った。なお、電着塗装は下記のようにして行った。
形状が断面長方形の単純形状である基材11の試験片に、必要に応じて脱脂処理、酸洗処理、電解研磨などを施した後、混合液に被処理品を浸漬し、通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
(3−1)前処理
なお、各電極には以下の1〜7を順に行う前処理を行った。
1. 電解洗浄剤による陰極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
2. 水洗
3. 電解洗浄剤による陽極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
4. 水洗
5. 酸中和(硝酸200mL/L)
6. 水洗
7. 純水洗
また、陽極とする基材11の試験片には、別途、脱脂処理、酸洗処理などを施してもよい。
脱脂処理は、たとえば、基材11の表面にアルカリ水溶液を供給することにより行われる。アルカリ水溶液の供給は、たとえば、基材11にアルカリ水溶液を噴霧するかまたは基材11をアルカリ水溶液に浸漬させることにより行われる。アルカリとしては金属の脱脂に常用されるものを使用でき、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩などが挙げられる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、たとえば、処理する金属の種類、基材11の汚れの度合いなどに応じて適宜決定される。さらにアルカリ水溶液には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤の適量が含まれていてもよい。脱脂は、20〜50℃程度の温度下(アルカリ水溶液の液温)に行われ、1〜5分程度で終了する。
脱脂後、基材11を水洗され、次の酸洗処理に供される。その他、酸性浴に浸漬する脱脂、気泡性浸漬脱脂、電解脱脂などを適宜組み合わせて実施することもできる。酸洗処理は、たとえば、基材11の表面に酸水溶液を供給することにより行われる。酸水溶液の供給は、脱脂処理におけるアルカリ水溶液の供給と同様に、基材11への酸水溶液の噴霧、基材11の酸水溶液への浸漬などにより行われる。酸としては金属の酸洗に常用されるものを使用でき、たとえば、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。酸水溶液中の酸濃度は、たとえば、基材11の種類などに応じて適宜決定される。酸洗処理は、20〜30℃程度の温度下(酸水溶液の液温)に行われ、15〜60秒程度で終了する。脱脂処理および酸洗処理のほかに、スケール除去処理、下地処理、防錆処理などを施してもよい。これらの処理の後、基材11を70〜120℃程度の温度下に乾燥させて次の電着塗装に供する。
(3−2)電着工程
このようにして、前処理を行った基材11の試験片を、25℃の溶液において、基材11をプラス、対極としてSUS304の極板をマイナスの極性とし、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)して通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。
電着工程後の基材11は、通電槽から取り出され、加熱処理が施される。この未硬化の電着塗膜が形成された基材11に加熱処理することによって、基材11表面に硬化した電着塗膜が形成されたセル間接続部材1が得られる。
電着塗装は、公知の方法に従い、たとえば、混合液を満たした通電槽中に基材11を完全にまたは部分的に浸漬して陽極とし、通電することにより実施される。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(混合液温度)10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、混合液の液温10〜45℃とすればよい。
加熱処理は、電着塗膜を乾燥させる予備乾燥と、電着塗膜を硬化させる硬化加熱とを含み、予備乾燥後に硬化加熱が行われる。予備乾燥は、60〜140℃程度の加熱下に行われ、3〜30分程度で終了する。硬化加熱は、150〜220℃程度の加熱下に行われ、10〜60分程度で終了する。このようにして、混合液による電着塗膜が得られる。
(3−3)(焼結工程)
前記混合液としてCo2MnO4微粒子(粒子径0.5μm):樹脂=2:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、3%H2/N2雰囲気の電気炉中において850℃で2hr保持してアクリル樹脂を分解消失させるとともに、Co2MnO4粒子の焼結および基材11の試験片の表面との反応を起こさせる焼結工程を行った。これにより、基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12と、酸化皮膜13とが形成され、セル間接続部材1が得られた。なお加熱時の昇温速度は5℃/分である。得られたセル間接続部材1を3%H2/N2ガスを流通する条件下で室温まで冷却して取り出したところ、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。以上の様にして製造したセル間接続部材1を実験例1として、後述する実験等を行った。
<実験例2:実施例>
焼結工程の温度を900℃に変更した以外は、上述の実験例1と同様にして実験例2に係るセル間接続部材1を作成し、後述する実験等を行った。
<実験例3:比較例>
焼結工程の温度を950℃に変更した以外は、上述の実験例1と同様にして実験例3に係るセル間接続部材1を作成し、後述する実験等を行った。
<SOFCの使用環境下での抵抗値の経時変化の測定>
実験例1〜3で得られたセル間接続部材1をSOFCの使用環境下におき、抵抗値の経時変化を測定した。具体的には、セル間接続部材1の両面に導電性セラミックペーストを塗布して白金メッシュの集電材を取り付け、850℃とした電気炉に設置し、抵抗値を測定した。表4に、測定初期の面抵抗R0(単位:mΩ・cm2)、R0の測定から50時間経過後のR0からの面抵抗増加量R1と、さらに150時間(すなわちR0の測定から200時間)経過後のR0からの面抵抗増加量R2とを示す。すなわちR1は、R0の測定から50時間経過後の面抵抗から、R0を減算した値であり、R2は、R0の測定から200時間経過後の面抵抗から、R0を減算した値である。また図4に、実験例1〜3の200時間までの面抵抗増加量のグラフを示す。
Figure 2017063012
測定初期から50時間では、実験例1〜3のいずれにおいても、16mΩ・cm2以上の面抵抗増加が見られた。しかし、50時間経過時点から200時間経過時点までの150時間での面抵抗増加量R3は、実験例1で2.40、実験例2で3.50と、非常に小さくなった。一方、実験例3では16.54と大きいままであった。
図4のグラフからも分かるとおり、実験例1および2では50時間ないし100時間で抵抗値の経時的な増加が収束するのに対し、実験例3では200時間経過しても抵抗値が増加し続けている。以上の結果から、焼結工程を900℃以下の温度で実行すれば、電気抵抗の増加が実用上問題のないレベルまで抑制できることが確認できた。
<酸化皮膜中のTi濃度>
実験例1〜3のセル間接続部材1について、酸化皮膜13中のTi濃度をEDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて測定した。測定は、上述した抵抗値の経時変化の測定の、測定初期に相当するサンプルと、200時間に相当するサンプル(実験例1、3)および253時間に相当するサンプル(実験例2)に対して行った。結果を表5に示す。
Figure 2017063012
表5の結果から、焼結工程の温度が高いほど、酸化皮膜13中に含有されるTiが多いことがわかる。また、200時間または253時間経過時のサンプルでは、含有されるTiの量が、測定初期のサンプルに比べ減少している。
以上の実験・測定結果から、実験例1(実施例)と実験例3(比較例)について考察する。実験例3(比較例)のセル間接続部材1では、焼結工程の温度が比較的高いことにより、高濃度のTiがCr23を主成分とする酸化皮膜13に含有されて、導電率が向上すると考えられる。また、焼結工程の温度が比較的高いために表面に形成される酸化皮膜13の厚さは比較的大きくなる。実験例3のセル間接続部材1をSOFCの使用環境下(850℃付近)におくと、酸化皮膜13中の高濃度のTiは酸化皮膜13の外部へ拡散する。これにより、酸化皮膜13の導電率が低下することで、セル間接続部材1の抵抗値は大きく増加し、また増加しつづけるものと考えられる。
実験例1(実施例)のセル間接続部材1では、焼結工程の温度が比較的低いことにより、低濃度のTiがCr23を主成分とする酸化皮膜13に含有されて、導電率の向上度合いは小さくなると考えられる。また、焼結工程の温度が比較的低いために酸化皮膜13の厚さは比較的小さくなる。実験例1のセル間接続部材1をSOFCの使用環境下(850℃付近)におくと、酸化皮膜13中の低濃度のTiは酸化皮膜13の外部へ拡散するが、拡散量は比較的小さくなる。これにより、酸化皮膜13の導電率の低下度合いは比較的小さく、セル間接続部材1の抵抗値の増加は抑制されるものと考えられる。
以上の実験・測定結果、および考察から、Tiの拡散を抑制するために焼結工程の温度を低く、具体的には900℃以下に、好ましくは850℃以下にすることが望ましい。しかし、保護膜12の焼結を確実に行うためには、焼結工程を800℃以上で行うことが望ましい。また、膜厚は薄いほうが焼結が進行しやすいが、耐久性の観点から焼結後の膜厚として3μm以上は必要だと考えられる。
<SOFCの使用環境下での抵抗値の経時変化の測定/長期間測定>
上述した200時間の経時変化測定を行った実験例1および3のセル間接続部材1について、そのまま継続して同じ環境下(850℃の電気炉)に置き、更に長期間の抵抗値の経時変化測定を行った。表6に、R0の測定から1000時間経過後の面抵抗R4(単位:mΩ・cm2、以下同じ。)と、R4の測定から2500時間(すなわちR0の測定から3500時間)経過後のR4からの面抵抗増加量R5とを示す。すなわちR5は、R4の測定から2500時間経過後の面抵抗から、R4を減算した値である。また図5に、実験例1および3の1000時間から3500時間までの面抵抗増加量のグラフを示す。
Figure 2017063012
実験例3では、1000時間から3500時間にかけて継続的な面抵抗の増加がみられた。一方、実験例1では、1000〜1200時間において段階的な面抵抗の増加がみられたものの、時間に対する増加率(グラフの傾斜)は実験例3に比べて小さい。1000時間〜3500時間での面抵抗増加量R5も、実験例3の9.4に比べ、実験例1は5.0と小さい値となった。以上の結果から、焼結工程を900℃以下の温度で実行すれば、電気抵抗の増加を長期にわたって抑制できることが分かった。
<別実施形態>
上記実施形態では、成膜工程を電着塗装によって行ったが、湿式成膜法であれば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、等種々公知の方法を利用することができる。
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明の燃料電池用部材の製造方法によれば、電気抵抗の経時的な増加が抑制された燃料電池用部材を提供することができる。
1 :セル間接続部材
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :基材(金属基材)
12 :保護膜
13 :酸化皮膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :セル

Claims (9)

  1. CrとTiとを含有する金属基材の表面の少なくとも一部分に無機酸化物微粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程と、前記金属基材を900℃以下の還元雰囲気下で加熱して前記金属基材の表面に保護膜を焼結形成する焼結工程とを行って固体酸化物形燃料電池で用いられる部材を製造する、燃料電池用部材の製造方法。
  2. 前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製である請求項1に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  3. 前記金属基材が、Tiを0.10重量%以上0.25重量%以下含有する請求項1または2に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  4. 前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  5. 前記成膜工程が、アニオン電着塗装法により行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  6. 前記無機酸化物微粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  7. 前記無機酸化物微粒子が、Co1.5Mn0.54およびCo2MnO4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  8. 前記焼結工程が、500℃以上900℃以下で行われる請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  9. 前記焼結工程が、800℃以上900℃以下で行われる請求項8に記載の燃料電池用部材の製造方法。
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