JP6486107B2 - 燃料電池用部材の製造方法 - Google Patents
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Description
そして、このようなSOFC用セルは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。
上記目的を達成するための本発明の燃料電池用部材の製造方法の特徴構成は、
固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCo成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程、
前記成膜工程で成膜された前記金属基材を焼結する焼結工程、
を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含むとともに、
前記焼結工程を、アクリル系バインダの分解と無機酸化物粒子の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気で行う点にある。
たとえば、SOFCに用いられる金属基材の一方面に保護膜を形成するとともに、前記保護膜に空気極を接合形成してある平板形燃料電池セルは、スタック構造の燃料電池セルを構成する際に、金属基材の一方面に保護膜を形成して、SOFCの運転に伴い前記金属基材が加熱されても、前記金属基材から揮発、飛散する成分が前記空気極に悪影響を与えないように保護膜を介在させた状態で、空気極、固体電解質、燃料極の積層構造を形成することができる。また、前記金属基材の他の部分に上記積層された燃料極を接続して積層することによって、燃料極と金属基材とを直接導電する形態で接続することができる。また、SOFCに用いられる金属基材には、他にも部分的に保護膜を形成する部材があり、本発明は、金属基材の形状によらず、また、上記保護膜に空気極を接合形成してある燃料電池セルに限らず、いわゆる燃料と空気を隔てるセパレータとしての役割を果たすために使われる部材、すなわち片側が燃料雰囲気、反対側が空気雰囲気で使われる部材等、金属基材の一部分に保護膜を形成してなる燃料電池用部材一般にも適用できる。
上記還元雰囲気としては、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo3O4がCoに還元される酸素分圧以下であることが好ましい。
このような還元雰囲気であれば、無機酸化物として含まれる酸化コバルト(Co3O4やCoO)が金属Coに還元される雰囲気であり、コバルトを焼結可能な500℃〜1050℃の温度において簡易に実現できる圧力範囲である(図9参照、例えば、950℃においては、酸素分圧1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下となる)。この条件では、アクリル系バインダを熱分解して気化するとともに無機酸化物粒子同士を焼結することができるために、物性を低下させずに簡便に保護膜を形成することができるとともに、金属基材を酸化劣化させるおそれが少ないことが、後述の実験結果より明らかになっている。
前記成膜工程が、アニオン電着塗装法によるものであってもよい。
アクリル系バインダは、アニオン電着塗装法において有用な電着塗膜形成剤であるので、アニオン電着塗装法を利用することで、保護膜材料から均質で膜厚が薄く強固な被膜を形成することができるようになる。
前記アクリル系バインダとしては、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種以上を含有するものを利用することができる。
アクリル系バインダとしては、たとえば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が汎用されており、このようなバインダは取り扱い容易であるとともに、無機酸化物粒子の還元雰囲気での焼結の際にも分解消失させることができることは、実験的に確認されている。
前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製であってもよい。
金属基材としては、耐熱性が高くSOFCの運転環境に耐える材料が好適と考えられ、
オーステナイト系、フェライト系等のステンレス鋼や、インコネル等のNi基合金が好ま
しく、中でもフェライト系ステンレス鋼はSOFCの他の構成部材との熱膨張率の整合性
や耐熱性に優れる。ただし、フェライト系ステンレス鋼は、Cr成分を含んでおり、この
Cr成分の飛散を防止するために保護膜を形成して空気極を接合することが好ましいので
、本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しか
つ保護膜の変質を抑制することができ、特にフェライト系ステンレス鋼製金属基材の利用
機会を増やすことにつながり、高性能のSOFCセルを安価に提供するうえで有利である。
前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物とすることができる。
前記保護膜としては、Co−Mn系スピネル酸化物が、緻密であり、Cr成分の飛散抑
制に特に有効であることが知られている。そのため、本発明の燃料電池用部材の製造方法
を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しかつ保護膜の変質を抑制することができ
、金属基材からのCr飛散防止をより一層抑制することができるようになるので、高性能
のSOFCセルを提供するうえで有利である。
前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.5O4、Co2MnO4、Co3O4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであれば特に好ましい。
Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物として、さらに具体的には、Zn(Co,Mn)O4、Co1.5Mn1.5O4、CoMn2O4、MnCo2O4、Co3O4などを主成分として含有するものが好適に用いられる。その中でも、前記無機酸化物粒子として、Co1.5Mn1.5O4、Co2MnO4、Co3O4は緻密であり、Co−Mn系スピネル酸化物のなかでもCr成分の飛散抑制に特に有効である。
前記焼結工程は、500℃〜1050℃で行うことができる。
前記焼結工程における焼結温度は、金属基材や、保護膜の組成によって異なるが、概して500℃以上であれば、アクリル系バインダ等を分解消失させることができる。一方、あまり高温になると、金属基材の表面に高抵抗膜が形成されやすくなり劣化が進むおそれが生じることや、保護膜材料が金属基材から剥離しやすくなるなどの問題が生じやすくなることから1050℃以下とすることが好ましい。
本発明にかかるSOFC用セル間接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金からなる金属基材としてのセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル間接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。なお、4は接合材であり、インターコネクタと空気極31間の電気的な接続を担保するために使用される。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板形SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板形SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
前記セル間接続部材1は、図1、図3に示すように、例えば、フェライト系ステンレス合金製のセル間接続部材用の金属基材11(以下単に基材と呼ぶ)の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、たとえば、Crを22%、Mnを約0.1〜0.5%含むフェライト系ステンレス鋼等からなる前記基材11の表面に、たとえば、無機酸化物粒子としてのZnCoMnO4、Co1.5Mn1.5O4、CoMn2O4、MnCo2O4等のCo-Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物と、アクリル系バインダとしてのポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(2:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により電着塗膜を形成する電着工程(成膜工程の一例)を行い、前記電着塗膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。
(1)アニオン型樹脂の合成
1,4ジオキサン50部を、還流冷却器と温度計と撹拌機と滴下ロートとを付けた4つ口フラスコ中で約82℃に加熱し、撹拌しながら滴下ロートから下記表1に示す混合物と1,4ジオキサン50部を3時間かけて連続滴下する。
滴下完了後同温度でさらに3時間反応を続行して、アニオン性をもつアクリル樹脂バインダ(固形分50%)を合成する。得られたアニオン型樹脂のTgは、−27℃(計算上の推定値)、分子量MW12万〜15万であった。
表1中のAIBNは、重合開始剤である。L−SHは、連鎖移動剤である。
シラン系カップリング剤として、イソシアネート官能性シラン(OCN−C3H6−Si(OC2H5)3)を用い、この溶剤nMP(nメチルピロリドン)3質量部と(1)で作成したアニオン型樹脂120質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)60部を混ぜた後、スズ系触媒(DBTDL0.2部)を添加し60℃で1時間反応させることにより、シラン系カップリング剤のイソシアネート基とアニオン型樹脂のOH基が反応し、シラン系カップリング剤がアニオン型樹脂に付加する。(表2第一成分)
ピロリドン)200部と3ミリ径のジルコニアビーズ750質量部を混合し、撹拌機で湿式分散を行いスラリー状のCo2MnO4微粒子を得る。(表3第二成分)
さらに、トリエチルアミン1.4質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)10質量部と消泡剤(サーフィノール104)10質量部を添加し攪拌する。
均一混合した後、イオン交換水500質量部を少しずつ加えて、Co2MnO4微粒
子とアニオン型樹脂との混合液を作成する。24時間攪拌し、シラン系カップリング剤の加水分解反応を促したのち、イオン交換処理で不純物を除去し、pH9.0±0.2浴電導度200±50μS/cmの混合液が得られる。得られた分散液は、Co2MnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)の混合液として用いられる。
上記(2)で作成したアニオン型分散剤組成物をその中の分散剤粒子が、電着液1リットル当り100gになるように分散させ、25℃の溶液において、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)下で電着塗装を行った。
なお、電着塗装は下記のようにして行った。
なお、各電極には以下の1〜7を順に行う前処理を行った。
1. 電解洗浄剤による陰極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
2. 水洗
3. 電解洗浄剤による陽極極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
4. 水洗
5. 酸中和(硝酸200mL/L)
6. 水洗
7. 純水洗
脱脂処理は、たとえば、基材11の表面にアルカリ水溶液を供給することにより行われる。アルカリ水溶液の供給は、たとえば、基材11にアルカリ水溶液を噴霧するかまたは基材11をアルカリ水溶液に浸漬させることにより行われる。アルカリとしては金属の脱脂に常用されるものを使用でき、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩などが挙げられる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、たとえば、処理する金属の種類、基材11の汚れの度合いなどに応じて適宜決定される。さらにアルカリ水溶液には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤の適量が含まれていてもよい。脱脂は、20〜50℃程度の温度下(アルカリ水溶液の液温)に行われ、1〜5分程度で終了する。
このようにして、前処理を行った基材11の試験片を、25℃の溶液において、基材11をプラス、対極としてSUS304の極板をマイナスの極性とし、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)して通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、前記混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(前記混合液温度)10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、前記混合液の液温10〜45℃とすればよい。
前記混合液としてCo2MnO4微粒子(粒子径0.5μm):樹脂=2:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、5%H2/N2ガスを流通させた酸素分圧1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下の電気炉中において950℃で2hr保持してアクリル樹脂を分解消失させるとともに、Co2MnO4粒子の焼結および基材11の試験片の表面との反応を起こさせる焼結工程を行い、基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12を形成した。得られた保護膜を5%H2/N2ガスを流通する条件下で、室温まで冷却して取り出したところ、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
この工程はスタックの構造、設計思想により異なるが、作動温度以上、1050℃以下で行われることが一般的である。(1050℃を超えると合金のセル間接続部材の劣化が起きてしまう)そこで、得られたセル間部材に対して、一般的な使用環境として大気中850℃で50hr熱処理を行った。その後断面観察を行ったところ、非常に緻密な膜質の保護膜が得られていることがわかった(図4参照)。図より先の焼結に用いた還元雰囲気では、保護膜が一旦還元作用を受けて、酸化コバルト(Co3O4やCoO)が金属コバルトに、Mn3O4がMnOに還元された状態で焼結したものと考えられる。一旦無機酸化物粒子が還元され、金属コバルトに変化することで焼結性が向上し、その後の大気雰囲気での熱処理を経て再度酸化され、結果として非常に緻密な保護膜が得られたと考えられる。
Co2MnO4を、Co1.5Mn1.5O4(粒子径0.5μm)に替えた以外は、実施例1と同様に電着塗膜を作成した。表面は電着塗装を施しているが、裏面は電着塗装は施しておらず、金属が露出した状態となっていた。
5%H2/N2ガスを流通させた電気炉中において、室温から950℃まで5℃/分の速度で昇温し、950℃で2hr保持し、室温まで冷却し、保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
Co2MnO4を、Co3O4(粒子径0.5μm)に替えた以外は、実施例1と同様に電着塗膜を作成した。表面は電着塗装を施しているが、裏面は部分的に電着塗装を行っているが、一部金属が露出した部分が存在する状態となっていた。
3%H2/N2ガスを流通させた酸素分圧1.69×10-9atm以下の還元雰囲気の電気炉中において、室温から950℃まで5℃/分の速度で昇温し、950℃で2hr保持し、室温まで冷却し、保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
焼結条件を、大気雰囲気の500℃で1時間保持する焼成工程の後950℃で2時間保持として行った以外は実施例2と同様に保護膜を得た。
具体的には、焼結加熱条件は、昇温速度5℃/分で500℃まで大気雰囲気で昇温し1時間保持する焼成工程によりバインダを焼失させ、さらに、5%H2/N2ガスを流通させ、1時間保持、その後、昇温速度5℃/分で950℃まで昇温して2時間保持とした。
得られた保護膜には、1cm2あたりの1mm以上の長さの肉眼で確認できる割れは5本以上存在した。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、0.21Ωという低抵抗であることを確認するとともに、大部分は金属光沢が残っていることを確認した。
焼結条件を、真空雰囲気(酸素分圧9.87×10-5atm(1atm=980hPa))とし、950℃で2hr保持しとした以外は、実施例2と同様に保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
大気雰囲気(酸素分圧0.21atm)の電気炉中において、1000℃で2hr保持とした、更に前記混合液として微粒子(0.5μm):樹脂=1:1(質量比)とした以外は、実施例2と同様に保護膜を得た。
バインダをセルロース系バインダとし、実施例2と同様に保護膜を得た。
セルロース系バインダとしては、ヒドロキシプロピルセルロースを用い、保護膜材料中における無機酸化物粒子とバインダとの比率は15:2.7とした。この保護膜材料を用いて、電着塗装に代えてディップコートにより保護膜材料の被膜を得た。この被膜を乾燥後、3%H2/N2雰囲気に保った電気炉で焼結し、保護膜を得た。焼結加熱条件は、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温し1時間保持、さらに、昇温速度5℃/分で950℃まで昇温して2時間保持とした。
実施例2において形成された電着塗膜を掻き取った試料について、5%H2/N2雰囲気において示差熱分析を行ったところ図8のようになった。図より、約400℃における大きな重量減少がみられることから、実施例2において用いたアクリル系バインダは、約400℃において分解して消失しているものと考えられる。また、アクリル系バインダの消失後試料中に含まれる炭素成分について定量したところ1.94質量%であることがわかり、試料の重量減少はほぼアクリル系バインダの全量に相当していることが明らかになった。
上記実施例、比較例をまとめると表4のようになる。
結果として、大気中で焼結するとひび割れの生じやすい保護膜となり、かつ焼結度合いも緩く、無機酸化物微粒子同士の結合度が不十分であるものと考えられる。また、真空雰囲気とした場合でも、十分な還元雰囲気が得られず、アクリルバインダが分解消失しているものの焼結が十分に進行していないうえに、金属基板裏面が酸化を受け、高抵抗になることがわかり、前記還元雰囲気を、図9に示すように、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo3O4がCoに還元される酸素分圧以下の領域に示される条件(例えば、950℃(T=1223K(絶対温度))においては、酸素分圧PO2=1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下)とすることが好ましいことがわかる。なお、酸化コバルトの還元される条件は、酸化マンガンの還元される条件よりも穏やかで、かつ、コバルト金属の焼結は他の金属に比して容易に進行することから、コバルトの還元される条件に基づき還元雰囲気を設定するものとしている。
上記実施形態では、成膜工程を電着塗装によって行ったが、湿式成膜法であれば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、等種々公知の方法を利用することができる。
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :金属基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :セル
Claims (8)
- 固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCo成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程、
前記成膜工程で成膜された前記金属基材を焼結する焼結工程、
を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含むとともに、
前記焼結工程を、前記アクリル系バインダの分解と前記無機酸化物粒子の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気で行う燃料電池用部材の製造方法。 - 前記還元雰囲気が、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo3O4がCoに還元される酸素分圧以下である請求項1に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記成膜工程が、アニオン電着塗装法による請求項1または2に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記アクリル系バインダが、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種以上を含有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製である請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.5O4、Co2MnO4、Co3O4から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項6に記載の燃料電池用部材の製造方法。
- 前記焼結工程を、500℃〜1050℃で行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
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