JP6486107B2 - 燃料電池用部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分に保護膜を形成してある燃料電池用部材の製造方法に関する。このような燃料電池用部材は、主に固体酸化物型燃料電池(以下、適宜「SOFC」と記載する。)のセルスタックとして一般的に用いられるものである。なお、本発明は前記保護膜に空気極を接合形成する燃料電池セル自体に限らず、部分的に保護膜を形成してある金属基材に広く適用でき、これらを総称して、燃料電池用部材と呼ぶものである。
かかるSOFC用セルは、電解質膜の一方面側に空気極を接合するとともに、同電解質膜の他の部分側に燃料極を接合してなる単セルを、空気極または燃料極に対して電子の授受を行う一対の電子伝導性の金属基材(セル間接続部材)により挟み込んだ構造を有する。
そして、このようなSOFC用セルは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。
近年の開発の進展に伴い、SOFCの作動温度が下がってきている。従来の燃料電池の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性の観点からランタンクロマイトに代表される金属酸化物が使用されていたが、最近は作動温度が700℃〜800℃まで下がっており、金属基材が使用できるようになってきた。金属基材の使用により、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
また、SOFC用セルで利用される金属基材の表面に、単一系酸化物に不純物をドープしてなるn型半導体保護膜を形成し、このような保護膜形成処理を行うことによって、合金中に含まれるCrが、飛散し易い6価の酸化物へと酸化されることを抑制することが行われる場合がある(例えば、国際公開2007/083627号(特許文献1)を参照。)。
しかし、このようなSOFC用セルで利用される金属基材の表面に、保護膜を形成する場合、上記実情からCr飛散の影響を受ける空気極側に導電性の保護膜を形成する必要があるが、燃料極側には、導電性等の観点から保護膜を形成しない構成を採用する場合がある。ところが、金属基材の表面の一部分に保護膜を形成する際に、その保護膜の成膜時に焼結工程を経ると、前記金属基材の他の部分は、焼結工程時に高温の焼結温度に晒されるため、酸化を受けて、Cr23やMnCr24などからなるCrを含む酸化被膜が形成されてしまう場合がある。このような酸化被膜が形成されると、酸化被膜が高抵抗であるため、前記金属基材の他の部分における抵抗が大きくなり、SOFCとしての発電出力が大きく低下するという問題がある。
国際公開2007/083627号
そこで、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気や高真空雰囲気で保護膜を焼結する技術があるが、アルゴンは安価なガスとはいえず、量産時のプロセスコストは高止まりする可能性がある。
したがって、本発明は上記実状に鑑み、金属基材の表面の一部分に保護膜を形成するに際して、その保護膜を確実に焼結することができ、しかも、他の部分に酸化被膜を生じない、簡便な燃料電池用部材の製造方法を提供することを目的とする。
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の燃料電池用部材の製造方法の特徴構成は、
固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCo成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程、
前記成膜工程で成膜された前記金属基材を焼結する焼結工程、
を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含むとともに、
前記焼結工程を、アクリル系バインダの分解と無機酸化物粒子の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気で行う点にある。
〔作用効果1〕
たとえば、SOFCに用いられる金属基材の一方面に保護膜を形成するとともに、前記保護膜に空気極を接合形成してある平板形燃料電池セルは、スタック構造の燃料電池セルを構成する際に、金属基材の一方面に保護膜を形成して、SOFCの運転に伴い前記金属基材が加熱されても、前記金属基材から揮発、飛散する成分が前記空気極に悪影響を与えないように保護膜を介在させた状態で、空気極、固体電解質、燃料極の積層構造を形成することができる。また、前記金属基材の他の部分に上記積層された燃料極を接続して積層することによって、燃料極と金属基材とを直接導電する形態で接続することができる。また、SOFCに用いられる金属基材には、他にも部分的に保護膜を形成する部材があり、本発明は、金属基材の形状によらず、また、上記保護膜に空気極を接合形成してある燃料電池セルに限らず、いわゆる燃料と空気を隔てるセパレータとしての役割を果たすために使われる部材、すなわち片側が燃料雰囲気、反対側が空気雰囲気で使われる部材等、金属基材の一部分に保護膜を形成してなる燃料電池用部材一般にも適用できる。
金属基材の表面の一部分に保護膜材料を湿式成膜する成膜工程を行うと、金属基材の表面の一部分に被膜を形成することができる。この保護膜材料は、無機酸化物粒子を主材とするが、無機酸化物粒子のみをスラリー状にして保護膜を形成したとしても、その無機酸化物粒子同士には、分散性や基材との密着性が十分ではないために、被膜の均質性が低く、特に膜厚等の寸法精度が要求される保護膜を精度よく作成することができないために、バインダを含有した保護膜材料が有利に利用できる。
この被膜を焼結すると、バインダなどの有機物は通常酸化消失するものと考えられる。しかし金属基材が酸化されにくい環境下で保護膜を焼結した場合、有機物が炭化した状態で完全には消失せず、保護膜中に残留して、その保護膜の焼結性を低下させ、十分な物性を実現できないことが明らかになっている。そのため、有機物を炭化させずに消失させ、かつ金属基材が酸化されにくい環境が最も好ましいと言える。
そこで、本発明者らは、還元雰囲気であっても容易に消失するバインダについて鋭意研究した結果、アクリル系バインダは還元雰囲気であっても被膜から消失し、保護膜を焼結する際に保護膜中に残留する問題を生じにくいことを新たに見出し、本発明を完成するに至った。この現象は、通常の有機物が酸化分解により消失するものと考えられているのに対して、アクリル系バインダは、酸化を経ることなく還元熱分解して消失することによると考えられる。
すなわち、焼結して保護膜に変換される被膜がアクリル系バインダを含有する場合、その被膜に含まれる無機酸化物粒子を、還元雰囲気で焼結した時に、保護膜の焼結に伴いアクリル系バインダが消失する条件を選択することができることになる。このアクリル系バインダの分解と無機酸化物の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気では、アクリル系バインダを熱分解して気化するとともに無機酸化物粒子同士を焼結することができるために、物性を低下させずに簡便に保護膜を形成することができるとともに、金属基材を酸化劣化させるおそれが少ない。また、このように無機酸化物粒子同士を焼結するにあたっては、無機酸化物粒子にCo成分を含有しているから、Co成分が還元雰囲気で焼結される際に一旦金属コバルトに還元された状態で焼結されるとともに、通常の燃料電池使用環境下で再度酸化物になって保護膜として機能するように状態変化を起こす。したがって、無機酸化物粒子が焼結されて緻密に形成された保護膜が簡便に得られる。
したがって、金属基材の表面の一部分に保護膜を形成するに際して、その保護膜を確実に焼結することができ、しかも、他の部分に酸化被膜を生じない、簡便な燃料電池用部材の製造方法を提供することができた。
〔構成2〕
上記還元雰囲気としては、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo34がCoに還元される酸素分圧以下であることが好ましい。
〔作用効果2〕
このような還元雰囲気であれば、無機酸化物として含まれる酸化コバルト(Co34やCoO)が金属Coに還元される雰囲気であり、コバルトを焼結可能な500℃〜1050℃の温度において簡易に実現できる圧力範囲である(図9参照、例えば、950℃においては、酸素分圧1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下となる)。この条件では、アクリル系バインダを熱分解して気化するとともに無機酸化物粒子同士を焼結することができるために、物性を低下させずに簡便に保護膜を形成することができるとともに、金属基材を酸化劣化させるおそれが少ないことが、後述の実験結果より明らかになっている。
〔構成3〕
前記成膜工程が、アニオン電着塗装法によるものであってもよい。
〔作用効果3〕
アクリル系バインダは、アニオン電着塗装法において有用な電着塗膜形成剤であるので、アニオン電着塗装法を利用することで、保護膜材料から均質で膜厚が薄く強固な被膜を形成することができるようになる。
〔構成4〕
前記アクリル系バインダとしては、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種以上を含有するものを利用することができる。
〔作用効果4〕
アクリル系バインダとしては、たとえば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が汎用されており、このようなバインダは取り扱い容易であるとともに、無機酸化物粒子の還元雰囲気での焼結の際にも分解消失させることができることは、実験的に確認されている。
〔構成5〕
前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製であってもよい。
〔作用効果5〕
金属基材としては、耐熱性が高くSOFCの運転環境に耐える材料が好適と考えられ、
オーステナイト系、フェライト系等のステンレス鋼や、インコネル等のNi基合金が好ま
しく、中でもフェライト系ステンレス鋼はSOFCの他の構成部材との熱膨張率の整合性
や耐熱性に優れる。ただし、フェライト系ステンレス鋼は、Cr成分を含んでおり、この
Cr成分の飛散を防止するために保護膜を形成して空気極を接合することが好ましいので
、本発明の燃料電池用部材の製造方法を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しか
つ保護膜の変質を抑制することができ、特にフェライト系ステンレス鋼製金属基材の利用
機会を増やすことにつながり、高性能のSOFCセルを安価に提供するうえで有利である。
〔構成6〕
前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物とすることができる。
〔作用効果6〕
前記保護膜としては、Co−Mn系スピネル酸化物が、緻密であり、Cr成分の飛散抑
制に特に有効であることが知られている。そのため、本発明の燃料電池用部材の製造方法
を適用することにより、金属基材の酸化を抑制しかつ保護膜の変質を抑制することができ
、金属基材からのCr飛散防止をより一層抑制することができるようになるので、高性能
のSOFCセルを提供するうえで有利である。
Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物としては、たとえば、コバルトマンガン系酸化物CoxMny4(0≦x、y≦3、x+y=3)または、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMny4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)からなる金属酸化物微粒子が用いられる。
〔構成7〕
前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.54、Co2MnO4、Co34から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであれば特に好ましい。
〔作用効果7〕
Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物として、さらに具体的には、Zn(Co,Mn)O4、Co1.5Mn1.54、CoMn24、MnCo24、Co34などを主成分として含有するものが好適に用いられる。その中でも、前記無機酸化物粒子として、Co1.5Mn154、Co2MnO4、Co34は緻密であり、Co−Mn系スピネル酸化物のなかでもCr成分の飛散抑制に特に有効である。
〔構成8〕
前記焼結工程は、500℃〜1050℃で行うことができる。
〔作用効果8〕
前記焼結工程における焼結温度は、金属基材や、保護膜の組成によって異なるが、概して500℃以上であれば、アクリル系バインダ等を分解消失させることができる。一方、あまり高温になると、金属基材の表面に高抵抗膜が形成されやすくなり劣化が進むおそれが生じることや、保護膜材料が金属基材から剥離しやすくなるなどの問題が生じやすくなることから1050℃以下とすることが好ましい。
このように、金属基材の表面の一部分に保護膜を形成するに際して、その保護膜を確実に焼結することができ、しかも、他の部分に酸化被膜を生じにくい簡便な燃料電池用部材の製造方法を提供できるようになり、高性能なSOFCセル製造に寄与することができるようになった。
固体酸化物形燃料電池の概略図 固体酸化物形燃料電池のセル間接続部材の使用形態を示す図 保護膜を形成したセル間接続部材試験片の断面図 実施例1による保護膜の断面のSEM写真 実施例2による保護膜の断面のSEM写真 実施例3による保護膜の断面のSEM写真 比較例3による保護膜の断面のSEM写真 実施例2による保護膜の示差熱分析結果を示すグラフ 酸化コバルトが還元される雰囲気の温度圧力限界を示すグラフ
以下に、本発明の実施形態にかかる燃料電池用部材の製造方法を説明する。尚、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
<固体酸化物形燃料電池>
本発明にかかるSOFC用セル間接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金からなる金属基材としてのセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル間接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。なお、4は接合材であり、インターコネクタと空気極31間の電気的な接続を担保するために使用される。
なお、上記SOFC用セルCを構成する各要素で利用される一般的な材料について説明を加えると、例えば、上記空気極31の材料としては、LaMO3(例えばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができ、上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、さらに、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。接合材としては、空気極31と類似のペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物を利用することができる。
さらに、これまで説明してきたSOFC用セルCでは、セル間接続部材1の材料としては、電子伝導性および耐熱性の優れた材料であるフェライト系ステンレス鋼であるFe−Cr合金や、オーステナイト系ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni合金や、ニッケル基合金であるNi−Cr合金などのように、Crを含有する合金または酸化物が利用されている。
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルトおよびナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板形SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板形SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するセル間接続部材1に形成された空気流路2aを介して空気を供給するとともに、燃料極32に対して隣接するセル間接続部材1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、例えば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2-が生成され、そのO2-が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2-と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のセル間接続部材1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。
<セル間接続部材>
前記セル間接続部材1は、図1、図3に示すように、例えば、フェライト系ステンレス合金製のセル間接続部材用の金属基材11(以下単に基材と呼ぶ)の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、無機酸化物粒子としての導電性セラミックス材料を含有する保護膜材料を、前記基材11に電着塗装することにより保護膜12を厚膜として形成してある。
<保護膜>
前記保護膜12は、たとえば、Crを22%、Mnを約0.1〜0.5%含むフェライト系ステンレス鋼等からなる前記基材11の表面に、たとえば、無機酸化物粒子としてのZnCoMnO4、Co1.5Mn1.54、CoMn24、MnCo24等のCo-Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物と、アクリル系バインダとしてのポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(2:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により電着塗膜を形成する電着工程(成膜工程の一例)を行い、前記電着塗膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。
以下に前記保護膜12の具体的な製造方法を詳述するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)アニオン型樹脂の合成
1,4ジオキサン50部を、還流冷却器と温度計と撹拌機と滴下ロートとを付けた4つ口フラスコ中で約82℃に加熱し、撹拌しながら滴下ロートから下記表1に示す混合物と1,4ジオキサン50部を3時間かけて連続滴下する。
滴下完了後同温度でさらに3時間反応を続行して、アニオン性をもつアクリル樹脂バインダ(固形分50%)を合成する。得られたアニオン型樹脂のTgは、−27℃(計算上の推定値)、分子量MW12万〜15万であった。
(配合割合は質量部)
表1中のAIBNは、重合開始剤である。L−SHは、連鎖移動剤である。
アニオン型樹脂の化学的性状については、Tg:−50℃〜+25℃および分子量(MW質量平均分子量):5万〜20万の範囲内が好適である。一般にアニオン型樹脂のTgは+20℃前後、MWは3万〜7万程度である。なお、多量の無機微粒子を電気泳動共析させて、電解ガスを局所発生させて共析率を向上するためには、低Tgで高分子量のアニオン型樹脂とすることが好ましい。Tgが−50℃以下の場合、析出塗膜の粘性が強すぎ焼付硬化後に流動が大きく、+25℃以上になると流動性が低下しCo2MnO4微粒子共析時に発生したガス跡を消すことができずピンホール状となる。MWが5万以下ではCo2MnO4微粒子の分散性が低下する。また20万以上になると流動性が低下し塗膜中のCo2MnO4微粒子の均一な分散が悪くなり、見た目も不均一な外観となる。
また後述のシラン系カップリング剤を用いて、アニオン型樹脂と金属酸化物微粒子とをカップリング反応させると、Co2MnO4微粒子に代表される金属酸化物微粒子の析出効率を飛躍的に向上させることができる。
(2)混合液の作成
シラン系カップリング剤として、イソシアネート官能性シラン(OCN−C3H6−Si(OC2H5)3)を用い、この溶剤nMP(nメチルピロリドン)3質量部と(1)で作成したアニオン型樹脂120質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)60部を混ぜた後、スズ系触媒(DBTDL0.2部)を添加し60℃で1時間反応させることにより、シラン系カップリング剤のイソシアネート基とアニオン型樹脂のOH基が反応し、シラン系カップリング剤がアニオン型樹脂に付加する。(表2第一成分)
(配合割合は質量部)
Co2MnO4微粒子(平均粒径0.5μm)100質量部と溶剤nMP(nメチル
ピロリドン)200部と3ミリ径のジルコニアビーズ750質量部を混合し、撹拌機で湿式分散を行いスラリー状のCo2MnO4微粒子を得る。(表3第二成分)
(配合割合は質量部)
前記第二成分の中に前記第一成分を添加し均一混合する。
さらに、トリエチルアミン1.4質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)10質量部と消泡剤(サーフィノール104)10質量部を添加し攪拌する。
均一混合した後、イオン交換水500質量部を少しずつ加えて、Co2MnO4微粒
子とアニオン型樹脂との混合液を作成する。24時間攪拌し、シラン系カップリング剤の加水分解反応を促したのち、イオン交換処理で不純物を除去し、pH9.0±0.2浴電導度200±50μS/cmの混合液が得られる。得られた分散液は、Co2MnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)の混合液として用いられる。
なお、下記の配合物第一成分および第二成分の混合割合を変えることでCo2MnO4微粒子:樹脂=0.5:1(質量比)〜2:1(質量比)の作成ができる。
(3) 電着塗装
上記(2)で作成したアニオン型分散剤組成物をその中の分散剤粒子が、電着液1リットル当り100gになるように分散させ、25℃の溶液において、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)下で電着塗装を行った。
なお、電着塗装は下記のようにして行った。
形状が断面長方形の単純形状である基材11の試験片に、必要に応じて脱脂処理、酸洗処理、電解研磨などを施した後、前記混合液に被処理品を浸漬し、通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
(3−1) 前処理
なお、各電極には以下の1〜7を順に行う前処理を行った。
1. 電解洗浄剤による陰極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
2. 水洗
3. 電解洗浄剤による陽極極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
4. 水洗
5. 酸中和(硝酸200mL/L)
6. 水洗
7. 純水洗
また、陽極とする基材11の試験片には、別途、脱脂処理、酸洗処理などを施してもよい。
脱脂処理は、たとえば、基材11の表面にアルカリ水溶液を供給することにより行われる。アルカリ水溶液の供給は、たとえば、基材11にアルカリ水溶液を噴霧するかまたは基材11をアルカリ水溶液に浸漬させることにより行われる。アルカリとしては金属の脱脂に常用されるものを使用でき、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩などが挙げられる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、たとえば、処理する金属の種類、基材11の汚れの度合いなどに応じて適宜決定される。さらにアルカリ水溶液には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤の適量が含まれていてもよい。脱脂は、20〜50℃程度の温度下(アルカリ水溶液の液温)に行われ、1〜5分程度で終了する。
脱脂後、基材11を水洗され、次の酸洗処理に供される。その他、酸性浴に浸漬する脱脂、気泡性浸漬脱脂、電解脱脂などを適宜組み合わせて実施することもできる。酸洗処理は、たとえば、基材11の表面に酸水溶液を供給することにより行われる。酸水溶液の供給は、脱脂処理におけるアルカリ水溶液の供給と同様に、基材11への酸水溶液の噴霧、基材11の酸水溶液への浸漬などにより行われる。酸としては金属の酸洗に常用されるものを使用でき、たとえば、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。酸水溶液中の酸濃度は、たとえば、基材11の種類などに応じて適宜決定される。酸洗処理は、20〜30℃程度の温度下(酸水溶液の液温)に行われ、15〜60秒程度で終了する。脱脂処理および酸洗処理のほかに、スケール除去処理、下地処理、防錆処理などを施してもよい。これらの処理の後、基材11を70〜120℃程度の温度下に乾燥させて次の電着塗装に供する。
(3−2)電着工程
このようにして、前処理を行った基材11の試験片を、25℃の溶液において、基材11をプラス、対極としてSUS304の極板をマイナスの極性とし、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)して通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。
電着工程後の基材11は、通電槽から取り出され、加熱処理が施される。この未硬化の電着塗膜が形成された基材11に加熱処理することによって、基材11表面に硬化した電着塗膜が形成されたセル間接続部材1が得られる。
電着塗装は、公知の方法に従い、たとえば、前記混合液を満たした通電槽中に基材11を完全にまたは部分的に浸漬して陽極とし、通電することにより実施される。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、前記混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(前記混合液温度)10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、前記混合液の液温10〜45℃とすればよい。
加熱処理は、電着塗膜を乾燥させる予備乾燥と、電着塗膜を硬化させる硬化加熱とを含み、予備乾燥後に硬化加熱が行われる。予備乾燥は、60〜140℃程度の加熱下に行われ、3〜30分程度で終了する。硬化加熱は、150〜220℃程度の加熱下に行われ、10〜60分程度で終了する。このようにして、前記混合液による電着塗膜が得られる。
(3−3)(焼結工程)
前記混合液としてCo2MnO4微粒子(粒子径0.5μm):樹脂=2:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、5%H2/N2ガスを流通させた酸素分圧1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下の電気炉中において950℃で2hr保持してアクリル樹脂を分解消失させるとともに、Co2MnO4粒子の焼結および基材11の試験片の表面との反応を起こさせる焼結工程を行い、基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12を形成した。得られた保護膜を5%H2/N2ガスを流通する条件下で、室温まで冷却して取り出したところ、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
保護膜を形成した金属基材の裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、1Ω以下(0.21〜0.23Ω)と低抵抗であることを確認するとともに、大部分は金属光沢が残っていることを確認した。
一般的に、SOFCのスタッキングの工程においては、コーティングを焼結させたセル間接続部材とセルを交互に積層させ、その間に導電性の接合材を挟み込み、また、必要な部分にガスシール材(ガラス等)を塗布したのちに熱処理を行い、接合材とセル/セル間接続部材の密着強度を高めたりシール材を焼結させてガスリークを担保したりする。
この工程はスタックの構造、設計思想により異なるが、作動温度以上、1050℃以下で行われることが一般的である。(1050℃を超えると合金のセル間接続部材の劣化が起きてしまう)そこで、得られたセル間部材に対して、一般的な使用環境として大気中850℃で50hr熱処理を行った。その後断面観察を行ったところ、非常に緻密な膜質の保護膜が得られていることがわかった(図4参照)。図より先の焼結に用いた還元雰囲気では、保護膜が一旦還元作用を受けて、酸化コバルト(Co34やCoO)が金属コバルトに、Mn34がMnOに還元された状態で焼結したものと考えられる。一旦無機酸化物粒子が還元され、金属コバルトに変化することで焼結性が向上し、その後の大気雰囲気での熱処理を経て再度酸化され、結果として非常に緻密な保護膜が得られたと考えられる。
<実施例2>
Co2MnO4を、Co1.5Mn1.54(粒子径0.5μm)に替えた以外は、実施例1と同様に電着塗膜を作成した。表面は電着塗装を施しているが、裏面は電着塗装は施しておらず、金属が露出した状態となっていた。
5%H2/N2ガスを流通させた電気炉中において、室温から950℃まで5℃/分の速度で昇温し、950℃で2hr保持し、室温まで冷却し、保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、1Ω以下(0.21〜0.23Ω)と低抵抗であることを確認するとともに、大部分は金属光沢が残っていることを確認した。
さらに、得られたセル間部材に対して、大気中850℃で50hr熱処理を行った。熱処理後、断面観察を行ったところ、非常に緻密な膜質の保護膜が得られた(図5参照)。
<実施例3>
Co2MnO4を、Co34(粒子径0.5μm)に替えた以外は、実施例1と同様に電着塗膜を作成した。表面は電着塗装を施しているが、裏面は部分的に電着塗装を行っているが、一部金属が露出した部分が存在する状態となっていた。
3%H2/N2ガスを流通させた酸素分圧1.69×10-9atm以下の還元雰囲気の電気炉中において、室温から950℃まで5℃/分の速度で昇温し、950℃で2hr保持し、室温まで冷却し、保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、0.21Ωという低抵抗であることを確認するとともに、大部分は金属光沢が残っていることを確認した。
さらに、得られたセル間部材に対して、大気中850℃で50hr熱処理を行った。熱処理後、断面観察を行ったところ、非常に緻密な膜質の保護膜が得られた(図6参照)。
<比較例1>
焼結条件を、大気雰囲気の500℃で1時間保持する焼成工程の後950℃で2時間保持として行った以外は実施例2と同様に保護膜を得た。
具体的には、焼結加熱条件は、昇温速度5℃/分で500℃まで大気雰囲気で昇温し1時間保持する焼成工程によりバインダを焼失させ、さらに、5%H2/N2ガスを流通させ、1時間保持、その後、昇温速度5℃/分で950℃まで昇温して2時間保持とした。
得られた保護膜には、1cm2あたりの1mm以上の長さの肉眼で確認できる割れは5本以上存在した。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、0.21Ωという低抵抗であることを確認するとともに、大部分は金属光沢が残っていることを確認した。
<比較例2>
焼結条件を、真空雰囲気(酸素分圧9.87×10-5atm(1atm=980hPa))とし、950℃で2hr保持しとした以外は、実施例2と同様に保護膜を得た。得られた保護膜は、割れ、剥がれ等の不具合がない良好な外観であった。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、高抵抗で測定できなかった。(MΩ以上)外観上、全面くすんだ黒色となり金属光沢はなかった。
<比較例3>
大気雰囲気(酸素分圧0.21atm)の電気炉中において、1000℃で2hr保持とした、更に前記混合液として微粒子(0.5μm):樹脂=1:1(質量比)とした以外は、実施例2と同様に保護膜を得た。
その後、裏面の酸化状態を評価するため、テスターで電気抵抗を測定した。その結果、高抵抗で測定できなかった。(MΩ以上)外観上、全面くすんだ黒色となり金属光沢はなかった。また、保護膜は無機酸化物微粒子同士の結合度が低く(緩い)十分な焼結度であるとは言えないものであった(図7参照)。
<比較例4>
バインダをセルロース系バインダとし、実施例2と同様に保護膜を得た。
セルロース系バインダとしては、ヒドロキシプロピルセルロースを用い、保護膜材料中における無機酸化物粒子とバインダとの比率は15:2.7とした。この保護膜材料を用いて、電着塗装に代えてディップコートにより保護膜材料の被膜を得た。この被膜を乾燥後、3%H2/N2雰囲気に保った電気炉で焼結し、保護膜を得た。焼結加熱条件は、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温し1時間保持、さらに、昇温速度5℃/分で950℃まで昇温して2時間保持とした。
得られた保護膜は、めくれや剥がれ、割れが散見され、耐久性に懸念がある状態であった。1cm2あたりの1mm以上の長さの肉眼で確認できる割れは10本以上存在し、高い耐久性を持つ保護膜としては機能しない状態であった。また、焼結工程後試料中に含まれる炭素成分について定量したところ14.6質量%と多量の残渣が炭化物として残存していることが明らかとなった。
<アクリル系バインダの熱分解>
実施例2において形成された電着塗膜を掻き取った試料について、5%H2/N2雰囲気において示差熱分析を行ったところ図8のようになった。図より、約400℃における大きな重量減少がみられることから、実施例2において用いたアクリル系バインダは、約400℃において分解して消失しているものと考えられる。また、アクリル系バインダの消失後試料中に含まれる炭素成分について定量したところ1.94質量%であることがわかり、試料の重量減少はほぼアクリル系バインダの全量に相当していることが明らかになった。
<まとめ>
上記実施例、比較例をまとめると表4のようになる。


表4の実施例1〜実施例3からわかるように、無機酸化物微粒子としてはいずれの材質のものを用いたとしても同様に還元雰囲気における焼結が可能であることが明らかであり、Co成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料は、アクリル系バインダの分解と無機酸化物の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気下で焼結できることがわかる。
さらに、実施例2、比較例1、比較例2より保護膜材料の焼結条件は、上記還元雰囲気において焼結された保護膜は緻密でひび割れ等の無い良好な保護膜が得られている。それに対して、アクリル系バインダの熱分解を大気中など高酸素分圧下で行うとバインダの熱分解時の発生応力が還元雰囲気下に比べて大きくなると考えられる。
結果として、大気中で焼結するとひび割れの生じやすい保護膜となり、かつ焼結度合いも緩く、無機酸化物微粒子同士の結合度が不十分であるものと考えられる。また、真空雰囲気とした場合でも、十分な還元雰囲気が得られず、アクリルバインダが分解消失しているものの焼結が十分に進行していないうえに、金属基板裏面が酸化を受け、高抵抗になることがわかり、前記還元雰囲気を、図9に示すように、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo34がCoに還元される酸素分圧以下の領域に示される条件(例えば、950℃(T=1223K(絶対温度))においては、酸素分圧PO2=1.69×10-9atm(1atm=980hPa)以下)とすることが好ましいことがわかる。なお、酸化コバルトの還元される条件は、酸化マンガンの還元される条件よりも穏やかで、かつ、コバルト金属の焼結は他の金属に比して容易に進行することから、コバルトの還元される条件に基づき還元雰囲気を設定するものとしている。
さらに実施例1と比較例4の比較から、還元雰囲気において焼結を行った場合、アクリル系バインダは分解消失可能であるのに対して、セルロース系バインダは分解消失せず、保護膜の物性を大きく損なうことがわかる。比較例4の場合、保護膜の焼結が進まずめくれ、割れが生じている。これはバインダのセルロースが炭化して残存することで無機粒子同士および無機粒子同士の焼結、無機粒子と基材との反応が阻害されていると考えられる。それに対して、実施例1と類似の実施例2の場合、アクリル系バインダは、ほとんど消失していることから、還元雰囲気においてもアクリル系バインダは良好に分解除去できることがわかる。
〔別実施形態〕
上記実施形態では、成膜工程を電着塗装によって行ったが、湿式成膜法であれば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、等種々公知の方法を利用することができる。
本発明の保護膜形成方法によれば、金属基材の表面の一部分に保護膜を形成するに際して、その保護膜を確実に焼結することができ、しかも、他の部分に酸化被膜を生じない、簡便な燃料電池用部材の製造方法により、セル接続部材、SOFC用セル等の燃料電池用部材を提供することができる。
1 :セル間接続部材
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :金属基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :セル

Claims (8)

  1. 固体酸化物形燃料電池に用いられる金属基材の表面の一部分にCo成分を含有する無機酸化物粒子を主材とする保護膜材料を湿式成膜する成膜工程、
    前記成膜工程で成膜された前記金属基材を焼結する焼結工程、
    を順に行う燃料電池用部材の製造方法であって、
    前記保護膜材料が、アクリル系バインダを含むとともに、
    前記焼結工程を、前記アクリル系バインダの分解と前記無機酸化物粒子の焼結とをともに実行可能な還元雰囲気で行う燃料電池用部材の製造方法。
  2. 前記還元雰囲気が、500℃以上1050℃以下の温度で、熱力学的にCo34がCoに還元される酸素分圧以下である請求項1に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  3. 前記成膜工程が、アニオン電着塗装法による請求項1または2に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  4. 前記アクリル系バインダが、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種以上を含有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  5. 前記金属基材が、フェライト系ステンレス鋼製である請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  6. 前記無機酸化物粒子が、Co−Mn系スピネル酸化物を主成分とする金属酸化物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  7. 前記無機酸化物粒子が、Co1.5Mn1.54、Co2MnO4、Co34から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項6に記載の燃料電池用部材の製造方法。
  8. 前記焼結工程を、500℃〜1050℃で行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料電池用部材の製造方法。
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