JP2015201422A - 固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法、セル間接続部材接合方法、および接合方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、このようなSOFC用セルは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸素イオンの移動に伴って、一対の電極間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。セル間接続部材にはインターコネクタやインターコネクタを介してセル間を電気的に接続する部材(集電部材)等が該当する。インターコネクタは燃料と空気の隔壁となる部材である。
さらに、SOFC用セルとしての性能上、空気極とセル間接続部材との接合部位においても、その部位の抵抗が従来物の抵抗と比較して同等程度であることが必須となる。
上記目的を達成するための本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法は、固体酸化物形燃料電池用セルの空気極とセル間接続部材とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法であって、前記セル間接続部材と前記空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成するプロセスを含むことを特徴とする。
セル間接続部材と空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成することにより、接合ペーストは焼成により接合材となる。接合ペーストに含まれる金属粉末は、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である金属であって、すなわち酸化物ではない状態の金属粉末であるから、その全てまたは一部が焼成により酸化物に変化するので、接合材は導電性をもつことになる。これにより、固体酸化物形燃料電池用セルとして十分な接着強度と導電性を確保することができる。そして、それらを焼成する温度を燃料電池作動温度〜950℃の温度とすることにより、焼成・焼結に要する時間を必要以上に短くすることなく、低温で焼成することができ、燃料電池の構成要素に熱的な負荷をかけることなく燃料電池用セルを製造することができる。
前記固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法は、前記セル間接続部材の基材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素であるものとすることができる。
コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜は、基材として用いられる種々材料との密着性が高く、受熱に対する耐久性が高く、かつ、緻密層を形成した際にスピネル構造の酸素バリア性が高く、Cr飛散防止効果の高い保護膜に形成される。また、スピネル構造を有する保護膜材料の中でも上記の材料による保護膜は、基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さく、特に製造工程(保護膜の焼成時)において、一度は晒される800℃〜1000℃の環境下においても基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さいうえに、Crの飛散抑制効果がきわめて高いことが見出されている。
前記接合ペーストに前記保護膜の形成材料と同系の酸化物材料をさらに含有させることができる。
接合ペーストが保護膜と同系の酸化物材料を含有するため、保護膜に対する接合力を強くすることができる。また、接合ペーストが金属粉末と酸化物材料の両方を含有するため、熱膨張率の観点からも接合のための材料として好適である。
ここで同系の酸化物材料とは、たとえばCoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)からなる保護膜に対してCoxMnyO4(0≦x、y≦3、x+y=3)、ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)からなる保護膜に対してZnzCoxMnyO4(0≦x、y、z≦3、x+y+z=3)のように、主要な元素構成が共通しているものをいう。
前記保護膜の形成材料をコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)とし、前記金属粉末をCoとすることができる。
Coはコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4に含まれる金属元素であって、酸化物の状態で導電性を有し、さらに卑金属の一つでもある。このCoの金属粉末を接合ペーストに含有させることで、十分な接着強度をもち、長期にわたって高い電気伝導性を示すSOFC用セルを実現できることが実験的に明らかになっている。
また、前記セル間接続部材の基材がSUS材であってもよい。
セル間接続部材の基材がSUSである場合、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。また、SUSはCrを含んでおり、作動環境である高温大気雰囲気で表面にCr2O3やMnCr2O4の酸化被膜を形成する。この酸化被膜は経時的に膜厚が厚くなり、電気抵抗が増大するとともに、作動環境である高温大気雰囲気で6価クロムの化合物として蒸発し、空気極を被毒させて劣化を引き起こすことが知られている(Cr被毒と呼ばれる)。本発明は、SUSの表面に耐熱性に優れた金属酸化物材料をコーティングすることにより、Crを含む酸化被膜の成長を抑制し、Cr被毒の発生を抑制することができる。
また、本発明のセル間接続部材接続方法の特徴構成は、固体酸化物形燃料電池用セルに用いられる空気極と、セル間接続部材を接合するセル間接続部材接合方法であって、
前記セル間接続部材と前記空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成するプロセスを含む点にある。
上記の接合方法によれば、セル間接続部材と空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成することにより、接合ペーストに含まれる金属粉末は、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である金属であって、すなわち酸化物ではない状態の金属粉末であるから、その全てまたは一部が焼成により酸化物に変化するので、接合材は導電性をもつことになる。これにより、固体酸化物形燃料電池用セルとして十分な接着強度と導電性を確保することができる。そして、それらを焼成する温度を燃料電池作動温度〜950℃の温度とすることにより、焼成・焼結に要する時間を必要以上に短くすることなく、低温で焼成することができ、燃料電池の構成要素に熱的な負荷をかけることなくセル間接続部材と空気極とを接合することができる。
前記セル間接続部材接合方法は、前記セル間接続部材の基材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素であるものとすることができる。
上記の保護膜をセル間接続部材に設け、前記金属粉末を保護膜に含まれる金属元素とすることで、前記保護膜と前記空気極との間を、前記保護膜に含まれる金属元素のうち酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成するプロセスを行うこととなる。この接合方法により、十分な接着強度を確保しつつ、スピネル酸化物単体を接合材として用いるよりも接触抵抗を低減できることが実験的に見出された。接合ペーストが焼成されてなる接合材に、保護膜に含まれるものと同じ金属元素が含有されることが、接合強度の向上と抵抗値の低減に寄与している。
また、本発明の接合方法の特徴構成は、Crを含有する合金からなる第1部材と、LaMO3(M=Mn,Fe,Co,Ni)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物からなる第2部材とを接合する接合方法であって、
前記第1部材と前記第2部材との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、700℃〜950℃の温度で焼成するプロセスを含む点にある。
上記の接合方法によれば、第1部材と第2部材の間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、700〜950℃の温度で焼成することにより、接合ペーストは焼成により接合材となる。接合ペーストに含まれる金属粉末は、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である金属であって、すなわち酸化物ではない状態の金属粉末であるから、その全てまたは一部が焼成により酸化物に変化するので、接合材は導電性をもつことになる。これにより、第1部材と第2部材との間の接着強度と導電性を確保することができる。そして、それらを焼成する温度を700〜950℃の温度とすることにより、焼成・焼結に要する時間を必要以上に短くすることなく、低温で焼成することができ、構成要素に熱的な負荷をかけることなく第1部材と第2部材とを接合することができる。
上記の接合方法は、前記第1部材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素であるものとすることができる。
上記の保護膜を第1部材に設け、前記金属粉末を保護膜に含まれる金属元素とすることで、前記保護膜と前記第2部材との間を、前記保護膜に含まれる金属元素のうち酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、700〜950℃の温度で焼成するプロセスを行うこととなる。この接合方法により、十分な接着強度を確保しつつ、スピネル酸化物単体を接合材として用いるよりも接触抵抗を低減できることが実験的に見出された。接合ペーストが焼成されてなる接合材に、保護膜に含まれるものと同じ金属元素が含有されることが、接合強度の向上と抵抗値の低減に寄与している。
前記保護膜の形成材料が前記コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)である場合に、前記金属粉末がCoとすることができる。
先にも示したように、Coはコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4に含まれる金属元素であって、酸化物の状態で導電性を有し、さらに卑金属の一つでもある。このCoの金属粉末を接合ペーストに含有させることで、十分な接着強度をもち、長期にわたって高い電気伝導性を示す接合構造を実現できることが実験的に明らかになっている。
この点に関して、先にも示したように、100%のコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4を接合ペーストとして使用する場合より、その接合ペーストにCoの金属粉末(接合ペーストの状態では、金属Coの粉末として存在する)を含有することで、接合強度の向上、抵抗値低減の効果を得ることができる。接合ペーストにおけるCoの金属粉末の含有割合は、接合強度に関しては、その割合が高い方が好ましいことを発明者等は明らかにした。例えば、接合ペーストに含有される金属粉末と酸化物材料との全体に対する体積割合で、Coの金属粉末を10%より多くすることが好ましく、20%以上とすることが好ましく、また40%以上、さらには、80%以上、さらに好ましくは、全体(100%)がCoの金属粉体であることが好ましい。一方、抵抗値に関しては、Coの金属粉末の含有割合は、40%以下とするのが好ましく、20%とするのがより好ましい。すなわち、接合強度の向上と抵抗値低減の効果を両立すべく、接合ペーストに含有される金属粉末と酸化物材料との全体に対する体積割合で、金属粉末を10%より大きく40%以下とするのが好ましく、20%以上40%以下とするのがより好ましい。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸素イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸素イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金または酸化物からなるセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31側の溝2が空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能する。燃料極32とセル間接続部材1が密着配置されることで、燃料極32側の上記溝2が燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、このような積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
セル間接続部材1は、図1および図3に示すように、単セル3との間で空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成されている。なお基材11の材料としては、先に述べたようにCrを含有する合金または金属酸化物が用いられる。なお、基材11の表面に、次に述べる保護膜12を設けることでCr被毒を抑制することができ、固体酸化物形燃料電池用セルとして好適である。
基材11に設けられる保護膜12は、導電性セラミックス材料(金属酸化物微粒子)を含有する。保護膜12に含有させる金属酸化物としては、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)または亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)用いられる。あるいは、保護膜12にコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有させる。具体的には、平均粒径が0.1μm以上2μm以下のZn(Co,Mn)O4またはCo1.5Mn1.5O4、ZnCo2O4、MnCo2O4、Co3O4の微粒子が好適に用いられる。
続いて、基材11を500℃以上の高温で処理し、塗膜中の樹脂等の成分を焼き飛ばし、金属酸化物微粒子を焼結させる。
ウエットコーティング法としては、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、電着塗装法が例示できる。
ドライコーティング法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、電気化学気相成長(EVD)法、イオンビーム法、レーザーアブレーション法、大気圧プラズマ成膜法、減圧プラズマ成膜法、溶射法、エアロゾルデポジション法(AD法)が例示できる。
(1)ポリアクリル酸等のアニオン型樹脂を含有する電着液に、金属酸化物微粒子を1リットル当たり100gになるように分散させ、混合液を作成する。具体的には、質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(1:1)〜(2:1)とする。
(2)混合液を満たした通電漕の中に基材11を浸して陽極とし、別に設けた陰極板との間に通電することにより、基材11の表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
(3)続いて、基材11に加熱処理を行うことで、基材11の表面に硬化した電着塗膜が形成される。加熱処理としては、電着塗膜を乾燥させる予備乾燥と、それに続いて電着塗膜を硬化させる硬化乾燥とを行う。
(4)最後に、基材11を電気炉を使用して1000℃で2時間焼成し、保護膜12を備えたセル間接続部材1を得る。
セル間接続部材1と空気極31は、保護膜12と空気極31との間を金属粉末が含有される接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成することにより接合される。すなわち、焼成により接合ペーストが接合材4となり、セル間接続部材1は、接合材4により空気極31に接合され、燃料電池用セルCとして形成される。さらに、その燃料電池用セルCを順次直列に接合することによって燃料電池のセルスタックが形成される(図1,3参照)。
ステンレス鋼材からなるセル間接続部材1用の基材11表面にCo1.5Mn1.5O4よりなる塗膜を設け、前記試験片を1000℃で2時間加熱する熱処理を行い(焼成工程)、基材11の表面に保護膜12を形成した試験片52を作成した。塗装の条件としては、焼成後の保護膜12の膜厚が5〜10μm程度になる条件にて、アニオン電着塗装を行った。
得られた試験片を、LSCF6428(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ)からなる空気極31に対して、Co金属の粉末を含有する接合ペーストによって接合・接着し、燃料電池の作動温度(具体的には700℃程度)〜950℃の温度で焼成させて、試験用セルを得た。この例では、焼成温度を800℃とした。
試験開始から300時間経過した時点の抵抗値は、76.33mΩcm2となった。固体酸化物形燃料電池用セルとして十分に低い抵抗値であり、実施例1に係る接合は高い電気伝導率を備えることが確認された。抵抗値の経時変化については、他の実施例・比較例の結果と合わせて後述する。
上記実施例1と同様にして試験片52を作成し、Co金属の粉末を含有する接合ペーストに替えてCo金属粉末とCo2MnO4金属酸化物微粒子(以下「C2M」または「C2M微粒子」と記載する)を含有する接合ペーストを用いて試験片52と空気極31を接合・焼成し、試験用セルを得た。Co金属粉末とC2M微粒子の体積比を変えて実施例2〜5の試験用セルおよび試験部材を作成した。各実施例におけるCo金属粉末とC2M微粒子の体積比は次の通りである。
実施例2 Co:C2M=80:20
実施例3 Co:C2M=60:40
実施例4 Co:C2M=40:60
実施例5 Co:C2M=20:80
比較例1では、実施例1〜5と同様の試験片52に対し、C2M微粒子のみを含有する接合ペーストを用いて試験片52と空気極31とを接合・焼成して試験用セルを得た。
比較例2では、実施例1〜5と同様の試験片52に対し、貴金属である銀の金属粉末を接合ペーストに混合し、試験片52と空気極31とを接合・焼成して試験用セルを得た。
抵抗値の経時変化試験を500時間程度行った結果を図5に示す。凡例中、「Co[100]/C2M[0]」とあるのは、実施例1のCo粉末のみを接合ペーストに含有させた試験用セルの結果を示す。「Co[80]/C2M[20]」とあるのは、実施例2のCo金属粉末とC2M微粒子(Co2MnO4金属酸化物微粒子)の体積比をCo:C2M=80:20とした試験用セルの結果を示す。
以下同様に、「Co[60]/C2M[40]」は実施例3(Co:C2M=60:40)、「Co[40]/C2M[60]」は実施例4(Co:C2M=40:60)、「Co[20]/C2M[80]」は実施例5(Co:C2M=20:80)を示す。
「Co[0]/C2M[100]」とあるのは、比較例1のC2M微粒子のみを用いた試験用セルの結果を示す。「Ag」とあるのは、比較例2の銀の金属粉末を混合した接合ペーストを用いた試験用セルの結果を示す。
上述の抵抗値の経時変化試験を5000時間行った結果を図6に示す。この試験は、図5に結果を示す上述の試験1に用いた試験用セル(実施例1〜5および比較例1)を、引き続き同条件(800℃の燃料電池使用環境)の下におき、試験用電極間の抵抗値の経時変化を調べたものである。図6の凡例中、「Co[100]/C2M[0]」とあるのは、図5と同様に、実施例1のCo粉末のみを接合ペーストに含有させた試験用セルの結果を示す。「Co[80]/C2M[20]」とあるのは、実施例2のCo金属粉末とC2M微粒子(Co2MnO4金属酸化物微粒子)の体積比をCo:C2M=80:20とした試験用セルの結果を示す。以下同様のため省略する。
実施例1〜5、比較例1および2の接着強度試験の結果を表2に示す。比較例1および3〜6については、引張試験機の測定下限より小さい力で試験片52が剥離したため、接合強度が測定できなかったため、接合強度を「(計測不可)」とした。すなわち、比較例1および3〜6の接合強度は実施例1〜5に比べて非常に小さく、Co金属粉末の混合により接合強度が大きく改善したことを示している。また、実施例1〜5の接合強度は、いずれも固体酸化物形燃料電池用セルとして十分に高い値である。すなわち、Co金属粉末の体積比を10%よりも大きくすることが好ましいことが確認された。また、Co金属粉末の体積比を20%以上とすることが特に好適であると確認された。
実施例1の試験用セルを、経時変化試験と同様に集電材(白金メッシュ)を介してSUSからなる一対の試験用電極間に挟持させ、通電して抵抗値を測定しながら、雰囲気温度を室温、800℃、室温に繰り返し変化させて抵抗値の変化を測定した(サーマルサイクル試験)。800℃への昇温は2〜3時間で行い、室温への変化は自然放冷により行った。試験は1200時間にわたって行い、上述の室温、800℃、室温に変化させるサーマルサイクルを72回行った。その結果を図7に示す。
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
4 :接合材
11 :基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :固体酸化物形燃料電池(SOFC)用セル
Claims (10)
- 固体酸化物形燃料電池用セルの空気極とセル間接続部材とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法であって、
前記セル間接続部材と前記空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成するプロセスを含む固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 - 前記セル間接続部材の基材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、
前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 - 前記接合ペーストは前記保護膜の形成材料と同系の酸化物材料をさらに含有する請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記保護膜の形成材料がコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)であり、前記金属粉末がCoである請求項2または3に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記セル間接続部材の基材がSUS材である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 固体酸化物形燃料電池用セルに用いられる空気極と、セル間接続部材を接合するセル間接続部材接合方法であって、
前記セル間接続部材と前記空気極との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、燃料電池の作動温度〜950℃の温度で焼成するプロセスを含むセル間接続部材接合方法。 - 前記セル間接続部材の基材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、
前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素である、請求項6に記載のセル間接続部材接合方法。 - Crを含有する合金からなる第1部材と、LaMO3(M=Mn,Fe,Co,Ni)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物からなる第2部材とを接合する接合方法であって、
前記第1部材と前記第2部材との間を、酸化物の状態で導電性を有しかつ卑金属である元素の金属粉末を含有する接合ペーストで接着接合し、700℃〜950℃の温度で焼成するプロセスを含む接合方法。 - 前記第1部材に、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1−x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する保護膜を焼成して設けるプロセスを含み、
前記金属粉末は前記保護膜に含まれる金属元素である、請求項8に記載の接合方法。 - 前記保護膜の形成材料がコバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)であり、前記金属粉末がCoである請求項9に記載の接合方法。
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