JP5778711B2 - セル間接続部材の製造方法およびセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セル - Google Patents

セル間接続部材の製造方法およびセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セル Download PDF

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本発明は、CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法およびセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セルに関する。
かかるSOFC用セルは、電解質膜の一方面側に空気極を接合するとともに、同電解質膜の他方面側に燃料極を接合してなる単セルを、空気極または燃料極に対して電子の授受を行う一対の電子伝導性の基材(セル間接続部材)により挟み込んだ構造を有する。
そして、このようなSOFC用セルでは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極の間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。セル間接続部材にはインターコネクタやインターコネクタを介してセル間を電気的に接続する部材が該当する。
インターコネクタは燃料と空気の隔壁となる部材である。
近年の開発の進展に伴い、SOFCの作動温度が下がってきている。従来の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性の観点から基材としてランタンクロマイトに代表される金属酸化物が使用されていたが、最近は作動温度が700℃〜800℃まで下がっており、合金が使用できるようになってきた。基材として合金を使用することにより、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
前記合金としては、接合される金属酸化物の熱膨張率との整合性から、フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多いが、耐熱性により優れたオーステナイト系ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni合金や、ニッケル基合金であるNi−Cr合金などが用いられることもある。また、合金ではなく、(La,Ca)CrO3(カルシウムドープランタンクロマイト)に代表される金属酸化物が用いられることもある。
これらの合金等は、ほぼ例外なくCrを含んでおり、作動環境である高温大気雰囲気で表面にCr23やMnCr24の酸化被膜を形成する。この酸化被膜は経時的に膜厚が厚くなり、電気抵抗が増大するとともに、作動環境である高温大気雰囲気で6価クロムの化合物として蒸発し、空気極を被毒させて劣化を引き起こすことが知られている(Cr被毒と呼ばれる)。また、(La,Ca)CrO3(カルシウムドープランタンクロマイト)を用いた場合でも合金を用いた場合よりも少ないが、Cr被毒が生じる場合がある。そこで、合金、(La,Ca)CrO3(カルシウムドープランタンクロマイト)の表面に耐熱性に優れた金属酸化物材料を保護して劣化を抑制する試みがなされている。また、これらの合金等としてMnを含む材料も一般的に用いられることがある。
また、合金はSOFCの他の構成材料との熱膨張率の整合性を取るため、フェライト系ステンレスが使用されることが多い。(例:日立金属社製 ZMG232L)フェライト系ステンレスはFe、Crの他にMnを0.1〜1重量%含むものが多い。
また、SOFC用セルは、その製造工程において、セル間接続部材用の基材と空気極および燃料極との間の接触抵抗をできるだけ小さくするなどの目的で、それらを積層した状態で、作動温度よりも高い1000℃〜1250℃程度の焼成温度で焼成する焼成処理を行う場合がある(例えば、特許文献1、2を参照。)。
特開2004−259643号公報 国際公開WO2009/131180号パンフレット
上記実情から、SOFC合金インターコネクタに対して、スピネル系酸化物に代表されるSOFC作動温度付近において導電性を発現する金属酸化物材料からなる保護することは、SOFCの長期耐久性を確保する上で必須の技術となっている。スピネル系酸化物は特に緻密な構造を有するため、Crの飛散抑制効果が特に高いと考えられている。
保護膜材料としては、Co−Mn系スピネル、Zn−Co系スピネル、Zn−Co−Mn系スピネル、Zn−Mn系スピネル、スピネル酸化物でないものとしてもZnO等が用いられている。
しかし、このような材料からなる保護膜によっても、Crの飛散抑制や、長期耐久性の向上について、さらなる改良が望まれていた。
そこで、本発明は上記実状に鑑み、より均一でかつ緻密な保護膜を形成することにより、Crの飛散を抑制し、耐久性の向上を図る技術を提供することを目的とする。
記目的を達成するための本発明の特徴構成は、CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法であって、
前記保護膜が、Zn x (Co y Mn (1-y) (3-x) 4 (0<x<1、0<y×(3−x)≦2)を含み
前記基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を1000℃以上1100℃以下で、2時間以上焼成する焼成工程を行い、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層(以下単に緻密層と称する)を、前記基材表面に形成されるCr23層と密着形成させ、前記緻密層の厚さを1μm以上に成長させる点にある。
記基材に塗膜形成工程を行うと、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜が形成される。前記塗膜を熱処理すると、熱処理によって、ステンレスの表面に形成されるCr23酸化被膜と保護膜の間に緻密な膜が形成され、上記緻密層となる。前記熱処理は、保護膜の製造工程においても行われうるし、実使用時における発熱によっても自然に進行することが知られている。
この緻密層は基材中のMn成分と保護膜成分が相互拡散し、反応することでできた層であるため、非常に緻密であり、酸素のバリア性が高いと考えられる。緻密層の存在により、Crの飛散(Cr被毒)の抑制による空気極劣化の低減、Cr23酸化被膜の膜厚増大速度の抑制によるオーミック抵抗増加の抑制、などが実現できる。
そのため、この緻密層を十分機能させることによって、SOFCの耐久性を延長できると考えられる。そこで、本発明者らが検討した結果、前記基材表面に形成されるCr23層と密着形成させ、前記緻密層厚さ前記を1μm以上に成長させることによって、前記緻密層は十分なCrの飛散防止を実現できるとともに抵抗増加の抑制を実現でき、好適な耐久性向上効果が期待できることがわかる。
なお、前記焼成工程により、前記基材表面には基材に含まれるCrに由来するCr23層が形成される。このCr23層は、通常前記緻密層との密着性が高く、緻密層と基材との間における層間剥離等を防止する効果も発揮している。
護膜材料としては、Co−Mn系スピネル、Zn−Co系スピネル、Zn−Co−Mn系スピネル、Zn−Mn系スピネル、ZnO等の、Co、Zn、Mnから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含むものが有効に用いられる。
これらの金属酸化物成分を用いると、基材として用いられる種々材料との密着性が高く、受熱に対する耐久性が高く、かつ、緻密層を形成した際に、スピネル構造の酸素バリア性が高く、Cr飛散防止効果の高い保護膜に形成されることが明らかになっているので好ましい。本発明者らは、(ZnxCo1-x)Co24(0.45≦x≦1.00)等のZn−Co系材料や、Co1.5Mn1.54等のMn−Co系材料に代表されるものが特に有利に用いられることを既に見出している。さらに、複合酸化物として種々の化合物を検討したところ、Znx(CoyMn(1-y)(3-x)4(0<x<1、0<y×(3−x)≦2)を含む保護膜は、基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さく、特に製造工程時(保護膜の焼成時)において、一度は晒される800℃〜1000℃の環境下においても基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さいうえに、Crの飛散抑制効果がきわめて高いことを見出している。
記緻密層を1μm以上に成長させるには、塗膜をある程度の高温で長時間焼成することが必要であると考えられるが、実際には、後述の実施の形態より800℃では全く緻密層の形成が見られないのに対し、1000℃以上で緻密層の形成が観測された。さらに1100℃においても比較的短時間で緻密層が成長することが確認されている。当然のことながら、1100℃を超える温度ではさらに短時間で緻密層を成長させることができると予想されるが、基板のステンレス部材の耐熱性の上限温度を超えてしまい、焼成時の酸化劣化が著しくなるため、1100℃以下とすることが望ましい。
なお、1000℃以上とした場合2時間以上の加熱で1μm以上の緻密層が成長するとともに、塗膜全体を均一に焼成することができるので好ましい。なお、さらに長時間焼成することを妨げるものではないが、塗膜全体が緻密層に成長してしまうと、それ以上の加熱は基板のステンレス部材の酸化劣化を促進するだけになるため、塗膜の厚さと、目標となる緻密層の厚さを勘案して、加熱時間を適宜設定することが好ましい。
上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法であって、
前記保護膜が、Co 1.5 Mn 1.5 4 を含み、
前記基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記基材に含まれるMnが塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を1050℃以上1100℃以下で焼成する焼成工程を行い、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層を、前記基材表面に形成されるCr 2 3 層と密着形成させ、前記Mn含有緻密層の厚さを1μm以上に成長させる点にある。
記緻密層を1μm以上に成長させるには、塗膜をある程度の高温で長時間焼成することが必要であると考えられるが、実際には、後述の実施の形態より1000℃×2hrでは、緻密層の厚みが0.9μmと不十分な厚みでしか形成できていなかった。一方、1050℃×5hrの焼成では1.7μmの緻密層の形成が観測された。
さらに高温の1100℃ではより短時間で厚い緻密層の形成が期待できると考えられる。
当然のことながら、1100℃を超える温度ではさらに短時間で緻密層を成長させることができると予想されるが、基板のステンレス部材の耐熱性の上限温度を超えてしまい、焼成時の酸化劣化が著しくなるため、1100℃以下とすることが望ましい。
なお、1050℃以上とした場合5時間以上の加熱で1μm以上の緻密層が成長するとともに、塗膜全体を均一に焼成することができるので好ましい。なお、さらに長時間焼成することを妨げるものではないが、塗膜全体が緻密層に成長してしまうと、それ以上の加熱は基板のステンレス部材の酸化劣化を促進するだけになるため、塗膜の厚さと、目標となる緻密層の厚さを勘案して、加熱時間を適宜設定することが好ましい。
た、前記基材上に形成される塗膜がアニオン電着塗装法により形成することができる。
般的な成膜法として、たとえば、ウエットコーティング法、あるいはドライコーティング法によって形成することができる。ウエットコーティング法としては、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、電着塗装法等が例示できる。また、ドライコーティング法としては、たとえば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、電気化学気相成長(EVD)法、イオンビーム法、レーザーアブレーション法、大気圧プラズマ成膜法、減圧プラズマ成膜法、溶射法等が例示できる。ただし、ドライコーティング法は製造装置が複雑であることに加え、製造コストが高くなることから、ウエットコーティング法が推奨される。
ウエットコーティング法により金属酸化物被膜を成膜する場合、金属酸化物そのものには結着性がほとんどないので、金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液を用いて、金属酸化物微粒子と樹脂からなる被膜を形成する被膜形成工程を行い、その被膜から樹脂成分を除去することにより金属酸化物を主成分とする手法が採用される。中でも、電着塗装法によると、アニオン電着を行うことによって、基材の表面には金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液が付着した被膜が形成される。この被膜は、金属酸化物微粒子と樹脂組成物主成分となり、前記樹脂成分の重合に伴い、前記金属酸化物微粒子が凝集一体化されることにより形成されている。この被膜から樹脂成分を除去することによって、金属酸化物微粒子同士が凝集して被膜を形成した保護膜を形成することができる。すると、得られる保護膜は、たとえばディップコートに比べて比較的薄くて均一な塗膜を得ることができるので好ましい。
したがって、アニオン電着塗装を行うと、前記塗膜は基材の全領域に均一に製膜されるので望ましい。
た、本発明のセル間接続部材の特徴構成は、上記セル間接続部材の製造方法により製造された点にある。
記セル間接続部材の製造方法により製造されたセル間接続部材は、上述のごとく、均一で安定した塗膜に焼成による緻密層を1μm以上成長させて形成してあるとともに、その緻密層は前記塗膜に由来するから前記塗膜との一体性が高く、かつ基材表面のCr23に強固に密着するので受熱に対する耐久性が高く、その緻密層により抵抗増加が抑制され、Cr飛散抑制されたものとなっており、長期耐久性が期待できる。
た、前記基材がMnを含むフェライト系ステンレス鋼であってもよい。
た、前記基材にMnを含有するステンレス鋼を用い、保護膜としてスピネル型酸化物を主材とするものを用いる組み合わせにより、基材に対する密着性の高い緻密層を形成させることができ、安定して保護膜を形成させるとともにCrの飛散を抑えることができる。
なお、前記基材の合金をMn含有率0.3%以上とすることによって、Mnを確実に拡散させ緻密層を形成させることでCrの飛散を防止することができるが、Mn含有率の高い基材は、耐酸化力が低いと考えられている点から、1%以下とすることが好ましい。
た、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの特徴構成は、上述のセル間接続部材を空気極と接合してなる点にある。
記セル間接続部材の製造方法により製造されたセル間接続部材は、上述のごとく、均一で安定した塗膜に焼成による緻密層を1μm以上成長させて形成してあるとともに、その緻密層は前記塗膜に由来するから前記塗膜との一体性が高く、かつ基材表面のCr23に強固に密着するので受熱に対する耐久性が高く、その緻密層により抵抗増加が抑制され、Cr飛散抑制されたものとなっており、長期耐久性が期待できる。したがって、このようなセル間接続部材を用いた固体酸化物形燃料電池用セルは、安定して長期耐久性を期待できるものと考えられる。
したがって、主に固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材をきわめて耐久性高く設けることができるので、長期使用によっても安定に動作しうるSOFCを提供することができる。
固体酸化物形燃料電池の概略図 固体酸化物形燃料電池のセル接続部材の使用形態を示す図 保護膜を形成したセル接続部材試験片の断面図 基材上に形成された塗膜を焼成した後の層構造を示す概略図
以下に、本発明のSOFCに用いられるCrを含有する合金または酸化物からなる基材の表面に、保護膜を形成する保護膜形成方法およびSOFC用セル接続部材およびSOFC用セルを説明する。なお、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例は、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
<固体酸化物形燃料電池>
本発明にかかるSOFC用セル接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子電導性の合金または酸化物からなる基材11に保護膜12を形成してあるセル接続部材1(図3に形状が断面長方形の単純形状である場合の模式図を示す)により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。
なお、上記SOFC用セルCを構成する各要素で利用される一般的な材料について説明を加えると、たとえば、上記空気極31の材料としては、LaMO3(たとえばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができ、上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、さらに、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。
さらに、これまで説明してきたSOFC用セルCでは、セル接続部材1の材料としては、CrおよびMnを含有する合金または酸化物を用いる。
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルトおよびナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施の形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するセル接続部材1に形成された空気流路2aを介して空気を供給するとともに、燃料極32に対して隣接するセル接続部材1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、たとえば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2-が生成され、そのO2-が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2-と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のセル接続部材1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。
<セル接続部材>
前記セル接続部材1は、図1、図3に示すように、セル接続部材用の基材11の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、導電性セラミックス材料を含有する塗膜形成用材料を、前記基材11に電着塗装することにより保護膜12を厚膜として形成してある。
<保護膜>
前記保護膜12は、たとえば、Crを22%、Mnを約0.5%含むフェライト系ステンレス鋼(日立金属製ZMG232L)等からなる前記基材11の表面にたとえば、ZnCoMnO4等の金属酸化物微粒子とポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(1.7:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記塗膜を焼成して前記塗膜中の樹脂成分を焼失させた焼成被膜を形成し、さらに前記焼成被膜を前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で焼成させて、前記基材11表面に形成されるCr23層11aと密着する金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼成工程を行うことにより形成されている。
なお、前記塗膜形成工程はアニオン電着塗装法によったが、ディップコート、スプレーコート等他の方法によることも可能である。
以下に前記保護膜12の具体的な製造方法を詳述するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例>
前記ステンレス鋼材からなるインターコネクタ用の基材11表面にスピネル型の金属酸化物よりなる塗膜を設けた試験片を作成し、前記試験片を各種温度で、所定時間加熱する熱処理を行うことにより、前記塗膜を焼成し(焼成工程)、保護膜12を作成した。前記保護膜12は、各試験片とも保護膜の膜厚が5〜10μm程度になる条件でアニオン電着塗装し、前記保護膜12の表面に、接着層を接着して熱処理の試験を行った。各試験片について、前記保護膜12に占める緻密層12aの厚さをSEMにより測定し、熱処理による緻密層12aの変化を調べた。
<実施例1>(B:参考)
前記金属酸化物としてZnCoMnO4を用い、アニオン電着塗装により前記基材上に塗膜を形成し、1000℃で2時間焼成して保護膜12のサンプルを作成した。保護膜12の断面形状を確認したところ、図4に示すように、基材11の表面にCr23層11aが形成されるとともに、形成された塗膜が、Cr23層11aに密着する緻密層12a(本願に言うMn含有緻密層)と、塗膜表面側の多孔層とからなる保護膜12に形成されていることが分かった。この緻密層12aの厚さは約2μmであった。
(通電試験)
上記サンプルを空気極材料に埋め込み、1000℃×200hrの通電試験を行ったところ、初期の電圧降下は、55mV程度で200hr後の電圧降下増加量(劣化量)は3mV以下であり、抵抗増加が十分抑制されているとともに、長期耐久性が期待できることがわかった。
(Cr飛散数の測定)
なお、上記サンプルを切断して断面をEPMAにより観察し、Crの飛散状態を調べたところ、飛散カウント数が2945となっており、ZnCoMnO4に由来する高いCr飛散抑制効果を発揮していることもわかった。
<実施例2>(A)
実施例1における焼成時間を200時間とした以外は、実施例1と同様にサンプルを形成し、通電試験およびCr飛散数の測定を行った。その結果を表1に示す。
<比較例3>(D)
実施例1における焼成温度を800℃に変更した以外は実施例1と同様にサンプルを形成し、通電試験を行った。その結果を表1に示す。
<実施例4〜7>(C)
実施例1における焼成温度と焼成時間を種々変更した以外は実施例1と同様にサンプルを形成し、通電試験を行った。その結果を表1に示す。
<実施例8>(E)
前記金属酸化物としてCo1.5Mn1.54を用い、アニオン電着塗装により前記基材上に塗膜を形成し、1050℃で5時間焼成して保護膜12のサンプルを作成し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1に示す。
<比較例9>(F)
前記金属酸化物としてCo1.5Mn1.54を用い、アニオン電着塗装により前記基材上に塗膜を形成し、1000℃で2時間焼成して保護膜12のサンプルを作成し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0005778711
<結果>
(焼成時間について)
実施例2では、焼成時間が十分長く、基材に含まれるMnが塗膜成分と十分に反応していると考えられ、塗膜がすべて緻密層となっており、その厚みが7μmであった。
また、初期の電圧降下は、55mV程度で200hr後の電圧降下増加量(劣化量)は3mV以下であり、実施例1と同等の性能を示すとともに、Cr飛散量が330(カウント)となっており、緻密層の膜厚が増加すると、さらに高いCr飛散抑制効果を発揮することがわかった。
(緻密層の組成について)
また、実施例2において、緻密層の組成をEDX分析により調べたところ、Zn:Co:Mn=0.77:1.0:1.64(モル比)であった。なお、初期のモル比は1:1:1であるため、量が増えているMnは外部由来であることがわかる。
なお、実施例5,7において多孔層の組成を調べたところ、多孔層の組成はあまり変化しておらず(若干の変化は、組成のばらつき、あるいはZn、Co成分の飛散により相対的に他の成分量が増えたことによると予想される)、このMnが基材由来であることを示している。
(焼成温度について)
また、比較例3では焼成温度が低かったため、前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件となっていなかったと考えられ、緻密層は観測できなかった。
また、このようにして得られた保護膜は、多孔層のみからなるため、通電試験において、初期の電圧降下は、55〜60mV程度で2500hr後の電圧降下増加量(劣化量)は5mV(評価区間1250hr〜2500hr)となっており、900℃、1310hrの評価値に換算すると41mV程度の電圧低下に相当すると考えられ、実施例4〜7に比べて長期耐久性が低くなっているものと考えられる。
(焼成工程について)
また、実施例1、5,7および比較例3を比較すると、焼成温度が高いほど、緻密層の厚さは増え、焼成工程を高温で行うほど緻密層が速く形成されることがわかり、基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件は、1000℃以上でよいことがわかる。
また、実施例1、2、4を比較すると、焼成時間は2時間以上とすることにより、1μm以上の緻密層が得られ、十分なCr飛散防止効果が発揮されていることがわかる。
(塗膜組成について)
実施例1、比較例9を比較すると、塗膜の組成の違いにより緻密層厚さが1μm以上となる焼成条件が異なることがわかる。また、実施例8、比較例9を比較すると、塗膜の組成が異なっても、Co、Zn、Mnから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含む保護膜を形成し、膜厚を1μm以上とすれば、長期使用による電圧低下が低く抑制されることがわかり、長期耐久性を向上できることがわかる。
したがって、主に固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材をきわめて耐久性高く設けることができるので、長期使用によっても安定に動作しうるSOFCを提供することができる。
1 :セル接続部材
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :基材
11a :Cr23
12 :保護膜
12a :緻密層
15 :接着層
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :SOFC用セル

Claims (6)

  1. CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法であって、
    前記保護膜が、Zn x (Co y Mn (1-y) (3-x) 4 (0<x<1、0<y×(3−x)≦2)を含み、
    前記基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記基材に含まれるMnが塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を1000℃以上1100℃以下で、2時間以上焼成する焼成工程を行い、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層を、前記基材表面に形成されるCr23層と密着形成させ、前記Mn含有緻密層の厚さを1μm以上に成長させるセル間接続部材の製造方法。
  2. CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法であって、
    前記保護膜が、Co 1.5 Mn 1.5 4 を含み、
    前記基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記基材に含まれるMnが塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を1050℃以上1100℃以下で焼成する焼成工程を行い、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層を、前記基材表面に形成されるCr23層と密着形成させ、前記Mn含有緻密層の厚さを1μm以上に成長させるセル間接続部材の製造方法。
  3. 前記基材上に形成される塗膜がアニオン電着塗装法により形成されたものである請求項1または2に記載のセル間接続部材の製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のセル間接続部材の製造方法により製造されたセル間接続部材。
  5. 前記基材がMnを含むフェライト系ステンレス鋼である請求項に記載のセル間接続部材。
  6. 請求項またはに記載のセル間接続部材を空気極と接合してなる固体酸化物形燃料電池用セル。
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