JP5215443B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents
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Description
従来の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性導電部材には、耐熱性の観点からランタンクロマイト(LaCrO3)に代表される金属酸化物が使用されていたが、最近は作動温度が600℃〜900℃まで下がっており、耐熱合金が望ましく採用され、このような導電率の高い耐熱合金として、Crを10〜30wt%含有する合金が一般的に用いられる。耐熱性導電部材材料として合金を使用することにより、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
そして、このようなSOFCでは、例えば700〜1000℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極の間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。SOFCは、他の燃料電池システムやガスエンジン等に比べて、特に高発電効率での発電が可能なことから、有望な発電技術として開発が行われている。
このような空気極のCr被毒は、空気極における酸化物イオンの生成のための酸素の還元反応を阻害し、空気極の電気抵抗を増加させ、さらには耐熱性導電部材のCr濃度を減少させることにより耐熱性導電部材自体の耐熱性の低下などの問題を引き起こし、結果、SOFCの性能低下を招く場合がある。
そこで、耐熱性導電部材の表面に耐熱性に優れた金属酸化物材料からなる保護膜を設けて劣化を抑制する試みがなされている(例えば、特許文献1を参照。)。
SOFCは700℃〜800℃の高温で作動するため、起動停止時には熱膨張率の不一致に伴う応力が各構成材料の界面で発生する。このような応力は、前記保護膜の膜厚が大きいほど顕著に現れ、このような応力を繰り返して受けることによって、前記耐熱性導電部材と前記保護膜は界面で剥離したり、保護膜自体にクラックが生じたりする不具合が起こる可能性がある。
本発明のSOFCの特徴構成は、Crを含有する合金を基材とする耐熱性導電部材からなる固体酸化物形燃料電池用集電部材を有してなる固体酸化物形燃料電池であって、
前記基材の表面に酸化亜鉛からなる保護膜を、スパッタリング法により膜厚0.8μm以上5μm以下の膜厚に形成してある耐熱性導電部材からなる固体酸化物形燃料電池用集電部材を備え、導電性セラミックス材料により前記保護膜に空気極を接合してある点にある。
Crを含有する合金を基材とする耐熱性導電部材の前記基材表面に酸化亜鉛からなる保護膜を形成すると、前記保護膜は、前記基材から飛散するCrを捕捉して、空気極がCrにより被毒するのを抑制する効果を発揮する。このとき、保護膜をスパッタリング法により作成すると、ディップコート法により保護膜を作成するのに比べて、保護膜を構成する酸化亜鉛粒子径を小さくすることができるとともに、保護膜の膜厚を薄くすることができる。すなわち、薄くて緻密なために強固な保護膜を形成することができる。また、ディップコート法に比べて膜厚のバラツキが生じにくいという利点もある。
本発明にかかるSOFC用インターコネクタおよびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子電導性の合金からなるインターコネクタ1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とインターコネクタ1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とインターコネクタ1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたインターコネクタ1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたインターコネクタ1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記インターコネクタ1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施の形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
前記インターコネクタ1は、図1、図2に示すように、インターコネクタ1の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
燃料極32は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することが好ましい。例えば、希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶したCeO2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、Y、Lu(ルテチウム)、Yb、Tm(ツリウム)、Er(エルビウム)、Ho(ホルミウム)、Dy(ジスプロシウム)、Gd、Sm、Pr(プラセオジム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が使用できる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応がほとんどなく、また、熱膨張係数が電解質膜30とほとんど同程度であり、かつ安価であるという点から、Y2O3、Yb2O3が好ましい。
電解質膜30は、3〜15モル%のY(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、Yb(イッテルビウム)等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなる緻密質なセラミックスを用いるのが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。さらに、電解質膜30は、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましい。
上記空気極31の材料としては、LaMO3(例えばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができる。上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、さらに、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。
なお、前記電解質膜30は厚さ数μm〜数百μm程度であり、その両面にそれぞれ厚さ数μm〜数百μm程度の燃料極32、および、厚さ数μm〜数百μm程度の空気極31を一体に焼結して単セル3を構成する。この単セル3とインターコネクタ1とを順次積層し、空気極31とインターコネクタ1との間に、厚さ数μm〜数十μm程度の保護膜12を介在させつつ一体化することにより、SOFC用セルCが作成される。
図2に示すように、Crを22wt%(質量%を示す、以下同じ)含むフェライト系SUS部材からなるインターコネクタ1の基材11aの表面に、反応性マグネトロンスパッタによりZnOからなる保護膜12を設けた試験片を作成した。膜厚は0.8μmとした。その後、接着層15(空気極用材料)を1000℃〜1150℃で2時間焼き付けて、SOFCセルを作成した。その結果、図3に示すように、保護膜は、インターコネクタ1の基材11a表面に緻密かつ均一に形成されていることがわかった。なお、図3〜図9において15で示す層は、前の説明における接着層であり、具体的には。基材11aに保護膜12を形成してなる試験片を各種測定装置に配置固定する便宜上設けられている。
上記実施例1における保護膜の膜厚を3μmとしたSOFCセルを作成し、同様にフェライト系SUSから空気極へのCrの拡散度合を分析した。
なお、この図面において、合金におけるCr濃度は約22%であり、空気極において色調が最も薄い領域のCr濃度はほぼ0%(図面において空気極での薄いグレーの領域)である。また、これら分布を示す図面において、写真図の横幅が約130μmに相当している。
また、このSOFCセルの電気抵抗は108.9mVであった。
上記実施例1において保護膜を設けないSOFCセルを作成し、同様にフェライト系SUSから空気極へのCrの拡散度合を分析した。
なお、この図面において、合金におけるCr濃度は約22%であり、空気極において色調が最も薄い領域のCr濃度はほぼ0%(図面において空気極での薄いグレーの領域)である。また、これら分布を示す図面において、写真図の横幅が約130μmに相当している。
また、このSOFCセルの電気抵抗は83.7mVであった。
上記実施例1における保護膜の膜厚を0.4μmとしたSOFCセルを作成し、同様にフェライト系SUSから空気極へのCrの拡散度合を分析した。
このように、電気抵抗も低かったものの、Crの拡散は抑制できておらず、良好な結果は得られなかった。
なお、この図面において、合金におけるCr濃度は約22%であり、空気極において色調が最も薄い領域のCr濃度はほぼ0%(図面において空気極での薄いグレーの領域)である。また、これら分布を示す図面において、写真図の横幅が約130μmに相当している。
また、このSOFCセルの電気抵抗は92.4mVであった。
Crを22wt%含むフェライト系SUS部材にZnO粉末を溶媒中で分散させたコーティング液を調製し、SUS部材を浸漬させ、900℃〜1100℃で2時間焼き付けてSUS部材表面にZnO膜を形成した。形成した膜の厚みは、過基材の角部近傍でほとんど厚みのない部分があったり、平坦な面部において異常に分厚い部分があるなどバラツキが大きく、平均約10μm前後であった。
なお、この図面において、合金におけるCr濃度は約22%であり、空気極において色調が最も薄い領域のCr濃度はほぼ0%(図面において空気極での薄いグレーの領域)である。また、これら分布を示す図面において、写真図の横幅が約130μmに相当している。
実施例2のSOFCセルを用い、SOFCセルを950℃加湿10−20%中で動作温度まで加熱し、一定時間保持後一旦室温まで戻す動作サイクルを繰り返すサーマルサイクル評価試験を行い、保護膜の剥離の有無を肉眼で確認した。これは実使用環境よりも厳しい加速条件である。
比較例3のSOFCセルを用い、実施例3と同様のサーマルサイクル評価試験を行ったところ、950℃では、100時間にて保護膜の剥離が観測された。また、試験条件を900℃としても、300時間にて保護膜の剥離が観測されることがわかった。
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
12 :保護膜
15 :接着層
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
Claims (1)
- Crを含有する合金を基材とする耐熱性導電部材からなる固体酸化物形燃料電池用集電部材を有してなる固体酸化物形燃料電池であって、
前記基材の表面に酸化亜鉛からなる保護膜を、スパッタリング法により膜厚0.8μm以上5μm以下の膜厚に形成してある耐熱性導電部材からなる固体酸化物形燃料電池用集電部材を備え、導電性セラミックス材料により前記保護膜に空気極を接合してある固体酸化物形燃料電池。
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