JP6671132B2 - 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
上記の特徴構成によれば、前記焼成ステップが、酸素の分圧が1.0×10 -20 atm以上5.0×10 -15 atm以下の雰囲気中で行われる焼成ステップが含まれているので、金属酸化物膜の厚さと組成を適度なものとすることができ、金属基板と電極層との間の元素相互拡散がさらに抑制された電気化学素子を製造することができる。また、その後の工程で酸素分圧のより高い雰囲気条件下で電気化学素子の焼成が行われても、形成された良質な金属酸化物膜により、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が抑制可能な電気化学素子を製造することができる。
上記の特徴構成によれば、焼成ステップに、水素と窒素の混合気体を加湿した混合ガス中で行われる焼成ステップが含まれていると、金属基板の変質や過度の酸化を防止し、良質な金属酸化物膜を形成することができ、その後の工程で酸素分圧のより高い雰囲気条件下で電気化学素子の焼成が行われても、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が抑制可能な電気化学素子を製造することができる。
上記の特徴構成によれば、気密性およびガスバリア性の高い電解質層によって、貫通孔が形成された領域が覆われるので、パッキンやシーリング等、気体の他所への漏出を防止するための別途の構造が不要となる。よって、素子の製造コストの増加を抑制することができる。
上記の特徴構成によれば、電極層の上と金属基板の表側の面の上とにわたって電解質層の材料である電解質材料を付着させて、電極層を被覆する第1部分と金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップを有するので、第2部分において電極層からのガスのリークを抑制した電気化学素子を製造できる。説明すると、電気化学素子の作動時には、金属基板の裏側から貫通孔を通じて電極層へガスが供給される。電極層の端部において第2部分の存在しない部位で電極層の端部が露出していると、そこからガスのリークが発生することが考えられる。第2部分により電極層の端部を確実に覆っておくと、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。
上記の特徴構成によれば、電極層の上と金属基板の表側の面の上とにわたって電解質層の材料である電解質材料を付着させて、電極層を被覆する第1部分と金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップを有するので、第2部分において電極層からのガスのリークを抑制した電気化学素子を製造できる。説明すると、電気化学素子の作動時には、金属基板の裏側から貫通孔を通じて電極層へガスが供給される。電極層の端部において第2部分の存在しない部位で電極層の端部が露出していると、そこからガスのリークが発生することが考えられる。第2部分により電極層の端部を確実に覆っておくと、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。
上記の特徴構成によれば、気密性およびガスバリア性の高い電解質層によって、貫通孔が形成された領域が覆われるので、パッキンやシーリング等、気体の他所への漏出を防止するための別途の構造が不要となる。よって、素子の製造コストの増加を抑制することができる。
以下、図1および図2を参照しながら電気化学素子1、固体酸化物形燃料電池(SOFC)セル100、電気化学素子の製造方法およびSOFCの製造方法について説明する。なお、層の位置関係などを表す際、例えば電極層から見て電解質層4の側を「上」「上側」、金属基板2の側を「下」「下側」などと呼ぶ。
電気化学素子1は、複数の貫通孔21を有する金属基板2と、金属基板2の表側の面に設けられた電極層3と、電極層3の上に設けられた電解質層4とを有する。電極層3は電子伝導性および気体透過性を有するように構成される。電解質層4は酸素イオン伝導性を有するように構成される。
金属基板2は、電極層3と電解質層4とを支持して電気化学素子1の強度を保つ役割を担う。金属基板2の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。
貫通孔21は、金属基板2における電極層3が設けられる領域より小さい領域に設けられることが好ましい。
電極層3は、図1に示すように、金属基板2の表側の面の貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に、薄膜の状態で設けられる。電極層3の材料としては、例えばNiO−CGO(ガドリウム・ドープ・セリア)、Ni−CGO、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用いることができる。これらの例では、CGO、YSZ、CeO2がサーメット材の骨材と呼ぶことができる。なお、電極層3は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、良好な電極層3が得られる。そのため、金属基板2を傷めることなく、また、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
電解質層4は、電極層3の上部に形成する。また、電極層3を被覆する第1部分41と、金属基板2の表側の面に接触する第2部分42とを有するような構造とすることもできる。この場合、電解質層4は、図1に示すように、横断側面視において電極層3の上と金属基板2の表側の面の上とにわたって(跨って)設けられる。これにより、第2部分42により電解質層4を金属基板2に接合して、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
説明すると、電気化学素子1の作動時には、金属基板2の裏側から貫通孔21を通じて電極層3へガスが供給される。第2部分42の存在する部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、第1実施形態では第2部分42によって電極層3の周囲をすべて覆っているが、電極層3の上部に電解質層4を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
このように構成した電気化学素子1に対して、図2に示すように、電解質層4の上に電極層3の対極となる対極電極層5を設けることで、以下のように動作する固体酸化物形燃料電池セル100として利用することが可能である。電極層3の対極となる対極電極層5の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物を用いることができる。なお、対極電極層5は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、良好な対極電極層5が得られる。そのため、金属基板2を傷めることなく、また、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
以上の反応により、電極層3と対極電極層5との間に起電力が発生する。この場合、電極層3は燃料電池の燃料極(アノード)として機能し、対極電極層5は空気極(カソード)として機能する。
次に、電気化学素子1の製造方法について説明する。
電極層形成ステップでは、金属基板2の表側の面の貫通孔21が設けられた領域より広い領域に電極層3が形成される。電極層形成ステップは、予備塗布ステップ、押し込み拭取りステップ、主塗布ステップ(第1形成ステップと第2形成ステップ等の複数のステップとすることもできる)を有するものとすることができる。また、予備塗布ステップや押し込み拭取りステップを省き、主塗布ステップのみとすることもできる。
なお、金属基板2の貫通孔はレーザー加工等によって設けることができる。
予備塗布ステップでは、電極層3の材料を含有する電極層材料ペーストが金属基板2の表側の面に塗布される。まずサーメット材である電極層3の材料の粉末を有機溶媒に混ぜたペーストを作成する。次に、作成したペーストを金属基板2の貫通孔21が設けられた領域に滴下、あるいは塗布する。このとき、ペーストの一部は毛細管現象により各貫通孔21の内部に流れ込む。
続いて行われる押し込み拭取りステップでは、金属基板2の表面上のペーストが、ブレード等によりワイプされる。すなわち、貫通孔21へペーストを押し込むとともに金属基板2の表側の面に残留するペーストが拭き取られる。これによって、貫通孔21がペーストで埋まり(塞がり)、金属基板2の表面から余分なペーストが除去されて、金属基板2の表面が平滑になる。すなわち、金属基板2の貫通孔21が電極層材料ペーストにより孔埋めされた状態になる。押し込み拭取りステップを行った後、金属基板2を乾燥させてもよい。
なお、適切なペーストを選び、各種条件を適切なものにすることで、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップをまとめてスクリーン印刷法により行うこともできる。
続いて行われる主塗布ステップ(第1形成ステップ)では、予備塗布ステップに用いられた電極層材料ペーストに比べ、溶媒による希釈率が低いペーストを用いることができる。すなわち、予備塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率は、主塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率に比べて高くすることができる。そのペーストを金属基板2の貫通孔21が設けられた領域より広い領域に塗布する。塗布は、例えばスプレー法やスクリーン印刷法により、厚さが均等になるように行われる。第1形成ステップにより、電極層3の第1層32(下方部位)が形成される。
続いて行われる第2形成ステップでは、第1形成ステップに用いられた電極層材料ペーストに比べ、サーメット材の骨材の混合比率が高いペーストを用いることができる。そのペーストを第1形成ステップでペーストが塗布された領域に重ねて塗布することができる。塗布は、例えばスプレー法やスクリーン印刷法により、厚さが均等になるように行われる。第2形成ステップにより、電極層3の第2層31(上方部位)を形成することができる。
また、主塗布ステップに用いる電極層材料ペーストを好適に調整することで、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップを省くこともできる。
さらに、主塗布ステップにおいて、金属基板2の上に電極層3を塗布した後に、400℃〜450℃程度の温度に加熱する脱脂処理を行ってもよい。
主塗布ステップを行った後に、電極層3が形成された金属基板2を加熱処理して、電極層3を焼成するとともに金属基板2の表面に金属酸化物膜22を形成する焼成ステップを行う。焼成ステップは、例えば、水素と窒素の混合気体を加湿して調整した混合ガス雰囲気下で、800℃〜1100℃に加熱して行う。このような条件下で焼成ステップを行うと、金属酸化物膜22の厚さが、サブミクロンオーダーの厚さの好適なものとすることができる。金属酸化物膜22の厚さは、厚すぎると金属基板2の電気抵抗が大きくなりすぎるという不具合が生じたり、金属酸化物膜22がもろくなったりする。一方、薄すぎると金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制効果が不十分となる。このため、例えば、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることが好ましい。また、最小膜厚は約0.1μm以上であることが好ましい。また、最大膜厚が約1.1μm以下であることが好ましい。
焼成ステップの後、すなわち電極層形成ステップの後に、電解質層形成ステップが行われる。電解質層形成ステップでは、電極層3の上と金属基板2の表側の面の上とにわたって電解質層4の材料である電解質材料を付着させて、電極層3を被覆する第1部分41と金属基板2の表側の面に接触する第2部分42とを有する電解質層4を形成することができる。
上述のステップで製造された電気化学素子1に対して、電解質層4の上に電極層3の対極となる対極電極層5を形成する対極電極層形成ステップを実行することで、固体酸化物形燃料電池セル100を製造することができる。対極電極層形成ステップは、電極層3の対極となる対極電極層5としての材料(LSCF、LSM等の複合酸化物)の粉末を用いて、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することができる。
上記の実施形態では、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100に用いたが、電気化学素子1を固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
上記の実施形態では、電極層3にアノード極を形成し、対極電極層5にカソード極を形成した固体酸化物形燃料電池セル100を用いたが、電極層3にカソード極を形成し、対極電極層5にアノード極を形成することもできる。
上記の第1実施形態では、電解質層4は、図1または図2に示されるように、電極層3の上側の面に積層された。また、対極電極層5は、電解質層4の上側の面に積層された。これを変更して、図3に示すように、電極層3と電解質層4との間に緩衝層6を設けてもよい。また、電解質層4と対極電極層5との間に反応防止層(図示なし)を設けてもよい。
緩衝層6の材料としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有する材料が好適であり、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特に、セリア系のセラミックスを用いると、緩衝層6が混合伝導性を有することになり、高い素子性能が得られるためより好ましい。緩衝層6は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法などにより形成することが好ましい(緩衝層形成ステップ)。特に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので好ましい。緩衝層6は、その相対密度が電解質層4の相対密度よりも小さいことが好ましい。また、緩衝層6は、その相対密度が電極層3の相対密度よりも大きいことが好ましい。これらのようにすると、素子のヒートショックをはじめとする各種の応力に対する耐性を向上できるという効果があり好ましい。
反応防止層の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層5の成分との間の反応を防止できる材料であれば良い。例えばセリア系材料等が用いられる。反応防止層を電解質層4と対極電極層5との間に導入することにより、対極電極層5の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、素子の性能の長期安定性を向上できる。反応防止層は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法などを適宜用いて形成することができる(反応防止層形成ステップ)。特に、低温焼成法やエアロゾルデポジション法や溶射法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
上述した第4実施形態では、図3に示すように、電極層3および電解質層4の両方が、金属基板2の表側の面であって貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電極層3および電解質層4によって覆われている。つまり貫通孔21は、金属基板2における電極層3が形成された領域の内側であって、かつ電解質層4が形成された領域の内側に形成される。換言すれば、全ての貫通孔21が電極層3に面して設けられている。これを変更して、図4に示す構成とすることも可能である。
また図5に示す構成も可能である。図5に示す構成では、電極層3および緩衝層6が、貫通孔21が設けられた領域より小さな領域に設けられる。電解質層4が、貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電解質層4によって覆われている。つまり貫通孔21は、電極層3が形成された領域の内側と外側とに設けられる。貫通孔21は、緩衝層6が形成された領域の内側と外側とに設けられる。また貫通孔21は電解質層4が形成された領域の内側に設けられる。換言すれば、貫通孔21は電極層3と緩衝層6と電解質層4とに面して設けられている。緩衝層6は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部61を備えてもよい。また、電解質層4は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部(図示なし)を備えてもよい。
また図6に示す構成も可能である。図6に示す構成では、電極層3および緩衝層6が、貫通孔21が設けられた領域より小さな領域に設けられる。緩衝層6は、電極層3が設けられた領域に設けられる。電解質層4が、貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電解質層4によって覆われている。
つまり貫通孔21は、電極層3が形成された領域の内側と外側とに設けられる。また貫通孔21は電解質層4が形成された領域の内側に設けられる。換言すれば、貫通孔21は電極層3と電解質層4とに面して設けられている。電解質層4は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部(図示なし)を備えてもよい。
上記の実施形態では、電極層3の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用い、対極電極層5の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用いた。そして電極層3に水素ガスを供給して燃料極とし、対極電極層5に空気を供給して空気極とし、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100として用いた。これを変更して、電極層3を空気極とし、対極電極層5を燃料極とすることが可能なように、電気化学素子1を構成することも可能である。すなわち、電極層3の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層5の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用いる。このように構成した電気化学素子1であれば、電極層3に空気を供給して空気極とし、対極電極層5に水素ガスを供給して燃料極とし、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100として用いることができる。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板を金属基板2として用い、60重量%のNiO粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の上に直径17mmの領域にスクリーン印刷法により電極層3を塗布した。その後、空気中、450℃で脱脂処理を行った(主塗布ステップ)。
次に、電極層3を塗布した金属基板2に対して、850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行い(焼成ステップ)、電気化学素子1を作製した。
この試作1で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約11mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作1で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
電極層3を塗布した金属基板2に対して、850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行い、更にその後に、850℃空気中で30分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作2で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約15mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作2で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
電極層3を塗布した金属基板2に対して、950℃で酸素分圧が5.1×10-18atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作3で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約19mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作3で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作3で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図7に示す。図7より、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.1μm程度、最大で0.7μm程度、平均的には0.3μm程度であることが分かった。また、この試作3で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
電極層3を塗布した金属基板2に対して、950℃で酸素分圧が5.1×10-18atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った後、更に、950℃空気中で30分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作4で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値測定したところ、約23mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作4で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作4で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図8に示す。図8に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.2μm程度、最大で1.1μm程度、平均的には0.5μm程度であることが分かった。また、この試作4で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
電極層3を塗布した金属基板2に対して、1050℃で酸素分圧が4.1×10-17atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で30分焼成を行った後、更に、1050℃で酸素分圧が2.0×10-2atmになるようにO2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で15分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作5で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約31mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作5で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作5で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図9に示す。図9に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.5μm程度、最大で1.0μm程度、平均的には0.67μm程度であることが分かった。また、この試作5で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
電極層3を塗布した金属基板2に対して、1150℃で酸素分圧が7.3×10-14atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作6で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約2.2Ω・cm2以上であることが分かった。
さらに、この試作6で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。そして、CeCrO3の複合酸化物のピークが観察された。
また、この試作6で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図10に示す。図10に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.6μm程度、最大で1.4μm程度、平均的には0.85μm程度であることが分かった。また、この試作6で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、Crの電極層への拡散が比較的多くなっているように見られた。
この結果、1150℃で酸素分圧が7.2×10-14atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で焼成ステップを行うと、金属基板の電気抵抗値が極端に大きくなり、電気化学素子としての性能が低下することが分かった。また、金属基板2からのCrの拡散抑制の効果が低下してしまいCeCrO3の複合酸化物がX線回折測定で観察される結果となった。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
電解質層4を形成することなく、他は上記の試作7と同様にして、電極層3を積層させた金属基板2を作製し、得られた電気化学素子1の水素ガス透過率(水素リーク量)を測定したところ、1.1×102mol/m2sPaであった。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径7.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
こうして得られた固体酸化物形燃料電池セルについて、水素と空気を用いて電気化学測定を行ったところ、0.2Vを上回る有意な電圧が得られた。
上記の試作1において、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップを行わずに、貫通孔を塞ぐ挿入部を設けないこと以外は、試作9と同様にして固体酸化物形燃料電池セルを作製した。こうして得た固体酸化物形燃料電池セルについて、水素と空気を用いて電気化学測定を行ったところ、電解質膜の気密性が保たれず、電位差が発生しなかった。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの金属板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔21の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径7.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
2 :金属基板
21 :貫通孔
22 :金属酸化物膜
3 :電極層
31 :第2層(上方部位)
32 :第1層(下方部位)
33 :挿入部
34 :細孔
35 :開口部
4 :電解質層
41 :第1部分
42 :第2部分
43 :微細粒子
5 :対極電極層
100 :固体酸化物形燃料電池セル
Claims (24)
- 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
前記焼成ステップが、酸素の分圧が1.0×10 -20 atm以上5.0×10 -15 atm以下の雰囲気中で行われる電気化学素子の製造方法。 - 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
前記焼成ステップが、水素と窒素の混合気体を加湿した混合ガス中で行われる電気化学素子の製造方法。 - 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有し、
前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に電極層を形成し、
前記電解質層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電解質層を形成する電気化学素子の製造方法。 - 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
表側の面と裏側の面とを貫通する複数の貫通孔を有する前記金属基板の表面に、気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有する電気化学素子の製造方法。 - 前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電極層を形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。 - 前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有する請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記焼成ステップの後に、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップとを有する請求項6に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記電解質層形成ステップでは、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する請求項3に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記焼成ステップにおいて厚さがサブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜が形成される請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記金属基板はフェライト系ステンレス材である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記焼成ステップが800℃以上1100℃以下の温度で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
- 前記電解質層形成ステップが1100℃以下の温度で行われる請求項3、6〜8のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
- 請求項3、6〜8、12のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法を実行した後に、前記電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を形成する対極電極層形成ステップを行う固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。
- 表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有する金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層とを少なくとも有する電気化学素子であって、
前記電極層は気体透過性を有しており、
前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域及び前記貫通孔の内面に金属酸化物膜が形成されている電気化学素子。 - 前記金属酸化物膜の厚さがサブミクロンオーダーである請求項14に記載の電気化学素子。
- 前記金属基板はフェライト系ステンレス材である請求項14または15に記載の電気化学素子。
- 前記金属酸化物膜は酸化クロムを主成分とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- クロムと前記電極層を構成する元素との複合酸化物が実質的に含まれない請求項14〜17のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている請求項14〜18のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電極層の上に電解質層を設けた請求項14〜19のいずれか1項に記載の電気化学素子。
- 前記電解質層は、前記電極層を被覆する第1部分と、前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する請求項20に記載の電気化学素子。
- 請求項14〜21のいずれか一項に記載の電気化学素子における前記電極層の上に設けられた電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を設けた固体酸化物形燃料電池セル。
- 前記電極層の上に設けられた電解質層を有し、
前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、
前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている請求項14〜18のいずれか一項に記載の電気化学素子。 - 少なくとも金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層と、前記電極層の上に設けられた電解質層とを有する電気化学素子であって、
前記電極層は気体透過性を有しており、
前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域に金属酸化物膜が形成されており、
前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、
前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている電気化学素子。
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