JP6671132B2 - 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法 - Google Patents

電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6671132B2
JP6671132B2 JP2015186048A JP2015186048A JP6671132B2 JP 6671132 B2 JP6671132 B2 JP 6671132B2 JP 2015186048 A JP2015186048 A JP 2015186048A JP 2015186048 A JP2015186048 A JP 2015186048A JP 6671132 B2 JP6671132 B2 JP 6671132B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode layer
metal substrate
layer
electrochemical device
electrolyte layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015186048A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016066616A (ja
Inventor
越後 満秋
満秋 越後
大西 久男
久男 大西
享平 真鍋
享平 真鍋
山▲崎▼ 修
修 山▲崎▼
和徹 南
和徹 南
津田 裕司
裕司 津田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka Gas Co Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka Gas Co Ltd filed Critical Osaka Gas Co Ltd
Publication of JP2016066616A publication Critical patent/JP2016066616A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6671132B2 publication Critical patent/JP6671132B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Description

本発明は、少なくとも金属基板と電極層とを有する電気化学素子、金属基板と電極層と電解質層を有する電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セルおよびこれらの製造方法に関する。
従来の電解質支持型の固体酸化物形燃料電池(以下「SOFC」と記す。)や電極支持型のSOFCでは、緻密で気密性の高い電解質層を得るために、高温(例えば1400℃)での焼成が行われる。近年では、薄型化や堅牢性向上のため、金属の板に燃料極、空気極および電解質層を支持させる金属支持型SOFCが開発されている。
特許文献1には、多孔質の金属基板上に、薄膜状の燃料極層、電解質層、空気極層をこの順で積層した金属支持型SOFCが開示されている。このSOFCの製造工程においては、燃料極の上に電解質の材料を塗布・乾燥した後、プレスが行われる。その後に焼結が行われ、緻密な電解質層が形成される。
特開2008−234927号公報
金属支持型SOFCの製造時に高温の熱処理を行うと、支持体である金属基板が劣化したり、金属基板からのCr等の元素拡散によりSOFCの構成要素(電極層、電解質層)に悪影響を及ぼし、SOFCの耐久性が低下する場合がある。また、電極層に含まれるNi等の元素拡散により金属基板が悪影響を受ける場合もある。従って、低い温度での熱処理が望まれる。一方で、製造時の熱処理温度を下げると、良質な電極層、電解質層が得られにくくなる。例えば電解質層の焼成温度を低くすると、緻密で気密性の高い電解質層を得ることが難しくなる。また、電解質層と電極層との間で密着性・結合強度が低下し、SOFCの堅牢性が損なわれる虞があった。
なお上述のSOFCと、水を電気分解により水素を生成する固体酸化物形電解セル(以下「SOEC」と記す。)と、固体酸化物を利用した酸素センサとは、基本構造が共通する。すなわち、金属基板と電極層および電解質層を有する電気化学素子が、SOFCとSOECと酸素センサに用いられる。そして上述の課題は、上述の電気化学素子、SOFC、SOECおよび酸素センサに共通して存在する。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑制し、耐久性に優れた電気化学素子および固体酸化物形燃料電池セル並びにこれらの製造方法を実現することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学素子の製造方法の特徴構成は、金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、前記焼成ステップが、酸素の分圧が1.0×10 -20 atm以上5.0×10 -15 atm以下の雰囲気中で行われる点にある。
上記の特徴構成によれば、電極層は気体透過性を有するので、金属基板の表面のうち、外部に露出した面と電極層と接している面(界面)との両方に金属酸化物膜が形成される。詳しくは、金属基板自体の表面が酸化されて金属酸化物膜となる。この金属酸化物膜によって金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑制できるので、別途の元素拡散防止層を設ける必要がなく、製造工程を簡便化することができる。すなわち上記の特徴構成によれば、金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、電極層形成ステップの後に、電極層が形成された金属基板を加熱処理して、電極層を焼成するとともに金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有するので、金属基板からの元素拡散を抑制して耐久性が向上した電気化学素子を、簡便な製造方法にて製造することができる。
上記の特徴構成によれば、前記焼成ステップが、酸素の分圧が1.0×10 -20 atm以上5.0×10 -15 atm以下の雰囲気中で行われる焼成ステップが含まれているので、金属酸化物膜の厚さと組成を適度なものとすることができ、金属基板と電極層との間の元素相互拡散がさらに抑制された電気化学素子を製造することができる。また、その後の工程で酸素分圧のより高い雰囲気条件下で電気化学素子の焼成が行われても、形成された良質な金属酸化物膜により、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が抑制可能な電気化学素子を製造することができる
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学素子の製造方法の特徴構成は、金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、前記焼成ステップが、水素と窒素の混合気体を加湿した混合ガス中で行われる点にある。
上記の特徴構成によれば、電極層は気体透過性を有するので、金属基板の表面のうち、外部に露出した面と電極層と接している面(界面)との両方に金属酸化物膜が形成される。詳しくは、金属基板自体の表面が酸化されて金属酸化物膜となる。この金属酸化物膜によって金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑制できるので、別途の元素拡散防止層を設ける必要がなく、製造工程を簡便化することができる。すなわち上記の特徴構成によれば、金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、電極層形成ステップの後に、電極層が形成された金属基板を加熱処理して、電極層を焼成するとともに金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有するので、金属基板からの元素拡散を抑制して耐久性が向上した電気化学素子を、簡便な製造方法にて製造することができる。
上記の特徴構成によれば、焼成ステップに、水素と窒素の混合気体を加湿した混合ガス中で行われる焼成ステップが含まれていると、金属基板の変質や過度の酸化を防止し、良質な金属酸化物膜を形成することができ、その後の工程で酸素分圧のより高い雰囲気条件下で電気化学素子の焼成が行われても、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が抑制可能な電気化学素子を製造することができる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の特徴構成は、金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有し、前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に電極層を形成し、前記電解質層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電解質層を形成する点にある。
上記の特徴構成によれば、電極層は気体透過性を有するので、金属基板の表面のうち、外部に露出した面と電極層と接している面(界面)との両方に金属酸化物膜が形成される。詳しくは、金属基板自体の表面が酸化されて金属酸化物膜となる。この金属酸化物膜によって金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑制できるので、別途の元素拡散防止層を設ける必要がなく、製造工程を簡便化することができる。すなわち上記の特徴構成によれば、金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、電極層形成ステップの後に、電極層が形成された金属基板を加熱処理して、電極層を焼成するとともに金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有するので、金属基板からの元素拡散を抑制して耐久性が向上した電気化学素子を、簡便な製造方法にて製造することができる。
上記の特徴構成によれば、気密性およびガスバリア性の高い電解質層によって、貫通孔が形成された領域が覆われるので、パッキンやシーリング等、気体の他所への漏出を防止するための別途の構造が不要となる。よって、素子の製造コストの増加を抑制することができる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の特徴構成は、金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、表側の面と裏側の面とを貫通する複数の貫通孔を有する前記金属基板の表面に、気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有する点にある。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電極層が形成される点にある。
上記の特徴構成によれば、前記金属基板の表側の面と裏側の面とを貫通して複数の貫通孔が設けられているので、電気化学反応に用いるガスを前記金属基板の裏側から表側へ流すことができ、さらには、そのガスを電極層に供給する構造とすることができる。なお、例えば、前記金属基板に前記貫通孔をレーザー等により設けることができる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有する点にある。
上記の特徴構成によれば、前記金属基板の表面に前記金属酸化物膜が形成された後に、電解質層を前記電極層の上に形成することができるため、金属基板からの元素拡散により電解質層がダメージを受けることを抑制することができる。さらに、このような構成とすることで、低温焼成法やエアロゾルでポジション法、溶射法(スプレーコート法)などの低温での処理にて電解質層を形成する手法が採用できるようになる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップとを有する点にある。
上記の特徴構成によれば、電極層の上と金属基板の表側の面の上とにわたって電解質層の材料である電解質材料を付着させて、電極層を被覆する第1部分と金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップを有するので、第2部分において電極層からのガスのリークを抑制した電気化学素子を製造できる。説明すると、電気化学素子の作動時には、金属基板の裏側から貫通孔を通じて電極層へガスが供給される。電極層の端部において第2部分の存在しない部位で電極層の端部が露出していると、そこからガスのリークが発生することが考えられる。第2部分により電極層の端部を確実に覆っておくと、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記電解質層形成ステップでは、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する点にある。
上記の特徴構成によれば、電極層の上と金属基板の表側の面の上とにわたって電解質層の材料である電解質材料を付着させて、電極層を被覆する第1部分と金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップを有するので、第2部分において電極層からのガスのリークを抑制した電気化学素子を製造できる。説明すると、電気化学素子の作動時には、金属基板の裏側から貫通孔を通じて電極層へガスが供給される。電極層の端部において第2部分の存在しない部位で電極層の端部が露出していると、そこからガスのリークが発生することが考えられる。第2部分により電極層の端部を確実に覆っておくと、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記焼成ステップにおいて厚さがサブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜が形成される点にある。
上記の特徴構成によれば、焼成ステップにおいて厚さがサブミクロンオーダーの金属酸化物膜が形成されるので、金属基板からの元素拡散が確実に抑制できる一方、金属基板の表面における電気抵抗を小さく抑えることができる。なお、サブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜の厚さとしては、例えば、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることが好ましい。また、最小膜厚は約0.1μm以上であることが好ましい。また、最大膜厚が約1.1μm以下であることが好ましい。このようなサブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜であれば、金属基板からの元素拡散の抑制と、金属酸化物膜の生成による金属基板の電気抵抗増大の抑制を両立した電気化学素子を製造することができる。なお、「サブミクロンオーダー」とは、0.1μm超、1μm未満のサイズのオーダーをいう。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記金属基板はフェライト系ステンレス材である点にある。
上記の特徴構成によれば、金属基板はフェライト系ステンレス材であるから、電極層や電解質層の材料であるYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も壊れにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子を製造することができる。なお、GDCはCGOと呼ばれることもある。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記焼成ステップが、800℃以上1100℃以下の温度で行われる点にある。
上記の特徴構成によれば、金属基板のダメージや、金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑制しやすく、また、金属酸化物膜の厚さと組成を適度なものとすることができるので、良好な電気化学素子を製造することができる。また、焼成ステップの温度を800℃よりも低くすると、電極層の焼成が不完全となったり、焼成された電極層の強度が不足する虞がある。上記の特徴構成によれば、焼成ステップが800℃以上の温度で行われるので、適切な強度を備えた電極層を有する電気化学素子を製造することができる。さらに、焼成ステップの温度を1100℃を超えて高くすると、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が増加する虞がある。上記の特徴構成によれば、焼成ステップが1100℃以下の温度で行われるので、金属酸化物膜を適切な厚さで形成し、金属基板の電気抵抗増加を抑制しつつ、金属基板と電極層との間の元素相互拡散がさらに抑制された電気化学素子を製造することができる。また、前記焼成ステップが、850℃以上1050℃以下の温度で行われると、電極層の強度の保持と、金属基板と電極層との間の元素相互拡散の抑制の点で、より好ましい。
本発明に係る電気化学素子の製造方法の別の特徴構成は、前記電解質層形成ステップが1100℃以下の温度で行われることができる点にある。
上記の特徴構成によれば、前記金属基板の表面に前記金属酸化物膜が形成された後に、電解質層を前記電極層の上に形成することができるため、緻密な電解質層を前記金属基板を傷めない低い温度域で形成することができる。このため、高温での処理を経ないことで、電気化学素子の耐久性向上も期待できる。
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルの製造方法の特徴構成は、上述の電気化学素子の製造方法を実行した後に、前記電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を形成する対極電極層形成ステップとを行う点にある。
上記の特徴構成によれば、電気化学素子の電解質層の上に前記電極層の対極となる対極電極層を設けた固体酸化物形燃料電池(SOFC)セルを製造するので、金属基板と電極層や電解質層との間の元素相互拡散を抑制して耐久性が向上した固体酸化物形燃料電池セルを、簡便な製造方法にて製造することができる。
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学素子の特徴構成は、表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有する金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層とを少なくとも有する電気化学素子であって、前記電極層は気体透過性を有しており、前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域及び前記貫通孔の内面に金属酸化物膜が形成されている点にある
上記の特徴構成によれば、金属基板の表面のうち、少なくとも電極層と接する領域及び前記貫通孔の内面に金属酸化物膜が形成されているので、金属酸化物膜により金属基板と電極層との間の元素相互拡散を抑止することができ、電気化学素子の耐久性を高めることができる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記金属酸化物膜の厚さがサブミクロンオーダーである点にある。
上記の特徴構成によれば、金属酸化物膜の厚さがサブミクロンオーダーであるので、金属基板と電極層との間の元素相互拡散が確実に抑制できる一方、金属酸化物膜の生成による金属基板の電気抵抗の増大を抑制することができる。すなわち、金属基板と電極層との間の元素相互拡散の抑制と、金属酸化物膜の生成による金属基板の電気抵抗増大の抑制を両立した電気化学素子を実現することができる。なお、サブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜の厚さとしては、例えば、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることが好ましい。また、最小膜厚は約0.1μm以上であることが好ましい。また、最大膜厚が約1.1μm以下であることが好ましい。このようなサブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜であれば、金属基板からの元素拡散の抑制と、金属酸化物膜の生成による金属基板の電気抵抗増大の抑制を両立した電気化学素子を製造することができる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記金属基板はフェライト系ステンレス材である点にある。
上記の特徴構成によれば、金属基板はフェライト系ステンレス材であるから、電極層や電解質層の材料であるYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も壊れにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子を実現することができる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記金属酸化物膜は酸化クロムを主成分とする点にある。
上記の特徴構成によれば、金属酸化物膜は酸化クロムを主成分とするので、金属酸化物膜が緻密な酸化物の膜となり、金属基板からの元素拡散を効果的に抑制することができる。従って、より耐久性に優れた電気化学素子を実現することができる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、クロムと前記電極層を構成する元素との複合酸化物が実質的に含まれない電気化学素子である点にある。
上記の特徴構成によれば、金属基板から電極層へのクロム拡散が十分に抑制された構造となっており、より耐久性に優れた電気化学素子を実現することができる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記電極層は前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に形成されている。
上記の特徴構成によれば、前記金属基板の表側の面と裏側の面とを貫通して複数の貫通孔が設けられているので、電気化学反応に用いるガスを前記金属基板の裏側から表側へ流すことができ、さらには、そのガスを電極層に供給する構造とすることができる。なお、例えば、前記金属基板に前記貫通孔をレーザー等により設けることができる。また、前記金属基板の表側の面の開孔部の直径が10〜15μm程度以下であると、前記電極層を形成しやすくなるので好ましい。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記電極層の上に電解質層を設けた点にある。
上記の特徴構成によれば、前記金属基板の表面に前記金属酸化物膜が形成され、更に電極層と電解質層が順次形成された構造とすることができるため、金属基板からの元素拡散により電極層や電解質層がダメージを受けることを抑制することができる。なお、前記電解質層は緻密な電解質層であることが好ましいが、前記電極層の上に形成される電解質層の一部に緻密な電解質層が含まれる構成としてもよい。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記電解質層は、前記電極層を被覆する第1部分と、前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する点にある。
上記の特徴構成によれば、電解質層は、電極層を被覆する第1部分と、金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有するので、第2部分においては電極層からのガスのリークを抑制することができる。説明すると、電気化学素子の作動時には、金属基板の裏側から貫通孔を通じて電極層へガスが供給される。電極層の端部において第2部分の存在しない部位で電極層の端部が露出していると、そこからガスのリークが発生することが考えられる。第2部分により電極層の端部を確実に覆っておくと、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルの特徴構成は、上述の電気化学素子における前記電極層の上に設けられた電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を設けて構成した点にある。
上記の特徴構成によれば、電気化学素子の電解質層の上に前記電極層の対極となる対極電極層を設けて固体酸化物形燃料電池(SOFC)セルを構成したので、金属基板と電極層や電解質層との間の元素相互拡散を抑制して耐久性が向上した固体酸化物形燃料電池セルを実現できる。
本発明に係る電気化学素子の別の特徴構成は、前記電極層の上に設けられた電解質層を有し、前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている点にある。
上記の特徴構成によれば、気密性およびガスバリア性の高い電解質層によって、貫通孔が形成された領域が覆われるので、パッキンやシーリング等、気体の他所への漏出を防止するための別途の構造が不要となる。よって、素子の製造コストの増加を抑制することができる。
本発明に係る電気化学素子の特徴構成は、少なくとも金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層と、前記電極層の上に設けられた電解質層とを有する電気化学素子であって、前記電極層は気体透過性を有しており、前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域に金属酸化物膜が形成されており、前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている点にある。
上記の特徴構成によれば、気密性およびガスバリア性の高い電解質層によって、貫通孔が形成された領域が覆われるので、パッキンやシーリング等、気体の他所への漏出を防止するための別途の構造が不要となる。よって、素子の製造コストの増加を抑制することができる。
電気化学素子の構成を示す断面図 固体酸化物形燃料電池セルの構成を示す断面図 電気化学素子の構成を示す断面図 電気化学素子の構成を示す断面図 電気化学素子の構成を示す断面図 電気化学素子の構成を示す断面図 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真 電気化学素子の断面の電子顕微鏡写真
(第1実施形態)
以下、図1および図2を参照しながら電気化学素子1、固体酸化物形燃料電池(SOFC)セル100、電気化学素子の製造方法およびSOFCの製造方法について説明する。なお、層の位置関係などを表す際、例えば電極層から見て電解質層4の側を「上」「上側」、金属基板2の側を「下」「下側」などと呼ぶ。
(電気化学素子1)
電気化学素子1は、複数の貫通孔21を有する金属基板2と、金属基板2の表側の面に設けられた電極層3と、電極層3の上に設けられた電解質層4とを有する。電極層3は電子伝導性および気体透過性を有するように構成される。電解質層4は酸素イオン伝導性を有するように構成される。
(金属基板2)
金属基板2は、電極層3と電解質層4とを支持して電気化学素子1の強度を保つ役割を担う。金属基板2の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。
金属基板2は、表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔21を有する。なお、例えば、貫通孔21は、レーザー加工などにより、金属基板2に設けることができる。貫通孔21は、金属基板2の裏側の面から表側の面へ気体を透過させる機能を有する。金属基板2に気体透過性を持たせるために、多孔質金属を用いることも可能である。
貫通孔21は、金属基板2における電極層3が設けられる領域より小さい領域に設けられることが好ましい。
金属基板2には、その表面に薄い金属酸化物膜22が設けられる。金属酸化物膜22は、金属基板2の外部に露出した面だけでなく、電極層3との接触面(界面)および貫通孔21の内側の面にも設けられる。この金属酸化物膜22により、金属基板2と電極層3との間の元素相互拡散を抑制することができる。例えば、金属基板2としてフェライト系ステンレスを用いた場合は、金属酸化物膜22が主にクロム酸化物となる。そして、金属基板2のクロム原子等が電極層3や電解質層4へ拡散することを、クロム酸化物を主成分とする金属酸化物膜22が抑制する。金属酸化物膜の厚さは、サブミクロンオーダーであることが好ましい。また、例えば、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることが好ましい。また、最小膜厚は約0.1μm以上であることが好ましい。また、最大膜厚が約1.1μm以下であることが好ましい。
金属基板2としてフェライト系ステンレス材を用いた場合、電極層3や電解質層4の材料であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子1がダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子1を実現できるので好ましい。
(電極層3)
電極層3は、図1に示すように、金属基板2の表側の面の貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に、薄膜の状態で設けられる。電極層3の材料としては、例えばNiO−CGO(ガドリウム・ドープ・セリア)、Ni−CGO、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用いることができる。これらの例では、CGO、YSZ、CeO2がサーメット材の骨材と呼ぶことができる。なお、電極層3は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、良好な電極層3が得られる。そのため、金属基板2を傷めることなく、また、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
電極層3は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部33を備えることもできる。また、場合に応じて、電極層3は、金属基板の表側の面に隣接する第1層32(下方部位)と、第1層32の上に設けられ電解質層4に隣接する第2層31(上方部位)というように、複数構造にしてもよい。
電極層3は、気体透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔34を有する。細孔34のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズが適宜選ぶことができる。なお、例えば、細孔34に、開口部35の直径が0.1μm以上5μm以下の細孔が含まれるものとすることができる。また、開口部の直径が0.1μm以上3μm以下の細孔が含まれているとより好ましく、開口部の直径が0.1μm以上1μm以下の細孔が含まれているとさらに好ましい。
挿入部33と第1層32と第2層31とは同じ材料により構成するのが好ましいが、それぞれを異なる材料で構成することもできる。例えば、異なる元素を含有する材料、異なる元素比の材料で構成することができる。また、サーメット材の骨材の含有比、緻密度、強度などを挿入部33と第1層32と第2層31との間で異ならせて構成することができる。なお、電極層3における層の数は、3以上としてもよいし、1つでもよい。
また電極層3において、サーメット材の骨材の含有比、緻密度、および強度を電極層3の下側から上側にかけて連続的に増加するように構成してもよい。この場合、電極層3は層として明確に区別できる領域を持たなくてもよい。しかしこの場合であっても、電極層3における金属基板2に隣接する部位(下方部位)に比べ、電解質層4に隣接する部位(上方部位)におけるサーメット材の骨材の含有比、緻密度、強度等を高くすることも可能である。
例えば、金属基板の表側の面に隣接する第1層32(下方部位)に比べ、電解質層4に隣接する第2層31(上方部位)の強度が高くなるように構成することが可能である。これにより、電解質層4の形成にエアロゾルデポジション法やスプレーコート法などの、下地となる電極層3に衝撃を与える可能性のある手法が適用しやすくなると考えられる。このような電解質層4の形成方法では、低温での処理にて緻密な電解質層を形成することができ、かつ、高温での処理を経ないことで、電気化学素子1の耐久性向上も期待できる。
また、第1層32(下方部位)に比べ第2層31(上方部位)の強度が高くなるように構成するには、サーメット材の種類、使用する材料粉末の粒径や製造時の条件を異ならせる等の手法がある。また後述するように、サーメット材の骨材の含有比を異ならせることによって、第1層32(下方部位)に比べ第2層31(上方部位)の強度を高くすることもできる。
また、電極層3において、金属基板の表側の面に隣接する第1層32(下方部位)に比べ、電解質層4に隣接する第2層31(上方部位)の緻密度が高くなるように構成することも可能となる。これにより、緻密な表面上に電解質層4を形成することで、電解質層4の緻密度も併せて向上させることができる。一方、電気化学素子の電極層としては気体透過性が必要であるが、緻密度が高くなると気体透過性は低下する。そこで、下方部位では上方部位よりも緻密度を低くして気体透過性を確保しつつ、上方部位では下方部位より緻密度を高くして、電極層3と電解質層4との結合強度、および電解質層4の緻密度を向上できる構成とすることが可能となる。
第1層32(下方部位)に比べ第2層31(上方部位)の緻密度が高くなるように構成するには、サーメット材の種類、使用する材料粉末の粒径や製造時の条件を異ならせる等の手法がある。また後述するように、サーメット材の骨材の含有比を異ならせることによって、第1層32(下方部位)に比べ第2層31(上方部位)の緻密度を高くすることもできる。
なお緻密度とは、電極層3の材料が空間に占める割合である。すなわち、第1層32(下方部位)に比べ第2層31(上方部位)の緻密度を高くする場合は、第1層32は第2層31に比べてその表面や内部に存在する空孔・細孔の比率が大きいことになる。
また、金属基板の表側の面に隣接する第1層32(下方部位)に比べ、電解質層4に隣接する第2層31(上方部位)においてサーメット材の骨材の含有比が高くなるように構成することもできる。これにより、上方部位の強度と緻密度を高めることができるため、電解質層4の形成にエアロゾルデポジション法や溶射法(スプレーコート法)などの、下地となる電極層3に衝撃を与える可能性のある手法が適用しやすくなると考えられる。このような電解質層4の形成方法では、低温での処理にて緻密な電解質層を形成することができ、かつ、高温での処理を経ないことで、電気化学素子1の耐久性向上も期待できる。なお、サーメット材の骨材の含有比が高いとは、サーメット材に混合する金属または金属酸化物(例えばNiO−CGO)の含有比が低いことを意味する。
挿入部33は、図1に示す通り、貫通孔21に挿入された状態で設けられ、貫通孔21を塞いでいる。例えば、挿入部は、貫通孔21に数μm程度の深さまで挿入された状態で設けることができる。また、数μm程度以上の深さまで挿入することもできる。電極層3が挿入部33を有することにより、電極層3に欠陥が生じにくくなり、その結果、良好な電解質層4を形成することができ、より優れた電気化学素子1を実現できる。
(電解質層4)
電解質層4は、電極層3の上部に形成する。また、電極層3を被覆する第1部分41と、金属基板2の表側の面に接触する第2部分42とを有するような構造とすることもできる。この場合、電解質層4は、図1に示すように、横断側面視において電極層3の上と金属基板2の表側の面の上とにわたって(跨って)設けられる。これにより、第2部分42により電解質層4を金属基板2に接合して、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
また、第2部分42においては電極層3からのガスのリークを抑制することができる。
説明すると、電気化学素子1の作動時には、金属基板2の裏側から貫通孔21を通じて電極層3へガスが供給される。第2部分42の存在する部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、第1実施形態では第2部分42によって電極層3の周囲をすべて覆っているが、電極層3の上部に電解質層4を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層4をジルコニア系セラミックスとすると、電気化学素子1の稼働時の温度をセリア系セラミックスに比べて高くすることができる。例えば電気化学素子1をSOFCに用いる場合、電解質層4の材料として、YSZのような650℃程度以上の高温域で稼働できる電解質層4を備えたSOFCとし、また、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いることができるため、高効率なSOFCシステムを構築することができる。
電解質層4は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能な成膜プロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性の高い電解質層4が得られる。そのため、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できる。
電解質層4は、気密性を保つために緻密に構成される。なお、前記電解質層に、相対密度が90%以上である電解質層が含まれることが好ましい。また、相対密度が95%以上である電解質層が含まれることがより好ましく、更には、相対密度が98%以上である電解質層が含まれることが好ましい。このように、相対密度が高い電解質層とすることで緻密な電解質層とすることができる。なお、ここで相対密度とは、電解質材料の理論密度に対して実際に形成された電解質層4の密度の割合を表す。もしくは、前記電極層の上に形成される電解質層の一部に緻密な電解質層が含まれる構成としてもよい。
(固体酸化物形燃料電池(SOFC)セル100)
このように構成した電気化学素子1に対して、図2に示すように、電解質層4の上に電極層3の対極となる対極電極層5を設けることで、以下のように動作する固体酸化物形燃料電池セル100として利用することが可能である。電極層3の対極となる対極電極層5の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物を用いることができる。なお、対極電極層5は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、良好な対極電極層5が得られる。そのため、金属基板2を傷めることなく、また、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
このようなSOFCを構成することで、例えば、金属基板2の裏側の面から貫通孔21を通じて水素を含む燃料ガスを電極層3へ供給し、電極層3の対極となる対極電極層5へ空気を供給し、例えば700℃程度の作動温度に維持する。そうすると、対極電極層5において空気に含まれる酸素O2が電子e-と反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層4を通って電極層3へ移動する。電極層3においては、供給された燃料ガスに含まれる水素H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。
以上の反応により、電極層3と対極電極層5との間に起電力が発生する。この場合、電極層3は燃料電池の燃料極(アノード)として機能し、対極電極層5は空気極(カソード)として機能する。
(電気化学素子1の製造方法)
次に、電気化学素子1の製造方法について説明する。
(電極層形成ステップ)
電極層形成ステップでは、金属基板2の表側の面の貫通孔21が設けられた領域より広い領域に電極層3が形成される。電極層形成ステップは、予備塗布ステップ、押し込み拭取りステップ、主塗布ステップ(第1形成ステップと第2形成ステップ等の複数のステップとすることもできる)を有するものとすることができる。また、予備塗布ステップや押し込み拭取りステップを省き、主塗布ステップのみとすることもできる。
なお、金属基板2の貫通孔はレーザー加工等によって設けることができる。
(予備塗布ステップ)
予備塗布ステップでは、電極層3の材料を含有する電極層材料ペーストが金属基板2の表側の面に塗布される。まずサーメット材である電極層3の材料の粉末を有機溶媒に混ぜたペーストを作成する。次に、作成したペーストを金属基板2の貫通孔21が設けられた領域に滴下、あるいは塗布する。このとき、ペーストの一部は毛細管現象により各貫通孔21の内部に流れ込む。
(押し込み拭取りステップ)
続いて行われる押し込み拭取りステップでは、金属基板2の表面上のペーストが、ブレード等によりワイプされる。すなわち、貫通孔21へペーストを押し込むとともに金属基板2の表側の面に残留するペーストが拭き取られる。これによって、貫通孔21がペーストで埋まり(塞がり)、金属基板2の表面から余分なペーストが除去されて、金属基板2の表面が平滑になる。すなわち、金属基板2の貫通孔21が電極層材料ペーストにより孔埋めされた状態になる。押し込み拭取りステップを行った後、金属基板2を乾燥させてもよい。
なお、適切なペーストを選び、各種条件を適切なものにすることで、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップをまとめてスクリーン印刷法により行うこともできる。
(主塗布ステップ・第1形成ステップ)
続いて行われる主塗布ステップ(第1形成ステップ)では、予備塗布ステップに用いられた電極層材料ペーストに比べ、溶媒による希釈率が低いペーストを用いることができる。すなわち、予備塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率は、主塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率に比べて高くすることができる。そのペーストを金属基板2の貫通孔21が設けられた領域より広い領域に塗布する。塗布は、例えばスプレー法やスクリーン印刷法により、厚さが均等になるように行われる。第1形成ステップにより、電極層3の第1層32(下方部位)が形成される。
電極層形成ステップにおいて、予備塗布ステップ、押し込み拭取りステップ、主塗布ステップが行われることにより、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部33を作成しつつ、上面が平滑な電極層3を形成することができる。よって、電極層3の上に緻密な電解質層4を形成することができ、また、より堅牢性に優れた電気化学素子1を製造することができる。また、得られた平滑な電極層3の上に、低温焼成法やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などの低温プロセスで電解質層4を形成することが可能となり、高温の熱処理を経ないことで耐久性に優れた電気化学素子1を製造することができる。
また、予備塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率は、主塗布ステップに用いられる電極層材料ペーストの溶媒による希釈率に比べて高くすることができる。これにより、予備塗布ステップでは溶媒による希釈率が高い電極層材料ペーストを金属基板2の表面に塗布することができるので、金属基板2の貫通孔21に電極層3の材料が入り込みやすくすることができる。従って、より確実に貫通孔21を電極層材料で埋める(塞ぐ)ことができ、表面がより平滑な電極層3を得ることができる。すなわち、電極層3の上により緻密な電解質層4を形成することができ、また、より堅牢性に優れた電気化学素子1を製造することができる。また、得られた平滑な電極層3の上に、低温焼成法やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などの低温プロセスで電解質層4を形成することが可能となり、高温の熱処理を経ないことで耐久性に優れた電気化学素子1を製造することができる。
(主塗布ステップ・第2形成ステップ)
続いて行われる第2形成ステップでは、第1形成ステップに用いられた電極層材料ペーストに比べ、サーメット材の骨材の混合比率が高いペーストを用いることができる。そのペーストを第1形成ステップでペーストが塗布された領域に重ねて塗布することができる。塗布は、例えばスプレー法やスクリーン印刷法により、厚さが均等になるように行われる。第2形成ステップにより、電極層3の第2層31(上方部位)を形成することができる。
第1形成ステップの後に、骨材の混合比率を第1比率よりも大きい第2比率とした電極層材料を用いて電極層3の形成を行う第2形成ステップを行うことにより、電極層3の下方に比べて上方の骨材の混合比率を大きくすることができる。従って、電極層3の上方の強度と緻密度を高めることができ、低温での電解質層4の形成と、電極層3の気体透過性の確保とが実現できる。したがって、堅牢性と耐久性をより高めた電気化学素子1を製造することができる。
なお、主塗布ステップは、第1形成ステップのみとすることもできるし、同種の第3形成ステップ以上を含めることもできる。
また、主塗布ステップに用いる電極層材料ペーストを好適に調整することで、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップを省くこともできる。
さらに、主塗布ステップにおいて、金属基板2の上に電極層3を塗布した後に、400℃〜450℃程度の温度に加熱する脱脂処理を行ってもよい。
(焼成ステップ)
主塗布ステップを行った後に、電極層3が形成された金属基板2を加熱処理して、電極層3を焼成するとともに金属基板2の表面に金属酸化物膜22を形成する焼成ステップを行う。焼成ステップは、例えば、水素と窒素の混合気体を加湿して調整した混合ガス雰囲気下で、800℃〜1100℃に加熱して行う。このような条件下で焼成ステップを行うと、金属酸化物膜22の厚さが、サブミクロンオーダーの厚さの好適なものとすることができる。金属酸化物膜22の厚さは、厚すぎると金属基板2の電気抵抗が大きくなりすぎるという不具合が生じたり、金属酸化物膜22がもろくなったりする。一方、薄すぎると金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制効果が不十分となる。このため、例えば、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることが好ましい。また、最小膜厚は約0.1μm以上であることが好ましい。また、最大膜厚が約1.1μm以下であることが好ましい。
電極層形成ステップを行った後に上述の焼成ステップを行うことで、電極層3の焼成と金属酸化物膜22の形成が併せて行われる。電極層3は気体透過性を有するので、金属基板2の表面のうち、外部に露出した面、電極層3と接している面(界面)、および貫通孔21の内面に金属酸化物膜22が形成される。この金属酸化物膜22によって金属基板2と電極層3との間の元素相互拡散を抑制できるので、別途の元素拡散防止層を設ける必要がなく、製造工程を簡便化することができる。
また焼成ステップは、酸素の分圧が1.0×10-20atm以上5.0×10-15atm以下となるように調整された条件下で行われることが望ましい。このように酸素分圧が低い環境下で焼成を行うことで、適切な厚さで、厚みが均一で、緻密ではがれにくい金属酸化物膜22を形成することができ、元素相互拡散をより効果的に抑制できる電気化学素子1を製造することができる。なお、金属酸化物膜22の膜厚が薄すぎると、金属基板2と電極層3との間の元素相互拡散の機能が不十分となり、また、金属酸化物膜22の膜厚が厚すぎると、金属酸化物膜22にクラックなどの欠陥が入りやすくなって金属酸化物膜22の強度に悪影響を及ぼしたり、金属酸化物膜22の電気抵抗が大きくなり電気化学素子としての性能が低下する虞がある。このため、金属酸化物膜22を適切な膜厚に形成できるようにすることが好ましい。
さらに、焼成ステップを水素と窒素の混合気体を加湿して調整した混合ガス中で行うことが望ましい。このような混合ガス雰囲気下で焼成温度に加熱すると、酸素分圧が非常に低い雰囲気となり、薄く緻密ではがれにくい金属酸化物膜22を形成することができ、元素相互拡散をより強く抑制できる電気化学素子1を製造することができる。
焼成ステップは、800℃〜1100℃に加熱して行われる。特に、1050℃以下で行うと好適であり、1000℃以下で行うと更に好適である。混合ガスの温度を1100℃を超えて高くすると、酸素分圧が大きくなる上、金属基板2と電極層3との間の元素相互拡散が増加する虞がある。また焼成の温度を800℃よりも低くすると、電極層3の強度が不足したり、金属酸化物膜22が薄くなりすぎて、金属基板2と電極層3との間の元素相互拡散を抑制する機能が不十分となる虞がある。従って、焼成ステップを、800℃〜1100℃とすることで、金属酸化物膜22を適切な厚さで形成しつつ、適切な強度および緻密度の電極層を形成でき、耐久性に優れた電気化学素子1を製造できる。
また、焼成ステップは、酸素の分圧が1.0×10-20atm以上5.0×10-15atm以下となるように調整された条件下で焼成が行われた後に、酸素分圧を5.0×10-15atmより高くした条件(例えば空気中など)で、再度焼成するステップを含めてもよい。このようにすると、酸素の分圧が1.0×10-20atm以上5.0×10-15atm以下となるように調整された条件下で、まず、適切な厚さの金属酸化物膜22が形成されるが、その後の酸素分圧を高くした焼成ステップを加えることで、金属酸化物膜22の増大を抑えつつ、金属基板2の電気抵抗値の増大を抑制しながら、電極層3の強度を増加させることができるので、その後に、低温焼成法やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などの低温プロセスでの電解質層4の形成をより容易にすることが可能となる。特に、電解質層4の形成にエアロゾルデポジション法や溶射法(スプレーコート法)などの、下地となる電極層3に衝撃を与える可能性のある手法が適用しやすくなる。
(電解質層形成ステップ)
焼成ステップの後、すなわち電極層形成ステップの後に、電解質層形成ステップが行われる。電解質層形成ステップでは、電極層3の上と金属基板2の表側の面の上とにわたって電解質層4の材料である電解質材料を付着させて、電極層3を被覆する第1部分41と金属基板2の表側の面に接触する第2部分42とを有する電解質層4を形成することができる。
電解質層形成ステップは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することが好ましい。これらの方法により、高温の熱処理を経ずに、緻密で気密性の高い電気化学素子を製造することができる。すると、別途の拡散防止層を設けなくとも、金属基板2と電極層3との元素相互拡散を抑制でき、耐久性に優れた電気化学素子を実現することができる。
(固体酸化物形燃料電池セルの製造方法・対極電極層形成ステップ)
上述のステップで製造された電気化学素子1に対して、電解質層4の上に電極層3の対極となる対極電極層5を形成する対極電極層形成ステップを実行することで、固体酸化物形燃料電池セル100を製造することができる。対極電極層形成ステップは、電極層3の対極となる対極電極層5としての材料(LSCF、LSM等の複合酸化物)の粉末を用いて、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法(スプレーコート法)などにより形成することができる。
(第2実施形態)
上記の実施形態では、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100に用いたが、電気化学素子1を固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
(第3実施形態)
上記の実施形態では、電極層3にアノード極を形成し、対極電極層5にカソード極を形成した固体酸化物形燃料電池セル100を用いたが、電極層3にカソード極を形成し、対極電極層5にアノード極を形成することもできる。
(第4実施形態)
上記の第1実施形態では、電解質層4は、図1または図2に示されるように、電極層3の上側の面に積層された。また、対極電極層5は、電解質層4の上側の面に積層された。これを変更して、図3に示すように、電極層3と電解質層4との間に緩衝層6を設けてもよい。また、電解質層4と対極電極層5との間に反応防止層(図示なし)を設けてもよい。
(緩衝層6)
緩衝層6の材料としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有する材料が好適であり、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特に、セリア系のセラミックスを用いると、緩衝層6が混合伝導性を有することになり、高い素子性能が得られるためより好ましい。緩衝層6は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法などにより形成することが好ましい(緩衝層形成ステップ)。特に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので好ましい。緩衝層6は、その相対密度が電解質層4の相対密度よりも小さいことが好ましい。また、緩衝層6は、その相対密度が電極層3の相対密度よりも大きいことが好ましい。これらのようにすると、素子のヒートショックをはじめとする各種の応力に対する耐性を向上できるという効果があり好ましい。
(反応防止層)
反応防止層の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層5の成分との間の反応を防止できる材料であれば良い。例えばセリア系材料等が用いられる。反応防止層を電解質層4と対極電極層5との間に導入することにより、対極電極層5の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、素子の性能の長期安定性を向上できる。反応防止層は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やエアロゾルデポジション法、溶射法、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法などを適宜用いて形成することができる(反応防止層形成ステップ)。特に、低温焼成法やエアロゾルデポジション法や溶射法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
(第5実施形態)
上述した第4実施形態では、図3に示すように、電極層3および電解質層4の両方が、金属基板2の表側の面であって貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電極層3および電解質層4によって覆われている。つまり貫通孔21は、金属基板2における電極層3が形成された領域の内側であって、かつ電解質層4が形成された領域の内側に形成される。換言すれば、全ての貫通孔21が電極層3に面して設けられている。これを変更して、図4に示す構成とすることも可能である。
図4に示す構成では、電極層3が、貫通孔21が設けられた領域より小さな領域に設けられる。緩衝層6および電解質層4が、貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、緩衝層6および電解質層4によって覆われている。つまり貫通孔21は、電極層3が形成された領域の内側と外側とに設けられる。また貫通孔21は電解質層4が形成された領域の内側に設けられる。換言すれば、貫通孔21は電極層3と緩衝層6の両方に面して設けられている。図4に示すように、電極層3は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部33を備えていてもよい。緩衝層6は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部61を備えてもよい。挿入部33および挿入部61は、貫通孔21に数μm〜数十μm程度の深さまで挿入された状態で設けることができる。
(第6実施形態)
また図5に示す構成も可能である。図5に示す構成では、電極層3および緩衝層6が、貫通孔21が設けられた領域より小さな領域に設けられる。電解質層4が、貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電解質層4によって覆われている。つまり貫通孔21は、電極層3が形成された領域の内側と外側とに設けられる。貫通孔21は、緩衝層6が形成された領域の内側と外側とに設けられる。また貫通孔21は電解質層4が形成された領域の内側に設けられる。換言すれば、貫通孔21は電極層3と緩衝層6と電解質層4とに面して設けられている。緩衝層6は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部61を備えてもよい。また、電解質層4は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部(図示なし)を備えてもよい。
(第7実施形態)
また図6に示す構成も可能である。図6に示す構成では、電極層3および緩衝層6が、貫通孔21が設けられた領域より小さな領域に設けられる。緩衝層6は、電極層3が設けられた領域に設けられる。電解質層4が、貫通孔21が設けられた領域より大きな領域に設けられる。貫通孔21が設けられた領域の全体が、電解質層4によって覆われている。
つまり貫通孔21は、電極層3が形成された領域の内側と外側とに設けられる。また貫通孔21は電解質層4が形成された領域の内側に設けられる。換言すれば、貫通孔21は電極層3と電解質層4とに面して設けられている。電解質層4は、金属基板2の貫通孔21に挿入され貫通孔21を塞ぐ挿入部(図示なし)を備えてもよい。
(第8実施形態)
上記の実施形態では、電極層3の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用い、対極電極層5の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用いた。そして電極層3に水素ガスを供給して燃料極とし、対極電極層5に空気を供給して空気極とし、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100として用いた。これを変更して、電極層3を空気極とし、対極電極層5を燃料極とすることが可能なように、電気化学素子1を構成することも可能である。すなわち、電極層3の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層5の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などのサーメット材を用いる。このように構成した電気化学素子1であれば、電極層3に空気を供給して空気極とし、対極電極層5に水素ガスを供給して燃料極とし、電気化学素子1を固体酸化物形燃料電池セル100として用いることができる。
なお、上記の実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
以下、様々な条件で電気化学素子1の試作を作成し、種々の測定を行った結果を説明する。
(試作1:実施例)
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板を金属基板2として用い、60重量%のNiO粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の上に直径17mmの領域にスクリーン印刷法により電極層3を塗布した。その後、空気中、450℃で脱脂処理を行った(主塗布ステップ)。
次に、電極層3を塗布した金属基板2に対して、850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行い(焼成ステップ)、電気化学素子1を作製した。
この試作1で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約11mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作1で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
(試作2:実施例)
電極層3を塗布した金属基板2に対して、850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行い、更にその後に、850℃空気中で30分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作2で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約15mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作2で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
なお、試作1で得られた電気化学素子1と、試作2で得られた電気化学素子1について、それぞれの電極層3の強度をテープ試験によって調べたところ、試作2の電気化学素子1では電極層3の表面層がほとんど剥がれなかったのに対して、試作1の電気化学素子1では電極層3の表面層が50%程度剥がれた。このため、酸素の分圧が1.0×10-20atm以上5.0×10-15atm以下となるように調整された条件下で、まず、適切な厚さの金属酸化物膜22を形成し、その後の酸素分圧を高くした焼成ステップを加えることで、金属酸化物膜22の増大を抑えつつ、金属基板2の電気抵抗値の増大を抑制しながら、電極層3の強度を増加させることができることが分かった。
(試作3:実施例)
電極層3を塗布した金属基板2に対して、950℃で酸素分圧が5.1×10-18atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作3で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約19mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作3で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作3で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図7に示す。図7より、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.1μm程度、最大で0.7μm程度、平均的には0.3μm程度であることが分かった。また、この試作3で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
(試作4:実施例)
電極層3を塗布した金属基板2に対して、950℃で酸素分圧が5.1×10-18atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った後、更に、950℃空気中で30分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作4で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値測定したところ、約23mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作4で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作4で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図8に示す。図8に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.2μm程度、最大で1.1μm程度、平均的には0.5μm程度であることが分かった。また、この試作4で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
(試作5:実施例)
電極層3を塗布した金属基板2に対して、1050℃で酸素分圧が4.1×10-17atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で30分焼成を行った後、更に、1050℃で酸素分圧が2.0×10-2atmになるようにO2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で15分焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作5で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約31mΩ・cm2であることが分かった。
さらに、この試作5で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNiO及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。
また、この試作5で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図9に示す。図9に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.5μm程度、最大で1.0μm程度、平均的には0.67μm程度であることが分かった。また、この試作5で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが分かった。また、金属酸化物膜22により、金属基板2中のCrやFeの電極層3への拡散が抑制され、電極層3から金属基板2へのNiの拡散が抑制されていることが分かった。
(試作6:比較例)
電極層3を塗布した金属基板2に対して、1150℃で酸素分圧が7.3×10-14atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成を行った(焼成ステップ)こと以外は試作1と同様にして、電気化学素子1を作製した。
この試作6で作製した電気化学素子1の金属基板2における金属酸化物膜22の厚さ方向の電気抵抗値を測定したところ、約2.2Ω・cm2以上であることが分かった。
さらに、この試作6で作製した電気化学素子1について、電極層3の表面からX線回折測定を行ったところ、電極層3の成分に起因するNi及びCeO2と金属基板2の成分に起因するFe相当のピークが観察された。そして、CeCrO3の複合酸化物のピークが観察された。
また、この試作6で作製した電気化学素子1の断面SEM観察を行った結果を図10に示す。図10に示すように、金属酸化物膜22の厚さは、最小で0.6μm程度、最大で1.4μm程度、平均的には0.85μm程度であることが分かった。また、この試作6で作製した電気化学素子1の断面EPMA観察を行ったところ、Crの電極層への拡散が比較的多くなっているように見られた。
この結果、1150℃で酸素分圧が7.2×10-14atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で焼成ステップを行うと、金属基板の電気抵抗値が極端に大きくなり、電気化学素子としての性能が低下することが分かった。また、金属基板2からのCrの拡散抑制の効果が低下してしまいCeCrO3の複合酸化物がX線回折測定で観察される結果となった。
上記の試作1〜5と試作6の結果から、気体透過性を有する電極層3を塗布した金属基板2の表面に金属酸化物膜22を形成することが可能であることが分かった。また、金属酸化物膜22の厚さをサブミクロンオーダーとすることで、金属基板2と電極層3の元素相互拡散を抑制できることが分かった。また、特に、金属酸化物膜22の厚さは、その平均的な厚さが約0.3μm〜約0.7μmであることが好ましいことが分かった。また、金属酸化物膜22の主成分が酸化クロムであることが好ましく、更に、Crと電極層3を構成する元素との複合酸化物が実質的に含まれない(X線回折で観測できない)電気化学素子1であることが好ましいことが分かった。加えて、焼成ステップでは、800℃以上1100℃以下、好ましくは850℃以上1050℃以下で行われるのが好ましく、また、酸素分圧が1.0×10-20atm以上5.0×10-15atm以下の雰囲気中で行われる焼成ステップが少なくとも含まれることが好ましいことが分かった。
(試作7:実施例)
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
次に、60重量%のNiO粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の貫通孔が設けられた領域に滴下した(予備塗布ステップ)。そして金属基板2の表面上のペーストを貫通孔にワイプ擦り込みした(押し込み拭取りステップ)。
次に、60重量%のNiO粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の中心から半径3.5mmの領域にスプレー法により電極層3を塗布した。その後、空気中、450℃で脱脂処理を行った(主塗布ステップ)。
次に、電極層3を塗布した金属基板2に対して、1050℃で酸素分圧が4.1×10-17atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で30分焼成処理を行った。その後、更に、1050℃でpO2=2.0×10-2atmになるようにO2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気化で15分焼成処理を行った(焼成ステップ)。
続いて、モード径が約0.7μmの8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)粉末を6L/minの流量のドライエアでエアロゾル化した。エアロゾルを圧力を190Paとしたチャンバー内に導入して、加熱せずに、電極層3を積層させた金属基板2に対して、電極層を覆うように、10mm×15mmの範囲で噴射し、電解質層4を形成し、電気化学素子1を得た。
こうして得られた電気化学素子1の断面SEM像を図11に示す。図11より、金属酸化物膜22の厚さは、0.4〜0.6μm程度であった。また、多孔質な電極層3の上に緻密な電解質層4が形成されていることが見える。
また、得られた電気化学素子1の水素ガス透過率(水素リーク量)を測定したところ、検出下限以下(4.9×10-9mol/m2sPa以下)であった。
(試作8:参考例)
電解質層4を形成することなく、他は上記の試作7と同様にして、電極層3を積層させた金属基板2を作製し、得られた電気化学素子1の水素ガス透過率(水素リーク量)を測定したところ、1.1×102mol/m2sPaであった。
上記の試作7と試作8の結果から、電極層3は気体透過性(水素透過性)を有し、電解質層4は緻密で気密性が十分に確保されていることが分かった。
(試作9:実施例)
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径7.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
次に、70重量%のNiO粉末と30重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の貫通孔が設けられた領域に滴下した(予備塗布ステップ)。そして金属基板2の表面上のペーストを貫通孔にワイプ擦り込みした(押し込み拭取りステップ)。
次に、70重量%のNiO粉末と30重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の中心から半径8mmの領域にスプレー法により電極層3を塗布した。なお、この時に用いたペーストは加える有機溶媒の量を予備塗布ステップで用いたものよりも、約6%減らしてペーストを調整した。その後、空気中、450℃で脱脂処理を行った(主塗布ステップ)。
次に、電極層3を塗布した金属基板2に対して、850℃で酸素分圧が2.3×10-19atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成処理を行った(焼成ステップ)。
続いて、GDC粉末に有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、金属基板2の全面にスプレー法により電解質層4を塗布した後、1050℃で酸素分圧が1.7×10-15atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で2時間焼成処理を行い、電解質層4を形成した(低温焼成法による電解質層4の形成)。
続いて、60重量%のLSCF粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成し、電解質層4の上に中心から半径7mmの領域にスプレー法により対極電極層5を塗布した後、850℃で空気中で1時間焼成処理を行い、対極電極層5を形成した(低温焼成法による対極電極層5の形成)。
こうして得られた固体酸化物形燃料電池セルについて、水素と空気を用いて電気化学測定を行ったところ、0.2Vを上回る有意な電圧が得られた。
(試作10:比較例)
上記の試作1において、予備塗布ステップと押し込み拭取りステップを行わずに、貫通孔を塞ぐ挿入部を設けないこと以外は、試作9と同様にして固体酸化物形燃料電池セルを作製した。こうして得た固体酸化物形燃料電池セルについて、水素と空気を用いて電気化学測定を行ったところ、電解質膜の気密性が保たれず、電位差が発生しなかった。
上記の試作9と試作10の結果より、貫通孔を塞ぐ挿入部を設けることで、良好な電解質層4が形成できることが分かった。
(試作11:実施例)
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの金属板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔21の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
次に、60重量%のNiO粉末と40重量%のGDC粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成した。孔埋め処理として、金属基板2の中心から半径3mmの領域にスプレーし、その後80℃で乾燥させた。光学顕微鏡で表面を観察し、貫通孔21がペーストで埋められていることを確認した。続いて、金属基板2の同じ領域に当該ペーストを再度スプレーして堆積させ、その後60℃で乾燥させた。このようにして、電極層3を形成した(電極層形成ステップ)。
次に、電極層3を積層させた金属基板2に対して、450℃の空気中で脱脂処理を行った。次に850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成処理を行った。(焼成ステップ)。
次に、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作製した。当該ペーストを、電極層3を積層した金属基板2の中心から半径5mmの領域にスプレーして堆積させることで、緩衝層6を形成した。
次に、緩衝層6を積層した金属基板2に対して、1050℃で焼成処理を行った(緩衝層形成ステップ)。
以上のステップで得られた電極層3の厚さは約10μmであり、緩衝層6の厚さは約6μmであった。
続いて、モード径0.7μm程度の8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)粉末を6L/minの流量のドライエアでエアロゾル化した。エアロゾルを圧力を190Paとしたチャンバー内に導入して、金属基板2の緩衝層6の上に、緩衝層6を覆うように15mm×15mmの範囲で噴射し、電解質層4を形成した。その際、金属基板2は加熱せず、室温で噴射を行った(電解質層形成ステップ)。このようにして電気化学素子1を得た。
以上のステップで得られた電解質層4の厚さは約6μmであった。
続いて、電解質層4の上にプラチナを含有するペーストを塗布して、930℃の空気中で1時間焼成し、対極電極層5を形成した(対極電極層形成ステップ)。以上のステップにて、固体酸化物型燃料電池セルを得た。
得られた固体酸化物型燃料電池セルについて、電極層3に水素ガス、対極電極層5に空気を供給し、開回路電圧(OCV)を測定した。結果は、650℃では1.10V、700℃では1.07V、750℃では1.04Vであった。
(試作12:実施例)
厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの板に対して、中心から半径7.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔21を複数設けて、金属基板2を作成した。なお、この時、金属基板2の表面の貫通孔の直径が10〜15μm程度となるようにレーザー加工により貫通孔を設けた。
次に、60重量%のNiO粉末と40重量%のYSZ粉末を混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作成した。金属基板2の中心から半径3mmの領域に、スクリーン印刷により電極層3を形成した(電極層形成ステップ)。この処理で、貫通孔21の孔埋めと電極層3の形成とが行われている。
次に、電極層3を積層させた金属基板2に対して、450℃の空気中で脱脂処理を行った。次に850℃で酸素分圧が7.0×10-20atmになるようにH2/H2O/N2混合ガスを調整した雰囲気下で1時間焼成処理を行った。(焼成ステップ)。
次に、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、電極層3を積層した金属基板2の中心から半径5mmの領域に緩衝層6を形成した。
次に、緩衝層6を積層した金属基板2に対して、1050℃で焼成処理を行った(緩衝層形成ステップ)。
以上のステップで得られた電極層3の厚さは約18μmであり、緩衝層6の厚さは約10μmであった。
続いて、モード径0.7μm程度の8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)粉末を6L/minの流量のドライエアでエアロゾル化した。エアロゾルを圧力を240Paとしたチャンバー内に導入して、金属基板2の緩衝層6の上に、緩衝層6を覆うように15mm×15mmの範囲で噴射し、電解質層4を形成した。その際、金属基板2は加熱せず、室温で噴射を行った(電解質層形成ステップ)。このようにして電気化学素子1を得た。
以上のステップで得られた電解質層4の厚さは約7μmであった。
次に、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、電気化学素子1の電解質層4の上に、反応防止層を形成した。
その後、反応防止層を形成した金属支持型電気化学素子Eに対して、1000℃で焼成処理を行った(反応防止層形成ステップ)。
更に、GDC粉末とLSCF粉末とを混合し、有機バインダーと有機溶媒を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、反応防止層の上に対極電極層5を形成した。最後に、対極電極層5を形成した電気化学素子1を900℃にて焼成し(対極電極層形成ステップ)、固体酸化物形燃料電池セル100を得た。
得られた固体酸化物型燃料電池セルについて、電極層3に水素ガス、対極電極層5に空気を供給し、開回路電圧(OCV)を測定した。結果は、750℃では0.98Vであった。また得られる電流値を測定したところ、750℃では0.80Vの電圧時に350mA/cm2の電流が得られ、0.71Vの電圧時に550mA/cm2の電流が得られた。
このようにして得られた電気化学素子1の断面の電子顕微鏡写真を図12に示す。金属基板2の表面に、金属酸化物膜22が形成されている。金属酸化物膜22は、電極層3と金属基板2とが接触している領域の全体に渡って、ほぼ同じ厚さで均一に存在している。金属酸化物膜22は、金属基板2の貫通孔21が設けられない箇所だけでなく、貫通孔21の内部にも形成されていることが分かる。
耐久性に優れた電気化学素子および固体酸化物形燃料電池セルとして利用可能である。
1 :電気化学素子
2 :金属基板
21 :貫通孔
22 :金属酸化物膜
3 :電極層
31 :第2層(上方部位)
32 :第1層(下方部位)
33 :挿入部
34 :細孔
35 :開口部
4 :電解質層
41 :第1部分
42 :第2部分
43 :微細粒子
5 :対極電極層
100 :固体酸化物形燃料電池セル

Claims (24)

  1. 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
    前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
    前記焼成ステップが、酸素の分圧が1.0×10 -20 atm以上5.0×10 -15 atm以下の雰囲気中で行われる電気化学素子の製造方法。
  2. 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
    前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
    前記焼成ステップが、水素と窒素の混合気体を加湿した混合ガス中で行われる電気化学素子の製造方法。
  3. 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
    前記金属基板の表面に気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有し、
    前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有し、
    前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
    前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に電極層を形成し、
    前記電解質層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電解質層を形成する電気化学素子の製造方法。
  4. 金属基板と電極層とを有する電気化学素子の製造方法であって、
    表側の面と裏側の面とを貫通する複数の貫通孔を有する前記金属基板の表面に、気体透過性を有する電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層形成ステップの後に、前記電極層が形成された前記金属基板を加熱処理して、前記電極層を焼成するとともに前記金属基板の表面に金属酸化物膜を形成する焼成ステップとを有する電気化学素子の製造方法。
  5. 前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
    前記電極層形成ステップでは、前記金属基板の表側の面の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に電極層を形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  6. 前記焼成ステップの後に、前記電極層の上に電解質層を形成する電解質層形成ステップを有する請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  7. 前記焼成ステップの後に、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する電解質層形成ステップとを有する請求項に記載の電気化学素子の製造方法。
  8. 前記電解質層形成ステップでは、前記電極層の上と前記金属基板の表側の面の上とにわたって前記電解質層の材料である電解質材料を付着させて、前記電極層を被覆する第1部分と前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する電解質層を形成する請求項3に記載の電気化学素子の製造方法。
  9. 前記焼成ステップにおいて厚さがサブミクロンオーダーの前記金属酸化物膜が形成される請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  10. 前記金属基板はフェライト系ステンレス材である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  11. 前記焼成ステップが800℃以上1100℃以下の温度で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  12. 前記電解質層形成ステップが1100℃以下の温度で行われる請求項3、6〜8のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法。
  13. 請求項3、6〜8、12のいずれか1項に記載の電気化学素子の製造方法を実行した後に、前記電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を形成する対極電極層形成ステップを行う固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。
  14. 表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有する金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層とを少なくとも有する電気化学素子であって、
    前記電極層は気体透過性を有しており、
    前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域及び前記貫通孔の内面に金属酸化物膜が形成されている電気化学素子。
  15. 前記金属酸化物膜の厚さがサブミクロンオーダーである請求項14に記載の電気化学素子。
  16. 前記金属基板はフェライト系ステンレス材である請求項14または15に記載の電気化学素子。
  17. 前記金属酸化物膜は酸化クロムを主成分とする請求項1416のいずれか1項に記載の電気化学素子。
  18. クロムと前記電極層を構成する元素との複合酸化物が実質的に含まれない請求項1417のいずれか1項に記載の電気化学素子。
  19. 前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている請求項1418のいずれか1項に記載の電気化学素子。
  20. 前記電極層の上に電解質層を設けた請求項1419のいずれか1項に記載の電気化学素子。
  21. 前記電解質層は、前記電極層を被覆する第1部分と、前記金属基板の表側の面に接触する第2部分とを有する請求項20に記載の電気化学素子。
  22. 請求項1421のいずれか一項に記載の電気化学素子における前記電極層の上に設けられた電解質層の上に、前記電極層の対極となる対極電極層を設けた固体酸化物形燃料電池セル。
  23. 前記電極層の上に設けられた電解質層を有し、
    前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、
    前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている請求項1418のいずれか一項に記載の電気化学素子。
  24. 少なくとも金属基板と、前記金属基板の表側の面に設けられた電極層と、前記電極層の上に設けられた電解質層とを有する電気化学素子であって、
    前記電極層は気体透過性を有しており、
    前記金属基板の表面のうち、少なくとも前記電極層と接する領域に金属酸化物膜が形成されており、
    前記金属基板は表側の面と裏側の面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を有しており、
    前記電極層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より狭い領域に設けられており、
    前記電解質層は前記金属基板の前記貫通孔が設けられた領域より広い領域に設けられている電気化学素子。
JP2015186048A 2014-09-19 2015-09-18 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法 Active JP6671132B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014192028 2014-09-19
JP2014192028 2014-09-19

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016066616A JP2016066616A (ja) 2016-04-28
JP6671132B2 true JP6671132B2 (ja) 2020-03-25

Family

ID=55804266

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015186048A Active JP6671132B2 (ja) 2014-09-19 2015-09-18 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6671132B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2550317B (en) * 2016-03-09 2021-12-15 Ceres Ip Co Ltd Fuel cell
TWI763812B (zh) * 2017-03-31 2022-05-11 日商大阪瓦斯股份有限公司 電化學裝置、能源系統、及固態氧化物型燃料電池
JP7202060B2 (ja) * 2017-03-31 2023-01-11 大阪瓦斯株式会社 電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、および固体酸化物形燃料電池
JP7202061B2 (ja) * 2017-03-31 2023-01-11 大阪瓦斯株式会社 電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、および固体酸化物形燃料電池
JP7018807B2 (ja) * 2018-03-30 2022-02-14 大阪瓦斯株式会社 金属板、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池及び金属板の製造方法
JP7080090B2 (ja) * 2018-03-30 2022-06-03 大阪瓦斯株式会社 電気化学素子の金属支持体、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池及び金属支持体の製造方法
CN112219301A (zh) * 2018-06-12 2021-01-12 日本碍子株式会社 电池堆及电化学单电池
DE102018216100A1 (de) * 2018-09-21 2020-03-26 Robert Bosch Gmbh Elektrodenträgervorrichtung zu einer Stützung einer Elektrodeneinheit
JP6764496B2 (ja) * 2019-02-22 2020-09-30 日本碍子株式会社 電気化学セル
JP6752387B1 (ja) * 2019-03-07 2020-09-09 日本碍子株式会社 電気化学セル
JP6752386B1 (ja) * 2019-03-07 2020-09-09 日本碍子株式会社 電気化学セル
JP7377051B2 (ja) 2019-10-07 2023-11-09 太陽誘電株式会社 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
JP7280991B1 (ja) 2022-03-15 2023-05-24 日本碍子株式会社 電気化学セル

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016066616A (ja) 2016-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6800297B2 (ja) 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法
JP6671132B2 (ja) 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法
JP6667238B2 (ja) 金属支持型電気化学素子、固体酸化物形燃料電池および金属支持型電気化学素子の製造方法
JP6644363B2 (ja) 電気化学素子、固体酸化物形燃料電池セル、およびこれらの製造方法
US20230147978A1 (en) Manufacturing Method for Electrochemical Element and Electrochemical Element
JP6779351B2 (ja) 金属支持型電気化学素子、固体酸化物形燃料電池および金属支持型電気化学素子の製造方法
JP6779352B2 (ja) 金属支持型電気化学素子、固体酸化物形燃料電池および金属支持型電気化学素子の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180518

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190604

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190805

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200204

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200303

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6671132

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150