JP2016191772A - 凸版印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれから得られる凸版印刷原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、更に版面粘着性が低い凸版印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれを使用した凸版印刷原版を提供する。
【解決手段】水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記高分子化合物が、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする。前記アルキレングリコールの数平均分子量が200〜1000であることが好ましい。前記高分子化合物が、動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記高分子化合物が、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする。前記アルキレングリコールの数平均分子量が200〜1000であることが好ましい。前記高分子化合物が、動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、凸版印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれから得られる凸版印刷原版に関するものであり、特に、ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性に優れ、さらには版面粘着性が低い凸版印刷原版を提供できる水現像性感光性樹脂組成物に関するものである。
通常、印刷版に用いられる感光性樹脂凸版組成物は、一般に、可溶性高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有し、必要に応じて、安定剤、可塑剤等の添加剤が配合されている。
従来から、この感光性樹脂組成物層に透明な画像部を有するネガフィルム(またはポジフィルム)を通して活性光線を照射し、露光部の感光層を硬化させた後、非露光部の感光層を適当な溶剤で溶解除去して乾燥及び後露光する製版工程により、印刷用のレリーフ版を作成することは広く知られている。
前記の感光性樹脂組成物としては、可溶性ポリアミド、ポリエーテルウレアウレタン、完全鹸化または部分鹸化ポリ酢酸ビニルなどを可溶性ポリマーとして使用するものが提案されており、可溶性ポリアミドやポリエーテルウレアウレタンを使用する感光性凸版組成物は、耐摩耗性に優れるために特に好ましく使用される。それらの感光性樹脂凸版組成物を用いた感光性樹脂凸版用原版では、印刷性向上として感光性樹脂層を高反発弾性化した感光性樹脂凸版用原版で高速印刷適性を改善している(特許文献1,2参照)。
最近では、感光性樹脂凸版用原版に対するユーザーの要求がさらに微細なパターンを再現する方向へ進んでおり、写真物の印刷等に使用する最小ハイライト部についても200線の5%以下が、連続的に網点が減少する印刷物でスムーズに明るさを変化する再現性を有すること(ハイライト部網点の階調性)が要求されるようになっている。
微細なハイライト部網点印刷性の要求に対応する従来技術としては、感光樹脂層の光透過率の異なる多層構造にすることで画像再現性を向上させた感光性樹脂凸版用原版(特許文献3参照)、感光性樹脂層の多層化によりレリーフ形状をシャープにした感光性樹脂凸版用原版(特許文献4参照)などが挙げられるが、印刷物のハイライト部網点の1〜5%のハイライト部網点印刷物の再現性と感光性樹脂凸版用原版の製造コストの両者を満足できるものではなかった。特に、製造コストについては、多層化により再現性の向上を達成する場合には、製造工程が複雑となるために製造コストが上がることを避けることはできない。
一方、現在、コンピューターが進歩し、コンピューター上で処理された情報を印刷用原版上に直接出力し、原画フィルムの作成工程を必要とせずに印刷用原版を得る方法が提案されている。この方法では、酸素の存在下に紫外線で露光した場合には酸素による重合障害により原画に対して小さくすることや(特許文献5参照)やハイライト部網点の面積をコンピューター画面上で容易に修正できる特徴があり、ハイライト部印刷物の再現性が向上している。しかしながら、これらの印刷用原版の作成方法には、高価なレーザー照射装置が必要であり、安価な方法による部印刷物の再現性向上が望まれていた。
また、印刷中に版にクラックが発生しそれが不良印刷物を生じさせる問題が凸版印刷版ではしばしば起きている。この耐刷性を改善するために、部分ケン化PVAとポリアミド化合物を併用する方法(特許文献6参照)や特定の架橋剤を使用する方法(特許文献7参照)が提案されている。
本発明は、上記のような従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、更に版面粘着性が低い凸版印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれを使用した凸版印刷原版を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、凸版印刷原版に使用する感光性樹脂組成物の水溶解性又は水分散性の高分子化合物について鋭意検討した結果、高分子化合物に特定範囲の濃度のウレア結合とアルキレングリコール成分を含有させることにより、ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立できることを見い出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)の構成を有するものである。
(1)水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記高分子化合物が、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(2)前記アルキレングリコールの数平均分子量が200〜1000であることを特徴とする(1)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(3)前記高分子化合物が、動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(4)以下の(A)脂環族ジアミン及び/又は(B)脂環族ジイソシアネートを高分子化合物中に10〜50重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(A)イソホロンジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジアミン。
(B)イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、及び4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジイソシアネート。
(5)アルキレングリコールがポリエチレングリコール、又はエチレングリコールと他のアルキレングリコールの共重合体であることを特徴とする(1)〜(4)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を設けてなる凸版印刷原版。
(7)レーザー彫刻に使用されることを特徴とする(6)に記載の凸版印刷原版。
(1)水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記高分子化合物が、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(2)前記アルキレングリコールの数平均分子量が200〜1000であることを特徴とする(1)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(3)前記高分子化合物が、動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(4)以下の(A)脂環族ジアミン及び/又は(B)脂環族ジイソシアネートを高分子化合物中に10〜50重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(A)イソホロンジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジアミン。
(B)イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、及び4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジイソシアネート。
(5)アルキレングリコールがポリエチレングリコール、又はエチレングリコールと他のアルキレングリコールの共重合体であることを特徴とする(1)〜(4)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を設けてなる凸版印刷原版。
(7)レーザー彫刻に使用されることを特徴とする(6)に記載の凸版印刷原版。
本発明によれば、高価な設備を用いることなく、1〜5%のハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、また版面粘着性の低い凸版印刷原版のための感光性樹脂組成物を提供することができる。
本発明の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物は、水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分とするものであり、前記高分子化合物は、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする。
本発明に用いる高分子化合物は、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有する。ウレア結合は、ジアミンとジイソシアネートとの反応で得られるものであり、ジアミンとジイソシアネートとの分子量を適切に選択することにより、高分子化合物1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有させることができる。すなわち、ジアミン及びジイソシアネートを分子量の小さい組合せまたは大きい組合せとすることにより、それぞれ高いまたは低いウレア結合含有量を得るように調整することができる。
高分子化合物中のウレア結合量を上記の範囲にすることにより、ウレア結合の凝集力によって印刷時に起きる変形を抑制でき、1〜5%のハイライト部の印刷再現性に寄与することができる。高分子化合物中のウレア結合量が1000質量グラム当り2.0モル未満の場合、ウレア結合の凝集力が小さいために印刷時に起きる変形を十分に抑制できず、ハイライト部の印刷再現性が劣る。また、ウレア結合量が5.0モルを超える場合、ウレア結合の凝集力が大きくなりすぎるために耐刷性が損なわれる。
本発明に用いる高分子化合物は、アルキレングリコール成分を3〜40重量%含有する。高分子化合物にアルキレングリコールを導入するには、両末端にアミノ基もしくはイソシアネート基を有する化合物を原料として使用する。両末端にイソシアネート基を持つアルキレングリコール化合物としては、例えば、分子量600のポリエチレングリコールと2当量のヘキサメチレンジイソシアネートを反応させることで得ることができる。両末端にアミノ基を持つアルキレングリコールとしては、例えば、HUNTSMAN社から市販されているポリエーテルアミンJEFFAMINE ED900などが挙げられる。
高分子化合物中のアルキレングリコール成分含有量を3〜40重量%とすることにより、ハイライトの印刷性と耐刷性を両立させることができる。高分子化合物中のアルキレングリコール成分量が3重量%未満では、印刷性や粘着性には優れるものの版の耐刷性が著しく劣る。一方、アルキレングリコール成分が40重量%を超えると、耐刷性には優れるもののハイライト部の印刷再現性が得られない。
アルキレングリコールの数平均分子量は200〜1000であることが好ましい。この範囲とすることで、印刷性と耐刷性を十分に満足できるレベルで両立することができる。特に好ましい数平均分子量としては250〜700である。
アルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、又はエチレングリコールと他のアルキレングリコールの共重合体が好ましい。ポリエチレングリコールは、印刷性と耐刷性を高いレベルで満足できるだけでなく、水溶解性・水分散性の面からも好ましい。
本発明の凸版印刷原版より得られる印刷版は、特定量のウレア結合とアルキレングリコール成分を含む高分子化合物を用いることにより、ハイライト部の印刷再現性と耐刷性の両立を成しえたものである。ウレア結合が多い高分子化合物ほど、印刷時の圧力による版の変形が抑制され、ハイライト部の印刷再現性に優れる。一方で、ウレア結合が多い高分子化合物は、版の変形が抑制されている分、印刷での繰り返し応力を分散することができず、非常に短い印刷で版にクラックが生じてしまう(耐刷性が低い)。高分子化合物にアルキレングリコール成分を特定量含ませることで、ハイライトの印刷再現性を保持しながら、版にかかる応力をアルキレングリコール鎖の箇所の変形により応力を吸収することができ、結果として耐刷性を向上できたものと考えられる。
高分子化合物は、動的粘弾性測定装置によって測定したガラス転移点(Tg)が30〜90℃であることが好ましい。さらに好ましい範囲としては、40〜90℃である。Tgを上記範囲にする方法としては、ウレア結合量、アルキレングリコール成分量の調整の他に、分子鎖に芳香族環又は脂肪環の環構造を導入することが挙げられる。
動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃である高分子化合物を用いることにより、版面粘着性を低減できる。Tgが30℃未満では版の粘着性が高く、そのため印刷時に印刷版表面に印刷紙より発生する紙粉の付着が低減し、その結果、ベタ部に付着した紙粉が引き起こすインキ乗りムラが起きることがある。一方、Tgが90℃を超えると、分子鎖の自由度が無くなり、耐刷性が損なわれる。高分子化合物のTgが30℃以上で粘着性が低減する理由としては、Tgが30℃以上であれば室温付近で高分子化合物の分子鎖が凍結状態であり自由運動が抑制されているためと考えられる。
本発明に用いる高分子化合物は、分子中の主鎖に特定量のウレア結合及び特定量の特定濃度のアルキレングリコール成分を有すること、さらに水溶解性又は水分散性(水現像性)であることが必要である。上記の条件を満足させるためには、ジアミンを脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン及び複素環ジアミンから選択すればよいが、水現像性の観点よりピペラジン環を有するジアミンを一部又は全てに用いることが好ましい。また、高分子化合物のTgを上げるためには、芳香族ジアミン又は脂環族ジアミンを選択することが好ましく、さらに好ましくは脂環族ジアミンである。脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2,2,4、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、又はポリエーテルアミンJEFFAMINE ED900などが挙げられる。芳香族ジアミンとしては、メタ又はパラキシリレンジアミン、メタ又はパラキシフェニレンジアミンなどが挙げられる。脂環族ジアミンとしては、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−アミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。このうち1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、またはイソホロンジアミンが重合性の面から好ましい。複素環ジアミンとしては、ピペラジン環を有するジアミンなどが挙げられる。ピペラジン環を有するジアミンとしては、N,N′−ビス(アミノエチル)−ピペラジン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N′−ジ(アミノペンチル)ピペラジンなどが挙げられ、水溶性を付与するジアミンとして使用することができる。
高分子化合物を合成するためのもう一方の原料であるジイソシアネートとしては、公知の脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートの使用が可能である。例えば、脂肪族ジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられ、脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。特に上記の脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジイソシアネートを高分子化合物中に10〜50質量%含有させることが好ましい。
本発明の高分子化合物は、ジアミンとジイソシアネートとを反応させることによって得ることができる。ジアミンとジイソシアネートとの反応は、メタノールなどの有機溶剤中攪拌下にジアミンとジイソシアネートを反応させることで合成することが可能である。
本発明の高分子化合物を合成するためのジアミンとジイソシアネートとのモル反応比率(アミノ基/イソシアネート基)は1.0以上、好ましくは1.02以上である。この場合、過剰の末端アミノ基が未反応のまま残存しても、それを用いた組成物の性能、物性などに悪影響を及ぼさない限り特に差しつかえない。また、アミノ基/イソシアネート基(当量比)が1.0未満の場合は、ゲル化などの不都合な反応が起こりやすいので好ましくない。アミンとイソシアネートとの反応性は極めて大きいため、両者の反応は水、メタノールなどのアルコール類、あるいは水とアルコール類との混合物などの活性溶剤中でも可能であり、かつ反応は速やかに完了する。また、両者の反応は、その系に合った最適条件下で行なわれるべきであるが、比較的低温、例えば室温においても速やかに反応する。
本発明に用いる高分子化合物は、塩基性第3級窒素原子を含有していることが好ましいが、その場合は四級化剤と反応させ、アンモニウム塩型窒素原子を有する可溶性高分子化合物とすることが水溶性の面から好ましい。四級化剤としては、公知の有機酸の使用が可能であり、脂肪族有機酸、芳香族有機酸が使用可能である。有機酸の具体例は、脂肪族有機酸としては、メタクリル酸、アクリル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グリコール酸、乳酸など、芳香族有機酸としては、安息香酸、イソフタル酸などが挙げられるが、水溶性の面から脂肪族有機酸が好ましい。また、四級化剤は、高分子化合物を反応させる時に使用する有機酸と兼用することが好ましく、配合する四級化剤添加量の一部を高分子化合物の反応の際に使用するものである。
本発明で用いる高分子化合物の使用量は、全感光性樹脂組成物中45〜65重量%であることが好ましい。使用量が45重量%未満では、十分な物性が得られず、65重量%を超えると、光硬化性が悪くなり、画像再現性が低下する場合がある。物性と画像再現性の両者を満足するためには、さらに好ましくは50〜65重量%である。
本発明に用いる光重合性不飽和化合物は、分子内に光重合可能な不飽和基を1個以上含有する化合物であり、公知のものが使用できる。分子内に光重合可能な不飽和基を1個含有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド−n−ブチルエーテル、ジアセトアクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとモノアルコールとの開環付加反応物、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の1個の不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。分子内に光重合可能な不飽和基を2個以上含有する化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェイト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸と(メタ)アクリル酸とのトリエステル、多価アルコールのポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との開環付加反応生成物、例えば(ポリ)エチレングリコールジグシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、(ポリ)プロピレングリコールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサメチレングリコールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、グリセリンジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、イソフタル酸ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、イソプレンオリゴマーのジカルボン酸のジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、その他の活性水素化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの開環付加反応生成物、例えば(ポリ)エチレングリコールとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、(ポリ)プロピレングリコールとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、グリセリンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、トリメチロールエタンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、脂肪族多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、芳香族多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、第1級または第2級アミノ基を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応によって得られる2個以上の不飽和基を有する化合物、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−m−フェニレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−m−キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、ジ(メタ)アクリルアミド−N−メチルエーテル、1,3−ビス[(メタ)アクリロイルアミノメチル]尿素、およびその誘導体、1,3−[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]−1,3−ジメチル尿素およびその誘導体、1,3−[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]エチレン尿素およびその誘導体、1,3 −[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]トリメチレン尿素およびその誘導体、トリアクリルホルマール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート、1,3−ジグリシジル,5−メチル,5エチルヒダントインなどの不飽和結合を2個以上有する化合物が挙げられる。
光重合性不飽和化合物は単独で使用しても良いが、2種以上を併用してもよい。光重合性不飽和化合物の使用量は、全感光性樹脂組成物中25〜50重量%が好ましい。光重合性不飽和化合物の使用量が50重量%を越えると、十分な機械的強度が得られず、25重量%未満では、光硬化性が悪くなることで画像再現性が低下する場合がある。
本発明に用いる光重合開始剤としては、公知のものが使用可能であり、具体的には、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アンスラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。好適な具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。光重合開始剤の使用量は、全感光性樹脂組成物中0.05〜5重量%が好ましい。0.05重量%未満では、光重合開始能力に支障をきたし、5重量%を越えると、印刷用レリーフを作成する場合に印刷原版の感光樹脂層の厚み方向の光硬化性が低下し、画像の欠けが起こりやすくなる。
また、必要により公知の熱重合禁止剤を添加してもよい。熱重合禁止剤は、感光性樹脂組成物の調合、製造、成形加工時などの加熱による予定外の熱重合、あるいは該組成物の保存中の暗反応を防止するために添加する。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのハイドロキノン類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン類、フェノール類、カテコール、p−tert−ブチルカテコールなどのカテコール類、芳香族アミン化合物類、ビクリン酸類、フェノチアジン、α−ナフトキノン類、アンスラキノン類、ニトロ化合物類、イオウ化合物類などが挙げられる。熱重合禁止剤の使用量は、全感光性樹脂組成物中0.001〜2重量%が好ましく、特に好ましくは0.005〜1重量%である。これらの化合物は2種以上併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、溶融成形法の他、例えば、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により目的とした積層体の構成で成形することによって、感光性樹脂層を設けた凸版印刷用原版を得ることができる。
凸版印刷用原版は、シート状に成形した成形物(未露光樹脂)を公知の接着剤を介して、或いは、介さずに支持体に積層して使用することができる。支持体としては、スチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムなど任意のものが使用でき、50〜500μmの範囲の厚みのフィルムが使用される。シート状成形物(未露光樹脂)を支持体上に積層した積層体にして供給する場合には、シート状成形物(未露光樹脂)に接して保護フィルムをさらに積層することが好ましい。保護フィルムは、フィルム状のプラスチックが使用でき、例えば125μm厚みのポリエステルフィルムが使用される。また、感光性樹脂層と保護フィルムとの間に粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を0.5〜3μmの厚みで塗布した粘着防止層を設けてもよい。感光性樹脂層表面に粘着防止層を設けることで、表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
本発明の凸版印刷用原版は、感光性樹脂層と粘着防止層の間に、厚みが1〜30μmのキャップ層を設けてもよい。キャップ層は、現像工程で除去されず印刷版上に残るため、キャップ層を設けることで印刷版表面特性や耐久性を調整することができる。キャップ層としては、公知のキャップ層を使用できる。
本発明の凸版印刷用原版は、感光性樹脂層の表面に感熱マスク層を設けることでネガフィルムを使用しないCTP(Computer to Plate)版を製造できる。感熱マスク層としては、公知の感熱マスク層を使用できる。
本発明の感光性樹脂組成物より得られた凸版印刷用原版は、感光性樹脂層に透明画像部を有するネガフィルムまたはポジフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光を行い、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。活性光線は、通常300〜450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いる。一方、CTP版の場合には、感熱マスク層をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層上にマスク(ネガフィルムと同じ機能)を形成する。画像情報を感熱マスク層に書き込んだ後、感光性印刷原版にマスクを介して活性光線を全面照射し、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。
次いで、適当な溶剤、特に本発明では中性水により非露光部分を溶解除去するが、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などの現像方式で非露光部分を溶解除去できる。その後、非露光部分を溶解除去した印刷版は、水切り、乾燥、後露光工程を処理し、最終の印刷版が得られる。
本発明の感光性樹脂組成物より得られた凸版印刷用原版を用いると、ハイライト部の階調印刷性と耐刷性のいずれにも優れ、更に版面の粘着性が非常に低いことが見出された。このため、本発明の凸版印刷用原版を用いると、高品位の印刷を一枚の版で多量の部数を印刷することができる。また、版面粘着性が低減したことにより印刷前や印刷中に埃や紙粉の付着が低減され、版の洗浄回数を大幅に削減することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中の部数は質量部を表わす。なお、実施例中の特性値の評価は以下の方法に依った。
(1)ハイライト部印刷性(ハイライト部階調印刷再現性)
まず、感光層厚みが685μmの感光性樹脂凸版原版に、画像として網点175線−1%〜95%、最小独立点直径50〜600μm、最小独立線幅が10〜150μm、ベタ画像(幅1cm×長さ5cm)を含む印刷評価ネガを用い、175線−1%が再現する最小露光時間を最適露光時間として、25W/m2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に70℃で10分間、温風乾燥した後に超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。175線−1%の画像再現性は10倍のルーペを使い、肉眼で判定した。得られた印刷版を用いてハイライト印刷性の評価を行った。印刷機には、輪転印刷機P−20(三條機械製)を用い、インキにはベストキュア藍(T&K TOKA製)、被印刷物にはグロスPW−8K(リンテック製)を用いた。印圧(版と被印刷物間の圧力)を段階的に高め、ベタ箇所のカスレが無くなる箇所を適性圧として印刷評価を実施した。また、ベタ箇所のインキ濃度が1.7absになるようにインク送り量を調整した。適性圧での175線1%〜5%の網点濃度を、CCDOT4(エス・デェイ・ジー株式会社製)を用いて測定し、その結果を%で表して表1にまとめた。測定した印刷物の網点濃度は、ネガフィルムの網点濃度に近い方が良く、さらにはネガフィルム網点が5%から1%へ減少するのに応じて印刷物の網点濃度もスムーズに減少していくことが好ましい。このように、印刷物の網点濃度がスムーズに減少する場合には、ハイライトの階調性が優れるとの評価となる。
まず、感光層厚みが685μmの感光性樹脂凸版原版に、画像として網点175線−1%〜95%、最小独立点直径50〜600μm、最小独立線幅が10〜150μm、ベタ画像(幅1cm×長さ5cm)を含む印刷評価ネガを用い、175線−1%が再現する最小露光時間を最適露光時間として、25W/m2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に70℃で10分間、温風乾燥した後に超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。175線−1%の画像再現性は10倍のルーペを使い、肉眼で判定した。得られた印刷版を用いてハイライト印刷性の評価を行った。印刷機には、輪転印刷機P−20(三條機械製)を用い、インキにはベストキュア藍(T&K TOKA製)、被印刷物にはグロスPW−8K(リンテック製)を用いた。印圧(版と被印刷物間の圧力)を段階的に高め、ベタ箇所のカスレが無くなる箇所を適性圧として印刷評価を実施した。また、ベタ箇所のインキ濃度が1.7absになるようにインク送り量を調整した。適性圧での175線1%〜5%の網点濃度を、CCDOT4(エス・デェイ・ジー株式会社製)を用いて測定し、その結果を%で表して表1にまとめた。測定した印刷物の網点濃度は、ネガフィルムの網点濃度に近い方が良く、さらにはネガフィルム網点が5%から1%へ減少するのに応じて印刷物の網点濃度もスムーズに減少していくことが好ましい。このように、印刷物の網点濃度がスムーズに減少する場合には、ハイライトの階調性が優れるとの評価となる。
(2)版面粘着性
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、得られた印刷版を用いて印刷版表面の粘着性評価を行った。粘着性は、被印刷物であるコート紙(グロスPW−8K、(株)リンテック製)を版に押し付けて、コート紙の滑り度合いから以下の基準で評価した。
○:コート紙が抵抗なく滑る。
△;コート紙と版が粘着するが、力を入れると滑る。
×:コート紙と版が粘着して滑らない。
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、得られた印刷版を用いて印刷版表面の粘着性評価を行った。粘着性は、被印刷物であるコート紙(グロスPW−8K、(株)リンテック製)を版に押し付けて、コート紙の滑り度合いから以下の基準で評価した。
○:コート紙が抵抗なく滑る。
△;コート紙と版が粘着するが、力を入れると滑る。
×:コート紙と版が粘着して滑らない。
(3)耐刷性
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、適性印圧から50μm加圧した状態で1万ショットの印刷を行い、1万ショット印刷後に印刷物と版を200倍に拡大した顕微鏡で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎:印刷物及び版にクラック無し。
○:印刷物に不良はないが、版に軽微なクラックあり
△:印刷物に目視で不良は確認できないが、200倍の観察では不良がみられる。
×:目視で印刷物に不良が確認できる。
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、適性印圧から50μm加圧した状態で1万ショットの印刷を行い、1万ショット印刷後に印刷物と版を200倍に拡大した顕微鏡で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎:印刷物及び版にクラック無し。
○:印刷物に不良はないが、版に軽微なクラックあり
△:印刷物に目視で不良は確認できないが、200倍の観察では不良がみられる。
×:目視で印刷物に不良が確認できる。
(4)高分子化合物中の1000質量グラム当りのウレア結合モル数
高分子化合物中のウレア結合モル数は、原料の純度が高く、副反応も殆どないことから原料イソシアネートのモル数より理論量を計算し、ウレア結合モル数とした。
高分子化合物中のウレア結合モル数は、原料の純度が高く、副反応も殆どないことから原料イソシアネートのモル数より理論量を計算し、ウレア結合モル数とした。
(5)アルキレングリコール成分量
高分子化合物中のアルキレングリコール成分量は、原料の仕込み量から計算で求めた。
高分子化合物中のアルキレングリコール成分量は、原料の仕込み量から計算で求めた。
(6)ガラス転移点(Tg)
アイティー計測制御株式会社製、動的粘弾性装置DVA220を用い、引っ張りモードで測定した。空気雰囲気下において、昇温速度4℃/分、周波数10Hz、サンプル形状15mm×4mmで測定した。Tanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
アイティー計測制御株式会社製、動的粘弾性装置DVA220を用い、引っ張りモードで測定した。空気雰囲気下において、昇温速度4℃/分、周波数10Hz、サンプル形状15mm×4mmで測定した。Tanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
アルキレングリコールの合成例1
両末端にイソシアネート基を持つアルキレングリコールの合成例を示す。滴下ロートを具備したフラスコに2当量(336.4g)のヘキサメチレンジイソシアネートをとり、窒素雰囲気下で110℃に加温したのち、攪拌下滴下ロートで数平均分子量600のポリエチレングリコール1当量(600.0g)を滴下した。滴下後30分攪拌を続けた。得られた化合物のイソシアネート量は当初の半量となっており、ポリエチレングリコールの両末端水酸基がイソシアネート基と反応し、両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG600−両末端HDI変性品)。PEG600―両末端HDI変性品中のアルキレングリコール成分割合は、64重量%と計算された。
両末端にイソシアネート基を持つアルキレングリコールの合成例を示す。滴下ロートを具備したフラスコに2当量(336.4g)のヘキサメチレンジイソシアネートをとり、窒素雰囲気下で110℃に加温したのち、攪拌下滴下ロートで数平均分子量600のポリエチレングリコール1当量(600.0g)を滴下した。滴下後30分攪拌を続けた。得られた化合物のイソシアネート量は当初の半量となっており、ポリエチレングリコールの両末端水酸基がイソシアネート基と反応し、両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG600−両末端HDI変性品)。PEG600―両末端HDI変性品中のアルキレングリコール成分割合は、64重量%と計算された。
アルキレングリコールの合成例2
アルキレングリコールとして、数平均分子量300のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG 300−両末端HDI変性品)。PEG300−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、73重量%と計算された。
アルキレングリコールとして、数平均分子量300のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG 300−両末端HDI変性品)。PEG300−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、73重量%と計算された。
アルキレングリコールの合成例3
アルキレングリコールとして、数平均分子量900のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG 900−両末端HDI変性品)。PEG900−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、47重量%と計算された。
アルキレングリコールとして、数平均分子量900のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG 900−両末端HDI変性品)。PEG900−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、47重量%と計算された。
アルキレングリコールの合成例4
アルキレングリコールとして、分子量150.17のトリエチレングリコール(TEG)を用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(TEG−両末端HDI変性品)。TEG−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、31重量%と計算された。
アルキレングリコールとして、分子量150.17のトリエチレングリコール(TEG)を用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(TEG−両末端HDI変性品)。TEG−両末端HDI変性品のアルキレングリコール成分割合は、31重量%と計算された。
アルキレングリコールの合成例5
アルキレングリコールとして、数平均分子量2000のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG2000−両末端HDI変性品)。PEG2000−両末端HDI変性品のアルキレングリコール割合は、86重量%と計算された。
アルキレングリコールとして、数平均分子量2000のポリエチレングリコールを用いた以外は、合成例1と同様の操作で両末端にイソシアネート基を有するポリエチレングリコールが得られた(PEG2000−両末端HDI変性品)。PEG2000−両末端HDI変性品のアルキレングリコール割合は、86重量%と計算された。
実施例で使用する原料は、以下の通りである。
HMDA :1,6−ヘキサンジアミン
IPDA :イソホロンジアミン
1,3BAC :1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
BAPP :N,N′−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
HDI :1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI :イソホロンジイソシアネート
水添MDI :4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
水添XDI :シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート
HMDA :1,6−ヘキサンジアミン
IPDA :イソホロンジアミン
1,3BAC :1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
BAPP :N,N′−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
HDI :1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI :イソホロンジイソシアネート
水添MDI :4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
水添XDI :シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート
実施例1
N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン37部をメタノール120部に溶解した後に、乳酸10部を添加・溶解した。次に、該ジアミン溶液に合成例1で得たPEG600−HDI変性品40部を攪拌下徐々に添加し、続いてへキサメチレンジイソシアネート(HDI)23部を、撹拌下徐々に添加した。両者の反応は約15分で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去後、減圧乾燥して得られた高分子化合物を得た。得られた高分子化合物のウレア結合は、イソシネート原料のモル数から計算した理論値として3.6モル/1000質量グラムであり、アルキレングリコール量は26重量%であり、ガラス転移点(Tg)は35℃であった。
N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン37部をメタノール120部に溶解した後に、乳酸10部を添加・溶解した。次に、該ジアミン溶液に合成例1で得たPEG600−HDI変性品40部を攪拌下徐々に添加し、続いてへキサメチレンジイソシアネート(HDI)23部を、撹拌下徐々に添加した。両者の反応は約15分で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去後、減圧乾燥して得られた高分子化合物を得た。得られた高分子化合物のウレア結合は、イソシネート原料のモル数から計算した理論値として3.6モル/1000質量グラムであり、アルキレングリコール量は26重量%であり、ガラス転移点(Tg)は35℃であった。
このようにして得られた高分子化合物55.0部を、メタノール100部に65℃で加熱溶解し、N−エチルトルエンスルホン酸アミド5.0部、1,4−ナフトキノン0.03部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加してさらに30分撹拌溶解させた。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5部、水18部、亜硫酸アンモニウム0.3部、シュウ酸0.1部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0部、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート(日本油脂株式会社製架橋剤ブレンマーGAM)32.5部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂凸版組成物を得た。
次に、紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルムにコートした塗膜20μmの接着剤層を有する支持体を用いて、この支持体の被膜に接して上記の感光性樹脂組成物を流延し、厚み2μmのポリビニルアルコール(AH−24、日本合成化学(株)製)の被膜をコートした厚み125μmのポリエステルフイルムの被膜側を感光性樹脂凸版組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状積層体の生版を成形した。
生版を7日間以上保管した後に、ハイライト部印刷性、版面粘着性、耐刷性の評価を行った。これらの評価結果を実施例1の高分子化合物の詳細とともに表1に示した。
実施例2〜15、比較例1〜3
表1の高分子化合物の組成に基づいて、実施例1と同様にして高分子化合物を合成した。高分子化合物のガラス転移点(Tg)は実施例1と同様にして測定した。得られた高分子化合物を用いて実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、印刷原版を得た。得られた印刷版を実施例1と同様の評価を行った。これらの評価結果を実施例2〜15と比較例1〜3の高分子化合物の詳細とともに表1に示した。
表1の高分子化合物の組成に基づいて、実施例1と同様にして高分子化合物を合成した。高分子化合物のガラス転移点(Tg)は実施例1と同様にして測定した。得られた高分子化合物を用いて実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、印刷原版を得た。得られた印刷版を実施例1と同様の評価を行った。これらの評価結果を実施例2〜15と比較例1〜3の高分子化合物の詳細とともに表1に示した。
実施例16
紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルムにコートした塗膜20μmの接着剤層を有する支持体を用いて、この支持体の被膜に接して実施例2の感光性樹脂組成物を流延し、厚み125μmのポリエステルフイルムの被膜側を感光性樹脂凸版組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状積層体の生版を成形した。得られた版を25W/m2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。続いて、レーザー彫刻装置にLuescher Flexo社製の300W炭酸ガスレーザーを搭載したFlexPose ! directを用いてレーザー彫刻(直彫り)を実施した。彫刻カスや粘着物の付着が少なく、またシャープで微細なレリーフドットを再現できた。実施例2と同様にハイライト印刷性、版面粘着性、耐刷性の評価を行なったが、いずれも優れていた。
紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルムにコートした塗膜20μmの接着剤層を有する支持体を用いて、この支持体の被膜に接して実施例2の感光性樹脂組成物を流延し、厚み125μmのポリエステルフイルムの被膜側を感光性樹脂凸版組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状積層体の生版を成形した。得られた版を25W/m2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。続いて、レーザー彫刻装置にLuescher Flexo社製の300W炭酸ガスレーザーを搭載したFlexPose ! directを用いてレーザー彫刻(直彫り)を実施した。彫刻カスや粘着物の付着が少なく、またシャープで微細なレリーフドットを再現できた。実施例2と同様にハイライト印刷性、版面粘着性、耐刷性の評価を行なったが、いずれも優れていた。
表1からわかるように、実施例1〜15に示すように、高分子化合物中のウレア結合量が2.0〜5.0モル/1000質量グラムであり、アルキレングリコール成分を3〜40重量%含有する高分子化合物を用いた場合、1〜5%のハイライト網点の階調性と耐刷性が両立できている。また、ウレア結合によるガラス転移点の向上効果により版面粘着性にも優れている。一方、比較例1に示すように、高分子化合物のウレア結合量が2.0モル未満/1000質量グラムでアルキレングリコール成分量が40重量%を超えているとハイライト網点の階調が劣り、版面粘着性も強い。比較例2に示すように、アルキレングリコール成分を含有しない場合は、耐刷性が低い。比較例3に示すように、ウレア結合量が5.0モル/1000質量グラムを超えると、耐刷性が低い。
本発明の感光性樹脂組成物によれば、1〜5%のハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性に優れ、また版面粘着性が低い凸版印刷原版を得ることができる。
Claims (7)
- 水溶解性又は水分散性の高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記高分子化合物が、1000質量グラム当り2.0〜5.0モルのウレア結合を含有し、かつアルキレングリコール成分を3〜40重量%含有することを特徴とする凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 前記アルキレングリコールの数平均分子量が200〜1000であることを特徴とする請求項1に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 前記高分子化合物が、動的粘弾性測定装置によって測定したTgが30〜90℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 以下の(A)脂環族ジアミン及び/又は(B)脂環族ジイソシアネートを高分子化合物中に10〜50重量%含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(A)イソホロンジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジアミン。
(B)イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、及び4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジイソシアネート。 - アルキレングリコールがポリエチレングリコール、又はエチレングリコールと他のアルキレングリコールの共重合体であることを特徴とする請求項1〜4に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を設けてなる凸版印刷原版。
- レーザー彫刻に使用されることを特徴とする請求項6に記載の凸版印刷原版。
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