以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体を帯電し、帯電された前記静電潜像担持体に静電潜像を形成し、トナー担持体に対して圧接するように配置したトナー供給部材により前記トナー担持体の表面にトナーを供給し、前記静電潜像と前記トナー担持体の表面の前記トナーとを接触させながら現像することによりトナー像を形成し、前記トナー像を転写体に転写した後、前記静電潜像担持体に当接されたクリーニングブレードを用いて、前記静電潜像担持体上の転写残トナーを除去する画像形成方法である。そして、前記静電潜像担持体の表面の10点平均粗さRzが0.15μm以上0.50μm以下であり、前記クリーニングブレードの先端面のマイクロゴム硬度計による硬度が70°以上90°以下であり、前記トナーが、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子とシリカ微粒子Sとを有し、前記トナーの平均円形度が0.960以上であり、前記シリカ微粒子Sが、一次粒子の個数平均粒径(D1)が22nm以上30nm以下のシリカ原体微粒子をシリコーンオイルで処理した後、ヘキサメチルジシラザンでさらに処理したシリカ微粒子であり、前記シリカ微粒子Sの炭素量Scaが1.0質量%以上3.3質量%以下であり、前記炭素量Scaのうち、ヘキサメチルジシラザン由来の炭素量Schが9.0質量%以上50.0質量%以下であるという特徴を有する。
本発明の画像形成方法において、クリーニング部材として、弾性を有するクリーニングブレード(弾性ブレード)を用いている。
図1、図4に記載のクリーニングブレード6は、支持板金6bの先端部に一体的に保持された弾性部材6aからなる。本発明において、クリーニング部材6は、静電潜像担持体1(以下、感光体と記載する場合もある)と当接する先端面のマイクロ硬度を70°以上90°以下としている。
マイクロ硬度の測定方法は、温度23℃、湿度50%の環境下で直径0.16mm、高さ0.5mmの針をゴムブレードに押し当てた時の荷重を測定しブレードの表面部分の硬さを求められるマイクロ硬度計(高分子計器(株)製 MD−1)を用いて測定した。測定は、10点平均で行った。
また、本発明において、静電潜像担持体1の表面の表面粗さRz(10点平均粗さ)が0.15μm以上0.50μm以下である。
静電潜像担持体の表面粗さRzの測定方法は、接触式面粗さ測定機(商品名:サーフコーダSE3500、(株)小坂研究所製)を用いて以下のように測定を行う。
検出器:R2μm、0.7mNのダイアモンド針、フィルター:2CR、カットオフ値:0.8mm、測定長さ:2.5mm、送り速さ:0.1mmとし、JIS規格B0601で定義される10点平均粗さRzのデータを処理した。
静電潜像担持体の表面粗さは、膜を形成後に粗面化処理を行なう、あるいは、基材のシリンダ等を粗した後に膜を形成させることで調整可能である。
クリーニングブレード6が、静電潜像担持体表面と接触する部分の硬度を高くし、静電潜像担持体表面の細かい凹凸に追従しにくい状態としている。この為、静電潜像担持体表面の凹凸に追従しにくくなって接触面積が減り、クリーニングブレードとの摩擦係数を下げることができる(図4(c))。
こうすることで長期使用においても静電潜像担持体表面−クリーニングブレード間のトルクアップに起因するビビリ、捲れ等を抑えることができる。またクリーニングブレードの磨耗、欠けに対する耐久性も向上する。
ブレードクリーニングを効果的に行なうため、クリーニングブレードのニップ上流では、通常、外添剤などの微粒子から構成される阻止層を形成させることで、トナーのすり抜けを抑制している。阻止層の存在によりトナーが直接ブレードニップ部に進入するのを防ぎ、トナーがすり抜け難い状態を作っている。
また、一方では、阻止層が、微量にクリーニングブレードを通過することにより、潤滑剤として働き、ブレードの捲れを抑制するという効果もある。そのため、阻止層には、常に新たな微粒子が供給される必要がある。
本発明では、クリーニングブレード6を静電潜像担持体1の細かい凹凸に追従しにくい構成としているため、比較的阻止層が通過しやすくなっている。その結果、特に、耐久後半において、クリーニング不良や、トルクアップ起因によるブレードのビビリが、発生する場合があった。
本発明の画像形成方法において、トナー担持体に対して圧接するように配置したトナー供給部材により、トナー担持体の表面にトナーを供給し、静電潜像とトナー担持体の表面のトナーとを接触させながら現像することによりトナー像を形成している。
上記画像形成方法により、現像器の小型化、ひいてはマシン本体の小型化に寄与することができる。
一方で、トナー担持体とトナー供給部材間での摺擦により、トナーはストレスを受けやすい。特に、本体の更なる小型化に対応するために、トナーの充填量を減らして、効率的にトナーを使用することが望まれている。トナーの充填量が減少すると、現像器内でトナーが受けるストレスは、より高まる傾向にある。また、効率的なトナー使用という観点で言えば、極力現像器内にトナーを残すことなく、最後まで高画質を維持することが必要である。
そういった要求を満たすため、トナーとしては、高い流動性を維持する必要があり、トナーの流動性を高くするために、トナーの形状を球形に近づけることが行なわれてきている。本発明の画像形成方法において、トナーの平均円形度は、0.960以上が必要である。なお、上記トナーの平均円形度は例えば懸濁重合法においては、トナー製造時に加える分散安定化剤の製造条件等を適宜変更すること等によって調整することが可能である。
高い流動性を維持するための別の手段として、トナーは、トナー粒子に対してシリカ微粒子Sを有しており、一次粒子の個数平均粒径(D1)が22nm以上30nm以下のシリカ原体微粒子を疎水化処理して使用している。
一次粒子の個数平均粒径(D1)が22nm以上30nm以下であることで、高流動性の維持と前述したような、クリーニングブレードニップ部における阻止層のすり抜け抑制の両方を満足することが可能となる。
また、適度な帯電量を持ち、外添剤の埋め込みが抑制され、耐久を通じて安定した画像を出力することができる。
シリカ微粒子Sは、前述のシリカ原体微粒子をシリコーンオイルで処理した後、ヘキサメチルジシラザンでさらに処理することで疎水化処理がなされている。シリカ原体微粒子を疎水化処理する際に、最初にシリコーンオイルで処理した後にヘキサメチルジシラザンで処理することで、シリカ微粒子表面へのシリコーンオイルの固定化率が高い状態で、疎水化度をこれまで以上に高くすることができる。
シリカ原体微粒子は、表面に水酸基が多く存在している。その状態でシリコーンオイルを付与し、高温で焼付け処理することで、無機微粒子とシリコーンオイルの密着性が高まり、シリコーンオイルのシリカ微粒子への固定化率を高くすることが可能になる。
さらに、シリコーンオイル処理のあとにヘキサメチルジシラザンで処理することで、シリコーンオイルが入り込めないような、無機微粒子表面の微細な凹凸がヘキサメチルジシラザンで疎水化処理される。よって、ムラなく均一に疎水化処理された無機微粒子を得ることが可能になる。
それに対し、無機微粒子をまずヘキサメチルジシラザンで表面処理した後に、シリコーンオイルで表面処理を行った場合、疎水化度を高める為にはシリコーンオイルを多量に添加する必要があり、遊離のシリコーンオイルが多くなる傾向があった。遊離のシリコーンオイルを減らすにはシリコーンオイルの量を減らす必要があり、疎水化度が低下する傾向があった。つまり、本発明のように、疎水化度が高く、必要最低限の少ない量の遊離のシリコーンオイルを付与することが困難であった。
添加するシリコーンオイル及び遊離のシリコーンオイルが必要最低限の量であるということは、トナーが高流動性を維持するためには、有効な手段である。
また、マシンをしばらく放置した後に、再起動する場合、クリーニングブレードと静電潜像担持体のニップ部に過剰のシリコーンオイルが介在することで、静電潜像担持体の回転周期ごとに画像欠陥が生じる、所謂「停止スジ」の抑制にも有効である。
適度な粒径を持ったシリカ原体微粒子をシリコーンオイルで処理した後、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理することで、クリーニングニップ部における阻止層のすり抜けを抑制しながら高い流動性を維持することが可能となる。
疎水化処理後のシリカ微粒子Sは、シリカ微粒子Sの炭素量Scaが1.0質量%以上3.3質量%以下であり、前記炭素量Scaのうち、ヘキサメチルジシラザン由来の炭素量Schが、9.0質量%以上50.0質量%以下であることが必要である。
シリカ微粒子Sの炭素量Scaは、疎水化処理に対して、実際の処理が、どの程度なされているかを表わす指標である。すなわち、シリコーンオイルとヘキサメチルジシラザンの合計の処理量を炭素の量でモニタしている。また、ヘキサメチルジシラザン由来の炭素量Schは、Scaを100とした時、ヘキサメチルジシラザンが、どの程度を占めているかを炭素の量でモニタしたものである。
Scaが、1.0質量%以上3.3質量%以下である場合、十分な疎水化度を持つとともに、遊離オイルが少なく適度な流動性を持ったトナーを得ることができる。
また、ヘキサメチルジシラザン由来の炭素量Schが、9.0質量%以上50.0質量%以下である場合、遊離のシリコーンオイルが少なく、適度な流動性を持つとともに、静電潜像担持体へのシリカ微粒子の融着を抑制することができる。また、静電潜像担持体を帯電させるための帯電部材の汚染を抑制することができる。
シリカ微粒子Sの平均一次粒子径は電子顕微鏡により判定される。具体的に粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)により20万倍でシリカ微粒子像を撮影し、その拡大写真を測定対象として行う。任意の200個の粒子の粒子径を測定した平均値を平均一次粒子径とする。なお、任意のシリカ微粒子における一次粒子径は、そのシリカ微粒子の輪郭内に存在できる最大距離を、そのシリカ微粒子の一次粒子径とする。
シリカ微粒子の炭素量Sca、及びSchの測定は、シリカ微粉体の表面疎水基が含有する炭素を1100℃、酸素雰囲気中にてCO2に熱分解した後、微量炭素分析装置(Horiba製EMIA−110)により炭素量を求めることで行なう。Schを求めるためには、あらかじめ、シリコーンオイルで処理した後の炭素量を同様に測定しておき、Scaの値から差し引くことで算出することができる。
トナーに含有されるシリカ微粒子Sの含有量は0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。シリカ微粒子の含有量がこの範囲内に含まれる場合、トナーの流動性や凝集性、帯電性を良好に保ちやすく、良好な画質の画像を得やすい。さらに好ましい含有量の範囲は、0.6質量%以上3.0質量%以下である。
本発明のトナーは、シリカ微粒子Sとは異なる別のシリカ微粒子を併用して用いても良い。その際、トナーが含有するシリカ微粒子総量に対して、シリカ微粒子Sの含有量が70質量%以上含有していることが、クリーニングニップ部における阻止層のすり抜けを抑制しながら高い流動性を維持するという効果を効果的に発現できる。
シリカ微粒子Sのシリコーンオイル固定化率は、炭素量基準で80質量%以上であることが流動性維持の観点から好ましい。更に好ましくは85質量%以上である。
シリコーンオイルの固定化率の測定は、次の定量方法によって測定することができる。
1.ビーカーにシリカ微粒子0.50g、クロロホルム40mlを入れ、2時間撹拌する。
2.撹拌を止めて、12時間静置する。
3.サンプルをろ過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
次に、カーボン量を測定する。酸素気流下、1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中のカーボン量を測定する。シリコーンオイルの抽出前後でのカーボン量を比較して、シリコーンオイルの固定化率を計算する。
1.試料2.00gを円筒金型に入れプレスする。
2.プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA−110で測定する。
3.100−(抽出前のカーボン量−抽出後のカーボン量)/抽出前のカーボン量×100をシリコーンオイルの固定化率とする。
本発明に用いられるシリカ微粒子Sは、ネガトナー、ポジトナーのどちらにも適用可能である。
本発明に用いられるシリコーンオイルとしてはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンがあげられる。
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。これらのシリコーンオイルは1種あるいは2種以上の混合物として用いても良い。
特に好ましいのはジメチルシリコーンオイルである。
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が5mm2/s以上20,000mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは10mm2/s以上1,000mm2/s以下、さらに好ましくは20mm2/s以上500mm2/s以下である。シリコーンオイルの粘度がこの範囲にある場合、シリコーンオイルで疎水化処理したシリカ微粒子が十分な疎水性を得られやすく、凝集物を生成することなく疎水化処理を行いやすい。
本発明に使用したシリカ微粒子Sは、一次表面処理した後、一次処理微粒子を解砕し、さらに解砕微粒子を二次表面処理する処理工程を有し、解砕処理を行うことによって製造することができる。なお、解砕処理は一次表面処理と同時に行っても良い。
シリコーンオイルによる疎水化処理、ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理は、乾式処理または湿式処理の何れでも良い。
疎水化処理の具体的な手順は、例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にシリカ微粒子を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。続いてヘキサメチルジシラザンによる表面処理を行う場合、具体的な手順としては、これらを溶かした溶剤の中に、解砕した処理微粒子を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、次のような方法でも良い。例えば、シリコーンオイルによる表面処理では、シリカ微粒子を反応槽に入れる。そして、窒素雰囲気下、撹拌しながらアルコール水を添加し、シリコーンオイルを反応槽に導入して処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去し、解砕処理を行う。ヘキサメチルジシラザンによる表面処理では、窒素雰囲気下、撹拌しながら、ヘキサメチルジシラザンを導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。さらに、次のように表面処理を行ってもよい。
例えば、シリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザンのいずれかとシリカ微粒子を処理槽に投入し、処理槽内を撹拌翼の如き撹拌部材で撹拌することで上記原材料を混合する。この混合はヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合させてもよい。また、シリカ微粒子へ、シリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザンのいずれかを噴霧する方法によってもよい。さらに、シリカ微粒子をシリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザンのいずれかで処理後、100℃以上で加熱処理してもよい。
シリカ微粒子Sの表面処理に用いられる疎水化処理は、シリカ微粒子100質量部に対し、シリコーンオイルを2質量部以上15質量部以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、3質量部以上12質量部以下、非常に好ましくは5質量部以上10質量部以下である。
本発明で使用されるシリカ微粒子Sのメタノール濡れ性が、60体積%以上であることが好ましい。メタノール濡れ性が60体積%以上であると、シリカ微粒子が疎水化され、吸湿しづらくなり、高温高湿環境でトナーを長期にわたって使用した場合に帯電量が低下しない。より好ましくは70体積%以上、さらに好ましくは75体積%以上であるものを用いることが好ましい。
本発明で用いられるシリカ微粒子の製造には、湿式製法、乾式製法など、公知の製法を使用することができる。
例えば、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化を用いることで、いわゆる乾式シリカまたはヒュームドシリカと称されるシリカ微粒子が得られる。具体的には、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウムまたは塩化チタンなどのほかの金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能である。本発明に用いられるシリカ微粒子としてはそれらも包含する。
トナー粒子は、懸濁重合法、懸濁造粒法の如き、水系媒体中で造粒する製造法によって製造されたものが好ましい。中でも、トナーの形状を球形に近づけるとともに、容易に、コア/シェル構造を持ったトナー粒子を製造することが出来る懸濁重合法が現像性と定着性を両立する点において適している。
本発明のトナーは、極性樹脂として、カルボン酸基を含有するスチレン系樹脂である極性樹脂A、ポリエステル樹脂である極性樹脂Bを含有することが好ましい。
トナー粒子が水系媒体中で製造され、極性樹脂として上記の極性樹脂A、Bを使用することにより、トナー粒子の表面近傍が比較的硬いが、最表層は加熱時にシャープメルト性を持っており、かつトナー粒子の内部が軟らかいトナー粒子を容易に得ることができる。
具体的には、トナー粒子の内層を形成する結着樹脂のガラス転移点(Tg)を下げたり、ピーク分子量(Mp)を下げたりする。そして、トナー粒子の外層として、結着樹脂よりもTgやMpの高い極性樹脂Aとシャープメルト性を持った、極性樹脂Bを併用して充分な量を存在せしめることが挙げられる。
また、内層(コア)と外層(シェル)との密着性が弱いと、連続出力でトナーがストレスを受け続けた場合、外層の剥離や削れが生じ、トナー粒子の表面組成がある時点で急激に変化する可能性があり、現像性や転写性に対する高信頼が得にくくなる。そのため、本発明においては、極性を持ちつつ、コアである結着樹脂(コアバインダー)との相溶性を同時にもつ極性樹脂をシェルの一部として使用することで、コアとの密着性を十分確保しながらシェル形成することが重要であると考えている。そのため、極性樹脂Aは、本発明の好ましい製造方法である懸濁重合法において好適に用いられる、スチレン系材料を含んでいる。
極性樹脂Bは、ポリエステル樹脂である。特に、後述する界面張力の関係を制御することで、極性樹脂Bをトナー粒子表層に持ちつつ、その内側の層に極性樹脂Aがいるという、本発明における好ましいシェルの形態をとることが可能となる。
本発明に用いられるトナー粒子を懸濁重合法により製造する場合は、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂A、Bを添加することが好ましい。その場合、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、極性樹脂の存在状態を制御することができる。即ち、トナー粒子の表面に極性樹脂の薄層のシェルを形成させたり、トナー粒子表面から中心に向け、傾斜性をもって極性樹脂を存在させたりすることが可能である。また、極性樹脂の添加により、コアシェル構造のシェル部分の強度を自由に制御することができる。そのため、トナーの耐久性と定着性を最適化することができる。
上述したようなトナー設計とすることで、結着樹脂中に極性樹脂Aが相溶しつつ、相分離が起こるため、内層と外層との界面において、それぞれの成分が相溶した密着性の高いコア/シェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。また、極性樹脂AとBの間の密着性も充分なものとなる。その理由は明確ではないが、極性樹脂の持つ極性基部分での相互作用によるものでないかと考えている。そして、トナー粒子の内層から外層にかけて連続的に極性が高くなる密着性の高いコア/シェル構造を持ったトナーを得ることが可能となる。結果として、現像耐久性、トナーの保存安定性と低温定着性との両立を図ることが容易に可能となる。
本発明に用いられる極性樹脂Aとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸;不飽和二塩基酸;不飽和二塩基酸無水物;ニトロ系単量体の重合体もしくはそれとスチレン系単量体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体といったスチレン系共重合体との共重合体;ポリエステル;エポキシ樹脂;が挙げられる。
特に、スチレン−メタクリル酸共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体を用い、ビニル系の重合性単量体を用いて懸濁重合にてトナーを製造した場合、トナーの結着樹脂との相溶性がさらに良好になるため好ましい。
また、スチレン系の共重合体を用いる場合には、残留スチレンが0乃至300ppmの範囲であることが、極性樹脂と結着樹脂との馴染みを良好にするために好ましい。
極性樹脂Aは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された重量平均分子量Mw(A)が8,000乃至50,000であることが好ましい。また、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)が1.05乃至5.00であるものが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量Mw(A)が10,000乃至30,000である。
また、ガラス転移点Tg(A)は、80乃至100℃であるものが好ましい。更に、酸価Av(A)は5乃至30mgKOH/gであるものが好ましく、水酸基価OHv(A)は5乃至50mgKOH/gであるものが好ましい。その際、酸価と水酸基価は、同時に持つことが好ましい。
極性樹脂Aの含有量は、重合性単量体又は結着樹脂の100質量部に対して5乃至40質量部であることが好ましい。より好ましくは5乃至30質量部である。
本発明に用いられる極性樹脂Bは、GPCで測定されたピーク分子量Mp(B)が5,000乃至20,000である。また、ガラス転移点Tg(B)は、60乃至80℃であるものが好ましい。
極性樹脂Bの含有量は、重合性単量体又は結着樹脂の100質量部に対して1乃至15質量部であることが好ましい。より好ましくは3乃至10質量部である。
本発明に用いられる極性樹脂Bは、飽和ポリエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一方又は両方を適宜選択して使用することが可能である。
前記ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分と酸成分を以下に例示する。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記一般式(I)で表されるビスフェノール誘導体、
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2乃至10である。)
あるいは一般式(I)の化合物の水添物、また、下記一般式(II)で示されるジオール、
あるいは式(II)の化合物の水添物のジオール、さらには、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコール等が挙げられる。
2価のカルボン酸としては以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6乃至18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物、さらには、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の如き多価カルボン酸やその無水物。
また、本発明のトナーは、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体である極性樹脂Cを含有していることが好ましい。
極性樹脂Cを含有させることによって、トナーの耐久性と定着性の両立や保存安定性を一層高めることができる。また帯電制御性が向上し、トナー担持体の長手方向のトナーコート量が均一となり、感光体上への現像をより忠実に行うことができるようになる。また、高いページ内均一性を得ることができる。この他に平滑性の低い転写材であっても平滑性の高い転写材同様の転写均一性を得ることができる。また、懸濁重合法によってトナー粒子を製造する場合には、水系媒体中の造粒安定性を高めることができる。
特に、本発明のトナーを懸濁重合法にて製造する場合、上記極性樹脂Cを添加することによって、造粒安定化はもとより重合段階でのトナー粒子のコアシェル構造が促進される。そのためトナーの耐久性と定着性の両立や保存安定性を一層高めることにつながる。
上記極性樹脂Cを製造するための、スルホン酸基、スルホン酸基塩又はスルホン酸エステル基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸が例示できる。そして、これらの単量体が有するスルホン酸基を塩にしたもの、メチル基やエチル基によってエステル化した化合物も用いることができる。
本発明に用いられる極性樹脂Cは、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
極性樹脂Cは、ガラス転移点Tg(C)が70乃至90℃であるものが好ましい。
極性樹脂Cは、結着樹脂100質量部に対し0.1乃至3.0質量部含有されることが好ましい。
極性樹脂Cは、ピーク分子量(Mp)が12000以上28000以下のスチレン系重合体又は共重合体であることが好ましい。極性樹脂Cのピーク分子量(Mp)を12000以上28000以下にすることにより、結着樹脂、極性樹脂A、極性樹脂Bとの相溶と層分離が適度に進み、より好ましいコア/シェル構造を取ることが出来る。
本発明のトナーは、良好な定着画像を得るために、結着樹脂100質量部に対して0.5乃至50質量部、好ましくは3乃至30質量部のワックス成分を含有する。更に好ましくは5質量部乃至20質量部である。ワックス成分の含有量が上記の範囲内であれば、長期間の保存性を維持しつつ、低温オフセットを良好に抑制することができる。また、他のトナー材料の分散を妨げることがなく、良好な流動性や画像特性を維持できる。
本発明に用いられるワックスは、示差走査熱量計(DSC)により測定されるDSC曲線において、60℃以上80℃以下に、ワックスに由来する吸熱ピークを有することが低温定着性の観点から好ましい。
吸熱ピークが60℃未満の場合、低温定着性は優れるが、トナー中のワックスが非常に動きやすい状態になる。よって、本発明のシリカ微粒子を用いても高温高湿環境での長期間放置では、ワックスのトナー粒子表面への染み出しを抑制できなくなり、本発明の効果を得られにくくなる。
本発明のトナーに使用可能なワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体。これらの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスが挙げられる。この中で特に、離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。
特に、エステルワックスと炭化水素ワックスの2種類のワックスを併用して含有していることが好ましく、エステルワックスと炭化水素ワックスの総含有量が重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。
エステルワックスと炭化水素ワックスの含有量の質量比率(エステルワックス:炭化水素ワックス)が、(95:5)乃至(60:40)であることが好ましい。
懸濁重合法にてトナー粒子を製造する際には、添加する極性樹脂(シェルバインダー)が相溶することによりTgが上昇することを考慮する。具体的には、結着樹脂(コアバインダー)を生成するためのモノマーの理論Tgを低く設定し、製造されるトナーのTgが所定の範囲内となるようにすることが好ましい。低い理論Tgで設計した場合には耐熱性(耐ブロッキング性)が低下してしまいやすいが、このように設計することで、耐熱性の低下を抑制できる。そして、現像性、転写性及び定着性の向上を達成でき、従来のトナーよりも良好な特性を得ることが可能となる。本発明においては、結着樹脂(コアバインダー)のTgは、10乃至45℃であることが好ましく、より好ましくは15乃至40℃である。
また、理由は定かではないが、懸濁重合法によりトナー粒子を製造する際に、モノマー中に芳香族系の有機溶媒(例えばトルエンやキシレン)を添加すると好ましい。結着樹脂(コアバインダー)中にシェルバインダーが相溶しつつ、相分離することが促進され、本発明の効果を発揮しやすくなる。
本発明に用いられる結着樹脂(コアバインダー)としては、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
本発明に用いられる結着樹脂(コアバインダー)としては、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
上記ビニル系重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139乃至192(John Wiley&Sons製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)を参考にして単量体を適宜混合して用いられる。
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は、3.0乃至8.0μmであることが好ましい。
トナーの重量平均粒径(D4)は、トナー製造時に風力分級、篩い分けといった粒度調整工程において粒度調整することで満たすことが可能である。また、本発明の好ましい形態である、重合トナーの場合、分散安定剤の仕込み量で調整することが可能である。
トナーの平均円形度0.960未満の粒子数が、2乃至30個数%であることが好ましい。本範囲内に制御することにより、トナーが現像器内で密に詰まりやすくなることによる外添剤の埋め込みを抑制することができる。写真画像のような印字比率の高い画像を、多数枚出力した場合、現像剤担持体上へのトナーの供給不足による濃度変動を抑制することも可能となる。また、転写残トナーが多くなることによるクリーニング不良の抑制や、多数枚の出力でも静電潜像に忠実な画像を、安定して得ることが可能となる。
トナーの2μm未満の粒子数が2乃至20個数%であることが好ましい。本範囲内に制御することにより、トナーが現像器内で密に詰まりやすくなることによる外添剤の埋め込みを抑制することができる。写真画像のような印字比率の高い画像を、多数枚出力した場合、現像剤担持体上へのトナーの供給不足による濃度変動を抑制することも可能となる。また、現像剤担持体や静電潜像担持体といった各部材へのトナー融着を抑制することにつながり、かぶりやポチといった非画像部にトナーが付着してしまうといった画像欠陥を抑制することが可能となる。
トナーの平均円形度は、
(1)トナーを懸濁重合法により製造する場合には造粒時の水系媒体中のpHをコントロールする。
(2)トナーを水系媒体中で熱により球形化処理する。
(3)トナーを機械的手法により球形化処理する。
ことで、上記範囲を満たすことが可能である。平均円形度0.960未満の粒子数や2μm未満の粒子数は、後述する極性樹脂の酸価、水酸基価を制御することにより上記範囲を満たすことが可能である。
本発明において、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCでのメインピーク分子量Mpは10,000乃至40,000が好ましく、より好ましくは15,000乃至35,000である。メインピーク分子量が上記範囲内である場合、ワックスの染み出しが適度となり、良好な耐高温オフセット性が得られる。また、適度な強度を有するため、良好な現像性や転写性を得ることができる。更に、低温定着性に関しても優れた特性が得られる。
尚、上記トナーのメインピーク分子量Mpに関する上記の条件は、トナー製造時の温度を調整することで満たすことが可能である。特に本発明の好ましい製造法である重合法でトナーを製造する場合においては、重合条件(温度、開始剤種、開始剤量)を調整することで満たすことが可能である。
本発明のトナーは、示差走査熱量測定装置により測定されるガラス転移温度(Tg)が、30乃至58℃であることが好ましい。より好ましくは40乃至55℃である。
本発明のトナーは、定荷重押し出し方式の細管式レオメータによって測定される100℃における溶融粘度が、5.00×103乃至3.50×104Pa・sであることが好ましい。トナーの溶融粘度が上記範囲内である場合、ワックスの染み出しが適当となり、より良好な耐高温オフセット性が得られる。また、適度な強靭性が維持されるため、現像性や転写性がより良好となる。更に、転写紙との付着力が適度となるため、低温定着性や巻きつき性に関してもより良好な効果が得られる。また、高い光沢度を有する定着画像がより得やすくなる。
尚、上記溶融粘度は、結着樹脂の分子量やガラス転移温度を調整したり、ワックス成分の種類および含有量を調整したりすることで条件を満たすことができる。また、極性樹脂A、B、Cの種類および含有量で調節することも可能である。さらに、本発明の好ましい形態である重合トナーの場合には、重合条件(温度、開始剤種、開始剤量)で調節することが可能である。
本発明においては、トナー粒子におけるコア部の低いTgを維持したまま、トナーの機械的強度を高める目的で、架橋剤を用いてもよい。
本発明に用いられる架橋剤としてはジビニルベンゼンが好ましいが、以下のような架橋剤を用いることも可能である。
2官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.001乃至1.000質量部、より好ましくは0.010乃至0.500質量部である。
本発明に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、上記重合性単量体100質量部に対して、3乃至20質量部である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に選定され、単独又は混合して使用される。
本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料または染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、及び、カーボンブラックに、上記イエロー系/マゼンタ系/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して、1乃至20質量部添加して用いられる。
本発明において、重合法を用いてトナーを得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。従って、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
染料系着色剤の重合阻害性を抑制する方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンで処理を行っても良い。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
上記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
一方、荷電制御剤として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも金属を含むサリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20.00質量部、より好ましくは0.50乃至10.00質量部である。しかしながら、本発明のトナーにおいては、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することで、トナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
本発明のトナーは、シリカ微粒子S以外にも流動性の向上や帯電安定等を目的として、無機微粉体を併用して用いても良い。
具体的には以下の;湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等に代表される原体シリカ微粒子またはそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルに代表される処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子;酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子等に代表される金属酸化物微粒子または上記金属酸化物を疎水化処理した金属酸化物微粒子;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等に代表される脂肪酸金属塩;サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等に代表される芳香族カルボン酸の金属錯体;ハイドロタルサイトに代表される粘土鉱物;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子等に代表されるフッ素系樹脂微粒子等が挙げられる。中でも、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物の微粉体を併用することができる。併用される無機微粉体としては、酸化チタンが好ましい。
本発明のトナーに好ましく用いられる酸化チタンは、一次粒子の個数平均粒径(D1)が25nm以上50nm以下である酸化チタン原体微粒子を疎水化処理した酸化チタン微粒子であることが好ましい。
上記シリカ微粒子以外の無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の摩擦帯電均一化のために添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上等の機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナー粒子に外添された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての摩擦帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。
未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの如き処理剤は単独で或いは併用して用いても良い。疎水化処理剤として、特に好ましいのは、シリコーンオイルであり、ジメチルシリコーンオイルが、更に好ましい。
以下、本発明に用いられるトナー粒子を得る上で好適な懸濁重合法を例示して、該トナー粒子の製造方法を説明する。
トナー粒子は、上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させる。特に、公知の分散方法により重合性単量体に少なくとも着色剤を分散させ着色剤含有単量体を得るという分散工程を経た後に、該分散工程において得られた着色剤含有単量体と樹脂とを混合するという調整工程を行なうことが好ましい。これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。
次に、該重合性単量体組成物を分散剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行うことによってトナー粒子は製造される。上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
上記分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
一方、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、分散剤として、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
上記分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至2.0質量部であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、上記難水溶性無機分散剤を生成させて水系分散媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することが挙げられる。
<トナーガラス転移点(Tg)の測定>
また、本発明におけるトナーのTgの測定方法は、示差走査熱量計(DSC)用いて測定することができる。尚、DSC測定は以下のように行なう。DSCは、例えば「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、検体であるトナー約3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、以下の条件にて測定し、昇温1回目のDSC曲線のピーク位置からガラス転移点を求める。尚、コアバインダー樹脂のガラス転移温度、シェルバインダー樹脂(極性樹脂A、B)のガラス転移温度も同様にして測定する。コアバインダー樹脂のガラス転移温度については、結着樹脂(コアバインダー)のみをトナー粒子から単離することが困難であるため、その処方から計算される理論Tgを結着樹脂(コアバインダー)のTgとみなしてもよい。
<測定条件>
・20℃で5分間平衡を保つ。
・1.0℃/minのモジュレーションをかけ、140℃まで1℃/minで昇温する。
・140℃で5分間平衡を保つ。
・20℃まで降温する。
ここでいうガラス転移温度(Tg)は中点法で求める。また、トナーの最大吸熱ピークのピーク温度(P1)とは、吸熱ピークの中で極大の値を示す温度のことである。複数個の吸熱ピークが存在する場合には、吸熱ピーク以上の領域におけるベースラインからの高さが一番高いものを最大吸熱ピークとする。
<分子量の測定>
本発明におけるトナーのTHF可溶分のメインピーク分子量及び極性樹脂A、B、Cのメインピーク分子量(MpA、MpB、MpC)は、以下の方法で測定される。
測定試料は、以下のようにして作製する。
試料とTHFを約0.5乃至5mg/ml(例えば約5mg/ml)の濃度で混合し、室温にて数時間(例えば5乃至6時間)放置する。次に、充分に振とうし、THFと試料を良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に室温にて12時間以上(例えば24時間)静置する。このとき試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45乃至0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンスジャパン社製が好ましく利用できる)を通過させたものをGPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5乃至5mg/mlとなるように調整する。なお、樹脂がTHFに溶解しない、または溶解しにくい場合にはDMFなどの塩基性溶媒をもちいることも可能である。さらに、本発明の極性樹脂Cのように、スルホン酸基を含有するものについては、カラム溶出速度がスルホン酸基の量にも依存してしまうため、正確な分子量及び分子量分布を測定したことにはならない。そのため、予めスルホン酸基をキャッピングした試料を用意する必要がある。キャッピングにはメチルエステル化が好ましく、市販のメチルエステル化剤が使用できる。具体的には、トリメチルシリルジアゾメタンで処理する方法が挙げられる。
<測定条件>
装置:高速GPC「HLC8120 GPC」(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)あるいは、樹脂が溶解しにくい場合はDMF
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量較正曲線を使用する。
<酸価Av(mgKOH/g)の測定>
本発明において、カルボキシル基含有スチレン系樹脂の酸価AvはJIS K 0070−1992に基づいて以下の方法で測定する。ポリエステル樹脂の酸価の測定についても同様である。
(試料調整)
200mlビーカーにサンプル1.0gを精秤し、スターラーで撹拌しながらトルエン120mlに溶解し、さらにエタノール30mlを加える。なお、精秤したサンプルの重さをW(g)とする。
(装置)
装置としては、電位差自動滴定装置AT−400WIN(京都電子工業株式会社製)を用いる。装置の設定は、有機溶剤に溶解する試料を対象とする。使用するガラス電極と比較電極は、有機溶剤対応のものを使用する。pHガラス電極は、例えば商品コード#100−H112(京都電子工業株式会社製)を用いる。尚、先端は乾燥させてはいけない。コルク型比較電極は、商品コード#100−R115(京都電子工業株式会社製)を用いる。尚、先端は乾燥させてはいけない。内部液が内部液補充口まで満たされているかを確認する。内部液は3.3M KCl溶液を使用する。
(手順)
上記調整した試料を上記装置のオートサンプラーにセットし、上記電極を試料溶液中に浸す。次に、滴定液(1/10N KOH(エタノール溶液))を試料溶液上にセットし、0.05mLずつ自動間欠滴定で滴下させ酸価を算出する。この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とする。得られた結果から次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
<水酸基価OHv(mgKOH/g)の測定>
本発明において、カルボキシル基含有スチレン系樹脂の水酸基価OHv(JIS水酸基価)は、以下の方法により求める。水酸基価とは、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(ア)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mLにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5mol/L塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5mol/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(イ)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂1.0gを200mL丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mLをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mLを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
結着樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(ウ)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:結着樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
<重量平均粒径(D4)の測定>
本発明において、重量平均粒径(D4)は、コールターカウンターで測定される。
トナー及びトナー粒子の粒度分布の測定:測定装置としては、例えば、コールターカウンターTA−II或いはコ−ルターマルチサイザーII(コールター社製)或いはコ−ルターマルチサイザーIII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、上記電解水溶液100ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml加え、さらに測定試料(トナー及びトナー粒子)を5mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間分散処理し、上記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積及び個数をチャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。トナー粒子の体積分布から求めた重量基準のトナーの重量平均粒径D4(μm)を求める。
<平均円形度、平均円形度0.960未満の粒子数、2μm未満の粒子数の測定>
本発明におけるトナーの平均円形度、平均円形度0.960未満の粒子数、2μm未満の粒子数は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定した。
上記装置の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37μm×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
画像処理部で画像信号は、A/D変換され、画像データとして取り込まれ、記憶した画像データに対して、粒子の有無を判別するための画像処理が行われる。次に、粒子像の輪郭を的確に抽出するための前処理として輪郭強調処理が行われる。次に、画像データをある適当なスレッシュホールドレベルで2値化する。
次に、2値化された各粒子画像に対してエッジ点(輪郭を表す輪郭画素)かどうかを判定するとともに、着目しているエッジ点に対して隣合うエッジ点がどの方向にあるかの情報、すなわちチェインコードを生成する。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記投影面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(πS)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。
各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて相加平均により平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを容器中に用意し、その中に分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料0.02gを加え、均一に分散させた。分散手段としては、超音波分散機UH−50型(エスエムテー製)に振動子として直径5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、該分散液の温度が40度以上にならないように適宜冷却した。測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。上記手順に従い調製した分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定し、平均円形度を求めた。
また、平均円形度0.960未満の粒子数に関しては、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定した上で、平均円形度を0.960乃至1.000に限定して算出した。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行った。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<画像形成装置構成>
本発明に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の一実施例の全体構成について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の断面図である。本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体に接続された画像読み取り装置、或いは画像形成装置本体に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施例では、第1乃至第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
尚、本実施例では、第1乃至第4の画像形成部の構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の静電潜像担持体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には帯電ローラ2及びスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。ここで、帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段である。そして、スキャナユニット(露光装置)3は、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段である。また、感光体ドラム1の周囲には、現像ユニット(現像装置)4及びクリーニング部材6が配置されている。ここで、現像ユニット4は、静電像をトナー像として現像する現像手段である。また、クリーニング部材6は、転写後の感光体ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段である。更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。感光体ドラム1の回転方向において、帯電ローラ2による帯電位置、スキャナユニット3による露光位置、現像ユニット4による現像位置、中間転写ベルト5へのトナー像の転写位置、クリーニング部材6によるクリーニング位置は、この順番で設けられている。
尚、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーを用いる。また、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラ(後述)を感光体ドラム1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、本実施例では、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上で露光されることにより電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させる。これにより、感光体ドラム1上の静電像が現像される。
本実施例では、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング部材6とは、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本実施例では、各色用のプロセスカートリッジ7は全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。プロセスカートリッジの構成ではなく、現像装置4が単独で画像形成装置本体に着脱可能な構成としても良い。
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材(駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、テンションローラ53)に掛け渡されている。
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが接触する一次転写部N1にニップ(一次転写ニップ)を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
また、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが接触する二次転写部N2にニップ(二次転写ニップ)を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。一次転写ローラ8と二次転写ローラ9とは同様の構成を有する。
画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1乃至第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。
その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送される。そして、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、中間転写ベルト5上の4色トナー像は、一括して記録材12上に二次転写される。
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
また、一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去され、除去トナー室(後述)に回収される。また、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
尚、画像形成装置100は、所望の単独又はいくつか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
<プロセスカートリッジの構成>
次に、本実施例の画像形成装置100に好ましく装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。本実施例では、収容しているトナーの種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本実施例のプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)図である。図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態での姿勢であり、以下でプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。
プロセスカートリッジ7は、感光体ドラム1等を備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4とを一体化して構成される。
感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、感光体ドラム1が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。本実施例にて、画像形成プロセスの中心となる感光体ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光体ドラム1を用いている。
又、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14内に落下、収容される。
帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光体ドラム1に加圧接触することで従動回転する。
ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、感光ドラム1に対して所定の直流電圧が印加されており、これにより感光ドラム1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述のスキャナユニット3からのレーザー光によって画像データに対応して発光されるレーザー光のスポットパターンは、感光ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、感光ドラム1上に形成される。本実施例では、Vd=−500V、Vl=−100Vとした。
一方、現像ユニット4は、トナー80を担持するための現像剤担持体としての現像ローラ17と、現像ローラ17にトナーを供給する供給部材としてのトナー供給ローラ20が配置された現像室、を有している。更に、現像ユニット4は、トナーを収容するトナー収容室18を備えている。
トナー供給ローラ20は、現像ローラ17との間にトナーのニップ部N(現像ローラ17とトナー供給ローラ20とでトナーを挟む部分)を形成し、回転している。
トナー収容室18内には、撹拌搬送部材22が設けられている。撹拌搬送部材22は、トナー収容室18内に収容されたトナーを撹拌すると共に、トナー供給ローラ20の上部に向けて図中矢印G方向にトナーを搬送するためのものでもある。本実施例において撹拌搬送部材は30rpmで駆動回転している。
現像ブレード21は現像ローラ17の下方に配置され、現像ローラに対してカウンターで当接しており、トナー供給ローラ20によって供給されたトナーのコート量規制及び電荷付与を行っている。本実施例では、現像ブレード21として、厚さ0.1mmの板バネ状のSUS製の薄板を用い、薄板のバネ弾性を利用して当接圧力を形成し、その表面がトナー及び現像ローラ17に当接される。ここで、現像ブレードとしてはこの限りではなく、リン青銅やアルミニウム等の金属薄板でも良い。また、現像ブレード21の表面にポリアミドエラストマーやウレタンゴムやウレタン樹脂等の薄膜を被覆したものを用いても良い。
トナーは、現像ブレード21と現像ローラ17との摺擦により摩擦帯電されて電荷を付与されると同時に層厚規制される。また、本実施例においては、現像ブレード21に不図示のブレードバイアス電源から所定電圧を印加し、トナーコートの安定化を図っている。本実施例においては、ブレードバイアスとしてV=−500Vを印加した。
現像ローラ17と感光体ドラム1とは、対向部において各々の表面が同方向(本実施例では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。
尚、本実施例では、現像ローラ17は、感光体ドラム1に接触して配置されているが、現像ローラ17は、感光体ドラム1に対して所定間隔を開けて近接配置される構成であってもよい。
本実施例においては、現像ローラ17に印加された所定のDCバイアスに対して、摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナーが、感光体ドラム1に接触する現像部において、その電位差から、明部電位部にのみ転移して静電潜像を顕像化する。本実施例においては、現像ローラに対してV=−300Vを印加することにより、明部電位部との電位差ΔV=200Vを形成し、トナー像を形成した。
トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、各々の表面がニップ部Nにおいて、同方向に回転する。本実施例では、トナー供給ローラ20は図示矢印E方向(時計方向)に、現像ローラ17は矢印D方向に回転している。このことにより、逆方向に回転した時と比較して、ニップ部Nにおけるトナーへの負荷が軽減され、トナーの劣化を抑制することが可能となる。
本発明に好ましく用いられる、上記プロセスカートリッジに用いるトナーとしては、流動性の確保が、より重要である。
現像ローラとトナー供給ローラが、ニップ部において同一回転する構成は、確かにトナー劣化抑制する方向であるが、トナー供給ローラのもう一つの役割である、現像ローラからのトナーの剥ぎ取り性は悪くなる方向である。そのため、現像に寄与しなかったトナーは、現像ローラに連れまわりやすくなり、現像に寄与した部分との帯電量差が生まれ、ゴースト画像を発生させやすくなる。トナーの流動性を向上させると、現像ローラ上におけるトナーの帯電の立ち上がりを向上させ、帯電量差を抑制することにつながっていると考えられる。また、トナーの流動性を向上させると、現像ローラとトナー供給ローラのニップ部におけるトナーの動きを活発化させ、帯電量差を抑制することにつながっていると考えている。
トナー供給ローラ20は、導電性芯金の外周に発泡体層を形成した弾性スポンジローラである。トナー供給ローラ20と現像ローラ17は所定の侵入量、即ち、図3にて、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量△Eを持って接触している。トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、ニップ部Nにおいて互いに同方向に周速差を持って回転しており、この動作により、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー供給を行っている。その際、トナー供給ローラと現像ローラとの電位差を調整することにより、現像ローラへのトナー供給量を調整することが出来る。本実施例では、トナー供給ローラが200rpm、現像ローラが100rpmで駆動回転し、トナー供給ローラに対して現像ローラと同電位となるよう、DCバイアスを印加した。
尚、本実施例においては、現像ローラ17、トナー供給ローラ20は、共に外径15mmであり、トナー供給ローラ20の現像ローラ17への侵入量、即ち、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量△Eを1.0mmに設定した。また、トナー供給ローラと現像ローラは中心高さが同じになるように配置した。
以下、本実施例において用いられるトナー供給ローラの詳細について説明する。
本実施例におけるトナー供給ローラ20は、導電性支持体と、導電性支持体に支持される発泡層と、を備える。具体的には、導電性支持体たる外径φ5(mm)の芯金電極20aと、その周囲に気泡同士がつながっている連続気泡体(連泡)から構成される発泡層としての発泡ウレタン層20bが設けられており、図中Eの方向に回転する。
表層のウレタンを連続気泡体とすることで、トナー供給ローラ20内部にトナーが多量に進入可能となる。また、本実施例におけるトナー供給ローラ20の抵抗は1×109(Ω)である。
ここで、トナー供給ローラ20の抵抗の測定方法を説明する。トナー供給ローラ20を、直径30mmのアルミスリーブに対し、後述する侵入量が1.5mmとなるように、当接させる。このアルミスリーブを回転させることにより、供給ローラ2を30rpmでアルミスリーブに対して従動回転させる。
次に、現像ローラ17に、−50Vの直流電圧を印加する。その際、アース側に10kΩの抵抗を設け、その両端の電圧を測定することで電流を算出し、トナー供給ローラ20の抵抗を算出する。本実施の形態では、トナー供給ローラ20の表面セル径を50μm〜1000μmとした。
ここで、セル径とは、任意断面の発泡セルの平均径をいい、まず任意断面の拡大画像から最大である発泡セルの面積を測定し、この面積から真円相当径を換算し最大セル径を得る。そしてこの最大セル径の1/2以下である発泡セルをノイズとして削除した後、残りの個々のセル面積から同様に換算した個々のセル径の平均値のことを指す。
次に、現像室内のトナーの流れについて図2、図3を参照して説明する。
本実施例にて、図3は、現像室内の拡大概略断面図であり、撹拌搬送部材22よりトナー供給ローラ20に搬送されたトナーの動きを示している。
撹拌搬送部材22による現像室へのトナーの供給は、主にトナー供給ローラ20の上部に向けて行われ(図3の矢印G)、供給されたトナーは、トナー供給ローラの内部とその表面に保持される。トナー供給ローラ20は矢印E方向に回転している為、トナー供給ローラに保持されたトナーは現像ローラとのニップ部Nへ向けて搬送される(図3の矢印F1)。ここで、トナー供給ローラにより搬送されたトナーのうち一部は、ニップ部Nへの入り口でトナー供給ローラの変形により吐き出され、ニップ部Nの上方に堆積して貯蔵される(図3の矢印F2)。このように、トナーをニップ部Nの上方に貯蔵することで、撹拌搬送部材22が現像室へトナーを搬送してから次に搬送するまでの間において、供給ローラ内のトナー量の減少が抑制できる。結果として、貯蔵したトナーを安定してトナー供給ローラおよび現像ローラへ供給することができる。
次にニップ部Nに搬送されたトナーは、トナー供給ローラと現像ローラが周速差を持って回転している為、ニップ内で摺擦されて帯電し、所定の電荷を帯びる。その後、帯電されたトナーの一部は現像ローラへと転移する。また、本実施例においてはトナー供給ローラの周速が現像ローラの周速よりも速い為、単位時間当たりに現像ローラ上を通過するトナー量が多くなり、より多くのトナーが現像ローラへ転移することとなる。現像ローラへ転移したトナーは、現像ローラと現像ブレードとの間の規制部で現像ブレ−ドにより規制および帯電され、規制部を通過したトナーにより現像ローラ上に均一なトナーコートが形成される。
一方、現像ブレードにより規制されたトナーは、トナー供給ローラの回転によって現像室に設けられた現像開口(開口部)の方向へと搬送され、現像開口を通ってトナー収容室へと戻される。
<プロセスカートリッジのクリーニング構成>
本発明に係るクリーニング構成は、前述のクリーニングブレード6の先端部を感光ドラム1 周表面に対して、いわゆるカウンター方向で所定の押圧力をもって当接させることにより、転写工程後の残留トナーを感光ドラム1 周表面から除去する。図4に、クリーニングブレードの構成図を示す。設定角(θ)=22°、侵入量(△E)は0.5乃至1.3mm、押圧力としては、49.0〔N/m〕以上、好ましくは68.6〔N/m〕以上であることが望ましい。
弾性部材6aは、感光ドラムとの当接部との周表面に、硬化層6cが設けられている。この硬化層6cは、活性水素化合物を含浸させることなく、少なくともイソシアネート化合物を所定時間含浸させた後、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂とを反応させることにより形成される。このような構成のクリーニングブレードの成形方法例を以下に述べる。
まず、硬化層形成前のクリーニングブレードの成形方法としては、以下の方法がある。
(1)高分子ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤、触媒等を一度に混合し、これを金型、または遠心成形円筒金型に注入して成形するワンショット法
(2)高分子ポリオールとポリイソシアネートとを予備反応させてプレポリマーとし、その後、架橋剤、触媒等を混合し、これを金型、または遠心成形円筒金型に注入して成形するプレポリマー法
(3)ポリイソシアネートに高分子ポリオールを反応させたセミプレポリマーと、架橋剤に高分子ポリオールを添加した硬化剤を反応させ、これを金型、または遠心成形円筒金型に注入して成形するセミワンショット法
硬化層の形成方法の一例としては、まず、上記クリーニングブレードの感光ドラムとの当接部のみが露出するように、クリーニングブレード周表面にマスク部材を配置する。その後、このマスク部材が配置されていない部分のみに、活性水素化合物を含浸させることなく、イソシアネート化合物を所定時間、例えば10〔分〕以上80〔分〕以下にわたり含浸させる。この時の液状イソシアネート化合物は、30〔℃〕以上90〔℃〕以下に調温されることが好ましい。その後、クリーニングブレード周表面に残留するイソシアネート化合物を拭き取る。そして、50〔℃〕以上140〔℃〕以下の条件下にて10〔分〕以上80〔分〕以下にわたり、含浸させたイソシアネート化合物とポリウレタン樹脂との反応を進行させる方法が挙げられる。
硬化層の厚さとしては、L1を硬化層6cの自由長方向の長さ、L2をクリーニングブレード6aの厚み方向の長さ、Tを硬化層6cの厚みとした場合、下記が好ましい。
L1は、硬化層6cの効果を十分なものとするため、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。また、L1は、自由長部の十分なゴム弾性を実現するために、自由長の50%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。L1を、ここに記載の範囲内とすることにより、当接部の進入による線圧の急峻な増加を抑制できるため、安定した線圧を得ることができる。
なお、自由長とはクリーニングブレード6aが支持部材6bから露出している自由長方向の長さをいい、一般に5mm以上15mm以下とされる。
L2は、硬化層6cの効果を十分なものとするため、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。また、クリーニングブレード6aの厚み以下とされる。通常、クリーニングブレード6aの厚さは、1.0乃至3.0mmとされる。
Tは0.12mm以上とされ、0.13mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましく、1.2mm以下とされ、1.1mm以下がより好ましく、1.0mm以下が更に好ましい。硬化層6cの厚みが、この様な範囲であれば、たとえクリーニングブレードの表面が摩耗したとしても、クリーニングブレードの表面の良好な特性は長期間維持される。更に、硬化層6cが十分な厚みを有しているため、感光体1との摺動によりクリーニングブレード6aの表面が大きく変形することが抑制される。そのため、近年頻繁に用いられつつある微小なトナーや球形トナーも効果的に除去することができる。
クリーニングブレードの先端面の長手方向両端部を硬化する他の手段としては、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂のバインダーを、所望の位置に塗工する方法が挙げられる。
<中間転写ベルトの構成>
次に、本発明の中間転写ベルトの構成について説明する。
本発明の中間転写ベルト5は、基層と表層の二層からなる無端のフィルム状部材である。図5に中間転写ベルト5の表層近傍の回転駆動方向に直交する方向における拡大部分断面図を示す。基層101は、ポリエチレンナフタレート樹脂に抵抗調整剤としてカーボンブラックを分散した、厚み70μmの層からなる。表層102は、アクリル樹脂103に抵抗調整剤としてアンチモンドープの酸化亜鉛105を分散し、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)粒子104を添加した、厚み3μmの層からなる。表層102に添加されたPTFE粒子104は、図5に示すように最表層面に析出し、一部が露出した状態で突起形状を形成する他、表層中にも分散された状態で存在している。
中間転写ベルト5の体積抵抗率はHiresta・UP MCP−HT450(三菱化学社製)を用いて、温度は25℃、相対湿度は50%環境下で、1010Ω・cmである。なお、前記中間転写ベルト5の体積抵抗率は、109乃至1012Ω・cmの範囲であれば良好な画像形成を行うことができる。
<中間転写ベルトの作製方法>
次に、本発明の中間転写ベルト5の作製方法について説明する。
まず、本発明の中間転写ベルト5の基層101に使用する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。また、これらの熱可塑性樹脂中に導電材料などを熔融混練し、次いで、インフレーション成形、円筒押出し成形、ブロー成形などの成形方法を適宜選択して、中間転写ベルト5の基層101を得ることができる。
次に、表層102の作製方法について説明する。
感光ドラム1から転写されたトナーを保持する表層102には、中間転写ベルト5の表面硬度を高め、耐久性(耐摩耗性)を向上させる観点から、熱硬化性または紫外線や、電子線などのエネルギー線の照射によって硬化する硬化性材料が用いられる。特に、硬化性の高い紫外線や、電子線などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
硬化性材料のうち、有機材料としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フッ素性硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。無機材料としては、アルコキシシラン・アルコキシジルコニウム系材料、ケイ酸塩系材料などが挙げられる。有機・無機ハイブリッド材料としては、無機微粒子分散有機高分子系材料、無機微粒子分散オルガノアルコキシシラン系材料、アクリルシリコン系材料、オルガノアルコキシシラン系材料などが挙げられる。これらの中でも、中間転写ベルト表層102の耐摩耗性、耐クラック性等の観点から硬化性材料の中でも樹脂材料が好ましく、硬化性樹脂の中でも不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、例えば、アクリル系紫外線硬化型ハードコート材料であるルシフラール(商品名、日本ペイント社製)として入手可能である。
さらに、本発明の中間転写ベルト表層102には、抵抗制御のために導電材料を添加しても良い。導電材料として、電子導電性、あるいはイオン導電性の材料を用いることができる。電子導電性材料としては、カーボンブラック、PAN系炭素繊維、および膨張化黒鉛粉砕品などの粒子状、繊維状またはフレーク状のカーボン系導電性フィラーが挙げられる。さらに、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、および鉄などの粒子状、繊維状、またはフレーク状の金属系導電性フィラーも挙げられる。また、アンチモンドープの酸化スズ、スズドープの酸化インジウム、およびアルミニウムドープの酸化亜鉛などの粒子状の金属酸化物系導電性フィラーが挙げられる。イオン導電性材料としては、イオン液体、導電性オリゴマー、および第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの導電材料の中から1種、あるいはそれ以上が適宜選択され、さらには電子導電性材料とイオン導電性材料を混合して用いても良い。これらの中でも、添加量が少量で済み、表面平滑性が得られる点で、サブミクロン以下の粒子状金属酸化物系導電性フィラーが好ましい。
さらに、中間転写ベルト表層102には、前記材料に固体潤滑剤を添加しても良い。固体潤滑剤としては、PTFE樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、二フッ化二塩化エチレン樹脂粉体、フッ化黒鉛等のフッ素含有粒子、及びそれらの共重合体が適宜選択される。また、必ずしもこれらに限定されるものではなく、シリコーン樹脂粒子、二硫化モリブデン粉体等の固体潤滑剤でも良い。これらの中でも、粒子表面の摩擦係数が低く、中間転写ベルト表層102に当接する他部材の摩耗を低減できる点で、乳化重合系のPTFE樹脂粒子が好ましい。
前記不飽和二重結合含有アクリル共重合体中に、導電材料としてのアンチモンドープの酸化亜鉛を混合し、高圧乳化分散機で分散混合し、表層形成用の塗工液を作製する。
上述の表層102を基層101上に形成する方法として、通常のコーティング方法、例えばディップコート、スプレーコート、ロールコート、スピンコート等を挙げることができる。これらの方法から適宜選択することで、所望の膜厚の表層102を得ることができる。
前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンターを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置でも有効である。また、記録剤担持体を使用し、前記記録剤担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ね合わせて転写する画像形成装置であっても同様の効果を得ることができる。
以下に本発明を実施例にて説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。なお、実施例中で記載されている「部」は、すべて質量部を示す。
(シリカ微粒子S1の製造例)
シリカ原体には、平均一次粒径=24.0nmのものを使用した。一次処理剤として、シリカ原体100部に対し、5.0部のジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)をヘキサン10,000部に溶解させた液を噴霧した。粒子の合一が生じないように十分に撹拌しながら、250℃で反応させた。次に、二次処理剤として、シリカ原体100部に対し、30.0部のヘキサメチルジシラザンをヘキサン10,000部に溶解させた液を噴霧した。粒子の合一が生じないように十分に撹拌しながら、250℃で2時間加熱処理を行ない、シリカ微粒子S1を得た。得られたシリカ微粒子S1の物性を表1に示す。
なお、表1において、
Sca(全炭素量)=オイル C量+HMDS C量
Sch(HMDS由来のC量)=HMDS C量/全炭素量×100
である。
(シリカ微粒子S2の製造例)
一次処理剤としてメチルフェニルシリコーンオイル(粘度=150mm2/s)3.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S2を得た。得られたシリカ微粒子S2の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S3の製造例)
一次処理、二次処理後の加熱処理温度を230℃で2時間に変更する以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S3を得た。得られたシリカ微粒子S3の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S4の製造例)
一次処理、二次処理後の加熱処理温度を200℃で2時間に変更する以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S4を得た。得られたシリカ微粒子S4の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S5の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)12.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S5を得た。得られたシリカ微粒子S5の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S6の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=50mm2/s)3.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S6を得た。得られたシリカ微粒子S6の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S7の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)2.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S7を得た。得られたシリカ微粒子S7の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S8の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=300mm2/s)10.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S8を得た。得られたシリカ微粒子S8の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S9の製造例)
シリカ原体を、平均一次粒径=22.0nmのものに変更し、一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)10.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S9を得た。得られたシリカ微粒子S9の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S10の製造例)
シリカ原体を、平均一次粒径=30.0nmのものに変更する以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S10を得た。得られたシリカ微粒子S10の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S11の製造例)
シリカ原体を、平均一次粒径=12.0nmのものに変更し、一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)10.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S11を得た。得られたシリカ微粒子S11の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S12の製造例)
シリカ原体を、平均一次粒径=35.0nmのものに変更し、一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)3.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S12を得た。得られたシリカ微粒子S12の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S13の製造例)
一次処理剤としてヘキサメチルジシラザン15.0部に変更した。また、二次処理剤として、ジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)15.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S13を得た。得られたシリカ微粒子S13の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S14の製造例)
一次処理剤としてヘキサメチルジシラザン30.0部に変更した。また、二次処理は行なわなかった。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S14を得た。得られたシリカ微粒子S14の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S15の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=50mm2/s)1.0部に変更した。また、二次処理剤として、ヘキサメチルジシラザン10.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S15を得た。得られたシリカ微粒子S15の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S16の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)15.0部に変更した。また、二次処理は行なわなかった。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S16を得た。得られたシリカ微粒子S16の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S17の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=300mm2/s)12.0部に変更した。また、二次処理剤として、ヘキサメチルジシラザン15.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S17を得た。得られたシリカ微粒子S17の物性を表1に示す。
(シリカ微粒子S18の製造例)
一次処理剤としてジメチルシリコーンオイル(粘度=300mm2/s)1.0部に変更した。それ以外は、シリカ微粒子S1の製造例と同様にして、シリカ微粒子S18を得た。得られたシリカ微粒子S18の物性を表1に示す。
(酸化チタン微粒子1の製造例)
一次粒子の個数平均径33nmの酸化チタン微粒子100部に対し、15.0部のジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)をヘキサン10,000部に溶解させた液を噴霧した。粒子の合一が生じないように十分に撹拌しながら、250℃で2時間加熱処理を行ない反応させた。その後、酸化チタンの凝集体が無くなるまでジェットミルで繰り返し解砕処理を行い、酸化チタン微粒子1を得た。表2に酸化チタン微粒子1の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子2の製造例)
処理剤として、メチルフェニルシリコーンオイル15.0部(粘度=150mm2/s)に変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子2を得た。表2に酸化チタン微粒子2の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子3の製造例)
処理剤として、ヘキシルトリエトキシシラン15.0部に変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子3を得た。表2に酸化チタン微粒子3の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子4の製造例)
一次粒子の個数平均径20nmに変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子4を得た。表2に酸化チタン微粒子4の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子5の製造例)
一次粒子の個数平均径25nmに変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子5を得た。表2に酸化チタン微粒子5の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子6の製造例)
一次粒子の個数平均径50nmに変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子6を得た。表2に酸化チタン微粒子6の製造例を記載する。
(酸化チタン微粒子7の製造例)
一次粒子の個数平均径55nmに変更する以外は、酸化チタン微粒子1と同様にして、酸化チタン微粒子7を得た。表2に酸化チタン微粒子7の製造例を記載する。
<実施例1>
(シアントナー1の製造例)
(水系分散媒体の調製)
・水・・・・・350.00部
・リン酸三ナトリウム・・・・・15.00部
上記混合物を高速撹拌装置TK式−ホモミキサーで12,000rpmのスピードで撹拌しながら、60℃に保持した。次に塩化カルシウム9部を添加して、微細な難水溶性安定化剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
(重合性単量体組成物1の調製:分散工程)
・スチレン・・・・・30.00部
・C.Iピグメントブルー15:3・・・・・7.00部
・負荷電性制御剤・・・・・1.00部
(3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
上記の混合物をアトライターで常温にて5時間分散させ、重合性単量体混合物1を得た。引き続き、上記単量体混合物1を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、これを60℃まで昇温した。次いで、
ワックス1(ベヘン酸ベヘニル 融点72℃)・・・・・15.00部
を上記、撹拌槽に投入し、さらに、
・ジビニルベンゼン・・・・・0.20部
を投入し、さらに撹拌を1時間継続して、重合性単量体組成物1を調製した。
(重合性単量体組成物2の調製:溶解工程)
・スチレン・・・・・40.00部
・n−ブチルアクリレート・・・・・30.00部
・極性樹脂A1・・・・・25.00部
(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、Mw=15200、Tg=90℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=8mgKOH/g)
・極性樹脂B1・・・・・5.00部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9500、Tg=74℃、酸価Av=9mgKOH/g、水酸基価OHv=25mgKOH/g)
・極性樹脂C1・・・・・2.00部
(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を10%含有するスチレン−2−エチルへキシルアクリレート共重合体、Mp=18000)
上記の混合物を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、上記処方を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、60℃に昇温した。60℃に昇温後、5時間撹拌した。
(調整工程)
重合性単量体組成物2を70℃に昇温し、そこに重合性単量体組成物1を投入後、10分間撹拌した。その後ゆっくりと65℃まで降温した。
(造粒/重合工程)
得られた重合性単量体組成物1及び2の混合物を上記水系分散媒体中に投入した。さらに、重合開始剤である2,2’−アゾビス−イソブチロバレロニトリル8.00部を該水系媒体分散に添加し、撹拌機の回転数を12000rpmに維持しつつ20分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に移して、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。次いで、容器内を温度80℃に昇温して5時間維持した。その後冷却して重合体微粒子分散液を得た。
(洗浄/固液分離/乾燥工程/外添工程)
得られた重合体微粒子分散液に希塩酸を添加してpHを1.4とし、安定化剤Ca3(PO4)2を溶解した。更に、ろ別、洗浄の後、温度40℃で真空乾燥させ、目開き150μmの篩を用いて粗粉を除去し、粒子径を調整してシアントナー粒子を得た。得られたシアントナー粒子100.00部に対して、シリカ微粒子S1を1.60部、別種類のシリカ微粒子(RY200S(アエロジル社製))を0.40部、酸化チタン微粒子1を0.40部、ヘンシェルミキサーにて10分間撹拌させることによって外添し、シアントナー1を得た。このトナー製造例を表3に示す。
(イソシアネートで硬化処理したクリーニングブレード製造例)
先端面長手方向の硬度が65°であるポリウレタンゴムからなるクリーニングブレードの先端面両端部(それぞれ15mmの領域)に、イソシアネート化合物を含有する溶液を塗布した。その後、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂を反応させることでブレード表面に硬化層を形成させた。処理部の硬度は83°であった。先端面の長手方向の硬度は、イソシアネートとポリウレタン樹脂の反応時間を変えることで調整可能である。
(ウレタン樹脂で硬化処理したクリーニングブレードの製造例)
先端面長手方向の硬度が65°であるポリウレタンゴムからなるクリーニングブレードの先端面両端部(それぞれ15mmの領域)に、ウレタン樹脂を塗工することでブレード表面に硬化層を形成させた。処理部の硬度は80°であった。
(中間転写ベルトの製造例)
<基層の作製>
図1及び図5における中間転写ベルトの基層101の作製方法について説明する。ポリエチレンナフタレート樹脂をブロー成形することで、ボトル状成形体を得て、これを超音波カッターにより切断することで、無端状のベルト体を得た。なお、ポリエチレンナフタレート樹脂中には、抵抗調整剤としてカーボンブラックを分散している。このようにして得られた厚さ70μmのポリエチレンナフタレート樹脂ベルトを中間転写ベルト5の基層101とした。
<表層形成用塗工液(紫外線硬化性樹脂組成物)の調製>
紫外線を遮蔽した容器中に、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートを含有するアクリル系紫外線硬化型ハードコート材料であるルシフラール(商品名、日本ペイント社製)を投入した。引き続き、摺動性付与粒子として、粒径200nmのPTFE粒子を添加した。次に、PTFE粒子の分散剤として高分子量のフッ素系グラフトポリマーGF400(商品名、東亞合成社製)とメチルイソブチルケトンを添加して、高速せん断式分散器(ホモジナイザー)で処理することにより、粗分散を行った。
その後、前述の粗分散処理を行った液を、高圧乳化分散器(ナノベータ:吉田機械興業社製)を用いて本分散処理を行った。さらに導電性粒子としてセルナックス(商品名、210IP:日産化学工業社製)に、分散剤として低分子量であるアミンを添加した液を撹拌しながら、前記PTFEの本分散処理が終了した液を滴下し、表層形成用の塗工液を得た。
<表層付与した中間転写ベルトの作製>
中間転写ベルト用の基層101上に、前記紫外線硬化性樹脂組成物を、25℃、相対湿度60%の塗布環境でディップコートした。そして、塗工が終了してから10秒後に塗工環境と同じ場所にある紫外線照射装置(商品名:UE06/81−3、アイグラフィック社製、積算光量:1000mJ/cm2)を用いて紫外線を照射し、表層102を硬化させた。その結果、厚さ3μmの樹脂硬化膜が形成され、この樹脂硬化膜を中間転写ベルト表層102とした。このようにして表層102を有する中間転写ベルト5を作製した。
前述のシアントナー1に関して、以下の〔1〕から〔7〕に関する評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、画像評価に対する画像形成装置としては図1に示すような市販のレーザプリンタであるLBP−9500C(キヤノン製)の改造機を用いた。この評価機の改造点は以下のとおりである。
(1)評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが210mm/secとなるようにした。
(2)評価に用いるカートリッジとして、図1における市販の各色カートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した。その後、図2、3のように改造し、現像ローラとトナー供給ローラがニップ部において同一方向に回転する構成とした。
(3)中間転写ベルトとして、前述のアクリル樹脂コートベルトを用いた。
(4)定着器は、加熱温度を200℃±30℃に制御できるようにソフトウエアを変更した。
シアントナー1を上記改造カートリッジに230g充填し、高温高湿環境(30.0℃、80%RH)下、低温低湿環境(15.0℃、10%RH)下のそれぞれに24時間放置した。次に、転写材としてA4のCS−680(秤量68g/cm2)を用い、印字率が2.0%に調整された画像を出力することで、各環境で10000枚の画出し評価を行なった。10000枚の画出し評価後、高温高湿環境(30.0℃、80%RH)下においては、以下の〔1〕乃至〔3〕の評価項目を行なった。
また、低温低湿環境(15.0℃、10%RH)下においては、10000枚の画出し評価後に以下の〔1〕及び〔4〕、〔5〕の評価項目を行なった。
〔1〕ベタ全域(ベタ黒)画像濃度均一性
転写材としてA4のCS−680(坪量68g/cm2)を用い、ベタ全域画像を連続3枚出力した。得られた画像の1枚目と3枚目において、下記の手順に従って平均濃度(マクベス反射濃度計で測定)を測定した。1枚目の平均濃度に対する3枚目の平均濃度の変化率(%)を算出し、ベタ画像濃度の安定性を評価した。
平均濃度は、得られたベタ全域画像を9つのエリアに分割し、各エリアの略中心の画像濃度の相加平均によって求めた。画像濃度は、「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
以下に判定基準を示す。
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上10%未満
D:10%以上
〔2〕画像カブリ
グロス紙モード(1/3速)で、転写材として、LetterサイズのHP Brochure Paper 200g,Glossy(坪量200g/cm2)を用い、0%印字比率のベタ白画像をプリントアウトした。「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、測定した印字プリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを評価した。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1.0%未満
C:1.0%以上1.5%未満
D:1.5%以上
〔3〕停止スジ
停止スジは、10000枚の画出し評価の際、3000枚に達した段階で1日放置し、その後5枚ハーフトーン画像を印刷し、停止スジのレベルを目視にて以下の基準で判断した。
A:停止スジは未発生
B:極軽微な停止スジが発生している
C:停止スジが軽微に発生しているが実用上問題無いレベル。
D:停止スジが顕著に発生
〔4〕帯電ローラ汚れ
帯電ローラ汚れは、ローラ表面及びハーフトーン画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
A:ローラ表面、画像ともに欠陥は全く認められない。
B:耐久後半、ローラ表面に汚れが若干認められるが、画像には現れない。
C:耐久後半、ローラ表面に汚れが若干認められ、画像にも若干の濃度ムラが生じているが、実用上問題無い。
D:耐久後半、ローラ表面の汚れがひどく、画像にも濃度ムラが生じている。
〔5〕ゴースト
ゴーストは、転写材としてA4のCS−680(坪量68g/cm2)を用い、ベタ白画像を300枚プリントアウト後に、ゴースト判定画像を出力した。ゴースト判定画像とは、転写紙1の上端から5mmの位置に15mm×15mmのベタ画像を15mm間隔で横一列に7個並べ、該ベタ画像から下をトナー載り量0.20mg/cm2のハーフトーン画像としたものである。該画像のハーフトーン部における15mm×15mmのベタ画像に起因する濃度差を以下の基準で目視して判定した。
A:濃淡差が全く認められない。
B:濃淡差が極軽微認められる。実使用上問題ない。
C:濃淡差が軽微に認められる。実使用上ほとんど問題ない。
D:濃淡差が認められる。
〔6〕クリーニング不良
低温低湿環境(15.0℃、10%RH)下における、〔1〕及び〔4〕、〔5〕の評価が終了したカートリッジを、10.0℃、14%RH環境下に24時間放置する。転写材としてA4のCS−680(坪量68g/cm2)を用い、印字率が2.0%に調整された画像を300枚出力した。その後、一次転写電流を流さずに、ベタ黒画像を1枚出力した。次に、一次転写電流を適正値に戻した後に、ベタ白画像を連続して10枚出力した。得られた画像を目視で確認し、クリーニング性を評価した。以下に判定基準を示す。
A:10枚とも良好なクリーニング性を示している。
B:8枚目に、クリーニング性の若干劣るものが認められる。
C:5枚目に、クリーニング性の若干劣るものが認められる。
D:1枚目にクリーニング性の大きく劣るものが認められる。
〔7〕ブレードびびり・捲れ
〔6〕の評価終了後、画像を1枚出力したら、10秒間の停止期間をおいてから、次のジョブを開始するという間欠モードで、ベタ白画像を100枚出力した。その際、クリーニングブレードのびびり・捲れを以下の評価項目に従い評価を行った。
A:ブレードのびびり・捲れは発生しない。
B:90枚出力後、感光体の回転開始時及び停止時に、若干びびりが発生した。
C:50枚出力後、感光体の回転開始時及び停止時に、びびりが発生した。
D:ブレード回転時、停止時に、頻繁にびびり・捲れが発生したため実用は難しい。
<実施例2乃至19、実施例21乃至25、比較例1乃至8>
表3に記載の材料を用いるよう変更した以外は、実施例1と同様にシアントナー(2乃至19、21乃至28)を調製した。また、クリーニングブレード、静電潜像担持体も表3に記載のものを使用した。その後、実施例1と同様に評価を行なった。評価結果を表3に示す。
<実施例20>
シアントナー1の製造例における水系分散媒体の調製において、リン酸三ナトリウムを10.00部、塩化カルシウム6部に変更して、微細な難水溶性安定化剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
その後、造粒/重合工程において、撹拌機の回転数を18000rpmに維持しつつ、20分間造粒した。
それ以外は、シアントナー1の製造例と同様にして、シアントナー20を調製した。
調製したシアントナー20を実施例1と同様に評価を行なった。評価結果を表3に示す。
<実施例26>
シアントナー1を以下のマシンを用い評価を行なった。評価に際しては、LBP−9500C(キヤノン製)の改造機を用いた。この評価機の改造点は以下のとおりである。
(1)評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが210mm/secとなるようにした。
(2)評価に用いるカートリッジとして、図1における市販の各色カートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した。その後、シアントナー1を230g充填して評価を行なった。現像ローラとトナー供給ローラは、ニップ部においてカウンター方向に回転する構成である。
(3)中間転写ベルトとして、前述のアクリル樹脂コートベルトを用いた。
(4)定着器は、加熱温度を200℃±30℃に制御できるようにソフトウエアを変更した。評価方法は、実施例1と同様に行なった。評価結果を表3に示す。