本発明者らは、現像室内で長手方向に現像剤が循環する現像装置において、苛酷な環境での厳しいプリントケースにおいても、補給されたトナーを現像ローラーの長手で均一にコートし、搬送方向上流側と下流側で濃度差を生じにくく、且つ、カブリ等の画像弊害が発生し難い現像システムを鋭意検討した。その結果、トナーの嵩密度を一定範囲に制御し、トナーが循環する現像装置内の上流側と下流側で現像室の断面積が異なる構成をとることで上記目的が達成できることを突き止めた。
具体的な現像装置構成は、図1に示すように、現像剤を担持し現像を行うための現像剤担持体1と、現像剤担持体表面に当接され現像剤を規制するための現像剤規制部材と、現像剤担持体に現像剤を供給するための現像剤供給部材2と、現像剤担持体の長手方向に現像剤を搬送し現像剤供給部材の回転中心軸よりも上側に設けられた現像剤搬送手段3と、現像剤担持体に供給するための現像剤を収納する内壁で構成された現像室と、現像室に現像剤を供給する撹拌室とがあり、現像室が撹拌室からの現像剤の入口と出口を持つ現像装置の現像室の長手方向に垂直な断面において、
現像剤規制部材裏面と現像剤担持体外周と現像剤供給部材外周と現像剤搬送部材の現像剤搬送領域を除く現像室内壁面とによって囲まれた領域の供給部材回転中心軸より鉛直上方に囲まれた断面積において、現像剤搬送手段によって生じる現像剤の搬送方向上流側の断面積S1と搬送方向下流側の断面積S2の関係が、S1<S2を満たすことを特徴とするものである。
上記構成にすることによって、供給ローラの現像ローラ当接ニップ部上流側にて発生する供給ローラからの上方向への吹き出しの大きさを搬送方向にそって変えることができる。具体的には、図3で示すように、補給トナーの存在比率が高くなる搬送方向上流側の断面積を小さくすることで供給ローラからの吹き出しの大きさを強め、トナー供給の流れを緩和することができる。
また補給トナーの存在比率が低くなる搬送方向下流側の断面積を大きくすることで供給ローラからの吹き出しの大きさを弱め、トナー供給をし易くする。その結果、現像ローラ全面に現像室入口から供給されたトナーを長手均一にコートさせることができるため、濃度ムラを改善することができると同時に、安定したトナー循環を生み出すことができる。
上記構成をとることで、苛酷な環境やプリントケースにおいても、長手方向における濃度差の発生を抑制することができる。そして、高印字出力の多いグラフィックパターンやフォト画質にも対応した一成分補給系の現像システムとして、安定した画質を維持することができるようになった。
本発明に係る画像形成方法および現像装置ユニットに関しての実施形態を図面に則して説明する。以下に説明する実施形態は、例示的に本発明を説明するものであって、以下に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定の記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定するものではない。
図6は、本発明に係る画像形成方法を実施するための画像形成装置の概略断面図、図1は、本発明に従う現像装置の概略構成とその近傍を示したものである。
画像形成装置の概略中心部には、像担持体としての例えばドラム状とされる電子写真感光体(以下、単に「感光体」と呼ぶ。)、即ち、感光ドラム29が矢印方向に回転可能に支持されており、画像形成動作が開始すると、感光ドラム29の表面を帯電手段31が一様に帯電させ、その後この表面に、露光手段としての例えばレーザー照射手段32が画像情報に対応した露光を行い、該表面に静電潜像が形成する。この静電潜像はその後、現像装置11によって感光ドラム29に供給される現像剤により可視化され、所謂、トナー像が形成する。次いでこのトナー像は、転写手段としての例えば転写ローラ33によって感光ドラム29と転写ローラ33との間に形成される転写電界により静電的に記録材P上に転写される。その後、記録材P上の未定着トナー像は定着装置34によって熱及び圧力によって記録材P上に永久定着される。また、トナー像の転写を終了した感光ドラム29の表面に残留する転写残トナーなどは、例えば、ブレード状のクリーニング部材を備えるクリーニング装置30により除去され、感光ドラム29は引き続き画像形成を行える状態となる。本発明で用いられる画像形成装置のプロセスピード、即ち、感光ドラム29の周速は40mm/secの低速から300mm/secの高速に至るまであらゆるプロセススピードに対応するが、100mm/secから200mm/secの範囲内が、連動する現像周速及びトナーの搬送スピードを考慮するとトナーの循環性及び耐久性に優れる。これに対する現像ローラ1の周速は、ドラム周速に対して1.0乃至2.0倍のスピードが適しており、1.3乃至1.7倍の周速比が画質と耐久性を満たす上で最も適した範囲である。
本発明の一実施形態を示す現像装置を示す図1は、従来と同様の部品に関しては図8と同じ番号を用いている。現像容器12は、感光ドラム18と対向する側の一部が開口しており、この開口部から一部露出するように現像剤担持体としての現像ローラ1が矢印方向に回転可能に現像容器12に支持されている。現像ローラ1は、カーボンなどの導電剤を分散させた体積抵抗率が102Ωcm乃至1010Ωcmのシリコーン、ウレタンなどの低硬度のゴム材或は発泡体、及びその組み合わせにより構成された外径20mmの半導電性弾性体ローラである。現像ローラ1は弾性体を含み所定の当接圧にて感光ドラム29に当接している。現像剤供給及び回収手段としての供給ローラ2は弾性体を含む弾性ローラであり、外径16mmの絶縁性スポンジローラを現像ローラ1に当接して配置される。現像容器12には、現像ローラ1に加圧するように現像剤層圧規制部材としてのブレード3が設けられている。ブレード3はSUSで作製される板ばねであり、所定の当接圧にて現像ローラ1と当接している。現像ローラ1上に供給されたトナーは、このブレード3によって層厚規制と電荷付与されて、現像ローラ1上にトナーの薄層が形成され、現像領域へと供給される。また、現像には寄与せず、現像ローラ1上に更に担持されたままのトナーは、供給ローラ2による摺擦で現像ローラ1上から剥ぎ取られる。その一部は新たに供給ローラ2上に供給されたトナーと共に再び供給ローラ2によって現像ローラ1上へと供給され、残りは現像容器12内へと戻される。尚、本実施の形態においては、供給ローラ2は現像剤供給及び回収手段として2つの機能を兼ねている。
トナー補給機構であるトナーホッパー8内には、トナーホッパー8内のトナーを解す為の撹拌部材7と、トナーホッパー8から撹拌室にトナー(通常、非磁性一成分トナー)を補給するための補給ローラが開口6上に配置されている。現像装置からの補給指令により、所定駆動時間当たり一定量のトナーを撹拌室に補給して、現像容器12内のトナー量を常に一定量に保つように動作している。補給指令の方式としては、現像容器内にピエゾセンサーを設けてトナーの有無を知る方式、光検知方式、インダクタンス検知方式、画像の印字比率から消費されたトナー量を計算する方式などがある。本実施例では撹拌室に光検知方式のトナー量センサーを設け、不足となる量のトナーを補給機構から補給するものとした。また、光検知方式のトナー量センサー自体は一般に広く用いられているため、不図示とした。
現像装置11は、仕切り壁によって上下2つの部屋に分けられ、現像担持体と撹拌搬送部材を含む下側を現像室10、撹拌部材5を有する上側を撹拌室9と称する。現像室10と撹拌室9は、両端部のみに設けられた開口によってのみ繋がっている。現像室10内には長手搬送部材であるスクリュー4が配置されている。スクリュー4は、現像室内のトナーを長手方向に搬送して、入口19の開口から落ちてきたトナーを現像室10の長手中央方面に送り出すと共に、現像室10内のトナーを出口20の開口まで搬送して、再び撹拌室9に送り出す役目を行う。
撹拌室9内には複数の羽根を設けた撹拌部材5が設けてあり、回転することによって羽根が交互にトナーを掻き揚げて現像剤を撹拌する。これらのスクリュー4と撹拌部材5は、不図示のギアによって現像ローラ1やスポンジローラ2と接続されており、画像形成時すなわち現像ローラが回転している間は共に回転運動を行い、画像形成終了と共に回転が停止する構成となっている。
本発明における現像室10は、図1に示すように搬送方向上流側の現像室の断面と搬送方向下流側の現像室の断面とが異なる形状になっており、現像室内のトナーが充填される容積が異なっている。
図1の斜線部で示すように、供給ローラの回転中心軸より鉛直上方の領域でスクリューの搬送領域を除く現像容器12によって囲まれた断面積をSと定義する。スクリューによる搬送領域とは、スクリュー形状の最上点と最下点に囲まれた領域である。現像室の断面積を変化させる方法としては、従来の現像室に図2に示す形状の現像室埋めブロックを新設する方法や予め金型により現像室のフレームを設計する方法等がある。本実施の形態においては、図1のaに示すように搬送方向上流側開始点では供給ローラ2と現像容器12に新設した埋めブロックとの最近接距離を3mmとし、搬送方向下流に行くに従い該最近接距離が連続的に変化する。また、図1のbに示すように搬送方向中央部では該最近接距離が5mm、図1のcに示すように搬送方向下流側最終点では該最近接距離が7mmになるように連続的に変化している。図1のaの斜線で示す搬送方向上流側断面積S1は、図1のcの斜線で示す搬送方向下流側断面積S3よりも小さくなっており、S1からS3へは連続的に変化している。
次に現像装置11内のトナー循環を、図9に示す現像装置11の長手断面図を用いて説明する。現像室10内のトナーはスクリュー4によって長手一方向に搬送され、その圧力Cによって出口20の開口部から撹拌室9に送られる。また、トナー補給機構8から補給されたトナーは、撹拌室9内での撹拌時間をとるために、同じく撹拌室9内の出口20側に補給される。補給されたトナーは撹拌部材5で撹拌されつつ、水平にならされる。この動きを繰り返すによって、補給されたトナーは撹拌室に広がっていく動きDにより、最終的に入口19に到達し、入口19から現像室10内に供給される。
現像室10に供給されたトナーは供給ローラ2にトナーを供給し、供給ローラ2と現像ローラ1を摺擦することで現像ローラ1にトナーを供給する。供給ローラ2において現像ローラ1と摺擦する際、現像ローラ1に塗布されなかった供給ローラに含まれるトナーの一部はスポンジの圧縮作用と回転作用によって、供給ローラ2と現像ローラ1の当接部から供給部材のスポンジ部に含まれているトナーが吹き出される。供給ローラ2を連続回転することで供給ローラ2から吐き出されたトナーの流れが図2に示す上方向の向きEが生じる。また、供給ローラ2を回転することでトナーが静的な状態から動的な状態になる。動的な状態になることで、トナーの流動性が高くなり、それによって嵩密度が低くなり同じ重量でも大きい体積が必要となり現像室10内のトナー剤面が高くなる。この供給ローラ2から吐き出される流れEと供給ローラ2が回転することによるトナー剤面の上昇によって、スクリュー4の搬送領域までトナーが差し掛かり、スクリュー4によって搬送されていく。スクリュー4の搬送量は主にスクリュー形状、スクリュー回転数などによって決定される。
従来の現像室が示すSが長手の各ポイントで一定の場合は、図10に示すようにトナー吹き出しによる流れの向きEの力が長手の各ポイントで同等であった。このため、入口19から供給されたトナーの流れFが搬送方向上流部で大きく、搬送方向下流に行くに従い入口19から供給されたトナーの流れFが徐々に小さくなっていった。
それに対し図1の斜線部S1に示すように搬送方向上流側のSを小さくすることで、図3に示すように供給ローラからの吹き出しによるトナーの上方向流れの向きEの力を大きくすることができる。それによって、トナー供給の流れFを搬送方向上流側で緩和させることができ、トナー供給の流れの向きFが供給ローラに向かう頻度を少なくすることができる。また、搬送方向上流側で補給トナーの存在比率を抑えることができる。このようにある程度搬送方向上流側でトナー供給を規制しても、撹拌室9から現像室へ10のトナー供給入口19に近いため十分なトナー供給が行われる領域であるのでトナーの供給不足になるということはない。
また搬送方向下流側においては断面積Sを大きくすることで、図3に示すように供給ローラ2からの吹き出しによる上流れ方向の向きEが搬送方向上流側に比べて小さくなる。このため、トナー供給の流れFが供給ローラ2に向かう頻度が多くなり、トナーを供給ローラ2に充分に供給できる。また下流側で充分な容積を保つことで、スクリュー4のトナー搬送によるトナーパッキングも生じることはない。
このようにして、搬送方向上流側で供給ローラのトナー吹き出しによる流れEの大きさを大きくすることでトナー供給の流れFを小さくすることができる。また搬送方向下流側にそって供給ローラのトナー吹き出しによる流れEの大きさを徐々に小さくすることでトナーの流れFを大きくしていくことができ、入口19から供給されたトナーを現像ローラ1に長手均一にコートできる。
次に、上記で説明した本発明の画像形成装置を用いたときの、長手方向の濃度差改善効果を具体的に図4を用いて説明する。
図4は、高温高湿環境下において、A4サイズにおける印字率1%の画像を25000枚まで連続耐久し、続いてA4サイズで印字率40%の画像を100枚印字した後に印刷した全黒画像のマクベス反射濃度計による濃度データである。図4のグラフに示すように、断面積Sを搬送方向下流に向かって大きくする構成にすることで、前記供給トナーを現像ローラ1に長手均一にコートさせやすくできる。その結果、搬送方向にそって濃度差の少ないベタ画像を印刷することができる。
このように、搬送方向にそって図1に示すように斜線部の断面積Sを広げていくことで撹拌室9から供給されたトナーが現像室入口19近傍で部分的に大量にコートされるということがなくなる。そして、搬送方向にそってトナー供給を緩和し、現像ローラ全域に入口から供給されたトナーを長手均一にコートすることができ、いかなる環境、プリントケースにおいても濃度ムラを改善することができる。
尚、本発明の実施形態の一例においては、図2に示す形状の現像室埋めブロックを用いた例を記載したが、図5のGに示すような搬送方向中央部までは小さい断面積Sで、中流から下流にかけて大きい断面積Sになるような形状でもよい。また図5のHに示すような供給ローラ2と対向する面が円弧形状でもよい。本発明においては、搬送方向下流に向かって断面積Sが広くなっていく構成であることが重要であり、搬送方向上流側の断面積S1から搬送方向下流側断面積S2にかけて連続的に増加していく構成が、トナーの搬送性がより安定するため最も好ましい構成である。
図7は、複数のプロセスカートリッジを搭載したカラー画像形成装置に、本発明に係る現像装置を用いた時の画像形成装置の例であり、電子写真プロセスを利用したインラインフルカラーレーザープリンタの概略断面図である。
図7に示すカラー画像形成装置は、前述図1で説明した同形態の現像装置11(Y、M、C、K)が、感光ドラム29、帯電ローラ31、クリーナーユニット30と一体的に構成される。また、所定の耐久寿命で画像形成装置に対し交換可能とされたプロセスカートリッジとして構成され、画像形成本体に着脱可能なイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを各収容した4つのプロセスカートリッジを備えている。また、図1と同様のトナーホッパーが、トナーホッパー8(Y、M、C、K)として画像形成装置に交換可能に配されている。各プロセスカートリッジ内の感光ドラム、現像ローラ、帯電ローラ等の構成、動作等は前述図6で説明した画像形成装置と同じ為説明を省略する。
感光ドラム29表面に形成されたトナー像はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのプロセスカートリッジの配置順に従い中間転写体35上に多重形成され、給紙ローラにより搬送される転写材に転写される。次いで不図示の定着装置によって加熱・加圧定着されフルカラー画像となって排出される。
このようなフルカラー画像形成装置においては、多色の画像が一枚の紙に重なるため、濃度ムラやカブリに対して、モノクロ機種よりもはるかに高いレベルが要求される。本発明に記載の現像方法はこのようなフルカラー画像形成装置にも、より好適に用いる事が出来る。
また、これらの構成部品を着脱容易なカートリッジ方式としたことで、これらの消耗部品の交換を容易に行うことができるようになる。従って、画像形成装置のメンテナンス性が格段に向上する。また、カートリッジを交換することで、電子写真の重要な構成部品が新品に交換されるため、常に高品質な画像を保つことができる。
次に、本発明の現像方法に用いられる現像剤(トナー)について説明する。
本発明のトナーは、嵩密度(D1)と静置嵩密度(D2)の関係が、D2/D1=1.22乃至1.42を満たし、D2=0.42乃至0.55であることが必須である。本発明の現像方法で用いられる現像装置は、現像供給ローラからのトナーの吹き出しと、トナーの循環経路における上流側の容積を狭く下流側の容積を広くすることを利用して、長手方向における耐久トナーと補給トナーの混合状態が均一になるようにコントロールして濃度の均一化を図っている。本発明者らは画像品質をより高めるために、あらゆるテストケースにおいて上記現像方式を検討した。その結果、低温低湿環境や高温高湿環境といった苛酷な環境下で、低印字画像を間欠で耐久し続けた場合、ダメージを受けた耐久トナーが循環サイクルを繰り返すことで現像容器内に蓄積されていく。そして、その状態において高印字出力が続くと新旧剤の撹拌不良が発生し、物性差を有するトナーが引き起こすカブリや濃度変動といった画像品質問題が新たに生じることが分かった。
上記問題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、上記長手方向に容積傾斜させた現像容器に対して、トナーの静的及び動的密度特性を高度に制御することで、耐久トナーと補給トナーの物性差の広がりを抑制する。そして、新旧トナーの混ざり方を高効率化することができ、耐久を通じて好適な循環が達成され、長手濃度の安定したグラフィック印刷にも耐え得る高画質の一成分現像補給システムを完成させるに至った。
本発明のトナーのD1及びD2は、以下の測定手順に従って求めた嵩密度で定義される。
1)500mlのメスシリンダーによくかき混ぜた100gのトナーを投入して、サランラップ(旭化成ライフ&リビング社製)等で蓋をする。
2)メスシリンダーを逆さまに倒して元に戻す動作を15回繰り返し、15回目にメスシリンダーを置いた時点を0秒とする。徐々に沈んでいくトナーの沈降面を目視で読み取り、60秒時のトナーの剤面から読み取った密度をD1(g/cm3)、600秒時のトナーの剤面から読み取った密度をD2(g/cm3)として定義する。
D1を振とうから60秒時の嵩密度と定義する理由は、本発明の現像室と撹拌室をトナーが循環し、且つ、現像供給ローラからのトナーの吹き出しと、現像室内の体積が循環方向の上流側が狭く下流側にいくに従って広くなることを利用する現像方法においては、流動するトナーの嵩密度が重要なファクターを示し、画像形成時に相当する動的な粉体密度特性と60秒時のトナー嵩密度が概ね相関することがわかったからである。
また、振とうから600秒時の十分に締まりきったトナーの静置嵩密度D2は、複写機やプリンターの未使用状態にあたる現像容器内で長期間静置した状態のトナー密度に相当する。
起動と停止を繰り返す現像装置は、D2/D1を1.22乃至1.44の密度比におさめることで新旧トナーが効率的に混ざり合い、且つ、D2を0.42乃至0.55に制御することでトナー搬送が安定した理想的な循環サイクルが形成される。このため、長期にわたって現像領域に安定した物性のトナーを供給することができ、ひいては長寿命の安定画質が達成できるのである。
D2/D1が1.22に満たない現像剤は、60秒で既に静置密度に近い状態まで締まった粉体状態を示す。本発明の現像機構成においては、現像に供さなかったトナーは現像供給ローラが回収して吹き出され、搬送スクリューにより一旦撹拌室に戻されたところにフレッシュな供給トナーとの混合ポイントを有する。この新旧トナーの混合ポイントにおいて、D2/D1が1.22に満たない現像剤は新旧トナーの嵩密度差が無いために、次に現像室に供給されるまでの間、撹拌室内で新旧トナーが十分に混合され難い。
特に低印字モードで耐久が進んだところで高印字の指令がきたケースにおいては、過補給になりがちなフレッシュな補給トナーと耐久トナーの混合が不十分になりやすく、カブリや濃度勾配等の画像不良を引き起こす。また、低印字画像が間欠で出力され続けると、長期レンジで見た場合、新旧トナーの入れ替わり不良の蓄積から耐久寿命が短くなる。
一方D2/D1が1.42を超える現像剤は、現像剤供給ローラからの吹きだし等により空気と混合して嵩高くなった場合、経過時間に対して嵩密度の変化が大きい粉体特性を示す。一成分現像剤の密度特性においてこの様に変化に富む現像剤は、帯電量或いは凝集度が過度に高く、時間と共にリークしていく特性を示す。この様な現像剤は温度や湿度等環境による変化量も大きく、帯電性や凝集性が不安定になり易い。
特に低温低湿環境下においては、耐久が進んだところでフレッシュなトナーが補給されると新旧トナーの帯電量や嵩密度の開きが最も大きくなるため、新旧トナーがなかなか混ざらない現象を生じる。このような新旧トナーが十分に混ざっていない状態の現像剤が現像領域に到達すると、カブリの悪化や濃度勾配を生じる。
尚、本発明のトナーのD2/D1は1.22乃至1.42を満たし、且つ、D2が0.42乃至0.55の範囲を同時に満たすことが必須である。
D2が0.42に満たないと、トナーの搬送スピードが速くなり、新旧トナーの混合不良が起こり易く、ハーフトーン画像のがさつきや、濃度不均一化といった不良画像の発生頻度が高まる。特に高温高湿環境下において耐久を繰り返した場合、嵩密度の薄い現像剤は摩擦や圧力等のストレスを受けやすく、カブリや部材融着を引き起こす恐れがある。
一方、D2が0.55を超えると、トナーの撹拌や搬送シェアが大きくなり、トナーの劣化が促進されて画像品質の低下が早まり耐久寿命が短くなる。また、現像室や撹拌室で部分的なパッキングを発生するケースもあり、スジやボタといった致命的な画像欠陥に発展する恐れがある。
本発明におけるトナーのD1及びD2を制御するには、トナー同士の凝集性を安定にコントロールする必要があり、トナー粒子の付着性を決定付ける離型剤の存在状態や、トナーの帯電特性、及び外添剤の種類と被覆状態を制御することで達成できる。
特に効果がある方法は、トナー粒子の製法を工夫することで離型剤の表面存在量を抑制する方法と、外添工程を工夫することによるトナーの帯電量分布をシャープにする方法が挙げられる。
離型剤の表面存在量を抑制する方法としては、懸濁重合法でトナー粒子を製造する方法が離型剤の内包化に優れていて好ましい。乾燥工程でトナー粒子にかかる熱やシェア等のダメージを極力抑える方法や、重合工程後のスラリーから上澄み液を除去する工程を加えることで、より離型剤のトナー表面存在量を抑えることができ、本発明の嵩密度を安定に制御する上で好ましい。
外添工程においてトナーの帯電量分布を均一でシャープにする工夫としては、撹拌の途中のトナー粒子が十分ばらけた状態で外添剤を投入し、トナー粒子に均一に外添剤を付着させることで帯電反転成分を抑制し、静電凝集を防止する方法や、シリカ以外の金属酸化物を添加して、帯電リークサイトを設けてチャージアップを抑制させる方法等が、効果があり好ましい。
本発明のトナーの移送性指数は、0.5乃至10.0であることが好ましい。
移送性指数は、トナー同士の凝集特性や摩擦特性の違いによって変化する、トナーと壁面の干渉特性をあらわす指標であり、本発明においてはトナーの密度特性と合わせて現像容器内のトナーの循環特性を決定付ける重要なパラメーターである。
本発明のトナーの移送性指数が0.5に満たない場合、現像装置内のトナーの搬送性が悪いためにデットスペースに劣化剤が蓄積し易く、現像弊害を引き起こす恐れがあり好ましくない。一方、移送性指数が10.0を超える場合、トナー同士の凝集性が高く、この様なトナーは本発明の現像方法においては繰り返しのシェアに耐えきれず、耐久寿命に満たない恐れがある。
尚、本発明における移送性指数を測定する方法としては、図12に示すパーツフィーダー(コニカミノルタ製)により測定されるものであり、一定の振動を与えた状態におけるトナーの移動性を指数化したものである。この移送性指数はトナーの静止時における静嵩密度、安息角などによって評価される流動性とは異なるものである。
具体的には、パーツフィーダーは、特定の振動を発生させるための駆動源40および、この駆動源40の上方において支持された円筒状のボール41により構成されている。ボール41にはその内周壁面に沿って、その底面と上端縁とを連絡する螺旋状の坂路42が形成されている。ここで、坂路42はその上端部43がボール41の上端縁と同じ高さ位置において当該ボール41の側壁から径方向外方に突出した態様で配設されている。図1において44はボール41の中心軸、45は坂路42の上端部43の下方に設けられた受け皿、46は受け皿に接続された計量手段である。
このパーツフィーダーにおいては、駆動源40により供給される回転動力をボール41に伝達されることによりボール41を全体的に振動させる振動運動に変換し、上下運動の戻り位置を角度を持たせて配設されたバネの作用により変更させることにより、ボール41内に位置されたトナーが坂路42に沿って上方に移送され、坂路42の上端部43より受け皿45に落下する。
こうして、本発明におけるトナーの移送性指数の測定は以下のように行う。まず、ボール41の内部の中心軸E周辺にトナー1gを投入するとともに、駆動源40を周波数134.0乃至136.0Hz、振幅0.59乃至0.61mmの条件で駆動させる。次に、トナーを坂路Eに沿って上方に移動し受け皿に到達させて、計量手段46によって計量された受け皿に到達したトナーの量が300mg乃至700mgとなったときの、前記駆動源40の駆動を開始したときからの時間を測定し、下記一般式利用して算出することができる。
(移送性指数)=(700−300)mg/(T700−T300)秒
上記一般式においてT300は受け皿に300mgのトナーを移送するために要した時間を示し、T700は受け皿に700mgのトナーを移送するために要した時間を示す。
本発明のトナーの移送性指数をコントロールする方法は、トナー粒子表面の離経剤の存在量を制御したり、トナーの形状や外添剤の処方によって制御することが可能である。
本発明のトナーは、下記に示す測定方法における帯電特性の変動を一定範囲内に抑えることで、より長期にわたって画像品質を維持することができる。
本発明のトナーをキャリア(後述の日本画像学会標準キャリア)と3質量%の比率で混合し、120秒間振とうした時の帯電量を(Q1)、(Q1)測定後に更にトナーを追加し、キャリアとの混合比を4質量%に調整して60秒間振とうした時の帯電量を(Q2)とした時、Q2/Q1が0.8乃至1.2に制御することが好ましい。
Q2/Q1が0.8より小さいと、高温高湿環境下における耐久後半でカブリが発生し易く好ましくない。
一方、Q2/Q1が1.2より大きいと、低温低湿環境下における耐久後半に耐久トナーと補給トナーの帯電量差が大きくなり易く、現像領域のコートトナーが不均一な帯電量分布を示すためにカブリが発生し易く好ましくない。
尚、トナーの帯電量の測定は、日本画像学会標準キャリアN−01を用い、50ml容量のポリエチレン製の瓶(容器内径約35mm、高さ約75mm)にキャリア19.40gとトナー0.60gを秤量して、温度23℃/相対湿度50%の環境下で24時間放置したものを測定サンプルとする。振とう機Model−YS−8D(株式会社ヤヨイ製)を用いてサンプル瓶が水平になるようにセットし、アーム長140mm、振り角度40°、150rpmの振とう強度で120秒時のブローオフ摩擦帯電量を(Q1)と定義する。また、(Q1)測定後のサンプル瓶にキャリアとの混合比が4質量%になるように更にトナーを追加して、前記同様の振とう条件で60秒間振とうした時の帯電量を(Q2)と定義する。
なお、ブローオフ摩擦帯電量の測定には図13に示す装置を用い、下記手順に従って測定した。
底に500メッシュのスクリーン52のある金属製の測定容器51(内径40mm、高さ35mm)に、上記振とう機により振とうさせた測定サンプル0.3gを投入し、金属製のフタ53をする。この時の測定容器51全体の質量を秤りW1gとする。次に吸引機(測定容器51と接する部分は少なくとも絶縁体)に於て、吸引口56から吸引し風量調節弁55を調節して真空計54の圧力を2kPaとする。この状態で2分間吸引を行ないトナーを吸引除去する。この時の電位計58の電位をV(ボルト)とする。ここで57はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また吸引後の測定機全体の質量を秤りW2(g)とする。このサンプルの摩擦帯電量(μC/g又はmC/kg)は、下式の如く計算される。
摩擦帯電量=CV/(W1−W2)
トナーの帯電量の制御は、トナー粒子に添加する帯電制御剤の種類や量、及び存在状態や、外添剤の種類や添加量により制御することができる。
本発明のトナーの重量平均粒径は、5.0μm乃至12.0μm、平均円形度が0.940乃至0.995であることが好ましい。
重量平均粒径が5.0μmに満たないと、環境特性による影響を受けやすく、濃度安定性や耐久画像品質に劣り好ましくない。一方、重量平均粒径が12.0μmを超えるとドット再現性やカブリの悪化に繋がり好ましくない。
本発明のトナーの平均円形度が0.940より小さい場合、耐久を通してのトナーの循環性が安定しない恐れがあるため好ましくない。一方、トナーの平均円形度が0.995を超えると、特に低温低湿環境下において耐久が進んだところで新旧トナーの帯電量差が大きくなる恐れがあり、高印字画像の指令がきたところでカブリの発生頻度が高くなり好ましくない。
尚、トナーの粒度分布や平均円形度の制御には、従来公知のトナー粒子の製造方法や分級操作、及び球形化処理等を利用することにより所望の値に制御することができる。
本発明のトナーの重量平均粒径及び数平均粒径はコールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能である。具体的には、下記のように測定できる。コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調整する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定手順は以下の通りである。前記電解水溶液を100乃至150ml加え、更に測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから、本発明に係わる所の体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)及び個数分布から求めた個数基準の平均粒径、すなわち個数平均粒径(D1)を求める。
本発明におけるトナーの円相当径、円形度及びそれらの頻度分布とは、トナー粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明ではフロー式粒子像測定装置「FPIA−3000型」(東亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
本発明における円形度はトナーの凹凸の度合いを示す指標であり、トナーが完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
本発明において、トナーの個数基準の粒径頻度分布の平均値を意味する円相当個数平均径D1(μm)と粒径標準偏差SDdは、粒度分布の分割点iでの粒径(中心値)をdi、頻度をfiとすると次式から算出される。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として5φのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。
トナーの形状測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000乃至1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、トナーの円相当径や円形度頻度分布等を求める。
本発明のトナーは、トナーを構成する結着樹脂100質量部に対して3質量部乃至20質量部の離型剤を含有することが好ましい。トナー中への離型剤の添加は元来定着工程の機能性付与が目的である。しかし、本発明においては定着工程の機能性付与に加えて、トナーの搬送性及び循環特性をコントロールする機能も兼ね備える。本発明者らの検討によると、トナー粒子に離型剤を添加する方法が、最もトナー表面の滑り性や凝集性を大きく変化させることができることがわかった。従って、トナー粒子中の離型剤の存在状態を制御することで、本発明に好適な搬送性及び循環性を達成することができる。
離型剤の添加量が3質量部に満たない場合、凝集性や搬送性の粒子挙動を制御することが難しくなる。一方、離型剤の添加量が20質量部を超えるとトナー粒子中における離型剤の存在状態が制御できず、トナー粒子の表面に離型剤が多く存在することによって凝集性が高まり素早い摩擦帯電が阻害される。このことから、高温高湿環境下におけるカブリが悪化し好ましくない。
なお、離型剤の示差熱分析における吸熱ピークは50℃乃至120℃であるものが、定着性と凝集特性を制御する上で好ましく、より好ましい範囲は55℃乃至100℃、更に好ましい範囲は60℃乃至90℃である。
また、本発明の現像剤は、定着性と凝集性および帯電性をバランス良く制御する上で、異なる融点を有する2種類以上の離型剤を含有することがより好ましい。
また、本発明においては示差熱分析での離型剤に相当する吸熱ピークの半値幅が8℃以下、さらには5℃以下であるものがより好ましい。半値幅が8℃を超えると、離型剤に含まれる低分子量成分が、環境変動や現像装置内で受けるストレスによりトナー粒子表面に移行し易いため、帯電量の著しい低下や凝集性が異常に高まることがあり、画質の低下に繋がるため好ましくない。
なお、ここでいう吸熱ピークの半値幅とは、吸熱ピークにおけるベースラインからピークの高さの2分の1の吸熱チャートの温度幅である。
本発明に係わるトナーに使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などである。これらの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス等が挙げられる。
ワックス成分の最大吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−82」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子中の離型剤の存在状態を制御するには、離型剤の添加工程における樹脂中への分散状態を工夫する方法や、分散助剤を添加する方法等が挙げられる。また、トナー化した後の乾燥工程や熱処理工程において温度制御することによりトナー表面における離型剤の存在状態を変化させることができる。
特に本発明のトナーを懸濁重合法により製造する場合、重合工程における重合温度及び重合時間を制御することで、内部に封じられるべき離型剤を相分離により析出させ、内包化を促進させることができる。また、蒸留工程の制御で離型剤の表面存在量を増やすことや、重合反応終了時に一気に冷却することで離型剤の表面への成長をくい止めることもでき、離型剤の存在状態を制御するうえで好ましい。
本発明のトナーは、平均一次粒径が5nm乃至40nmのシリカ微粒子を1.0乃至2.0質量部含有し、トナーのBET比表面積が1.5乃至3.0m2/gであることが好ましい。平均一次粒径が5nmに満たないシリカ微粒子を添加した場合、耐久を繰り返すことでシリカ微粒子がトナー粒子に埋め込まれ易く、トナー劣化に伴う画質の劣化が促進されるため好ましくない。一方、平均一次粒子が40nmより大きいシリカ微粒子を添加した場合、耐久に伴うシリカ微粒子の脱離量が多くなる傾向があるため、耐久後半に耐久トナーと補給トナーの物性差が大きくなり易く、画質劣化に繋がり好ましくない。
本発明のトナーのBET比表面積が1.5m2/gに満たないと、トナー粒子表面を被覆する外添剤等の量が少なく、耐久性に乏しく好ましくない。一方、3.0m2/gより大きいと、耐久に伴うトナーの物性変化量が大きくなる傾向があり、画像弊害の発生頻度が高まるため好ましくない。
シリカ微粒子の例として挙げられるのは、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
またシリカ微粒子は、疎水化などの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい。
シリカ微粒子の疎水化処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
なおシリカ微粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によってSi元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー粒子表面に付着或いは遊離して存在しているシリカ微粒子の一次粒子を100個以上測定し、個数平均径を求めることで測定できる。
また、シリカ微粒子の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
トナーのBET比表面積の測定は、脱ガス装置バキュプレップ061(マイクロメソティック社製)、BET測定装置ジェミニ2375(マイクロメソティック社製)等公知の装置を用いて行う。本発明におけるBET比表面積は、多点法BET比表面積の値である。具体的には、以下のような手順で行う。
空のサンプルセルの重量を測定した後、測定試料を0.01乃至0.002gの間に入るように充填する。さらに、脱ガス装置に、試料が充填されたサンプルセルをセットし、室温で3時間脱ガスを行う。脱ガス終了後、サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から試料の正確な質量を算出する。次に、BET測定装置のバランスポートおよび分析ポートに空のサンプルセルをセットする。所定の位置に液体窒素の入ったデュワー瓶をセットし、飽和蒸気圧(P0)測定コマンドにより、P0を測定する。P0測定終了後、分析ポートに脱ガス調製されたサンプルセルをセットし、サンプル質量およびP0を入力後、BET測定コマンドにより測定を開始する。後は自動でBET比表面積が算出される。
本発明のトナーは、長期にわたり安定した画像特性を得るためには荷電制御剤を用いる事が好ましい。
本発明の更に好ましい形態は、長期にわたって安定した帯電能力を発揮できるように制御するために、荷電制御剤と荷電制御樹脂を含有することが望ましい。
荷電制御剤は帯電の立ち上がり性に優れた特性を有しており、他方、荷電制御樹脂は一定の帯電量を保持できかつ耐久性および環境安定性に優れた特性を有しているので、これらを併用することで、帯電量を所望の範囲内に制御し易くなる。
また、現像剤の帯電量の制御と、静電凝集力の制御は密接に関係しているため、本発明におけるトナーの静的及び動的嵩密度を制御する上でも重要なファクターである。
現像剤を負帯電に制御する荷電制御剤としては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等がある。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン等が挙げられる。これらを単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
現像剤を正帯電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類等が挙げられる。これらを単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
なお荷電制御剤の使用量は、用いる荷電制御剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部当たり0.01乃至20質量部であることが好ましく、0.1乃至10質量部であることがより好ましい。荷電制御剤は、トナー粒子に配合(内添)しても良いし、又はトナー粒子と混合(外添)しても良い。
現像剤を負帯電性に制御する荷電制御樹脂としては、側鎖にスルホン酸基を有する高分子型化合物等が挙げられ、特にスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは4質量%以上含有し、且つガラス転移温度(Tg)が45乃至90℃のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる高分子型化合物を用いた場合、帯電特性および凝集特性を好適に制御し易く特に好ましい。
上記のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、下記一般式(1)で表せるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
[上記一般式(1)中、R
1は水素原子、又はメチル基を示し、R
2とR
3は、それぞれ水素原子、C1乃至C10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシ基を示し、nは1乃至10の整数を示す。]
現像剤を正帯電性に制御する荷電制御樹脂としては、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物等が挙げられる。
これらの荷電制御樹脂は、トナー粒子中に結着樹脂100質量部に対して0.05乃至20質量部、より好ましくは0.1乃至10質量部含有させることにより、所望の帯電量および凝集性が得られる。
本発明のトナー粒子は重合法によって得られる粒子であるのが、均一な球形化及び多機能化を達成する上で好ましい。本発明に係わるトナーは、粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものであり、本発明の好ましい要件である平均円形度が0.940以上という物性を得るためには機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行うことが必要となる。
トナーの重合法としては、直接重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化会合重合法、シード重合法等が挙げられるが、これらの中では、粒径と粒子形状のバランスのとりやすさという点で、特に懸濁重合法により製造することが好ましい。この懸濁重合法においては重合性単量体および着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後、重合トナー)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度の高いトナーが得られやすく、さらにこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるため、高い現像性と転写性を有している。
本発明のトナー粒子には、着色力を付与するために着色剤を含有してもよい。本発明に好ましく用いられる着色剤としての有機顔料又は有機染料としては以下のものが挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66等が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254等が挙げられる。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合した状態、さらには固溶体の状態で用いることができる。前記着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナーへの分散性の点から選択される。前記着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたもの等が用いられる。
黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、結着樹脂100質量部に対し30乃至200質量部が添加される。
本発明においては重合法を用いてトナー粒子を得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系を表面処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体系に添加する。
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサン等で処理を行っても良い。
次に本発明のトナーの懸濁重合法による製造方法を説明する。
本発明のトナーを懸濁重合法で製造する場合、使用される重合性単量体系を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン・o−メチルスチレン・m−メチルスチレン・p−メチルスチレン・p−メトキシスチレン・p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸n−ブチル・アクリル酸イソブチル・アクリル酸n−プロピル・アクリル酸n−オクチル・アクリル酸ドデシル・アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ステアリル・アクリル酸2−クロルエチル・アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル・メタクリル酸n−プロピル・メタクリル酸n−ブチル・メタクリル酸イソブチル・メタクリル酸n−オクチル・メタクリル酸ドデシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ステアリル・メタクリル酸フェニル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル・メタクリロニトリル・アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
これらの単量体は単独、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいはほかの単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明に係わる重合トナーの製造においては、単量体系に樹脂を添加して重合しても良い。
例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、グリシジル基、ニトリル基等、親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等、共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体、ポリエーテル、ポリイミン等重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させると、前述のワックス成分を相分離させ、より内包化が強力となり、耐オフセット性、耐ブロッキング性、低温定着性の良好なトナーを得ることができる。
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良等を目的として上記以外の樹脂を単量体系中に添加しても良い。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できる。
これら樹脂の添加量としては、単量体100質量部に対し1乃至20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部を超えると重合トナーの物性及び製造安定性のバランスが崩れ好ましくない。
さらに、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることができる。
本発明に係わる重合トナーの製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5乃至30時間であるものを、重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行うと、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明に係わる重合トナーを製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、0.001乃至15質量%である。
本発明に関わる重合トナーを製造する際は、分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;α−メチルスチレンダイマーなどを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常、0.01乃至10質量部、好ましくは0.1乃至5質量部の割合で用いられる。
本発明に関わる重合トナーの製造方法では、一般に上述のトナー組成物、すなわち重合性単量体中に、スルホン酸基を有する重合体、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機によって均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
本発明に係わる重合トナーを製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機あるいは無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2乃至20質量部を単独で使用しても良く、粒度分布を調整する目的で0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90乃至150℃にまで上げることは可能である。重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、無機微粉体を混合し表面に付着させることで、トナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも、望ましい形態の一つである。
本発明のトナーを粉砕法により製造する場合は、公知の方法が用いられる。例えば、結着樹脂、スルホン酸基を有する重合体、離型剤、荷電制御剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶せしめた中に磁性粉体等の他のトナー材料を分散又は溶解せしめ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得、必要に応じて微粉体等を添加混合することによって本発明のトナーを得ることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。本発明に係わる特定の円形度を有するトナーを得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加える処理をすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法や熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法、また、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力・摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
機械的衝撃法を用いる場合においては、処理温度をトナーのガラス転移点Tg付近の温度(Tg±10℃)を加える熱機械的衝撃が、凝集防止や生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、トナーのガラス転移点Tg±5℃の範囲の温度で行うことが、転写効率を向上させるのに特に有効である。
さらにまた、本発明のトナーは、特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用い溶融混合物を空気中に霧化し球状トナーを得る方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合方法又は水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法等を用いトナーを製造する方法でも製造が可能である。
本発明のトナーを粉砕法により製造する場合の結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、パラフィンワックス、カルナバワックスなどが単独或いは混合して使用できる。特に、スチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性や定着性等の点で好ましい。
本発明の現像剤は、嵩密度および帯電量を高度に制御する目的と、トナー粒子の表面をプロテクトして耐久による現像剤の劣化を抑制する目的から、より好ましい形態である5乃至40nmのシリカ微粒子の添加に加えて更に無機微粉体を添加することが好ましい。
本発明で求められる現像剤の嵩密度特性および帯電特性を得るためには、トナー粒子である程度制御する必要があるが、トナー粒子表面を覆う無機微粉体の種類や添加量及び処方によっても高度に制御できる。
本発明のトナーに添加する無機微粉体としては、シリカ,アルミナ,チタニア、ハイドロタルサイト等の複合酸化物などが使用できる。
無機微粉体の平均一次粒子径は、4乃至700nmの任意のものを複数種添加することが機能性付与の観点から一般的であり、トナー粒子全体に対し総量で0.1乃至4質量%添加されていることが嵩密度及び帯電特性を均一に制御できる好ましい使用形態である。
より好ましくは5乃至40nmのメインのシリカ微粒子をトナー粒子100質量部に対して1.0乃至2.0質量部添加し、更に流動性および帯電性をより精密に制御する目的で任意の粒子径を有する他の微粉体を添加することが好ましい。
シリカの例として挙げられるのは、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
特に本発明で重要なパラメーターである嵩密度を調整する目的で、平均一次粒子径が30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の無機又は有機の球状に近い微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。例えばハイドロタルサイト、酸化チタン、アルミナ、球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
また無機微粉体は、疎水化などの処理によって現像剤の帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい。
無機微粉体の疎水化処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
なお無機微粉体の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー粒子表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の一次粒子を100個以上測定し、個数平均径を求めることで測定できる。
また、無機微粉末の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明に用いられる現像剤には、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;ケーキング防止剤;また、逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部である。
(帯電制御樹脂Aの製造例)
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250部、2−ブタノン150部及び2−プロパノール100部、モノマーとしてスチレン83部、アクリル酸2−エチルヘキシル10部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸7部を添加して撹拌しながら還流温度まで加熱した。重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1部を2−ブタノン20部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続し、更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1部を2−ブタノン20部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に5時間撹拌して重合を終了した。さらに、温度を維持したまま脱イオン水を500部添加し、有機層と水層の界面が乱れないように毎分80乃至100回転で2時間撹拌した後に、30分静置し分層した後に、水層を廃棄し有機層に無水硫酸ナトリウムを添加し、脱水した。
次に、重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルを用いて100μm以下に粗粉砕した。得られた含硫黄重合体は重量平均分子量がMw=28000、Tgが約76℃であった。得られた含硫黄重合体を荷電制御樹脂Aとする。
〔トナーの製造例1〕
イオン交換水360部に、0.1M−Na3PO4水溶液440部を投入し、59℃に加温した後、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、12,000rpmにて撹拌した。これに1.0M−CaCl2水溶液36部を添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。更に希塩酸を加え、水系媒体のpHが5.3になるように調整した。
一方、
スチレン 82部
n−ブチルアクリレート 18部
C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
荷電制御樹脂A 1.5部
ボントロンE−88(オリエント化学工業(株)製) 0.5部
飽和ポリエステル 10部
(酸価10mgKOH/g,ピーク分子量11,000,Tg=75℃)
エステルワックス(吸熱ピーク=72℃,半値幅=4℃) 5部
炭化水素ワックス(吸熱ピーク=78℃,半値幅=2℃) 5部
ジビニルベンゼン 0.02部
上記処方を59℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、6000rpmにて均一に溶解・分散した。これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.0部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、内温59℃,N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて12,000rpmで撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、6時間経過時にNaOHを添加してpHを9に調整した後に、昇温速度40℃/hで80℃まで昇温して5時間反応させた。重合反応終了後、減圧下で残存モノマーを留去し、90℃で1時間ホールドした後、降温速度120℃/hで急冷し、そのまま10時間静置した。静置後、上澄み液を固形分濃度が35%になるように除去することで、スラリー中の浮遊物を取り除いた。塩酸を加えてpHを1.2に調整し、3時間撹拌することで燐酸カルシウム塩を溶解した。
この後、ろ過、イオン交換水による水洗、40℃で10時間乾燥を行い、重量平均粒子径が6.5μmのトナー粒子(1)を得た。
このトナー粒子(1)100部と、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が7nmの疎水性シリカ微粉体1.7部をV型混合機V−60((株)徳寿工作所 製)に投入して、回転数26r.p.m.で3分間予備混合を行った。
次に上記予備混合物を図14で示すヘンシェルミキサーFM−75型(三井三池化工機(株)製)に投入し、邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して平行になるように調整して、周速20m/sの条件で2分間混合した。その後、邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速を30m/sにあげて1分間混合した。
続いて、平均一次粒径が400nmのハイドロタルサイト0.08部を系内に投入し、同条件で1分間混合して本発明のトナー(1)とした。
尚、トナー(1)の平均円形度は0.980であった。
表1にトナーの物性値を示す。
〔トナーの製造例2〕
トナーの製造例1において、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体の分散剤濃度を変更し、添加するシリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで処理した平均一次粒子径が35nmの疎水性シリカ微粉体1.1部に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が7.8μm、平均円形度が0.978のトナー(2)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例3〕
トナーの製造例1において、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体の分散剤濃度を変更し、添加するシリカ微粉体の量を1.9部に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が5.2μm、平均円形度が0.983のトナー(3)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例4〕
トナーの製造例1において、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体の分散剤濃度を変更した以外は同様にして、重量平均粒径が13.0μmのトナー粒子(4)を得た。
このトナー粒子(4)100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理した平均一次粒子径が50nmの疎水性シリカ微粉体0.9部と、平均一次粒径が400nmのハイドロタルサイト0.08部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速30m/sの条件で3分間の乾式混合を2回繰り返して、本発明のトナー(4)とした。
尚、トナー(4)の平均円形度は0.975であった。
得られたトナーの物性値を表1に示す。
〔トナーの製造例5〕
トナーの製造例4において、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体の分散剤濃度を変更し、添加するシリカ微粉体の量を2.2部に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が5.5μm、平均円形度が0.987のトナー(5)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例6〕
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比80/20) 80部
(Mn=24300 Mw/Mn=3.0)
飽和ポリエステル 20部
(酸価10mgKOH/g,ピーク分子量11,000,Tg=75℃)
ボントロンE−88(オリエント化学工業(株)製) 3部
C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
エステルワックス(吸熱ピーク=72℃,半値幅=4℃) 5部
上記材料をブレンダーにて混合し、110℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級して重量平均粒径6.5μmのトナー粒子(6)を得た。
次に、得られたトナー粒子(6)100部と、シリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が12nmの疎水性シリカ微粉体1.7部をV型混合機V−60((株)徳寿工作所 製)に投入して、回転数26r.p.m.で3分間予備混合を行った。
次に上記予備混合物をヘンシェルミキサーに投入し、邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して平行になるように調整して、周速20m/sの条件で2分間混合した。その後、邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速を30m/sにあげて1分間混合した。
続いて、平均一次粒径が300nmのアルミナAA03(住友化学工業(株)製)0.08部を系内に投入し、同条件で1分間混合して本発明のトナー(6)とした。
尚、トナー(6)の平均円形度は0.930であった。
表1にトナーの物性値を示す。
〔トナーの製造例7〕
トナーの製造例1において、90℃で1時間のホールド行程を、95℃で3時間に変更し、外添工程において添加するハイドロタルサイトを平均一次粒子径が300nmのアルミナAA03(住友化学工業(株)製)に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μm、平均円形度が0.997のトナー(7)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例8〕
トナーの製造例1において、エステルワックスの添加量を4部に変更し、炭化水素ワックスを添加せず、外添工程で添加するハイドロタルサイトを平均一次粒子径が270nmの酸化チタンに変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μm、平均円形度が0.983のトナー(8)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例9〕
トナーの製造例1において、エステルワックスの添加量を9部に変更し、炭化水素ワックスの添加量を11部に変更し、外添工程で添加するハイドロタルサイトを平均一次粒子径が270nmの酸化チタンに変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μm、平均円形度が0.975のトナー(9)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例10〕
トナーの製造例1において、エステルワックスを添加せず、炭化水素ワックスの添加量を2部に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μm、平均円形度が0.985のトナー(10)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例11〕
トナーの製造例1において、エステルワックスの添加量を10部に、炭化水素ワックスの添加量を12部に変更し、重合反応終了後に急冷を行わずに10時間静置し、上澄み液除去工程を行わなかった以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μm、平均円形度が0.970のトナー(11)を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
〔トナーの製造例12〕
トナーの製造例1において、重合反応終了後に急冷を行わずに10時間静置し、上澄み液除去工程を行わず、乾燥工程を45℃で5時間の条件に変更した以外は同様にして、重量平均粒子径が6.5μmのトナー粒子(12)を得た。
このトナー粒子(12)100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が7nmの疎水性シリカ微粉体1.7部と、平均一次粒径が400nmのハイドロタルサイト0.08部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速35m/sの条件で3分間の乾式混合を2回繰り返して、トナー(12)を得た。
尚、トナー(12)の平均円形度は0.983であった。
得られたトナーの物性値を表1に示す。
〔トナーの製造例13〕
・トナーバインダーの合成
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧,230℃で8時間反応し、さらに10乃至15mmHgの減圧で5時間反応した後、160℃まで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応した。次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソフォロンジイソシアネート188部と2時間反応を行い、イソシアネート含有プレポリマーIを得た。次いでプレポリマーI267部とイソホロンジアミン14部を50℃で2時間反応させ、重量平均分子量64000のウレア変性ポリエステルIを得た。
上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部を常圧下、230℃で8時間重縮合し、次いで10乃至15mmHgの減圧で5時間反応して、ピーク分子量5000の変性されていないポリエステルAを得た。
ウレア変性ポリエステルI200部と変性されていないポリエステルA800部を酢酸エチル/MEK(1/1)混合溶剤2000部に溶解、混合し、トナーバインダーIの酢酸エチル/MEK溶液を得た。一部減圧乾燥し、トナーバインダーIを単離した。分析の結果Tgは62℃であった。
・トナーの作製
トナーバインダーIの酢酸エチル/MEK溶液 240部
エステルワックス(吸熱ピーク=72℃,半値幅=4℃) 11.2部
C.I.ピグメントブルー15:3 4部
上記原材料をビーカー内で、60℃にてTK式ホモミキサーで12000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させてトナー材料溶液を作製した。
イオン交換水 706部
ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)
294部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.2部
ビーカー内に上記原材料を入れ均一に溶解した。その後60℃に昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに撹拌しながら、上記トナー材料溶液を投入し10分間撹拌した。ついでこの混合液を撹拌棒および温度計付のフラスコに移し、30℃まで昇温して減圧下で溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、重量平均粒径が6.5μmのトナー粒子(13)を得た。
このトナー粒子(13)100部に対し、シリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が10nmの疎水性シリカ微粉体1.9部と、平均一次粒径が30nmの疎水化処理酸化チタン0.3部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速35m/sの条件で7分間の乾式混合を行い、トナー(13)とした。
尚、トナー(13)の平均円形度は0.975であった。
表1にトナーの物性値を示す。
〔トナーの製造例14〕
ポリエステル樹脂(ピーク分子量15,000,Tg=80℃) 100部
C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
低分子量ポリプロピレン(ビスコール660P:三洋化成社製)融点145℃ 5部
ボントロンE−88(オリエント化学工業(株)製) 1.8部
上記成分をバンバリーミキサーにより溶融混練し、冷却後、ジェットミルにより微粉砕を行い、さらに、機械的衝撃力を利用する表面改質装置を用いて球形化処理を行い、球形の粉砕原料を得た。次に、得られた粉砕原料を分級機により分級して重量平均粒径5.5μmのトナー粒子(14)を得た。このトナー粒子(14)100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が12nmの疎水性シリカ微粉体1.7部と、平均一次粒径が30nmの疎水化処理酸化チタン0.3部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速35m/sの条件で7分間の乾式混合を行い、トナー(14)とした。
尚、トナー(14)の平均円形度は0.955であった。
表1にトナーの物性値を示す。
〔トナーの製造例15〕
下記乳化凝集法により、トナー(15)を製造した。
《樹脂粒子分散液1の調製》
・スチレン 90部
・nブチルアクリレート 20部
・アクリル酸 3部
・ドデカンチオール 6部
・四臭化炭素 1部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.5部をイオン交換水140部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム1部を溶解したイオン交換水10部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が0.17μm、ガラス転移点が57℃、重量平均分子量(Mw)が11,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製した。
《樹脂粒子分散液2の調製》
・スチレン 75部
・nブチルアクリレート 25部
・アクリル酸 2部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3部をイオン交換水140部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム0.8部を溶解したイオン交換水10部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が0.1μm、ガラス転移点が61℃、重量平均分子量(Mw)が550,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製した。
《離型剤粒子分散液の調製》
・エステル系ワックス(融点65℃、半値幅5℃) 50部
・アニオン性界面活性剤 5部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が0.5μmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液を調製した。
《着色剤粒子分散液1の調製》
・カーボンブラック 20部
・アニオン性界面活性剤 2部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液1における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
《帯電制御粒子分散液の調製》
・ジ−アルキル−サリチル酸の金属化合物 20部
(帯電制御剤、ボントロンE−88、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 2部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この帯電制御粒子分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる帯電制御粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
<混合液調製>
・樹脂粒子分散液1 250部
・樹脂粒子分散液2 110部
・着色剤粒子分散液1 50部
・離型剤粒子分散液 70部
以上を、撹拌装置,冷却管,温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1N−水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
<凝集粒子形成>
この混合液に凝集剤として、10%塩化ナトリウム水溶液150部を滴下し、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら57℃まで加熱した。この温度の時、樹脂粒子分散液2の3部と帯電制御剤粒子分散液の10部を加えた。50℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5.3μmである凝集粒子(A)が形成されていることが確認された。
<融着工程>
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3部を追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら105℃まで加熱し、1時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、トナー粒子(15)を得た。
得られたトナー粒子(15)の重量平均粒径は5.5μm、平均円形度は0.950であった。
このトナー粒子(15)100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が7nmの疎水性シリカ微粉体3.0部と、平均一次粒径が800nmのシリカ粒子0.1部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速35m/sの条件で7分間乾式混合して、トナー(15)とした。
表1にトナーの物性値を示す。
〔トナーの製造例16〕
スチレン−ブチルアクリレート共重合体(80/20) 100部
八面体のマグネタイト 100部
[平均一次粒径が0.25μm、10Kエルステッドの飽和磁化が81.0(Am2/Kg)、残留磁化が7.0(Am2/Kg)]
低分子量ポリプロピレン(ビスコール660P:三洋化成社製)融点145℃ 4部
ボントロンE−88(オリエント化学工業(株)製) 1.8部
上記成分をバンバリーミキサーにより溶融混練し、冷却後、ジェットミルにより微粉砕を行い、さらに、機械的衝撃力を利用する表面改質装置を用いて球形化処理を行い、球形の粉砕原料を得た。次に、得られた粉砕原料を分級機により分級して重量平均粒径6.5μmのトナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対して、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理した平均一次粒子径が12nmの疎水性シリカ微粉体1.7部と、平均一次粒径が30nmの疎水化処理酸化チタン0.3部を予備混合工程を行わずに直接ヘンシェルミキサーに投入した。邪魔板の角度をヘンシェルミキサーの内径接線に対して直角になるように調整し、周速35m/sの条件で7分間の乾式混合を行い、トナー(16)とした。
尚、トナー(16)の平均円形度は0.955であった。
表1にトナーの物性値を示す。
<実施例1>
トナー(1)を非磁性一成分系現像剤(1)とし、当該現像剤を先に説明した図6に示した画像形成装置及び図1で示した現像装置を用い、下記耐久評価を行った。画像形成装置について、以下に説明する。
図6は、非磁性一成分接触現像方式の電子写真プロセスを利用した、1200dpiレーザービームプリンタ(キヤノン製:LBP−840)改造機の概略図である。本実施例では、現像装置に対し、逐次トナーを補給するトナーホッパー部を追加し、更に下記(a)乃至(i)の条件を追加改造した装置を使用した。
(a)装置の帯電方式をゴムローラーを当接して行う直接帯電とし、印加電圧を直流成分(−1200V)とした。
(b)トナー担持体をカーボンブラックを分散したシリコーンゴムからなる中抵抗ゴムローラー(直径16mm、硬度ASKER−C45度、抵抗105Ω・cm)に変更し、感光体に当接した。
(c)該トナー担持体の回転周速は、感光体との接触部分において同方向であり、該感光体回転周速に対し150%となるように駆動した。
(d)本発明における画像形成装置のプロセススピードは150mm/secであり、これに対する、現像ローラの周速は225mm/secである。
(e)感光体を以下のものに変更した。
ここで用いる感光体としてはAlシリンダーを基体としたもので、これに以下に示すような構成の層を順次浸漬塗布により積層して、感光体を作製した。
・導電性被覆層:酸化錫及び酸化チタンの粉末をフェノール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚15μm。
・下引き層:変性ナイロン及び共重合ナイロンを主体とする。膜厚0.6μm。
・電荷発生層:長波長域に吸収を持つチタニルフタロシアニン顔料をブチラール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚0.6μm。
・電荷輸送層:ホール搬送性トリフェニルアミン化合物をポリカーボネート樹脂(オストワルド粘度法による分子量2万)に8:10の質量比で溶解したものを主体とする。膜厚20μm。
(f)トナー担持体にトナーを塗布する手段として、現像器内に発泡ウレタンゴムからなる塗布ローラーを設け、該トナー担持体に当接させた。塗布ローラーには、約−550Vの電圧を印加する。
(g)該トナー担持体上トナーのコート層制御のために、樹脂をコートしたステンレス製ブレードを用いた。
(h)現像時の印加電圧をDC成分(−450V)のみとした。
該画像形成装置に用いられるトナー担持体と同径、同硬度、同抵抗を有するゴムローラー表面に市販の塗料をごく薄く塗布し、画像形成装置を仮組みしたあと該ゴムローラーを取り外し、光学顕微鏡によりステンレスブレード表面を観察し、NE長を測定した。NE長は1.05mmであった。
これらのプロセスカートリッジの改造に適合するよう電子写真装置に以下のように改造及びプロセス条件設定を行った。
改造された装置はローラー帯電器(直流のみを印加)を用い像担持体を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成し、トナーにより可視画像とした後に、電圧を+700V印加したローラーによりトナー像を転写材に転写するプロセスを持つ。
感光体帯電電位は、暗部電位を−600Vとし、明部電位を−150Vとした。
以上の条件で、常温常湿環境(23℃,50%RH)、高温高湿環境(30℃,80%RH)および低温低湿環境(15℃、10%RH)の各環境下において、A4サイズで1%の印字比率の画像を、2枚連続出力した後に10秒休める動作を合計30000枚になるまで繰り返し、続いてA4サイズで40%の印字比率の画像を100枚連続で印字したところで下記に示すサンプル画像を出力して各評価を行った。尚、補給装置8内のトナーが無くなった場合、その時点で新たなトナーを補給装置8に充填して耐久を続けた。
(1)ベタ濃度均一性評価
通常のA4サイズの複写機用普通紙(75g/m2)を用いて全面ベタ画像を出力し、出力した画像を縦・横で3分割ずつ(計9分割)したときの、各ブロックの中心濃度を測定して、下記式より最大濃度差をもとめてベタ濃度の均一性を評価した。
(最大濃度差)=(最大濃度)−(最低濃度)
尚、画像濃度の測定は、「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
A:非常に良好 0.05未満
B:良好 0.05以上、0.10未満
C:実用上問題なし 0.10以上、0.30未満
D:実用上問題あり 0.30以上
(2)補給時カブリ評価
全面ベタ白画像を出力して、下記方法により補給時カブリを評価した。ここで言う補給時カブリとは、低印字率画像を出力し続けた後に高印字率画像を出力した時の、耐久トナーと補給トナーが高濃度で混ざり合う最も厳しい状態におけるカブリの値を、補給時カブリと定義して評価した。
カブリの測定は「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用いて、標準紙とプリントアウト画像の白地部分の反射率を測定して、下記式によりカブリ(反射率;%)を算出した。フィルターは、シアンの場合はアンバー、イエローの場合はブルー、マゼンタ及びブラックではグリーンフィルターをそれぞれ装着して測定した。
なお、評価基準は全面ベタ白画像上の最悪値を用いて以下の基準により判断した。
A:非常に良好 1.0%未満
B:良好 1.0%以上乃至2.0%未満
C:実用上問題なし 2.0%以上乃至3.0%未満
D:実用上問題あり 3.0%以上
カブリ(反射率;%)=(標準紙の反射率;%)−(サンプルの反射率;%)
(3)ハーフトーン画像均一性評価
転写紙の搬送方向に対して、30H・40H・50H・60Hの各ハーフトーンの横帯画像が並べられたオリジナルチャートを出力して、この画像を目視にて観察し、ドットの再現性と、現像ブレードの汚染により発生する搬送方向に沿った縦スジの有無を以下の基準に基づき評価した。なお、30Hのハーフトーン画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白とし、FFHをベタ黒とするときの画像濃度を示す。
A:全てのハーフトーン画像が鮮やかに均一であり、ドットを高精度で再現している。
B:一部のハーフトーン画像でわずかなドットの乱れが確認されるが、ほとんど気にならないレベル。
C:一部のハーフトーン画像上でドットの乱れが確認されるが、実用画像上では目立ちにくいレベル。
D:全てのハーフトーン画像上のドット再現性が悪く、ガサついた印象の画像であったり、現像ブレード汚染に起因する縦スジ状の画像欠陥が目立つ等、実用画像の品質を大きく損なうレベル。
上記条件でトナー1を評価したところ、全ての環境において、耐久寿命を通じて画像品位の低下が無く良好な結果であった。結果を表2に示す。
<実施例2乃至11>
実施例1と同条件で、トナー2乃至11を評価したところ、概ね良好な結果を示した。結果を表2に示す。
<比較例1>
実施例1と同条件で、トナー12を評価したところ、D2/D1の値が大きいため、耐久が進んで新旧トナーの物性差が大きくなったところに高印字指令がくると、新旧トナーの混合不良や帯電の不均一化が起こり、補給時カブリや長手の濃度差が実用に耐えないレベルを示した。結果を表2に示す。
<比較例2>
実施例1と同条件で、トナー13を評価したところ、D2/D1の値が大きく、D2の値も小さめのため、耐久が進むにつれてトナー劣化が促進され、耐久後半部で実用に耐えないレベルを示した。結果を表2に示す。
<比較例3>
実施例1と同条件で、トナー14を評価したところ、D2が小さくトナーの搬送スピードが速くなって劣化が促進されるため、耐久後半に補給トナーが耐久トナーと十分に混ざること無く現像領域に達するため、ベタ濃度の不均一化や補給時カブリが悪化した。また、ハーフトーン画像もドット再現性に劣るものであった。結果を表2に示す。
<比較例4>
実施例1と同条件で、トナー15を評価したところ、D2が小さくD2/D1も小さいため、新旧トナーの混ざり方が悪い上に搬送性が高すぎてトナーの劣化度合も大きく、耐久後半には現像スジが発生する等実用に耐えない画像品質を示した。結果を表2に示す。
<比較例5>
実施例1において、磁性一成分ジャンピング現像方式のLBP−840(キヤノン社製)のシステムに変更した以外は同様の現像器構成を用いてトナー16を評価したところ、D2が大きくD2/D1も小さいため、トナーが締まり気味でデットスペースでパッキングが起こり易く、トナー劣化が促進され実用耐久に耐えない画像品質を示した。結果を表2に示す。