JP2016191094A - レーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材および省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法 - Google Patents

レーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材および省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接金属部および溶接熱影響部と母材との特性の差が抑制された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材を提供する。
【解決手段】所定の化学組成を有し、オーステナイト相の面積率が40%以上70%以下である省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接して溶接金属部を形成した溶接部材であり、溶接金属部は、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上であり、溶接部材は、Cr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下であるレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材とする。Nprer=800N−3Cr+20Si+10Ni−4Mn+1140・・・(1)。(1)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の鋼材中の含有量(質量%)を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、二相ステンレス鋼材をレーザ溶接して形成された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材およびその製造方法に関するものである。
二相ステンレス鋼は、鋼の組織にオーステナイト相とフェライト相の両相を持つ。二相ステンレス鋼は、高強度高耐食性の材料として、以前から、石油化学装置材料、ポンプ材料、ケミカルタンク用材料等に使用されている。更に、二相ステンレス鋼は、一般に低Niの成分系である。このことから、二相ステンレス鋼は、直近の金属原料高騰状況に伴い、ステンレス鋼の主流であるオーステナイト系ステンレス鋼よりも、合金コストが低くかつその変動が少ない材料として注目を浴びている。
ところで、二相ステンレス鋼の直近のトピックとして、省合金タイプの開発とその使用量増加がある。
省合金タイプとは、従来の二相ステンレス鋼よりもNi,Mo等の高価な合金成分の含有量を抑え、合金コストが低いメリットを更に増大させた鋼種である。省合金二相ステンレス鋼のうち特許文献1と2に記載の鋼種は、ASTM−A240で規格化されている。特許文献1に記載の鋼種はS32304(代表成分23Cr−4Ni−0.17N)に対応する。特許文献2に記載の鋼種はS32101(代表成分22Cr−1.5Ni−5Mn−0.22N)に対応する。
従来、二相ステンレス鋼のメイン鋼種として、JIS SUS329J3LおよびSUS329J4Lがある。これらの二相ステンレス鋼は、オーステナイト系の高耐食鋼SUS316Lよりも更に高耐食であり、高価なNiを約6〜7%(以下、成分についての%は質量%を意味する)、Moを約3〜4%含有している。
これに対し、省合金二相ステンレス鋼は、耐食性をSUS316Lもしくは汎用鋼のSUS304に近いレベルとした代わりに、Moをほぼ0とし、NiをS32304では約4%、S32101では約1%と大幅に低減している。
上記省合金二相ステンレス鋼で形成された二相ステンレス鋼材(母材)を溶接して溶接部材を形成すると、溶接金属部及びその近傍の溶接熱影響部いわゆるHAZ(Heat Affected Zone)部において、極端な耐食性および靭性の低下が生じる。この特性低下は、以下のような機構で生じる。
二相ステンレス鋼は、加熱温度によりフェライト相とオーステナイト相との相比が変動する。二相ステンレス鋼材を溶接すると、母材を溶融するための加熱によって、溶接金属部およびHAZ部となる部分のフェライト相の割合が増加し、オーステナイト相の割合が減少する。そして、溶接金属部が形成される冷却時には、逆にオーステナイト相が増加する。しかし、一般に、溶接金属部が形成される時の冷却速度は速いため、溶接金属部およびHAZ部中のオーステナイト相の量は母材よりも少なくなる。
また、母材である二相ステンレス鋼材中のNは、ほとんどがオーステナイト相中に固溶している。しかし、溶接金属部およびHAZ部では、母材と比較してオーステナイト相が少ないため、フェライト相中のN含有量が母材と比較して多くなっている。フェライト相中のNの固溶限界は小さい。このため、溶接に伴う加熱によって、溶接金属部およびHAZ部となるフェライト相中に固溶したNは、溶接金属部が形成される冷却時にCr窒化物として析出する。Cr窒化物が析出することによりCrが消費されると溶接金属部およびHAZ部に、いわゆるCr欠乏層が形成され、耐食性が低下する。
なお、溶接金属部が形成される際の冷却速度がHAZ部より速く、成分偏析も生じる溶接金属部は、本来、溶接によってHAZ部よりも大きく特性が低下する。しかし、溶接金属部では、この課題に対して、より耐食性の高い成分を持つ溶加材を使用することで回避可能である。このような溶加材は、ステンレス鋼厚板をFCAW(フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接法)等で溶接する場合、使用されるのが通常である。
溶接によるHAZ部の特性の低下への対策としては、一見矛盾しているが、母材である二相ステンレス鋼材中へのNの添加が一般的に用いられている。Nは、拡散速度が速いオーステナイト生成元素である。したがって、母材中のN含有量を多くすると、溶接金属部が形成される冷却時にオーステナイト相の再析出が促進され、Nがオーステナイト相に再吸収される。一般に、省合金二相ステンレス鋼では、0.1〜0.22%程度のNが含有される。
しかしながら、N含有量の多い省合金二相ステンレス鋼材を大入熱溶接する場合に、冷却時の冷却速度が比較的遅いと、以下のような不都合が生じる。すなわち、溶接金属部が形成される冷却過程において、母材中のNにより、オーステナイト相の析出が十分に生じる。しかし、冷却速度が遅いため、冷却過程においてHAZ部となる領域が、約1000℃〜600℃のCr窒化物の析出温度域に長時間さらされる。このことにより結局は、溶接部材のHAZ部にCr窒化物が析出し、HAZ部の耐食性および靭性が母材と比較して低下する。
溶接部材のHAZ部における特性低下の課題を克服するために、我々は、特許文献3において、省合金二相ステンレス鋼を開示した。この省合金二相ステンレス鋼は、C:0.06%以下、Si:0.1〜1.5%、Mn:2.0〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:19.0〜23.0%、Ni:1.0〜4.0%、Mo:1.0%以下、Cu:0.1〜3.0%、V:0.05〜0.5%、Al:0.003〜0.050%、O:0.007%以下、N:0.10〜0.25%、Ti:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。さらに、Md30値が80以下、Ni−bal.が−8以上−4以下であり、かつN含有量の上限がNi−bal.との関係式で表され、オーステナイト相面積率が40〜70%であり、2×Ni+Cuが3.5以上である溶接熱影響部の耐食性と靭性が良好な省合金二相ステンレス鋼である。この発明のポイントは、固溶レベルの微量のV添加に加え、オーステナイト量推定式であるNi−bal.に応じてN含有量の上限を規定することにより、HAZ部の窒化物析出を抑制することである。
ところで、直近、新しい溶接法として、レーザ溶接が用いられ始めている。レーザ溶接は、熱源としてレーザ光を用い、この光を極小径に収束させ照射することで金属を局部的に溶融・凝固させ接合する方法である。従来の溶接法と比べ、熱源が高エネルギー密度である。このため、高速な溶接が可能であり、溶接ビードが幅狭で深溶込みとなる特長がある。レーザ溶接を用いることにより、格段に生産性を向上させることが可能である。
二相ステンレス鋼材のレーザ溶接に関しては、特許文献4および特許文献5に記載の技術がある。特許文献4には、シールドガス中にNを混合することで、溶接金属中のフェライト相とオーステナイト相との比を母材と同等にできる二相ステンレス鋼溶接管の製造方法が開示されている。特許文献5には、溶接条件を制御して溶接金属の700℃における冷却速度を10℃/sec未満にすることで、溶接金属中のフェライト率を80%以下にする二相ステンレス鋼溶接管の製造方法が開示されている。いずれも対象鋼種はSUS329J3LやSUS329J4Lのような汎用二相ステンレス鋼である。
特開昭61−56267号公報 国際公開第2002/27056号 国際公開第2009/119895号 特開平8−132262号公報 特開平8−155662号公報 特開2013−204044号公報
Welding Journal vol.37(1958),210s-215s
レーザ溶接の加熱履歴は、従来の溶接法より著しく急速加熱急速冷却となる。更に、レーザ溶接では、他の溶接法のように溶加材を使用することは通常無い。そのため、二相ステンレス鋼で形成された母材を溶接して得た溶接部材では、従来の溶接法においてもHAZ部よりも溶接時の加熱冷却速度が速い溶接金属部の特性が、母材と比較して大きく低下する。
レーザ溶接を行う場合においても、溶接金属部およびHAZ部と、母材との特性の差を小さくする対応策としては、前述と同様に、母材中のN含有量を多くすることが考えられる。しかし、レーザ溶接では、従来溶接法よりも溶接金属部が形成される際の冷却速度が著しく速い。このため、単に母材中のN含有量を多くするだけでは、溶接部材の溶接金属部およびHAZ部と、母材との特性の差を十分に小さくできない場合があった。更に、レーザ溶接を用いて形成した溶接部材の溶接金属部では、母材に添加したNが母材の溶融時に散失することがある。このため、母材中のN含有量を多くしても、溶接金属部が形成される冷却過程において、十分にオーステナイト相を析出させることができない場合があった。
本発明は、省合金タイプの二相ステンレス鋼材で形成された良好な靱性を有する母材を、溶加材を用いずにレーザ溶接により溶接した溶接部材において、溶接金属部および溶接熱影響部と母材との特性の差が抑制された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材を提供することを課題とする。
また、本発明は、溶接金属部および溶接熱影響部と母材との特性の差が抑制された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の得られる製造方法を提供することを課題とする。
発明者らは、上記課題を解決するために、以下に示すように検討した。
まず、Ni節減または、NiおよびMoを節減した良好な靱性を有する省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接により溶接して複数の溶接部材を形成した。そして、得られた溶接部材について、レーザ溶接部(溶接金属部およびHAZ部)の耐食性が、母材と比較して著しく低下した溶接部材のレーザ溶接部の組織を調査した。
その結果、このようなレーザ溶接部では、オーステナイト相の不足により、フェライト相の粒界が、オーステナイト相で完全には覆われていないことが分かった。また、このようなレーザ溶接部では、フェライト相とフェライト相との粒界にCr窒化物がフィルム状に集中して析出していることを把握した。
そこで、発明者らは、レーザ溶接部のフェライト粒界にオーステナイト相を確実に析出させることが重要であると考え、その析出条件を詳細に評価した。
具体的には、N含有量およびその他の化学組成を変化させた省合金二相ステンレス鋼材について、種々の冷却速度となるように溶接条件を変更したレーザ溶接を行い、溶接金属部のオーステナイト再析出量と、レーザ溶接部の耐食性とを評価し、以下のように整理した。
まず、レーザ溶接部の耐食性を確保するのに必要な溶接金属部のオーステナイト相の量を評価した。この評価では、溶接金属部の断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上であれば良いとした。
上記のオーステナイト相の幅が平均で2.5μm未満であると、フェライト相の粒界がオーステナイト相で完全に覆われず、フェライト相とフェライト相との粒界にCr窒化物がフィルム状に析出することが分かった。フィルム状に析出したCr窒化物は、溶接時の加熱によってフェライト相中に固溶したNが、溶接金属部が形成される際の冷却に伴う固溶限界の低下によって、フェライト相中に固溶できなくなって析出し、形成されたものである。Cr窒化物が形成されることにより、溶接金属部中にCr欠乏層が形成され、レーザ溶接部の耐食性が低下するものと推定される。
また、レーザ溶接部の耐食性を確保するには、省合金二相ステンレス鋼材として、オーステナイト相の面積率が40%以上70%以下であるものを用いる必要があることが分かった。
上述したように、上記のオーステナイト相の幅が平均で2.5μm以上であれば、溶接金属部において充分なオーステナイト相の量を確保できる。しかし、オーステナイト相の量を確保するために、溶接金属部中のN含有量を多くしすぎると、フェライト相からのCr窒化物の析出が多量となり、却って耐食性が悪化する。
そこで、発明者らは、鋭意検討し、Cr窒化物析出の指標として、下記(1)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerを用いることができることを見出した。そして、Nprerが1250℃以下である溶接部材とすることで、Cr窒化物の析出を抑制でき、レーザ溶接部と母材との特性の差を十分に抑制できることを確認した。
prer=800N−3Cr+20Si+10Ni−4Mn+1140・・・(1)
(1)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示す。
発明者らは、Nprerを算出するに際して、(1)式に示すように、溶接金属部中の窒素濃度Nを用いた。その理由を以下に示す。
溶接金属部となる省合金二相ステンレス鋼材中のNは、溶融時に雰囲気中に一定量放出される。したがって、溶接金属部中のN含有量は、元の鋼材(母材)中のN含有量よりも少なくなる。このため、Cr窒化物の析出に寄与するN量は、鋼材中の含有量ではなく、溶接金属部中のN含有量である。なお、N以外の鋼材中の元素は、溶融時に放出されにくいものであるため、鋼材中と溶接金属部中の含有量を同じとみなすことができる。
次に、発明者らは、省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接し、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上である溶接金属部を有し、かつCr窒化物の析出開始温度の計算値が1250℃以下である溶接部材を形成する方法について鋭意検討し、以下の結論を得た。
レーザ溶接において、溶接金属部が形成される際の冷却速度は、非常に速い。このため、冷却時に拡散しうる元素は軽元素のみである。したがって、省合金二相ステンレス鋼の化学組成では、溶接金属部が形成される冷却過程において、ほぼNの拡散のみでオーステナイト相が形成される。
発明者らは、溶接工程において、Nによるオーステナイト再析出効果が発揮される溶接部材の製造方法について、検討した。
その結果、溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)「Nre」と、N以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す「DF」と、溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値「VCR」(℃/s)とを用いる下記(3)式で示される溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値「γ」(μm)によって、溶接金属部の断面のフェライト相の粒界に析出するオーステナイト相の幅の平均値を推定できることを見出した。そして、実験により「γ」の値が2.5μm以上となる条件でCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下となるように溶接工程を行うことで、上記のオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上である溶接金属部を有し、溶接金属部および溶接熱影響部と母材との特性の差が抑制された溶接部材を形成できることを見出した。
γ=(1200Nre−1.2DF+100)/√(VCR)・・・(3)
(3)式中の「Nre」は下記(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)を示し、「DF」は下記(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値であり、「VCR」は下記(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)である。
re=N−10×N/√(VCR)・・・(4)
(4)式中の「VCR」は下記(6)式で示される数値であり、「N」は二相ステンレス鋼材中の窒素含有量(質量%)を示す。
DF=7.2(Cr+0.88Mo+0.78Si)−8.9(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C)−44.9・・・(5)
(5)式中の各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
(6)式中の「λ」は二相ステンレス鋼材の熱伝導率(W/m/K)、「c」は二相ステンレス鋼材の比熱(J/kg/K)、「ρ」は二相ステンレス鋼材の密度(kg/m)、「h」は二相ステンレス鋼材の溶接部の素材肉厚(m)、「V」は溶接速度(m/s)、「P」はレーザ出力(W)、「T」は速度を算出する温度(1000℃)、「T」は室温(20℃)を示す。なお、この推定式は非特許文献1を引用したものである。
以上説明したように、レーザ溶接部と母材との特性の差が十分に抑制された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材を製造するには、「Nre」と「DF」と「VCR」とを用いて「γ」を制御する必要があることが判明した。
以上の結果から、上記課題を解決しうる省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材およびその製造方法を発明するに至った。
本発明の要旨とするところは以下の通りである。
[1] 化学組成が質量%にて、
C :0.04%以下、
Si:0.10〜1.00%、
Mn:0.50〜6.00%、
P :0.050%以下、
S :0.0050%以下、
Cr:20.0〜25.0%、
Ni:1.00〜6.00%、
N :0.120〜0.250%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、オーステナイト相の面積率が40%以上70%以下である省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接して溶接金属部を形成した溶接部材であり、
前記溶接金属部は、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上であり、
前記溶接部材は、下記(1)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下であることを特徴とするレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
prer=800N−3Cr+20Si+10Ni−4Mn+1140・・・(1)
(1)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示す。
[2] 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
Mo:1.50%以下、
Cu:2.00%以下から選ばれる1種または2種を含有し、
前記溶接部材は、下記(2)式で算出されるNprerが1250℃以下であることを特徴とする[1]に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
prer=800N−3Cr+20Si+6.5Mo+10Ni−4Mn+15Cu+1140・・・(2)
(2)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示す。
[3] 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
V :0.05〜0.50%、
Nb:0.010〜0.200%、
Ti:0.0030〜0.050%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
[4] 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
Al:0.003〜0.045%、
O :0.007%以下から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
[5] 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
REM:0.050%以下、
B :0.0040%以下から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
[6] 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
Zr:0.020%以下、
Ta:0.070%以下、
Co:0.02〜1.00%、
W :1.00%以下、
Sn:0.100%以下から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載の化学組成を有する二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接する溶接工程を有し、
前記溶接工程は、下記(3)式で算出される溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値γが2.5μm以上となる条件で、下記(7)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下となるように行うことを特徴とする省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法。
γ=(1200Nre−1.2DF+100)/√(VCR)・・・(3)
(3)式中の「Nre」は下記(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)を示し、「DF」は下記(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値であり、「VCR」は下記(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)である。
re=N−10×N/√(VCR)・・・(4)
(4)式中の「VCR」は下記(6)式で示される数値であり、「N」は二相ステンレス鋼材中の窒素含有量(質量%)を示す。
DF=7.2(Cr+0.88Mo+0.78Si)−8.9(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C)−44.9・・・(5)
(5)式中の各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
(6)式中の「λ」は二相ステンレス鋼材の熱伝導率(W/m/K)、「c」は二相ステンレス鋼材の比熱(J/kg/K)、「ρ」は二相ステンレス鋼材の密度(kg/m)、「h」は二相ステンレス鋼材の溶接部の素材肉厚(m)、「V」は溶接速度(m/s)、「P」はレーザ出力(W)、「T」は速度を算出する温度(1000℃)、「T」は室温(20℃)を示す。
prer=800N−3Cr+20Si+6.5Mo+10Ni−4Mn+15Cu+1140・・・(7)
(7)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
[8] 前記VCRを500℃/s以上とすることを特徴とする[7]に記載の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法。
本発明によれば、Ni節減または、NiおよびMoを節減した省合金タイプの良好な靱性を有する二相ステンレス鋼材で形成された母材を、溶加材を用いずにレーザ溶接により溶接した溶接部材において、溶接金属部および溶接熱影響部と母材との特性の差が抑制された省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材が得られる。その結果、大気環境、水環境等で使用される耐食性を有する安価なNi節減型二相ステンレス鋼レーザ溶接部材を提供することが可能となり、産業上寄与するところは極めて大である。
本発明のレーザ溶接部材の一例における溶接金属部の断面の顕微鏡写真である。
以下に本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材について説明する。本発明の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材は、母材としての二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接法により溶接した溶接部材である。
次に、二相ステンレス鋼材の化学組成について説明する。なお、以下の説明において、含有量を示す%は、質量%を意味する。
Cは、二相ステンレス鋼の耐食性を確保するために0.04%以下の含有量に制限する。0.04%を越えてCを含有させると、Cr炭化物が生成して、耐食性が劣化する。C含有量は好ましくは0.03%以下である。一方、C含有量を極端に低減することは大幅なコストアップになるため、好ましくはC含有量の下限を0.001%とする。
Siは、脱酸のため0.10%以上添加する。しかしながら、1.00%を超えてSiを添加すると靱性が劣化する。そのため、Si含有量の上限を1.00%に限定する。好ましいSi含有量の範囲は0.20〜0.60%である。
Mnは、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させ、かつ加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し、靱性を向上させ、また窒素の固溶度を上げ溶接部における窒化物の析出を抑制することから0.50%以上添加する。しかしながら、6.00%を超えてMnを添加すると耐食性が劣化する。そのため、Mn含有量の上限を6.00%に限定する。Mn含有量の好ましい範囲は1.50〜4.00%、更に好ましい範囲は2.00超〜3.00%未満である。
Pは、二相ステンレス鋼中に不可避的に含有される元素であって、熱間加工性を劣化させるため0.050%以下に限定する。P含有量は好ましくは0.030%以下である。一方、P含有量を極端に減ずることは大幅なコストアップになる。このため、好ましくはP含有量の下限を0.005%とすることが好ましい。
Sは、Pと同様に鋼中に不可避的に含有される元素であって、熱間加工性、靱性および耐食性をも劣化させるため0.0050%以下に限定する。S含有量は好ましくは0.0020%以下である。一方、S含有量を極端に減ずることは大幅なコストアップになる。このため、好ましくはS含有量の下限を0.0001%とする。
Crは、耐食性を確保するために基本的に必要な元素である。Crは、比較的安価な合金成分でもあり、本発明では20.0%以上含有させる。一方、Crは、フェライト相を増加させる元素である。25.0%を超えてCrを含有させると、本発明の成分系ではフェライト量が過多となり、耐食性および靱性を害する。このため、Crの含有量を20.0%以上25.0%以下とした。Cr含有量の好ましい範囲は、20.5%〜22.0%である。
Niは、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させる元素である。Niは、本発明の成分系においてオーステナイト相を確保するために、また加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し靱性を向上させるため、および各種酸に対する耐食性を確保するために1.00%以上添加させる。一方、Niは、高価な合金であるため、本発明では可能な限り抑制し、6.00%以下とする。Ni含有量の好ましい範囲は、1.50%〜3.00%である。
Nは、オーステナイト相に固溶して強度および耐食性を高めると共に、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させる有効な元素である。Nは、特にオーステナイト相の耐食性を高めるために、重要な元素である。本発明では、特にレーザ溶接において、溶接金属部が形成される際の急速冷却時に、再析出するオーステナイト相を確保する必要があるため、Nを0.120%以上含有させる。一方、0.250%を越えてNを含有させると、溶融凝固時にN気泡を生じる。また、N含有量が0.250%を越えている場合、溶接金属部のCr窒化物の析出量が多く、溶接金属部の耐食性が不充分である溶接部材となる。このため、N含有量の上限を0.250%とした。好ましいN含有量は、0.150〜0.200%である。
さらに、二相ステンレス鋼材は、Mo、Cuから選ばれる1種または2種を含有してもよい。
Moは、二相ステンレス鋼の耐食性を大きく高める非常に有効な元素であり、本発明では必要に応じて添加する。一方、Moは、非常に高価な元素である。このため、本発明では可能な限りMo含有量を抑制し、Mo含有量の上限を1.50%以下と規定した。Mo含有量の好ましい範囲は、0.10%超〜0.50%未満である。
Cuは、Niと同様に二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させること、および加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し靱性を向上させること、更に各種酸に対する耐食性を改善するのに有効な元素である。Cuは、Niと比べて安価な合金であるため、本発明では必要に応じて添加する。一方、2.00%を越えてCuを含有させると、Cr窒化物の析出を促進するので、Cu含有量の上限を2.00%とした。Cu含有量の好ましい範囲は0.60%超〜1.50%であり、更に好ましい範囲は0.80%超〜1.35%、特に好ましい範囲は1.00%超〜1.20%である。
さらに、二相ステンレス鋼材は、V、Nb、Tiから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。V、Nb、Tiは、それぞれNの活量を下げ、窒化物析出を抑制するのに有効な元素であり、選択的に添加される。
Vは、上記の効果を得るには0.05%以上の添加が必要である。一方、0.50%を越えてVを添加させると、V窒化物の析出によりHAZ部靭性を低下させるため、上限は0.50%とした。V含有量の好ましい範囲は0.06%〜0.20%である。
Nbは、上記の効果を得るには0.010%以上の添加が必要である。Nb含有量は、好ましくは0.020%以上とする。Nbは、Vと比較してNとの親和力が比較的高く、少量の添加でNb窒化物を析出してしまう。このためNb含有量は0.200%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.100%以下とする。
Tiは、上記の効果を得るには0.0030%以上の添加が必要である。Ti含有量は、好ましくは0.0050%以上とする。Tiは、NbよりもさらにNとの親和力が高く、少量の添加でTi窒化物を析出してしまう。このためTi含有量は0.050%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.030%以下とする。
さらに、二相ステンレス鋼材は、Al、O(酸素)から選ばれる1種または2種を含有してもよい。
Alは、鋼の脱酸のための重要な元素であり、鋼中の酸素を低減するために選択的に添加される。上記効果を得るには、Alを0.003%以上含有させることが必要である。Al含有量は、好ましくは0.010%以上とする。一方でAlはNとの親和力が比較的大きな元素であり、過剰に添加するとAlNを生じて母材の靭性を阻害する。その程度はN含有量にも依存するが、Alが0.045%を越えると靭性低下が著しくなるため、その含有量の上限を0.045%と定めた。Al含有量は、好ましくは0.030%以下である。
Oは、非金属介在物の代表である酸化物を構成する有害な元素であり、過剰な含有は靭性を阻害する。また粗大なクラスター状酸化物が生成すると表面疵の原因となる。このためO含有量の上限を0.007%とした。O含有量は、好ましくは0.005%以下である。一方、O含有量を極端に減ずることは大幅なコストアップになる。このため、O含有量の下限を0.001%とすることが好ましい。
さらに、二相ステンレス鋼材は、Ca、Mg、REM、Bから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。Ca,Mg,REM,Bは、いずれも鋼の熱間加工性を改善する元素である。一方、いずれも過剰な添加は逆に熱間加工性を低下する。このため、これらの元素の含有量の範囲を次のように定めた。
CaとMgについては夫々0.0050%以下、REMについては0.050%以下、Bについては0.0040%以下である。ここでREMは、LaやCe等のランタノイド系希土類元素の含有量の総和とする。
なお、CaとMgについては0.0005%以上にすると、安定した効果が得られるので、好ましい範囲は0.0005〜0.0050%である。REMについては0.005%以上にすると、安定した効果が得られるので、好ましい範囲は0.005〜0.050%である。Bについては0.0003%以上にすると、安定した効果が得られるので、好ましい範囲は0.0003〜0.0040%である。
さらに、二相ステンレス鋼材は、Zr、Ta、Co、W、Snから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
ZrおよびTaは、添加によりCおよびSの耐食性への悪影響を抑制することができる。この効果を安定して発揮する含有量は、Zrは0.003%以上、Taは0.010%以上である。ZrおよびTaは、過剰に添加すると靱性低下を生じる等の悪影響が発生する。このため、Zrおよび/またはTaを選択的に添加する場合の含有量を、Zrは0.020%以下、Taは0.070%以下に限定した。
Coは、鋼の靭性と耐食性を高めるために有効な元素であり、選択的に添加される。Coの含有量が0.02%未満であると効果が少ない。このため、Coを添加する場合の含有量を0.02%以上とする。Co含有量は、好ましくは0.04%以上である。しかし、1.00%を越えてCoを含有させると、高価な元素であるためにコストに見合った効果が発揮されないようになる。そのため、Coを添加する場合の含有量を1.00%以下と定めた。Co含有量は、コストの点から好ましくは0.30%未満とする。
Wは、二相ステンレス鋼の耐食性を付加的に高めるために選択的に添加される元素である。この効果を安定して発揮するW含有量は、0.05%以上である。W含有量は、好ましくは0.10%以上である。しかし、Wは、高価な元素であり、過剰添加はコスト増を招くため1.00%以下を含有させる。W含有量は、好ましくは0.50%以下である。
Snは、耐酸性を付加的に向上させる選択的元素である。この効果を安定して発揮するSn含有量は、0.050%以上である。Snは、熱間加工性の観点から0.100%を上限として添加することが出来る。
本発明の二相ステンレス鋼レーザ溶接部材において良好な特性を得るためには、母材である二相ステンレス鋼材におけるオーステナイト相の面積率を40〜70%の範囲にすることが必要である。オーステナイト相の面積率が40%未満であると、靱性不良となる。オーステナイト相の面積率が、70%超では熱間加工性が不十分であり、応力腐食割れの問題が生じる。また、オーステナイト相の面積率が40%未満であっても70%を超えても耐食性が不良となる。
次に、このような二相ステンレス鋼材をレーザ溶接したレーザ溶接部材について説明する。レーザ溶接部材には、溶接を行うことにより、溶接金属部とHAZ部とを有するレーザ溶接部が形成されている。
溶接金属部の金属組織については、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上のものと規定する。上記のオーステナイト相の幅の平均が2.5μm未満であると、前述の通りフェライト相の粒界がオーステナイト相で覆われず、フェライト相とフェライト相との粒界にCrを含む窒化物がフィルム状に析出し、耐食性が大幅に低下する。このため、上記のオーステナイト相の幅の平均を2.5μm以上とし、好ましくは3.0μm以上とする。
溶接金属部の断面におけるフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均は、後述する方法により測定したものである。
本実施形態の溶接部材は、上記(1)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下のものである。
溶接金属部のCr窒化物の析出を抑制するには、N含有量を単に低減するだけではなく、二相ステンレス鋼材中に含まれるCr窒化物の析出に関わる元素の含有量を制御することが重要である。Cr窒化物析出の駆動力の大きさ、即ち化学ポテンシャル(エネルギー)の差(ΔG)は、Cr窒化物の析出開始温度と実際の温度との差で示される過冷度の大きさに対応していると考えられる。過冷度が大きいほど、Cr窒化物の核生成が容易になり、溶接金属部中にCr窒化物が析出しやすくなる。
そこで、本発明者らは、溶接金属部の窒素濃度が元の鋼材より低減することを前提として、溶接金属部を形成する際におけるCr窒化物の析出開始温度をシミュレーション計算により求めた。さらに、シミュレーション計算により、二相ステンレス鋼材中に含まれる各成分のCr窒化物の析出への寄与の大きさを算出し、定式化した。これらの結果を用いて、溶接金属部にCr窒化物が析出し難い溶接金属部の窒素濃度および二相ステンレス鋼材の成分範囲を規定することを試みた。
具体的には、熱力学データを用いたシミュレーション計算により、二相ステンレス鋼材中に含まれる各添加元素のCr窒化物の析出開始温度への影響を算出した。更に、実験により、シミュレーション計算の結果と実験結果とが一致することを確認し、Cr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerを算出する(1)式を作成した。
通常、レーザ溶接において溶接金属部が形成される際の冷却速度は非常に速いため、溶接金属部の組織のほとんどがフェライト相となる。このため、シミュレーション計算を、以下のような条件で行った。
すなわち、溶接金属部中におけるオーステナイト相から離れたフェライト相では、Nの固溶限界が小さいフェライト相中であるにもかかわらず、オーステナイト再析出前のN含有量を維持したまま存在しているところもあると考えられる。このことから、シミュレーション計算では、オーステナイト相は除外し、フェライト相とCr窒化物のみで、Cr窒化物の析出開始温度の平衡計算を行った。
本発明者らは、このようにして作成した式(1)により算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerと、レーザ溶接部と母材との耐食性の差について、実験により調べた。その実験結果より、Nprerを1250℃以下とすることで、レーザ溶接部と母材である二相ステンレス鋼材との特性の差を十分に抑制しうることを確認した。
つまり、本実施形態の溶接部材では、式(1)で算出されるNprerを抑えることで、過冷度が低減されている。このことにより、化学ポテンシャルの差(ΔG)に対応するCr窒化物の析出駆動力が低減されたものとなり、Cr窒化物が析出することによる溶接金属部の耐食性の低下が抑制された溶接部材となる。
(1)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃を超えると、鋭敏化が激しく生じて、溶接金属部の耐食性が低下する。鋭敏化は、溶接金属部にCr窒化物が析出することによって、Cr窒化物周辺のCr元素がCr析出物の生成に消費され、Cr窒化物周辺に局所的にCr濃度の低い領域が形成されて生じる。Nprerが1250℃以下であると、溶接金属部が形成される冷却過程におけるCr窒化物の析出開始温度が低くなる。このため、Cr窒化物の析出量が多くなりすぎることがなく、鋭敏化が抑制される。より効果的に鋭敏化を抑制するためには、Nprerは1240℃以下であることが好ましい。
(1)式に示されるように、Cr窒化物は、溶接金属部中の窒素濃度(質量%)「N」が少ないと析出しにくい。溶接金属部中の窒素濃度が高すぎると、Nprerが高くなり、溶接金属部におけるCr窒化物析出量が多量となり、鋭敏化が生じて耐食性が低下する。このため、「N」は0.20%以下であることが好ましく、0.18%以下であることがより好ましい。また、「N」が0.14%以上であると、レーザ溶接において溶接金属部が形成される際の急速冷却時に、オーステナイト相が十分に再析出されたものとなり、好ましい。「N」が0.16%以上であると、オーステナイト相の再析出量がより多いものとなるため、より好ましい。
溶接金属部中の窒素濃度Nは、溶接金属部を窒素分析計等により化学分析することにより測定しうる。
(1)式に示されるように、Cr窒化物の析出開始温度は、Si、Ni、Mnの含有量に関わる。Mnは、Cr窒化物の析出開始温度を低下させて、溶接金属部にCr窒化物が多量に析出されることを抑制する。SiおよびNiは、Cr窒化物の析出開始温度を上昇させて、Cr窒化物の析出を促進する。このため、SiおよびNiは、Nprerが1250℃以下となる範囲で含有される。
Cr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerは、レーザ溶接部材の母材である二相ステンレス鋼材が、Moおよび/またはCuを含むものである場合、上記(2)式で算出される。
(2)式に示されるように、Cr窒化物の析出開始温度は、Mo、Cuの含有量に関わる。CuおよびMoは、Cr窒化物の析出開始温度を上昇させて、Cr窒化物の析出を促進するものである。このため、CuおよびMoは、Nprerが1250℃以下となる範囲で含有される。
本発明の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材は、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接されたものであればよく、如何なる形状のものであってもよい。例えば、溶接継手、溶接管などであってもよい。
次に、本発明の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法について説明する。
本発明の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法は、上記のいずれかに記載の化学組成を有する二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接する溶接工程を有する。
本実施形態のレーザ溶接部材において母材として用いる二相ステンレス鋼材の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
本実施形態における溶接工程は、下記(3)式で算出される溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値γが2.5μm以上となる条件で、前記(1)式または前記(2)式で算出されるNprerが1250℃以下となるように行う。溶接工程を行うことにより、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上である溶接金属部を有し、かつNprerが1250℃以下である溶接部材を形成できる。その結果、レーザ溶接部と母材との特性の差が抑制されたレーザ溶接部材が得られる。
(3)式は、実験により求めた溶接金属部のオーステナイト再析出幅の推定式である。(3)式により、溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値γを算出できる。
γ=(1200Nre−1.2DF+100)/√(VCR)・・・(3)
(3)式中の「Nre」は下記(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)を示し、「DF」は下記(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値であり、「VCR」は下記(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)である。
re=N−10×N/√(VCR)・・・(4)
(4)式中の「VCR」は下記(6)式で示される数値であり、「N」は二相ステンレス鋼材中の窒素含有量(質量%)を示す。
DF=7.2(Cr+0.88Mo+0.78Si)−8.9(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C)−44.9・・・(5)
(5)式中の各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
(6)式中の「λ」は二相ステンレス鋼材の熱伝導率(W/m/K)、「c」は二相ステンレス鋼材の比熱(J/kg/K)、「ρ」は二相ステンレス鋼材の密度(kg/m)、「h」は二相ステンレス鋼材の溶接部の素材肉厚(m)、「V」は溶接速度(m/s)、「P」はレーザ出力(W)、「T」は速度を算出する温度(1000℃)、「T」は室温(20℃)を示す。
溶接金属部でのオーステナイト相の再析出は、Nの拡散によって生じる。このことから、(3)式に示すように、オーステナイト相の再析出幅は、(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)「VCR」の平方根に反比例すると考えられる。(3)式に示すγには、(3)式に示すように、(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値「Nre」が正の係数として寄与し、(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度「DF」が負の係数として寄与すると考えられる。そして、「Nre」「DF」「VCR」の3つのパラメータの係数を実験により求め整理したのが(3)式である。
(3)式で算出されるγは、溶接金属部のオーステナイト再析出幅の指標として用いることができる。(3)式で算出されるγが2.5μm以上となる条件で溶接工程を行うことにより、フィルム状のCr窒化物の析出を抑制でき、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上である溶接金属部を有する溶接部材を形成できる。レーザ溶接部と母材との特性の差が、さらに抑制されたレーザ溶接部材を得るためには、γが3.0μm以上となる条件で、溶接工程を行うことが好ましい。
上記(4)式は、溶接金属部中の窒素濃度(質量%)の推定式である。(4)式は、種々の冷却速度となるように溶接条件を変更してレーザ溶接を行って、溶接金属部中の窒素濃度「N」を分析し、その結果を用いて見出したものである。(4)式により、溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)「Nre」を算出できる。
(4)式で算出される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)「Nre」は、(3)式で算出されるγが2.5μm以上となるように、0.14%以上であることが好ましく、0.16%以上であることがより好ましい。また、溶接金属部中の窒素濃度が高すぎると、溶接金属部におけるCr窒化物析出量が多量となり、鋭敏化が生じて耐食性が低下する。このため、「Nre」は0.20%以下であることが好ましく、0.18%以下であることがより好ましい。
上記(3)式および(4)式中の溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)「VCR」は、(6)式により算出できる。(6)式は、例えば非特許文献1に記載されているように、溶接金属部の1000℃における冷却速度の推定値を算出するものである。
上述したように、二相ステンレス鋼材をレーザ溶接で溶接する場合、溶接金属部が形成される際の冷却速度が非常に速いことから、通常の溶接と比べオーステナイト相の析出は非常に少ない。したがって、オーステナイト相の再析出促進を図るために、(3)式および(4)式に示すように、溶接金属部が形成される際の冷却速度がなるべく遅くなるように制御することが良いと考えられる。しかしながら、本発明者らが実際に実験を行ったところ、冷却速度が速い方が却ってレーザ溶接部における耐食性の低下が少なかった。これは、冷却速度が速い程、溶融時のNの放出が少ないことと、窒化物析出温度域をごく短時間で通過するために窒化物の析出が抑制されることとが影響していると考えられる。
したがって、(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)「VCR」は、(3)式で算出されるγが2.5μm以上となる範囲で高いことが好ましい。具体的には、VCRは、500℃/s以上であることが好ましく、1500℃/s以上であることがより好ましい。VCRを500℃/s以上とすることにより、溶接に伴う溶接金属部でのNの放出と窒化物の析出とが抑制される。その結果、レーザ溶接部と母材との特性の差がより一層抑制されたレーザ溶接部材が得られる。また、VCRは、(3)式で算出されるγが2.5μm以上となるように、10000℃/s以下であることが好ましく、6000℃/s以下であることがより好ましい。
(5)式で示される「DF」は、N以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値である。(5)式は、特許文献6に示されているDF値からNの項を除いたものである。上記(5)式で示されるように、オーステナイト相を増加させる元素であるNi、Mn,Cu、Cが多い程、N以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度「DF」が低くなり、オーステナイト相の化学的安定度が高くなる。
前述の通り、省合金二相ステンレス鋼の化学組成では、オーステナイト相はほぼNの拡散のみで形成される。しかしながら、オーステナイト再析出量を決定する因子としては、N以外の元素によるオーステナイト相安定度が影響する。なぜなら、N以外の元素によるオーステナイト相安定度が高い場合、オーステナイトを生成するためのN量が少なくて済むからである。
(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度「DF」は、(3)式で算出されるγが2.5μm以上となるように、100以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。また、DFが50未満であると、鋼材中のN含有量が下限値であっても母材のオーステナイト量が70%を超える可能性が高い。このため、DFは50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。
以下、実施例について記載する。
表1および表2に溶接に用いた二相ステンレス鋼材の化学組成(質量%)を示す。なお、表1および表2に記載されている成分以外は、Feおよび不可避的不純物元素であり、空欄は添加していないことを示す。また表中のREMはランタノイド系希土類元素を意味し、含有量はそれら元素の合計を示している。
二相ステンレス鋼材は、以下に示す方法により製造した。
表1および表2に示す成分を有する鋼を、実験室の50kg真空誘導炉によりMgOるつぼ中で溶製し、厚さが約100mmの扁平鋼塊に鋳造した。鋼塊の本体部分より熱間圧延用素材を加工し、得られた素材を1180℃の温度に1〜2h加熱後、仕上温度950〜850℃の条件にて圧延し、10mm厚または20mm厚の熱間圧延鋼板を得た。
なお、圧延直後の鋼材に対して、鋼材温度が800℃以上の状態より200℃以下までスプレー冷却を実施した。また、最終の溶体化熱処理は、熱間圧延鋼板に対して、1050℃で20分間均熱後、水冷の条件で実施した。
最終の溶体化熱処理後の鋼板を切断してなる鋼材(母材)を2枚用意し、2枚の鋼材の接合面をI型開先に加工した。そして、2枚の鋼材の接合面を対向させて、COレーザ溶接機を用いて突合せ溶接を行うことにより、番号No.1〜No.23の溶接部材(溶接継手)を得た。
なお、レーザ溶接時に溶加材(溶接棒)は使用しなかった。また、溶接条件は下記のA〜Cの3通りで行った。
A:2枚の鋼材の板厚10mm、出力7kV、溶接速度0.6m/min。
B:2枚の鋼材の板厚20mm、出力7kV、溶接速度0.6m/min。
C:2枚の鋼材の板厚10mm、出力7kV、溶接速度2m/min。
上記のA〜Cの各条件の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)「VCR」を、上記(6)式を用いて算出した。その結果、Aの条件では419℃/s、Bの条件では1676℃/s、Cの条件では4654℃/sであった。
番号No.1〜No.23の溶接部材について、上記(1)式または(2)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerを算出した。(1)式または(2)式中の溶接金属部中の窒素濃度(質量%)「N」としては、溶接部材の溶接金属部から溶接金属を約1g切り出し、酸素・窒素分析計を用いて化学分析を行うことにより測定した数値を用いた。
また、番号No.1〜No.26の溶接部材について、上記(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)「Nre」、上記(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値「DF」を算出し、「Nre」と「DF」と「VCR」とを用いて上記(3)式で算出される溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値γを算出した。
「N」の測定結果と「Nprer」「Nre」「DF」「VCR」「γ」の算出結果を表3に示す。
また、以下の方法により、番号No.1〜No.26の溶接部材の母材として使用した各鋼材について、オーステナイト相の面積率を調べた。その結果を表2に示す。
鋼材の圧延方向と平行な断面を樹脂に埋め込んだサンプルを作成し、サンプルの断面を鏡面研磨してからKOH水溶液中で電解エッチングを行って、断面の組織を表出させた。その後、サンプルの表出された断面を、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で撮影した。そして、光学顕微鏡で撮影した視野が約30mmの画像の画像解析を行うことによってフェライト相の面積率を測定し、残りの部分をオーステナイト相の面積率とした。
また、以下の方法により、番号No.1〜No.26の溶接部材において、溶接金属部の断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均を調べた。
フェライト相の面積率の測定に用いた、光学顕微鏡で撮影した視野が約30mmの画像上における任意の30箇所について、オーステナイト相の幅を測定し、得られた結果から算出した平均値を、上記のオーステナイト相の幅の平均とした。
図1は、溶接部材における溶接金属部の断面の顕微鏡写真の一例を示す。図1に示すように、フェライト相の粒界が、オーステナイト相で完全に覆われており、フィルム状Cr窒化物の析出が抑制されていることが分かった。また、図1に示すように、溶接金属部において、フェライト相の粒界に析出したオーステナイト相と、フェライト相の粒内に析出したオーステナイト相は容易に判別しうる。
また、以下の方法により、番号No.1〜No.26の溶接部材の孔食電位差を算出し、耐食性を評価した。
余盛を除去した表層から、レーザ溶接による溶接線を中央として25mm幅の試験片を採取し、中央の12mm幅を測定面としたものをレーザ溶接部(溶接金属部およびHAZ部)試験片とした。また、溶接線から30mm外れた位置から採取したものを母材試験片とした。レーザ溶接部試験片および母材試験片は、それぞれ6個ずつ採取した。
そして、各試験片の表面を研磨粒度#600で研磨し、表皮下1mmの面に対してJIS G0577に定められた方法にて、飽和塩化銀電極(SSE)を用いて、電流密度100μA/cmに対応する孔食電位(Vc’100)を測定した。その後、母材とレーザ溶接部のそれぞれについて、6個の試験片の結果の平均値を求めた。そして、レーザ溶接部の孔食電位の平均値と、母材の孔食電位の平均値との差(レーザ溶接部−母材)を求め、孔食電位差とした。
レーザ溶接部と母材との孔食電位差が0.15V以下である場合、孔食電位差が小さく、耐食性が十分であると評価した。
また、母材の孔食電位が0.25V(vs SSE)以上である場合、母材の耐食性が充分であると評価した。
また、以下の方法により、番号No.1〜No.26の溶接部材の母材として使用した鋼材の靱性を評価した。
JIS 4号Vノッチシャルピー試験片を鋼材の圧延方向と直角の方向より各3本切り出し、破壊が圧延方向に伝播するようにVノッチを加工して、最大エネルギー500Jの試験機にて衝撃試験を実施し、−20℃での衝撃値を測定した。母材の衝撃値が100J/cm以上である場合、母材の靭性が十分であると評価した。
溶接金属部の断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均(γ相幅平均値)、孔食電位差、母材の孔食電位、母材の衝撃値の評価結果を表3に示す。
表3に示す番号No.1〜No.26のオーステナイト再析出幅の計算値γとγ相幅平均値の結果から、(3)式を用いて「γ」を算出することでγ相幅平均値を高精度で推定できることが確認できた。
表3に示すように、番号No.1〜No.15の溶接部材では、γ相幅平均値が2.5μm以上であり、Nprerが1250℃以下であり、母材と溶接部との孔食電位差が小さく、母材の孔食電位および母材の衝撃値が高かった。
このうち、溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)「VCR」が500℃/s以上である番号No.2〜No.8、No.10〜No.15は、番号No.1およびNo.9と比較して、γ相幅平均値が小さいにもかかわらず、孔食電位差が小さかった。
番号No.16は、Mn含有量が少ないためNprerが高くなった。このため、Cr窒化物が析出して、溶接金属部の耐食性が低下し、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。番号No.17は、各成分元素の成分範囲は満たしているもののNprerが高いため、番号No.16と同様に、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。
番号No.18は、Ni含有量が少ないため、母材の靭性が低かった。
番号No.19はC含有量が多いため、No.20はCr含有量が少ないため、母材の孔食電位が低かった。
番号No.21は、Cr含有量が多く、母材のオーステナイト相の面積率が低く、溶接部のγ相幅平均値が小さいため、母材の衝撃値(靭性)が小さくなるとともに、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。また、No.22は、N含有量が多いため、Nprerが高くなった。そのため、番号No.22では、Cr窒化物が析出し、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。
番号No.23は、N含有量が少なく、γ相幅平均値が小さいため、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。
番号No.24は、Cu含有量が多いため、Nprerが高くなった。このため、Cr窒化物が析出し、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。
番号No.25は、母材のオーステナイト相の面積率が低く、母材の靭性が低かった。
番号No.26は、成分(「Nre」「DF」)に対応する冷却速度「VCR」が速すぎるために、オーステナイト再析出幅の計算値γが2.5μm未満の条件で溶接工程を行った例である。番号No.26では、γ相幅平均値が小さいため、母材と溶接部との孔食電位差が大きくなった。
以上の実施例からわかるように、本発明によりレーザ溶接部の耐食性が良好な二相ステンレス鋼レーザ溶接部材が得られることが明確となった。
本発明によれば、Ni節減またはNiおよびMoを節減した省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接により溶接した場合の大きな課題の一つであるレーザ溶接部(溶接金属部およびHAZ部)の耐食性低下を抑制できる。このため、省合金二相ステンレス鋼を構造材等に使用する際の課題を少なくできる。その結果、低コストでオーステナイト系ステンレス鋼を代替する用途への省合金二相ステンレス鋼の用途の拡大が図れ、産業上寄与するところは極めて大である。

Claims (8)

  1. 化学組成が質量%にて、
    C :0.04%以下、
    Si:0.10〜1.00%、
    Mn:0.50〜6.00%、
    P :0.050%以下、
    S :0.0050%以下、
    Cr:20.0〜25.0%、
    Ni:1.00〜6.00%、
    N :0.120〜0.250%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、オーステナイト相の面積率が40%以上70%以下である省合金二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接して溶接金属部を形成した溶接部材であり、
    前記溶接金属部は、断面のフェライト相の粒界に析出したオーステナイト相の幅の平均が2.5μm以上であり、
    前記溶接部材は、下記(1)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下であることを特徴とするレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
    prer=800N−3Cr+20Si+10Ni−4Mn+1140・・・(1)
    (1)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示す。
  2. 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
    Mo:1.50%以下、
    Cu:2.00%以下から選ばれる1種または2種を含有し、
    前記溶接部材は、下記(2)式で算出されるNprerが1250℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
    prer=800N−3Cr+20Si+6.5Mo+10Ni−4Mn+15Cu+1140・・・(2)
    (2)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示す。
  3. 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
    V :0.05〜0.50%、
    Nb:0.010〜0.200%、
    Ti:0.0030〜0.050%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
  4. 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
    Al:0.003〜0.045%、
    O :0.007%以下から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
  5. 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    REM:0.050%以下、
    B :0.0040%以下から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
  6. 前記二相ステンレス鋼材は、更に、質量%にて、
    Zr:0.020%以下、
    Ta:0.070%以下、
    Co:0.02〜1.00%、
    W :1.00%以下、
    Sn:0.100%以下から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のレーザ溶接部の特性が良好な省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の化学組成を有する二相ステンレス鋼材を、溶加材を用いずにレーザ溶接で溶接する溶接工程を有し、
    前記溶接工程は、下記(3)式で算出される溶接金属部のオーステナイト再析出幅の計算値γが2.5μm以上となる条件で、下記(7)式で算出されるCr窒化物の析出開始温度の計算値Nprerが1250℃以下となるように行うことを特徴とする省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法。
    γ=(1200Nre−1.2DF+100)/√(VCR)・・・(3)
    (3)式中の「Nre」は下記(4)式で示される溶接金属部中の窒素濃度推定値(質量%)を示し、「DF」は下記(5)式で示されるN以外の元素による溶接金属部中のフェライト相安定度を示す数値であり、「VCR」は下記(6)式で示される溶接金属部の1000℃における冷却速度推定値(℃/s)である。
    re=N−10×N/√(VCR)・・・(4)
    (4)式中の「VCR」は下記(6)式で示される数値であり、「N」は二相ステンレス鋼材中の窒素含有量(質量%)を示す。
    DF=7.2(Cr+0.88Mo+0.78Si)−8.9(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C)−44.9・・・(5)
    (5)式中の各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
    (6)式中の「λ」は二相ステンレス鋼材の熱伝導率(W/m/K)、「c」は二相ステンレス鋼材の比熱(J/kg/K)、「ρ」は二相ステンレス鋼材の密度(kg/m)、「h」は二相ステンレス鋼材の溶接部の素材肉厚(m)、「V」は溶接速度(m/s)、「P」はレーザ出力(W)、「T」は速度を算出する温度(1000℃)、「T」は室温(20℃)を示す。
    prer=800N−3Cr+20Si+6.5Mo+10Ni−4Mn+15Cu+1140・・・(7)
    (7)式中の「N」は溶接金属部中の窒素濃度(質量%)を示し、各元素記号は、その元素の二相ステンレス鋼材中の含有量(質量%)を示し、その元素が前記鋼材中に含まれない場合は0とする。
  8. 前記VCRを500℃/s以上とすることを特徴とする請求項7に記載の省合金二相ステンレス鋼レーザ溶接部材の製造方法。
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