JP2022181632A - オーステナイト系ステンレス鋼材及び溶接構造体 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼材及び溶接構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成し得る安価なオーステナイト系ステンレス鋼材を提供する。【解決手段】質量基準で、C:0.010~0.060%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:6.00~14.00%、Cr:20.0~26.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、Ti:0.090~2.000%、N:0.100~0.250%、O:0.0070%以下を含み、残部がFe及び不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼材である。【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼材及び溶接構造体に関する。
SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼材は、耐食性及び強度が良好であることから、建築部材、自動車部品などの様々な用途で用いられている。しかしながら、SUS304は、用途によっては耐食性が十分とはいえないことがある。そのため、より高い耐食性が要求される用途では、Niを増量するとともにMoを添加したオーステナイト系ステンレス鋼材(SUS316、SUS316L)が用いられている。
他方、様々な用途でオーステナイト系ステンレス鋼材を用いる場合、オーステナイト系ステンレス鋼材に溶接が施されることが多いが、溶接部、特にHAZ(熱影響部:Heat Affected Zone)が鋭敏化して耐食性が低下することがある。HAZでは、Cr炭化物の析出温度で保持されると、粒界にCr炭化物が析出し、その周辺にCr欠乏層が生じることで鋭敏化が起こる。なお、HAZとは、溶接の影響によって温度が上昇する箇所を意味する。
HAZの鋭敏化については、Cの含有量を低減したり、Tiを添加したりすることにより、Cr炭化物の生成を抑制することが知られている。SUS316Lは、Cの含有量を低減しているため、HAZの耐食性も良好であると考えられる。
しかしながら、SUS316Lは、MoやNiなどの高価な元素を多く含むため、製品価格が高くなる。
HAZの耐食性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼材としては、例えば、質量%で、C:0.04~0.15%、Si:1.50%以下、Mn:2.0~6.0%、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:1.0~4.9%、Cr:15.0~19.0%、Cu:1.0~3.5%、N:0.04~0.20%、Sn:0.02%以下、B:0.001~0.010%を含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、溶接HAZ部を10%しゅう酸溶液中にて面積1cm2当たりの電流を1Aで90秒間エッチングを施した場合に、鋭敏化組織がないことを特徴とする低Niオーステナイト系ステンレス鋼板が提案されている(特許文献1)。
特開2014-189801号公報
特許文献1のオーステナイト系ステンレス鋼板は、Crの量が少ないため、用途によっては耐食性が十分とはいえない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成し得る安価なオーステナイト系ステンレス鋼材を提供することを目的とする。
また、本発明は、母材及び溶接部の耐食性に優れる安価な溶接構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、SUS316Lの組成をベースにオーステナイト系ステンレス鋼材の組成について検討した結果、特定の組成とすることで上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、質量基準で、C:0.010~0.060%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:6.00~14.00%、Cr:20.0~26.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、Ti:0.090~2.000%、N:0.100~0.250%、O:0.0070%以下を含み、残部がFe及び不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼材である。
また、本発明は、金属材同士が溶接された溶接構造体であって、
前記金属材の少なくとも一方が、前記オーステナイト系ステンレス鋼材である溶接構造体である。
本発明によれば、耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成し得る安価なオーステナイト系ステンレス鋼材を提供することができる。
また、本発明によれば、母材及び溶接部の耐食性に優れる安価な溶接構造体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
(オーステナイト系ステンレス鋼材)
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、C:0.010~0.060%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:6.00~14.00%、Cr:20.0~26.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、Ti:0.090~2.000%、N:0.100~0.250%、O:0.0070%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる。
ここで、本明細書において「ステンレス鋼材」とは、ステンレス鋼から形成された材料のことを意味し、その材形は特に限定されない。材形の例としては、板状(帯状を含む)、棒状、管状などが挙げられる。また、断面形状がT形、I形などの各種形鋼であってもよい。また、「不純物」とは、オーステナイト系ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
また、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Mo:3.00%以下、B:0.0001~0.0100%から選択される1種以上を更に含むことができる。
また、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Mg:0.0001~0.1000%、REM:0.0001~0.1000%、Ca:0.0001~0.1000%から選択される1種以上を更に含むことができる。
さらに、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Co:0.001~1.000%、Hf:0.001~1.000%、Ta:0.001~1.000%、Sn:0.001~0.100%から選択される1種以上を更に含むことができる。
以下、各成分について詳細に説明する。
<C:0.010~0.060%>
Cの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材自体の耐食性が低下してしまう。また、オーステナイト系ステンレス鋼材を溶接した際に、HAZの鋭敏化が起こるため、溶接部の耐食性が低下する。そのため、Cの含有量の上限値は、0.060%、好ましくは0.059%、より好ましくは0.058%に制御される。一方、Cの含有量は少なすぎると、精練コストの上昇につながる。そのため、Cの含有量の下限値は、0.010%、好ましくは0.015%、より好ましくは0.020%に制御される。
なお、本明細書において「耐食性」とは、海水や塩水などのNaClを含む腐食環境下における耐食性のことを意味する。
<Si:2.00%以下>
Siの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Siの含有量の上限値は、2.00%、好ましくは1.80%、より好ましくは1.60%に制御される。一方、Siの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
<Mn:3.00%以下>
Mnは、オーステナイト相(γ相)生成元素である。Mnの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Mnの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.80%、より好ましくは2.50%に制御される。一方、Mnの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
<P:0.035%以下>
Pの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Pの含有量の上限値は、0.035%、好ましくは0.034%、より好ましくは0.033%に制御される。一方、Pの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.005%、更に好ましくは0.010%である。
<S:0.0300%以下>
Sの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の製造性が低下してしまう。そのため、Sの含有量の上限値は、0.0300%、好ましくは0.0250%、より好ましくは0.0200%に制御される。一方、Sの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0001%、より好ましくは0.0003%、更に好ましくは0.0005%である。
<Ni:6.00~14.00%>
Niは、Mnと同様にオーステナイト相(γ相)生成元素である。Niは高価であるため、含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Niの含有量の上限値は、14.00%、好ましくは11.00%、より好ましくは10.00%に制御される。一方、Niの含有量は少なすぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性や加工性が低下する。そのため、Niの含有量の下限値は、6.00%、好ましくは6.50%、より好ましくは7.00%に制御される。
<Cr:20.0~26.0%>
Crの含有量は多すぎると、金属間化合物(σ相)の生成が促進されるため、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Crの含有量の上限値は、26.0%、好ましくは25.5%、より好ましくは25.0%に制御される。一方、Crの含有量は少なすぎると、耐食性が十分に得られない。そのため、Crの含有量の下限値は、20.0%、好ましくは20.5%に制御される。
<Cu:0.01~3.00%>
Cuの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Cuの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.50%、より好ましくは2.00%に制御される。一方、Cuの含有量は少なすぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Cuの下限値は、0.01%、好ましくは0.10%、より好ましくは0.15%に制御される。
<Al:0.200%以下>
Alの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Alの含有量の上限値は、0.200%、好ましくは0.100%、より好ましくは0.050%に制御される。一方、Alの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0001%、より好ましくは0.0002%、更に好ましくは0.0003%である。
<Ti:0.090~2.000%>
Tiは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のC、Nを固定して耐粒界腐食性を向上させる元素である。そのため、Tiを添加することでHAZの鋭敏化が抑制され、溶接部の耐食性が向上する。また、Tiは、Ti炭窒化物を分散析出させる元素でもある。そのため、Tiを添加することで分散析出したTi炭窒化物のピン止め効果によって溶接時に結晶粒の粗大化を抑制することができる。このようなTiによる効果を得る観点から、Tiの含有量の下限値は、0.090%、好ましくは0.095%、より好ましくは0.100%に制御される。また、Tiの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Tiの含有量の上限値は、2.000%、好ましくは1.800%、より好ましくは1.600%に制御される。
<N:0.100~0.250%>
Nは、耐食性の向上や、オーステナイト相の安定化に有効な元素である。このようなNによる効果を得る観点から、Nの含有量の下限値は、0.100%、好ましくは0.105%に制御される。一方、Nは、Crと結合してCr窒化物を生成し、鋭敏化の原因となるため、溶接部の耐食性が低下する原因となる。このCr窒化物の生成は、Tiの添加によってTi炭窒化物を優先的に生成させることによって抑制することができる。TiによるCr窒化物の生成抑制効果を確保し、鋭敏化を抑える観点から、Nの含有量の上限値は、0.250%、好ましくは0.230%、より好ましくは0.210%に制御される。
<O:0.0070%以下>
Oは、アルミナ(Al23)系の介在物を生成する要因となる。アルミナ系の介在物は、硬質なため圧延によっても分断され難く、粗大な(直径15μm以上の)介在物として残存するため、オーステナイト系ステンレス鋼材の疲労特性が低下する。すなわち、Oの含有量が多すぎると、このアルミナ系の介在物の生成量が増加してオーステナイト系ステンレス鋼材の疲労特性が低下する。そのため、Oの含有量の上限値は、0.0070%、好ましくは0.0060%、より好ましくは0.0055%に制御される。一方、Oの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0010%、より好ましくは0.0020%、更に好ましくは0.0030%である。
<Mo:3.00%以下>
Moは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。ただし、Moは高価であるため、Moの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Moの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.00%、より好ましくは1.00%、更に好ましくは0.50%、特に好ましくは0.20%に制御される。一方、Moの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.002%、更に好ましくは0.003%である。
<B:0.0001~0.0100%>
Bは、製造性(熱間加工性)を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Bによる効果を得る観点から、Bの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0010%に制御される。一方、Bの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Bの含有量の上限値は、0.0100%、好ましくは0.0060%、より好ましくは0.0040%に制御される。
<Mg:0.0001~0.1000%>
Mgは、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Mgによる効果を得る観点から、Mgの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、Mgの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Mgの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
<REM:0.0001~0.1000%>
REM(希土類元素)は、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。REMによる効果を得る観点から、REMの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、REMは高価であるため、REMの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、REMの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
なお、REMは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。これらは単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
<Ca:0.0001~0.1000%>
Caは、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Caによる効果を得る観点から、Caの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、Caの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Caの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
<Nb:0.001~1.000%>
Nbは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Nbによる効果を得る観点から、Nbの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Nbの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Nbの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<V:0.001~1.000%>
Vは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Vによる効果を得る観点から、Vの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Vの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Vの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<Zr:0.001~1.000%>
Zrは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Zrによる効果を得る観点から、Zrの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Zrの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Zrの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<W:0.001~1.000%>
Wは、高温強度及び耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Wによる効果を得る観点から、Wの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Wの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下するとともに、製造コストが上昇してしまう。そのため、Wの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<Co:0.001~1.000%>
Coは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Coによる効果を得る観点から、Coの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Coの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下するとともに、製造コストが上昇してしまう。そのため、Coの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<Hf:0.001~1.000%>
Hfは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Hfによる効果を得る観点から、Hfの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Hfの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Hfの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<Ta:0.001~1.000%>
Taは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Taによる効果を得る観点から、Taの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Taの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Taの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
<Sn:0.001~0.100%>
Snは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Snによる効果を得る観点から、Snの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Snの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の製造性が低下してしまう。そのため、Snの含有量の上限値は、0.100%、好ましくは0.050%、より好ましくは0.030%に制御される。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Ni当量に対するCr当量の比(Cr当量/Ni当量)が1.48~1.95であることが好ましい。
ここで、Ni当量は、下記式(1)で表される。
Ni当量=Ni+0.5Mn+30C+30(N-0.06) ・・・(1)
また、Cr当量は、下記式(2)で表される。
Cr当量=Cr+1.5Si+Mo+0.5Nb+2Ti ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。なお、所定の元素が含まれない場合は当該元素の値は0とする。
Ni当量に対するCr当量の比が上記の範囲であれば、溶接時にFAモード凝固とすることができるため、高温割れを抑制することができる。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Ti炭窒化物の含有量が好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。このような範囲にTi炭窒化物の含有量を制御することにより、Ti炭窒化物のピン止め効果によって溶接時に結晶粒の粗大化を抑制することができる。なお、Ti炭窒化物の含有量の上限値は、特に限定されないが、好ましくは1.00%、より好ましくは0.80%、更に好ましくは0.60%である。
なお、Ti炭窒化物の含有量は、後述の方法によって測定することができる。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、上記のような特徴を有していれば、その種類は特に限定されない。例えば、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、熱延鋼材、熱延焼鈍鋼材、冷延鋼材、冷延焼鈍鋼材などの各種鋼材とすることができる。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、上記の組成を有するステンレス鋼を溶製すること以外は、当該技術分野において公知の方法を用いることによって製造することができる。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼材が冷延焼鈍鋼材である場合、次のようにして製造することができる。まず、上記の組成を有するステンレス鋼を溶製して鍛造又は鋳造した後、熱間圧延を行って熱延鋼材を得る。次に、熱延鋼材に対して焼鈍、酸洗、冷間圧延を適宜行って冷延鋼材を得る。次に、冷延鋼材に対して焼鈍及び酸洗を適宜行って冷延焼鈍鋼材を得る。
なお、各工程における条件については、オーステナイト系ステンレス鋼材の組成に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成することができ、しかも安価であるため、建築部材、自動車部品などの様々な用途で用いることができる。
(溶接構造体)
本発明の実施形態に係る溶接構造体は、金属材同士が溶接されており、金属材の少なくとも一方が、上記のオーステナイト系ステンレス鋼材である。上記のオーステナイト系ステンレス鋼材は、耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成することができ、しかも安価であるため、母材及び溶接部の耐食性に優れる安価な溶接構造体とすることが可能となる。
金属材は、他方が上記のオーステナイト系ステンレス鋼材とは異なる金属材であってもよいが、両方が上記のオーステナイト系ステンレス鋼材であることが好ましい。溶接される金属材の両方を上記のオーステナイト系ステンレス鋼材とすることにより、母材及び溶接部の耐食性をより一層向上させることができる。
本発明の実施形態に係る溶接構造体は、溶接金属部におけるδフェライト相の含有量が好ましくは1.0~10.0%、より好ましくは2.0~9.0%である。
溶接金属部におけるδフェライト相を上記の範囲に制御することにより、溶接金属部がFAモード凝固しているため、高温割れを抑制することができる。
ここで、本明細書において「溶接金属部」とは、溶接の影響によって溶融して再凝固する部分のことを意味する。
本発明の実施形態に係る溶接構造体は、溶接部の孔食電位が0.50V以上であることが好ましい。このような範囲の孔食電位であれば、溶接部の耐食性が良好であるということができる。なお、孔食電位の上限値は、特に限定されないが、例えば2.00V、好ましくは1.50Vである。
ここで、本明細書において「溶接部」とは、溶接金属部及びHAZの両方を含む部分を意味する。すなわち、「溶接部」とは、溶接の影響により、溶融して再凝固する部分と、溶融はしないものの熱影響を受ける部分との両方を含む。また、溶接部の孔食電位は、後述する方法によって測定することができる。また、電位はAg/AgCl基準とする。
本発明の実施形態に係る溶接構造体は、金属材の少なくとも一方に上記のオーステナイト系ステンレス鋼材を用いること以外は、当該技術分野において公知の方法を用いることによって製造することができる。
金属材同士を溶接する方法としては、特に限定されず、アーク溶接(TIG溶接など)、電子ビーム溶接、レーザー溶接、プラズマアーク溶接、スポット溶接などの当該技術分野において公知の方法を用いることができる。溶接は、溶接金属部におけるδフェライト相の含有量を調整するため溶加材を適宜用いてもよい。
なお、溶接条件は、溶接の種類やオーステナイト系ステンレス鋼材の組成に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
以下に、実施例を挙げて本発明の内容を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
(実施例1~9及び比較例1~4)
表1に示す組成を有するステンレス鋼30kgを真空溶解で溶製し、厚さ30mmの板に鍛造した後、1230℃で2時間加熱し、厚さ4.0mmに熱間圧延して熱延鋼板を得た。次に、熱延鋼板を焼鈍して酸洗して熱延焼鈍鋼板を得た後、熱延焼鈍鋼板を厚さ1.0mmに冷間圧延して冷延鋼板を得た。次に、冷延鋼板を焼鈍した後、水冷し、酸洗を行うことによって冷延焼鈍鋼板を得た。
Figure 2022181632000001
上記で得られた冷延焼鈍鋼板に対して以下の評価を行った。
<Ti炭窒化物の含有量>
冷延焼鈍鋼板から一辺が20mmの角型試験片を切削によって切り出し、全面を#600の研磨材で湿式研磨した後、SPEED法による電解エッチングを行った。SPEED法は、10質量%アセチルアセトン溶液を用い、400mVの定電位電解を5kクーロンとなるまで電解を行い、電解後の溶液を格子径0.05μmのフィルターで濾過して介在物(Ti炭窒化物)を採取した。採取介在物量及び角形試験片の減肉量を質量測定によって求めた。そして、以下の式によって介在物(Ti炭窒化物)の含有量を求めた。
介在物(Ti炭窒化物)の含有量=採取介在物量/角型試験片の減肉量×100
<溶接金属部におけるδフェライト相の含有量>
冷延焼鈍鋼板に対してビードオンプレートのTIG溶接(溶加材なし)と同じようにして溶解させる(ただし、溶接は行わない)疑似溶接加工を行った。TIG溶接では、裏ビード幅が3mmとなるように溶接入熱を調整した。その後、疑似溶接加工部において、フェライトスコープ(Fischer社製FERITESCOPE(登録商標)FMP30)を用いてδフェライト相の含有量を測定した。測定は、疑似溶接加工部の任意の3箇所で行い、その平均値を結果とした。この評価において、δフェライト相の含有量が1.0~10%であれば、溶接金属部がFAモード凝固しているとみなすことができる。
<溶接部の耐食性:孔食電位>
溶接部の耐食性は、JIS G0577:2014に準拠して孔食電位を測定することによって評価した。具体的には、次のようにして孔食電位を測定した。冷延焼鈍鋼板に対して上記と同様にして疑似溶接加工を行い、疑似溶接加工部における耐食性の評価をJIS G0577:2014に準拠して行った。疑似溶接加工部が中央にくるように15mm×20mmの試験片を切り出した後、#600の湿式研磨を行った。次に、この試験片の電極面(露出部分)が10mm×10mmとなるように、電極面以外の部分をシリコーン樹脂で絶縁被覆して孔食電位測定用試験片を得た。次に、Ar脱気を十分に行った30℃の3.5%NaCl溶液中に孔食電位測定用試験片を浸漬し、自然電位から20mV/分で動電位アノード分極を行い、孔食電位を測定した。孔食電位は、電流が100μA/cm2流れたときの電位とした。この評価において、孔食電位が0.50V vs.Ag/AgCl(以下、電位はすべてAg/AgCl基準とする)以上であったものを合格とみなすことができる。
上記の各評価結果を表2に示す。
Figure 2022181632000002
表2に示されるように、実施例1~9の冷延焼鈍鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼材)は、所定の組成を満たしているため、溶接部の耐食性が良好であった。なお、上記では、母材の耐食性は測定していないものの、母材の耐食性は、溶接部の耐食性に比べて高くなるため、母材の耐食性も良好であるといえる。
一方、比較例1の冷延焼鈍鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼材)は、Niの含有量が多すぎるとともにNの含有量が少なすぎたため、溶接金属部におけるδフェライト相の含有量が少なくなった。また、この冷延焼鈍鋼板は、Cr当量/Ni当量が低すぎたため、溶接金属部におけるδフェライト相の含有量が少なくなり、高温割れが起こり易く、高価なNiを多量に含むため製造コストも高い。
比較例2の冷延焼鈍鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼材)は、Cr及びNの含有量が少なすぎたため、溶接部の耐食性が十分でなかった。
比較例3の冷延焼鈍鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼材)は、Cの含有量が多すぎるとともにTiの含有量が少なすぎたため、溶接部の耐食性が十分でなかった。
比較例4の冷延焼鈍鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼材)は、Tiの含有量が少なすぎたため、溶接部の耐食性が十分でなかった。また、この冷延焼鈍鋼板は、Cr当量/Ni当量が高すぎたため、溶接金属部におけるδフェライト相の含有量が多くなり、高温割れが起こり易くなった。
本発明によれば、耐食性に優れ、溶接した際に耐食性に優れる溶接部を形成し得る安価なオーステナイト系ステンレス鋼材を提供することができる。また、本発明によれば、母材及び溶接部の耐食性に優れる安価な溶接構造体を提供することができる。

Claims (9)

  1. 質量基準で、C:0.010~0.060%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:6.00~14.00%、Cr:20.0~26.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、Ti:0.090~2.000%、N:0.100~0.250%、O:0.0070%以下を含み、残部がFe及び不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼材。
  2. 質量基準で、Mo:3.00%以下、B:0.0001~0.0100%から選択される1種以上を更に含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
  3. 質量基準で、Mg:0.0001~0.1000%、REM:0.0001~0.1000%、Ca:0.0001~0.1000%から選択される1種以上を更に含む、請求項1又は2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
  4. 質量基準で、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Co:0.001~1.000%、Hf:0.001~1.000%、Ta:0.001~1.000%、Sn:0.001~0.100%から選択される1種以上を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
  5. 下記式(1)で表されるNi当量に対する下記式(2)で表されるCr当量の比(Cr当量/Ni当量)が1.48~1.95である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
    Ni当量=Ni+0.5Mn+30C+30(N-0.06) ・・・(1)
    Cr当量=Cr+1.5Si+Mo+0.5Nb+2Ti ・・・(2)
    式中、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
  6. 0.01質量%以上のTi炭窒化物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
  7. 金属材同士が溶接された溶接構造体であって、
    前記金属材の少なくとも一方が、請求項1~6のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材である溶接構造体。
  8. 溶接金属部におけるδフェライト相の含有量が1.0~10.0%である、請求項7に記載の溶接構造体。
  9. 溶接部の孔食電位が0.50V以上である、請求項7又は8に記載の溶接構造体。
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