JP2016187310A - 湯種生地用ベーカリー製品改良材、ベーカリー製品用湯種生地、ベーカリー製品、及び、ベーカリー製品用湯種生地の製造方法 - Google Patents
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特許文献1には、酸性水中油型乳化脂を添加することにより、湯種生地のカビ発生が防止されソフトでもっちりした食感が得られることが記載され、特許文献2には、特定の乳原料を添加することにより、長時間保存後の湯種生地を用いた時の食感の悪化が防止されることが記載されているが、これらの方法では、とくに十分な効果、とくに歯切れの良さ(とりわけ歯切れの良さと風味との両立)が得られないため、さらに改良が求められていた。また特許文献3、4には湯種法で得られるパンの食感を向上する目的からそば粉を添加する方法が提案されているが、やはり、この方法によっても、十分な効果、とくに歯切れの良さが得られなかった。
すなわち、本発明は下記(A)及び(B)を満たすことを特徴とする、湯種生地用ベーカリー製品改良材である。
(A)乳由来のリン脂質及び乳タンパク質を含有し、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳タンパク質を1〜15質量部含有する水性液であること。
(B)pHが2.5〜6.4であること。
(A)乳由来のリン脂質及び乳タンパク質を含有し、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳タンパク質を1〜15質量部含有する水性液であること。
(B)pHが2.5〜6.4であること。
本発明の湯種生地用ベーカリー製品改良材は、下記(A)及び(B)を満たすものである。
(B)pHが2.5〜6.4であること。
ここでいう水性液とは、水溶液のほか、懸濁液や水相を主体として少量の水に不溶の成分が分散した水相を連続相とする液状物を意味するものとする。
各種動物の乳は、初期発育を助けるために脂質、タンパク質、乳糖、アミノ酸等のエネルギー源を多く含み、これらは水中油型の乳化状態で安定して存在することが知られている。乳の乳化安定性に大きな役割を果たしているのは主にリン脂質と乳タンパク質であり、その含有量は、例えば牛乳では、乳タンパク質が3.3〜3.8質量%、リン脂質が0.03〜0.04質量%である。
本発明の効果を発揮する上で、なぜ乳由来のリン脂質と乳タンパク質が特定の割合で含まれることが必須条件となっているのか明らかではないが、後述するpH条件下によってリン脂質と乳タンパク質が複合体を形成し、その際にリン脂質と乳タンパク質のバランスが重要なのではないかと本発明者らは考えている。
なお、該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものや乳原料を濃縮した後にリゾ化したものが挙げられる。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
ここでは、上記乳原料の場合を例に説明する。但し、抽出方法などについては乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
また本発明におけるタンパク質の定量は、例えばキエルダール法にて測定した全窒素含量に、係数6.38を乗じた値を用いる方法によることができる。
本発明の湯種生地用ベーカリー製品改良材は、pHが2.5〜6.4であることが必要である。
湯種生地用ベーカリー製品改良材のpHが6.4よりも高いと酸処理が不十分となり本発明の効果が見られない。pHが2.5よりも低いと、雑味が生じる、かつ凝集物が発生し、不均一な湯種生地が形成される。
上記範囲でカルシウム塩を含有することで、乳化力をより向上させることができる。
上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のその他の原料としては、油脂、糖類、糖アルコール類、甘味料、乳蛋白質以外の乳や乳原料、酵素、セルロースやセルロース誘導体、金属イオン封鎖剤、澱粉類、穀類、無機塩類、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、食塩、岩塩、海塩、デキストリン類、乳清ミネラル、卵製品、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、臭素酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ヨウ素酸カリウムなどの酸化剤、システイン、グルタチオンなどの還元剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、グリシン、しらこたん白抽出物、ポリリジン、エタノールなどの保存料、着香料、苦味料、調味料などの呈味成分、着色料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤などがあげられる。本発明の湯種生地用ベーカリー製品改良材において、水、タンパク質、リン脂質及び酸以外の成分の合計量は、該改良材基準で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
そして急速冷却、徐冷却などの冷却操作を行っても良い。
本発明のベーカリー製品用湯種生地は、上記湯種生地用ベーカリー製品改良材を使用したベーカリー製品用湯種生地である。
本発明のベーカリー製品用湯種生地における、上記湯種生地用ベーカリー製品改良材の含有量は、湯種生地に含まれる穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、上記の湯種生地用ベーカリー製品改良材を、上記湯種生地用ベーカリー製品改良材に含まれるリン脂質と乳蛋白質の合計量が、固形分として好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部である。
該その他の原料としては、増粘安定剤、食用油脂、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類、甘味料、上記乳原料以外の乳や乳製品、卵製品、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(βガラクトシダーゼ)、αアミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストリン・環状デキストリン等のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等が挙げられる。
本発明のベーカリー製品用湯種生地の製造方法は、下記(A)及び(B)を満たす湯種生地用ベーカリー製品改良材を含有する種生地材料を、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の水の存在下に混捏するものである。
(A)乳由来のリン脂質及び乳タンパク質を含有し、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳タンパク質を1〜15質量部含有する水性液であること。
(B)pHが2.5〜6.4であること。
混捏方法は、従来湯種法に用いられている方法であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、種生地材料に熱湯を加えて混捏する方法、あるいは種生地材料に常温の水又は温湯を加え、加熱しながら混捏する方法等が挙げられ、混捏後の生地温度(捏上温度)が50〜80℃、好ましくは55〜70℃となるようにすれば良い。混捏時間は何ら限定されるものではなく、従来の湯種法において通常用いられている範囲であればよく、例えば、2〜20分である。
本発明のベーカリー生地における、上記ベーカリー製品用湯種生地の使用量は、ベーカリー生地中の全穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対し、ベーカリー製品用湯種生地に含まれる穀粉類及び/又は澱粉類の割合が好ましくは10〜90質量部、より好ましくは10〜50質量部となる量である。
なお、該ベーカリー生地の製造方法は、一般的なベーカリー生地の製造方法に従って得ることができ、パン類であれば中種法、ストレート法等、ケーキ類であれば、オールインミックス法、シュガーバッター法、フラワーバッター法等を適宜選択可能である。
焼成方法やフライ方法は、とくに制限されず、一般的なベーカリー生地の製造方法に従って得ることができる。
[表1]に記載した配合のうち、酸(フィチン酸、グルコン酸、乳酸)以外の成分を55℃条件下で攪拌しながら混合し、続いて酸(フィチン酸、グルコン酸、乳酸)を添加してそれぞれpHを調整した後、3MPaの圧力で均質化し、製造例1〜12からそれぞれ本発明の湯種生地用ベーカリー製品改良材A〜Lを得た。また、比較製造例1〜3からそれぞれ湯種生地用ベーカリー製品改良材M〜Oを得た。均質化後、湯種生地用ベーカリー製品改良材A〜L及びM〜Oについて25℃におけるpHを再度測定した。測定したpHを表1に示す。pHの測定には、HORIBA社製のカスタニーACTpHメータD−21を用いた。均質化後の湯種生地用ベーカリー製品改良材中のリン脂質及びタンパク質の含有量を上述した方法で測定した。
フィチン酸としては、50%フィチン酸[=50質量%フィチン酸水溶液]を用い、グルコン酸としては、50%グルコン酸[=50質量%グルコン酸水溶液]を用い、乳酸としては、50%乳酸[=50質量%乳酸水溶液]を用いた。
乳原料A:クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、タンパク質含有量10.5質量%、乳固形分38質量%、及び乳固形分中のリン脂質の含有量9.7質量%、油脂1質量%)
乳リン脂質高含有成分:クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物900g及びクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の噴霧乾燥物650gに対して、ヘキサン2100ml、エタノール4300mlを加えて混合した後、3時間攪拌し、濾過を行って濾液を回収した。続いて、得られた濾液をエバポレーターで濃縮した後、窒素雰囲気下で溶媒を完全に除去し、リン脂質高含有成分200gを得た。(リン脂質含有量19.5質量%、タンパク質含有量0質量%、乳固形分100質量%、油脂0質量%)
卵黄由来レシチン(油脂65質量%)
カゼインナトリウム(油脂0質量%)
〔実施例1〕
強力粉100質量部に、湯種生地用ベーカリー製品改良材1質量部、及び熱水(95℃)100質量部を加えて混捏(90rpm×2分)し、ベーカリー製品用湯種生地(a)を得た。捏上温度は65℃であった。
一方、強力粉60質量部、イースト2質量部、イーストフード0.1質量部、及び水(常温)35質量部を加えて混捏(90rpm×2分+180rpm×2分)し、中種生地を得た。この中種生地を温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。
中種発酵終了後の上記中種生地に、5℃で18時間保存後の上記ベーカリー製品用湯種生地(a)30質量部、強力粉25質量部、砂糖5質量部、食塩2質量部、及び水(常温)25質量部を加えて混捏(90rpm×3分+180rpm×4分)し、ここでマーガリン5質量部を加え、更に混捏(90rpm×3分+180rpm×5分)してベーカリー生地(a)(本捏生地)を得た。得られたベーカリー生地(a)を、フロアタイム30分とった後、220gに分割・丸めをおこない、ベンチタイム15分とった後、モルダーを使用して成形を行い、4個を2斤パン型に入れてホイロ45分として発酵させ、200℃で40分焼成してベーカリー製品(a)を得た。
得られたベーカリー製品(食パン)の食感及び風味について、下記の評価基準に従って評価を行い、その結果を表2に記載した。
湯種生地用ベーカリー製品改良材Aに代えて、それぞれ湯種生地用ベーカリー製品改良材B〜Lを使用した以外は実施例1と同様にして、ベーカリー製品用湯種生地(b〜l)、ベーカリー生地(b〜l)、およびベーカリー製品(b〜l)を得た。
得られたベーカリー製品(食パン)の食感及び風味について、下記の評価基準に従って評価を行い、その結果を表2に記載した。
湯種生地用ベーカリー製品改良材Aに代えて、それぞれ湯種生地用ベーカリー製品改良材M〜Oを1質量部使用した以外は実施例1と同様にして、比較例のベーカリー製品用湯種生地(m〜o)、ベーカリー生地(m〜o)、およびベーカリー製品(m〜o)を得た。
得られたベーカリー製品(食パン)の食感及び風味について、下記の評価基準に従って評価を行い、その結果を表2に記載した。
実施例1で使用した、湯種生地用ベーカリー製品改良材A1質量部を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例13のベーカリー製品用湯種生地(p)、ベーカリー生地(p)、およびベーカリー製品(p)を得た。
得られたベーカリー製品(食パン)の食感及び風味について、下記の評価基準に従って評価を行い、その結果を表2に記載した。
実施例1で使用した、湯種生地用ベーカリー製品改良材A1質量部を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例14のベーカリー製品用湯種生地(q)、ベーカリー生地(q)、およびベーカリー製品(q)を得た。
得られたベーカリー製品(食パン)の食感及び風味について、下記の評価基準に従って評価を行い、その結果を表2に記載した。
◎:もっちりとした食感でありながら良好な歯切れが感じられる。
○:もっちりとした食感でありながらやや歯切れが感じられる。
△:もっちりとした食感であるが、歯切れは感じられない。
×:ねちゃつきが感じられる。
××:ねちゃつきが激しい。
◎:きわめて良好である。
○:良好である。
△:やや異味が感じられる。
×:異味が感じられる。
Claims (7)
- 下記(A)及び(B)を満たすことを特徴とする、湯種生地用ベーカリー製品改良材。
(A)乳由来のリン脂質及び乳タンパク質を含有し、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳タンパク質を1〜15質量部含有する水性液であること。
(B)pHが2.5〜6.4であること。 - さらに、固形分中、乳由来のリン脂質の含有量が2質量%以上である、請求項1記載の湯種生地用ベーカリー製品改良材。
- 有機酸を含有する、請求項1又は2記載の湯種生地用ベーカリー製品改良材。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載の湯種生地用ベーカリー製品改良材を使用したベーカリー製品用湯種生地。
- 請求項4記載のベーカリー製品用湯種生地を使用したことを特徴とするベーカリー生地。
- 請求項5記載のベーカリー生地を焼成及び/又はフライしたベーカリー製品。
- 下記(A)及び(B)を満たす湯種生地用ベーカリー製品改良材を含有する種生地材料を、80〜100℃の水の存在下に混捏することを特徴とするベーカリー製品用湯種生地の製造方法。
(A)乳由来のリン脂質及び乳タンパク質を含有し、乳由来のリン脂質1質量部に対し乳タンパク質を1〜15質量部含有する水性液であること。
(B)pHが2.5〜6.4であること。
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