JP2016186124A - 溶銑の脱硫方法 - Google Patents

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崇 杉谷
貴光 中須賀
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貴光 中須賀
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慶太 大内
真也 大谷
Shinya Otani
真也 大谷
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Abstract

【課題】従来の設備を用いて脱硫効率を向上できる溶銑の脱硫方法を提供する。【解決手段】本発明の溶銑の脱硫方法は、全脱硫処理時間t[sec]及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度から、CaO系脱硫剤の全供給量St[kg]を決定する工程と、上記副原料及び第1供給量S1[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第1工程と、上記第1工程後に、上記副原料及び第2供給量S2[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第2工程と、上記第2工程後に、上記副原料及び上記全供給量Stから第1供給量S1と第2供給量S2とを減じた量のCaO系脱硫剤を1回又は2回以上の供給回数で溶銑鍋へ供給する第3工程とを備える。上記第2工程では、上記第1工程でのCaO系脱硫剤投入から下記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、CaO系脱硫剤を投入する。t×(S1/St)2.3≦p≦t×(S1/St)0.4・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、溶銑の脱硫方法に関する。
高炉から出銑される溶銑には鋼材の特性を低下させる硫黄が多量に含まれているため、鋼材に要求される硫黄濃度まで硫黄を低減する脱硫処理が行われる。この脱硫処理は溶銑又は溶鋼の段階で行われるが、近年の鋼材品質に対する要求の高まりから溶銑段階での脱硫処理が広く行われている。
溶銑の脱硫処理方法として、混銑車などの溶銑搬送容器内の溶銑に脱硫剤を吹き込んで脱硫を行う方法や、溶銑鍋内に溶銑を装入し、この溶銑鍋内で機械撹拌しつつ脱硫を行う方法が採用される。これらの中でも、脱硫処理剤の反応効率が高く低硫黄濃度化が可能な点で、機械撹拌による脱硫方法が主に用いられる。
機械撹拌による脱硫は、脱硫処理時間が長いほど硫黄濃度を低減できるが、脱硫処理に利用できる時間は、工場での操業状況に応じて制限される。そのため、より短時間で硫黄濃度を低減できるよう脱硫効率の向上が求められる。
このような機械撹拌による脱硫において脱硫効率を向上させる方法として、CaO系脱硫剤を3段階以上に分割し、かつ3分間以上の間隔を隔てて溶銑鍋に添加する脱硫方法が提案されている(特開2009−191300号公報参照)。この脱硫方法は、CaO系脱硫剤を分割添加することで、一括添加する場合に比べてCaOの凝集する比率を低減し、これにより脱硫反応効率を向上させている。
しかし、上記公報で提案される脱硫方法は、アルミドロス粉末を使用した脱硫助剤とCaO系脱硫剤との混合により脱硫用フラックスを作成し、この脱硫用フラックスを溶銑鍋に添加している。つまり、この脱硫方法では、アルミニウムを含む脱硫助剤がCaO系脱硫剤と同時に添加される。このように脱硫助剤がCaO系脱硫剤と同時に添加されると、アルミニウムによる脱硫促進効果が十分に発揮されない状態でCaOが凝集し易くなるため、十分に脱硫効率が向上しないおそれがある。また、CaO系脱硫剤を溶銑に十分に巻き込ませるために上記脱硫用フラックスは撹拌羽根の回転軸近くに添加されるが、このとき脱硫用フラックスと共に大気も巻き込まれる。そのため、脱硫用フラックスの添加直後に脱硫助剤に含まれるアルミニウムが酸化し易くなり、アルミニウムによる十分な脱硫促進効果が得られず、その結果、十分に脱硫効率が向上しないおそれがある。
特開2009−191300号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、従来の設備を用いて脱硫効率を向上できる溶銑の脱硫方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、溶銑鍋内で撹拌羽根を回転させつつ、CaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を上記溶銑鍋内に供給する溶銑の脱硫方法であって、
全脱硫処理時間t[sec]及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度から、溶銑へのCaOの全供給量が2.4kg/ton以上10.0kg/ton以下となるCaO系脱硫剤の全供給量S[kg]を決定する工程と、上記副原料及び第1供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第1工程と、上記第1工程後に、上記副原料及び第2供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第2工程と、上記第2工程後に、上記副原料及び上記全供給量Sから第1供給量Sと第2供給量Sとを減じた量のCaO系脱硫剤を1回又は2回以上の供給回数で溶銑鍋へ供給する第3工程とを備え、
上記撹拌羽根の回転数が90rpm以上140rpm以下であり、
上記第1工程が、上記第1供給量Sを上記全供給量Sの40質量%以上70質量%以下とし、回転軸を中心とする撹拌羽根の半径をr[m]、撹拌羽根の先端と溶銑鍋の側壁との距離をL[m]とした場合、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、第1供給量Sに含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第1副原料投入工程と、上記第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内に、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、第1供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第1脱硫剤投入工程とを有し、
上記第2工程が、上記第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、第2供給量Sに含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第2副原料投入工程と、上記第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ上記第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から下記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第2脱硫剤投入工程とを有し、
上記第3工程が、直前のCaO系脱硫剤投入後、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、次に投入するCaO系脱硫剤の供給量に含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第3副原料投入工程と、上記第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ直前のCaO系脱硫剤投入から下記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、全供給量Sから第1供給量S及び第2供給量Sを減じた量の全部又は一部のCaO系脱硫剤を投入する第3脱硫剤投入工程とを有し、
上記第3副原料投入工程及び上記第3脱硫剤投入工程を1回又は2回以上行い、第3脱硫剤投入工程におけるCaO系脱硫剤の供給量を直前のCaO系脱硫剤投入時の供給量以下とし、上記第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、下記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後に脱硫処理を終了することを特徴とする溶銑の脱硫方法である。
t×(S/S2.3≦p≦t×(S/S0.4 ・・・(1)
Q≧50.1×ε−0.3 ・・・(2)
但し、溶銑の質量[ton]当たりの撹拌羽根の撹拌動力[kw]を撹拌動力密度ε[kw/ton]とする。
当該溶銑の脱硫方法は、CaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を3回以上に分割して溶銑に添加することにより、未反応のまま凝集するCaOを低減できると共に全供給量のうち一部のCaO系脱硫剤を供給した状態で脱硫反応を進行させられるので、脱硫効率を向上できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第2工程で上記式(1)で決定される待機時間pにCaO系脱硫剤を投入することで、第1工程及び第2工程において高い脱硫効率が得られる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第3工程で、直前のCaO系脱硫剤投入から上記式(2)で決定される脱硫剤投入間隔Q経過後にCaO系脱硫剤を投入することで、第3工程においても高い脱硫効率が得られる。また、当該溶銑の脱硫方法は、アルミニウム含有副原料の投入後であって、アルミニウム含有副原料の投入から30sec以内にCaO系脱硫剤を投入することにより、アルミニウムによる脱硫促進効果の低下を抑制できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、アルミニウム含有副原料を上記領域に投入することにより、溶銑内に巻き込まれる大気によるアルミニウムの酸化が抑制されるので、アルミニウムによる脱硫促進効果の低下を抑制できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、CaO系脱硫剤を上記領域に投入することにより、CaO系脱硫剤が溶銑内へ巻き込まれ易くなり、CaO系脱硫剤の反応効率が向上し易い。当該溶銑の脱硫方法は、このような構成を有することにより、従来の設備を用いて脱硫効率を向上できる。ここで、「アルミニウム」とは、金属アルミニウムを意味し、合金中のアルミニウム等を含むものである。
以上説明したように、本発明の溶銑の脱硫方法は、従来の設備を用いて脱硫効率を向上できる。
本発明の一実施形態に係る溶銑の脱硫方法の手順を示すフロー図である。 図1の溶銑の脱硫方法を用いる溶銑脱硫装置の概略を示す模式的断面図である。 図2Aの溶銑脱硫装置の模式的平面図である。 全脱硫処理時間420secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間480secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間540secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間600secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間720secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間780secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 全脱硫処理時間900secの場合の第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)とCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 撹拌動力密度の算出方法を説明するための溶銑脱硫装置の模式的断面図である。 図4Aの溶銑脱硫装置の撹拌羽根の模式的平面図である。 撹拌動力密度と第3工程でのCaO系脱硫剤の供給間隔との関係を示すグラフである。 実施例における石灰及びアルミ灰の投入方法毎のE値の相対度数を示すグラフである。 実施例における第1工程での石灰の供給比率(S/S)とE値との関係を示すグラフである。 実施例におけるアルミ灰の投入位置とE値との関係を示すグラフである。 実施例における石灰の投入位置とE値との関係を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の溶銑の脱硫方法の実施形態について説明する。
当該溶銑の脱硫方法は、溶銑鍋内で撹拌羽根を回転させつつ、CaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を上記溶銑鍋内に供給する溶銑の脱硫方法であって、図1に示すように、全脱硫処理時間t[sec]及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度からCaO系脱硫剤の全供給量S[kg]を決定する工程(脱硫剤供給量決定工程:ステップs1)と、上記副原料及び第1供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第1工程(ステップs2)と、ステップs2の第1工程後に、上記副原料及び第2供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第2工程(ステップs3)と、ステップs3の第2工程後に、上記副原料及び上記全供給量Sから第1供給量Sと第2供給量Sとを減じた量のCaO系脱硫剤を1回又は2回以上の供給回数で溶銑鍋へ供給する第3工程(ステップs4)とを備える。
当該溶銑の脱硫方法は、図2Aのような機械撹拌方式の溶銑脱硫装置で用いられる。高炉から出銑された溶銑は、溶銑鍋1に装入されて精錬工程を行う転炉などへ移送されるが、転炉に達するまでの間に脱硫処理が行われる。この溶銑脱硫装置は、溶銑鍋1の中心に挿入される耐火物製の撹拌羽根2を備える。つまり、撹拌羽根2は、回転軸が平面視円形の溶銑鍋1の中心と一致するよう溶銑鍋1内に挿入される。この撹拌羽根2は、回転軸の先端から径方向に突出する4枚の羽根を有する。この溶銑脱硫装置は、撹拌羽根2の回転により溶銑Mを撹拌しながらCaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を混合することで溶銑Mの脱硫処理を行う。
上記撹拌羽根2の回転数は、90rpm以上140rpm以下である。上記回転数が上記下限に満たないと、CaO系脱硫剤が溶銑に混合され難く、脱硫剤の反応効率が低下するおそれがある。逆に、上記回転数が上記上限を超えると、撹拌羽根2の回転に要する動力が大きくなり、設備コストが増加するおそれがある。なお、脱硫処理の初期における回転数上昇時や処理終了直前における回転数低下時など、撹拌羽根2の回転数は脱硫処理中常に一定とは限らない。従って、上記回転数とは脱硫処理中の平均回転数を意味する。
ここで、溶銑中の硫黄(S)は、下記式(3)に示すように、酸化カルシウム(CaO)との反応により硫化カルシウム(CaS)として固定化される。また、下記式(3)とアルミニウム(Al)の酸化反応を示す下記式(4)とを合せた下記式(5)から分かるように、アルミニウムを添加することにより、脱硫によってCaOから放出された酸素(O)をアルミニウムと反応させて酸化アルミニウム(Al)とすることができる。従って、アルミニウムを添加することで、溶銑の酸素濃度を低減できるので、より脱硫が進行し易くなる。そのため、当該溶銑の脱硫方法は、脱硫効率を向上させるため、主成分がCaOである石灰を脱硫剤として用いると共に、金属のアルミニウムを含有する副原料を用いる。なお、下記式(3)〜(5)において、()内はスラグ中又は脱硫剤中の成分を表し、[]内は溶銑中の成分を表す。
(CaO)+[S]→(CaS)+[O] ・・・(3)
2[Al]+3[O]→(Al) ・・・(4)
3(CaO)+3[S]+2[Al]→3(CaS)+(Al) ・・・(5)
<脱硫剤供給量決定工程>
まず、ステップs1の脱硫剤供給量決定工程において、全脱硫処理時間t[sec]及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度からCaO系脱硫剤の全供給量S[kg]を決定する。
ここで、機械撹拌による脱硫処理において、処理時間が長いほど脱硫は進行するが、長時間の処理は鋼材の生産量の低下を招く。そのため、チャージ毎の全脱硫処理時間tは、次工程の処理開始までの時間余裕や溶銑鍋の物流の状況等によって決定される。一方、溶銑中の硫黄濃度の低減量は、CaO系脱硫剤の供給量を多くすることで大きくできる。また、脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度は、鋼種によって決定される。従って、全脱硫処理時間tを決定すると、脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度から必要なCaO系脱硫剤の供給量が算出できる。なお、撹拌羽根2は、全脱硫処理時間t回転し続け、その間溶銑の撹拌が行われる。
一方、鋼種によらず溶銑へのCaOの全供給量が2.4kg/ton未満であると、溶銑の質量に対してCaOが少なすぎるため、十分に硫黄濃度の低減ができないおそれがある。逆に、鋼種によらず溶銑へのCaOの全供給量が10.0kg/tonを超えると、未反応で凝集するCaOの割合が多くなるため、硫黄濃度の低減効果のさらなる向上が見込めない。
そのため、上記脱硫剤供給量決定工程では、脱硫処理対象の溶銑中の硫黄濃度及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度の差と上記決定された全脱硫処理時間tとから、溶銑へのCaOの全供給量が2.4kg/ton以上10.0kg/ton以下となるCaO系脱硫剤の全供給量Sを決定する。
<第1工程>
ステップs2の第1工程は、上記副原料を投入する第1副原料投入工程(ステップs21)と、ステップs21の第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内に、第1供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第1脱硫剤投入工程(ステップs22)とを有する。
(第1副原料投入工程)
ステップs21の第1副原料投入工程は、撹拌羽根2の回転により溶銑Mを撹拌している溶銑鍋1内に上記副原料を投入する。
ステップs21の第1副原料投入工程で投入する上記副原料の供給量は、後述するステップs22の第1脱硫剤投入工程で供給するCaO系脱硫剤の第1供給量Sに含まれるCaOの量に対する質量比が所定範囲となるアルミニウムを含む量とする。上記質量比の下限としては、0.005である。一方、上記質量比の下限としては、0.3である。供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記下限に満たないと、脱硫促進に十分なアルミニウムが確保できず、反応効率が低下するおそれがある。一方、投入されたアルミニウムは脱硫反応や大気中酸素によってAlとなり、CaOと反応してCaO−Al系スラグ(カルシウムアルミネート)を生成するが、このカルシウムアルミネートについて、CaOに対するAl濃度が増加すると脱硫能が低下することが知られている。そのため、供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記上限を超えると、脱硫能の低下を招き、かえって反応効率が低下するおそれがある。
また、ステップs21の第1副原料投入工程では、回転軸を中心とする撹拌羽根2の半径をr[m]、撹拌羽根2の先端と溶銑鍋1の側壁との距離をL[m]とした場合、図2Bに示すような上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域Aに上記副原料を投入する。
ここで、上記副原料を溶銑鍋1の領域Aに投入する理由について説明する。撹拌羽根2により溶銑鍋1内を撹拌しているときの鉛直方向の溶銑Mの動きFは、図2Aに示すように撹拌羽根2の挿入位置を中心として外周部が上向き、中心部は下向きとなる。つまり、副原料を中心部に投入した場合、溶銑M内へ巻き込まれ易いのに対し、副原料を外周部へ投入した場合、溶銑M内へ巻き込まれ難い。一方、撹拌羽根2を用いる機械撹拌では大気も溶銑M中に巻き込まれるが、大気が巻き込まれた場合、渦中心付近では大気が溶銑M中に溶解した状態又は気体のままの状態で存在するため、酸素ポテンシャルの高い状態、すなわち酸化し易い状態となる。このような状態でアルミニウムを渦中心付近に投入すると、大気によって酸化される量が多くなる。発明者らが確認したところ、撹拌羽根2の回転数が90rpm以上140rpm以下の条件において、回転数によっては巻込み大気の影響が大きくなり、アルミニウムによる脱硫促進効果がほとんど得られない場合もあった。これにより、発明者らは、回転数によらず確実に酸素ポテンシャルを低減するために、アルミニウム含有副原料は溶銑鍋1の外周部に投入し、脱硫反応で溶銑M中の硫黄と結合するCaO系脱硫剤は溶銑鍋1の中心付近に投入すればよいことを見出した。さらに、発明者らは、撹拌羽根2の回転数によらず確実に酸素ポテンシャルを低減できる投入位置について鋭意検討した結果、r+L/3の位置を閾値として、アルミニウム含有副原料は上記位置又はそれよりも外側に投入し、CaO系脱硫剤は上記位置よりも内側に投入すればよいことを見出した。具体的には、アルミニウム含有副原料は、例えば図2Aの添加位置Pから直下に投入すればよい。
(第1脱硫剤投入工程)
ステップs22の第1脱硫剤投入工程は、上記ステップs21の第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内に、つまり副原料投入よりも後で、かつ副原料投入時から30sec以内に、撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域Aに、第1供給量SのCaO系脱硫剤を投入する。
上記全供給量Sに対するステップs22の第1脱硫剤投入工程で投入するCaO系脱硫剤の第1供給量Sの質量比の下限としては、40質量%であり、45質量%がより好ましい。一方、上記第1供給量Sの質量比の上限としては、70質量%であり、65質量%がより好ましい。ここで、溶鉄中の硫黄濃度はCaOと溶鉄との接触角、すなわち濡れ易さに影響を及ぼし、上記硫黄濃度が0.01質量%以上であればCaOと溶鉄とが濡れ易く、CaOは凝集し難いと考えられる。これに対し、脱硫処理前の溶銑の硫黄濃度は一般的に0.01質量%程度であるため、脱硫反応の初期はCaOの凝集抑制効果が期待できる。従って、第1供給量Sが上記下限に満たないと、反応効率が低下するおそれがある。一方、機械撹拌による脱硫処理においてCaOは互いに凝集し、脱硫反応に寄与する界面積が減少する。また、凝集後のCaO粒子の粒径はCaOの供給量に依存する。従って、第1供給量Sが上記上限を超えると、CaOが未反応のまま凝集し易くなり、CaOの反応効率が低下するおそれがある。
次に、ステップs22の第1脱硫剤投入工程で、上記ステップs21の第1副原料投入工程での副原料投入よりも後で、かつ副原料投入時から30sec以内にCaO系脱硫剤を投入する理由について説明する。上述したように、撹拌羽根2を用いる機械撹拌では大気も溶銑M中に巻き込まれるため、溶銑M中の大気によりアルミニウムが酸化されると考えられる。そこで、発明者らは、CaO系脱硫剤の投入タイミングを変えて調査したところ、アルミニウム含有副原料の投入から30秒経過時以降にCaO系脱硫剤を投入した場合、アルミニウムによる脱硫促進効果が得られなくなることを見出した。また、副原料よりも先にCaO系脱硫剤を投入した場合、アルミニウムによる脱硫促進効果が得られないままCaOが凝集する時間帯が生じるため、反応効率が低下する。また、アルミニウム含有副原料とCaO系脱硫剤とを同時に投入した場合、アルミニウムによる酸素ポテンシャル低減効果の無い状態でCaO系脱硫剤を投入することになるので、アルミニウムによる脱硫促進効果が得られず、反応効率が低下する。従って、CaO系脱硫剤は、上記副原料投入後に投入する。
上述したように、発明者らは、撹拌羽根2の回転数によらず、r+L/3の位置を閾値としてCaO系脱硫剤を上記位置よりも内側に投入することで高い反応効率が得られることを見出した。従って、CaO系脱硫剤は、例えば図2Aの添加位置Pから直下に投入するとよい。
<第2工程>
ステップs3の第2工程は、ステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、上記副原料を投入する第2副原料投入工程(ステップs31)と、ステップs31の第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から下記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第2脱硫剤投入工程(ステップs32)とを有する。
t×(S/S2.3≦p≦t×(S/S0.4 ・・・(1)
(第2副原料投入工程)
ステップs31の第2副原料投入工程は、上記ステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、溶銑鍋1内に上記副原料を投入する。
ステップs31の第2副原料投入工程で投入する上記副原料の供給量は、後述するステップs32の第2脱硫剤投入工程で供給するCaO系脱硫剤の第2供給量Sに含まれるCaOに対する質量比が所定範囲となるアルミニウムを含む量とする。上記質量比の下限としては、0.005である。一方、上記質量比の下限としては、0.3である。供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記下限に満たないと、脱硫促進に十分なアルミニウムが確保できず、反応効率が低下するおそれがある。逆に、供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記上限を超えると、脱硫能の低下を招き、かえって反応効率が低下するおそれがある。
また、ステップs31の第2副原料投入工程では、ステップs21の第1副原料投入工程と同様に、撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]以上の溶銑鍋1の領域Aに上記副原料を投入する。撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の溶銑鍋1の領域Aへ上記副原料を投入すると、アルミニウムによる脱硫促進効果が十分に得られないおそれがある。
(第2脱硫剤投入工程)
ステップs32の第2脱硫剤投入工程は、上記ステップs31の第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内で、つまり副原料投入よりも後であって副原料投入時から30sec以内で、かつステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から上記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後に、第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する。
ステップs32の第2脱硫剤投入工程で投入するCaO系脱硫剤の第2供給量Sの下限としては、上記全供給量Sから第1供給量Sを減じた量に対して20質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。一方、第2供給量Sの上限としては、上記全供給量Sから第1供給量Sを減じた量に対して80質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。ここで、CaO系脱硫剤の供給により界面活性元素である硫黄濃度が低下するので、後述する第3工程では第2工程に比べてCaOが凝集し易くなる。そのため、第2供給量Sが上記下限に満たないと、相対的に第3工程で供給するCaO系脱硫剤の量が多くなり、第3工程におけるCaOの反応効率が低下するおそれがある。逆に、第2供給量Sが上記上限を超えると、CaOが未反応のまま凝集し易くなり、CaOの反応効率が低下するおそれがある。
次に、ステップs32の第2脱硫剤投入工程で、上記ステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から上記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する理由について以下に説明する。
機械撹拌による脱硫方法では、CaOは処理中に互いに凝集し脱硫反応に寄与する界面積が減少すること、及び凝集後のCaO粒子の粒径はCaO供給量に依存することから、発明者らは、第1工程でのCaO系脱硫剤の供給量に応じて第2工程でのCaO系脱硫剤の供給タイミングを制御することでCaOの反応効率を向上できると推測した。その結果、発明者らは、CaO系脱硫剤の全供給量Sに対する第1工程で供給する第1供給量Sの比率と、第1工程でのCaO系脱硫剤の供給及び第2工程でのCaO系脱硫剤の供給の間隔との間にCaOの反応効率に関連づけられる関係があることを見出した。
具体的には、以下の方法で、上記CaO系脱硫剤の供給比率に対して、上記CaO系脱硫剤の供給間隔の範囲のうち、CaOの反応効率を向上できる範囲が得られる下記式(1)を導出した。まず、後述する実施例の各チャージのデータを用いて、全脱硫処理時間tが同一の条件毎に、横軸を第1工程でのCaO系脱硫剤の供給比率(S/S)、縦軸を第1工程及び第2工程でのCaO系脱硫剤の供給間隔の実績値とし、これらのデータを全脱硫処理時間tごとに撒布図としてグラフ化した。全脱硫処理時間420sec、480sec、540sec、600sec、720sec、780sec及び900secにおけるこれらのグラフを図3A〜図3Gに示す。このグラフ化によって、脱硫効率の高いチャージと低いチャージとに区別することができたので、脱硫効率の高いチャージのうち上限の2点及び下限の2点を用い、上記供給間隔をt[sec]とし、上記全脱硫処理時間tごとに「t=α×(S/S」の形で累乗近似した。なお、累乗近似を用いた理由は、上記CaO系脱硫剤の供給比率に応じて第2工程のCaO系脱硫剤の供給タイミング及びそのタイミングの許容範囲が変化するため、第1工程の上記比率の一次式では表現できないと推測したからである。この近似による解析の結果、αは全脱硫処理時間tと等しくなることがわかった。また、上記Zの値は、脱硫効率の高いチャージが含まれる範囲の下限において2.3、上限において0.4の値が得られ、下記式(1)が導出できた。なお、αとZの値は、小数点以下2桁目を四捨五入した。
t×(S/S2.3≦p≦t×(S/S0.4 ・・・(1)
従って、ステップs32の第2脱硫剤投入工程が、上記ステップs22の第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から上記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、かつ上記ステップs31の第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内に第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入することで、CaOの反応効率を向上できる。なお、上記ステップs31の第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内にCaO系脱硫剤を投入する理由は、上記ステップs22の第1脱硫剤投入工程で、ステップs21の第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内にCaO系脱硫剤を投入する理由と同じである。
また、ステップs32の第2脱硫剤投入工程では、ステップs22の第1脱硫剤投入工程と同様に、撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域Aに第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する。このように、領域Aに第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入することで、反応効率が向上し易い。
<第3工程>
ステップs4の第3工程は、直前のCaO系脱硫剤投入後、上記副原料を投入する第3副原料投入工程(ステップs41)と、ステップs41の第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ直前のCaO系脱硫剤投入から下記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、全供給量Sから第1供給量S及び第2供給量Sを減じた量の全部又は一部のCaO系脱硫剤を投入する第3脱硫剤投入工程(ステップs42)とを有する。ステップs4の第3工程は、これらのステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を1回又は2回以上行う。なお、溶銑の質量[ton]当たりの撹拌羽根の撹拌動力[kw]を撹拌動力密度ε[kw/ton]とする。
Q≧50.1×ε−0.3 ・・・(2)
(第3副原料投入工程)
ステップs41の第3副原料投入工程は、直前のCaO系脱硫剤投入後、溶銑鍋1内に上記副原料を投入する。なお、ステップs4の第3工程では、ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を2回以上行う場合があるので、上記「直前のCaO系脱硫剤投入」とは、ステップs32の第2脱硫剤投入工程又は後述するステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤の投入のことである。
ステップs41の第3副原料投入工程で投入する上記副原料の供給量は、この第3副原料投入工程直後のステップs42の第3脱硫剤投入工程で供給するCaO系脱硫剤の供給量に含まれるCaOに対する質量比が所定範囲となるアルミニウムを含む量とする。上記質量比の下限としては、0.005である。一方、上記質量比の下限としては、0.3である。供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記下限に満たないと、脱硫促進に十分なアルミニウムが確保できず、反応効率が低下するおそれがある。逆に、供給する副原料中のアルミニウムの上記質量比が上記上限を超えると、脱硫能の低下を招き、かえって反応効率が低下するおそれがある。
また、ステップs41の第3副原料投入工程では、ステップs21の第1副原料投入工程と同様に、撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]以上の溶銑鍋1の領域Aに上記副原料を投入する。撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の溶銑鍋1の領域Aへ上記副原料を投入すると、アルミニウムによる脱硫促進効果が十分に得られないおそれがある。
(第3脱硫剤投入工程)
ステップs42の第3脱硫剤投入工程は、上記ステップs41の第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ直前のCaO系脱硫剤投入から上記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、全供給量Sから第1供給量S及び第2供給量Sを減じた量の全部又は一部のCaO系脱硫剤を投入する。
次に、ステップs42の第3脱硫剤投入工程が、直前のCaO系脱硫剤投入から上記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、CaO系脱硫剤を投入する理由について以下に説明する。
CaOに起因するスラグが少ない状態でCaOを投入した場合、上述したように凝集後のCaO粒子の粒径はCaO供給量に依存すると考えられる。しかし、第3工程では、第1工程及び第2工程でのCaO系脱硫剤の投入により溶銑M内にCaOに起因するスラグが多く存在するため、CaO供給量はCaOの凝集に対して律速因子とはならず、CaOの凝集に対して支配的な因子は撹拌動力密度と考えられる。ここで、「撹拌動力密度」とは、溶銑の質量当たりの撹拌羽根の撹拌動力を意味する。このことから、発明者らは、第3工程では撹拌動力密度に基づいてCaO系脱硫剤の供給タイミングを制御することでCaOの反応効率を向上できると推測した。その結果、発明者らは、撹拌動力密度が、CaOの反応効率を向上できるCaO系脱硫剤の供給タイミングと関連することを見出した。
具体的には、以下の方法で、直前のCaO系脱硫剤の供給と次のCaO系脱硫剤の供給との間隔のうち、CaOの反応効率を向上できる間隔が得られる下記式(2)を導出した。ここで、底吹きガス撹拌でスラグを溶鋼内に巻き込ませて精錬する場合の反応速度はガス流量の累乗に比例する形で表されることが知られていることから、発明者らは、直前のCaO系脱硫剤の供給から次のCaO系脱硫剤の供給までの間隔を撹拌動力密度の累乗で表す近似を行った。まず、脱硫効率の高いチャージのデータを用いて、横軸を撹拌動力密度ε[kw/ton]の実績値とし、縦軸をCaO系脱硫剤の供給間隔又はCaO系脱硫剤投入から脱硫処理終了までの時間の実績とし、撒布図として図5のようにグラフ化した。図5において「○」のプロットは、本発明の範囲内のチャージを示し、「*」のプロットは、本発明の第3工程の規定が範囲外であるチャージを示す。なお、図5において、第3工程で第3脱硫剤投入工程を複数回行うチャージでは、CaO系脱硫剤の供給間隔として最短の値をプロットしている。図5に示すように、累乗近似した場合に全プロットが収まるように2点を抽出した上で、上記CaO系脱硫剤の供給間隔又はCaO系脱硫剤投入から脱硫処理終了までの時間をt[sec]とし、「t=β×ε」の形で累乗近似した。この近似による結果、β=50.1、V=−0.3が得られた。なお、β及びVの値は、小数点以下2桁目を四捨五入した。この式から得られる上記時間tがCaOの凝集を抑制できる最小時間なので、CaOの反応効率を向上できる脱硫剤投入間隔Qを下記式(2)の右辺より得られる時間以上とした。
Q≧50.1×ε−0.3 ・・・(2)
ここで、上記撹拌動力密度εを算出するための撹拌動力P[w]は、例えば「化学工学会編、「化学工学便覧」、丸善株式会社、1998年、p.893−897」に記載の永田の式から算出できる。具体的には、上記撹拌動力P[w]は、図4A及び図4Bのような溶銑鍋1の中心に撹拌羽根2を挿入した構成において、撹拌羽根2の羽根の高さをb[m]、羽根の直径をd[m]、羽根のねじれ角をθ[rad]、羽根の枚数をn、回転数をN[rpm]、溶銑鍋1の内径をD[m]、溶銑Mの浴面から溶銑鍋1の内側底面までの深さをZ[m]、溶銑Mの液体密度をρ[kg/m]、粘性係数をμ[Pa・sec]、レイノルズ数をRe、n=2以外の補正値をb´、動力数をN、重力加速度をg[m/sec]とした場合、下記式(6)〜(12)に示す永田の式により求めることができる。これにより求めた撹拌動力Pを溶銑Mの質量で除することで上記式(2)中の撹拌動力密度εが算出できる。
Figure 2016186124
従って、ステップs42の第3脱硫剤投入工程が、直前のCaO系脱硫剤投入から上記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、かつステップs41の第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内にCaO系脱硫剤を投入することで、CaOの反応効率を向上できる。なお、ステップs41の第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内にCaO系脱硫剤を投入する理由は、上記ステップs22の第1脱硫剤投入工程で、ステップs21の第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内にCaO系脱硫剤を投入する理由と同じである。
また、ステップs42の第3脱硫剤投入工程では、ステップs22の第1脱硫剤投入工程と同様に、撹拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域AにCaO系脱硫剤を投入する。このように、領域AにCaO系脱硫剤を投入することで、反応効率が向上し易い。
ステップs4の第3工程では、上記ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を1回又は2回以上行う。具体的には、ステップs42の第3脱硫剤投入工程後に脱硫処理終了か判断され(ステップs5)、脱硫処理終了でなければ、上記ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を繰り返し行う。なお、上記ステップs5において、例えば撹拌羽根2の回転停止までの時間が上記脱硫剤投入間隔Q未満の場合に脱硫処理終了と判断し、その後のステップs42の第3脱硫剤投入工程を行わないようにする。ここで、撹拌羽根2は全脱硫処理時間tに達するまで回転し続けるので、最後のCaO系脱硫剤投入後、全脱硫処理時間tまで溶銑は撹拌される。従って、上記ステップs5においてこのように脱硫処理終了と判断することで、最後のCaO系脱硫剤投入後、上記脱硫剤投入間隔Q以上の溶銑の撹拌を行わせることができる。
ステップs4の第3工程では、ステップs42の第3脱硫剤投入工程におけるCaO系脱硫剤の供給量は直前のCaO系脱硫剤投入時の供給量以下とする。例えば、ステップs42の1回目の第3脱硫剤投入工程におけるCaO系脱硫剤の供給量は、ステップs32の第2脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤の供給量以下とし、第3工程で2回目に行うステップs42の第3脱硫剤投入工程におけるCaO系脱硫剤の供給量は、第3工程で最初に行うステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤の供給量以下とする。その理由は、以下の通りである。すなわち、既にCaO系脱硫剤が供給されていると、溶銑M中にスラグが存在し、かつ界面活性元素である硫黄濃度も低下しているため、CaOが凝集し易い状態となっている。従って、例えば各第3脱硫剤投入工程で後に供給するCaO系脱硫剤の量が多くなるよう供給する場合、後になるほどCaOの反応効率が低下するので、上述のようにCaO系脱硫剤の供給量を直前のCaO系脱硫剤投入時の供給量以下とすることで、CaOの反応効率の低下が抑制できる。
また、ステップs4の第3工程は、ステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、上記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q経過後に脱硫処理が終了するように、上記ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を行う。すなわち、ステップs4の第3工程は、最後のステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、撹拌羽根2の回転停止までの時間が上記脱硫剤投入間隔Qとなるよう制御する。このように、最後のステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、脱硫処理が終了までの時間を上記脱硫剤投入間隔Qとすることで、ステップs42の第3脱硫剤投入工程で供給したCaO系脱硫剤による脱硫反応を脱硫処理までに十分に進行させることができる。
上記ステップs4の第3工程で、上記ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を2回以上行う場合、アルミニウム含有副原料及びCaO系脱硫剤は、後になるほど供給量が少なくなるよう段階的に所定量ずつ供給される。これにより、CaOが溶銑M中に広く一度に分散するため溶銑M中の硫黄と反応し易く、さらに溶銑M中のアルミニウム濃度が一旦上昇するため上記式(5)の反応が起こり易くなる。従って、このように段階的にアルミニウム含有副原料及びCaO系脱硫剤を供給することで、少量ずつ連続的にアルミニウム含有副原料及びCaO系脱硫剤を供給する場合に比べて、脱硫効率を向上できる。
また、ステップs42の第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤供給タイミングを直前のCaO系脱硫剤投入から脱硫剤投入間隔Q経過後にできる範囲で、上記ステップs4の第3工程における上記ステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程の繰り返し回数が多いほど脱硫効率が向上する。従って、脱硫剤投入間隔Qとして上記式(2)を満たす最小値を用い、上記ステップs4の第3工程においてステップs41の第3副原料投入工程及びステップs42の第3脱硫剤投入工程を行う回数を上記全脱硫処理時間t及び脱硫剤投入間隔Qで定まる最大の回数とするとよい。
<利点>
当該溶銑の脱硫方法は、CaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を3回以上に分割して溶銑に添加することにより、未反応のまま凝集するCaOを低減できると共に全供給量のうち一部のCaO系脱硫剤を供給した状態で脱硫反応を進行させられるので、脱硫効率を向上できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第2工程で上記式(1)で決定される待機時間pにCaO系脱硫剤を投入することで、第1工程及び第2工程において高い脱硫効率が得られる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第3工程で、直前のCaO系脱硫剤投入から上記式(2)で決定される脱硫剤投入間隔Q経過後にCaO系脱硫剤を投入することで、第3工程においても高い脱硫効率が得られる。また、当該溶銑の脱硫方法は、アルミニウム含有副原料の投入後であって、アルミニウム含有副原料の投入から30sec以内にCaO系脱硫剤を投入することにより、アルミニウムによる脱硫促進効果の低下を抑制できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、アルミニウム含有副原料を上記領域Aに投入することにより、溶銑内に巻き込まれる大気によるアルミニウムの酸化が抑制されるので、アルミニウムによる脱硫促進効果の低下を抑制できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、CaO系脱硫剤を上記領域Aに投入することにより、CaO系脱硫剤が溶銑内へ巻き込まれ易くなり、CaO系脱硫剤の反応効率が向上し易い。当該溶銑の脱硫方法は、このような構成を有することにより、従来の設備を用いて脱硫効率を向上できる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実機設備を用いて、溶銑の脱硫効果を評価する実験を行った。具体的には、溶銑鍋として、図4Aの内径Dが4mの取鍋を用い、溶銑の浴面までの深さZを2.7m以上3m以下、溶銑量を240ton以上260ton以下、溶銑温度を1250℃以上1350℃以下、撹拌羽根の回転開始から停止までの全脱硫処理時間tを7分以上15分以下として脱硫処理を行った。撹拌羽根は、4枚の羽根を有し、羽根の高さbが0.8m、羽根の直径dが1.4m、羽根のねじれ角θが90°のものを用い、溶銑鍋の平面視で中心となる位置に挿入し、回転数90rpm以上140rpm以下で回転させた。
CaO系脱硫剤として、CaO純度が約90質量%の焼石灰を用いた。また、アルミニウム含有副原料として、金属アルミニウムが17.0質量%、Alが60.0質量%、MgOが7.2質量%、CaOが0.9質量%、SiOが2.4質量%の組成を有する鉄鋼用アルミドロス(通称でアルミ灰と呼ぶ)を用いた。これらの石灰及びアルミ灰は、溶銑鍋の上方から溶銑の浴面に向けて投入した。
なお、ここで用いた溶銑は、炭素(C)の含有量が4.3質量%以上4.6質量%以下、硫黄(S)の含有量が0.013質量%以上0.025質量%以下、ケイ素(Si)の含有量が0.25質量%以上0.35質量%以下、リン(P)の含有量が0.09質量%以上0.13質量%以下であった。
また、全石灰供給量は、目標とする処理後の溶銑中の硫黄濃度から算出した。具体的には、当業者常法の操業データを用い、処理前硫黄濃度と処理後硫黄濃度との差ΔS[質量%]を従属変数、処理時間t[分]及びCaO原単位u[kg/ton]を独立変数とする重回帰分析により導出した下記式(13)により決定した。なお、この重回帰分析は、石灰のCaO含有量を90質量%とし、溶銑量を255ton一定とし、石灰使用量計算値は10の位を四捨五入して行った。
ΔS[質量%]=0.00277+0.000186×t[分]+0.0041×u[kg/ton] ・・・(13)
このような実機設備を用いて、表1〜表14に示す条件でNo.1〜No.322の各チャージにおける脱硫処理を行った。なお、表1〜表7には、第1工程における条件を示し、表8〜表14には、第2工程及び第3工程における条件を示している。これらのうち、No.196〜No.317のチャージでは、全供給量の石灰を2回に分けて投入したため第3工程を行っていないので、各表中の第3工程の欄を「−」と記載している。また、No.318〜No.322のチャージでは、全供給量の石灰を1回の投入で供給したため第2工程及び第3工程を行っていないので、各表中の第2工程及び第3工程の欄を「−」と記載している。また、No.1〜No.195のチャージでは、第3工程において第3副原料投入工程及び第3脱硫剤投入工程を1回、2回又は3回行い、表中では、これらの繰り返し工程を順に、「1回目」、「2回目」、「3回目」と記載している。従って、第3工程において第3副原料投入工程及び第3脱硫剤投入工程を1回のみ行ったチャージについては、「2回目」及び「3回目」の欄は空欄としている。同様に、第3工程において第3副原料投入工程及び第3脱硫剤投入工程を2回のみ行ったチャージについては、「3回目」の欄は空欄としている。
なお、表1〜表14中の「Al/CaO比」は、各工程において投入する石灰に含まれるCaOの質量に対する投入するアルミ灰に含まれる金属アルミニウムの質量の割合を示す。また、「Al投入位置」及び「石灰投入位置」は、それぞれアルミ灰及び石灰を投入した位置であり、撹拌羽根の回転軸中心からの距離を示しており、ここで用いた溶銑鍋及び撹拌羽根においてr+L/3の距離は1.13mである。また、「Al後石灰投入間隔」は、アルミ灰投入から石灰投入までの時間を示し、この間隔が0とは、石灰をアルミ灰と同時に投入したことを意味する。また、「石灰投入間隔」は、前回の石灰投入から次の石灰投入までの時間を示す。従って、例えば第2工程における「石灰投入間隔」は、第1工程の石灰投入から第2工程の石灰投入までの時間を意味する。また、「待機時間p」及び「脱硫剤投入間隔Q」は、上記式(1)及び(2)から算出されるp及びQの値である。また、第3工程における「石灰投入後維持時間」とは、最後の石灰投入から脱硫処理が終了するまで、すなわち撹拌羽根の回転が停止するまでの時間を示す。
<脱硫評価>
上記No.1〜No.322の各チャージにおける脱硫処理前後の溶銑中の硫黄濃度を計測し、脱硫効果を評価した。具体的には、まず、脱硫処理前の溶銑の硫黄濃度から脱硫処理後の目標とする硫黄濃度を設定し、これらの硫黄濃度の差分を目標ΔS[質量%]とした。ここで、脱硫処理後の目標とする硫黄濃度は、0.003質量%以上0.012質量%以下の範囲とした。また、脱硫処理後の実測した硫黄濃度と脱硫処理前の硫黄濃度との差分を実績ΔS[質量%]とし、E値=実績ΔS−目標ΔSとし、このE値を脱硫反応効率の指標として用いた。このE値が正の場合、目標よりも効率よく脱硫できたといえ、E値が負の場合、硫黄濃度が目標に未達であり脱硫の効率が低かったといえる。ここでは、このE値が0.0030以上の場合に特に脱硫効率が高いものとして評価「A」とし、E値が0.0030未満のものを評価「B」とした。No.1〜No.322の評価結果を表1〜表14に示す。
表1〜表14において、No.1〜No.93は、本発明に規定する範囲内で石灰及びアルミ灰を投入したものである。また、No.94〜No.195は、石灰及びアルミ灰を3回以上に分けて投入したものであるが、これらのうちNo.160〜No.195は、第1工程又は第2工程において本発明のいずれかの規定を満たしていないものであり、No.94〜No.159は、第3工程において本発明のいずれかの規定を満たしていないものである。また、No.196〜No.317は、石灰及びアルミ灰を2回に分けて投入したものであり、本発明の第3工程を行っていないものである。これらのうちNo.196〜No.265は、本発明の第1工程及び第2工程の規定を満たすものであり、No.266〜No.317は、本発明の第1工程又は第2工程の規定を満たしていないものである。また、No.318〜No.322は、石灰及びアルミ灰の全供給量を1回で投入したものである。
本発明の第1工程、第2工程及び第3工程の全ての規定を満たすNo.1〜No.93を「多段階投入」、石灰及びアルミ灰を2回に分けて投入したものであるが、本発明の第1工程及び第2工程の規定を満たすNo.196〜No.265を「二段階投入」、これら以外、すなわちNo.94〜No.195、No.266〜No.322を「その他の例」とした場合のそれぞれのE値の相対度数を図6に示す。なお、「多段階投入」、「二段階投入」及び「その他の例」のE値の平均値は、それぞれ0.0039質量%、0.0018質量%及び−0.0005質量%であった。
また、石灰の全供給量に対する第1工程での石灰供給量(S/S)とE値との関係を図7に示す。図7において、「○」のプロットは本発明の第1工程、第2工程及び第3工程の全ての規定を満たすNo.1〜No.93のうち上記S/Sが異なるチャージを示し、「×」のプロットは第1工程におけるS/Sの範囲のみが本発明に規定する範囲外であるNo.174及びNo.175を示す。
また、上記Al投入位置とE値との関係を図8に示し、上記石灰投入位置とE値との関係を図9に示す。図8において、「○」のプロットは本発明の第1工程、第2工程及び第3工程の全ての規定を満たすNo.1〜No.93を示し、「×」のプロットは第3工程におけるアルミ灰投入位置のみが本発明に規定する範囲外であるNo.100〜No.104を示す。また、図9において、「○」のプロットは本発明の第1工程、第2工程及び第3工程の全ての規定を満たすNo.1〜No.93を示し、「×」のプロットは第3工程における石灰投入位置のみが本発明に規定する範囲外であるNo.155〜No.159を示す。
Figure 2016186124
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[評価結果]
表1〜表14の結果より、本発明に規定する範囲内で石灰及びアルミ灰を投入したNo.1〜No.93ではE値が0.0031以上となり、高い脱硫効率が得られることがわかった。
また、図6より、石灰及びアルミ灰を分割して投入することにより脱硫効率を向上でき、さらに本発明に規定する範囲内でその投入回数を多くするほど脱硫効率を向上できることがわかる。これは、投入回数を多くするほど、未反応のまま凝集するCaOをより抑制できるためと考えられる。従って、No.196〜No.322は、石灰及びアルミ灰の投入回数が1回又は2回であり、投入回数が少なかったために脱硫効率が十分に向上しなかったと考えられる。
また、No.94〜No.99は、第3工程において、石灰に含まれるCaOに対するアルミ灰に含まれるアルミニウムの質量比が本発明の範囲外の場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.100〜No.104は、第3工程において、アルミ灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の中心に近い場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。つまり、図8に示すように、本発明で規定するr+L/3の位置を閾値として、アルミ灰を上記位置又はそれよりも外側に投入することで顕著に脱硫効率が向上する。
また、No.105〜No.109は、第3工程において、アルミ灰投入から30secを超えたタイミングで石灰が投入された場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。また、No.110〜No.112は、第3工程において、石灰がアルミ灰と同時に投入された場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.113〜No.118は、第3工程において、石灰の投入量が、その直前に投入された石灰の投入量よりも多い場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.119〜No.154は、第3工程において、複数回投入する石灰投入の間隔又は石灰投入後の脱硫処理終了までの時間が、上記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Qよりも短い場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.155〜No.159は、第3工程において、石灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の外周に近い場合があったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。つまり、図9に示すように、本発明で規定するr+L/3の位置を閾値として、石灰を上記位置よりも内側に投入することで顕著に脱硫効率が向上する。
また、No.160〜No.173は、第1工程での石灰投入から第2工程での石灰投入までの時間が、上記式(1)を満たす待機時間pの範囲内でなかったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.174及びNo.175は、図7に示すように石灰の全供給量に対する第1工程での石灰供給量が本発明で規定される範囲外であったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。つまり、図7に示すように、石灰の全供給量に対する第1工程での石灰供給量を本発明の範囲内とすることで、高い脱硫効率が得られる。
また、No.176及びNo.177は、第1工程において、石灰に含まれるCaOに対するアルミ灰に含まれるアルミニウムの質量比が本発明の範囲外であったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.178及びNo.179は、第1工程において、アルミ灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の中心に近かったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.180及びNo.181は、第1工程において、石灰がアルミ灰と同時に投入されたため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。また、No.182及びNo.183は、第1工程において、アルミ灰投入から30secを超えたタイミングで石灰が投入されたため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.184及びNo.185は、第1工程において、石灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の外周に近かったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.186及びNo.187は、第2工程において、石灰に含まれるCaOに対するアルミ灰に含まれるアルミニウムの質量比が本発明の範囲外であったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.188及びNo.189は、第2工程において、アルミ灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の中心に近かったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.190及びNo.191は、第2工程において、石灰がアルミ灰と同時に投入されたため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。また、No.192及びNo.193は、第2工程において、アルミ灰投入から30secを超えたタイミングで石灰が投入されたため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
また、No.194及びNo.195は、第2工程において、石灰の投入位置が本発明で規定する領域よりも溶銑鍋の外周に近かったため、高い脱硫効率が得られなかったと考えられる。
これらの評価結果より、本発明に規定する範囲内で脱硫処理を行うことで、高い脱硫効率が得られることが確認できた。
以上説明したように、当該溶銑の脱硫方法は、従来の設備を用いて脱硫効率を向上できるので、高品質が要求される鋼材の製造に有用である。
1 溶銑鍋
2 撹拌羽根
M 溶銑
F 溶銑の動き

Claims (1)

  1. 溶銑鍋内で撹拌羽根を回転させつつ、CaO系脱硫剤及びアルミニウム含有副原料を上記溶銑鍋内に供給する溶銑の脱硫方法であって、
    全脱硫処理時間t[sec]及び脱硫処理後の溶銑中の目標硫黄濃度から、溶銑へのCaOの全供給量が2.4kg/ton以上10.0kg/ton以下となるCaO系脱硫剤の全供給量S[kg]を決定する工程と、
    上記副原料及び第1供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第1工程と、
    上記第1工程後に、上記副原料及び第2供給量S[kg]のCaO系脱硫剤を溶銑鍋へ供給する第2工程と、
    上記第2工程後に、上記副原料及び上記全供給量Sから第1供給量Sと第2供給量Sとを減じた量のCaO系脱硫剤を1回又は2回以上の供給回数で溶銑鍋へ供給する第3工程と
    を備え、
    上記撹拌羽根の回転数が90rpm以上140rpm以下であり、
    上記第1工程が、
    上記第1供給量Sを上記全供給量Sの40質量%以上70質量%以下とし、
    回転軸を中心とする撹拌羽根の半径をr[m]、撹拌羽根の先端と溶銑鍋の側壁との距離をL[m]とした場合、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、第1供給量Sに含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第1副原料投入工程と、
    上記第1副原料投入工程での副原料投入後30sec以内に、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、第1供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第1脱硫剤投入工程とを有し、
    上記第2工程が、
    上記第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、第2供給量Sに含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第2副原料投入工程と、
    上記第2副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ上記第1脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入から下記式(1)を満たす待機時間p[sec]経過後、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、第2供給量SのCaO系脱硫剤を投入する第2脱硫剤投入工程とを有し、
    上記第3工程が、
    直前のCaO系脱硫剤投入後、上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域に、次に投入するCaO系脱硫剤の供給量に含まれるCaOに対する質量比が0.005以上0.3以下のアルミニウムを含む上記副原料を投入する第3副原料投入工程と、
    上記第3副原料投入工程での副原料投入後30sec以内、かつ直前のCaO系脱硫剤投入から下記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後、上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域に、全供給量Sから第1供給量S及び第2供給量Sを減じた量の全部又は一部のCaO系脱硫剤を投入する第3脱硫剤投入工程とを有し、
    上記第3副原料投入工程及び第3脱硫剤投入工程を1回又は2回以上行い、第3脱硫剤投入工程におけるCaO系脱硫剤の供給量を直前のCaO系脱硫剤投入時の供給量以下とし、上記第3脱硫剤投入工程でのCaO系脱硫剤投入後、下記式(2)を満たす脱硫剤投入間隔Q[sec]経過後に脱硫処理を終了することを特徴とする溶銑の脱硫方法。
    t×(S/S2.3≦p≦t×(S/S0.4 ・・・(1)
    Q≧50.1×ε−0.3 ・・・(2)
    但し、溶銑の質量[ton]当たりの撹拌羽根の撹拌動力[kw]を撹拌動力密度ε[kw/ton]とする。
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