JP2017133058A - 溶銑の脱硫方法 - Google Patents

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崇 杉谷
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貴光 中須賀
慶太 大内
Keita Ouchi
慶太 大内
真也 大谷
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真也 大谷
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Abstract

【課題】脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できる溶銑の脱硫方法を提供する。【解決手段】本発明の溶銑の脱硫方法は、全石灰投入量W[kg]を決定する決定工程と、全石灰投入量W[kg]の40質量%以上60質量%の石灰量W1[kg]の石灰及びアルミニウムドロスを投入する第1投入工程と、全石灰投入量W[kg]の上記石灰量W1[kg]を除く石灰量W2[kg]の石灰及びアルミニウム金属材料を投入する第2投入工程とを備える。上記第1工程では、アルミニウムドロスの投入工程後30sec以内に上記石灰量W1[kg]の石灰を投入する。上記第2投入工程では、アルミニウム金属材料の投入後30sec以内、かつ上記第1投入工程での石灰投入から下記式(1)に示す時間p[min]経過後、上記石灰量W2[kg]の石灰を投入する。0.0065×W1≦p≦0.0106×W1・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、溶銑の脱硫方法に関する。
高炉から出銑される溶銑には鋼材の特性を低下させる硫黄が多量に含まれているため、鋼材に要求される硫黄濃度まで硫黄を低減する脱硫処理が行われる。この脱硫処理は溶銑又は溶鋼の段階で行われるが、近年の鋼材品質に対する要求の高まりから溶銑段階での脱硫処理が広く行われている。
溶銑の脱硫処理方法として、混銑車などの溶銑搬送容器内の溶銑に脱硫剤を吹き込んで脱硫を行う方法や、溶銑鍋内に溶銑を装入し、この溶銑鍋内で機械攪拌しつつ脱硫を行う方法が採用される。これらの中でも、脱硫処理剤の反応効率が高く低硫黄濃度化が可能な点から、機械攪拌による脱硫方法が主に用いられる。
機械攪拌による脱硫では、脱硫剤としてCaOを主成分とする石灰が主に用いられる。溶銑中の硫黄が、このCaOと反応することで硫化カルシウムとして固定され、脱硫が進行する。機械攪拌による脱硫は、脱硫処理時間が長いほど硫黄濃度を低減できるが、脱硫処理に利用できる時間は、工場での操業状況に応じて制限される。そのため、より短時間で硫黄濃度を低減できるよう脱硫反応効率の向上が求められる。
このような機械攪拌による脱硫において脱硫反応効率を向上させる方法として、金属Alを85質量%以上の割合で含むアルミニウム混合物を石灰に対して2質量%以上の割合で添加する脱硫方法が提案されている(特開2014−91836号公報参照)。この脱硫方法では、アルミニウムを添加することにより、脱硫によりCaOから放出された酸素をアルミニウムと結合させ、Alとすることで、溶銑の酸素濃度(酸素ポテンシャル)が低減される。これにより脱硫反応効率を向上させている。
また、脱硫反応効率を向上させる他の方法として、CaO系脱硫剤(石灰)を3段階以上に分割し、かつ3分間以上の間隔を隔てて溶銑鍋に添加する脱硫方法が提案されている(特開2009−191300号公報参照)。この脱硫方法は、CaO系脱硫剤を分割添加することで、一括添加する場合に比べてCaOの凝集する比率を低減し、これにより脱硫反応効率を向上させている。
しかし、上記公報で提案される脱硫方法では、いずれも脱硫処理の経過と共にCaOが凝集し易くなるため、十分な脱硫促進効果が維持できず、その結果、脱硫後の硫黄濃度にばらつきが生じ易い。この硫黄濃度のばらつきにより硫黄濃度が十分に低減されない溶銑は、再処理による生産コストの増加や、廃棄による生産量の減少を生じさせる。
特開2014−91836号公報 特開2009−191300号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できる溶銑の脱硫方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、溶銑鍋内での攪拌羽根の回転により脱硫を行う機械攪拌式脱硫装置を用い、石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料をフラックスとし、硫黄濃度が0.01質量%以上の溶銑を対象とする脱硫方法であって、脱硫処理時間、脱硫処理前の上記溶銑の硫黄濃度及び脱硫処理後の溶銑の目標硫黄濃度に基づき全石灰投入量W[kg]を決定する石灰投入量決定工程と、上記全石灰投入量W[kg]の40質量%以上60質量%の石灰量W[kg]の石灰及びアルミニウムドロスを投入する第1投入工程と、上記全石灰投入量W[kg]の上記石灰量W[kg]を除く石灰量W[kg]及びアルミニウム金属材料を投入する第2投入工程とを備え、上記第1投入工程が、上記アルミニウムドロスを投入するアルミニウムドロス投入工程と、上記アルミニウムドロス投入工程後30sec以内に上記石灰量W[kg]の石灰を投入する第1石灰投入工程とを有し、上記第2投入工程が、上記アルミニウム金属材料を投入するアルミニウム金属材料投入工程と、上記アルミニウム金属材料投入工程後30sec以内、かつ上記第1石灰投入工程後下記式(1)に示す時間p[min]経過後に上記石灰の石灰量W[kg]の石灰を投入する第2石灰投入工程とを有し、上記アルミニウムドロス投入工程で投入するアルミニウムドロスの量を、第1石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中のAlの質量比が1/70以上1/12以下、石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中の金属Alの質量比が1/216以上1/39以下になるように決定し、上記アルミニウム金属材料投入工程で投入するアルミニウム金属材料の量を、第2石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウム金属材料中の金属Alの質量比が1/75以上1/15以下になるように決定し、回転軸を中心とする攪拌羽根の半径をr[m]、攪拌羽根の先端と溶銑鍋の側壁との距離をL[m]とした場合、上記アルミニウムドロス投入工程及びアルミニウム金属材料投入工程で投入するアルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料の投入位置を上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域とし、上記第1石灰投入工程及び第2石灰投入工程で投入する石灰の投入位置を上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域とする。
0.0065×W≦p≦0.0106×W ・・・(1)
当該溶銑の脱硫方法は、第1投入工程及び第2投入工程の2回に分割して上記石灰量で溶銑に石灰を投入するので、石灰に含まれるCaOが未反応のまま凝集することを抑止できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第1投入工程で石灰と共にアルミニウムドロスを投入する。上記アルミニウムドロスに含まれるAl及び金属Alは、第1石灰投入工程で投入する石灰中のCaOに対する質量比がそれぞれ上記範囲内である。このため、当該溶銑の脱硫方法は、適量のAlにより、CaOの脱硫反応の低下を抑止しつつCaOの滓化を促進できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、適量の金属AlによりCaOから放出された酸素をAlとして固定する。これにより、当該溶銑の脱硫方法は、溶銑の酸素濃度の増加を抑止すると共に、金属Alの酸化時の発熱によりCaOの滓化を促進できる。さらに、当該溶銑の脱硫方法は、第1投入工程でアルミニウムドロスを投入後、所定時間以内に石灰を投入する。これにより、溶銑の熱がアルミニウムドロスに伝わり、かつアルミニウムドロス中の金属Alの大気による酸化が進み過ぎない状態で石灰が投入されるので、当該溶銑の脱硫方法はCaOの滓化が促進される。また、当該溶銑の脱硫方法は、第2投入工程で石灰と共にアルミニウム金属材料を投入する。上記アルミニウム金属材料に含まれる金属Alは、第2石灰投入工程で投入する石灰中のCaOに対する質量比が上記範囲内である。このため、当該溶銑の脱硫方法は、上記第1投入工程で消費された金属Alが補われるので、第2投入工程において溶銑の酸素濃度の増加を抑止すると共に、金属Alの酸化時の発熱によりCaOの滓化を促進できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、第2投入工程でアルミニウム金属材料を投入後、所定時間以内に石灰を投入する。これにより、当該溶銑の脱硫方法はCaOの滓化を促進できる。さらに、当該溶銑の脱硫方法は、第1投入工程で石灰を投入後、所定時間以内に第2投入工程で石灰を投入する。石灰の粒子は時間経過と共に凝集が進む。この石灰粒子の凝集は石灰の投入量が多いほど早く進む。第2投入工程での石灰の投入を第1投入工程での石灰投入後、所定時間以内に行うことで、第1投入工程でCaOの滓化により生じた液相の滓化スラグが石灰粒子を覆い、投入された石灰粒子同士が直接接して凝集することを抑止する。このため、当該溶銑の脱硫方法は、石灰の脱硫反応界面積が減少することを抑止できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、攪拌羽根の回転軸から所定距離以上の領域にアルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入することにより、溶銑内に巻き込まれる大気による金属Alの酸化が抑制されるので、金属Alによる脱硫促進効果の低下を抑制できる。また、当該溶銑の脱硫方法は、上記回転軸から所定距離未満の領域に石灰を投入することにより、石灰が溶銑内へ巻き込まれ易くなり、脱硫反応効率が向上し易い。以上のように、当該溶銑の脱硫方法は、CaOの凝集の抑止及び溶銑内の酸素濃度の増加の抑止により脱硫促進効果が維持できるので、脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できる。
ここで、「アルミニウム金属材料」とは、金属Alを主成分とする材料であり、金属Alを90質量%以上含む材料を指す。また、アルミニウム金属材料には、不可避的に含まれるAlを除きAlが含まれない。
以上説明したように、本発明の溶銑の脱硫方法は、脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できる。
本発明の一実施形態に係る溶銑の脱硫方法の手順を示すフロー図である。 図1の溶銑の脱硫方法を用いる溶銑脱硫装置の概略を示す模式的断面図である。 図2Aの溶銑脱硫装置の模式的平面図である。 第1投入工程での石灰量Wと石灰投入間隔との関係を示すグラフである。 実施例における第1投入工程での石灰投入比率(W/W)と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第1投入工程での石灰量Wの石灰に含まれるCaOに対するアルミニウムドロス中のAlの質量比(Al/CaO)と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第1投入工程での石灰量Wの石灰に含まれるCaOに対するアルミニウムドロス中の金属Alの質量比(金属Al/CaO)と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第2投入工程での石灰量Wの石灰に含まれるCaOに対するアルミニウム金属材料中の金属Alの質量比(金属Al/CaO)と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第1投入工程でのアルミニウムドロスの投入位置と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第1投入工程での石灰の投入位置と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第2投入工程でのアルミニウム金属材料の投入位置と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における第2投入工程での石灰の投入位置と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例にお行ける第1投入工程でのアルミニウムドロス及び石灰の投入間隔と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例にお行ける第2投入工程でのアルミニウム金属材料及び石灰の投入間隔と処理後硫黄濃度との関係を示すグラフである。 実施例における処理後硫黄濃度の低減効果を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の溶銑の脱硫方法の実施形態について説明する。
当該溶銑の脱硫方法は、溶銑鍋内での攪拌羽根の回転により脱硫を行う機械攪拌式脱硫装置を用い、石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料をフラックスとし、硫黄濃度が0.01質量%以上の溶銑を対象とする脱硫方法である。当該溶銑の脱硫方法は、図1に示すように脱硫処理時間、脱硫処理前の上記溶銑の硫黄濃度及び脱硫処理後の溶銑の目標硫黄濃度に基づき全石灰投入量W[kg]を決定する石灰投入量決定工程S1と、石灰及びアルミニウムドロスを投入する第1投入工程S2と、石灰及びアルミニウム金属材料を投入する第2投入工程S3とを備える。
当該溶銑の脱硫方法は、図2Aのような機械攪拌方式の溶銑脱硫装置を用いて、石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料をフラックスとし溶銑Mを脱硫する方法である。高炉から出銑された溶銑Mは、溶銑鍋1に装入されて精錬工程を行う転炉などへ移送されるが、転炉に達するまでの間に上記脱硫処理が行われる。この溶銑脱硫装置は、溶銑鍋1の中心に挿入される耐火物製の攪拌羽根2を備える。つまり、攪拌羽根2は、回転軸が平面視円形の溶銑鍋1の中心と一致するよう溶銑鍋1内に挿入される。この攪拌羽根2は、回転軸の先端から径方向に突出する羽根を有する。上記羽根の枚数は特に限定されないが、例えば4枚とできる。この溶銑脱硫装置は、攪拌羽根2の回転により溶銑Mを攪拌しながら石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を混合することで溶銑Mの脱硫処理を行う。
上記攪拌羽根2の回転数の下限としては、80rpmが好ましく、90rpmがより好ましい。一方、上記攪拌羽根2の回転数の上限としては、150rpmが好ましく、140rpmがより好ましい。上記回転数が上記下限未満である場合、脱硫剤である石灰が溶銑Mに混合され難く、脱硫反応効率が低下するおそれがある。逆に、上記回転数が上記上限を超える場合、攪拌羽根2の回転に要する動力が大きくなり、設備コストが増加するおそれがある。なお、脱硫処理の初期における回転数上昇時や処理終了直前における回転数低下時など、攪拌羽根2の回転数は脱硫処理中常に一定とは限らない。従って、上記回転数とは脱硫処理中の平均回転数を意味する。
ここで、溶銑中の硫黄(S)は、下記式(2)に示すように、石灰の主成分であるCaOとの反応により硫化カルシウム(CaS)として固定化される。また、下記式(2)と金属Al(Al)の酸化反応を示す下記式(3)とを合せた下記式(4)から分かるように、金属Alを添加することにより、脱硫によってCaOから放出された酸素(O)を金属AlによりAlとして固定できる。従って、金属Alを添加することで、溶銑Mの酸素濃度を低減できるので、より脱硫が進行し易くなる。従って、当該溶銑の脱硫方法は、脱硫反応効率を向上させるため、主成分がCaOである石灰と共に、金属のアルミニウムを含有するアルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料をフラックスとして用いる。なお、下記式(2)〜(4)において、()内はスラグ中又は脱硫剤中の成分を表し、[]内は溶銑中の成分を表す。
(CaO)+[S]→(CaS)+[O] ・・・(2)
2[Al]+3[O]→(Al) ・・・(3)
3(CaO)+3[S]+2[Al]→3(CaS)+(Al) ・・・(4)
<石灰投入量決定工程>
石灰投入量決定工程S1では、脱硫処理時間、脱硫処理前の溶銑Mの硫黄濃度及び脱硫処理後の溶銑Mの目標硫黄濃度に基づき全石灰投入量W[kg]を決定する。
ここで、機械攪拌による脱硫処理において、処理時間が長いほど脱硫は進行するが、長時間の処理は鋼材の生産量の低下を招く。そのため、チャージ毎の脱硫処理時間は、次工程の処理開始までの時間余裕や溶銑鍋1の物流の状況等によって決定される。一方、溶銑M中の硫黄濃度の低減量は、石灰の投入量を多くすることで大きくできる。また、脱硫処理後の溶銑M中の目標硫黄濃度は、鋼種によって決定される。従って、脱硫処理時間を決定すると、脱硫処理後の溶銑M中の目標硫黄濃度から必要な石灰の投入量が決定できる。なお、攪拌羽根2は、脱硫処理時間中、回転し続け、その間溶銑Mの攪拌が行われる。
溶銑1ton当たりの全石灰投入量の下限としては、2.4kg/tonが好ましく、3kg/tonがより好ましい。一方、上記全石灰投入量の上限としては、10kg/tonが好ましく、7kg/tonがより好ましい。上記全石灰投入量が上記下限未満である場合、十分に硫黄濃度の低減ができないおそれがある。逆に、上記全石灰投入量が上記上限を超える場合、スラグ量が増加するため、スラグ処理に要する時間や費用が不必要に増大するおそれがある。
<第1投入工程>
第1投入工程S2は、アルミニウムドロスを投入するアルミニウムドロス投入工程S21と、上記アルミニウムドロス投入工程S21後に石灰を投入する第1石灰投入工程S22とを有する。
(アルミニウムドロス投入工程)
アルミニウムドロス投入工程S21では、攪拌羽根2の回転により溶銑Mを攪拌している溶銑鍋1内に上記アルミニウムドロスを投入する。
ここで、第1投入工程S2においてAl及び金属Alを含むアルミニウムドロスを投入する理由について説明する。溶銑M中の硫黄と石灰中のCaOとの反応は、固体のCaO表面がある程度溶ける、すなわち滓化する状態の方が進み易い。CaOの融点は2500℃程度であり、溶銑Mの温度は一般に1300℃程度である。このため、CaOをそのまま溶銑Mに投入しても滓化しない。しかし、Alの投入によりCaOの融点を1400℃程度まで下げることができるので、CaOの滓化を助長することができる。従って、第1投入工程S2においてAlの投入が有効である。なお、このAlによりCaOが滓化した滓化スラグは、後述する第2投入工程S3において、いわゆる種湯として機能し、第2投入工程S3においてもCaOの滓化を促進する。また、第1投入工程S2において金属Alを投入することで、上述の(4)式に示すように脱硫反応が金属Alと酸素との反応により促進され、かつ金属Alと酸素との反応熱により1300℃程度の溶銑温度であってもCaOの滓化を促進することができる。従って、第1投入工程S2において金属Alの投入が有効である。このように第1投入工程S2はAlの投入と金属Alの投入とが有効であるので、両者を含むアルミニウムドロスが投入される。
第1石灰投入工程S22で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中のAlの質量比の下限としては、1/70であり、1/50がより好ましく、1/30がさらに好ましい。一方、上記Alの質量比の上限としては、1/12であり、1/20がより好ましい。上記Alの質量比が上記下限未満である場合、CaOの滓化が十分に進まず、脱硫反応の向上効果が不足するおそれがある。逆に、上記Alの質量比が上記上限を超える場合、過剰のAlにより脱硫能(サルファイドキャパシティ)が低下するおそれがある。
第1石灰投入工程S22で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中の金属Alの質量比の下限としては、1/216であり、1/150がより好ましく、1/100がさらに好ましい。一方、上記金属Alの質量比の上限としては、1/39であり、1/50がより好ましい。上記金属Alの質量比が上記下限未満である場合、金属Alと酸素との反応による脱硫反応の促進効果やCaOの滓化促進効果が不足するおそれがある。逆に、上記金属Alの質量比が上記上限を超える場合、金属Alと酸素との反応が進み過ぎ、この反応で過剰に生じたAlにより脱硫能が低下するおそれがある。
また、アルミニウムドロス投入工程S21では、回転軸を中心とする攪拌羽根2の半径をr[m]、攪拌羽根2の先端と溶銑鍋1の側壁との距離をL[m]とした場合、図2Bに示すような上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の外側領域Aに上記アルミニウムドロスを投入する。
ここで、上記アルミニウムドロスを溶銑鍋1の外側領域Aに投入する理由について説明する。攪拌羽根2により溶銑鍋1内を攪拌しているときの鉛直方向の溶銑Mの動きFは、図2Aに示すように攪拌羽根2の挿入位置を中心として外周部が上向き、中心部は下向きとなる。つまり、アルミニウムドロスを中心部に投入した場合、溶銑M内へ巻き込まれ易いのに対し、アルミニウムドロスを外周部へ投入した場合、溶銑M内へ巻き込まれ難い。一方、攪拌羽根2を用いる機械攪拌では大気も溶銑M中に巻き込まれるが、大気が巻き込まれた場合、渦中心付近では大気が溶銑M中に溶解した状態又は気体のままの状態で存在するため、酸素ポテンシャルの高い状態、すなわち酸化し易い状態となる。このような状態で金属Alを渦中心付近に投入すると、大気によって金属Alの酸化される量が多くなる。発明者らが確認したところ、攪拌羽根2の回転数によっては巻込み大気の影響が大きくなり、金属Alによる脱硫促進効果がほとんど得られない場合もあった。これにより、発明者らは、回転数によらず確実に酸素ポテンシャルを低減するために、アルミニウムドロスは溶銑鍋1の外周部に投入し、脱硫反応で溶銑M中の硫黄と結合する石灰は溶銑鍋1の中心付近に投入すればよいことを見出した。さらに、発明者らは、攪拌羽根2の回転数によらず確実に酸素ポテンシャルを低減できる投入位置について鋭意検討した結果、r+L/3の位置を閾値として、アルミニウムドロスは上記閾値より外側に投入し、石灰は上記閾値より内側に投入すればよいことを見出した。具体的には、アルミニウムドロスは例えば図2Aの添加位置Pから直下に投入するとよい。
(第1石灰投入工程)
第1石灰投入工程S22では、上記アルミニウムドロス投入工程S21後30sec以内に、つまりアルミニウムドロス投入よりも後で、かつアルミニウムドロス投入時から30sec以内に、石灰を投入する。
全石灰投入量W[kg]に対する第1石灰投入工程S22における石灰量W[kg]の比率の下限は、40質量%であり、45質量%がより好ましい。一方、上記石灰量W[kg]の比率の上限は、60質量%であり、55質量%がより好ましい。ここで、溶銑M中の硫黄濃度はCaOと溶銑Mとの接触角、すなわち濡れ易さに影響を及ぼし、上記硫黄濃度が0.01質量%以上であればCaOと溶銑Mとが濡れ易く、CaOは凝集し難いと考えられる。従って、硫黄濃度が0.01質量%以上の溶銑Mを対象とする脱硫において脱硫反応の初期はCaOの凝集抑制効果が期待できる。従って、石灰量W[kg]の比率が上記下限に満たない場合、脱硫反応効率が低下するおそれがある。一方、機械攪拌による脱硫処理において石灰は互いに凝集し、脱硫反応に寄与する界面積が減少する。また、凝集後の石灰粒子の粒径は石灰の投入量に依存する。従って、石灰量W[kg]の比率が上記上限を超える場合、CaOが未反応のまま凝集し易くなり、脱硫反応効率が低下するおそれがある。
次に、第1石灰投入工程S22で、上記アルミニウムドロス投入工程S21でのアルミニウムドロス投入よりも後で、かつアルミニウムドロス投入時から30sec以内に石灰を投入する理由について説明する。上述したように、攪拌羽根2を用いる機械攪拌では大気も溶銑M中に巻き込まれるため、溶銑M中の大気によりアルミニウムが酸化されると考えられる。そこで、発明者らは、石灰の投入タイミングを変えて調査したところ、アルミニウムドロスの投入から30sec経過時以降に石灰を投入した場合、金属Alによる脱硫促進効果が得られなくなることを見出した。従って、第1石灰投入工程S22では、アルミニウムドロス投入時から30sec以内に石灰を投入する。また、アルミニウムドロスに含まれる金属Alは、周囲をAlに覆われている場合が多い。このような金属Alが溶銑Mに接触した場合、Alを介して溶銑Mの熱が伝わり、金属Alが固体から液体へと相変化する。この相変化により周囲を覆うAlの外部へ金属Alが露出し、脱硫反応や、脱硫反応熱によるCaOの滓化が促進される。ところが、石灰をアルミニウムドロスよりも先に、又はアルミニウムドロスと同時に投入した場合、石灰の粒子が溶銑Mから金属Alへの伝熱を阻害してしまい、脱硫反応やCaOの滓化が進行しないままCaOが凝集する時間帯が生じるため、反応効率が低下する。従って、第1石灰投入工程S22では、アルミニウムドロス投入後に石灰を投入する。
また、第1石灰投入工程S22では、図2Bに示すような上記回転軸中心からr+L/3[m]以内の内側領域Aに上記石灰を投入する。上述したように、発明者らは、攪拌羽根2の回転数によらず、r+L/3の位置を閾値として石灰を上記閾値よりも内側に投入することで高い反応効率が得られることを見出した。具体的には、石灰は例えば図2Aの添加位置Pから直下に投入するとよい。
<第2投入工程>
第2投入工程S3は、アルミニウム金属材料を投入するアルミニウム金属材料投入工程S31と、上記アルミニウム金属材料投入工程S31後に石灰を投入する第2石灰投入工程S32とを有する。
(アルミニウム金属材料投入工程)
アルミニウム金属材料投入工程S31では、上記第1石灰投入工程S22後、溶銑鍋1内に上記アルミニウム金属材料を投入する。
ここで、第2投入工程S3において金属Alを主成分とし、不可避的に含まれるAlを除きAlが含まれないアルミニウム金属材料を投入する理由について説明する。上述の(4)式に示すように脱硫反応は金属Alと酸素との反応により促進される。つまり、脱硫反応効率を高めるには、金属Alが必要である。一方、例えばアルミニウムドロスのようにAl及び金属Alを含む材料を投入する場合、もともと存在する滓化スラグにさらにAlが溶け込み、脱硫能が低下する。この場合、第1投入工程S2で滓化スラグに取り込まれ硫黄が溶銑M中に再び溶解する、いわゆる復硫が生じ、溶銑M中の脱硫が困難となる。このため、第2投入工程S3では、金属Al材料を投入する。
第2石灰投入工程S32で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウム金属材料中の金属Alの質量比の下限としては、1/75であり、1/50がより好ましく、1/40がさらに好ましい。一方、上記金属Alの質量比の上限としては、1/15であり、1/20がより好ましい。上記金属Alの質量比が上記下限未満である場合、金属Alと酸素との反応による脱硫反応の促進効果が不足するおそれがある。逆に、上記金属Alの質量比が上記上限を超える場合、金属Alと酸素との反応が進み過ぎ、この反応により生じたAlにより金属Alと酸素との反応が抑制され、脱硫能が低下するおそれがある。
また、アルミニウム金属材料投入工程S31では、アルミニウムドロス投入工程S21と同様に、攪拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]以上の溶銑鍋1の外側領域Aに上記アルミニウム金属材料を投入する。攪拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の溶銑鍋1の内側領域Aへ上記アルミニウム金属材料を投入すると、アルミニウムによる脱硫促進効果が十分に得られないおそれがある。
(第2石灰投入工程)
第2石灰投入工程S32では、アルミニウム金属材料投入工程S31後30sec以内、つまりアルミニウム金属材料投入よりも後であってアルミニウム金属材料投入時から30sec以内、かつ上記第1石灰投入工程S22後上述の式(1)に示す時間p[min]経過後に石灰を投入する。第2石灰投入工程S32で投入する石灰量W[kg]は上記全石灰投入量W[kg]の上記石灰量W[kg]を除く石灰量であり、W=W−Wの関係が成り立つ。
ここで、第2石灰投入工程S32で、第1石灰投入工程S22後上述の式(1)に示す時間p[min]経過後に石灰を投入する理由について以下に説明する。
機械攪拌による脱硫方法では、石灰は処理中に互いに凝集し脱硫反応に寄与する界面積が減少すること、及び凝集後の石灰粒子の粒径は石灰投入量に依存することから、発明者らは、第1投入工程での石灰の投入量に応じて第2投入工程での石灰の投入タイミングを制御することで脱硫反応効率を向上できると推測した。その結果、発明者らは、第1投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰と、第1投入工程での石灰投入及び第2工程での石灰投入の間隔との間に脱硫反応効率に関連づけられる関係があることを見出した。
具体的には、以下の方法で、上記第1投入工程で投入する石灰量W[kg]に対する上記石灰の投入間隔の範囲のうち、脱硫反応効率を向上できる範囲が得られる下記式(1)を導出した。まず、後述する実施例の全脱硫処理時間が12minであるチャージのデータを用いて、横軸を第1投入工程での石灰量W、縦軸を第1投入工程及び第2投入工程での石灰投入間隔の実績値とし、データを撒布図としてグラフ化した。このグラフを図3に示す。図3から、処理後の硫黄濃度が0.005質量%以下となる脱硫効率の高いチャージと、処理後の硫黄濃度が0.005質量%超となる脱硫効率の低いチャージとは、石灰量Wの一次近似式を境界として区別できることが分かる。また、石灰量Wが0[kg]である場合、上記投入間隔は0となると考えられる。従って、脱硫効率の高いチャージのうち上限の1点及び下限の1点を用い、それぞれ一次近似を行い、下記式(1)が導出された。
0.0065×W≦p≦0.0106×W ・・・(1)
脱硫効率の高いチャージと脱硫効率の低いチャージとの境界が一次近似式により表せるのは以下の理由と推察される。上記境界のうち、石灰投入間隔の上限は、石灰の脱硫反応界面積と石灰量Wとの積により決まると考えられる。第1投入工程S2において石灰中のCaOに対するAl及び金属Alの投入量を所定範囲に制御しているため、液相の滓化スラグが生成されている。この滓化スラグにより第2投入工程S3で投入された石灰の表面が覆われるので、石灰粒子は、直接石灰粒子の表面同士が接するのではなく、液相の滓化スラグを介して凝集していると考えられる。従って、石灰の脱硫反応界面積は石灰の凝集後も維持され、減衰しないと考えられる。このため、上限の境界は石灰量Wに比例すると考えられる。一方、石灰投入間隔の下限は、第2投入工程S3での石灰投入により凝集が発生しない程度に溶銑中の石灰が減少するために必要な時間で決まると考えられ、石灰量Wに比例すると考えられる。以上から、上限及び下限いずれにおいても、第1投入工程及び第2投入工程での石灰投入間隔の好適な範囲は、第1投入工程での石灰量Wを変数とした一次近似でその境界が表せると考えられる。
なお、上記アルミニウム金属材料投入工程S31でのアルミニウム金属材料投入後30sec以内に石灰を投入する理由は、上記アルミニウムドロス投入工程S21でのアルミニウムドロス投入後30sec以内に石灰を投入する理由と同じである。
また、第2石灰投入工程S32では、第1石灰投入工程S22と同様に、攪拌羽根2の回転軸中心からr+L/3[m]未満の内側領域Aに石灰を投入する。このように、領域Aに石灰を投入することで、反応効率が向上し易い。
<利点>
以上のように、当該溶銑の脱硫方法は、CaOの凝集の抑止及び溶銑内の酸素濃度の増加の抑止により脱硫促進効果が維持できるので、脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実機設備を用いて、溶銑の脱硫効果を評価する実験を行った。具体的には、溶銑鍋として、内径が4mの取鍋を用い、溶銑量を250ton以上260ton以下、溶銑温度を1250℃以上1350℃以下、攪拌羽根の回転開始から停止までの全脱硫処理時間を8分以上15分以下として脱硫処理を行った。攪拌羽根は、4枚の羽根を有し、羽根の高さが0.8m、羽根の直径が1.4m、羽根のねじれ角が90°のものを用い、溶銑鍋の平面視で中心となる位置に挿入し、回転数90rpm以上140rpm以下で回転させた。なお、攪拌羽根の先端と溶銑鍋の側壁との距離Lは、1.3mであった。
石灰としては、CaO濃度が90質量%のものを用いた。また、アルミニウムドロスとしては、製鋼用アルミドロスのうち、表1に示す量のAl及び金属Alを含有する4種類のアルミニウムドロスを用いた。なお、Al及び金属Alの質量濃度は、JIS−G−2402:2009に準拠して測定した値である。また、アルミニウム金属材料としては、金属Alを94質量%含有するものを用いた。これらの石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料は、溶銑鍋の上方から溶銑の浴面に向けて投入した。
Figure 2017133058
なお、ここで用いた溶銑は、炭素(C)の含有量が4.2質量%以上4.5質量%以下、硫黄(S)の含有量が0.015質量%以上0.025質量%以下、ケイ素(Si)の含有量が0.1質量%以上0.3質量%以下、リン(P)の含有量が0.09質量%以上0.13質量%以下であった。
また、全石灰投入量W[kg]については、実操業時には次工程までの時間余裕等で決まる脱硫処理時間において、処理前溶銑の硫黄濃度と処理後の目標硫黄濃度に応じて決めるのが一般的である。この当業者常法によりチャージ毎の全石灰投入量W[kg]を決定した。具体的には、目標硫黄濃度0.005質量%に対して、全石灰投入量W[kg]は、800kg以上1820kg以下となった。
このような実機設備を用いて、表2〜表7に示す条件でNo.1〜No.182の各チャージにおける脱硫処理を行った。なお、表2〜表4には、第1投入工程における条件を示し、表5〜表7には、第2投入工程における条件を示している。これらのうち、No.180〜No.182のチャージでは、全投入量の石灰を第1投入工程で投入し、第2投入工程を行っていないので、表7中の第2投入工程の欄に「−」を記載している。また、No.166〜No.168のチャージでは、第2投入工程においてアルミニウム金属材料と共にアルミニウムドロスを投入している。このため、投入量にアルミニウムドロスの欄を設けると共にアルミニウム投入にAlの欄を設けている。なお、アルミニウムドロスの投入を行っていない他のチャージについては、これらの欄には「−」を記載している。
また、表2〜表4中の「Al/CaO」は、第1投入工程において投入する石灰に含まれるCaOの質量に対するアルミニウムドロスに含まれるAlの質量の割合を示す。この割合は、アルミニウムドロスの投入量とアルミニウムドロス中のAlの質量濃度との積を、石灰量Wと石灰中のCaOの質量濃度との積で除して算出した値である。
また、表2〜表7中の「Al/CaO」は、各工程において投入する石灰に含まれるCaOの質量に対する金属Alの質量の割合を示す。この割合は、各工程においてアルミニウムドロス又はアルミニウム金属材料の投入量と金属Alの質量濃度との積を、石灰量Wと石灰中のCaOの質量濃度との積で除して算出した値である。
また、表2〜表7中の「アルミニウムドロス投入位置」、「アルミニウム投入位置」及び「石灰投入位置」とは、それぞれアルミニウムドロス、アルミニウム金属材料及び石灰を投入した位置であり、攪拌羽根の回転軸中心からの距離を示している。ここで用いた溶銑鍋及び攪拌羽根においてr+L/3の距離は1.13mである。
また、表2〜表4中の石灰投入の「ドロス投入後」は、アルミニウムドロス投入から石灰投入までの時間を示し、この間隔が0とは、石灰をアルミニウムドロスと同時に投入したことを意味する。また、表5〜表7中の「第1石灰投入後」とは、第1石灰投入から第2石灰投入までの時間を示す。表5〜表7中の「Al投入後」は、アルミニウム金属材料投入から石灰投入までの時間を示す。
<脱硫評価>
上記No.1〜No.182の各チャージにおける脱硫処理前後の溶銑中の硫黄濃度を計測し、脱硫効果を評価した。具体的には、脱硫処理後の硫黄濃度が0.005質量%以下となった場合、特に脱硫効率が高いものとして評価「A」とし、脱硫処理後の硫黄濃度が0.005質量%超のものを評価「B」とした。No.1〜No.182の評価結果を表5〜表7に示す。
また、各チャージにおける脱硫処理の脱硫石灰効率ηCaO,S[%]を算出した。脱硫石灰効率ηCaO,Sは、脱硫に寄与したCaOの比率を表す指標であり、同じ溶銑量及び石灰量であれば、脱硫が進行するほどこの数値が大きくなる。この脱硫石灰効率ηCaO,S[%]は、各チャージの処理前溶銑硫黄濃度をS[質量%]、処理後溶銑硫黄濃度をS[質量%]及びCaO原単位をWCaO[kg/ton]とするとき、以下の式(5)で求まる。なお、CaO原単位WCaOは、石灰投入量[kg]と石灰のCaO濃度[質量%]との積で求まる値を溶銑量[ton]で除することで算出できる。No.1〜No.182の評価結果を表5〜表7に示す。
ηCaO,S=(S−S)×(1000×56/32)/WCaO ・・・(5)
表2〜表7において、No.1〜No.109は、本発明に規定する溶銑の脱硫方法により石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したものである。一方、No.110〜No.182は、本発明の規定のいずれかを満たなさない比較例である。
Figure 2017133058
Figure 2017133058
Figure 2017133058
Figure 2017133058
Figure 2017133058
Figure 2017133058
[評価結果]
表2〜表7の結果より、本発明に規定する溶銑の脱硫方法により石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したNo.1〜No.109では脱硫後の硫黄濃度が0.005質量%以下であり、脱硫石灰効率ηCaO,Sが5.5%以上である。一方、本発明の規定のいずれかを満たなさないNo.110〜No.182は、脱硫後の硫黄濃度が0.005質量%超であり、脱硫石灰効率ηCaO,Sが5.5%未満である。
さらに詳細に見るため、石灰の全投入量に対する第1投入工程での石灰量(W/W)と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を図4に示す。図4において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記W/Wの範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図4からW/Wの範囲を40質量%以上60質量%以下とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図5は、第1石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対するアルミニウムドロス中のAlの質量比(Al/CaO)と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図5において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記Al/CaOの範囲のみが本発明に規定する範囲外であるチャージである。図5からAl/CaOの範囲を1/70以上1/12以下とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図6は、第1石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対するアルミニウムドロス中の金属Alの質量比(金属Al/CaO)と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図6において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記金属Al/CaOの範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図6から金属Al/CaOの範囲を1/216以上1/39以下とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図7は、第2石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対するアルミニウム金属材料中の金属Alの質量比(金属Al/CaO)と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図7において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記金属Al/CaOの範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図7から第2投入工程における金属Al/CaOの範囲を1/75以上1/15以下とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図8は、第1投入工程のアルミニウムドロス投入位置と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図8において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記アルミニウムドロス投入位置の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図8から第1投入工程のアルミニウムドロス投入位置を攪拌羽根の回転軸中心からr+L/3の距離に相当する1.13m以上の領域とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図9は、第1投入工程の石灰投入位置と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図9において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記石灰投入位置の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図9から第1投入工程の石灰投入位置を攪拌羽根の回転軸中心からr+L/3の距離に相当する1.13m未満の領域とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図10は、第2投入工程のアルミニウム金属材料投入位置と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図10において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記アルミニウム金属材料投入位置の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図10から第2投入工程のアルミニウム金属材料投入位置を攪拌羽根の回転軸中心からr+L/3の距離に相当する1.13m以上の領域とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図11は、第2投入工程の石灰投入位置と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図11において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記石灰投入位置の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図11から第2投入工程の石灰投入位置を攪拌羽根の回転軸中心からr+L/3の距離に相当する1.13m未満の領域とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図12は、第1投入工程のアルミニウムドロス及び石灰の投入間隔と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図12において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記投入間隔の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図12から第1投入工程のアルミニウムドロス及び石灰の投入間隔をアルミニウムドロス投入後30sec以内とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
図13は、第2投入工程のアルミニウム金属材料及び石灰の投入間隔と脱硫処理後の硫黄濃度との関係を示す。図13において、「○」のプロットは本発明に規定する範囲内で石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入したチャージであり、「×」のプロットは上記投入間隔の範囲が本発明に規定する範囲外であるチャージである。図13から第2投入工程のアルミニウム金属材料及び石灰の投入間隔をアルミニウム金属材料投入後30sec以内とすることで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
また、表5〜表7の第1石灰投入工程の石灰と第2石灰投入工程の石灰との投入間隔が上述の式(1)を満たさない比較例は、脱硫後の硫黄濃度が0.005質量%超となっている。上記投入間隔が式(1)を満たさないため、石灰粒子の凝集が生じ脱硫反応効率が低下したと考えられる。
また、表5〜表7の第2投入工程においてアルミニウムドロスを投入した比較例は、脱硫後の硫黄濃度が0.005質量%超となっている。第2投入工程においてAlが投入されることで、もともと存在する滓化スラグにさらにAlが溶け込み、脱硫能が低下したと考えられる。このため、脱硫後の硫黄濃度が0.005質量%超となったと考えられる。
以上から、本発明に規定する溶銑の脱硫方法により石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入することで、高い脱硫効率が得られることが分かる。
<脱硫後硫黄濃度のばらつき評価>
脱硫後の硫黄濃度のばらつきを評価するため、溶銑の脱硫効果を評価する実験と同じ実機設備を用いて実験を行った。
(実施例)
表8に示す条件で70チャージの脱硫処理を行った。
(比較例)
表8に示す条件で70チャージの脱硫処理を行った。
Figure 2017133058
[評価結果]
図14に実施例及び比較例の70チャージの脱硫後の硫黄濃度をそれぞれヒストグラムに表したグラフを示す。なお、実施例の処理後硫黄濃度の平均値は0.0040質量%であり、ばらつき(σ)は0.0002質量%であった。一方、比較例の処理後硫黄濃度の平均値は0.0069質量%であり、ばらつき(σ)は0.0012質量%であった。
図14から、実施例の脱硫後硫黄濃度のばらつきは、比較例の脱硫後硫黄濃度のばらつきより小さい。比較例は、第2投入工程においてアルミニウムドロスを投入したため、脱硫後硫黄濃度のばらつきが大きくなったと考えられる。このことから、本発明に規定する溶銑の脱硫方法により石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料を投入することで、脱硫後硫黄濃度のばらつきが低減できることが分かる。
以上説明したように、当該溶銑の脱硫方法は、脱硫反応効率を向上できると共に、脱硫ばらつきを低減できるので、高品質が要求される鋼材の製造に有用である。
1 溶銑鍋
2 攪拌羽根
M 溶銑
F 溶銑の動き

Claims (1)

  1. 溶銑鍋内での攪拌羽根の回転により脱硫を行う機械攪拌式脱硫装置を用い、石灰、アルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料をフラックスとし、硫黄濃度が0.01質量%以上の溶銑を対象とする脱硫方法であって、
    脱硫処理時間、脱硫処理前の上記溶銑の硫黄濃度及び脱硫処理後の溶銑の目標硫黄濃度に基づき全石灰投入量W[kg]を決定する石灰投入量決定工程と、
    上記全石灰投入量W[kg]の40質量%以上60質量%の石灰量W[kg]の石灰及びアルミニウムドロスを投入する第1投入工程と、
    上記全石灰投入量W[kg]の上記石灰量W[kg]を除く石灰量W[kg]の石灰及びアルミニウム金属材料を投入する第2投入工程と
    を備え、
    上記第1投入工程が、
    上記アルミニウムドロスを投入するアルミニウムドロス投入工程と、
    上記アルミニウムドロス投入工程後30sec以内に上記石灰量W[kg]の石灰を投入する第1石灰投入工程と
    を有し、
    上記第2投入工程が、
    上記アルミニウム金属材料を投入するアルミニウム金属材料投入工程と、
    上記アルミニウム金属材料投入工程後30sec以内、かつ上記第1石灰投入工程後下記式(1)に示す時間p[min]経過後に上記石灰量W[kg]の石灰を投入する第2石灰投入工程と
    を有し、
    上記アルミニウムドロス投入工程で投入するアルミニウムドロスの量を、第1石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中のAlの質量比が1/70以上1/12以下、石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウムドロス中の金属Alの質量比が1/216以上1/39以下になるように決定し、
    上記アルミニウム金属材料投入工程で投入するアルミニウム金属材料の量を、第2石灰投入工程で投入する石灰量W[kg]の石灰中のCaOに対する上記アルミニウム金属材料中の金属Alの質量比が1/75以上1/15以下になるように決定し、
    回転軸を中心とする攪拌羽根の半径をr[m]、攪拌羽根の先端と溶銑鍋の側壁との距離をL[m]とした場合、上記アルミニウムドロス投入工程及びアルミニウム金属材料投入工程で投入するアルミニウムドロス及びアルミニウム金属材料の投入位置を上記回転軸中心からr+L/3[m]以上の領域とし、
    上記第1石灰投入工程及び第2石灰投入工程で投入する石灰の投入位置を上記回転軸中心からr+L/3[m]未満の領域とする脱硫方法。
    0.0065×W≦p≦0.0106×W ・・・(1)
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