JP2016176120A - 高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼 - Google Patents

高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも省工程で、かつ、現在広く使用されている9〜12質量%のCrを含有する高Cr合金鋼に比べて、600℃以上でのクリープ強度が優れた耐熱鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.10%、Si:0.70%以下、Mn:0.30〜0.70%、Cr:8.00〜9.50%、Mo:0.01〜0.50%、Ti:0.015〜0.10%、N:0.02〜0.05%、V:0.15〜0.30%、Nb:0.03〜0.06%、W:1.50〜2.50%、Co:0.05〜3.00%を含有し、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.03%以下、Cu:0.01%以下、Ni:0.01%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で定義するCr当量が、6.85〜9.00であることを特徴とする高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。Cr当量=Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-30N-4Ni-2Mn-Cu-2Co…(1)Cr、Si、Mo、W、V、Nb、C、N、Ni、Mn、Cu、Coは、各元素の質量%【選択図】なし

Description

本発明は、クリープ強度に優れる、化学工業プラント、火力発電プラント、ボイラ、原子力分野に好適な耐熱鋼に関する。
一般に、化学工業、ボイラ用の高温耐熱部材としては、3質量%以下のCrを含む低Cr合金鋼、9〜12質量%のCrを含むフェライト系鋼やステンレス鋼などが用いられている。これらのうち、高Cr合金鋼は、操業温度が500℃を超える高温熱交換器用配管部材として使用されており、9Cr−1Mo−Nb−V−N鋼(JIS STBA 28)、9Cr−0.5Mo−1.8W鋼(火STBA 29、ASME Grade92)などが規格化されている。
9〜12質量%のCrを含有する高Cr合金鋼は、低Cr合金鋼より耐高温酸化性に優れ、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて経済性だけでなく、溶接性にも優れている。しかし、従来、高Cr合金鋼は、600℃以上で使用すると、Nb、V、Cr、Fe、Moの炭化物、窒化物が早期に粗大化し、凝集化して析出強化能が消失し、さらなるクリープ特性の向上が困難である問題があった。
このような問題に対し、さらなる高強度化を志向して、種々の提案がなされている。析出物を安定化するため、及び、固溶強化を狙って固溶Mo、Wを増量し、Co、Taを添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。さらに、旧オーステナイト粒径を粗粒とすることにより、クリープ特性の向上を図った耐熱鋼が提案されている(例えば、特許文献2、参照)。
特開平08−085849号公報 特開2009−293063号公報
しかし、特許文献1の耐熱鋼は、Cr、W、Co、Taの量が多く、さらなる省合金化が求められている。また、本発明者らによる実験から、Cr量、W量を増加した結果、十分なクリープ強度が得られないことが解った。特許文献2の耐熱鋼は、熱間加工を複数回実施して、旧オーステナイト粒径を粗大化させているが、本発明者らによる実験から、高Crフェライト系耐熱鋼においては、粗粒化は必要ないことが解った。
本発明の課題は、従来よりも省合金で、かつ、現在広く使用されている9〜12質量%のCrを含有する高Cr合金鋼に比べて、600℃以上でのクリープ強度が優れた耐熱鋼を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の合金系を溶解、圧延、熱処理し、応力の範囲を70〜200MPaとし、クリープ破断強度を調査した。その結果、600℃以上のクリープ強度を向上させるためには、Tiを添加し、Cr当量を最適化した成分とすれば、高温での使用中にTi炭窒化物が析出するので、クリープ強度が顕著に向上することを知見し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
[1]質量%で、
C :0.05〜0.10%、
Si:0.70%以下、
Mn:0.30〜0.70%、
Cr:8.00〜9.50%、
Mo:0.01〜0.50%、
Ti:0.015〜0.10%、
N :0.02〜0.05%、
V :0.15〜0.30%、
Nb:0.03〜0.06%、
W :1.50〜2.50%
Co:0.05〜3.00%
を含有し、
P :0.03%以下、
S :0.015%以下、
Al:0.03%以下、
Cu:0.01%以下、
Ni:0.01%以下、
に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
下記(1)式で定義するCr当量が、6.85〜9.00であることを特徴とする高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
Cr当量=Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb−40C−30N−4Ni−2Mn−Cu−2Co ・・・(1)
ここで、Cr、Si、Mo、W、V、Nb、C、N、Ni、Mn、Cu、Coは、各元素の質量%を意味する。
[2]さらに、下記(2)式で定義するC当量が、2.06〜2.09であることを特徴とする前記[1]に記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
C当量=C+(Mn/6)+((Cr+Mo+V)/5)+((Ni+Cu)/15) ・・・(2)
ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素の質量%を意味する。
[3]さらに、質量%で、Zr:0.010%以下を含有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
[4]さらに、質量%で、B:0.0003〜0.020%を含有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
本発明によれば、多量のCr、Mo、W、及び、希少元素を添加することなく、600℃における104時間クリープ破断強度が150MPa以上の、高温クリープ特性に優れた耐熱鋼を提供することが可能になる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
まず、本発明の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼(以下「本発明耐熱鋼」ということがある。)の成分組成の限定理由について説明する。なお、%は質量%を意味する。
C:0.05〜0.10%
Cは、炭化物を生成し、析出強化によって高温強度を高め、フェライトの生成を抑制して靱性を確保する元素である。0.05%未満では、炭化物の析出量が不足し充分な強度が得られず、また、フェライト量が多くなり過ぎて靱性を損なうので、0.05%以上とする。好ましくは、0.06%以上である。より好ましくは0.07%以上である。
一方、0.10%を超えると、高温で炭化物が粗大化し、高温強度が低下するので、0.10%以下とする。650℃におけるクリープ強度の低下を防止する点で、0.09%以下が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
Si:0.70%以下
Siは、脱酸剤であり、特に下限の規定を要しないが、添加効果を確実に得るためには、0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。Siは、耐水蒸気酸化特性を高める元素でもあるので、この点で0.20%以上が好ましい。一方、0.70%を超えると、鋼の靱性及び加工性が低下するので、0.70%以下とする。好ましくは0.50%以下である。
Mn:0.30〜0.70%
Mnは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、また、ベイナイト又はマルテンサイトの生成に寄与する元素である。添加効果を得るため、0.30%以上とする。また、Mnは、Sを固定して熱間加工性を改善し、組織の安定化にも寄与するので、この点で、0.40%以上が好ましい。一方、0.70%を超えると、加工性や溶接性を阻害するので、0.70%以下とする。Mnは、焼戻し脆化感受性を高める元素でもあるため、0.60%以下が好ましい。
Cr:8.00〜9.50%
Crは、高温特性の向上に不可欠な元素である。クリープ特性を確保するため、8.00%以上を添加する。耐酸化性や耐食性の点から、8.50%以上が好ましい。一方、Crが増加すると経済性が低下するので、9.50%以下とする。好ましくは9.00%以下である。
Mo:0.01〜0.50%
Moは、固溶強化及び析出強化によって、クリープ強度を顕著に向上させる元素である。添加効果を得るため、0.01%以上とする。クリープ特性の向上の点で、0.30%以上が好ましい。一方、Moを過剰に添加すると、M2X型析出物が粗大化して、靱性及びクリープ特性が低下するので、0.50%以下とする。好ましくは0.40%以下である。
Ti:0.015〜0.10%
Tiは、脱酸剤として機能する元素である。添加効果を得るため、0.015%以上とする。また、Tiは、強力な炭化物、窒化物生成元素であり、組織の微細化及び炭化物、窒化物の安定化に寄与する元素であるので、この点で、0.040%以上が好ましい。一方、0.10%を超えると、粗大なTiNが生成し、靱性が低下するので、0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
N:0.02〜0.05%
Nは、MX型析出物を形成し、高温強度の上昇に寄与する元素である。添加効果を得るため、0.02%以上とする。好ましくは0.025%以上である。一方、Nを過剰に含有させると、粗大なTiNが生成し、靱性が低下するので、0.05%以下とする。好ましくは0.045%以下である。
V:0.15〜0.30%
Vは、微細な炭化物を析出させてクリープ強度を高める作用をなす元素である。添加効果を得るため、0.15%以上とする。好ましくは0.18%以上、より好ましくは0.20%以上である。一方、Vを過剰に添加すると、析出物によって靱性が低下するので、0.30%以下とする。好ましくは0.25%以下である。
Nb:0.03〜0.06%
Nbは、Cと結合して微細な炭化物を形成し、クリープ強度の向上に寄与する元素である。添加効果を得るため、0.03%以上とする。好ましくは0.045%以上である。一方、Nbを過剰に添加すると、粗大な炭化物が生成し、靱性が低下するので、0.06%以下とする。好ましくは0.055%以下である。
W:1.50〜2.50%
Wは、Moと同様の効果を奏する元素である。WとMoを同時に添加することにより、クリープ強度を顕著に高めることができるので、1.50%以上とする。クリープ特性を高める点で、1.70%以上が好ましい。一方、2.50%を超えると、溶接性や加工性が低下するので、2.50%以下とする。650℃以上におけるクリープを確保する点で、2.40%以下が好ましい。
Co:0.05〜3.00%
Coは、クリープ特性を損なわずにオーステナイトを安定化させ、δフェライトの析出を抑制する元素であり、ベイナイト又はマルテンサイトの生成を促進する元素である。添加効果を得るため、0.05%以上とする。高温強度を高める点で、0.80%以上が好ましい。一方、3.00%を超えると、溶接性や加工性が低下するので、3.00%以下とする。好ましくは2.90%以下である。
P:0.03%以下
Pは、不純物であり、鋼の靱性、加工性、溶接性を損なうので、0.03%以下に制限する。好ましくは0.01%以下で、より好ましくは0.005%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.001%が実質的な下限である。
S:0.015%以下
Sは、不純物であり、鋼の靱性、加工性、溶接性を損なうので、0.015%以下に制限する。好ましくは0.003%以下で、より好ましくは0.001%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.0001%が実質的な下限である。
Al:0.03%以下
Alは、脱酸剤として機能する元素である。しかし、0.03%を超えると、クリープ特性の低下を招くので、0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.001%が実質的な下限である。
Cu:0.01%以下
Ni:0.01%以下
Cu及びNiは、スクラップなどの原料から混入し、クリープ特性を低下させる元素である。Cu及びNiが、ともに0.01%を超えると、クリープ特性の低下を招くので、それぞれを、0.01%以下とする。好ましくは、いずれも、0.005%以下である。
なお、下限は0%を含む。
本発明耐熱鋼は、さらに、クリープ強度を高めるために、Zr、Bを含有することができる。
Zr:0.010%以下
Zrは、Tiと同様に、強力な炭化物、窒化物制生成元素であり、組織の微細化及び炭化物、窒化物の安定化に寄与する元素である。しかし、0.010%を超えると、粗大なZrNが生成し、靱性が低下するので、0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含み、特に限定しないが、添加効果を確実に得る点で、0.001%以上が好ましい。
B:0.0003〜0.020%
Bは、微量の添加により顕著に焼入れ性を高める元素である。添加効果を得るため、0.0003%以上とする。炭化物を分散、安定化させ、クリープ強度を高める点で、0.003%以上が好ましい。一方、過剰に添加すると、溶接性や加工性が低下するので、0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下で、より好ましくは0.008%以下である。
本発明耐熱鋼においては、下記(1)式で定義するCr当量を6.85〜9.00とする。
Cr当量=Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb−40C−30N−4Ni−2Mn−Cu−2Co ・・・(1)
ここで、Cr、Si、Mo、W、V、Nb、C、N、Ni、Mn、Cu、Coは、各元素の質量%を意味する。
(Cr当量式は、D.L. Newhouse,C.J.Boyle and R.M. Curran:Preprint of the 68th ASTM Annual Meeting,Purdue University,Lafayette,IN,June 13−18,1965.による。)
Cr当量が6.85未満であると、Crが8.00〜9.50%であっても、他の元素の添加効果との相互作用で、所望のクリープ特性が得られない場合がある。本発明者らは、このことを実験的に確認したので、所望のクリープ特性を確保するため、Cr当量は6.85以上とする。好ましくは6.90以上である。
また、Cr当量が9.00を超えると、Crが8.00〜9.50%であっても、他の元素の添加効果との相互作用で、所望のクリープ特性が得られない場合がある。本発明者らは、このことを実験的に確認したので、所望のクリープ特性を確保するため、Cr当量は9.00以下とする。好ましくは8.80以下である。
本発明耐熱鋼においては、下記(2)式で定義するC当量が2.06〜2.09であることが好ましい。
C当量=C+(Mn/6)+((Cr+Mo+V)/5)+((Ni+Cu)/15) ・・・(2)
ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素の質量%を意味する。
(C当量は、J.F.Lancaster:Metallurgy of Welding 3rd edition,pp.130,George Allen & Unwin,London,1970.による。)
C当量が2.06未満であると、Cが0.05〜0.10%であっても、他の元素の添加効果との相互作用で、所望の高温強度が得られない場合がある。本発明者らは、このことを実験的に確認したので、所望の高温強度を確保するため、C当量は2.06以上とする。好ましくは2.07以上である。
C当量が2.09を超えると、Cが0.05〜0.10%であっても、他の元素の添加効果との相互作用で、所望の高温強度が得られない場合がある。本発明者らは、このことを実験的に確認したので、所望の高温強度を確保するため、C当量は2.09以下とする。好ましくは2.08以下である。
次に、本発明耐熱鋼の製造方法について説明する。
本発明耐熱鋼は、常法により、鋼を溶製し、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延を施して製造される。熱間圧延後は空冷する。
熱間圧延前の加熱は、鋼の変形抵抗を低下させ、かつ、鋳造時に鋼片に生成した析出物を固溶させる工程である。本発明耐熱鋼の製造方法では、熱間圧延を、MoやWの炭化物が析出する温度よりも高温で完了させることが必要であるので、加熱温度を1050℃以上とすることが好ましい。好ましくは1100℃以上である。一方、加熱温度が高すぎると、組織が粗大になるので、1250℃以下が好ましい。
熱間圧延のトータル圧下率を50%以上とすると、熱間圧延後の金属組織において、旧オーステナイト粒径を50μm以下にすることができる。旧オーステナイト粒径が50μm以下であると、靭性が得られるので、好ましい。熱間圧延は、金属組織がオーステナイトである温度域であるAr3変態点以上で行う。これは、Ar3変態点未満で熱間圧延を行うと、加工フェライトが生成し、靱性が低下するためである。
圧下率は大きいほど、鋼の靭性が向上するので好ましいが、6.85≦Cr当量≦9.00であると、空冷において、ベイナイト又はマルテンサイトラス幅が0.4μm以下と微細になり、靱性の低下を抑制することができる。Cr当量を本発明範囲内で高めにすれば、ラス幅は、0.3μm以下になる。ラス幅は0.3μm以下になるようにすると、さらに靭性が向上するので好ましい。
本発明の成分組成及びCr当量の範囲内の鋼を熱間圧延後、空冷すると、マルテンサイト組織の面積率が95%以上で、δフェライトの面積率が5%以下となる。金属組織を光学顕微鏡で観察するには、鋼を切断し、研磨し、ピクリン酸アルコールでエッチングし、倍率200倍程度で観察する。焼戻しマルテンサイト及びδフェライトの面積率は、画像解析によって測定することができる。なお、ラス幅は、透過型電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
熱間圧延の終了後、室温まで空冷し、Ac1変態点未満の温度で焼戻し処理を行ってもよい。焼戻し処理の温度がAc1変態点以上になると析出物が粗大になり、高温強度が低下する。
この焼戻し処理を行うと金属組織は、焼戻しマルテンサイトが95%以上の組織となる。と同時に、Ti炭窒化物などの析出物が生成する。熱間圧延終了後、焼戻処理の前に、1000℃以上に加熱し、空冷する焼準しを行うと、組織が整い、好ましい。焼戻し処理をしない場合でも、高温(例えば、600℃)で使用すれば、自然とTi炭窒化物などの析出物が析出するので、焼戻し処理をしなくても、高いクリープ強度が得られる。
焼準し温度が高すぎると、旧オーステナイト粒径が大きくなる。焼準し温度は1200℃未満が好ましい。安定的に旧オーステナイト粒径50μm以下を得るには、1150℃未満がさらに好ましい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1及び表2(表1の続き)に示す成分組成の鋼を溶製して鋳造し、得られた鋼片を表3に示す条件で熱間圧延し、空冷した。熱間圧延して空冷した鋼(熱延まま)、熱延後焼準した鋼、熱延後焼準せずに焼戻した鋼、熱延後焼準し焼戻した鋼について、クリープ試験を実施した。焼準しした場合は、表3に示す温度に1時間加熱し、空冷した。焼戻しした場合は、表3の温度に示す温度に1時間加熱し、空冷した。
クリープ試験前の鋼材を切断し、研磨し、エッチングして、光学顕微鏡により金属組織を観察した。さらに、鋼材から試験片を採取し、機械的特性の評価を行った。母材の引張特性は、圧延方向に直角な方向(C方向)の板厚中心部から丸棒引張試験片を採取して、600℃、650℃、及び、700℃でクリープ試験を行って評価した。
Figure 2016176120
Figure 2016176120
Figure 2016176120
クリープ特性は、クリープ試験を600℃において200MPa負荷試験、650℃において100MPa、150MPa負荷試験、さらに、700℃において70MPa、90MPa負荷試験を行い、クリープ破断強度を求めた。得られた結果を用いて、ラーソン・ミラー・パラメータにより、600℃、104時間の推定破断強度を評価した。結果を表4に示す。
Figure 2016176120
表1、2及び表4に示すように、発明例の鋼No.1〜3は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量を満たす鋼であり、いずれも、比較例の鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
発明例の鋼No.4〜23は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量範囲及びC当量範囲を満たす鋼であり、いずれも、比較例の鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
発明例の鋼No.2は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量を満たす鋼であり、熱間圧延終了後、焼準し及び焼戻し処理をしない場合であり、比較例の鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
発明例の鋼No.19は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量範囲及びC当量範囲を満たす鋼であり、熱間圧延終了後、焼準し及び焼戻し処理をしない場合であり、比較例の鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
発明例の鋼No.20及び21は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量範囲及びC当量範囲を満たす鋼であり、熱間圧延終了後、焼準し又は焼戻し処理を実施した場合であり、いずれも、比較例の鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
発明例の鋼No.22及び23は、本発明の成分組成を有し、かつ、本発明のCr当量範囲を満たす鋼であり、熱間圧延終了後、焼準し又は焼戻し処理を実施した場合であり、いずれも、比較鋼に比べて、20MPa以上の600℃104時間クリープ強度を達成している。
一方、比較例の鋼No.24〜52では、成分組成、Cr当量範囲、及び/又は、C当量範囲が、本発明の範囲外であるために、十分なクリープ特性を達成できていない。
比較例の鋼No.24、26及び27では、Mo及びNが本発明の上限を超えており、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれているため、M2X型析出物、TiNが粗大化して、クリープ特性が低下している。
比較例の鋼No.25では、Mo、N及びZrが本発明の上限を超えており、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれているため、十分なクリープ強度が達成されていない。
比較例の鋼No.28では、C、Mn、N及びWが、本発明範囲の下限又は上限を超えており、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.29では、Mn、N及びWが、本発明範囲の下限又は上限を超えており、Cr当量が本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.30は、各元素の含有量は本発明範囲の範囲内であるが、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれているために、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.31では、C、及びCrが、本発明範囲の下限又は上限を超えているために、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.32は、各元素の含有量は本発明範囲の範囲内であるが、Cr当量が本発明範囲の上限を超えているために、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.33〜47では、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Al、Ti、N、V、Nb及びWのいずれか1つ又は複数が、本発明範囲の下限又は上限を超えており、Cr当量及びC当量が本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.48及び49では、各元素の含有量は本発明範囲の範囲内であるが、Cr当量が本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
比較例の鋼No.50〜52では、Cr当量及びC当量が本発明範囲内であるが、Coが本発明範囲をはずれて、十分なクリープ特性が達成されていない。
前述したように、本発明によれば、多量のCr、Mo、W、及び、希少元素を添加することなく、9〜12質量%のCrを含有する従来の高Cr合金鋼に比べて600℃における104時間クリープ破断強度が20MPa以上高い、高温クリープ特性に優れた耐熱鋼を提供することが可能になる。その結果、ボイラ、化学工業などで使用する耐熱鋼を安価に提供することが可能になるので、本発明は、産業上の利用可能性が極めて高いものである。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.05〜0.10%、
    Si:0.70%以下、
    Mn:0.30〜0.70%、
    Cr:8.00〜9.50%、
    Mo:0.01〜0.50%、
    Ti:0.015〜0.10%、
    N :0.02〜0.05%、
    V :0.15〜0.30%、
    Nb:0.03〜0.06%、
    W :1.50〜2.50%、
    Co:0.05〜3.00%
    を含有し、
    P :0.03%以下、
    S :0.015%以下、
    Al:0.03%以下、
    Cu:0.01%以下、
    Ni:0.01%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記(1)式で定義するCr当量が、6.85〜9.00であることを特徴とする高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
    Cr当量=Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb−40C−30N−4Ni−2Mn−Cu−2Co ・・・(1)
    ここで、Cr、Si、Mo、W、V、Nb、C、N、Ni、Mn、Cu、Coは、各元素の質量%を意味する。
  2. さらに、下記(2)式で定義するC当量が、2.06〜2.09であることを特徴とする請求項1に記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
    C当量=C+(Mn/6)+((Cr+Mo+V)/5)+((Ni+Cu)/15) ・・・(2)
    ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素の質量%を意味する。
  3. さらに、質量%で、Zr:0.010%以下を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
  4. さらに、質量%で、B:0.0003〜0.020%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高温クリープ特性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。
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