JP2016175785A - セメントクリンカ組成物およびその製造方法ならびに中庸熱ポルトランドセメント組成物 - Google Patents

セメントクリンカ組成物およびその製造方法ならびに中庸熱ポルトランドセメント組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】流動性が良好であり、かつ発現する強度が高い中庸熱ポルトランドセメント組成物を作製するために用いるセメントクリンカ組成物、そのセメントクリンカ組成物の製造方法およびそのセメントクリンカ組成物を含む中庸熱ポルトランドセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明のセメントクリンカ組成物は、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgであり、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上である。本発明のセメントクリンカ組成物の製造方法は、本発明のセメントクリンカ組成物を製造するための製造方法である。本発明の中庸熱ポルトランドセメント組成物は本発明のセメントクリンカ組成物および石膏を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビーライトの含有量が高いセメントクリンカ組成物、そのセメントクリンカ組成物の製造方法ならびにそのセメントクリンカ組成物を用いて製造した中庸熱ポルトランドセメント組成物に関する。
近年、コンクリート構造物の大型化、高層化が進んでいる。このため、セメント組成物の水和熱によってコンクリート構造物の内部と表面との間に温度差がさらに生じやすくなっている。このようなコンクリート構造物の内部と表面との間の温度差は、コンクリート構造物のひび割れの原因となる。このようなひび割れを防止するために、水和熱が小さい中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントが開発された。中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントでは、水和熱を低くするために、エーライトおよびアルミネート相の含有量を小さくし、その結果として、ビーライトの含有量が高くなる。
上述したように、コンクリート構造物の大型化、高層化が進んでいるため、コンクリート構造体に要求される強度も高くなっている。また、コンクリート構造物の大型化、高層化にともない、コンクリートにおける運搬、打込みおよび締固めなどの作業を容易にできることがさらに要求されており、コンクリートの流動性が高いことが、ますます重要になっている。このように、コンクリート構造物の大型化、高層化にともない、水和熱が低く、流動性が良好であり、発現する強度が高いセメント組成物が望まれている。そのようなセメント組成物として、たとえば、特許文献1〜5に記載されているセメント組成物が知られている。
特許文献1に記載のセメント組成物では、高ビーライト系ポルトランドセメントに、シリカフュームおよび石灰石微粉末を添加することによって、水和熱が低くし、流動性を良好にし、発現する強度を高くしている。特許文献2に記載のセメント組成物では、高ビーライト型セメントと高エーライト型セメントとを所定の割合で混合してセメント組成物を作製することによって、中庸熱ポルトランドセメントの発現する強度を高くしている。特許文献3に記載のセメント組成物では、ビーライトを主体とするビーライト系セメントクリンカと、エーライトを主体とするエーライト系セメントクリンカと、石膏とを所定の割合で混合してセメント組成物を作製することによって、発熱量が低くし、初期強度を高くしている。特許文献4に記載のセメント組成物では、エーライトを含むセメントクリンカと、二酸化珪素を主要成分として含む物質とを1100℃以上の温度領域で接触反応させることによって生成したビーライト(A)および、エーライトの分解によって生じた酸化カルシウムと二酸化珪素を主要成分として含む物質との反応により生成したビーライト(B)を含有するセメント組成物を作製することによって、発現する初期強度を高くしている。特許文献5に記載のセメント組成物では、セメント組成物中の固溶アルカリ含有量を0.2重量%以上、0.75重量%以下とし、SOの含有量を1.2重量%以下とし、MgOの含有量を1.0重量%以下とすることによって、長期強度を維持しつつ初期強度を向上させている。
特開平8−239249号公報 特開平7−215742号公報 特開平8−175854号公報 特開2005−67905号公報 特開2010−120787号公報
特許文献1〜5に記載されているセメント組成物は、流動性が良好であり、かつ、発現する強度が高いものの、コンクリート構造物の大型化、高層化が益々進んでいるため、流動性がさらに良好であり、かつ、発現する強度がさらに高い中庸熱ポルトランドセメント組成物が望まれている。そこで、本発明は、流動性が良好であり、かつ発現する強度が高い中庸熱ポルトランドセメント組成物、その中庸熱ポルトランドセメント組成物の製造に用いるセメントクリンカ組成物およびそのセメントクリンカ組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、セメントクリンカ組成物中のスズまたはスズ化合物の含有量を所定の範囲内にし、かつ、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積を所定の範囲内にすることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物であって、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgであり、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上であるセメントクリンカ組成物。
[2]セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量が0.11〜1.70質量%であり、MgOの含有量が0.65〜1.90質量%であり、Pの含有量が0.10〜0.30質量%であり、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量が、下記の式(1)の関係を満たす上記[1]に記載のセメントクリンカ組成物。
(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.05 (1)
[3]セメントクリンカ組成物中の4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141が10〜30である上記[1]または[2]に記載のセメントクリンカ組成物。
[4]ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物を製造するセメントクリンカ組成物の製造方法であって、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgになり、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上になるように調整してセメントクリンカ組成物を製造するセメントクリンカ組成物の製造方法。
[5]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のセメントクリンカ組成物または上記[4]に記載のセメントクリンカ組成物の製造方法によって製造されたセメントクリンカ組成物と、石膏とを含む中庸熱ポルトランドセメント組成物。
本発明によれば、流動性が良好であり、かつ発現する強度が高い中庸熱ポルトランドセメント組成物を作製するために用いるセメントクリンカ組成物、そのセメントクリンカ組成物の製造方法およびそのセメントクリンカ組成物を含む中庸熱ポルトランドセメント組成物を提供することができる。
図1は、実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を作製したときの焼成後の冷却開始温度とセメントクリンカ組成物中の固溶しているSOの含有量との関係を示すグラフである。 図2は、実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を作製したときの焼成後の冷却開始温度と4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141との関係を示すグラフである。
[セメントクリンカ組成物]
本発明のセメントクリンカ組成物は、ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物であって、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgであり、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上である。
また、本発明のセメントクリンカ組成物は、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量が0.11〜1.70質量%であり、MgOの含有量が0.65〜1.90質量%であり、Pの含有量が0.10〜0.30質量%であり、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量が、下記の式(1)の関係を満たしてもよい。
(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.05 (1)
さらに、本発明のセメントクリンカ組成物は、セメントクリンカ組成物中の4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141が10〜30であってもよい。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセメントクリンカ組成物は、セメント組成物を構成する主要組成物であり、石灰石(CaO成分)、粘土(Al成分、SiO成分)、ケイ石(SiO成分)および酸化鉄原料(Fe成分)などを適量ずつ配合し、1450℃前後の高温で焼成して製造される。セメントクリンカは、3CaO・SiO(略号:CS)、2CaO・SiO(略号:CS)、3CaO・Al(略号:CA)、および4CaO・Al・FeO(略号:CAF)を含む。セメントクリンカは、エーライト(CS)およびビーライト(CS)の主要鉱物と、その主要鉱物の結晶間に存在するアルミネート相(CA)およびフェライト相(CAF)の間隙相などとから構成される。この中でも、ビーライトは、α型、α’型、β型、γ型(それぞれα−CS、α’−CS、β−CS、γ−CS)の多形が存在し、α型とα’型は高温安定型、β型とγ型は低温安定型となっている。セメントクリンカを得る際、原料を混合した混合物を1450℃〜1600℃の範囲で焼成すると、焼成後の冷却過程において、セメントクリンカ中のビーライトは、α型からα'型やβ型を経てγ型に転移し、安定なγ型となる。これらのうち、ポルトランドセメントに含まれるものは、主としてβ−CSであり、これは中庸熱ポルトランドセメントの主要な組成化合物であり、一般にコンクリートの材齢28日以降の強度発現に大きく寄与する。
なお、セメントクリンカ組成物における3CaO・SiO(略号:CS)、2CaO・SiO(略号:CS)、3CaO・Al(略号:CA)および4CaO・Al・FeO(略号:CAF)の割合は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定したセメントクリンカにおけるCaO、SiO、AlおよびFeの割合から、セメント化学の分野でボーグ式と呼ばれる計算式により求められる(たとえば、大門正機編訳「セメントの化学」、内田老鶴圃(1989)、p.11を参照)。
(3CaO・SiOの割合)
本発明のセメントクリンカ組成物におけるボーグ式で算出された3CaO・SiOの割合は、好ましくは29.0〜49.0質量%であり、より好ましくは36.5〜45.5質量%であり、さらに好ましくは40.5〜44.0質量%である。ボーグ式で算出された3CaO・SiOの割合が29.0〜49.0質量%であると、セメントクリンカ組成物の水和熱が高くなりすぎることを抑制できるとともに、セメントクリンカ組成物の初期強度が低くなりすぎることを抑制できる。
(2CaO・SiOの割合)
本発明のセメントクリンカ組成物におけるボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合は、30〜50質量%であり、好ましくは32.0〜43.5質量%であり、より好ましくは34.5〜43.5質量%である。ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30質量%未満であると、結果的に、3CaO・SiOの割合が高くなり、セメントクリンカ組成物の水和熱が高くなりすぎる場合がある。また、ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が50質量%よりも大きくなると、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の初期強度が低くなりすぎる場合がある。
(2CaO・SiOの格子体積)
本発明のセメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積は、347.05×10−3nm以上であり、好ましくは347.10×10−3nm以上であり、より好ましくは347.24×10−3nm以上である。β−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上未満であると、セメント組成物の流動性が悪くなる場合がある。なお、通常のクリンカ製造条件において、格子体積が347.5×10−3nmを超えるβ−2CaO・SiOを得ることは困難である。また、β−2CaO・SiOの格子体積は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
また、β−2CaO・SiOの格子体積は、以下のような要因により変化するものと考えられる。たとえば、クリンカ組成物中の微量成分のうち、Cr、VおよびPなどは、β−2CaO・SiOの高温変態における安定化に及ぼす作用が強いことが知られている。Cr、VおよびPは、5価イオンとして、SiO四面体のSiイオンと置換し、固溶する。それぞれの5価イオン半径は、Cr5+:46pm、V5+:40pm、P5+:35pmであり、Si4+のイオン半径である41pmに近似しているため、容易に置換するものと考えられる。これらのうち、Crによる置換が、イオン半径の差から、格子歪(格子体積)を最も増加させる。また、クリンカ組成物中のSO含有量に対してMgO含有量が多い場合、結晶生成よりも核生成が促進されるため、格子定数は小さくなる。さらに、SO含有量に対してセメント中の全アルカリ含有量が多いと、SOはアルカリ硫酸塩となり、結晶生成に影響するSOが少なくなるため、格子体積は小さくなる傾向にある。また、製造したクリンカを急冷すると、β−2CaO・SiOの格子体積は大きくなる傾向にある。したがって、β−2CaO・SiOの格子体積は、クリンカの原料原単位(各原材料の配合量)やクリンカの冷却速度の調節により制御することができる。これらの調節は、サンプリングしたセメント組成物におけるβ−2CaO・SiOの格子体積の値を求め、これに基づいて行うことができる。
また、以下の推測は本発明を限定しないが、β−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上であると、本発明のセメントクリンカ組成物を用いたセメント組成物の流動性をさらに改善することができるのは以下の理由によるものと推測される。β−2CaO・SiOの格子体積は、注水時にセメントクリンカ組成物に含まれる硫酸アルカリや石膏から溶解した硫酸イオンの吸着量と関係がある。β−2CaO・SiOの格子体積の増大にともない、β−2CaO・SiOの結晶の歪が大きくなることによって、選択的にβ−2CaO・SiO結晶表面への硫酸イオン吸着量が増大する。β−2CaO・SiOの結晶表面への硫酸イオンの吸着によって、液相中の硫酸イオン濃度が減少すると、硫酸イオンと競争吸着する混和剤のβ−2CaO・SiO結晶以外の結晶表面への吸着量が増大することにより、セメント組成物全体として流動性が改善される。
(3CaO・Alの割合)
本発明のセメントクリンカ組成物におけるボーグ式で算出された3CaO・Alの割合は、好ましくは1.0〜6.0質量%であり、より好ましくは2.5〜5.5質量%であり、さらに好ましくは2.5〜4.0質量%である。ボーグ式で算出された3CaO・Alの割合が1.0〜6.0質量%であると、セメントクリンカ組成物の焼成中に生成する液相の粘性低下を抑制し、セメントクリンカ組成物の造粒を適切に進行させ、セメントクリンカ組成物の粒径が小さくなることによってクリンカークーラー中の層圧が一定しなくなることを抑制するとともに、水和熱を低くすることができる。なお、クリンカークーラー中の層圧が一定しなくなると、セメントクリンカ組成物の急冷に支障をきたす場合がある。
(4CaO・Al・FeOの割合)
本発明のセメントクリンカ組成物におけるボーグ式で算出された4CaO・Al・FeOの割合は、好ましくは8.5〜13.0質量%であり、より好ましくは9.0〜12.5質量%であり、さらに好ましくは9.5〜12.0質量%である。ボーグ式で算出された4CaO・Al・FeOの割合が8.5〜13.0質量%であると、セメントクリンカ組成物が発現する強度をより高くすることができるとともに、水和熱をより低くすることができる。
(3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合)
本発明のセメントクリンカ組成物におけるボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合は、10〜16質量%であり、好ましくは12.0〜15.5質量%であり、より好ましくは12.5〜14.5質量%である。ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10質量%未満であると、セメントクリンカ組成物の焼成時に生成する液相の量が少なくなるため、液相介在による固相−液相反応が速やかに進まなくなり、セメントクリンカ組成物の焼成が不十分になる場合がある。また、セメントキルン中にダストが飛散し、バーナーからの輻射熱が遮断されるため、セメントクリンカの焼成を効率よく実施できない場合がある。さらに、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の初期強度が低くなりすぎる場合がある。また、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が16質量%よりも大きいと、操業不良を引き起こしやすくなると同時に、強度に寄与するカルシウムシリケート鉱物の生成が少なくなるため、本発明のセメントクリンカ組成物を用いたセメント組成物の強度が低下する場合がある。また、セメントクリンカ組成物の水和熱が高くなりすぎる場合がある。
(4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141
本発明のセメントクリンカ組成物中の4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141は、好ましくは10〜30であり、より好ましくは10〜20であり、さらに好ましくは10〜15である。4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141が10〜30であると、4CaO・Al・FeOの水和反応性を安定化させることができる。なお、I020は、4CaO・Al・FeOの(020)面(2θ=約12.1°)のX線回折パターンのバックグランドを差し引いたピーク強度であり、I141は、4CaO・Al・FeOの(141)面(2θ=約33.7°)のX線回折パターンのバックグランドを差し引いたピーク強度である。また、4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141は、セメントクリンカ組成物の焼成後の冷却開始温度を制御することによって調節することができ、冷却開始温度が高いほど、X線回折強度比I020/I141は減少する。
(固溶しているSOの含有量)
本発明のセメントクリンカ組成物にはSOが固溶している。本発明のセメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量は、好ましくは0.11〜1.70質量%であり、より好ましくは0.11〜1.20質量%であり、さらに好ましくは0.25〜1.15質量%である。固溶しているSOの含有量が0.11〜1.70質量%であると、硬化後のセメント組成物の強度が低下したり、硬化後のセメント組成物に膨張亀裂が発生したりすることを抑制できる。なお、固溶しているSOの含有量は、以下のようにして算出することができる。セメントクリンカ組成物中のSOの含有量を、JIS R 5202:1998「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠して測定する。一般的に、セメントクリンカ組成物中には可溶性のアルカリ硫酸塩(KSO、KNa(SOなど)が含まれている。このため、セメント協会標準試験方法、JCAS I−04:2004に準拠してセメントクリンカ組成物中の水溶性アルカリ量を測定し、この測定値に基づいて、SOに換算したアルカリ硫酸塩の含有量を算出する。そして、セメントクリンカ組成物中のSOの含有量から、SOに換算したアルカリ硫酸塩の含有量を引き算して、固溶しているSOの含有量を算出することができる。また、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量はセメントクリンカ組成物の焼成後の冷却開始温度を制御することによって調節することができ、冷却開始温度が高いほど、固溶しているSOの含有量は増大する。
(MgOの含有量)
本発明のセメントクリンカ組成物はMgOを含む。本発明のセメントクリンカ組成物におけるMgOの含有量は、好ましくは0.65〜1.90質量%であり、より好ましくは0.75〜1.75質量%であり、さらに好ましくは0.75〜1.00質量%である。MgOの含有量が0.65〜1.90質量%であると、セメントクリンカ組成物の焼成時に生成する液相の量が少なくなり、液相介在による固相−液相反応が速やかに進まなくなり、セメントクリンカ組成物の焼成が不十分になることを抑制できるとともに、本発明のセメントクリンカ組成物を含むコンクリートの硬化の際に、水和膨張が起こることを抑制できる。なお、MgOの含有量は、JISR 5202:1999「セメントの化学分析方法」に準拠して測定される。また、MgOは、MgOを多く含むスラグをセメントクリンカ組成物の原料として用いることにより、セメントクリンカ組成物へ導入される。
(Pの含有量)
本発明のセメントクリンカ組成物はPを含む。本発明のセメントクリンカ組成物におけるPの含有量は、好ましくは0.10〜0.30質量%であり、より好ましくは0.13〜0.26質量%であり、さらに好ましくは0.15〜0.23質量%である。Pの含有量が0.10〜0.30質量%であると、セメントクリンカ組成物の焼成時に生成する液相の量が少なくなるため、液相介在による固相−液相反応が速やかに進まなくなり、セメントクリンカ組成物の焼成が不十分になることを抑制できるとともに、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の初期強度が低くなることを抑制できる。なお、Pの含有量は、JISR 5202:1999「セメントの化学分析方法」に準拠して測定される。また、Pは、Pを含む一般廃棄物もしくは産業廃棄物をセメントクリンカ組成物の原料として用いることにより、セメントクリンカ組成物へ導入される。
(固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量の関係)
本発明のセメントクリンカ組成物において、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量は、下記の式(1)の関係を好ましくは満たし、より好ましくは下記の式(2)の関係を満たし、さらに好ましくは下記の式(3)の関係を満たす。セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量は、下記の式(1)の関係を満たすと、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物が発現する強度が高くなり、流動性も良好になる。
(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.05 (1)
(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.08 (2)
(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.15 (3)
(スズまたはスズ化合物の含有量)
本発明のセメントクリンカ組成物はスズもしくはスズ化合物を含む。本発明のセメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量は、スズ元素に換算して、40〜250mgであり、好ましくは40〜220mgであり、より好ましくは40〜200mgである。セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40mg未満であると、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の流動性が低下し、発現する強度が弱くなる場合がある。セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、250mgよりも大きくなると、本発明のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の流動性が混練直後に低下する場合がある。なお、スズまたはスズ化合物の含有量は、JISR 5202:1999「セメントの化学分析方法」に準拠して測定される。
[セメントクリンカ組成物の製造方法]
本発明は、ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物を製造するセメントクリンカ組成物の製造方法であって、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgになり、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上になるように調整してセメントクリンカ組成物を製造する。
本発明のセメントクリンカ組成物の製造方法における、ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合、ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量、およびセメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積は、上述の本発明のセメントクリンカ組成物で説明したものと同様であるので、これらの説明は省略する。
本発明のセメントクリンカ組成物は、具体的には、たとえば、以下のようにして製造することができる。セメントクリンカ原料としては、Ca、Si、Al、Fe、Mg、P、Snなどを含むものであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュなどが挙げられる。かかるセメントクリンカ原料の混合割合に関しては、上記式(1)の関係を満たすセメントクリンカ組成物が製造できれば、とくに限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
そして、目的とするセメントクリンカ組成物が得られるような組成で混合されたセメントクリンカ原料を、下記の焼成条件で焼成し、冷却する。焼成は、通常、電気炉やロータリーキルンなどを用いて行われる。焼成方法としては、たとえば、セメントクリンカ原料を、所定の第1焼成温度および第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度および所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程と、を含む方法が挙げられる。たとえば、電気炉を用いた場合、セメントクリンカ原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカ組成物を製造することができる。
[中庸熱ポルトランドセメント組成物]
本発明の中庸熱ポルトランドセメント組成物は、本発明のセメントクリンカ組成物または本発明のセメントクリンカ組成物の製造方法で製造されたセメントクリンカ組成物と石膏とを含む。
本発明の中庸熱ポルトランドセメント組成物は、混合少量成分をさらに含んでもよい。混合少量成分には、たとえば、流動性、水和速度または強度発現の調節用として添加される、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームなどが挙げられる。また、他の少量成分には、コンクリートの流動性および強度をより向上させるために添加される、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤、とくにポリカル系高性能AE減水剤などが挙げられる。
[モルタルおよびコンクリート]
本発明の中庸熱ポルトランドセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水および砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂および砂利と混合することにより、コンクリートを製造することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュなどを添加することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
[評価方法]
実施例および比較例のセメント組成物を次の評価方法で評価した。
(3CaO・SiO、2CaO・SiO、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの割合)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中の3CaO・SiO、2CaO・SiO、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの割合は、セメントクリンカの原料の配合量からセメントクリンカ組成物におけるCaO、SiO、AlおよびFeの割合を算出し、その算出結果を用いてボーグ式で算出した。
(3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合)
上記で算出した3CaO・Alの割合と、4CaO・Al・FeOの割合とを足し算して、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合を算出した。
(固溶しているSOの含有量)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中のSOの含有量を、JIS R 5202:1998「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠して測定した。測定には、原子吸光分析装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、品番:Z2000型)を使用した。次に、セメント協会標準試験方法、JCAS I−04:2004に準拠してセメントクリンカ組成物中の水溶性アルカリ量を測定し、この測定値に基づいて、SOに換算したアルカリ硫酸塩の含有量を算出した。そして、セメントクリンカ組成物中のSOの含有量から、SOに換算したアルカリ硫酸塩の含有量を引き算して、固溶しているSOの含有量を算出した。
(MgOの含有量)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中のMgOの含有量は、クリンカ原料を配合するときの塩基性炭酸マグネシウムの配合量から算出した。
(Pの含有量)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中のMgOの含有量は、クリンカ原料を配合するときのリン酸三カルシウムの配合量から算出した。
(スズまたはスズ化合物の含有量)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中のスズまたはスズ化合物の含有量は、クリンカ原料を配合するときの酸化スズ粉末の配合量から算出した。
(2CaO・SiOの格子体積)
以下の測定条件にて粉末X線回折測定を行い、得られたX線回折プロファイルをリートベルト解析ソフトで解析し、β−CSの格子体積を求めた。
粉末X線回折装置:粉末解析用X線回折装置 X’Part Powder(パナリ ティカル社製)
結晶構造解析用ソフトウエア:(X’Part High Score Plus
version 2.1b)
X線管球 :Cu
管電圧−管電流 :45kV−40mA
測定範囲(2θ):10〜70°
ステップ幅 :0.017°
スキャン速度 :0.1012°/秒
なお、解析で使用した各クリンカ鉱物の結晶構造データは以下のとおりである。
S :単斜晶系(空間群C1m1) (参考文献1)
S :単斜晶系(空間群P21/n)(参考文献2)
A(立方晶):立方晶系(空間群P23) (参考文献3)
A(斜方晶):斜方晶系(空間群Pbca) (参考文献3)
AF :斜方晶系(空間群Ima2) (参考文献4)
各参考文献を以下に示す。
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参考文献4:A.A.Colville and S.Geller, The Crystal Structute of Brownmillerite, Ca2FeAlO5, Acta Crystallographica, vol.B27, p.2311(1971)
(固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量の関係式)
上記で算出した固溶しているSOの含有量ならびに上記で測定したPの含有量およびMgOの含有量を下記式(5)に代入して値Xを算出した。
X=(固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量) (5)
(4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物中の4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141は、サリチル酸メタノールを用いてセメントクリンカ組成物中の3CaO・SiOおよび2CaO・SiOを溶出させた後、残ったセメントクリンカ組成物の粉末X線回折パターンを測定し、4CaO・Al・FeOの(020)面のX線回折パターンのバックグランドを差し引いたピーク強度を、4CaO・Al・FeOの(141)面のX線回折パターンのバックグランドを差し引いたピーク強度で割り算することによって算出した。また、粉末X線回折の測定条件は以下のとおりである。
粉末X線回折装置:粉末解析用X線回折装置 X’Part Powder(パナリティカル社製)
X線管球:Cu
管電圧−管電流:45kV−40mA
測定範囲(2θ):10〜70°
ステップ幅:0.017°
スキャン速度:0.1012°/秒
(ブレーン比表面積値)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物のブレーン比表面積値をJIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した。
(28日材齢モルタル強度)
JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物から作製したモルタルをそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢28日まで養生し、JISR 5201「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、圧縮強さを測定した。
(コンクリートのスランプフロー値の測定)
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物から作製したコンクリートのスランプフロー値を、「高流動コンクリート施工指針の試験方法(土木学会基準)スランプフロー試験」に準拠して測定した。スランプフローの測定は、コンクリート組成物混練りした後5分経過後に実施した。
[実施例および比較例のセメント組成物の作製]
以下のようにして、実施例および比較例のセメント組成物を作製した。
<実施例1〜9、比較例1〜3>
(セメントクリンカ組成物の作製)
クリンカ原料として、二酸化珪素(キシダ化学(株)製、試薬1級、SiO)、酸化鉄(III)(関東化学(株)製、試薬特級、Fe)、炭酸カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaCO)、酸化アルミニウム(関東化学(株)製、試薬1級、Al)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学(株)製、試薬特級、4MgCO・Mg(OH)・5HO)、炭酸ナトリウム(キシダ化学(株)製、無水・特級、NaCO)、リン酸三カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、Ca(PO)、硫酸カルシウム2水和物(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaSO4・2H2O)および酸化スズ粉末(和光純薬工業(株)製、型番:No.20−0160)を用いた。
配合量を適宜変えて配合したクリンカ原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った後、1000℃から1450℃まで30分間かけて昇温させ、さらに1450℃で15分間の焼成を行った後、焼成物を急冷して、各実施例、比較例に用いたセメントクリンカを作製した。
(セメント組成物の作製)
上記作製したセメントクリンカ組成物に内割りでSO3換算量1.5質量%の半水石膏(関東化学株式会社製半水石膏、型番:07108−01(焼石膏、鹿1級)とを配合した。そして、配合物を、ブレーン比表面積値が約3000〜約3300cm/gの範囲となるようにボールミルで粉砕して、各実施例および比較例のセメントクリンカ組成物を用いたセメント組成物を作製した。
(モルタルの作製)
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠してモルタルを調製した。
(コンクリートの作製)
下記の表1に示す配合割合で、実施例および比較例のセメント組成物、砂(揖斐川産川砂)、砂利(西島産砕石)、高性能AE減水剤(商品名:レオビルドSP8SB、BASFポゾリス(株)製)および水を、パン型強制ミキサ(岡三機工(株)製、型番:ダマカットミキサー)を用いて均質に混合して、スランプフロー測定用のコンクリートを調製した。
Figure 2016175785
[評価結果]
実施例および比較例のセメントクリンカ組成物の組成および評価結果を下記の表3に示す。
また、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量および4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141は、セメントクリンカ組成物の焼成後の冷却開始温度を制御することによって調節することができることを示すために、実施例2と同じ組成のクリンカ組成物について、焼成後の冷却開始温度を変えて、セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量および4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141の関係を調べた。その結果を、表4ならびに図1および図2に示す。
Figure 2016175785
Figure 2016175785
Figure 2016175785
(1)実施例1〜9のセメントクリンカ組成物の28日材齢モルタル強度およびコンクリートのスランプフロー値と、比較例1〜5のセメンのクリンカ組成物の28日材齢モルタル強度およびコンクリートのスランプフロー値とを比較することによって、セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量を、スズ元素に換算して、40〜250mgにし、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上にすることによって、そのセメントクリンカ組成物を用いて作製したセメント組成物の発現する強度を高くし、かつ、流動性を良好にできることがわかった。
(2)比較例1のセメントクリンカ組成物は、強度は高かったものの、スズの含有量が40mgよりも小さかったため、流動性が悪かった。
(3)比較例2のセメントクリンカ組成物は、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nmよりも小さかったため、強度は低く、流動性も悪かった。
(4)比較例3のセメントクリンカ組成物は、スズの含有量が40mgよりも小さく、セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nmよりも小さかったため、強度は低く、流動性も悪かった。
(5)表4、図1および図2から4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141およびクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量は、セメントクリンカ組成物の焼成後の冷却開始温度を制御することによって調節することができることがわかった。

Claims (5)

  1. ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、
    ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物であって、
    前記セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgであり、
    前記セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上であるセメントクリンカ組成物。
  2. 前記セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量が0.11〜1.70質量%であり、
    MgOの含有量が0.65〜1.90質量%であり、
    の含有量が0.10〜0.30質量%であり、
    前記セメントクリンカ組成物に固溶しているSOの含有量、Pの含有量およびMgOの含有量が、下記の式(1)の関係を満たす請求項1に記載のセメントクリンカ組成物。
    (固溶しているSOの含有量)×(Pの含有量)÷(MgOの含有量)≧0.05 (1)
  3. 前記セメントクリンカ組成物中の4CaO・Al・FeOにおけるX線回折強度比I020/I141が10〜30である請求項1または2に記載のセメントクリンカ組成物。
  4. ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が30〜50質量%であり、
    ボーグ式で算出された3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの合計の割合が10〜16質量%であるセメントクリンカ組成物を製造するセメントクリンカ組成物の製造方法であって、
    前記セメントクリンカ組成物1kgに対するスズまたはスズ化合物の含有量が、スズ元素に換算して、40〜250mgになり、前記セメントクリンカ組成物中のβ−2CaO・SiOの格子体積が347.05×10−3nm以上になるように調整してセメントクリンカ組成物を製造するセメントクリンカ組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメントクリンカ組成物または請求項4に記載のセメントクリンカ組成物の製造方法によって製造されたセメントクリンカ組成物と、石膏とを含む中庸熱ポルトランドセメント組成物。
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