JP2015231951A - セメント組成物及びセメント組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボーグ式で算出されるC3Sが45〜75質量%、C2Sが5〜30質量%、C3Aが5〜15質量%、及びC4AFが5〜15質量%であり、Li含有量が0.01質量%〜0.1質量%(但し、Li含有量が0.01質量%を除く)であり、C3S−M1相比率が0.4以上であるセメント組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1]ボーグ式で算出されるC3Sが45〜75質量%、C2Sが5〜30質量%、C3Aが5〜15質量%、及びC4AFが5〜15質量%であり、
Li含有量が0.01質量%〜0.1質量%(但し、Li含有量が0.01質量%を除く)であり、
C3S−M1相比率が0.4以上であるセメント組成物。
[2]f−CaO含有量が0.3〜1.8質量%である[1]のセメント組成物。
[3]SO3含有量が1.5〜2.5質量%である[1]又は[2]のセメント組成物。
[4]Li含有物及びセメント原料の原料原単位を調整する原料工程と、
LiによってC3S−M1相比率が0.4以上となるように制御し、調整した原料を焼成してセメントクリンカを製造する焼成工程と、
前記セメントクリンカと石膏とを混合した混合材を粉砕する仕上工程
を含み、セメント組成物のLi含有量を0.01質量%〜0.1質量%(但し、Li含有量が0.01質量%を除く)とするセメント組成物の製造方法。
本発明の実施の形態に係るセメント組成物は、ボーグ式で算出されるC3Sが45〜75質量%、C2Sが5〜30質量%、C3Aが5〜15質量%、及びC4AFが5〜15質量%であり、Li含有量が0.001質量%以上である。
本発明において、セメントクリンカのC3S量に対するM1相量の比率(C3S−M1相比率)は、セメント組成物の収縮低減性能を十分に向上させるという観点から、0.4以上であることが好ましく、より好ましくは0.40〜0.55である。
C3S=(4.07×CaO)−(7.60×SiO2)−(6.72×Al2O3)−(1.43×Fe2O3+2.85×SO3)・・・・・(1)
C2S=(2.87×SiO2)−(0.754×C3S)・・・・・(2)
C3A=(2.65×Al2O3)−(1.69×Fe2O3)・・・・・(3)
C4AF=3.04×Fe2O3・・・・・(4)
上記式中のCaO、SiO2、Al2O3、及びFe2O3は、それぞれ、セメント組成物におけるCaO、SiO2、Al2O3、及びFe2O3の含有比率(質量%)である。これらの含有比率は、JISR 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定することができる。
ボーグ式で算出されるC2Sの鉱物量が5質量%未満であると、長さ変化の低減効果が得られず、収縮低減性能が向上しないため好ましくない。また、C2Sの鉱物量が30質量%より大きいと、収縮低減性能は向上するが、初期強度発現性が得られないため好ましくない。より好ましいC2Sの鉱物量は、10〜25質量%であり、更に好ましくは10〜20質量%である。
ボーグ式で算出されるC3Aの鉱物量が5質量%未満であると、初期強度発現性が得られないため好ましくない。また、C3Aの鉱物量が15質量%より大きいと、長さ変化の低減効果が得られず、収縮低減性能が向上しないため好ましくない。より好ましいC3Aの鉱物量は、6〜14質量%であり、更に好ましくは7〜12質量%である。
ボーグ式で算出されるC4AFの鉱物量が5質量%未満であると、初期強度発現性が得られず、セメントの色調等に影響を与えるため好ましくない。また、C4AFの鉱物量が15質量%より大きいと、セメントの色調等に影響を与えるため好ましくない。より好ましいC4AFの鉱物量は、6〜14質量%であり、更に好ましくは7〜10質量%である。
本発明の実施の形態に係るセメント組成物の製造方法は、Li含有物及びセメント原料の原料原単位を調整する原料工程と、調整した原料を焼成してセメントクリンカを製造する焼成工程と、セメントクリンカと石膏とを混合した混合材を粉砕する仕上工程とを含み、セメント組成物のLi含有量を0.001質量%以上とする。
Li含有物としては、炭酸リチウム等のリチウム化合物及び廃リチウムイオン電池等を用いることができる。
セメント原料としては、Ca、Si、Al、Fe等を含むものであれば、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。例えば天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュ等が挙げられる。また、かかるセメント原料の混合割合に関しては、特に限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
目的とするセメント組成物が得られるような組成で混合されたLi含有物及びセメント原料を、後述する焼成条件で焼成し、冷却する。
上記の様にして製造されたセメントクリンカを、石膏との混合物とすることにより、本発明に係るセメント組成物を作製することができる。また、セメントクリンカと石膏とを例えばボールミル等で粉砕することにより、セメント組成物を作製することができる。
≪セメントクリンカの作製≫
セメント原料として、二酸化珪素(キシダ化学製、試薬1級、SiO2)、酸化鉄(III)(関東化学製、試薬特級、Fe2O3)、炭酸カルシウム(キシダ化学製、試薬1級、CaCO3)、酸化アルミニウム(関東化学製、試薬1級、Al2O3)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学製、試薬特級、約4MgCO3・Mg(OH)2、・5H2O)、炭酸ナトリウム(キシダ化学製、無水・特級、Na2CO3)、リン酸三カルシウム(キシダ化学製、試薬1級、Ca3(PO4)2)、硫酸カルシウム2水和物(キシダ化学製、試薬1級、CaSO4・2H2O)を用いた。
更に、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.001質量%となるように配合量を算出し、Li含有物として炭酸リチウム(関東化学株式会社製)を配合した。
・X線回折プロファイルの取得及びセメントクリンカの同定
粉末X線回析装置(パナリティカル社製、X’Part Powder)を用い、測定条件を、ステップサイズ:0.17°、スキャンスピード:0.1012°/s、電圧:45kV、電流:40mAとして、X線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
次に、上記ソフトウエアに搭載されたリートベルト法による解析機能を用い、上記の通り同定されたセメントクリンカの質量%を定量した。ここでは、ICDS(社団法人化学情報協会の無機結晶構造データベース)から、セメントクリンカについての基本結晶構造データ(格子定数、スケールファクター等)は、上記ソフトウエアに初期値として入力されている。次に、セメントクリンカ全体の結晶構造パラメータの精密化に必要なパラメータとして格子定数、スケールファクター等を選択し、精密化操作を実行した。これにより、理論プロファイルが実測したX線回折プロファイルとフィッティングするように上記精密化に必要なパラメータが可変されることによって精密化操作が繰り返された後、最終的に精密化されたスケールファクターから、セメントクリンカの質量%が得られた。また、セメントクリンカの質量%の合計を100質量%とし、C3S−M1相量及びC3S−M3相量の和により、C3S量を算出した。このようにして定量されたセメントクリンカ量のうち、C3S量、C2S量、C3A量、及びC4AF量を表3に示す。
上記によって得られたM1相量及びM3相量から、C3S−M1相量及びC3S−M3相量との和を算出し、この和におけるC3S−M1相量の占める割合をC3S−M1相比率として算出した。得られたC3S−M1相量、C3S−M3相量、及びC3S−M1相比率を表3に示す。
作製したセメントクリンカと石膏とを、セメントクリンカに添加される石膏に含まれるSO3の含有量がセメント組成物全体を100質量%として2.0質量%となるように調合し、ブレーン値が3500cm2/gとなるようにボールミルで粉砕して、セメント組成物を作製した。
JIS R 5202「セメントの化学分析方法」に準拠して、作製したセメント組成物の化学組成を定量した。定量結果を表3に示す。
セメント組成物についての長さ変化試験はまず、JIS A 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」及びJISR 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、セメント組成物をそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。次に、JISA 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」に準拠して、作製されたモルタル供試体を20℃で7日間水中養生した後、20℃、65%RHの雰囲気下に182日間保存し、かかる雰囲気下での保存開始時と182日保存後(182日材齢)のモルタル供試体の長さを測定した。そして、各モルタル供試体について保存開始時の長さ(基長)に対する182日保存後の長さの差を算出し、得られた3つの長さ変化を平均することによって、モルタル供試体の長さ変化を得た。結果を表4に示す。
セメント組成物のモルタル強さ試験は、長さ変化試験と同様に、JISR 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、セメント組成物をそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢3日(3D)、7日(7D)、28日(28D)まで養生し、JISR 5201「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、各材齢における圧縮強さを測定した。結果を表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.005質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合した以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.01質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合した以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.1質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合した以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が1.0質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合した以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、Li含有物を配合しなかった以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.0005質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合した以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
参考例1において、セメント組成物全体を100質量%として、Li含有量が0.005質量%となるようにLi含有物として炭酸リチウムを配合し、表3に示した配合となるように、C3S、C2S、C3A、C4AFの鉱物量を変えた以外は参考例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
比較例1において、C3S−M1相比率を0.4以上となるように比較例1の焼成温度と比較して5〜10%程度低温で焼成した以外は比較例1と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
比較例2において、C3S−M1相比率を0.4以上となるように比較例2の焼成温度と比較して5〜10%程度低温で焼成した以外は比較例2と同様にしてセメントクリンカ及びセメント組成物を得た。長さ変化試験及びモルタル強さ試験の結果を下記の表4に示す。
実施例1、参考例1〜4及び比較例2〜6より得られるLi含有量とC3S−M1相比率の関係を図1に示す。図1より、Li含有量が0.01質量%以上に増えても、C3S−M1相比率は増大せず、変化しなかった。
Li含有量を0.01質量%以上に増やすとf−CaO含有量が上がることが確認された。f−CaO含有量が上がるとセメント物性(強度)に影響を与えることから、セメント組成物におけるf−CaO含有量は、セメント組成物全体を100質量%として、0.3〜1.5質量%であることが好ましい。参考例4で示したように、Li含有量が0.1質量%を超えるとf−CaO含有量が高くなり、セメントの28D強度に影響を与えているのが確認された。
表4に示す長さ変化試験の結果より、実施例1及び参考例1〜4に示すように、ボーグ式におけるC3Sを45〜75質量%、C3Aを5〜15質量%として、Liを0.001質量%以上添加することにより、収縮低減効果が高いことが確認された。
比較例3に示すように、C3Sが45質量%未満の範囲では、Liを添加しても長さ変化の低減効果は認められない。比較例4に示すように、C3Sが75質量%より多い範囲では、Liを添加することで長さ変化の収縮低減効果は認められるが、後に示すように、長期強度発現性が悪かった。比較例5では、長さ変化の収縮低減効果は認められるが、初期強度発現が悪く、長期強度発現性も悪かった。比較例6では、長さ変化の収縮低減効果は認められるが、長期強度発現性が悪かった。比較例7,8では、C3S−M1相比率が0.40以上となっているため、収縮低減効果がある程度認められるが、Li含有量が低いため実施例1及び参考例1〜4ほどの高い収縮低減効果が認められなかった。
表4に示すモルタル強さ試験の結果より、実施例1及び参考例1〜4に示すように、ボーグ式におけるC3Sを45〜75質量%、C3Aを5〜15質量%として、Liを0.001質量%以上添加することにより、比較例1,2と比較して初期強度発現性及び長期強度発現性は増大した。
比較例3は、C3S量が40質量%と低いため、初期強度発現性は低かった。比較例4は、C3S量が略80質量%と高いため、初期強度発現性は良好であるが、材齢28Dにおける長期強度発現性が悪かった。比較例5は、初期強度発現性が悪く、長期材齢における長期強度発現性も悪かった。比較例6は、C3A量が高いため、長期強度発現性が悪かった。比較例7,8は、強度発現性は比較例1と同等で通常レベルであるが、初期強度発現性の増加が認められなかった。
Claims (4)
- ボーグ式で算出されるC3Sが45〜75質量%、C2Sが5〜30質量%、C3Aが5〜15質量%、及びC4AFが5〜15質量%であり、
Li含有量が0.01質量%〜0.1質量%(但し、Li含有量が0.01質量%を除く)であり、
C3S−M1相比率が0.4以上であるセメント組成物。 - f−CaO含有量が0.3〜1.8質量%である請求項1に記載のセメント組成物。
- SO3含有量が1.5〜2.5質量%である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
- Li含有物及びセメント原料の原料原単位を調整する原料工程と、
LiによってC3S−M1相比率が0.4以上となるように制御し、調整した原料を焼成してセメントクリンカを製造する焼成工程と、
前記セメントクリンカと石膏とを混合した混合材を粉砕する仕上工程
を含み、セメント組成物のLi含有量を0.01質量%〜0.1質量%(但し、Li含有量が0.01質量%を除く)とするセメント組成物の製造方法。
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