JP2017150955A - 放射性セシウムの除去方法及び除去装置並びに建築資材の製造方法及び製造装置 - Google Patents

放射性セシウムの除去方法及び除去装置並びに建築資材の製造方法及び製造装置 Download PDF

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【課題】放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去してその減容化を図りながら、放射性セシウム濃度の低い建築資材を製造する放射性セシウムの除去方法を提供する。【解決手段】放射性セシウムで汚染された廃棄物Wと、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合する調合装置2と、調合装置からの調合物Mを加熱してC3Sを含有しない焼成骨材Bを得る第1の加熱炉31と、第1の加熱炉の排ガスGを冷却する冷却塔41と、冷却塔の排ガスG1に含まれるダストを粗粉Cと微粉とに分級する分級機42と、分級後の粗粉にカルシウム源を添加する添加装置と、カルシウム源を添加した後の粗粉C1を調合物とは別に加熱してC3Sを含有するセメントクリンカを得る第2の加熱炉51とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去すると共に、この廃棄物から建築資材を製造する方法等に関する。
土壌に取り込まれた放射性セシウムを除去するため、例えば、特許文献1には、放射性セシウムで汚染された土壌をロータリーキルンで加熱し、キルン排ガスを冷却して放射性セシウムを含む微粉を生じさせ、キルン排ガス中の粗粉を回収してロータリーキルンに返送し、キルン排ガスから微粉を捕集する技術が記載されている。この技術により、放射性セシウムが微粉として高濃度に濃縮されて減容化が図られ、中間貯蔵又は最終処分の負担を軽減することができ、放射性セシウム濃度が低減された焼成物を得ることができる。また、この焼成物は、災害が生じた場所において多量に必要となる建築資材として利用できることが期待されている。
特開2013−19734号公報
上記放射性セシウムの除去技術では、キルン排ガスに含まれる粗粉を回収してロータリーキルンに返送しているが、この粗粉には、微粉ほど高くはないものの元の廃棄物よりも高濃度の放射性セシウムが含まれており、これが循環濃縮することにより焼成物の放射性セシウム濃度が増加する要因となり得る。また、NaClやKCl等のアルカリ塩素化合物も多く含まれているために溶融し易く、この溶融により粗粉中の放射性セシウムの揮発が妨げられるため、これも焼成物の放射性セシウム濃度が増加する要因となり得る。その結果、これらが焼成物を建築資材に利用する上で障害となるおそれがある。
上記問題を回避するため、粗粉をロータリーキルンに返送せずに微粉と共に回収すると、焼成物の放射性セシウム濃度を低減することはできるものの、キルン排ガスからの回収物(微粉及び粗粉)の放射性セシウム濃度が低下し、かつ回収物の量も増加するため、放射性セシウム含有廃棄物の減容化の意図に反する。
そこで、本発明は、上記解決課題に鑑みてなされたものであって、放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去してその減容化を図りながら、放射性セシウム濃度の低い建築資材を製造することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、放射性セシウムの除去方法であって、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合し、調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、分級後の粗粉にカルシウム源を添加し、カルシウム源を添加した後の粗粉を、前記調合物とは別に加熱することを特徴とする。
本発明によれば、冷却後のガスを分級して得られた粗粉にカルシウム源を添加することで、粗粉自体の溶融を防止し、高温で焼成可能とすることで放射性セシウムの揮発を促進させることができる。また、放射性セシウム濃度が高い粗粉を別途焼成することで、放射性セシウムの循環濃縮を抑制することができるため、いずれの加熱生成物も放射性セシウム濃度を低いレベルに維持しながら、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。
上記放射性セシウムの除去方法において、前記分級後の粗粉に水を添加してスラリーとした後前記カルシウム源を添加し、又は前記カルシウム源を添加した後の粗粉に水を添加してスラリーとした後、スラリーを固液分離し、固液分離によって得られた脱水ケーキを前記調合物とは別に加熱することができる。
本発明によれば、冷却後のガスを分級して得られた粗粉を水洗することにより、粗粉に含まれるNaClやKCl等のアルカリ塩素化合物を溶解させて除去することで、水洗後の粗粉自体の溶融を防止して放射性セシウムの揮発を促進させることができ、また、CsCl等の水溶性の放射性セシウムを溶解させて除去することで、放射性セシウムの循環濃縮を防止することができるため、加熱生成物の放射性セシウム濃度を低いレベルに維持しながら、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。尚、固液分離機での固液分離は、厳密なものである必要はない。すなわち、固体側にろ液の一部が多少混入していてスラリー状となっていてもよく、逆にろ液に粗粉が多少混入していてもよい。
上記放射性セシウムの除去方法において、前記カルシウム源を添加した後の粗粉又は前記脱水ケーキを造粒することで造粒物を得て、該造粒物を前記調合物とは別に加熱することができる。
本発明によれば、造粒によって粗粉の比表面積を減少させることで、粗粉自体の溶融を防止して放射性セシウムの揮発を促進させることができるため、加熱によって得られた加熱生成物の放射性セシウム濃度を低いレベルに維持しながら、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。また、キルン内の発塵も少ないので、発生する放射性セシウム含有廃棄物の量も少なくなる。
また、本発明は、建築資材の製造方法であって、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合し、調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、C3Sを含有しない焼成骨材を得て、前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、分級後の粗粉にカルシウム源を添加し、カルシウム源を添加した後の粗粉を前記調合物とは別に加熱して該粗粉中の放射性セシウムを揮発させ、C3Sを含有するセメントクリンカを得ることを特徴とする。
本発明によれば、冷却後のガスを分級して得られた放射性セシウム濃度が高い粗粉を別途焼成することで、放射性セシウムの循環濃縮を抑制することができるため、放射性セシウム濃度の低い焼成骨材を得ることができる。また、粗粉はカルシウム源を添加することで、粗粉自体の溶融を防止し、高温で焼成可能とすることで放射性セシウムの揮発を促進させ、放射性セシウム濃度の低いセメントクリンカを得ることができる。その結果、放射性セシウム含有廃棄物を建築資材の原料として余すことなく有効活用でき、放射性廃棄物の減容化を図ることができる。
上記建築資材の製造方法において、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを、下記式(1)を満たすように調合し、かつ、前記分級後の粗粉に、カルシウム源を、下記式(2)を満たすように添加することができる。
((CaO+1.39×MgO)/SiO2)=1.0〜2.7 ・・・(1)
((CaO+1.39×MgO)/SiO2)=2.7〜3.7 ・・・(2)
これによって、放射性セシウム濃度が低減され、かつ品質の高い焼成骨材とセメントクリンカを得ることができる。
また、本発明は、放射性セシウムの除去装置であって、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合する調合装置と、該調合装置からの調合物を加熱する第1の加熱炉と、該加熱炉の排ガスを冷却する冷却塔と、該冷却塔の排ガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級する分級機と、分級後の粗粉にカルシウム源を添加する添加装置と、カルシウム源を添加した後の粗粉を、前記調合物とは別に加熱する第2の加熱炉とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、冷却後のガスを分級して得られた粗粉にカルシウム源を添加することで、粗粉自体の溶融を防止し、高温で焼成可能とすることで放射性セシウムの揮発を促進させることができ、放射性セシウム濃度が高い粗粉を別途焼成することで、放射性セシウムの循環濃縮を抑制することができるため、いずれの加熱生成物も放射性セシウム濃度を低いレベルに維持しながら、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。
さらに、本発明は、建築資材の製造装置であって、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合する調合装置と、該調合装置からの調合物を加熱してC3Sを含有しない焼成骨材を得る第1の加熱炉と、前記第1の加熱炉の排ガスを冷却する冷却塔と、該冷却塔の排ガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級する分級機と、分級後の粗粉にカルシウム源を添加する添加装置と、カルシウム源を添加した後の粗粉を前記調合物とは別に加熱してC3Sを含有するセメントクリンカを得る第2の加熱炉とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、冷却後のガスを分級して得られた放射性セシウム濃度が高い粗粉を別途焼成することで、放射性セシウムの循環濃縮を抑制することができるため、放射性セシウム濃度の低い焼成骨材を得ることができると共に、粗粉はカルシウム源を添加することで、粗粉自体の溶融を防止し、高温で焼成可能とすることで放射性セシウムの揮発を促進させ、放射性セシウム濃度の低いセメントクリンカを得ることができ、放射性セシウム含有廃棄物を建築資材の原料として余すことなく有効活用でき、放射性廃棄物の減容化を図ることができる。
以上のように、本発明によれば、放射性セシウムを含有する廃棄物の減容化の際に生じた加熱生成物の放射性セシウム濃度を低いレベルに維持しながら、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。また、得られた焼成物を建築資材として有効活用でき、セメントと骨材が1箇所で製造されるのでこれら焼成物でコンクリートの製造も同時に可能となる。
本発明に係る放射性セシウムの除去装置の一実施の形態を示す概略図である。
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において、放射性セシウムとは、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137である。
図1は、本発明に係る放射性セシウムの除去装置の一実施の形態を示し、この放射性セシウム除去装置1は、原料調合装置2と、焼成装置3と、排ガス処理装置4と、粗粉処理装置5とで構成される。
原料調合装置2は、放射性セシウムで汚染された土壌や焼却灰等の廃棄物Wを貯留する貯槽21と、反応促進剤としての酸化カルシウム源(以下「CaO源」という。)又は/及び酸化マグネシウム源(以下「MgO源」という。)を貯留する貯槽22と、反応促進剤としての塩素源(以下「Cl源」という。)を貯留する貯槽23と、貯槽21〜23に貯留される廃棄物W、CaO源又は/及びMgO源並びにCl源を引き出して調合する定量供給機(不図示)と、調合原料Mを貯留する貯槽24とを備える。
上記CaO源として炭酸カルシウム、生石灰、消石灰、石灰石、ドロマイト、高炉スラグ等を含む物を用いることができ、MgO源には、炭酸マグネシウム(MgCO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、ドロマイト、蛇紋岩、フェロニッケル合金スラグ等を含む物を用いることができる。Cl源としては、塩化カルシウム(CaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩素を有する廃プラスチック等があるが、このうちCaClは、効果的に放射性セシウムを除去できるので好ましい。
焼成装置3は、ロータリーキルン(加熱炉)31と、クーラ32とで構成され、ロータリーキルン31は、原料調合装置2からの調合原料Mが供給される投入口31aや、微粉炭等の化石燃料を噴出して調合原料M等を焼成するためのバーナ31bを備える。
排ガス処理装置4は、焼成装置3の後段に配置され、ロータリーキルン31から排出された排ガスGを冷却する冷却塔41と、冷却塔41の後段に配置されたサイクロン42と、第1集塵機43と、第2集塵機44と、両集塵機43、44によって濃縮セシウム塩等のダストが除去された排ガスG4を脱硝する脱硝装置45と、脱硝装置45の排ガスG5を系外へ排気する煙突46とで構成される。
冷却塔41は、ロータリーキルン31の排ガスGを冷却し、廃棄物Wから揮発した放射性セシウム等を固体状として回収するために備えられる。排ガスGの冷却は、冷却塔41の下端部に設置された散水装置41aから水や後述するろ液Fを噴霧することにより行う。尚、この散水装置41aは、揮発した塩化セシウム等の放射性セシウムを固体状となるまで冷却して回収し得る程度の機能を備えていればよい。水による冷却ではなく、冷却塔内に冷却空気を導入することによって冷却してもよく、水と冷却空気を併用してもよい。
分級機としてのサイクロン42は、高濃度の放射性セシウムを含む微粉を第1集塵機43で捕集し、カルシウムやシリカ成分を主体とする粗粉Cを回収するために設けられる。
第1集塵機43は、サイクロン42の排ガスG2から、上述のようにして濃縮されたセシウム塩等を含むダストD1を集塵するために備えられ、バグフィルタ等が用いられる。
第2集塵機44は、セシウム塩等を除去した後の排ガスG3に含まれる酸性ガス等を除去するために設けられ、カルシウム成分を含んでいる中和剤Nを中和剤添加装置(不図示)から添加し、酸性ガス等を吸着したダストD2を回収する。この第2集塵機44にもバグフィルタ等が用いられる。
脱硝装置45は、第2集塵機44の排ガスG4にアンモニアガス(NH)を注入してNOxを窒素に還元して無害化するために設けられる。
粗粉処理装置5は、ロータリーキルン(加熱炉)51と、クーラ52と、サイクロン42で回収された粗粉Cを貯留する貯槽53と、Ca源を添加した後の粗粉C1を水洗する水洗装置54と、水洗装置54からのスラリーSを固液分離する固液分離機55とで構成される。
ロータリーキルン51は、固液分離機55からの脱水ケーキDCが供給される投入口51aや、微粉炭等の化石燃料を噴出して脱水ケーキDCを焼成するためのバーナ51bを備える。
貯槽53は、サイクロン42から供給された粗粉Cにカルシウム源(以下「Ca源」という。)を添加して粗粉C1を貯留するために設けられる。Ca源として、炭酸カルシウム、生石灰、消石灰、石灰石、ドロマイト、高炉スラグ等を含む物を用いることができる。このCa源は、後述する脱水ケーキDCの溶融を防止する効果を奏する。
水洗装置54は、貯槽53から供給された粗粉C1を水洗し、粗粉C1に含まれるNaClやKCl等のアルカリ塩素化合物及びCsCl等の水溶性の放射性セシウムを溶解させるために設けられ、粗粉C1に水を添加してスラリー状とし、撹拌する撹拌羽根を有する撹拌槽等が用いられる。
固液分離機55は、水洗装置54からのスラリーSを、脱水ケーキDCと、ろ液Fとに分離するために設けられ、フィルタープレスを用いることが好ましい。固液分離機55によって粗粉C1に含まれるNaClやKCl等のアルカリ塩素化合物及びCsCl等の水溶性の放射性セシウムをろ液F側に除去することで、脱水ケーキDC自体の溶融や、それが調合原料に混合することによる調合原料の溶融を防止して放射性セシウムの揮発を促進させ、かつ放射性セシウムの循環濃縮を防止する。また、脱水ケーキDCの比表面積が水洗前の粗粉C1と比較して減少することで、脱水ケーキDCを加熱する際に溶融を防止して放射性セシウムの揮発を促進する。ここで、脱水ケーキDCの粒径が100mmより大きいと脱水ケーキDCの供給装置が過大となってコストが増加し、一方、1mmを下回ると比表面積が大きくなって好ましくないため、上記粒径範囲に収まるように、必要に応じて脱水ケーキDCの解砕や造粒を行うことが好ましい。
次に、上記構成を有する放射性セシウムの除去装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
原料調合装置2において、放射性セシウムで汚染された廃棄物Wと、反応促進剤としてのCaO源/又はMgO源並びにCl源を貯槽21〜23から引き出して調合して調合原料Mを得る。調合原料Mは、焼成した場合にC3S(エーライト)が生成しない組成とする。
上記放射性セシウムで汚染された廃棄物とCaO源及び/又はMgO源は、得られる混合物中の酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び二酸化珪素(SiO2)の各々の質量が、下記式(1)を満たすように、前記廃棄物WとCaO源及び/又はMgO源の種類及び配合割合を定めたうえで混合されることが好ましい。
((CaO+1.39×MgO)/SiO)=1.0〜2.7 ・・・(1)
(式中、CaO、MgO、SiOは、各々、カルシウムの酸化物換算の質量、マグネシウムの酸化物換算の質量、珪素の酸化物換算の質量を表す。)
上記式CaO、MgO、及びSiOの各々の質量によって算出される上記式(1)の右辺の値(質量比)は、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.4である。
尚、CaOの1モルの質量は、MgOの1.39モルの質量に相当することから、上記式(1)において、MgOの質量に1.39を乗じている。
上記質量比が1.0未満であると、焼成温度が高温になるにつれて液相が生じやすくなり、放射性セシウムの揮発量が少なくなる場合がある。上記質量比が2.7を超えると、放射性セシウムで汚染された廃棄物WとCaO源及び/又はMgO源との混合物中のカリウムやナトリウムの合計の揮発量が多くなり、粗粉C中のアルカリ成分が増加したり、排ガスGが冷却されて得られる固体分である放射性物質含有廃棄物の量が多くなる場合がある。
また、放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化する目的で上記混合物の原料として、さらに、塩化カルシウム(CaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)等の塩化物を用いてもよい。中でも塩化揮発の促進の観点から塩化カルシウムが好ましい。ここで、Cl源の量は、廃棄物Wに含まれる放射性セシウムに対して当量以上となるように調合することが好ましい。Cl源の量の上限は、塩素と、セシウム及びカリウムとのモル比(Cl/(Cs+K))が好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下になる量である。該モル比が1.0以下であると、カリウムやナトリウムの揮発量を抑制しながら放射性セシウムが揮発するため、放射性物質含有廃棄物の減容化を図ることができる。
また、焼成骨材Bの酸化カルシウム濃度が50質量%以上となるように、上記調合及び焼成を行うことが好ましい。これにより、硫黄分が焼成骨材Bの中に保持されたり、後述する第1集塵機43において硫黄化合物として、排ガスG2のダストD1として集塵されるため、硫黄分の循環を抑制でき、排ガス処理の負荷の増大やコーチングの増加を低減することができる。
貯槽24から調合原料Mを投入口31aを介してロータリーキルン31に投入し、1200℃以上1400℃以下で焼成して焼成骨材Bを得る。この焼成骨材Bは、セメント混合材や土工資材として有効利用することができる。この焼成骨材Bは、C3Sを含まない骨材としたので保管時の固結が防止され、C2S(ビーライト)が主成分となることで、コンクリートを製造した場合に密実で特に中性化抵抗性を有する高耐久なコンクリートが製造される。ここで、ロータリーキルン31内の酸素分圧を3%以上、好ましくは5%以上とする。これにより、ロータリーキルン31内での硫黄化合物の分解が抑制され、硫黄分の循環が抑制されるので、中和剤使用量の増加及びロータリーキルン31や冷却塔41へのコーチング付着量の増加を抑制することができる。
一方、調合原料Mの廃棄物Wに含まれていた放射性セシウムは、ロータリーキルン31内でCl源から生じた塩素と反応して塩化セシウムとなって揮発し、排ガスGに含まれた状態で冷却塔41へ導入される。
排ガスGは、冷却塔41において、散水装置41aから噴霧された水やろ液Fによって急激に冷却され、排ガスGに含まれていた塩化セシウムは固体状のセシウム塩となる。
冷却塔41の排ガスG1に含まれるダストをサイクロン42で分級し、分級して得られた粗粉Cを貯槽53に一時的に貯留し、Ca源を添加して粗粉C1とする。Ca源の添加量は、焼成した場合にC3S(エーライト)が生成する組成とする。C3Sを含むセメントクリンカCLとすることで、市販されているポルトランドセメントと同等品質のセメントを製造することができる。ここで、粗粉C1中のCaO、SiO及びMgOの関係が下記式(2)を満たすようにCa源を添加することが好ましい。
((CaO+1.39×MgO)/SiO)=2.7〜3.7 ・・・(2)
上記式CaO、MgO、及びSiOの各々の質量によって算出される上記式(2)の右辺の値(質量比)が2.7以上であると、粗粉C1が溶融し難くなるため、放射性セシウムがより多く揮発する。一方、上記質量比が3.7を超えると、得られるセメントクリンカCLに含まれるフリーライム(遊離石灰)が増加するため得られるセメントの品質が低下するおそれがある。該質量比の範囲内で組成を調整し、またケイ酸率(S.M.)を1.3〜3.0、鉄率(I.M.)を1.3〜2.8に調整することで、所望のセメントクリンカCLを製造する。
上記式(2)のCaO、MgO、及びSiOの各々の質量と上記式(2)から導き出される数値はより好ましくは2.8〜3.5である。
また、放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化する目的でCl源として、さらに、塩化カルシウム(CaCl)を添加してもよい。Cl源の量の上限は、塩素と、セシウム及びカリウムとのモル比(Cl/(Cs+K))が好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下になる量である。該モル比が1.0以下であると、カリウムやナトリウム等の揮発量を抑制しながら放射性セシウムが多く揮発するため、放射性物質含有廃棄物の減容化を図ることができる。
Ca源添加後の粗粉C1は、水洗装置54によって水洗された後、スラリーSとして固液分離機55に供給されて固液分離される。得られた脱水ケーキDCを投入口51aを介してロータリーキルン51に投入し、1400℃以上1500℃以下で焼成して放射性セシウム濃度の低いセメントクリンカCLを得る。
一方、粗粉Cに含まれていた放射性セシウムは、ロータリーキルン51内で塩化セシウムとなって揮発し、排ガスG6に含まれた状態で冷却塔56へ導入され、散水装置56aから噴霧された水やろ液Fによって急激に冷却され、排ガスG6に含まれていた塩化セシウムは固体状のセシウム塩となる。
冷却塔56の排ガスG7に含まれるダストをサイクロン42で分級し、分級して得られた粗粉Cを貯槽53に一時的に貯留し、その後上述の動作を繰り返す。
尚、脱水ケーキDCは塊状であるので、破砕することで造粒物となる。別途、パグミル、皿型ペレタイザー、ドラム型造粒機、押出成型機等の造粒機を使用してもよい。造粒物の粒度は、粒径10〜100mmが好ましい。造粒によって比表面積を減少させて造粒物の溶融を防止し、造粒物に含まれる放射性セシウムの揮発を促進させる。また、キルン内の発塵も少なくなるので、発生する放射性セシウム含有廃棄物の量も少なくなる。ここで、粒径が100mmより大きいと造粒機が過大となって装置及び運転コストが増加し、一方、粒径が10mmを下回ると比表面積が大きくなって造粒による効果が薄れるため好ましくない。
一方、固液分離機55からのろ液Fは、散水装置41a、56aを介して冷却塔41、56で噴霧することで、ろ液Fの水分を蒸発させ、固体状の放射性セシウムを後述する第1集塵機43でダストD1として回収する。
一方、セシウム塩を含有するサイクロン42からの排ガスG2は、第1集塵機43に導入され、固体状の濃縮セシウム塩を含むダストD1が回収される。回収したダストD1は、必要に応じて圧縮、水洗、吸着等により、さらに減容化処置をした後、コンクリート製の容器等に密閉して保管することができ、放射性セシウムを含む廃棄物を外部に漏洩させることなく減容化し、保管することができる。
濃縮セシウム塩を回収した後の排ガスG3は、酸性ガス等の有害ガスが含まれているため、排ガスG3に中和剤Nを中和剤添加装置から添加した後、第2集塵機44によって、排ガスG3から酸性ガス等を吸着したダストD2を回収する。ここで、中和剤Nとして、消石灰、生石灰、ドロマイト、軽焼ドロマイト及び水酸化ドロマイトからなる群から選択される一以上を含むものを用いることができる。
第2集塵機44で集塵したダストD2は、消石灰、石膏、塩化カルシウムが主成分であるので、CaO源やCl源、Ca源として原料調合装置2や水洗装置54等に戻して廃棄物Wに添加して再利用できる。
第2集塵機44の排ガスG4にNOxが含まれている場合は、脱硝装置45で除去する。清浄化した排ガスG5は、煙突46を介して系外に排気する。
以上のように、本実施の形態によれば、排ガスG2から集塵することで放射性セシウムが濃縮したダストD1を得て放射性セシウムで汚染された廃棄物Wの減容化を図る際に、排ガスG1中の粗粉CにCa源を添加して別途焼成し、その結果ロータリーキルン31内での溶融を防止して放射性セシウムの揮発を促進させ、かつ放射性セシウムの循環濃縮を防止することで、放射性セシウム濃度が低減された焼成骨材BとセメントクリンカCLを得ることができる。
尚、放射性セシウムで汚染された廃棄物Wとして、放射性セシウムで汚染された土壌、焼却灰を例示したが、これらの他に、伐採木、ごみ由来の溶融スラグ、下水汚泥、下水汚泥乾粉、浄水汚泥、建設汚泥、下水スラグ、貝殻、草木、がれき等の廃棄物であって放射性セシウムを含むものすべてを対象とすることができ、これらの群に含まれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせることができる。さらに、放射性セシウムをほとんど含まない部分(土壌の場合には、砂や石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮された中間処理物も、本発明における放射性セシウムで汚染された廃棄物Wに含まれる。
また、上記実施の形態において、固液分離機55からのろ液Fを冷却塔41、56に供給する場合について説明したが、このろ液Fを、サイクロン42の排ガスG2に添加してもよい。冷却塔41、56にろ液Fを供給すると、ろ液Fに含まれる放射性セシウムがサイクロン42の粗粉C側に付着して循環してしまうおそれがあるが、排ガスG2に添加することで、放射性セシウムの循環を確実に防止することができる。この場合、冷却塔41、56で必ずしも放射性セシウムが固体となる温度まで冷却する必要はなく、第1集塵機43で放射性セシウムが固体となる温度まで冷却すればよい。その結果、粗粉C1の放射線セシウム濃度は低くなり、ダストD1に放射性セシウムをより多く濃縮することができる。
さらに、上記固液分離機55における固液分離を厳密に行う必要はなく、例えば、遠心分離や沈降分離のように、脱水ケーキDCにろ液Fの一部が多少混入していてスラリー状となっていてもよい。逆にろ液Fに粗粉が多少混入していてもよい。
尚、上記実施の形態では、調合原料Mを加熱するにあたって、ロータリーキルン31及びクーラ32を備えた焼成装置3を用いたが、他の加熱炉等を用いることもできる。
また、粗粉C1は水洗や造粒を行わずに、粉体のまま、あるいはスラリーにしてCa源を添加して焼成してもよい。さらに、粗粉C1はCa源を添加し、水洗又は造粒のみ行って焼成してもよい。また、ロータリーキルン51及びクーラ52を備えた焼成装置を用いたが、他の加熱炉等を用いることもできる。粗粉C1を保管しておいて、ロータリーキルン31にて調合原料Mとは別にセメントクリンカCLを焼成することもできる。尚、ロータリーキルン31及びロータリーキルン51を並行して運転してもよいが、粗粉C1を保管しておいて、各々単独で運転してもよい。
得られた焼成骨材Bは、必要に応じて解砕や粉砕を行い、セメント混合材、骨材(コンクリート用骨材、アスファルト用骨材)、土工資材(埋め戻し材、盛り土材、路盤材等)等として利用することができる。
一方、得られたセメントクリンカCLは、石膏と、必要に応じて配合される他の材料を混合して粉砕することなどによって、セメントを得ることができる。
本発明で得られたセメントと骨材でコンクリートを製造することもできる。本発明で生じる、濃縮セシウム塩を含むダストD1の保管容器の材料として用いるとより効率的である。
1 放射性セシウム除去装置
2 原料調合装置
21〜24 貯槽
3 焼成装置
31 ロータリーキルン
31a 投入口
31b バーナ
32 クーラ
4 排ガス処理装置
41 冷却塔
41a 散水装置
42 サイクロン
43 第1集塵機
44 第2集塵機
45 脱硝装置
46 煙突
5 粗粉処理装置
51 ロータリーキルン
51a 投入口
51b バーナ
52 クーラ
53 貯槽
54 水洗装置
55 固液分離機
56 冷却塔
56a 散水装置
B 焼成骨材
C、C1 粗粉
CL セメントクリンカ
D1、D2 ダスト
DC 脱水ケーキ
F ろ液
G、G1〜G5 排ガス
M 調合原料
N 中和剤
S スラリー
W (放射性セシウムで汚染された)廃棄物

Claims (7)

  1. 放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合し、
    調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、
    前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、
    冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、
    分級後の粗粉にカルシウム源を添加し、
    カルシウム源を添加した後の粗粉を、前記調合物とは別に加熱することを特徴とする放射性セシウムの除去方法。
  2. 前記分級後の粗粉に水を添加してスラリーとした後前記カルシウム源を添加し、又は前記カルシウム源を添加した後の粗粉に水を添加してスラリーとした後、スラリーを固液分離し、固液分離によって得られた脱水ケーキを前記調合物とは別に加熱することを特徴とする請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。
  3. 前記カルシウム源を添加した後の粗粉又は前記脱水ケーキを造粒することで造粒物を得て、該造粒物を前記調合物とは別に加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性セシウムの除去方法。
  4. 放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合し、
    調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、C3Sを含有しない焼成骨材を得て、
    前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、
    冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、
    分級後の粗粉にカルシウム源を添加し、
    カルシウム源を添加した後の粗粉を前記調合物とは別に加熱して該粗粉中の放射性セシウムを揮発させ、C3Sを含有するセメントクリンカを得ることを特徴とする建築資材の製造方法。
  5. 放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを、下記式(1)を満たすように調合し、
    かつ、前記分級後の粗粉に、カルシウム源を、下記式(2)を満たすように添加することを特徴とする請求項4に記載の建築資材の製造方法。
    ((CaO+1.39×MgO)/SiO2)=1.0〜2.7 ・・・(1)
    ((CaO+1.39×MgO)/SiO2)=2.7〜3.7 ・・・(2)
  6. 放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合する調合装置と、
    該調合装置からの調合物を加熱する第1の加熱炉と、
    該加熱炉の排ガスを冷却する冷却塔と、
    該冷却塔の排ガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級する分級機と、
    分級後の粗粉にカルシウム源を添加する添加装置と、
    カルシウム源を添加した後の粗粉を、前記調合物とは別に加熱する第2の加熱炉とを備えることを特徴とする放射性セシウムの除去装置。
  7. 放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源と、塩素源とを調合する調合装置と、
    該調合装置からの調合物を加熱してC3Sを含有しない焼成骨材を得る第1の加熱炉と、
    前記第1の加熱炉の排ガスを冷却する冷却塔と、
    該冷却塔の排ガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級する分級機と、
    分級後の粗粉にカルシウム源を添加する添加装置と、
    カルシウム源を添加した後の粗粉を前記調合物とは別に加熱してC3Sを含有するセメントクリンカを得る第2の加熱炉とを備えることを特徴とする建築資材の製造装置。
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