JP2012025635A - セメントクリンカー及びセメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 モルタルやコンクリートのひび割れの要因となる収縮を十分に低減しつつ、要求される強度発現性の発揮に柔軟に対応可能なセメントクリンカー及びセメント組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 クリンカー鉱物としてC3Sを含むセメントクリンカーであって、C3Sが結晶多形としてM1相を40質量%以上含有することを特徴とするセメントクリンカー及びセメント組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、モルタルやコンクリートのひび割れの要因となる収縮を低減可能なセメントクリンカー及びセメント組成物に関する。
従来、セメントを用いてモルタルやコンクリート(以下、まとめて「コンクリート等」という場合がある)を打設するとき、コンクリート等の自己収縮や乾燥収縮といった収縮が発生し、ひび割れの要因となっていた。そのため、土木学会のコンクリート標準示方書において収縮量の上限値が規定される等、近年、コンクリート等の収縮低減に対する要求が強くなっており、その対策として、コンクリート等の収縮を少なくするために膨張材や収縮低減剤が添加されることがあった。
しかし、膨張材や低減収縮剤の添加量が多くなると、コンクリート等の作製時、コンクリート等の流動性の経時低下が大きくなる、凝結遅延が生じる、強度発現性が低下する、等の問題が生じることがあった。そこで、特定量のフッ素、SO3及び塩素を含有するセメントクリンカーの粉砕物と、膨張材及び/又は収縮低減剤を組み合わせることにより、膨張材や収縮低減剤の添加量が少なくてもコンクリート等の収縮を低減する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、かかる特許文献1には、セメントクリンカー中のSO3の含有量を増加させることによって膨張剤や収縮低減剤の添加量を少なくできることも開示されている。
また、焼成後にアルミネート相とフェライト相の合計の含有率が10質量%以下となるようにセメントクリンカーの配合割合を調整することにより、収縮を低減できるようなポリマー混和材等の特殊な材料を用いずに、従来よりも高い耐硫酸塩性および低自己収縮性の発揮を可能とするセメントクリンカーを得る技術が提案されている(特許文献2参照)。また、かかる特許文献2には、C2Sを増加させることによって収縮を低減させることも開示されている(特許文献2参照)。
特開2009−179512号公報 特開2010−037172号公報
しかし、特許文献1の技術では、特定量のフッ素、SO3及び塩素をセメントクリンカーに含有させるだけでは収縮低減性が不十分であるため、膨張材や収縮低減剤の添加量を少なくしているものの、膨張材や収縮低減剤に依存せざるを得ないものであった。また、かかる特許文献1の技術においてさらにセメントクリンカー中のSO3を増加させても、やはり収縮低減性が不十分であるため、膨張材や収縮低減剤に依存せざるを得なかった。
また、特許文献2の技術では、セメントクリンカー自体が収縮低減性能を発揮するものの、水との反応性の高いアルミネート相や化学抵抗性が大きいフェライト相が減少することにより、セメントの早期の強度発現性や化学抵抗性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、C2Sを増加させることにより収縮を低減可能なセメントクリンカーを生成しても、かかるセメントクリンカーは早期の強度発現性が低下することから、その用途が、例えば長期強度発現性を目的として用いられる低熱ポルトランドセメント等に限られるおそれがある。
そこで、本発明は、モルタルやコンクリートのひび割れの要因となる収縮を十分に低減しつつ、要求される強度発現性の発揮に柔軟に対応可能なセメントクリンカー及びセメント組成物を提供することを課題とする。
かかる課題に鑑みて本発明者らが鋭意研究したところ、セメントクリンカーに含まれるクリンカー鉱物C3Sの有する7種の結晶多形T1、T2、T3、M1、M2、M3及びRのうち、M1相を増加させることによってコンクリート等の収縮が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るセメントクリンカーは、クリンカー鉱物としてC3Sを含むセメントクリンカーであって、C3Sが結晶多形としてM1相を40質量%以上含有することを特徴とする。
かかる構成によれば、セメントクリンカーのC3S中のM1相の含有量を40質量%以上とすることによって、モルタルやコンクリートを打設したとき、これらの収縮を十分に低減可能なセメントクリンカーとなる。しかも、C3S中の結晶多形の存在比率を調整するだけで、このように収縮低減が可能となる。これにより、コンクリート等のひび割れの要因となる収縮を十分に低減しつつ、要求される強度発現性に応じてセメントクリンカー中におけるC3Sの含有量を調整することにより、柔軟に対応することが可能となる。
本発明に係るセメント組成物は、前記セメントクリンカーと石膏とを含むことを特徴とする。これにより、モルタルやコンクリートを打設したとき、これらのひび割れの要因となる収縮を十分に低減することができる。
また、本発明に係るセメント組成物は、JIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合することが好ましい。これにより、幅広い用途に適用することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、モルタルやコンクリートのひび割れの要因となる収縮を十分に低減しつつ、要求される強度発現性の発揮に柔軟に対応することが可能となる。
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
本発明に係るセメントクリンカーは、鉱物としてC3Sを含むセメントクリンカーであって、C3Sが結晶多形としてM1相を40質量%以上含有する。C3Sは、化合物組成が3CaO・SiO2から成り、エーライトと称される。ここで、C=CaOであり、S=SiO2である。
M1相は、C3Sの7種の結晶多形の一つをなす相であり、単斜晶系の結晶構造を示す。一般に、C3Sについては、三斜晶であるT1、T2及びT3、単斜晶であるM1、M2及びM3、菱面体晶であるR、の7種の結晶多形が知られており、クリンカー原料の焼成中には、まずR相が生成し、冷却後には、M1相及びM3相が存在し、ごくまれにM1相及びM3相と比較して極微量のT2相が生成される場合もある。また、従来、C3S中のM1相の含有量は、概ね20〜30質量%程度であったが、このような含有量のM1相を含むようなセメントクリンカーは、収縮低減性能が十分ではなかった。
しかし、本発明に係るセメントクリンカーにおいては、C3S中のM1相の含有量を40質量%以上とすることにより、セメントクリンカーを用いてコンクリート等を打設したとき、コンクリート等の収縮を十分に低減することが可能となる。
また、C3Sに含まれるM1相の含有量を多くする程コンクリート等の収縮をより低減することができ、かかる観点から、C3S中のM1相の含有量が、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。なお、M1相はC3Sよりも多く生成されないため、C3S中のM1相の含有量の上限は、100質量%である。
なお、本発明では、後述する製造条件により、C3SにM1相及びM3相が混在、またはM1相単独で存在するが、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上であれば、M1及びM3以外の結晶多形が含まれていてもよい。
次に、C3S中のM1相の含有量の算出方法について説明する。
3S中のM1相の含有量の算出に先立って、C3S量及びM1相量を定量する。例えば、セメントクリンカーについてX線回折法による測定を行い、得られたX線回折プロファイルをリートベルト法により解析することによって、C3S量及びM1相量を定量することができる。
X線回折法とは、試料の表面に対して小さな角度でその表面にX線を入射させながらX線検出器を旋回させ、回折X線の強度を測定する方法(2θスキャン)のことをいう。X線回折装置としては、例えば粉末解析用X線回折装置(パナリティカル社製、X’Part Powder)を用いることができる。
かかる粉末X線回折装置を用い、測定条件としてステップサイズ、スキャンスピード、電圧や電流等を予備実験等によって適宜設定することにより、セメントクリンカーのX線回折プロファイルを得ることができる。測定条件の一例として、ステップサイズを0.017°、スキャンスピードを0.1012°/s、電圧を45kV、電流を40mAとすることができる。
リートベルト法とは、粉末X線回折パターン全体を対象として結晶構造パラメータと格子定数を直接精密化する手法である。X線回折プロファイルは、格子定数、結晶構造パラメータ(占有率、原子座標)、格子歪、結晶子サイズ、質量分率等の多くの情報を含んでおり、リートベルト法によれば、セメントクリンカー全体の結晶データを把握できる。そして、X線回折装置により得られたX線回折プロファイルからリートベルト法による解析を行うことにより、セメントクリンカーに含まれるC3S量及びM1相量を定量することができる。また、M1相量及びM3相量を定量し、これらの和によりC3S量を算出することもできる。
かかるリートベルト法による解析を実行するために、例えば結晶構造解析用ソフトウエア(X’Part High Score Plus version 2.1b)を用いることができる。該ソフトウエアは、リートベルト法による解析を実行する機能に加え、X線回折プロファイルからセメントクリンカーに含まれるクリンカー鉱物を同定する機能を有している。
具体的には、操作者が上記ソフトウエアにおける定性分析を実行させると、上記ソフトウエアによって粉体X線回折装置によって得られたセメントクリンカーのX線回折プロファイルから、セメントクリンカーに含まれるクリンカー鉱物の同定が行われる。次に、操作者は、同定されたクリンカー鉱物の基本結晶構造データを上記ソフトウエアに初期値として入力し、格子定数、スケールファクター等、セメントクリンカー全体の結晶構造パラメータの精密化に必要なパラメータを選択し、上記ソフトウエアを実行させる(精密化操作)。かかる精密化操作において、上記ソフトウエアにより、初期値の入力に基づく理論上のX線回折プロファイル(理論プロファイル)が作成される。また、精密化操作によって、精密化に必要なパラメータが可変され、これに応じて理論プロファイルが変化する。
そして、理論プロファイルが、実測されたX線回折プロファイルとフィッティングするように、操作者による精密化操作が繰り返されると、上記ソフトウエアにより、最終的に精密化されたスケールファクターから、各クリンカー鉱物の質量%が、算出される。ここで、各クリンカー鉱物の質量%は、これらの質量%の合計が100質量%となるように定められる。上記クリンカー鉱物の基本結晶構造データについては、社団法人化学情報協会の無機結晶構造データベース(ICSD)に示されたデータを用いることができる。
かかるリートベルト法による解析によって得られたC3S量(質量%)及びM1相量(質量%)から、C3S量に対するM1相量の百分率(M1相量/C3S量×100)を算出することにより、C3S中のM1相の含有量を算出することができる。
なお、C3S中のM1相の含有量を算出可能であれば、C3S量及びM1相量の定量方法は、上記したX線回折法に特に限定されるものではない。また、X線回折法を用いた場合であっても、X線回折プロファイルから、C3S中のM1相の含有量を算出可能であれば、リートベルト法以外の解析方法を用いることもできる。
本発明に係るセメントクリンカー中に含まれるC3S量は、特に限定されるものではないが、40〜70質量%であることが好ましく、45〜65質量%であることがより好ましい。40〜70質量%とすることにより、セメントクリンカーの収縮低減性能を発揮させつつ、ポルトランドセメントクリンカーを生成するために必要な焼結時間を確保して、ポルトランドセメントクリンカーの有する強度発現性能を発揮させることが可能となる。
本発明のセメントクリンカー中に含まれるC3S以外のクリンカー鉱物としては、C2S、C3A、C4AF、C2AS等が含まれてもよく、特に限定されるものではない。例えばクリンカー鉱物として、C3Sの他にC2S、C3A、C4AFを含むものが好ましく、より具体的には、C2Sを8〜30質量%、C3Aを7〜11質量%、C4AFを7〜10質量%で含有するものが好ましい。ここで、A=Al23、F=Fe23である。
かかるクリンカー組成を有するセメントクリンカーとしては、ポルトランドセメントクリンカーが挙げられる。なお、セメントクリンカーの鉱物組成は、セメントクリンカーの化学組成からボーグ式によって算出することもできる。
また、本発明に係るセメントクリンカーは、上記ポルトランドセメントクリンカーのうち、普通ポルトランドセメントクリンカーまたは早強ポルトランドセメントクリンカーであることが好ましい。これにより、早期の強度発現性能を発揮させつつ、幅広い用途に適用することが可能となる。
なお、上記した他、例えばセメントクリンカーを、クリンカー鉱物としてC3Sを10〜30質量%、C2Sを40〜69質量%、C3Aを1〜6質量%、C4AFを9〜11 質量%で含有するものとすることもでき、このような低熱ポルトランドセメントクリンカーとすることにより、セメントクリンカーの収縮低減性能を発揮させつつ、長期の強度発現性を発揮させることが可能となる。また、かかる低熱ポルトランドセメントクリンカーでは、C2Sの増加による収縮低減に加え、C3S中のM1相の増加による収縮低減を図ることもできるため、収縮低減性能が一層向上する。このように、セメントクリンカー中のC3S量を変えることにより、セメントクリンカーが要求される強度発現性の発揮に柔軟に対応することができる。
次に、本発明に係るセメントクリンカーの製造について説明する。
クリンカー原料としては、Ca、Si、Al、Fe等を含むものであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。例えば天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュ等が挙げられる。また、かかるクリンカー原料の混合割合に関しては、特に限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
但し、C3S中のM1相の含有量を増加させるという観点に鑑みれば、クリンカー原料を、セメントクリンカー全体を100質量%としてセメントクリンカー中にMgOが1.6質量%以下、SO3が0.4質量%以上含まれるように配合することが好ましい。このようにクリンカー原料を配合し、後述する焼成を行ってセメントクリンカーを生成することにより、セメントクリンカーにおけるC3S中のM1相の含有量を増加させることができる。
かかるセメントクリンカーに含まれるMgOの含有量は、セメントクリンカー全体を100質量%として0.9質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、MgOが含まれない(0質量%である)ことが最も好ましい。
また、上記セメントクリンカーに含まれるSO3の含有量は、セメントクリンカー全体を100質量%として、1質量%以上であることがより好ましい。一方、SO3の含有量の上限は、セメントクリンカー全体を100質量%として1.5質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以下であることがより好ましい。SO3の含有量を1.5質量%以下とすることにより、セメントクリンカーの生成状態や生成量に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
そして、目的とするセメントクリンカーが得られるような組成で混合されたクリンカー原料を、後述する焼成条件で焼成し、冷却する。
焼成は、通常、電気炉やロータリーキルン等を用いて行われる。焼成方法としては、例えば、クリンカー原料を、所定の第1焼成温度及び第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度及び所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程と、を含む方法が挙げられる。
例えば、電気炉を用いた場合、クリンカー原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、本発明に係るセメントクリンカーを製造することができる。
なお、焼成条件は、上記に特に限定されるものではなく、M1相の含有量を上述のように制御することが可能であれば、予備実験等により適宜設定することができる。例えば電気炉を用いる場合には、第1焼成温度は、850〜1150℃が好ましく、900〜1100℃がより好ましく、950〜1050℃がさらに好ましい。第1焼成時間は、15〜45分が好ましく、20〜40分がより好ましく、25〜35分がさらに好ましい。第2焼成温度は、1200〜1600℃が好ましく、1350〜1550℃がより好ましく、1400〜1500℃がさらに好ましい。昇温時間は、15〜45分が好ましく、20〜40分がより好ましく、25〜35分がさらに好ましい。第2焼成時間は、5〜25分が好ましく、10〜20分がより好ましく、12〜18分がさらに好ましい。
また、例えばロータリーキルンを用いる場合にも、上記した電気炉を用いた場合の焼成条件と同様の条件で焼成を行うことによって、M1相の含有量を上述のように制御することができる。かかる焼成条件を用いる場合には、焼成時の間隙相融液の粘性、表面張力、C3Sの生成温度を、電気炉で焼成する場合と同様となるように調整すればよい。このように調整する方法として、例えばSO3を多く含む石膏や石膏ボードをクリンカー原料として用い、これらを、セメントクリンカー中のSO3の含有量が上述した好ましい上限である1.5質量%を超えない範囲において電気炉で焼成する場合よりも大きくなるように、配合する方法が挙げられる。
上記の様にして製造されたセメントクリンカーを、石膏との混合物とすることにより、本発明に係るセメント組成物を作製することができる。また、セメントクリンカーと石膏とを例えばボールミル等で粉砕することにより、セメント組成物を作製することができる。
セメントクリンカー及び石膏の配合量は、セメントクリンカーに添加される石膏に含まれるSO3の含有量が、セメント組生物全体を100質量%として1質量%以上3.5質量%以下となるように設定することが好ましい。このようにセメント組成物中のSO3の含有量が1質量%以上3.5質量%以下となるように設定することにより、セメント組成物を水と混合する際にエトリンガイトの生成量を適切に制御することができるため、セメント組成物の収縮低減性能を発揮させつつ、強度発現性の低下を抑制することができる。
また、粉砕条件は、セメント組成物のブレーン値が3000〜4500cm2/gとなるように調整することが好ましい。
以上のような工程を経ることにより、JIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合するセメント組成物を作製することができる。また、本発明のセメント組成物がJIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合することにより、幅広い用途に適用可能となる。
なお、その他、上述したような低熱ポルトランドセメントクリンカーと石膏とを配合し、JIS R 5210に記載の低熱ポルトランドセメントの規格に適合するセメント組成物を作成することもできる。
このようにして作製されたセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水及び砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂及び砂利と混合することにより、コンクリートを作製することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュ等を添加することもできる。
上記のようにして作製されたセメント組成物について、長さ変化試験を行うことにより、モルタルやコンクリートの収縮を評価することができる。長さ変化試験は、JIS A 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」に準拠して行うことができる。具体的には、40×40×160mmの金属型枠3個を用いてモルタル供試体を作製した後、モルタル供試体を所定の条件下に保存し、保存開始時と保存後のモルタル供試体の長さを測定して、両者の差により長さ変化を算出する。
モルタル供試体は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して作製することができる。また、モルタル供試体は、金属型枠に注ぎ、24時間後に脱型したモルタル供試体を20℃で7日間水中養生した後、保存に供することができ、保存条件は、保存環境を20℃、65%RHの雰囲気とし、保存期間を182日とすることができる。
そして、本発明に係るセメントクリンカーを用いてセメント組成物を作製することにより、上記した長さ変化が、−900×10-6以上と小さくなるため、モルタルやコンクリートを打設したときの収縮を十分に低減することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
(試験例1)
<セメントクリンカーの作製>
クリンカー原料として、二酸化珪素(キシダ化学製、試薬1級、SiO2)、酸化鉄(III)(関東化学製、試薬特級、Fe23)、炭酸カルシウム(キシダ化学製、試薬1級、CaCO3)、酸化アルミニウム(関東化学製、試薬1級、Al23)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学製、試薬特級、約4MgCO3・Mg(OH)2、・5H2O)、炭酸ナトリウム(キシダ化学製、無水・特級、Na2CO3)、リン酸三カルシウム(キシダ化学製、試薬1級、Ca3(PO42)、硫酸カルシウム2水和物(キシダ化学製、試薬1級、CaSO4・2H2O)を用いた。
これらの配合量は、生成されるクリンカー鉱物C3S、C2S、C3A、C4AFの組成が普通ポルトランドセメントクリンカーの組成となるように、ボーグ式を用いて決定した。具体的には、C3S、C2S、C3A、C4AFの鉱物組成が概ね表1に示す値となるように、各原料の配合量を算出した。加えて、セメントクリンカー中のMgO、SO3の添加量を変えて上記各原料を配合した。
上記の通り配合したクリンカー原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った後、1000℃から1450℃まで30分間かけて昇温させ、さらに1450℃で15分間の焼成を行った後、焼成物を急冷して、サンプルA〜Lのセメントクリンカーを作製した。
<C3S量及びM1相量の定量>
・X線回折プロファイルの取得及びクリンカー鉱物の同定
粉末X線回析装置(パナリティカル社製、X’Part Powder)を用い、測定条件を、ステップサイズ:0.17°、スキャンスピード:0.1012°/s、電圧:45kV、電流:40mAとして、サンプルA〜LのセメントクリンカーについてX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
得られたX線回析プロファイルについて、上記粉末X線回析装置に備えられた結晶構造解析用ソフトウエア(パナリティカル社製、X’Part High Score Plus version 2.1b)を用い、サンプルA〜Lに含まれるクリンカー鉱物の同定を行った。同定されたクリンカー鉱物は、C3S−M1(M1相)、C3S−M3(M3相)、C2S−α’(α’相)、C2S−β(β相)、C3A−cubic(立方晶)、C3A−ortho(斜方晶)、C4AF、gypsum(石膏)、bassanite(半水石膏)、K3Na(SO42、Pottasiumsulfate(K2SO4)及びbeta−Arcanite(アルカナイト)であった。
・リートベルト法による解析
次に、上記ソフトウエアに搭載されたリートベルト法による解析機能を用い、上記の通り同定された各クリンカー鉱物の質量%を定量した。ここでは、ICDS(社団法人化学情報協会の無機結晶構造データベース)から、各クリンカー鉱物についての基本結晶構造データ(格子定数、スケールファクター等)は、上記ソフトウエアに初期値として入力されている。次に、セメントクリンカー全体の結晶構造パラメータの精密化に必要なパラメータとして格子定数、スケールファクター等を選択し、精密化操作を実行した。これにより、理論プロファイルが実測したX線回折プロファイルとフィッティングするように上記精密化に必要なパラメータが可変されることによって精密化操作が繰り返された後、最終的に精密化されたスケールファクターから、各クリンカー鉱物の質量%が得られた。また、各クリンカー鉱物の質量%の合計を100質量%とし、M1相量及びM3相量の和により、C3S量を算出した。このようにして定量されたサンプルA〜Lの各クリンカー鉱物量のうち、C3S量、C2S量、C3A量及びC4AF量を表1に示す。
Figure 2012025635
<C3S中のM1相の含有量の算出>
サンプルA〜Lにおいて、上記によって得られたC3S量及びM1相量から、C3S中のM1相の含有量を、M1相量/C3S量×100により算出した。各サンプルA〜Lにおける算出結果を、C3S量、M1相量及びM3相量と共に表3に示す。
<セメントクリンカーの化学組成の定量>
JIS R 5202「セメントの化学分析方法」に準拠して、サンプルA〜Lのセメントクリンカーの化学組成を定量した。定量結果を表2に示す。
Figure 2012025635
<セメント組成物の作成>
作製したセメントクリンカーと石膏とを、セメントクリンカーに添加される石膏に含まれるSO3の含有量がセメント組成物全体を100質量%として1〜3.5質量%となるように調合し、ブレーン値が3000〜4500cm2/gとなるようにボールミルで粉砕して、各サンプルA〜Lのセメント組成物を作製した。
<長さ変化試験>
サンプルA〜Lのセメント組成物について長さ変化試験を行った。まず、JIS A 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」及びJIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、サンプルA〜Lのセメント組成物をそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。次に、JIS A 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」に準拠して、作製されたモルタル供試体を20℃で7日間水中養生した後、20℃、65%RHの雰囲気下に182日間保存し、かかる雰囲気下での保存開始時と182日保存後(182日材齢)のモルタル供試体の長さを測定した。そして、各モルタル供試体について保存開始時の長さ(基長)に対する182日保存後の長さの差を算出し、サンプルA〜Lごとに得られた3つの長さ変化を平均することによって、各サンプルA〜Lのセメント組成物の長さ変化を得た。結果を表3に示す。
Figure 2012025635
表3に示すように、市販の普通ポルトランドセメントに相当するC3S中のM1相の含有量が40質量%未満であるサンプルA〜Gでは、長さ変化が、いずれも−900×10-6未満であった。これに対し、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上であるサンプルH〜Lでは、長さ変化が、いずれも−900×10-6以上であった。この結果、本発明の要件を満たすサンプルH〜Lは、本発明の要件を満たさないサンプルA〜Gよりも優れた収縮低減性能を発揮することが認められた。また、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上では、M1相の含有量の増加と共に長さ変化の程度が小さくなっており、M1含有量が増加する程、収縮低減性能が向上することがわかった。
また、サンプルLに示すように、C3S中のM1相の含有量を100質量%とすることが可能であることが、確認された。さらに、上記した同定結果により、セメントクリンカー中のC3Sには、結晶多形としてM1相及びM3相のみが存在していることが、確認された。
<圧縮強さ試験>
サンプルA〜Lのセメント組成物について圧縮強さ試験を行った。長さ変化試験と同様に、JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、サンプルA〜Lのセメント組成物をそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢3日、7日、28日まで養生し、JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、各材齢における圧縮強さを測定した。結果を表4に示す。
Figure 2012025635
表4に示すように、市販の普通ポルトランドセメントに相当するC3S中のM1相の含有量が40質量%未満であるサンプルA〜Gと、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上であるサンプルH〜Lとでは、いずれの材齢においても圧縮強さに大きな差異は見られなかった。
この結果、本発明のセメントクリンカー及びセメント組成物を普通ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントとすることによって、市販の普通ポルトランドセメントと同等の早期強度発現性を発揮させ得ることが認められた。また、このような普通ポルトランドセメントとすることによって、例えばC2S量を増加させて収縮を低減させる市販の低熱ポルトランドセメントでは得ることが困難であった、早期強度発現性を発揮させ得ることも認められた。
上記の様な結果より、さらに、本発明のセメントクリンカー及びセメント組成物を低熱ポルトランドセメントクリンカー及び低熱ポルトランドセメントとすることによって、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上となるため、普通ポルトランドセメントよりもさらにC2S量を増加させた低熱ポルトランドセメントにおいては、C2S量の増加による収縮の低減に加え、M1相の含有量の増加による収縮の低減をも図ることが可能になり、収縮低減効果を一層向上させ得ると推察される。
また、上記の様な結果より、さらに、本発明のセメントクリンカー及びセメント組成物を早強ポルトランドセメントクリンカー及び早強ポルトランドセメントとすることによって、C3S中のM1相の含有量が40質量%以上となるため、普通ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントよりもさらにC3S量を増加させた早強ポルトランドセメントにおいては、M1相の含有量の増加による収縮の低減効果をC3S量が増加した分だけ大きく発揮させることが可能となり、収縮低減効果を一層向上させ得ると推察される。

Claims (3)

  1. クリンカー鉱物としてC3Sを含むセメントクリンカーであって、C3Sが結晶多形としてM1相を40質量%以上含有することを特徴とするセメントクリンカー。
  2. 請求項1に記載のセメントクリンカーと石膏とを含むことを特徴とするセメント組成物。
  3. JIS R 5210に記載の普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントの規格に適合することを特徴とする請求項2に記載のセメント組成物。
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