JP2009173494A - 水硬性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ペースト、モルタル、コンクリートの製造時の水と混練直後に溶出する六価クロムの量を少なく、かつ流動性に優れたセメント組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、硫酸スズ(II)を添加することを特徴とする水硬性材料であり、水、およびポリカルボン酸系の混和材料を含有した水硬性組成物である。この水硬性組成物を、ペースト、モルタル、コンクリートに使用した場合に、混練直後の混練水中の六価クロムの溶出量を少なくすることができるとともに、流動性に優れたものとすることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、セメントの混練水中に溶出する六価クロムが少ないことに加え、流動性に優れる高強度・高流動性水硬性組成物に関する。
セメントは水と反応して硬化する水硬性材料であり、ペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物として大量に使用されている。セメントは種々の天然原料や副産物原料を使用して生産されていることから、原料に由来する重金属を極微量含有する場合がある。このため、セメントを水と混練すると、水中に種々のイオンとともに重金属イオンが極微量溶出することがあることから、セメント中の重金属の含有量は厳しく管理されている。六価クロムはそのような重金属の1つであり、直接肌に接するとアレルギー反応を引き起こす恐れがあるといわれている。クロムには三価と六価のイオン形態があり、前者は毒性が低く、また、セメント水溶液のようなアルカリ中では水酸化物として沈殿するため、六価クロムを還元剤により三価クロムに還元して無害化する方法が考案されている。還元剤としては種々のものが使用されているが、硫酸鉄(II)がもっとも多く使用されている。特許文献1は、六価クロム溶出を抑制する地盤改良剤としてセメントに混合して使用する硫酸第一鉄を含む処理剤を開示する。また、特許文献2は、六価クロム溶出がなく、分散性に優れる水硬性組成物を目的とし、セメントと硫酸鉄等が含有される水硬性組成物を開示するが、実施例には六価クロム溶出量が記載されてなく、どこまで減少できたのかは明らかでない。また、従来の硫酸鉄還元剤は、その添加量を多くする必要があり、その結果、水硬性組成物の流動性を低下させるという問題を生じさせている。一方、近年、コンクリートの品質への要求が高まり、低水/セメント比で使用される高強度で高流動性のコンクリートの使用量が増えており、六価クロムの溶出が少なく、かつ高強度・高流動性のコンクリートに適した技術は開発されていないのが現状である。
特開2002−3235号公報 特開2003−146725号公報
硫酸鉄(II)は水に溶解して硫酸イオンを解離することから、添加量が多くなるとセメントの性状、とくに流動性に悪影響を及ぼすことが危惧される。このため、このような悪影響がなく同等の効果が得られる方法が望まれていた。本発明は、六価クロムの溶出が抑制されるとともに、流動性が改善された水硬性組成物を提供することを目的とする。
還元剤としては硫酸鉄(II)以外にも種々のものがある。本発明者らは、種々の還元剤と化学混和剤を検討した結果、より少ない添加量で大きな抑制効果が得られるとともに、低水/セメント比でも流動性への影響が小さい材料として、硫酸スズ(II)と高性能AE減水剤との組み合わせ、特にポリカルボン酸系の減水剤との組み合わせを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、セメントと硫酸スズ(II)とを含む水硬性材料および高性能AE減水剤を含有する水硬性組成物である。本発明において、硫酸スズ(II)はセメントの乾燥重量に基づいて0.01〜0.1質量%添加すること、および高性能AE減水剤はポリカルボン酸系混和材料であること、が好ましい。また、セメントに対する水の質量比が40質量%以下であること、および細骨材または/および粗骨材をさらに含むこと、が好ましい。
本発明によれば、混練直後の六価クロムの溶出が少なく、低水/セメント比で良好な流動性を示す水硬性組成物を得ることができる。このため、本発明は、混練直後の六価クロムの溶出が危惧される場合に、高強度・高流動性のコンクリートの製造に使用でき、品質管理の容易化、施工不良の回避、材料コストの低減などに貢献することが期待される。
以下に本発明を詳しく説明する。
(水硬性材料)
本発明の水硬性材料は、硫酸スズ(II)を添加して製造されることが特徴である。この方法で製造した水硬性材料は、混練直後の六価クロムの溶出が少ない水硬性材料となるとともに、低水/セメント比のコンクリート等の水硬性組成物とした場合に、水硬性組成物の配合あるいは調合の大幅な見直しを行わずに高強度・高流動性水硬性組成物を実現させることができる。二価のスズ化合物は、その還元作用によって水中の六価クロムを無害な三価のクロムに変える。このような二価のスズ化合物には、硫酸スズ(II)のほかに、酸化スズ(II)、塩化スズ(II)等があるが、本発明者らは、この中で、硫酸スズ(II)は、酸化スズ(II)よりも六価クロムの溶出抑制効果が高いことを知見した。また,従来用いられていた硫酸鉄(II)よりも六価クロムの溶出抑制効果が高いことも知見した。したがって、硫酸スズ(II)は、酸化スズ(II)や硫酸鉄(II)よりも、同じ抑制効果を示すための添加量が少なくてすみ、セメントの水和や化学混和剤の作用への影響が少なくなるので好ましい。加えて、硫酸スズ(II)は、塩化スズ(II)のような鉄筋腐食の原因となる塩素を含まない点でより好ましい。
本発明の硫酸スズ(II)としては、工業製品の硫酸スズ(II)等を使用することができる。
本発明の水硬性組成物を構成するセメントは、JIS R 5201に規定される普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、JIS R5211に規定される高炉セメント、JIS R5212に規定されるシリカセメント、JIS R5213に規定されるフライアッシュセメント、JIS R5214に規定されるエコセメント等を使用することができる。また、これらのセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、シリカ粉、石灰石微粉末等をさらに混合したセメントも使用することができる。さらに、セメントの構成鉱物であるアルミネート相とフェライト相の量が合計で20〜24質量%のセメントや、これらの構成鉱物量がさらに高いセメントを使用することもできる。なお、構成鉱物量は混合物量を補正してボーグ式によって算出できる。
本発明の硫酸スズ(II)の添加量は、0.01〜0.1質量%であることが好ましい。0.01質量%より少ないと六価クロムの溶出抑制効果が安定しない。また、0.1質量%より多くなるとセメントの性状とくに流動性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
(製造方法)
本発明の水硬性材料は、硫酸スズ(II)をセメントの製造・輸送の各工程で添加して製造方法することができる。仕上げ粉砕工程において添加する方法は特別な混合設備を必要としないのでより好ましい。セメントは、セメントクリンカー、せっこう、必要に応じて高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石等の混合材を添加して、ボールミル等を用いて粉砕して製造する。この際に、せっこうと共にズス化合物を添加することができる。
(水硬性組成物)
また、本発明の水硬性組成物は、水硬性材料、高性能AE減水剤、水および必要に応じて細骨材、粗骨材を含む水硬性組成物であって、水硬性材料が、上記の水硬性材料であることを特徴とする。コンクリート強度は、水/セメント比を下げることによって高めることができる。このため、水/セメント比は0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましい。しかし、水/セメント比が小さくなると流動性が低下するので施工が難しくなる。このため、水/セメント比は0.2以上が好ましい。
(高性能AE減水剤)
本発明の高性能AE減水剤は、従来、モルタルやコンクリートに使用されている、例えばナフタレン系(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等)、メラミン系(メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物等)、アミノスルホン酸系(芳香族アミノスルホン酸ポリマー等)、ポリカルボン酸系(ポリカルボン酸エーテル等)の高性能AE減水剤を挙げることができる。この中で、特にポリカルボン酸系(ポリカルボン酸エーテル等)が好ましい。
また、本発明の高流動性セメント組成物は、水に加えて、硬化促進剤、硬化遅延剤、収縮低減剤、鉄筋防錆剤等、公知の添加剤や膨張材等の特殊混和材を添加することができ、これらを添加しても特段の問題を生じない。
[実験例]
以下、実験例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例によって限定されるものではない。
(実験例1〜10)
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント:
・普通ポルトランドセメント(ブレーン比表面積3340cm2/g、宇部三菱セメント(株)製)
(2)還元剤
(i)スズ化合物(II):
・市販の硫酸スズ(II)(和光純薬社製、特級,純度96%以上)
・市販の酸化スズ(II)(和光純薬社製、特級,純度95%以上)
(ii)硫酸鉄(II):
・副生硫酸鉄(7水塩)
(3)高性能AE減水剤
・ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(BASFポゾリス社製 SP8SBs)
(4)水(W)
・蒸留水
(5)ジフェニルカルバジド指示薬溶液
・試薬特級
[試験方法]
(1)六価クロム溶出量の測定
EN196-10 “Determination of the water-soluble chromium(VI) content of cement”に準じて試験した。すなわち、JIS R 5201:1997「セメントの物理試験方法」に規定の練混ぜ方法に準拠して調製したモルタルを、ブフナーロート内のろ紙(5C)上に広げ、アスピレータにより吸引し液相を抽出した。抽出時間は5分間とした。得られた液相から検液を5.0ml分取し、100mlのビーカーに入れ、水20ml、ジフェニルカルバジド指示薬溶液5mlを加えて振とうし、1.0mol/lの塩酸を滴下してpHを2.1から2.5の範囲に調整し、容量フラスコに移し水を加えて50mlに定容した。これに指示薬溶液を添加し、15〜20分後に540nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線よりセメント中の六価クロム濃度(K mg/kg)を算出した。
K = 5 × 10−4 × C ・・・ (4)
(2)流動性試験
セメントおよび還元剤を含む水硬性組成物に水と高性能AE減水剤とを、水/セメント比が0.35、高性能AE減水剤添加量がセメント当り0.25質量%の条件で添加し、ホモジナイザーで2分間練り混ぜた。練り混ぜ後5分間静置した後、さじで20回かき混ぜて、JASS 15 M−103:1998「セルフレベリング材の品質基準」に準じてペーストフローを測定した。
六価クロムの溶出試験結果を表1の実験例1〜6に示す。
Figure 2009173494
表1より、硫酸スズ(II)は、硫酸鉄(II)の添加量の1/2〜1/3の添加量で同等の六価クロム溶出抑制効果を有することがわかる。また、酸化スズ(II)は、硫酸スズ(II)に比べて、六価クロム溶出抑制効果が非常に小さいことがわかる。
実際の使用においては、還元剤は六価クロム溶出抑制効果に対する安全率を見込んで添加される。ここでは、安全率5倍までについて、効果のあった硫酸スズ(II)と硫酸鉄(II)とについて流動性を試験した。流動性の試験結果を表2の実験例7〜11に示す。
Figure 2009173494
硫酸鉄(II)は、実施例9と実施例10との比較からわかるように、安全率(倍率)を高く見積もると流動性が低下するのに対して、硫酸スズ(II)の場合は、実施例7と実施例8との比較からわかるように、安全率を高く見積もっても流動性の低下は認められず、高強度・高流動性組成物に適している。

Claims (5)

  1. セメントと硫酸スズ(II)とを含む水硬性材料および高性能AE減水剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
  2. 硫酸スズ(II)を、セメントの乾燥重量に基づいて0.01〜0.1質量%添加する、請求項1記載の水硬性組成物。
  3. 高性能AE減水剤がポリカルボン酸系混和材料である、請求項1または2記載の水硬性組成物。
  4. セメントに対する水の質量比が40質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の水硬性組成物。
  5. 細骨材または/および粗骨材をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の水硬性組成物。
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