JP2016155986A - 複合金属酸化物研磨材料の製造方法及び複合金属酸化物研磨材料 - Google Patents

複合金属酸化物研磨材料の製造方法及び複合金属酸化物研磨材料 Download PDF

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Abstract

【課題】セリウムフリーの研磨材料において良好な研磨速度を有し、かつ製造コストの削減及び製造効率の向上を実現することが可能な研磨材料、並びに、該研磨材料を簡便に得るための製造方法を提供すること。
【解決手段】ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合物を焼成する焼成工程とを含む複合金属酸化物研磨材料の製造方法であって、該ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物のSO換算量は、該ジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、2.0重量部以下である、複合金属酸化物研磨材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合金属酸化物研磨材料の製造方法及び複合金属酸化物研磨材料に関する。
レンズやプリズム等、高い透明性と精度を要求される精密な光学ガラス製品の研磨には、酸化セリウム系の研磨材が用いられている。この研磨材は、いわゆるレアアース(希土類)を多く含む鉱物を焼成して粉砕することによって製造される。
しかしながら、レアアースはその需要が増大し、供給が不安定になっていることから、セリウムの使用量を低減させる技術と代替材料の開発が望まれている。このような代替研磨材として、特許文献1にはペロブスカイト型酸化物が研磨材として好適である旨が開示され、特許文献2には鉄系ペロブスカイト型の研磨材が開示され、特許文献3にはジルコニウム系ペロブスカイト型の研磨材が開示されている。
特開2001−107028号公報 特開2012−122042号公報 特開2013−82050号公報
しかしながら、特許文献1に開示された研磨材を用いてガラス研磨を行った場合、研磨後のガラスは平滑な表面が得られるものの、研磨速度が低いという課題があった。
また特許文献2に記載の研磨材は、噴霧熱分解法で製造されており、製造に特殊な設備と多大な時間を要するため大量生産に適していないことや、ニッケルやコバルト等のレアメタルを使用するため、酸化セリウムと同様の供給不安が懸念される等の課題があった。特許文献3に記載の研磨材も噴霧熱分解法で製造されており、大量生産には適していない。
そこで、本発明者は、製造プロセスが簡便で、かつ特殊な設備を導入することなく低コストでセリウムフリーの研磨材料を製造する方法として、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合・焼成することで研磨材料を得る手法を見いだし、この手法で得られる研磨材料のうち、原料のジルコニウム化合物として酸化ジルコニウムを用いたものは研磨速度に際立って優れることも既に見いだしている。だが、酸化ジルコニウムは、通常、水酸化ジルコニウムを焼成・粉砕して製造されるため、この焼成・粉砕工程を省略して製造コストの削減及び製造効率の向上をより一層実現するための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑み、セリウムフリーの研磨材料において良好な研磨速度を有し、かつ製造コストの削減及び製造効率の向上を実現することが可能な研磨材料、並びに、該研磨材料を簡便に得るための製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を進めていたところ、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合・焼成して得た研磨材料のうち、酸化ジルコニウム以外のジルコニウム化合物を原料とする研磨材料の研磨速度が良好でないことに着目し、この要因が、原料ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物の含有量にあることを新たに見いだした。一般に、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物は、その合成時に、硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸イオンを含む物質を用いることが多い。一般的なジルコニウム化合物の合成法である、オキシ塩化ジルコニウムを用いる中和沈殿法においては、硫酸イオンを含む物質を添加することにより、先ず塩基性硫酸ジルコニウム(Zr(OH)(4−2x)(SO・nHO(但し0<x<2))を生成させ、次いでこの塩基性硫酸ジルコニウムを中和することにより、水酸化ジルコニウムや炭酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物を得る。硫黄化合物を添加すると、得られるケーキの含水分が低減され、ハンドリング性や濾過性が良好になるためである。硫黄化合物を添加しない場合には、得られる水酸化ジルコニウムの濾過に非常に長い時間を要し、生産性が著しく低下するため工業的に不向きである。それゆえ、通常の合成手法で得たジルコニウム化合物は硫黄化合物を含むが、本発明者は、この硫黄化合物の含有量が、ストロンチウム化合物との混合・焼成後の研磨材料の研磨速度に影響を与えるということを新たに見いだした。原因は定かではないが、例えば、ジルコニウム化合物を製造する際の硫黄化合物の添加量により、得られるジルコニウム化合物の結晶性が異なることが原因の一つとして推測される。そこで、ジルコニウム化合物中の硫黄化合物の含有量を所定範囲に設定し、これとストロンチウム化合物とを混合・焼成すると、高レベルの研磨速度を有する研磨材料が容易に得られることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合物を焼成する焼成工程とを含む複合金属酸化物研磨材料の製造方法であって、
該ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物のSO換算量は、該ジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、2.0重量部以下である、複合金属酸化物研磨材料の製造方法である。
上記混合工程におけるストロンチウム化合物は、炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムは、ジルコニウム化合物との反応が容易に進行して、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)を生成しやすいため、生産性がより一層向上される。
上記混合工程におけるジルコニウム化合物は、炭酸ジルコニウム及び水酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。炭酸ジルコニウム及び水酸化ジルコニウムは、ストロンチウム化合物との反応性が高いため、研磨特性がより良好な研磨材料を与えることができる。また、これらを用いれば、製造コストの削減及び製造効率の向上をより実現することができる。
上記焼成工程における焼成温度は、800℃を超えて1500℃以下であることが好ましい。焼成温度がこの範囲であると、研磨特性がより良好な研磨材料を与えることができる。
本発明はまた、複合金属酸化物研磨材料であって、
該複合金属酸化物研磨材料に含まれる硫黄化合物のSO換算量が、該複合金属酸化物研磨材料に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、1.2重量部以下である、複合金属酸化物研磨材料でもある。
本発明の複合金属酸化物研磨材料の製造方法により、セリウムフリーの研磨材料において良好な研磨速度を有する研磨材料を効率よく製造することができる。この本発明の製造方法は、固相反応法により行われるため、噴霧熱分解法よりも製造プロセスが簡便となり、特殊な設備を導入することなく低コストでの製造が可能となる。また、本発明の複合金属酸化物研磨材料は、良好な研磨速度を示すことができ、しかも近年のレアアース供給不足にも充分に対応できるため、工業的に極めて有利な材料といえる。
図1−1は、実施例1及び比較例1で用いた各ジルコニウム化合物について、示差熱測定を行った結果を示すグラフである。 図1−2は、実施例1及び比較例1で用いた各ジルコニウム化合物について、熱重量測定を行った結果を示すグラフである。 図2−1は、実施例1及び比較例1に係る各混合粉(混合物の乾燥物)について、示差熱測定を行った結果を示すグラフである。 図2−2は、実施例1及び比較例1に係る各混合粉(混合物の乾燥物)について、熱重量測定を行った結果を示すグラフである。 図3は、参考例又は比較参考例で用いた各研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を示すグラフである。
〔複合金属酸化物研磨材料の製造方法〕
本発明の複合金属酸化物研磨材料の製造方法(「本発明の製造方法」とも称す)は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合物を焼成する焼成工程とを含む。そのため、複合金属酸化物研磨材料が高い研磨速度を実現することができる。
なお、使用される原料からも分かるように、本発明の製造方法は、固相反応法により行われる。それゆえ、噴霧熱分解法よりも製造プロセスが簡便となり、特殊な設備を導入することなく低コストでの製造が可能となる。
−原料−
まず、本発明の製造方法における原料の一つ、ストロンチウム化合物について説明する。
ストロンチウム化合物は、ストロンチウム原子を含む化合物である限り特に限定されないが、中でも、炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムは、酸化ジルコニウムとの反応が容易に進行してジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)を生成しやすい。
次に、もう一つの原料であるジルコニウム化合物について説明する。
本発明の製造方法では、ジルコニウム化合物として、これに含まれる硫黄化合物のSO換算量が、該ジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、2.0重量部以下である化合物を用いる。原料ジルコニウム化合物中の硫黄化合物の含有量がこの範囲にあると、研磨速度が極めて良好な研磨材料が得られる。硫黄化合物の含有量(SO換算量)は、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.1重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以下である。
上記ジルコニウム化合物は、ジルコニウム原子を含む化合物である限り特に限定されないが、中でも、酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウムが好ましい。これらは、ストロンチウム化合物との反応性が高く、しかも研磨特性がより良好な研磨材料を与えることができる。中でも、酸化ジルコニウム以外のジルコニウム化合物を用いることが好ましく、これにより、酸化ジルコニウム合成時の焼成・粉砕工程等を省略でき、製造コストの削減及び製造効率の向上を実現することができる。すなわち、炭酸ジルコニウム及び水酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ジルコニウム化合物は、その比表面積が0.1〜250m/gであることが好ましい。比表面積がこの範囲にあると、程よい結晶性のSrZrO相を効率よく生成しやすくなる。例えば、ジルコニウム化合物の比表面積が0.1m/g以上であると、ストロンチウム化合物との反応性がより高まり、また、250m/g以下であると、ストロンチウム化合物との反応制御が容易になるので、いずれの場合も研磨速度の良好な複合金属酸化物研磨材料が得られやすい。より好ましくは0.3〜240m/g、更に好ましくは0.5〜230m/gである。
本明細書中、比表面積(SSAとも称する)は、BET比表面積を意味する。
BET比表面積とは、比表面積の測定方法の一つであるBET法により得られた比表面積のことをいう。なお、比表面積とは、ある物体の単位質量あたりの表面積のことをいう。
BET法は、窒素などの気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から比表面積を測定する気体吸着法である。具体的には、圧力Pと吸着量Vとの関係からBET式によって、単分子吸着量VMを求めることにより、比表面積を定める。
−混合工程−
次に、混合工程について説明する。
本発明の製造方法は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程を含む。混合する際の原料の割合は、酸化物換算の重量比でSrO:ZrO=10:90〜43:57であることが望ましい。混合の方法は特に限定されず、湿式混合であっても、乾式混合であってもよいが、混合性の観点から、湿式混合が望ましい。湿式混合に用いる分散媒としては、特に限定されず、水や低級アルコールを用いることができるが、製造コストの観点から水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。湿式混合の場合、ボールミルやペイントコンディショナー、サンドグラインダーを用いてもよい。また、分散媒を除去するために湿式混合に続いて乾燥工程を行うことが好ましい。
なお、ジルコニウム化合物は、合成で得たケーキ状で混合工程に供することができる。
−乾燥工程−
上記混合工程の後、必要に応じて乾燥工程を行ってもよい。
乾燥工程では、混合工程で得られたスラリーから分散媒を除去して乾燥させる。スラリーを乾燥させる方法は、混合時に用いた溶媒を除去できれば特に限定されず、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。また、スラリーをそのまま乾燥してもよく、濾過してから乾燥してもよい。
なお、混合物の乾燥物を乾式粉砕してもよい。
−焼成工程−
続いて、焼成工程について説明する。
焼成工程では、混合工程により得られた原料混合物(更に乾燥工程を経て得られた乾燥物であってもよい)を焼成する。これにより、複合金属酸化物研磨材料を得ることができる。焼成工程では、原料混合物をそのまま焼成してもよいし、所定の形状(例えばペレット状)に成型してから焼成してもよい。焼成雰囲気は特に限定されない。焼成工程は1回だけ行ってもよく、2回以上行ってもよい。
上記焼成工程における焼成温度は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物との反応に充分な温度であればよいが、800℃を超えて1500℃以下であることが好ましい。焼成温度が800℃を超えると、反応がより充分に進むとともに、ジルコニウム化合物が酸化ジルコニウムとして結晶化しやすくなり、焼成温度が1500℃以下であると、生成したジルコン酸ストロンチウムが激しく焼結することが充分に抑制されるため、いずれの場合も研磨速度をより一層高めることができる。焼成温度の下限は850℃以上がより好ましい。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。更に好ましくは900℃以上、特に好ましくは930℃以上である。また、上限は1300℃以下がより好ましく、更に好ましくは1200℃以下である。
本明細書中、焼成工程における焼成温度とは、焼成工程での最高到達温度を意味する。
ここで、原料のジルコニウム化合物として、硫黄化合物の含有量が本発明で設定した範囲を超える化合物を用いた場合、本発明のジルコニウム化合物を用いた場合と同じ焼成温度で焼成工程を行ったとしても、得られる研磨材料の結晶性が充分とはならないために、良好な研磨速度を得ることができない。また、焼成温度を更に高めることで研磨材料の結晶性を同程度にしても、充分な研磨速度を得ることができない。
上記焼成温度での保持時間は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物との反応に充分な時間であればよい。例えば、5分〜24時間であることが好ましい。保持時間がこの範囲内であると反応がより充分に進み、また保持時間が24時間以下であると、生成した焼成物(ジルコン酸ストロンチウム)が激しく焼結することが充分に抑制されるため、研磨速度をより高めることができる。より好ましくは7分〜22時間、更に好ましくは10分〜20時間である。
上記焼成工程では、最高温度(焼成温度)に達するまでの昇温時の昇温速度を0.2〜15℃/分とすることが好ましい。昇温速度が0.2℃/分以上であると昇温にかかる時間が長時間となり過ぎることがないので、エネルギーと時間の浪費を充分に抑制でき、また、15℃/分以下であると、炉内容物の温度が設定温度に充分に追随でき、焼成むらがより充分に抑制される。より好ましくは0.5〜12℃/分、更に好ましくは1.0〜10℃/分である。
−粉砕工程−
上記焼成工程の後、必要に応じて粉砕工程を行ってもよい。
粉砕工程では、焼成工程により得られた焼成物を粉砕する。粉砕方法及び粉砕条件は特に限定されず、例えば、ボールミルやライカイ機、ハンマーミル、ジェットミル等を用いてもよい。
〔複合金属酸化物研磨材料〕
続いて、本発明の複合金属酸化物研磨材料について説明する。
本発明の複合金属酸化物研磨材料(以下、単に「研磨材料」とも略す)は、該研磨材料に含まれる硫黄化合物(より具体的には、該研磨材料の結晶中に取り込まれている硫黄化合物)のSO換算量が、該複合金属酸化物研磨材料に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、1.2重量部以下となるものである。硫黄化合物の含有量がこの範囲にあると、研磨速度が極めて良好な研磨材料となる。当該硫黄化合物の含有量として好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下、更に好ましくは0.6重量部以下である。
上記研磨材料は、上述した本発明の製造方法によって得ることが好ましい。
上記研磨材料は、ZrOの結晶相と、SrZrOの結晶相とを含むことが好ましい。研磨材料に含まれるZrOの結晶相が機械研磨作用を担い、SrZrOの結晶相が化学研磨作用を担うことで、より良好な研磨速度を示すことができる。また、本発明の研磨材料は、ZrOとSrZrOとの複合体であることが好ましいが、これによって、研磨速度をより高めることができる。なお、SrZrOとZrOとの複合体とは、SrZrOと酸化ジルコニウムとのそれぞれの一次粒子が部分的に焼結して形成された二次粒子のことを言う。例えば、複合体についてエネルギー分散X線分光法(EDS)による元素マッピングを行えば、SrとZrが検出される一次粒子とZrのみが検出される一次粒子とが、二次粒子を形成している様子が観察される。
上記研磨材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折における斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークの半価幅が0.1〜3.0°であることが好ましい。半価幅がこの範囲にあると、化学研磨作用を効果的に発揮するSrZrOの結晶性が程よくなるため、化学研磨作用を充分に発揮することができる。なお、半価幅が3.0°を超えると、SrZrOの結晶性が充分ではなくなり、半価幅が0.1°未満であると、SrZrOの結晶性が高くなり過ぎるため、いずれの場合も、SrZrOに由来する化学研磨作用が充分に得られないことがある。より好ましくは0.1〜1.0°、更に好ましくは0.1〜0.7°、特に好ましくは0.1〜0.4°である。
上記研磨材料は、体積基準粒度分布のシャープさの指標となるD90のD10に対する比(D90/D10)が1.5〜50であることが好ましい。D90/D10が50を超える場合、粒子径のバラツキが大きすぎるため、研磨材料と研磨対象となる物体との接触が充分に得られず、研磨速度が充分とはならないことがある。D90/D10が1.5未満の場合、粒子径のバラツキが小さすぎるため、研磨材料と研磨対象となる物体との接触が充分に得られず、研磨速度が充分とはならないことがある。
なお、D90/D10が大きい程、粒度分布がブロードであることを意味し、この値が小さい程、粒度分布がシャープであることを意味する。
10、D90はそれぞれ、粒度分布を測定することにより得られる値である。D10とは体積基準での10%積算粒径を意味し、D90とは体積基準での90%積算粒径を意味する。
上記研磨材料は、SrがSrO換算で10〜43重量%含まれることが好ましい。Sr含有量がSrO換算で10重量%未満の場合、SrZrOの含有量が低下し、化学研磨作用が充分に得られないことがある。また、Sr含有量がSrO換算で43重量%を超える場合、ZrOの含有量が相対的に低下し、機械研磨作用が充分に得られないことがある。より好ましくは11〜43重量%、更に好ましくは12〜43重量%である。
上記研磨材料は、比表面積が1.0〜50m/gであることが好ましい。比表面積が1.0m/g未満の場合、研磨材料の比表面積が小さすぎて、研磨対象となる物体と充分に接触できず、充分に研磨できないことがある。また、比表面積が50m/gを超える場合には、研磨材料を構成する砥粒が小さすぎて、機械研磨作用が充分に得られないことがある。より好ましくは1.0〜45m/g、更に好ましくは1.0〜40m/gである。
本発明の研磨材料は、各種の研磨対象に適用できる。例えば、従来、酸化セリウム、酸化クロム及びベンガラ(Fe)等が研磨材料として用いられていた研磨対象に適用できる。研磨対象は特に限定されず、例えば、ガラス基板、金属板、石材、サファイア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム、及びリン化インジウム等が挙げられる。
上記研磨材料は、用途に応じて、適宜他の成分と混合して使用してもよい。例えば、本発明の研磨材料は、分散媒と混合してもよいし、添加剤と混合してもよいし、分散媒及び添加剤を同時に混合してもよい。分散媒及び/又は添加剤と混合した際の形態は特に限定されず、例えば、粉末状、ペースト状、スラリー状等の形態で使用することができる。
分散媒としては特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒及びこれらの混合物等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。有機溶媒としては、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。分散媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
添加剤としては特に限定されず、例えば、酸、アルカリ、pH調整剤、キレート化剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、凝集防止剤、潤滑剤、還元剤、防錆剤、公知の研磨材料等が挙げられる。本発明の効果を妨げない範囲でこれらを1種又は2種以上併用してもよい。
〔研磨方法〕
次に、本発明の複合金属酸化物研磨材料を用いる研磨方法の一例を述べる。
本発明の複合金属酸化物研磨材料は、上述したように各種の研磨対象に適用できるが、このうち負帯電性基板を研磨対象とする場合は、以下の研磨方法に適用することが好適である。なお、本発明の複合金属酸化物研磨材料を用いる研磨方法は、以下の研磨方法にのみ限定されるものではない。
すなわち、本発明の複合金属酸化物研磨材料を含むスラリー(以下、研磨材スラリーとも称す)のゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、該研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する研磨方法である。
本明細書中、負帯電性基板とは、pHが4より大きい水溶液中で常に負に帯電している基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板(ガラスの等電点=約2.0)が挙げられる。その他、炭化ケイ素基板(炭化ケイ素の等電点=約4.0)等も挙げられる。
なお、ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の透明又は半透明のものが挙げられる。
上記研磨方法では、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する。これらの研磨工程の順序は特に限定されず、研磨工程aの後に研磨工程bを行ってもよいし、研磨工程bの後に研磨工程aを行ってもよい。中でも、表面平滑性により優れた負帯電性基板を得るには、研磨工程aを少なくとも1回行った後、研磨工程bを少なくとも1回行うことが特に好適である。また、各研磨工程を複数回行ってもよいし、研磨工程aと研磨工程bとを交互に実施してもよい。研磨工程aを複数回行う場合、研磨材スラリーのゼータ電位が正である限り、ゼータ電位を変更して実施してもよいし、変えないで実施してもよい。研磨工程bを複数回行う場合も同様であり、研磨材スラリーのゼータ電位が負である限り、ゼータ電位を変更して実施してもよいし、変えないで実施してもよい。
本明細書中、「研磨材スラリーのゼータ電位」とは、後述する実施例に記載の測定条件下で求められる値である。
上記研磨方法では、研磨工程aにおいて静電引力による作用が発揮され、研磨工程bにおいて静電斥力による作用が発揮されることで、これらの相乗効果により、高い研磨速度と、研磨後の負帯電性基板における優れた表面平滑性とを実現することになると推測される。通常、研磨前の負帯電性基板の表面には、微細な傷や穴等からなる凹部が存在する。研磨工程aでは、研磨対象である基板は負に帯電しているのに対し、研磨材スラリーは正に帯電しているため、静電引力により研磨材が凹部の深くまで浸透し、研磨を促進するために、研磨速度が高められると考えられる。一方、研磨工程bでは、研磨対象である基板も研磨材スラリーも負に帯電しているため、静電斥力により研磨材は凹部の深くまでは浸透しないものの、研磨パッドと基板との間にかかる圧力によって、研磨材が基板表面の凸部に多く存在することになり、これにより基板表面が平滑化されると考えられる。したがって、研磨対象が負帯電性基板であれば同様の作用機構となるため、上記研磨方法は、ガラス基板だけでなく、各種の負帯電性基板に適用することができる。
上記研磨工程a及び研磨工程bのいずれの工程も、研磨材スラリーの存在下で研磨を行う。研磨工程aと研磨工程bとでは、同じ研磨材スラリーを使用、すなわち連続使用(再利用)して、該スラリーのゼータ電位の制御のみを行うこととしてもよいし、ゼータ電位がを正又は負となる研磨材スラリーをそれぞれ別個に用意して、各研磨工程で研磨材スラリーを切り替えてもよい。いずれの場合も、研磨材スラリーとして、本発明の複合金属酸化物研磨材料を含むものを用いればよい。このように上記研磨方法では、研磨材スラリーを連続使用(再利用)でき、切り替える場合でも種類が大きく異なる研磨材スラリーを用意する必要がないので、従来の手法のように研磨材切り替え時に必要となる洗浄作業や専用装置等が不要となる。また、酸化セリウムを必須に用いなくても高い研磨速度と優れた表面平滑性とを実現できるため、上記研磨方法は、従来の研磨方法に比べて非常に有利な手法といえる。
上記研磨工程aは、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で、該研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する工程である。この研磨工程では、従来の酸化セリウム系の研磨材を用いた場合とほぼ同等の高い研磨速度を実現することができ、しかも酸化セリウム系の研磨材を用いた場合よりも負帯電性基板の表面平滑性を高めることもできる。
上記研磨工程bは、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で、該研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する工程である。この研磨工程では、従来のコロイダルシリカを用いた精密研磨工程よりも著しく高い研磨速度を実現しながら、コロイダルシリカを用いた精密研磨工程とほぼ同等の精密な研磨を実施でき、研磨後の負帯電性基板において高い表面平滑性を実現することができる。
上述のとおり研磨工程aでは研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で、研磨工程bでは研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で、それぞれ負帯電性基板を研磨することになるが、研磨材スラリーのゼータ電位の絶対値がそれぞれ5mV以上となる条件下で各研磨工程を行うことが好適である。それぞれ、より好ましくは10mV以上、更に好ましくは15mV以上、特に好ましくは20mV以上である。各工程での当該絶対値の上限は特に限定されないが、例えば制御しやすさ(例えば、研磨工程aでゼータ電位が過大すぎると、ガラス基板表面に研磨材が残留付着する可能性があるため、これを防止する等、また例えば、研磨工程bでゼータ電位が過小すぎると、負帯電性基板と研磨材スラリーの静電斥力が強く働きすぎて、研磨速度を充分に高めることができない可能性があるため、これを防止する等)の観点から、それぞれ、100mV以下であることが好ましい。
研磨材スラリーのゼータ電位は、該研磨材スラリーのpHを調整することで制御することができる。研磨材スラリーが本発明の複合金属酸化物研磨材料を含むものであれば、研磨材スラリーのpHを該研磨材スラリーの等電点未満に調整すると、そのゼータ電位は正となる一方で、研磨材スラリーのpHを該研磨材スラリーの等電点を超える範囲に調整すると、そのゼータ電位は負となる。なお、これまでの研磨材は、研磨速度を高める、又は、表面平滑性を高めるといったことを重視していたが、本発明の複合金属酸化物研磨材料は、pHだけで研磨性を簡単にコントロールすることができるものであり、この点で従来技術からは着想し得ない特異な効果を発揮し得るものである。
pHの調整は、研磨材スラリーにpH調整剤を添加することで行ってもよいし、pH緩衝液を用いて研磨材スラリーのpHを調整してもよい。
なお、既に研磨材スラリーのpHが研磨に好ましい領域にある場合は、pH調整を行わなくてもよい。
上記pH調整剤としては、酸やアルカリを用いることができる。酸を用いれば研磨材スラリーのpHを酸性側に調整することができ、アルカリを用いれば研磨材スラリーのpHをアルカリ側に調整することができる。酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸等の有機酸;が好ましく、アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア水、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液が好ましい。
上記研磨方法では、研磨工程aを、研磨材スラリーのpHが、上記負帯電性基板の等電点より大きく、かつ該研磨材スラリーの等電点未満となる条件下で実施することが好ましい。これにより、強酸によって本発明の複合金属酸化物研磨材料が溶解することが充分に抑制されて、該研磨材料による研磨作用がより発揮される他、研磨機・装置への負担を軽減することもできる。研磨工程aにおける研磨材スラリーのpHの下限値として具体的には、2以上であることが好ましい。より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。
また研磨工程bを、研磨材スラリーのpHが、該研磨材スラリーの等電点より大きく、かつ13以下となる条件下で実施することが好ましい。これにより、強塩基によって本発明の複合金属酸化物研磨材料が溶解することが充分に抑制されて、該研磨材料による研磨作用がより発揮される他、研磨機・装置への負担を軽減することもできる。研磨工程bにおける研磨材スラリーのpHの上限値は、12以下であることが好ましい。より好ましくは11以下である。
研磨材スラリー(及び本発明の複合金属酸化物研磨材料)の等電点とは、研磨材スラリー中の砥粒(本発明の複合金属酸化物研磨材料)に帯びた電荷の代数和がゼロである点、すなわち砥粒に帯びた正電荷と負電荷とが等しくなる点をいい、その点における研磨材スラリーのpHで表すことができる。
上記研磨材スラリー中、本発明の複合金属酸化物研磨材料の含有量は、例えば、研磨材スラリー100重量%中、0.001〜90重量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜30重量%である。上記研磨材スラリーはまた、更に、分散媒を含むことが好ましい。分散媒については上述したとおりである。
本発明を詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
(1)Zr原料準備工程
オキシ塩化ジルコニウム8水和物(昭和化学株式会社製)3.0kgを、イオン交換水6.7Lに撹拌しながら溶解させた。この溶液を撹拌しながら25℃に調整し、この温度を維持しながら、180g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、pH9.5になるまで1時間かけて撹拌しながら添加し、更に1時間撹拌した。このスラリーをろ過水洗し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗することにより、水酸化ジルコニウムケーキを得た。
(2)混合工程
Sr原料として炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:SW−P−N)26.1gと、Zr原料として(1)Zr原料準備工程により得られた水酸化ジルコニウムケーキをZrO換算で31.3gとなるように300mLマヨネーズ瓶に計り取り、イオン交換水172mLと1mmφジルコニアビーズ415gを添加してペイントコンディショナー(レッドデビル社製:5110型)を用いて、30分間混合した。
(3)乾燥工程
上記(2)混合工程により得られたスラリーを、400メッシュ(目開き38μm)の篩にかけてジルコニアビーズを除去し、続いて濾過して得られた混合物のケーキを120℃の温度で充分に乾燥することにより混合物の乾燥物を得た。
(4)焼成工程
上記(3)乾燥工程により得られた混合物の乾燥物のうち30gを、外径55mm、容量60mLのアルミナ製るつぼに入れて、電気マッフル炉(ADVANTEC社製、KM−420)を用いて焼成し、焼成物を得た。焼成条件は、室温から950℃まで285分間かけて昇温し、950℃で180分間保持し、その後ヒーターへの通電を中止し室温まで冷却した。なお、焼成は大気中で行った。
(5)粉砕工程
上記(4)焼成工程により得られた焼成物を10g、自動乳鉢(ライカイ機)(日陶科学株式会社製:ANM−150)に仕込み、10分間粉砕することにより、複合金属酸化物研磨材料を得た。
実施例2、3
(4)焼成工程における焼成温度を表1に記載の温度に変更した以外は、実施例1と同様にして、複合金属酸化物研磨材料を得た。
実施例4
(1)Zr原料準備工程
オキシ塩化ジルコニウム8水和物(昭和化学株式会社製)3.0kgと、硫酸アンモニウム(東亞合成株式会社製)0.35kgを、イオン交換水6.7Lに撹拌しながら溶解させた。この溶液を撹拌しながら25℃に調整し、この温度を維持しながら、180g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、pH9.5になるまで1時間かけて撹拌しながら添加し、更に1時間撹拌した。このスラリーをろ過水洗し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗することにより、水酸化ジルコニウムケーキを得た。
(2)乾燥工程〜(5)粉砕工程は、実施例1と同様に行い、複合金属酸化物研磨材料を得た。
実施例5
(2)混合工程におけるZr原料として炭酸ジルコニウム(巴工業株式会社製)109gを使用した以外は、実施例1と同様にして、複合金属酸化物研磨材料を得た。
実施例6
(2)混合工程におけるZr原料として炭酸ジルコニウム(巴工業株式会社製)69gを使用した以外は、実施例1と同様にして、複合金属酸化物研磨材料を得た。
比較例1
(1)Zr原料準備工程
オキシ塩化ジルコニウム8水和物(昭和化学株式会社製)3.0kgと、硫酸アンモニウム(東亞合成株式会社製)0.70kgを、イオン交換水6.7Lに撹拌しながら溶解させた。この溶液を撹拌しながら25℃に調整し、この温度を維持しながら、180g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、pH9.5になるまで1時間かけて撹拌しながら添加し、更に1時間撹拌した。このスラリーをろ過水洗し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗することにより、水酸化ジルコニウムケーキを得た。
(2)乾燥工程〜(5)粉砕工程は、実施例1と同様に行い、比較用研磨材料を得た。
比較例2
(1)Zr原料準備工程で得られた水酸化ジルコニウムケーキを130℃で15時間乾燥させた以外は、実施例1と同様に行い、比較用研磨材料を得た。
比較例3、4
(4)焼成工程における焼成温度を表1に記載の温度に変更した以外は、比較例2と同様に行い、比較用研磨材料を得た。
Figure 2016155986
<性能評価>
以下の手順により、各実施例及び比較例で作製した研磨材料及びその原料の性能を評価した。
(i)半価幅の測定
Zr原料(ジルコニウム化合物)及び研磨材料の各々について、以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折パターンともいう)を測定した。
使用機:株式会社リガク製 RINT−UltimaIII
線源:CuKα
電圧:40kV
電流:40mA
試料回転速度:回転しない
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:FT
計数時間:2.0秒
ステップ幅:0.0200°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000〜70.0000°
積算回数:1回
単斜晶ZrO:JCPDSカード 00−037−1484
正方晶ZrO:JCPDSカード 00−050−1089
立方晶ZrO:JCPDSカード 00−049−1642
斜方晶SrZrO:JCPDSカード 00−044−0161
その後、各実施例及び比較例で得た研磨材料のX線回折の測定により得られた回折パターンから、斜方晶SrZrO(040)半価幅を測定した。結果を表2に示す。
なお、線源としてCuKα線を用いたX線回折において、単斜晶ZrOの最大ピークである(−111)面に由来するピークは2θ=28.14°付近にあり、正方晶ZrOの最大ピークである(011)面に由来するピークは2θ=30.15°付近にあり、立方晶ZrOの最大ピークである(111)面に由来するピークは2θ=30.12°付近にあり、斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークは2θ=44.04°付近にある。
(ii)元素分析
Zr原料(ジルコニウム化合物)及び研磨材料の各々について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:型番 ZSX PrimusII)の含有元素スキャニング機能であるEZスキャンにより元素分析を行った。
具体的には、測定サンプル台にプレスしたサンプルをセットし、次の条件を選択(測定範囲:F−U、測定径:30mm、試料形態:酸化物、測定時間:長い、雰囲気:真空)することで、Zr原料中のSO含有量、並びに、研磨材料中のSr含有量(SrO換算)及びSO含有量を測定した。結果を表2に示す。
このようにして求めたZr原料中のSO含有量に基づき、Zr原料のZrO換算量100重量部に対するSOの含有量(重量部)を算出した。これを表2の「SO ※1(重量部)」欄に示す。
また、上記のようにして求めた研磨材料中のSO含有量に基づき、研磨材料に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対する、SOの含有量(重量部)を算出した。これを表2の「SO ※2(重量部)」欄に示す。
(iii)比表面積の測定
Zr原料(ジルコニウム化合物)及び研磨材料の各々について、以下の条件により比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
使用機:株式会社マウンテック社製 Macsorb Model HM−1220
雰囲気:窒素ガス(N
外部脱気装置の脱気条件:200℃−15分
比表面積測定装置本体の脱気条件:200℃−5分
(iv)粒度分布のシャープさ(D90/D10
研磨材について、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製:型番 マイクロトラックMT3300EX)により粒度分布測定を行った。
まず、研磨材料0.1gにイオン交換水60mLを加え、ガラス棒を用いて室温にてよく撹拌することにより、研磨材料の懸濁液を準備した。なお、超音波を用いた分散操作は行わなかった。この後、イオン交換水180mLを試料循環器に準備し、透過率が0.71〜0.94になるように上記懸濁液を滴下して、流速50%にて、超音波分散をさせずに循環させながら測定を行った。
(v)ジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウム)の示差熱・熱重量測定
ジルコニウム化合物に硫黄化合物が含まれる場合に研磨材料の研磨速度が低下する原因について調べるため、実施例1及び比較例1で用いたZr原料(水酸化ジルコニウム)の各々について、130℃で12時間乾燥させた後に、示差熱・熱重量分析(TG/DTA)を行った。
具体的には、以下の条件により示差熱・熱重量測定(TG/DTA)を行った。この測定結果を図1−1及び図1−2に示す。実施例1の「(3)乾燥工程」で得た混合物の乾燥物、及び、比較例1の「(3)乾燥工程」で得た混合物の乾燥物についても、同様に示差熱・熱重量測定(TG/DTA)を行った。この測定結果を図2−1及び図2−2に示す。
測定機:株式会社リガク製、示差熱・熱重量測定装置(型番:Thermo plus EVO2 TG8121)
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30〜1200℃
測定雰囲気:大気 200mL/分
リファレンス:Al
サンプル重量:10.0mg
試料容器:白金
(vi)ガラス板研磨試験
1、まず各研磨材料を用いて研磨材スラリーを作製した。
具体的には、研磨材料の濃度が5.0重量%になるように、研磨材料をイオン交換水に添加した。更に、25℃にて10分間撹拌することにより分散し、水分散系の研磨材スラリーを作製した。
2、次に、以下の条件により、各研磨材スラリーを用いてガラス板の研磨を行った。
使用ガラス板:ソーダライムガラス(松浪硝子工業株式会社製、サイズ36×36×1.3mm 比重2.5g/cm
研磨機:卓上型研磨機(株式会社エム・エー・ティ製、MAT BC−15C、研磨定盤径300mmφ)
研磨パッド:発泡ポリウレタンパッド(ニッタ・ハース株式会社製、MHN−15A、セリア含浸なし)
研磨圧力:101g/cm
定盤回転数:70rpm
研磨材組成物の供給量:100mL/min
研磨時間:60min
3、ガラス板研磨試験前後のガラス板の重量を電子天秤で測定した。重量減少量、ガラス板の面積、ガラス板の比重からガラス板の厚さ減少量を算出し、研磨速度(μm/min)を算出した。
3枚のガラス板を同時に研磨し、60分研磨後にガラス板と研磨材スラリーを交換した。この操作を3回行い、計9枚の研磨速度を平均した値を各実施例及び比較例における研磨速度の値とし、結果を表2にまとめて示した。
研磨速度が0.29μm/min以上であれば極めて良好(◎)、0.22μm/min以上0.29μm/min未満であれば良好(○)、0.22μm/min未満であれば不良(×)である。
Figure 2016155986
表2中、「SO ※1(重量部)」は、Zr原料(ジルコニウム化合物)のZrO換算量100重量部に対する、該Zr原料に含まれる硫黄化合物のSO換算量を意味し、「SO ※2(重量部)」は、研磨材料に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対する、該研磨材料に含まれる硫黄化合物のSO換算量を意味する。
以上の実施例及び比較例より、以下のことが確認された。
実施例1で用いたジルコニウム化合物と、比較例1で用いたジルコニウム化合物とでは、主に、硫黄化合物の含有量が相違する。
この相違の下、示差熱・熱重量測定を行った結果を対比すると、図1−1及び図1−2より、いずれのジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウム)も、重量変化を伴わない発熱ピークが観察された。このことは、発熱ピーク以下の温度では無定形の水酸化ジルコニウムが主成分であり、発熱ピークの温度を境に水酸化ジルコニウムが酸化ジルコニウムとして結晶化することを示すが、実施例1で用いた水酸化ジルコニウムの発熱ピークは416℃、比較例1で用いた水酸化ジルコニウムの発熱ピークは506℃であった。それゆえ、比較例1で用いた水酸化ジルコニウムは、実施例1で用いた水酸化ジルコニウムに比べて、結晶化に必要な温度がより高い、すなわち同じ焼成温度では結晶化しにくいことが分かった。
図2−1及び図2−2は、実施例1又は比較例1で用いたジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウム)と、ストロンチウム化合物(炭酸ストロンチウム)との混合物の乾燥物(混合粉と称す)について、示差熱・熱重量測定を行った結果を示すグラフである。図2より、いずれの混合粉も、重量変化を伴わない発熱ピークが観察され、そのピーク温度の差から、比較例1の混合粉は、実施例1の混合粉に比べて、結晶化に必要な温度がより高い、すなわち同じ焼成温度では結晶化しにくいことが分かった。
このように発熱ピークの温度が異なる原因は、比較例1で用いた水酸化ジルコニウムに含まれる硫黄化合物の量が、本発明で規定した範囲を超えるためであるが、このことは、最終的に得られる研磨材料の結晶性にも影響する。表2より、比較例1に係る研磨材料の斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークの半値幅とSSAは、実施例1に係る複合金属酸化物研磨材料に比べてそれぞれ増加している。これは、同じ950℃で焼成した場合の研磨材料の結晶性が低いことを示している。また、比較例1と実施例1とでは、研磨速度に著しい差が確認された。したがって、ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物の含有量が本発明で規定した範囲を超えると、研磨材料の結晶性が低下し、研磨速度が低下すると考えられる。
比較例3〜4に係る研磨材料は、実施例1に比べて焼成温度を増加させることで、結晶性を高めている。しかし、表2より、比較例3、4に係る研磨材料の斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークの半値幅とSSAは、実施例1に係る複合金属酸化物研磨材料のそれらと同程度であるにも関わらず、研磨速度が低い。これは、焼成温度を増加させることで研磨材料の結晶性は同程度となるものの、粒子が焼結しすぎたためと推測される。また、比較例2に係る研磨材料は、ジルコニウム化合物(水酸化ジルコニウム)を130℃で乾燥した後に、ストロンチウム化合物(炭酸ストロンチウム)との混合工程に供した点で、実施例1に係る研磨材料とは相違するが、表2より、この場合もジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物の量が本発明で規定した範囲を超えるため、研磨速度が充分なレベルに達しなかった。
以上のことから、本発明の製造方法は、セリウムフリーの研磨材料において良好な研磨速度を有する研磨材料を効率よく与えることができることが分かった。
参考例1
実施例1で作製した複合金属酸化物研磨材料を用い、研磨材スラリーAを作製した。
具体的には、研磨材20.0gをイオン交換水380.0gに分散させ、25℃にて10分間撹拌した。このようにして研磨材スラリーAを得た。
研磨材スラリーAについて、以下の条件によりゼータ電位の測定を行った。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図3に示す。また、研磨材スラリーAの等電点は6.2であった。ここで、等電点とは、研磨材スラリー中の砥粒(複合金属酸化物研磨材料)に帯びた電荷の代数和がゼロである点、すなわち砥粒に帯びた正電荷と負電荷とが等しくなる点をいい、その点における研磨材スラリーのpHで表すことができる。
(ゼータ電位の測定条件)
測定機:大塚電子株式会社製、ゼータ電位測定システム、型番ELSZ−1
pHタイトレーター:大塚電子株式会社製、型番ELS−PT
研磨材スラリー6gをイオン交換水を用いて5倍希釈し、ガラス棒で撹拌しながら超音波洗浄機にて1分間分散させた。このスラリー10ccにイオン交換水50ccを加え、超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して1分間分散処理を行った。このようにして得たゼータ電位測定用研磨材スラリー30ccをゼータ電位測定機に充填した。
なお、後述するコロイダルシリカを用いた研磨材スラリーCは、研磨材スラリーC60ccを超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して1分間分散処理を行った。このようにして得たゼータ電位測定用研磨材スラリー30ccをゼータ電位測定機に充填した。
なお、研磨材スラリーのpH調整のために、必要に応じて以下のpH調整剤を用いた。
酸性側pH調整溶液:塩酸水溶液、0.1mol/L
アルカリ性側pH調整溶液:水酸化ナトリウム水溶液、1mol/L
(1)第1研磨工程
上述のようにして得た研磨材スラリーAのゼータ電位が表3に示す値になるよう、スラリーのpHを調整した。このスラリーの存在下で、実施例1の「(vi)ガラス板研磨試験」と同様の研磨条件にてガラス板の研磨を行い、研磨速度を測定した。この工程での研磨速度及び研磨材スラリーAのpH値を表3に示す。更に、第1研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、以下の方法に従って評価した。結果を表3に示す。
(2)第2研磨工程
上記第1研磨工程の後に研磨材スラリーAを取り出し、新しい研磨材スラリーAに切り替え、そのゼータ電位が表3に示す値になるようにスラリーのpHを調整した後、このスラリーの存在下で、第1研磨工程と同じ研磨条件にてガラス基板の研磨を行い、研磨速度を測定した。この工程での研磨速度及び研磨材スラリーAのpH値を表3に示す。更に、第2研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、以下の方法に従って評価した。結果を表3に示す。
(ガラス基板の表面平滑性の測定)
各研磨工程後のガラス板について、以下の条件により表面粗さの測定を行った。
測定機:ZYGO株式会社製、白色干渉顕微鏡、型番NewViewTM7100
水平解像度:<0.1nm
対物レンズ:50倍
フィルター:なし
測定視野サイズ:X=186μm、Y=139μm
評価方法:研磨後のガラス基板に対し、中心点、及び、中心点から半径6mm、12mmの同心円とガラス基板の対角線の交点の計9点のRaを測定し、平均値を算出した。この操作を上記の研磨速度の測定に用いた計9枚のガラス基板に対して行い、各ガラス基板のRaの平均値を用いて平均することにより、表面粗さを評価した。
比較参考例1
(1)第1研磨工程
研磨材としてガラス研磨用酸化セリウム質研磨材(昭和電工株式会社製、SHOROX(R)A−10、酸化セリウム含有量:60重量%、等電点:10.4)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして研磨材スラリーBを作製した。この研磨材スラリーBのゼータ電位が表3に示す値になるよう、スラリーのpHを調整した後、このスラリーの存在下で、実施例1の「(vi)ガラス板研磨試験」と同様の研磨条件にてガラス板の研磨を行い、研磨速度を測定した。この工程での研磨速度及び研磨材スラリーBのpH値を表3に示す。更に、第1研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、参考例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
(2)第2研磨工程
上記第1研磨工程で用いた研磨材スラリーBを研磨機から取り出し、研磨機の洗浄を行った。
別途、コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社、クォートロン(R)PL−7、等電点:5.8)52.2gをイオン交換水347.8gに分散させ、25℃にて10分間撹拌した。これを研磨材スラリーCとして用意した。この別途用意しておいた研磨材スラリーCのゼータ電位が表3に示す値になるようにpHを調整した後、この研磨材スラリーCの存在下で第1研磨工程と同じ研磨条件にてガラス基板の研磨を行った。この工程での研磨材スラリーCのpH値を表3に示す。また、第2研磨工程での研磨速度、及び、第2研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、参考例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
なお、研磨材スラリーB、Cそれぞれの、pHに対するゼータ電位の関係を図3に示す。
Figure 2016155986
上記参考例1及び比較参考例1より以下のことが確認された。
参考例1と比較参考例1とでは、最終的に得られた基板(第2研磨工程後の基板)の表面粗さはほぼ同等であるにも関わらず、参考例1では、比較参考例1に比べて研磨速度が著しく向上されている。したがって、上述した好ましい研磨方法(すなわち、本発明の複合金属酸化物研磨材料を含むスラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、該研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する研磨方法)は、セリウムフリーの研磨材料において高い研磨速度と優れた表面平滑性とを実現できることが分かった。また、比較参考例1においては、第1研磨工程では酸化セリウム系の研磨材を、第2研磨工程ではコロイダルシリカを使用しているため、研磨機の洗浄作業等を行う必要があったが、参考例1では第1研磨工程と第2研磨工程とで同種類の研磨材スラリーAを使用しているため、研磨機の洗浄作業等が不要となり、作業面、設備面で非常に有利であった。
表には示していないものの、参考例1の第2研磨工程で、新しい研磨材スラリーAに切り替えず、第1研磨工程で使用した研磨材スラリーAをそのまま連続使用した場合でも、研磨速度及び得られる基板の表面平滑性に殆ど影響を与えないことを確認している。

Claims (5)

  1. ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程と、
    該混合工程により得られた混合物を焼成する焼成工程とを含む複合金属酸化物研磨材料の製造方法であって、
    該ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物のSO換算量は、該ジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、2.0重量部以下である
    ことを特徴とする複合金属酸化物研磨材料の製造方法。
  2. 前記混合工程におけるストロンチウム化合物は、炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1に記載の複合金属酸化物研磨材料の製造方法。
  3. 前記混合工程におけるジルコニウム化合物は、炭酸ジルコニウム及び水酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合金属酸化物研磨材料の製造方法。
  4. 前記焼成工程における焼成温度は、800℃を超えて1500℃以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合金属酸化物研磨材料の製造方法。
  5. 複合金属酸化物研磨材料であって、
    該複合金属酸化物研磨材料に含まれる硫黄化合物のSO換算量が、該複合金属酸化物研磨材料に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、1.2重量部以下である
    ことを特徴とする複合金属酸化物研磨材料。
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