JP4955113B1 - 砥粒評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セリア代替砥粒の開発にあたり、ガラス研磨における砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法を提供する。更にこの評価方法を用い、低い研磨荷重であっても、高い研磨レートを有するセリアを含まないガラス用研磨材を提供する。
【解決手段】ガラス材の表面に砥粒を含むスラリーを供給し、研磨パッドに荷重を印加して前記ガラス材の表面を摺動させて研磨するガラス研磨における、前記砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法であって、研磨時の研磨荷重を等間隔に表したx軸と、研磨時の研磨レートを等間隔に表したy軸とを有するグラフにおいて、複数の研磨荷重に対する研磨レートの値が近似的に直線となる領域の該直線が前記y軸と交わるy切片の値により、砥粒の化学的な研磨作用を評価することを特徴とする砥粒評価方法。
【選択図】図1

Description

本発明は砥粒評価方法およびこの砥粒評価方法を用いて得られるガラス用研磨材、特にレアメタルの1つである酸化セリウム(CeO2)(以下、「セリア」ともいう)を含まないガラス用研磨材に関する。
セリアは、化学的な研磨作用を強く持つことにより、大きな研磨レートと、研磨後のガラス表面の良好な表面平滑性を実現していると言われている。
このため、セリアはガラスの研磨に必須の化合物であるが、我が国では産出されず、中国などの外国からほぼ全量輸入している。その輸入量は2007年度で約10400トンにのぼり、その半分の5550トンがガラス用研磨材として使用された。
セリアがガラスの研磨に使用される以前にはベンガラと呼ばれるα−Fe23がガラス用研磨材の主流であった。1960年頃、研磨レートならびに研磨後のガラス表面の平滑性に優れるセリアがガラスの研磨に使われて以来、一気にベンガラにとって代わった。このセリアがガラス研磨に優れている理由として種々の説があるが、これまでの説の中ではセリアが研磨中にガラスと結合することで研磨レートが高くなるという説が最も有力である。実際、研磨後のガラス表面には結合に起因すると思われるセリアの残留があり、これが他のガラス用研磨砥粒では見られないセリアの有する化学的研磨作用といわれる品質上の特徴となっている。
このように、ガラス研磨に必須のセリアであるが、セリアは我が国では産出されないレアメタルの1つである。また、高精度に表面研磨することが要求される、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、アクティブマトリックス型LCD、太陽電池等のディスプレイ用ガラス基板、液晶TV用カラーフィルター、時計、電卓、カメラ用LCD、LSIフォトマスク用ガラス基板、あるいは光学用レンズ等のガラス基板や光学用レンズ等の用途が増加するにつれ、ガラス用研磨材の使用量も増加している。このような環境の中で工業的に安価に使用できるセリア代替砥粒への要求は日増しに高まっている。
セリア代替砥粒を開発するに当たり、化学的な研磨作用の強い砥粒の発見、もしくは、砥粒の化学的な研磨作用の向上を図るために、砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法の開発が重要となる。
従来、ガラス研磨に使用される酸化物砥粒の1つとして酸化ジルコニウム(以下、「ジルコニア」ともいう)砥粒がある。また、焼結された多結晶ジルコニアを少なくとも約60重量%以上含む研磨砥粒が知られている(特許文献1)。ここで焼結された多結晶ジルコニアは特許文献1の明細書各実施例にも記載されているように、安定化ジルコニアであり、この安定化ジルコニアを研磨砥粒製造の原料に用いようとする技術である。
安定化ジルコニアは、ジルコニアにイットリウム、カルシウム、マグネシウム、ハフニウムなどを4〜15%程度添加した立方晶系の安定化ジルコニアであり、硬度の高い砥粒である。
一方、工業的に安価なジルコニアとして天然のバデライト石を粉砕して砥粒として用いる場合がある。しかし、このバデライト石を粉砕して得られる砥粒は、単斜晶系のジルコニアであり、研磨レートに劣るものであった。
また、カルシウム化合物をカルシウム換算で0.01〜0.9重量%含有する酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材が知られている(特許文献2)。
しかしながら、立方晶系の安定化ジルコニア砥粒は硬度が高いため、機械的作用が強く、高荷重、高回転数などの高負荷ではガラスの除去効率として表される研磨レートが極めて高くなる一方、研磨面の平滑性に劣る。このため、研磨レートを高くすると共に平滑性も向上させようとすると、研磨時の荷重は必然的に低荷重にならざるを得ず、結果として立方晶系ジルコニア砥粒が有する高硬度による研磨レートの上昇という機能が損なわれるという問題がある。
また、単斜晶系ジルコニア砥粒は研磨レートに劣るという問題がある。
特開2005−518474号 特開平6−330025号
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、セリア代替砥粒の開発にあたり、ガラス研磨における砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法の提供を目的とする。
また、この砥粒評価方法を用いることで、従来機械的作用に基づく研磨のみであったジルコニア研磨材に、セリアの有する化学的研磨作用を付与することで、低い研磨荷重であっても、高い研磨レートを有するセリアを含まないガラス用研磨材の提供を目的とする。
本発明の砥粒評価方法は、ガラス材の表面に砥粒を含むスラリーを供給し、研磨パッドに荷重を印加してガラス材の表面を摺動させて研磨するガラス研磨における、砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法であって、
研磨時の研磨荷重を等間隔に表したx軸と、研磨時の研磨レートを等間隔に表したy軸とを有するグラフにおいて、複数の研磨荷重に対する研磨レートの値が近似的に直線となる領域の該直線がy軸と交わるy切片の値により、砥粒の化学的な研磨作用を評価することを特徴とする。
また、上記近似的に直線となる領域の該直線の傾きは、研磨荷重0から研磨レートが上昇して、研磨レート上昇率が一定となる領域の傾きであることを特徴とする。
本発明のガラス研磨材は、セリアを含まないジルコニウム系砥粒からなり、このジルコニウム系砥粒は、単斜晶系ジルコニアと、金属原子の酸化物に塩酸を反応させたときの下記化学反応式(1)における△Gが負の値を示す金属原子の化合物とを焼成して得られ、少なくとも単斜晶系ジルコニアを砥粒中に含み、上記砥粒評価方法により評価された上記y切片の値が正の値を示すことを特徴とする。
化学式(1)において、Mは1価、2価または3価の陽イオン原子価状態を取り得る金属原子を表し、Mが3価の場合はx=2、y=3であり、Mが2価の場合はx=1、y=1であり、Mが1価の場合はx=2、y=1である。
上記ジルコニウム系砥粒は、下記化学式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする。
化学式(2)において、Mは1価、2価または3価の陽イオン原子価状態を取り得る金属原子を表し、Mが3価の場合はx’=2/3、Mが2価の場合はx’=1、Mが1価の場合はx’=2である。
特に、上記化学式(2)で表される化合物がジルコン酸カルシウムであることを特徴とする。
本発明に使用されるジルコニウム系砥粒の圧縮強度が100MPa以上250MPa未満であることを特徴とする。
特に、本発明のガラス研磨材により研磨されるガラスがガラス製磁気ディスクまたは液晶表示装置に使用されるガラス基板であることを特徴とする。
本発明の砥粒評価方法により、ガラス研磨における砥粒の化学的な研磨作用を評価することができる。
本発明のガラス研磨材は、セリアを含まないジルコニウム系砥粒からなり、このジルコニウム系砥粒は、単斜晶系ジルコニアと、特定の金属成分とを含む焼結体であり、上記砥粒評価方法により評価されたy切片の値が正の値を示すので、従来単斜晶系ジルコニアでは得られなかった化学反応性が付与され、低荷重でも高荷重なみの研磨レートが得られ、かつ低荷重であるために得られる研磨精度が良好で研磨キズの少ない優れた研磨特性を得られる。
研磨実験結果を示す図である。 図1の結果より研磨レートの解析結果を示す図である。 酸化物陽イオンの価数ごとのΔGをプロットした図である。 カルシウム含有量を変えたジルコニアのy軸切片の値を示す図である。
セリア代替砥粒に対する要求レベルは高く、主な点だけでも次の5項目を満足しなければならない。セリアはこれらの要求事項を概ね総合的に満足している化合物である。
(1)砥粒の安全性
(2)工業的に入手が容易かどうかを含めて、砥粒のコスト
(3)研磨レートと寿命を向上させることができる研磨の生産性
(4)研磨面における平滑性にすぐれ、キズがないなどの研磨の品質
(5)砥粒がガラス表面から完全に除去されるかどうかで判定される砥粒の洗浄性
上記特性を満足させるために、セリアの有する砥粒としての化学的研磨作用を評価し、化学的研磨作用の強い砥粒の開発、または、化学的研磨作用の向上を図る必要がある。
以下の条件で研磨実験を行なった。
(1)実験に用いた砥粒(平均粒径:0.7〜1.4μm)
(a)ガラス研磨材として使用されているセリア砥粒:三井金属工業社製、Mirek E21[図1中、CeO2で表す。]
(b)機械的作用が強いとされる単斜晶系ジルコニア砥粒:吉岡研磨材社製、オキシコン[図1中、ZrO2で表す。]
(c)セリア以前のガラス用研磨材として使用されたベンガラ砥粒:高純度化学社製、α−Fe23(試薬)[図1中、α−Fe23で表す。]
(d)光触媒としての特性も持つ酸化チタン砥粒:高純度化学社製、TiO2(アナターゼ型)(試薬)[図1中、TiO2で表す。]
上記砥粒は、(a)セリア砥粒、(c)ベンガラ砥粒、および(d)酸化チタン砥粒が化学的研磨作用を有する砥粒とされているものであり、(b)単斜晶系ジルコニア砥粒は機械的研磨作用が主であるとされている砥粒である。
(2)実験条件
(a)使用装置:オスカー式片面揺動研磨機;ラップマスター社製、LGP−15S
(b)上定盤回転数:100rpm
(c)下定盤回転数:100rpm
(d)スラリー流量:500mL/min.
(e)使用パッド:発泡ポリウレタンパッド(ニッタハース社製、MH−15A 溝なし)
(f)スラリー濃度:砥粒として10重量%
(g)研磨対象ガラス:ソーダライムガラス(旭硝子社製、AS φ1inch)
(h)研磨荷重:25、50、75、100、200、300、500、700、900gf/cm2、但し、25、50、75gf/cm2はセリア砥粒および単斜晶系ジルコニア砥粒について行なった。
なお、研磨実験の前に研磨パッドの表面をドレッシングし、研磨は1時間行なった後、研磨レートは最後の15分間の研磨量を15で割った値とした(1分間あたりの研磨量(μm))
実験結果を図1に示す。また、図2は、図1の結果より研磨レートの解析結果を示す図である。
図2に示すように、(a)セリア砥粒、(c)ベンガラ砥粒、(d)酸化チタン砥粒は、研磨荷重がおよそ300gf/cm2付近までは研磨レートが急激に上昇し、それ以上の研磨荷重では研磨レート上昇率が一定となる。すなわちおよそ300gf/cm2以上の研磨荷重領域において、研磨時の研磨荷重を等間隔に表したx軸と、研磨時の研磨レートを等間隔に表したy軸とを有するグラフにおいて、複数の研磨荷重に対する研磨レートの値が近似的に直線となる。
これに対して、(b)単斜晶系ジルコニア砥粒は、全研磨荷重領域において、研磨レート上昇率が一定であり、そのグラフは原点付近を通る直線となる。
このような現象は下記のように考えることができる。研磨荷重が0から増大するにつれて、砥粒の化学的研磨作用が急激に出現し研磨レートを増大させるもととなる。これは化学的研磨作用を出現するためには何らかのエネルギー(活性化エネルギー)が必要で機械的な圧力がそれに相当する。その化学的研磨作用は研磨荷重の上昇に比例するのではなく、ある研磨荷重(300gf/cm2付近)で飽和する。その研磨荷重以降は、一定の化学的研磨作用と研磨荷重に比例する機械的作用の2つの作用で研磨レートが増大する。
化学的研磨作用を考慮しない、研磨レートを表す式としてPrestonの式がある。すなわち、研磨レートをδd、研磨荷重をp、相対速度をvとすると、δd=k・p・v で表される。ここでkは比例定数であり、上記実験では相対速度が一定となるので、研磨レートは原点を通る直線のグラフとなる。
しかし、研磨荷重が300gf/cm2付近以上での化学的研磨作用を考慮した研磨レートを表す式としては、上記実験結果から、δd=k・p・v+β で表わされる。
このような考えに立脚すると、βに対応する、y切片(形式上の単位はμm/min.)は化学的作用の程度を示す指標と考えることができる。すなわち、研磨時の研磨荷重を等間隔に表したx軸と、研磨時の研磨レートを等間隔に表したy軸とを有するグラフにおいて、複数の研磨荷重に対する研磨レートの値が近似的に直線となる領域の該直線がy軸と交わるy切片の値により、砥粒の化学的な研磨作用を評価することができる。特に、近似的に直線となる領域の該直線の傾きは、研磨荷重0から研磨レートが上昇して、研磨レート上昇率が一定となる領域の傾きであることが重要である。
図2に示す、300gf/cm2付近以上の直線の傾き、相関係数、y切片、およびこのy切片を指標としてまとめて表1に示す。表1より、y切片が正の値を示す研磨材は、化学的研磨作用を有する研磨材ということができ、y切片を化学的研磨作用の指標とできる。また、その値が大きい砥粒は化学的研磨作用が大きいといえる。
上記化学的研磨作用の指標であるy切片の値をセリア砥粒の値に近づければ、セリア代替研磨材が得られる。セリア砥粒の化学的性質を研究した結果、セリア砥粒の塩基性に着目し、既存砥粒である単斜晶系ジルコニア砥粒に適量の塩基性を示す金属原子、例えばカルシウムを含有させることで、y切片の値が正の値を示し、研磨レートならびに研磨後のガラス表面の平滑性が現行のセリアに匹敵する砥粒が得られた。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明のガラス研磨材はジルコニウム系砥粒からなるセリア代替砥粒である。本発明においてセリアを含まないとは、意図的にセリアを含まないことを意味しており、不可避的に含まれる不純物としてのセリアを除く意味ではない。
本発明の原料として使用される単斜晶系ジルコニアは、工業用非安定化ジルコニアを主成分とする。工業用非安定化ジルコニアとは、単斜晶系ジルコニアとして市販品されている安定化されていない製品をいう。このような製品としては、バデライト石などの天然物を粉砕した粉体が挙げられる。工業用非安定化ジルコニアとしては、ジルコニアと化学的性質が類似しているハフニアが含まれている場合であっても使用できる。また、ZrO2としての純度を上げた単斜晶系ジルコニア単体の粉体も使用できる。
ガラス表面の研磨理論において、ガラスの研磨は、砥粒の機械的な除去作用と砥粒の化学的除去の複合作用により行なわれることが知られている。前者の機械的な除去作用は、ガラスだけでなくセラミックスや金属のような材料に対しても適用される作用であり、一般的には微小切削あるいは微小流動で表現される現象である。
これに比べて後者の化学的な作用を説明するための考えの1つとして、ガラスの最表面が研磨中に水によって水和され、その水和された層が比較的柔らかいので研磨が進行するという考えがある。本発明者等は、ガラス表面の水和は砥粒の塩基性に関係し、その塩基性が研磨を進行させるという点に着目した。
ガラス形成酸化物は酸性であり、ガラス中間酸化物は両性、ガラス網目修飾酸化物は塩基性であるので、ガラスの研磨を酸塩基の反応とみなせば、砥粒として塩基性が適していると考えることができる。その塩基性の程度は、例えば、強塩基の場合は、ガラスを腐食させる効果が大きいので好ましくない。このため、セリアのような弱塩基性を有する砥粒が好ましいと考えられる。
酸化物の塩基性の尺度として、以下の化学反応式(1)に示す、金属酸化物と塩酸(HCl)との反応による自由エネルギー変化(△G)を挙げることができる。
化学反応式(1)において、Mは1価、2価または3価の陽イオン原子価状態を取り得る金属原子を表し、Mが3価の場合はx=2、y=3であり、Mが2価の場合はx=1、y=1であり、Mが1価の場合はx=2、y=1である。
酸化物陽イオンの価数ごとに、そのΔGをプロットした図を図3に示す。
図3において、ΔGの負の値が大きいほど塩基性が大であることを示す。この図からSiO2は酸性、CeO2はやや塩基性、Fe23もCeO2ほどではないが塩基性、ZrO2やTiO2はその中間であることがわかる。CaO、BaOは、より塩基性を示し、K2OやNa2Oは更に強い塩基性を示している。そのため、ジルコニアに塩基性の他元素を含有させることで砥粒の塩基性を増大させることができる。
単斜晶系ジルコニアと反応して、砥粒に塩基性を付与できる酸化物としては、CaO、MnO、FeO、NiO、ZnO、SnO、MgO、BaO、K2O、Na2O、Fe23などを例示できる。
二元系の酸化物の塩基度を定量的に評価する尺度として、以下に示すガラスの光学的塩基度を評価する経験式:Duffy&Ingramの式(電気陰性度からの評価)がある。

塩基度=1−Σ((Zi*Ri/2)*(1−1/γi))

上記式において、γi=1.36*(χi−0.26)(χi i種陽イオンの電気陰性度)であり、Ziはi種陽イオンの原子価であり、RiはMxyとしたときのx/yを表す。
Duffy&Ingramの式を用いて、ジルコニアに他の金属酸化物の種類および配合量を変化させた場合の塩基度の計算結果を表2に示す。
表2に示すように、Duffy&Ingramの式から、電気陰性度の小さい元素を多量に含有させれば塩基度が増すことがわかる。表2に示す金属原子の中で、Y(イットリウム)はレアメタルの一つであるため高価であり、また工業的に入手が困難な場合もある。Ba(バリウム)はジルコニアとの化合物で毒物のあるジルコン酸バリウムを生成する可能性がある。
単斜晶系ジルコニアと反応して、安全でかつ高い塩基度が得られ、工業的に入手が容易なカルシウム化合物が好ましい。
本発明のガラス研磨材は、少なくとも単斜晶系ジルコニアを砥粒中に含み、単斜晶系ジルコニアと反応して上記化学式(2)で表される化合物を含むジルコニウム系砥粒である。これらのジルコニウム系砥粒の化学的作用を上記y切片の値で評価した。y切片の値は上記評価方法により求めた。結果を図4、表3に示す。なお、表3には、比較として上記に記した、セリア研磨材、単斜晶系ジルコニア研磨材、ベンガラ研磨材、アルミナ研磨材のy切片の値を示す。
表3および図4に示すように、ガラス研磨材としてセリアの化学的反応性が最も高く、Ca15%含有ジルコニアの化学反応性はセリアの約52%である。図4に示すように、化学反応性指標はCa量に略直線的に比例する。この結果は、Caを多く含有させることが研磨における化学的作用を増大させ、ひいては研磨レートを向上させることが分かる。
なお、単斜晶系ジルコニアおよびアルミナ砥粒のy軸切片の値が0にならないのは、不可避的不純物のためと考えられる。上記研磨条件において、y切片の値は0.2以上あれば化学的研磨作用を有するということができる。
単斜晶系ジルコニアにカルシウムを含有させることで研磨レートの向上を図った。また、砥粒合成時の焼成温度を種々変化させることで砥粒圧縮強度を変化させ研磨の機械的な作用についても最適な砥粒物性を得るために、カルシウム含有量を元素換算で8〜50%に、砥粒合成時の焼成温度を1000℃と1250℃とに設定して砥粒を製造した。
砥粒の製造条件は以下の通りである。
(1)市販の単斜晶系ジルコニア粉末(ZrO2)と炭酸カルシウム粉末(CaCO3)を準備する。
(2)目的とする組成に合うように各々秤量する。
(3)秤量した2種類の粉末をジルコニアボールミルで湿式混合する。使用するボールの径は、10mmと5mmの二種類とする。
(4)混合した粉末をるつぼに入れて、電気炉にて焼成する。焼成温度は1000℃と1250℃に設定し、得られた合成砥粒の特性を評価する。焼成時間は、焼成温度で2時間維持を原則とする。
(5)合成砥粒をボールミルで粉砕し、平均粒径1μ前後の砥粒粉末を得る。
得られた砥粒を用い、オスカー式片面揺動研磨機にてガラスを研磨し、(1)研磨レート(μm/min.)、(2)ガラス研磨後の平滑度Ra(nm)、(3)砥粒の圧縮強度(MPa)を測定した。結果を表4に示す。なお、平滑度Ra(nm)は原子間力顕微鏡(AFM)により、砥粒の圧縮強度(MPa)は島津製作所製微小圧縮試験機MCT−W211により砥粒の二次粒子を砕く際の力を測定した。測定結果を表4に示す。
また、上記方法で製造したカルシウム含有ジルコニウム砥粒のXRD測定結果を表4に示す。なお、XRD測定は、理学電機(株)社製 RINT2500を用いて測定し、XRD結果の欄のA/Bにおいて、BはAよりも多量に含むことを表す。
表4から、Caを30%含有させ、1000℃で焼成した場合に最も研磨レートが高いのがわかる。塩基性の点から言えば、Ca50%含有の砥粒が最も塩基度が高くなると思われるが、圧縮強度が下がることで機械的な作用が低下したものと推定される。また、焼成温度の影響については、概ね高い方が研磨レートは大きい。圧縮強度が高いことによる機械的な作用の増大と考えることができる。その分、平滑度が悪化する。
カルシウムの含有量は元素換算で5%以上〜50%未満が好ましく、より好ましくは8〜45%であり、さらにより好ましくは20〜40%である。
表4に示すように、得られた砥粒のXRD測定によれば、単斜晶系を示すジルコニアが存在し、カルシウムの含有量が増えると、単斜晶系を示すジルコニア中に化学式(2)で表される化合物とが存在するようになり、このよう砥粒がガラス研磨材として良好であった。
また、単斜晶系ジルコニアと金属化合物との焼結反応が進み、単斜晶系ジルコニアが立方晶系ジルコニアに相転移するとガラスの表面平滑度が悪くなる。
このため、砥粒製造時の焼成条件は立方晶系ジルコニアが生成しない条件が好ましく、焼成温度としては、600〜1600℃、好ましくは600℃以上、1250℃未満である。
市販品として入手できるジルコニア粉末は、XRD測定の結果、単斜晶であることが認められた。このため、工業用非安定化ジルコニアは単斜晶系であることがわかる。すなわち、本発明に使用できるジルコニウム系砥粒は、単斜晶系のジルコニア内に上記化学式(2)で表される化合物を含むことが好ましく、セリア系砥粒と同等の研磨性能を発揮できる。
表4に示すように、立方晶系ジルコニアの場合に圧縮強度が250MPa以上となる。この圧縮強度は、機械的作用による研磨の寄与と考えられるため、圧縮強度が高くなると研磨レートは高まるが、ガラス表面の平滑度が低下する。一方、圧縮強度が低下すると研磨レートが低下する。セリア砥粒の圧縮強度が100MPaであることを考慮すると、セリア代替砥粒としては、圧縮強度が100MPa以上、250MPa未満であることが好ましい。より好ましくは100MPa〜200MPaである。
本発明に使用できるジルコニウム系砥粒は、200〜300nmの一次粒子が集合して二次粒子を形成している。この二次粒子の粒子径は粒子径が大きくなると研磨レートが向上するが、一方ガラス表面の表面粗さが低下する。このため、砥粒の平均粒子径は0.1μm〜10μmであることが好ましい。
本発明のガラス研磨材は、上記ジルコニウム系砥粒を公知の方法でスラリー化してガラス表面の研磨に用いることができる。スラリー媒体として純水を用い、スラリー濃度を10重量%程度とする。この濃度は磁気ディスク基板用ガラスならびに液晶基板用ガラスの研磨の生産条件に準じた濃度である。また、スラリーには分散剤を配合することで研磨レートを向上させることができる。
本発明のガラス研磨材は、セリア系研磨材の代替として、磁気ディスク基板用ガラスならびに液晶基板用ガラスの研磨材として使用できる。
実施例1
単斜晶系酸化ジルコニウム(吉岡研磨材 オキシコン)に金属原子換算で、15%のカルシウムを含む複合酸化物を以下の方法で合成した。
酸化ジルコニウム粉末に水酸化カルシウムを原料とするカルシウムを金属原子換算で15%含む混合物をボールミルで湿式混合する。この混合物を乾燥させた後、1000℃で2時間焼成してカルシウムを酸化ジルコニウムに固溶させる。
得られたカルシウム含有酸化ジルコニウムを粉砕して平均二次粒子径をレーザー回析式粒度分析測定装置(島津製作所製SALD−2200)で測定した。また、圧縮強度を島津製作所製微小圧縮試験機MCTーW211で測定した。
このカルシウム含有酸化ジルコニウムを純水を媒体にして重量換算で10%含むスラリーを調整した。
得られたスラリーを用いて、研磨レートを以下の方法で測定した。
測定は、オスカー式片面揺動研磨機(ラップマスター社製、LGP−15S)を用いて測定した。研磨パッドは発泡ポリウレタンパッド(ニッタハース MH−15A 溝なし)を用いた。研磨荷重は100gf/cm2、回転数は100rpmであり、上記スラリーを500mL/min.の割合で研磨パッドに注いだ。
研磨対象ガラスは直径2インチの磁気ディスク用ガラス基板である。なお、研磨テストの前に研磨パッドの表面をドレッシングし、研磨は1時間行なった後、研磨レートは最後の15分間の研磨量を15で割った値とした(1分間あたりの研磨量(μm))。ガラス表面の平滑度Ra(nm)は原子間力顕微鏡(島津製作所製SPM9600)により測定した。結果を表5に示す。
実施例2〜3、比較例1〜3
カルシウムを金属原子換算で8%(実施例2)、同30%(実施例3)とする以外は実施例1と同一の方法で砥粒を作製し、実施例1と同様に評価した。また、比較例1は、実施例3と同じ配合で、焼成温度を1250℃とする以外は実施例1と同一の方法で砥粒を作製し、実施例1と同様に評価した。さらに比較例2は市販の単斜晶系ジルコニア砥粒であり、比較例3は市販のセリア砥粒である。評価結果を表5に示す。なお、結晶系の欄のA/Bにおいて、BはAよりも多量に含むことを表す。
本発明のガラス研磨材は、研磨レートおよび研磨後のガラス表面の平滑性がレアメタルの1つであるセリア系ガラス研磨材と同等であるので、セリア代替研磨材として利用することができる。

Claims (2)

  1. ガラス材の表面に砥粒を含むスラリーを供給し、研磨パッドに荷重を印加して前記ガラス材の表面を摺動させて研磨するガラス研磨における、前記砥粒の化学的な研磨作用を評価する砥粒評価方法であって、
    研磨時の研磨荷重を等間隔に表したx軸と、研磨時の研磨レートを等間隔に表したy軸とを有するグラフにおいて、複数の研磨荷重に対する研磨レートの値が近似的に直線となる領域の該直線が前記y軸と交わるy切片の値により、砥粒の化学的な研磨作用を評価することを特徴とする砥粒評価方法。
  2. 前記近似的に直線となる領域の該直線の傾きは、前記研磨荷重0から前記研磨レートが上昇して、研磨レート上昇率が一定となる領域の傾きであることを特徴とする請求項1記載の砥粒評価方法。
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