JP3694478B2 - セリウム系研磨材及びその製造方法 - Google Patents

セリウム系研磨材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はガラス等の研磨に用いられるセリウム系研磨材及びその製造方法に関し、更に詳しくは、ガラス製ハードディスク基板や液晶パネル用ガラス基板等の高精度ガラス基板の仕上げ研磨に用いられる酸化セリウムを主成分とするセリウム系研磨材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラス材料は様々な用途に用いられており、表面研磨が必要とされることがある。例えば光学レンズ用ガラス基板や光学レンズにおいては鏡面となるような表面精度が要求される。特に、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、薄膜トランジスタ(TFT)型LCDやねじれネマティック(TN)型LCDなどの液晶用ガラス基板、液晶TV用カラーフィルター、LSIフォトマスク用ガラス基板等においては平坦性や小さい表面粗さ及び無欠陥が要求されるため、より高精度な表面研磨が求められている。
【0003】
液晶用ガラス基板においては後工程の熱処理温度が高いために高い耐熱性が求められ、また軽量化のために薄型化が進んでいる。磁気ディスク用ガラス基板においても軽量化に伴う薄型化や高回転時のディスクのうねりに耐えうる機械特性、特に剛性が高いことなどの要求が年々厳しくなっている。
【0004】
これらの薄型化や機械特性を満足するためにガラスの化学組成や製法が改良され、ガラス基板としてはアルミノシリケートを主成分とするものが液晶用や磁気ディスク用として用いられるようになってきた。また、磁気ディスク用ガラス基板としてはリチウムシリケートを主成分とする結晶化ガラス基板やクォーツ結晶が大半を占める結晶化ガラス基板も開発されてきている。これらの基板ガラスは非常に加工性が悪く、従来の研磨材では加工速度が低く生産性が悪化するため、高精度な表面研磨性能と共に高い研磨速度が要求されている。
【0005】
ガラス基板の表面研磨に用いられる研磨材としては、酸化鉄や酸化ジルコニウム、或いは二酸化珪素に比べて研磨速度が数倍優れているという理由から、希土類酸化物、特に酸化セリウムを主成分とする研磨材が用いられている。これらの研磨材は、砥粒を水等の液体に分散させて使用するのが一般的であるが、従来の酸化セリウム系研磨材では、上記のような硬質のガラス基板に対して研磨速度が遅いという問題点を有していた。
【0006】
酸化セリウム系研磨材の研磨機構については充分解明されているわけではないが、酸化セリウムの持つガラスに対するケミカル効果と酸化セリウム粒子そのものの硬さに起因するメカニカル効果の複合効果により研磨加工が進行することは、現象論的ではあるが確認されている。しかし、アルミノシリケートを主成分とするガラス基板やリチウムシリケートを主成分とする結晶化ガラス基板は、耐薬品性に優れているため研磨材の持つケミカル効果が充分発揮されない。
【0007】
また、これらのガラス基板(被加工物)が硬質であるために研磨材粒子の破砕が容易に起こり、ガラスに対するメカニカル効果が充分に維持できずに加工速度がすぐに低下してしまう。
【0008】
メカニカル効果を長期にわたって維持するために研磨材組成物中にアルミナやジルコニアなどの被加工物以上の硬度を有する粉末粒子を添加することが考えられるが、酸化セリウム粒子の濃度が相対的に低下することになり、そのケミカル効果が不足してしまう。また、硬度を有する粉末粒子によりガラス表面(被加工物表面)にピットやキズなどの欠陥が発生してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、硬質で、速い研磨速度が得にくいガラスに対し、当初の研磨速度を長期にわたって維持することができ、かつ、ガラス等の被加工物にピット、キズなどの表面欠陥を生じさせず、研磨後の品質に優れ、安価でかつ良好な生産効率を有するセリウム系研磨材の製造方法及びセリウム系研磨材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は以下に関する。
【0011】
(1)フッ素を含むセリウム系研磨材であって、セリウム系研磨材が実質的に立方晶複合酸化希土および複合酸フッ化希土からなり、セリウム系研磨材中の全希土類元素含有量が酸化物換算で90質量%以上であり、全希土類元素中のセリウムの含有量が酸化物換算で55質量%以上であるセリウム系研磨材。
【0012】
(2)セリウム系研磨材を、CuKα線を用いたX線回折測定した際の酸化セリウムに起因するメインピークが、2θで28.2度以上であることを特徴とする(1)に記載のセリウム系研磨材。
【0013】
(3)セリウム系研磨材を、CuKα線を用いたX線回折測定した際の立方晶複合酸化希土のメインピークに対する酸フッ化希土のメインピークの強度比が、0.2〜1の範囲内であることを特徴とする(1)または(2)に記載のセリウム系研磨材。
【0014】
(4)一次粒子径が10nm〜50nmの範囲内であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載のセリウム系研磨材。
【0015】
(5)比表面積が2m2/g〜10m2/gの範囲内であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載のセリウム系研磨材。
【0016】
(6)希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得られた混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とする工程を含むことを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
【0017】
(7)希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得られた混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、これにセリウムを主成分とするフッ化希土類を添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
【0018】
(8)希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得た混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、該混合酸化希土に、前記混合軽希土類化合物を炭酸化して得た混合炭酸希土と、セリウムを主成分とするフッ化希土類とを添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
【0019】
(9)フッ化希土類が、セリウムを主成分とする混合軽希土類化合物のフッ化物であり、かつ、混合軽希土類化合物にフッ化物を添加後、400℃以下で熱処理して形成したフッ化希土類であることを特徴とする(7)または(8)に記載のセリウム系研磨材の製造方法。
【0020】
(10)セリウム系系研磨材のフッ素含有量が5〜10質量%の範囲内であることを特徴とする(6)〜(9)のいずれか一項に記載のセリウム系研磨材の製造方法。
【0021】
(11)500〜1,100℃での焼成を、大気中で焼成炉を用いて2時間〜36時間の範囲内で行うことを特徴とする(6)〜(10)の何れか一項に記載のセリウム系研磨剤の製造方法。
【0022】
(12)500〜1,100℃での焼成を、大気中で電気炉またはプッシャー炉を用いて、2時間〜36時間の範囲内で行うことを特徴とする(6)〜(11)の何れか一項に記載のセリウム系研磨剤の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のセリウム系研磨材は、フッ素を含むセリウム系研磨材であって、セリウム系研磨材が実質的に立方晶複合酸化希土および複合酸フッ化希土からなり、セリウム系研磨材中の全希土類元素含有量が酸化物換算で90質量%以上であり、全希土類元素中のセリウムの含有量が酸化物換算で55質量%以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明のセリウム系研磨材のフッ素含有量は、5〜10質量%の範囲内であるのが好ましい。フッ素含有量が、5質量%より低くなると研磨速度が遅くなり、10質量%より高くなるとフッ化希土が残り研磨速度を低下させたりスクラッチ発生の原因となる。
【0026】
立方晶複合酸化希土とは、貴土類元素をREで表すと、例えばRE23、で示される化合物であり、複合酸フッ化希土とは、例えばREOF・REO、で示される化合物である。本発明のセリウム系研磨材はこれらの化合物から実質的に構成されている必要がある。実質的にとは、結晶構造が基本的にこれらの化合物から構成されており、研磨材のX線回折測定により、これらの化合物以外の結晶ピークが、通常の測定では殆ど検出されないことを示す。なお、研磨材への添加剤等の貴土類元素化合物以外に起因する結晶ピークは上記の結晶ピークには含めない。
【0027】
また本発明では、セリウム系研磨材中の全希土類元素含有量を酸化物換算で90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、全希土類元素中のセリウムの含有量を酸化物換算で55質量%以上、より好ましくは60質量%以上とする。セリウム系研磨材中の全希土類元素含有量の測定はICP分析や蛍光X線分析といった機器分析により行う。この際の酸化物換算量の算出は、研磨材中の貴土類元素含有量を上記機器分析により測定に、その元素含有量を酸化物に換算することにより行う。
【0028】
本発明のセリウム系研磨材中の全希土類元素含有量が酸化物換算で90質量%より低くなったり、また、全希土類元素中のセリウムの含有量が酸化物換算で55質量%より低くなると、研磨に寄与しない粒子が多くなり、研磨速度が遅くなったり研磨中の被研磨材に対するスクラッチ発生の原因となる。
【0029】
本発明のセリウム系研磨材は、X線回折測定を行った場合の立方晶複合酸化希土に起因するメインピーク(2θ)が、28.2度以上であることが好ましい。通常の酸化セリウムに起因するX線回折のメインピークは27.8度に現れるが、本発明の該メインピークは高角度側に0.4度以上シフトした位置に現れる。この理由は、酸化セリウム以外の希土成分である酸化ランタン,酸化プラセオジム等が酸化セリウムに取り込まれて結晶間距離を変化させるためであり、このような回折ピークが得られるセリウム系研磨材を用いることにより,研磨速度が大きく研磨時に発生するスクラッチが少なくなるという効果が得られる。
【0030】
本発明のセリウム系研磨材のX線回折測定は、例えば、
Figure 0003694478
の条件で行うことができる。なお、本発明のX線回折でのピーク位置を厳密に規定するため、X線回折での測定条件として、X線管球にCu陽極、フィルターにNi箔を用いて、CuKα線により測定を行うものとする。
【0031】
本発明のセリウム系研磨材のX線回折測定で、立方晶複合酸化希土のメインピークに対する酸フッ化希土のメインピークの強度比が0.2〜1の範囲内、より好ましくは、0.3〜0.6の範囲内であることが好ましい。セリウム系研磨材のX線回折で、立方晶複合酸化希土のメインピーク(2θ)、及び、酸フッ化希土のメインピークはそれぞれ、28.2度と 26.7度付近に現れる。ピークの強度とは回折強度の最大値を示す。立方晶複合酸化希土のメインピークに対する酸フッ化希土のメインピークの強度比が0.2より低くなるとセリウム系研磨材に含まれる酸化ランタンの悪影響を十分に抑えることができず,研磨速度を低下させたり,研磨材の寿命を短くする。また、強度比が1より高くなると研磨能力に劣る酸フッ化物の量が多くなり研磨速度が低くなる。
【0032】
本発明のセリウム系研磨材の一次粒子径は、10nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、また比表面積が2m2/g〜8m2/gの範囲内であることが好ましい。一次粒子径の測定は、X線回折ピークの半価幅からの結晶子径の計算により行い、比表面積の測定はBET法により行う。
【0033】
本発明のセリウム系研磨材の一次粒子径が10nmより低くなると、酸化セリウムあるいは酸フッ化物の結晶化が不十分で機械的な研磨力が弱くなり、50nmより高くなると硬くて大きな結晶となるため,スクラッチの原因となる。また比表面積が2m2/gより低くなると結晶子径が50nm以上の場合と同じ様にスクラッチ発生の原因となり、8m2/gより高くなると研磨速度が低くなる。本発明のセリウム系研磨材の製造方法は、天然に存在する、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)及びネオジウム(Nd)等を多く含む鉱石(希土精鉱)からアルカリ金属及びアルカリ土類金属、放射性物質等の希土類以外の成分や、中重希土とNdの希土成分を化学的に分離除去して、これらの含有量が低減されたセリウムを主成分とする混合炭酸希土、混合水酸化希土などの混合軽希土類化合物を主原料とし、これを500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とする工程を含むことが好ましい。ここで、中重希土とは、Pm(プロメチウム)より高い原子番号の希土類をいうものとする。
【0034】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属、放射性物質等の、希土類以外の成分の化学的な分離除去の方法としては、希土精鉱の硫酸培焼による方法が一般的であり、中重希土とNdの希土成分の化学的な分離除去の方法としては、溶媒抽出法が一般的である。
【0035】
例えば、本発明で用いられる主原料の混合軽希土類化合物は、天然に存在する、セリウム、ランタン、プラセオジウム及びネオジウム等を多く含む希土精鉱を粉砕した後、硫酸と共に培焼した後水に溶解し、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、放射性物質等の希土類以外の成分を不溶物として除去した後、溶媒抽出法により中重希土とNdの希土成分を化学的に分離除去した後、重炭酸アンモニウムやシュウ酸などで炭酸塩とすることで得られる。ここで得られた混合軽希土類化合物は、全希土類の含有量が酸化物換算で45〜55質量%、全希土類中のセリウム含有量が酸化物換算で55〜63質量%、非希土類成分含量は0.5質量%以下であり、残りは炭酸である。
【0036】
また本発明は、希土類元素を含む希土精鉱(鉱石)から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得られた混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、これにセリウムを主成分とするフッ化希土類を添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法に関する。
【0037】
セリウムを主成分とするフッ化希土類は、天然に存在する、セリウム、ランタン、プラセオジウム及びネオジウム等を多く含む希土精鉱からアルカリ金属及びアルカリ土類金属、放射性物質等の希土類以外の成分や必要に応じて中重希土及びNdを化学的に分離除去して、これらの含有量が低減された混合軽希土類化合物とした後、フッ酸、フッ化アンモニウム及び酸性フッ化アンモニウム等のフッ素源を用いてフッ素化した後、400℃以下の温度で熱処理した後粉砕することによって得ることが好ましい。ここで得られたセリウムを主成分とするフッ化希土類は、全希土類含有量が酸化物換算で60〜90質量%程度、フッ素含量が20〜30質量%であることが望ましい。またセリウムを主成分とするとは、全希土類含有量中のセリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であることを示す。
【0038】
以上の工程におけるフッ素化後の熱処理温度が400℃より高いと、酸化希土等の希土類化合物とフッ素との反応性が悪くなり、焼成時に硬い塊が出来てしまう。これは、スクラッチの原因粒子となり、また、これにより研磨速度の向上を達成することができない。したがって、熱処理温度は400℃以下でなければならない。
【0039】
本発明では、主原料である混合軽希土類化合物を500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とする。この混合酸化希土と副原料であるセリウムを主成分とするフッ化希土類を所定の割合で混合した後、湿式微粉砕する。この際の混合割合は、最終製品(セリウム系研磨材)に要求されるフッ素含有量に応じて、適宜決定するものとする。このように本発明によれば、セリウムを主成分とするフッ化希土類の混合割合を変更することにより、最終製品中に含有されるフッ素の量を容易に変化させることができる。粉砕は湿式ボールミル等の媒体ミルを用いて行われる。本発明において、粉砕後の粒子は、平均粒径が0.5〜3.0μmであることが好ましい。
【0040】
次に、この湿式粉砕された混合酸化希土とセリウムを主成分とするフッ化希土類の混合スラリーを乾燥した後、焼成する。焼成温度は600〜1,100℃、好ましくは800〜1,000℃である。次いで、放冷、解砕、分級の操作を行い、セリウム系研磨材を得ることができる。この研磨材の平均粒径は0.5〜3.0μmであることが好ましい。また、この研磨材中には、フッ素が1.0〜10質量%、より好ましくはフッ素が5〜10質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0041】
本発明においては、上記混合軽希土類化合物を500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土としたものに、焼成前の混合軽希土類化合物を炭酸化して混合炭酸希土としたもの、及び、セリウムを主成分とするフッ化希土類を混ぜて使用することが好ましい。この場合にはフッ化希土類中のフッ素が、混合酸化希土と混合炭酸希土中のランタンと反応してフッ化ランタンとなる。また混合酸化希土に混合炭酸希土を混ぜることにより、フッ素がランタンと反応してフッ化ランタンとなる反応を促進することができる。
【0042】
研磨材中の酸化ランタンは塩基性が強く、この酸化ランタンが研磨時に研磨パッドの目詰まりを生じさせ、研磨面の研磨材水性スラリー循環によるリフレッシュに悪影響を与える。特に低セリウム系研磨材では、ランタン含量が比較的高いので上記の問題点が発生しやすい。本発明では混合酸化希土に混合炭酸希土、及びセリウムを主成分とするフッ化希土類を混合して湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することにより、酸化ランタンがフッ化ランタンと置き換わり、上述の研磨時の悪影響を抑制することができる。
【0043】
本発明のセリウム系研磨材は、通常、粉末形態で取り扱われるが、研磨材として使用するに際しては、一般に水性分散液の形態で、光学レンズ用ガラス基板、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、液晶用ガラス基板などの、各種ガラス材料やガラス製品等の仕上げ研磨に用いられる。
【0044】
例えば、水等の分散媒に分散させて、5〜30質量%程度のスラリーの状態で使用される。本発明に好ましく用いられる分散媒としては、水や水溶性有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、アルコール、多価アルコール、アセトン、テトラヒドロフラン等が例示される。一般的には、水が使用されることが多い。
【0045】
本発明のセリウム系研磨材を用いて研磨されたガラス基材等は、ピット、傷等の表面欠陥を生じることなく、品質的に優れた研磨表面が得られる。
【0046】
本発明のセリウム系研磨材は、公知の製造装置を用いて本発明の製造方法に従い製造することができる。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
希土類元素を酸化物換算で47質量%、希土類元素以外の不純物を53質量%、中重希土類を酸化物換算で2質量%、Ndを酸化物換算で8質量%含む希土精鉱(鉱石)を処理し、希土類元素以外の不純物を1質量%以下、中重希土類を酸化物換算で1質量%以下、Ndを酸化物換算で1質量%以下に低減した混合軽希土類化合物とした後、重炭酸アンモニウムを用いて炭酸化し、混合炭酸希土を得た。 製造した混合炭酸希土は、全希土類含有量が酸化物換算で49質量%、全希土類含有量中のセリウム含有量が酸化物換算で60質量%であった。この混合炭酸希土2kgを、電気炉を用いて800℃で2時間焼成し、混合酸化希土とした。この混合酸化希土1kgに、前記混合軽希土類化合物にフッ酸を加え400℃で2時間熱処理して製造したセリウムを主成分とするフッ化希土類(全希土類含有量が酸化物換算で85質量%、全希土類含有量中のセリウムの含有量が酸化物換算で45質量%、フッ素含量27質量%)300gを加え、湿式ボールミルで粉砕し、平均粒径(D50)が1.5μmの粉体を含むスラリーとした。このスラリーを乾燥させ、電気炉を用いて900℃で2時間焼成した後、放冷、解砕、分級の操作を行うことにより、セリウム系研磨材を製造した。ただし、ここで言う平均粒径(D50)とは、コールターマルチサイザー(コールター(株)製)を用いて30μmアパチャーチューブで測定された、体積分布の累積値50%に相当する粒子径である。
【0049】
次に、得られたセリウム系研磨材を水に分散して濃度10質量%のスラリーとした。このスラリー状研磨液を用いて、薄膜トランジスタ(TFT)パネル用無アルカリガラスを研磨し、研磨状態の評価を行った。ただし、研磨条件は以下の通りである。
【0050】
(研磨条件)
研磨機 : 4ウエイタイプ両面研磨機
加工物 : 5cm角無アルカリガラス、面積25cm2
加工枚数 : 3枚/バッチ ラ 2バッチ
研磨パッド : 発泡ポリウレタンパッド(LP−77、ローデス製)
下定盤回転数 : 90rpm
スラリー供給量 : 60ml/分
加工圧力 : 156g/cm2
研磨時間 : 30分
【0051】
なお、6枚のTFTパネル用無アルカリガラスについて、1枚当たり4点(箇所)ずつ研磨前後の厚みをマイクロメーターで測定し、4点×6枚の測定値を平均して研磨速度(μm/分)を求めた。また、20万ルクスのハロゲンランプを光源として用い、ガラス表面を目視にて観察し、研磨面当たりのスクラッチの数を求めた。また、ガラス表面の中心線平均粗さはランクテーラーホブソン社製タリステップで測定した。
【0052】
得られた結果を、研磨材の平均粒径(D50)、研磨速度、中心線平均粗さRaと共に表1に示す。また、X線回折測定の結果を図1と表2、研磨材の物性値を表1に併記する。
【0053】
〔実施例2〕
実施例1において、主原料として用いた混合酸化希土の40質量部を、焼成前の混合軽希土類化合物を炭酸化し混合炭酸希土としたもの80重量部に置き換えて、混合酸化希土と混合炭酸希土との混合物とした以外は実施例1と同様にして、セリウム系研磨材を得た。なお、混合軽希土類化合物の炭酸化は重炭酸アンモニウムによって行った。
【0054】
実施例1と同様にして、得られたセリウム系研磨材を用いて研磨を行い、研磨状態の評価を行った。その結果等を表1に示す。
【0055】
〔比較例1〕
実施例1において、混合炭酸希土の焼成温度を1200℃に変更した以外は実施例1と同様にして、セリウム系研磨材を得た。
【0056】
実施例1と同様にして、得られたセリウム系研磨材を用いて研磨を行い、研磨状態の評価を行った。その結果等を表1、X線回折測定の結果を図2と表3に示す。
【0057】
〔比較例2〕
実施例1において、セリウムを主成分とするフッ化希土類の熱処理温度を800℃に変更した以外は実施例1と同様にして、セリウム系研磨材を得た。
【0058】
実施例1と同様にして、得られたセリウム系研磨材を用いて研磨を行い、研磨状態の評価を行った。その結果等を表1に示す。
【0059】
表1から明らかなように、実施例1及び2では、研磨速度が速く、しかも被研磨体である無アルカリガラス表面にスクラッチが発生せず、表面粗さが小さく、品質良好な研磨面が得られる酸化セリウム系研磨材を得ることができる。
【0060】
一方、比較例1では、混合軽希土類化合物の焼成温度が高いために、添加するフッ化希土との反応が充分に行われず、フッ化希土が残留している。また、研磨速度が低く、スクラッチも発生し、表面粗さが大きくなっている。
【0061】
比較例2では、添加する混合フッ化希土の熱処理温度が高いために平均粒径が大きくなり研磨速度を向上する効果が低い。また、スクラッチが発生し、表面粗さが大きく、研磨面品質も悪い。
【0062】
【表1】
Figure 0003694478
【0063】
【表2】
Figure 0003694478
【0064】
【表3】
Figure 0003694478
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセリウム系研磨材の製造方法は、生産効率がよく、かつ、製造コストを安く抑えることができる。また、本発明のセリウム系研磨材を使用することによって、研磨速度を速くすることができ、かつ、研磨された被研磨物は、キズの発生が少なく、表面粗さの小さい、品質良好な研磨面を得ることができる。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1でのX線回折結果を示す。なお、ACID RARE EARTH FLUORIDEは酸フッ化希土を、CUBIC COMPOSITE RAREEARTH OXIDEは立方晶複合酸化希土を示す。
【図2】比較例1でのX線回折結果を示す。なお、ACID RARE EARTH FLUORIDEは酸フッ化希土を、CUBIC COMPOSITE RAREEARTH OXIDEは立方晶複合酸化希土を示す。

Claims (10)

  1. フッ素を含むセリウム系研磨材であって、セリウム系研磨材が実質的に立方晶複合酸化希土および複合酸フッ化希土からなり、セリウム系研磨材中の全希土類元素含有量が酸化物換算で90質量%以上であり、全希土類元素中のセリウムの含有量が酸化物換算で55質量%以上であり、一次粒子径が10 nm 〜50 nm の範囲内であるセリウム系研磨材。
  2. セリウム系研磨材を、CuKα線を用いたX線回折測定した際の酸化セリウムに起因するメインピークが、2θで28.2度以上であることを特徴とする請求項1に記載のセリウム系研磨材。
  3. セリウム系研磨材を、CuKα線を用いたX線回折測定した際の立方晶複合酸化希土のメインピークに対する酸フッ化希土のメインピークの強度比が、0.2〜1の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のセリウム系研磨材。
  4. 比表面積が2 m 2 g 〜10 m 2 g の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のセリウム系研磨材。
  5. 希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得られた混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、混合軽希土類化合物にフッ化物を添加後、400℃以下で熱処理して形成したフッ化希土類を添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
  6. 希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得られた混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、これにセリウムを主成分とするフッ化希土類を添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
  7. 希土類元素を含む鉱石から希土類元素以外の不純物質と中重希土及びNdとを化学的に分離除去して得た混合軽希土類化合物を、500〜1,100℃で焼成して混合酸化希土とし、該混合酸化希土に、前記混合軽希土類化合物を炭酸化して得た混合炭酸希土と、セリウムを主成分とするフッ化希土類とを添加して、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級することによりセリウム系研磨材を得ることを特徴とするセリウム系研磨材の製造方法。
  8. セリウム系系研磨材のフッ素含有量が5〜10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のセリウム系研磨材の製造方法。
  9. 500〜1,100℃での焼成を、大気中で焼成炉を用いて2時間〜36時間の範囲内で行うことを特徴とする請求項5〜8の何れか一項に記載のセリウム系研磨材の製造方法。
  10. 500〜1,100℃での焼成を、大気中で電気炉またはプッシャー炉を用いて、2時間〜36時間の範囲内で行うことを特徴とする請求項5〜9の何れか一項に記載のセリウム系研磨材の製造方法。
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