JP2016149242A - 非水電解液二次電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】構成元素としてタングステン(W)を含む正極活物質と、フッ化リチウム(LiF)とを混合して機械的エネルギーを加えることにより、該タングステン含有正極活物質の表面にフッ化リチウム被膜が形成された複合正極活物質を得る複合正極活物質調整工程S10;前記得られた複合正極活物質に、少なくとも導電材およびバインダを添加して造粒することにより、少なくとも該複合正極活物質、導電材およびバインダを含む造粒体を得る造粒工程S20;および前記得られた造粒体を用いて正極集電体の表面に正極活物質層を形成する正極活物質層形成工程S30;を包含する、非水電解液二次電池用正極の製造方法。
【選択図】図1
Description
例えばタングステン(W)を構成元素として含む正極活物質は、電池の各種性能(例えば、入出力特性、耐久性等)を向上し得る正極活物質として期待とされている。例えば特許文献1にはタングステンを構成元素に含む正極活物質に関して記載があり、当該タングステンを含む正極活物質と、フッ化金属(例えばフッ化リチウム)と、導電材と、バインダとを適当な溶媒中に混合してスラリー状の正極活物質層形成用組成物を調製し、該組成物を正極集電体上に塗布し乾燥することで正極を作製することが記載されている。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、構成元素としてタングステンを含む正極活物質を有する正極であって、正極活物質からの構成元素の溶出がより高度に抑制された正極を作製し得る手段を見出し、本発明を完成させるに至った。
(i)構成元素としてタングステン(W)を含む正極活物質と、フッ化リチウム(LiF)とを混合して機械的エネルギーを加えることにより、該タングステン含有正極活物質(以下、「W含有正極活物質」ともいう。)の表面にフッ化リチウム被膜が形成された複合正極活物質を得る工程;
(ii)前記得られた複合正極活物質に、少なくとも導電材およびバインダを添加して造粒することにより、少なくとも該複合正極活物質、導電材およびバインダを含む造粒体を得る工程;および
(iii)前記得られた造粒体を用いて正極集電体の表面に正極活物質層を形成する工程;を包含する。
また、正極活物質表面の反応性のムラを低減することで、正極活物質と非水電解液との間(典型的には界面)での電荷担体(典型的にはリチウムイオン)の良好な移動を実現し得る。このため、かかる正極の製造方法により製造した正極を用いた非水電解液二次電池において、優れた電池特性(例えば高い入出力特性)を実現し得る。
また、正極活物質の表面を安定したLiF被膜で被覆することで、例えば高温環境下における正極活物質表面での非水電解液の酸化分解を抑制し得る。このため、かかる製造方法により製造した正極を用いた非水電解液二次電池において、熱安定性を向上し得る。
また、以下、本発明の好適な実施形態をリチウムイオン二次電池を例として説明するが、リチウムイオン二次電池は一例であり、本発明の技術思想は、その他の電荷担体(例えばナトリウムイオン)を備える他の非水電解液二次電池(例えばナトリウムイオン二次電池)にも適用される。
なかでも、a,b,c>0である(換言すれば、Ni,Co,Mnの全ての元素を含む)リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を好ましく用いることができる。好ましい一態様では、a,b,c(即ち、Ni,Co,Mnの量)が概ね同程度である。また、好ましい他の一態様では、a>bかつa>c(換言すればNiを構成元素として最も多く含む)である。かかるリチウム遷移金属複合酸化物は、電子伝導性および熱安定性に優れ、優れた出力特性やサイクル特性を実現し得る。
なお、W含有正極活物質とLiFとを混合する際には、W含有正極活物質の表面にLiF被膜を形成し得る限りにおいて、他の成分(例えば適当な溶媒等)を添加してもよい。W含有正極活物質とLiFとが接触する機会を増やしてW含有正極活物質の表面に好適な状態のLiF被膜を形成する観点からは、かかる他の成分は少量である(典型的にはW含有正極活物質とLiF以外を含まない)ことが好ましい。
また、上記W含有正極活物質とLiFとの混合は、W含有正極活物質の表面とLiFとの間に化学結合が生じる程度のエネルギー(機械的エネルギー)が加わる限りにおいて、従来公知の混合方法によって実施し得る。W含有正極活物質の表面にLiFを好適な状態で(例えば分散ムラが少ない状態で)分散し得る方法が好ましく、紛体(個体)の混合方法として知られる方法を好適に採用し得る。例えば、各種のミキサー、ブレンダー、ミル、ニーダー等の公知の混合装置を用いた方法を採用し得る。かかる混合装置としては、例えば容器回転型、容器固定型、或いはこれらを組み合わせた複合型の何れの装置も採用可能である。一例として、ハイスピードミキサー、プラネタリーミキサー、スパルタンミキサー、リボンミキサー、ディスパー、ボールミル等が挙げられる。特に主翼(典型的にはアジテータ羽根)と解砕翼(典型的にはチョッパー羽根)とを有するハイスピードミキサーは、W含有正極活物質とLiFとの間に十分な機械エネルギーを加えつつ、W含有正極活物質の表面にLiFを均一に分散し得るため好適に使用し得る。
また、上記バインダ(結着剤)としては、非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の導電材として用いられ得るものを、特に制限なく、1種又は2種以上用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲン化ビニル樹脂;ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイド;等のポリマー材料を好適に使用することができる。
かかる溶媒としては、非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の正極の作製に使用し得るものであれば特に制限なく使用可能であり、1種を単独で、もしくは2種以上を混合して(混合溶媒として)使用することができる。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルアルコール、エチルアルコール等を好適に使用することができる。なお、上記造粒体は、非水電解液二次電池の正極の作製に用いられ得る各種添加剤(例えば、増粘剤、分散剤等)をさらに含有してもよい。
転写法としては、例えば適当な大きさの平面を有する部材(例えば平板やシート等、ここでは転写用シートとして説明する)の平面上に造粒体を供給し、該造粒体供給面が正極集電体の正極活物質層形成面とが対向する方向で転写用シートと正極集電体を重ねあわせることで、正極集電体上に造粒体を付与(転写)する手法を採用し得る。
なお、正極集電体上への造粒体の付与を上記転写法により行う場合は、上記転写シートと正極集電体を重ねあわせるのと同時に圧延処理を行うことで、正極集電体上への造粒体の付与と圧延処理とを同時に行ってもよい。
以下の材料、プロセスによって、例1〜例10に係る非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)用の正極を構築した。
まず、W含有正極活物質として、LiNi0.32Co0.32Mn0.32W0.04O2(以下、LNCMWともいう)を準備した。かかるLNCMWのタングステン含有量は1mol%である。そして、上記LNCMWとLiFとをハイスピードミキサーにて混合し、正極活物質表面にLiF被膜が形成された複合正極活物質を調製した。このとき、LNCMとLiFの混合割合は、LNCMW:LiF=100:0.1の質量比となるようにした。
次いで、導電材としてのABと、バインダとしてのPVDFとをNMP中に分散し、該NMP中に分散したABおよびPVDFを上記複合正極活物質と混合して造粒体を調製した。このとき、上記複合正極活物質中のLNCMWと、ABと、PVDFとが90:8:2の質量比となり、且つ造粒体中の固形分率が77%となるように調整した。
そして、上記調製した造粒体を転写法により厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に付与して、例1に係る正極を作製した。
上記複合正極活物質調製時のLNCMW量(100質量%)に対するLiF量が、表1に記載のLiF量(質量%)となるように変更した(例6および例8に係る正極については複合正極活物質を調製しない)以外は例1に係る正極と同様の材料およびプロセスにより、例2〜例4、例6、例8に係る正極を作製した。
正極活物質中のタングステン含有量が6mol%のW含有正極活物質(LiNi0.25Co0.25Mn0.25W0.24O2)を用いた以外は例2に係る正極と同様の材料およびプロセスにより、例5に係る正極を作製した。
図2に示す従来の正極の作製方法と同様に、LNCMW(LiNi0.32Co0.32Mn0.32W0.04O2)と、ABと、PVDFとを、NMP中に固形分率が63%となるように分散してスラリー状(ペースト状)の正極活物質層形成用組成物を調製し、該組成物を厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)のの両面に付与して乾燥することにより、例7に係る正極を作製した。ここで、正極活物質層形成用組成物中のLNCMWとABとPVDFの質量比率は90:8:2とした。
上記正極活物質形成用組成物(スラリー状組成物)中に、該組成物中のLNCMW量(100質量%)の2質量%に相当する量のLiFを添加した以外は例7に係る正極と同様の材料およびプロセスにより、例9に係る正極を作製した。
上記例2と同様の材料およびプロセスにより作製した複合正極活物質と、ABと、PVDFとを、NMP中に固形分率が63%となるように分散してスラリー状(ペースト状)の正極活物質層形成用組成物を調製し、該組成物を正極集電体の両面に付与して乾燥することにより、例10に係る正極を作製した。即ち、例10に係る正極の作製では造粒体の調製を行わなかった。ここで、正極活物質層形成用組成物中のLNCMWとABとPVDFの質量比率は90:8:2とした。
上記のとおりに作製した例1〜例10に係る正極をそれぞれ用いて、例1〜例10に係る非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
また、非水電解液として、ECとDMCとEMCとを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたもの(基本組成の非水電解液)を調製した。なお例8に係る電池用の非水電解液には、上記基本組成の非水電解液中に、正極中のLNCMW量の2質量%に相当する量のLiFを添加した。
次いで、上記捲回電極体と上記非水電解液とを電池ケースの内部に収容し、理論容量(電池容量)が4Ahの各例(例1〜10)に係る電池を、それぞれ後述の充放電サイクル試験用および熱安定性評価用に構築した。
上記初期充放電後の例1〜例10に係る各電池について、活性化処理(初期充電)と、初期容量の測定を行った。
具体的には、25℃の温度条件下において、4A(1C)の充電レート(電流値)で電池電圧が4.1Vまで定電流(CC)充電を行った後、電流値が1/50Cとなるまで定電圧(CV)充電を行い、満充電状態とした。その後、4A(1C)の放電レート(電流値)で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流(CC)放電し、このときの放電容量を初期容量(Ah)とした。かかる初期容量(Ah)を正極中の正極活物質(LNCMW)量で除し、正極活物質の単位質量当たりの初期容量(mAh/g)を算出した。
ここで、「1C」とは、理論容量より予測した電池容量(Ah)を一時間で充電することができる電流値いうこととする、例えば電池容量が4Ahの場合は1C=4Aである。
次に、上記初期容量を測定した後の各電池について、25℃の温度条件下で、1Cの充電レートで定電(CC)流充電を行ってSOC60%の充電状態に調整した後、10Cで10秒間の定電流放電を行い、この時の電流(I)−電圧(V)のプロット値の一次近似直線の傾きから初期電池抵抗(IV抵抗)(mΩ)を求めた。
ここで、「SOC」(State of Charge)は、上記初期容量をSOC100%としたときの充電状態をいうこととする。
次に、上記初期電池容量を測定した後の各例にかかる電池について、60℃の温度条件下において充放電を500サイクル繰り返す充放電サイクル試験を行い、該サイクル試験後の容量維持率(%)と抵抗増加率(倍)を算出した。具体的には以下のとおりである。
上記充放電サイクル試験は、60℃の温度条件下において、2Cの充電レートでSOC100%の充電状態まで定電流充電を行い、その後2Cの放電レートでSOC0%の充電状態まで定電流放電を行う充放電を1サイクルとした。上記充放電サイクル試験終了後の各電池について、上記初期容量測定および初期電池抵抗測定と同様の方法で、充放電サイクル試験後の電池容量(mA)および電池抵抗を測定した。そして、以下の式:容量維持率(%)=充放電サイクル試験後の容量(mAh)÷初期容量(mAh)×100;から容量維持率を算出し、以下の式:抵抗増加率(倍)=充放電サイクル試験後のIV抵抗÷初期電池抵抗;から抵抗増加率を算出した。結果を表1の該当欄に示す。
上記充放電サイクル試験後の各例に係る電池(例1〜例10)について、正極活物質からの金属元素(ここではNi、Co、Mn、W)の溶出量を評価した。正極活物質から溶出した金属は、一般に非水電解液中を移動して負極上に析出するため、ここでは負極上に析出した金属量を測定することで、正極からの金属溶出量を評価した。
まず、上記サイクル試験後の各電池から負極を取り出し、非水電解液として用いた非水溶媒で2〜3回洗浄した後、任意の大きさに打ち抜いてICP−AES分析用の測定用試料を得た。該測定用試料を酸溶媒(ここでは硫酸)中に加熱溶解させ、かかる溶液をICP−AESで分析することによって、Ni原子、Co原子、Mn原子、およびW原子の量(μg)を測定した。正極の作製に用いた全正極活物質中のNi原子、Co原子、Mn原子、およびW原子の総量に対するこれらの溶出元素の割合、即ち金属溶出量(ppm)を求めた。結果を表1の該当欄に示す。
次に、各例に係る電池について、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)によって正極の発熱量を測定し、熱安定性を評価した。
まず、上記例1〜例10に係る電池(熱安定性評価用に構築した各電池)を高SOCの充電状態(ここでは凡そSOC220%の状態)まで充電した後、解体して、正極と非水電解液とを測定試料として取り出した。そして、取り出した正極と非水電解液とを一緒に測定用セル内に密閉し、当該測定用試料に対して、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を行った。具体的には、DSC測定装置(株式会社島津製作所製、型式「DSC−60」)を用いて、窒素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で25℃から400℃まで温度を変化させてDSC測定を行った。そして、得られたDSC曲線の50℃から350℃までの面積を測定試料の総発熱量(W)とし、この総発熱量(W)を測定試料の質量(g)で除すことによって、単位質量あたりの発熱量(W/g)を算出した。結果を表1の「発熱量(W/g)」の欄に示す。
また、これら例1〜5および例8〜10に係る電池は、抵抗増加率が低く、容量維持率が高く、発熱量が少なかった。即ち、例1〜5および例8〜10に係る電池は、サイクル特性および熱安定性に優れた電池であることを確認した。これらのことは、正極活物質表面に形成されたLiF被膜により、正極活物質と非水電解液間での電荷担体(典型的にはリチウムイオン)の移動が円滑になったこと、および正極活物質表面での非水電解液の分解が抑制されたこと等によるものと考えられる。
なかでも、例1〜5に係る電池は、例8〜10に係る電池と比較して、金属溶出量がより低減されていた。このことは、本発明の一実施形態に係る正極の製造方法によって、正極活物質表面がより好ましい状態(典型的には被膜ムラが低減された状態)のLiF被膜で被覆された正極を作製することができたためと考えられる。即ち、ここで開示する正極の製造方法によると、正極活物質からの構成元素の溶出がより高度に抑制され且つ電池性能(サイクル特性)に優れた電池を提供し得ることを確認した。
また、W含有正極活物質(LNCMW)中のタングステン含有量が異なる例2と例5に係る電池を比較すると、タングステン含有量が0.01mol%〜5mol%の範囲内である例2に係る電池の方が、例5に係る電池よりも金属溶出量が少なく、抵抗増加率が低く、容量維持率が高かった。
S20 造粒工程
S30 正極活物質層形成工程
Claims (1)
- 非水電解液二次電池用の正極を製造する方法であって、以下の工程:
構成元素としてタングステン(W)を含む正極活物質と、フッ化リチウム(LiF)とを混合して機械的エネルギーを加えることにより、該タングステン含有正極活物質の表面にフッ化リチウム被膜が形成された複合正極活物質を得る工程;
前記得られた複合正極活物質に、少なくとも導電材およびバインダを添加して造粒することにより、少なくとも該複合正極活物質、導電材およびバインダを含む造粒体を得る工程;および
前記得られた造粒体を用いて正極集電体の表面に正極活物質層を形成する工程;
を包含する、非水電解液二次電池用正極の製造方法。
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