JP2016141245A - 自動車の車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】スモールオーバラップ衝突のようなオフセット衝突時において、衝撃荷重の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生させることができ、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制することができる自動車の車体構造の提供を目的とする。【解決手段】車体側部において車両の前後方向に延びるフレーム15を備えた自動車の車体構造であって、上記フレーム15の先端部17の正面に突設される荷重吸収部36に、上記フレーム15よりも外側に突出し、その先端面が車両先端方向内側に傾斜して延びる傾斜面部33Sが設けられたことを特徴とする。【選択図】図3

Description

この発明は、車体側部において車両の前後方向に延びるフロントサイドフレームやリヤサイドフレームのようなフレームを備えた自動車の車体構造に関する。
一般に、車体側部には車両の前後方向に延びるフロントサイドフレームやリヤサイドフレームが設けられており、これらの各サイドフレームは車体剛性の確保と、衝突荷重吸収とに寄与するものである。
車両の前側において、フロントサイドフレームに衝突荷重が入力されないようなスモールオーバラップ衝突時には、フロントピラーに直接衝突荷重が入力して、車体が多く変形することになる。
車室は乗員空間確保のために保護する必要がある。この車室を衝突から保護する部材は、車体サイドにおいては、フロントピラー、ルーフサイドレール、サイドシル、ドアがあるが、ドアは開閉可能な部材であって、連結性が低いので、主に、フロントピラーとサイドシルとで車室を保護する構造が採用されるのが一般的である。
例えば、25%以下のスモールオーバラップのようなフロントサイドフレームよりも外側へのオフセット衝突時には、フロントサイドフレームでの荷重吸収が見込めないので、フロントサイドフレームの車幅方向外側で、且つ当該フロントサイドフレームの前端よりも車体後方に荷重吸収部を設けるか、或は、車体を横ずれ変位させることが要請される。
上述の荷重吸収部を設ける場合には、フロントピラーを太くすることも考えられるが、フロントピラーを太くすると、重量が増加するだけでなく、前方視界が悪化するので好ましくない。このような問題点は、車体前部のみならず車体後部においても同様である。
ところで、特許文献1には、車両前方に向けて車幅方向外側となる部分と、車幅方向内側となる部分との二股に分岐したサイドメンバを設け、左右のサイドメンバの前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースを横架すると共に、上記二股に分岐したサイドメンバの所定部に第1ノッチおよび第2ノッチを形成して、車両衝突時に、サイドメンバ前端部をパワートレインと干渉させて横ずれ荷重を発生させるように構成したものが開示されている。
この特許文献1に開示された従来構造は、エンジンやトランスミッションのブロックを利用して衝突荷重を受止めるものであり、衝突前にパワートレインと離間しているサイドメンバ前端部が当該パワートレインと干渉した時点で横ずれ荷重を発生させるものであるから、横ずれ荷重の発生がワンテンポ遅れる問題点があった。また、パワートレインは一般に、ブッシュを介してサブフレームに連結されており、この分、荷重伝達が遅れる問題点があった。
また、特許文献2には、フロントサイドフレームの前後方向中間部から車両前方かつ車幅方向外方へ延びる枝フレームを設け、オフセット衝突時には、その荷重を枝フレームとフロントサイドフレームとの結合部で車幅方向に受け止めて、横ずれ荷重を発生させる構造が開示されている。
しかしながら、この特許文献2に開示された従来構造においては、フロントサイドフレームの前後方向中間部に位置する上述の結合部で衝突荷重を受け止めるので、この位置が比較的後方となり、設計自由度が低くなるという問題点があった。
特許第4122887号公報 特許第5357953号公報
そこで、この発明は、スモールオーバラップ衝突のようなオフセット衝突時において、衝撃荷重の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生させることができ、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制することができる自動車の車体構造の提供を目的とする。
この発明による自動車の車体構造は、車体側部において車両の前後方向に延びるフレームを備えた自動車の車体構造であって、上記フレームの先端部に当該先端部の正面方向へ突設される荷重吸収部に、上記フレームよりも外側に突出し、その先端面が車両先端方向内側に傾斜して延びる傾斜面部が設けられたものである。
上述のフレームは、自動車の車体構造を前部車体構造に適用する場合には、フロントサイドフレームやサブフレームの前後メンバに設定してもよく、自動車の車体構造を後部車体構造に適用する場合には、リヤサイドフレームに設定してもよい。
上記構成によれば、荷重吸収部に上述の如き傾斜面部を設けたので、フレームの正面で衝突物を受止めることができないスモールオーバラップ衝突時には、当該衝突物を上記傾斜面部で受止め、この荷重吸収部の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生することができ、以て、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制することができる。
この発明の一実施態様においては、上記荷重吸収部は、上記フレームの先端部よりも先端側に突出し、フレーム先端方向のフレーム正面に位置する縁が、略車幅方向、または車両先端方向外側に延びているものである。
上記構成によれば、フレーム正面に対する衝突時(つまり、スモールオーバラップ衝突ではない前突または後突時)には、荷重吸収部を横ずれさせることなく確実に荷重吸収を図って、その吸収量を確保することができ、衝突物が傾斜面部に衝突するスモールオーバラップ衝突時には確実に横ずれ荷重を発生することができる。
この発明の一実施態様においては、上記荷重吸収部は、上記フレームの先端部に対し車幅方向外側方に突設されて、上記傾斜面部を備える先端側メンバと、該先端側メンバより車両前後方向中央側で、上記フレームの車幅方向外側に突設され、当該先端側メンバの車幅方向内側への変形と連動して車幅方向内側に荷重吸収変形可能に該先端側メンバと連結される中央側メンバと、で構成されたものである。
上記構成によれば、荷重吸収部が上述の先端側メンバと、上述の中央側メンバとで構成されているので、車両前突時または車両後突時には、荷重吸収部の広い部位で荷重吸収して車体中央側の負担を増加させることなく、荷重吸収量の増大を図ることができ、また、スモールオーバラップ衝突時には、先端側メンバと中央側メンバとでフレーム先端部に集中的に横ずれ荷重を伝達することができる。
この発明の一実施態様においては、上記フレームは左右のサイドフレームを車幅方向に連結するサブフレームであり、上記荷重吸収部は上記サブフレームの先端部に設けられたサブクラッシュカンであることを特徴とする。
上記構成によれば、荷重吸収部は左右のサイドフレームを連結するサブフレームの先端部に設けられたサブクラッシュカンであるから、パワートレインを利用することなく、スモールオーバラップ衝突が始まった瞬間から車体の横ずれ荷重を発生させることができる。
この発明によれば、スモールオーバラップ衝突のようなオフセット衝突時において、衝撃荷重の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生させることができ、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制することができる効果がある。
本発明の自動車の車体構造を示す平面図 図1からエプロンレイン、サイドフレーム、ドアを取外した状態の平面図 車両左側の車体構造の要部を示す拡大平面図 図3の要部正面図 図3のA−A線矢視図 図3のB−B線矢視断面図 図3の斜視図 図7の要部分解斜視図 自動車の車体構造の他の実施例を示す平面図 図9の側面図
スモールオーバラップ衝突のようなオフセット衝突時において、衝撃荷重の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生させ、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制するという目的を、車体側部において車両の前後方向に延びるフレームを備えた自動車の車体構造において、上記フレームの先端部の正面に突設される荷重吸収部に、上記フレームよりも外側に突出し、その先端面が車両先端方向内側に傾斜して延びる傾斜面部が設けられるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は本発明の自動車の車体構造を示し、図1は当該車体構造を示す平面図、図2は図1からエプロンレインフォースメント、フロントサイドフレーム、ドア等を取外した状態の平面図である。なお、以下の実施例では自動車の車体構造として自動車の前部車体構造を例示する。
図1,図2において、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)1を設け、このダッシュロアパネル1の下部後端にはフロアパネル2を一体的に連設すると共に、該フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部3を一体的に設けている。
また、上述のダッシュロアパネル1の車幅方向左右両端部には、上下方向に延びる閉断面構造のヒンジピラー4を設ける一方、フロアパネル2の車幅方向左右両端部には、車両の前後方向に延びる閉断面構造のサイドシル5を設けている。なお、図1,図2においては、ヒンジピラー4、サイドシル5は車両右側のものについてのみ図示している。
上述のヒンジピラー4には、ヒンジブラケット6を介してフロントドア7を開閉可能に取付ける一方、ヒンジピラー4と図示しないセンタピラーとの車両前後方向中間に対応して、上述のサイドシル5とトンネル部3との間には、車幅方向に延びるクロスメンバ8(いわゆるNo.2クロスメンバ)を取付け、このクロスメンバ8とフロアパネル2との間には、車幅方向に延びる閉断面を形成している。
さらに、図1,図2に示すように、ダッシュロアパネル1とフロアパネル2との両者に跨って車両前後方向に延びるフロアフレーム9を設け、このフロアフレーム9とダッシュロアパネル1およびフロアパネル2との間には、車両の前後方向に延びる閉断面を形成している。
図2に示すように、ダッシュロアパネル1の下部において、ヒンジピラー4とフロアフレーム9とを車幅方向に連結するトルクボックス10を設けている。
図1に示すように、エンジンルームの左右両サイドにおいて、車両の前後方向に延びる閉断面構造のフロントサイドフレーム11(但し、図面では車両右側のフロントサイドフレーム11のみを示す)を設け、これら左右のフロントサイドフレーム11には、セットプレート、取付けプレートおよびメインクラッシュカンを介して車幅方向に延びるバンパレインフォースメント(図示せず)を取付けている。
図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム11よりも車幅方向外側で、かつ上方位置には、車両の前後方向に延びる閉断面構造のエプロンレインフォースメント12を設け、このエプロンレインフォースメント12と上述のフロントサイドフレーム11との間にはホイールハウス13およびサスペンションタワー部14を形成している。
図1,図2に示すように、上述のフロントサイドフレーム11の下方部に位置してパワートレイン(図示せず)を搭載するサブフレーム15を設けている。
このサブフレーム15は、車体側部において車両の前後方向に延びる前後メンバ16および先端メンバ17と、前側において車幅方向に延びる前部クロスメンバ18と、後側において車幅方向に延びる後部クロスメンバ19と、を平面視で方形枠状に組合せたフレームである。
ここで、上述の先端メンバ17は前後メンバ16に対して高剛性に形成されている。また、前部クロスメンバ18はシュラウドロアを兼ねるもので、車両側面視でハット形状に形成されている。
図1,図2に示すように、サブフレーム15における後部クロスメンバ19の車幅方向端部には、該後部クロスメンバ19から上方に立上がるタワー部20を設けており、このタワー部20を介してサブフレーム15をフロントサイドフレーム11の下部に取付けている。
図2に示すように、ステアリング装置21は、ラック部22の左右両端(但し、図2では右端のみを示す)にコントロールリンク23を設け、このコントロールリンク23をステアリングナックル24のナックルアーム25に連結して前輪26を操舵すべく構成している。図2において、27はフロントサスペンションを構成するロアアームである。なお、図示実施例の自動車の前部車体構造は、左右略対称に形成されている。
図3は車両左側の車体構造の要部を示す拡大平面図、図4は図3の要部正面図、図5は図3のA−A線矢視図、図6は図3のB−B線矢視断面図、図7は図3の斜視図、図8は図7の要部分解斜視図である。
図6に示すように、フロントサイドフレーム11の前端部には、セットプレート28を取付けており、このセットプレート28を下方へ延設して延設部28aを形成すると共に、この延設部28aの下端から車両後方に延びるナット取付け座28bを一体形成し、このナット取付け座28bの上面にナット29を溶接固定している。
上述のナット取付け座28bの後部とフロントサイドフレーム11の下部とをサブフレーム取付けブラケット30で上下方向に連結している。
図6に示すように、上述のサブフレーム15における先端メンバ17は、車両正面視で下向きコ字状の上側部材17aと、車両正面視で上向きコ字状の下側部材17bとを組合せて閉断面17cを有するように形成されており、この先端メンバ17の前部には、上述の閉断面17cを貫通して上方に延びるサイドフレーム連結部としての連結パイプ31が溶接固定されている。
そして、図6に示すように、先端メンバ17の下部に前部クロスメンバ18を当接し、車両下方から連結パイプ31内を介してナット29に締結される長尺のボルト32を用いて、前部クロスメンバ18を先端メンバ17の下部に取付けると共に、先端メンバ17をフロントサイドフレーム11に取付けている。
すなわち、図1,図2に示すように、サブフレーム15、特に、その前後の各クロスメンバ18,19で左右のフロントサイドフレーム11,11を車幅方向に連結したものである。
図3に示すように、サブフレーム15の先端部としての前端部には、サブクラッシュカン33と、分岐メンバ34と、車幅方向荷重吸収部であるコ字状部材35と、を備えた荷重吸収部36が設けられている。
詳しくは、図3に示すように、先端メンバ17の前端に、当該先端メンバ17の先端を含むと共に、車幅方向外側に突出したセットプレート37を取付け、このセットプレート37の前面に複数のボルト、ナット38を用いて取付けプレート39を取付けている。
図3,図7に示すように、上述の取付けプレート39はその車幅方向の長さがセットプレート37の車幅方向の長さと略同等に形成されると共に、取付けプレート39の上下方向の高さも、セットプレート37の上下方向の高さと略同等に形成されている。
そして、上述の取付けプレート39の前面には、図4,図7に示すように、車両正面視で下向きコ字状の上パネル33Aと、車両正面視で上向きコ字状の下パネル33Bとで閉断面構造に形成されたサブクラッシュカン33の基部つまり後端部が溶接固定されている。
図3,図7,図8に示すように、先端メンバ17の車幅方向外側で、かつ連結パイプ31と前後メンバ16の前端16aとの前後方向中間部には、平面視でコ字状の分岐メンバ接合ブラケット40を取付けている。
図7,図8に示すように、上述の分岐メンバ34は車幅方向内側が開放した内開きコ字状に形成されており、この分岐メンバ34は同図に示すように、分岐メンバ接合ブラケット40からセットプレート37の延設側背面に延びて、これら両者40,37に接合固定されている。つまり、この分岐メンバ34は先端メンバ17から車幅方向外側で、かつ先端方向としての前端方向に延びている。
ここで、上述の分岐メンバ34の前端とサブフレーム15の先端である先端メンバ17とは連結部としてのセットプレート37で連結されており、このセットプレート37および取付けプレート39はスモールオーバラップ衝突時の入力荷重により車幅方向に変形可能に形成されている。
図7,図8に示すように、上述のコ字状部材35は車幅方向外側が開放した外開きコ字状に形成されており、このコ字状部材35は、図3,図7,図8に示すように、分岐メンバ34の車両前後方向中間部のフレーム側つまりサブフレーム15における先端メンバ17側に、当該先端メンバ17と分離して設けられており、該コ字状部材35で車幅方向に荷重を吸収すべく構成している。
上述のサブクラッシュカン33、分岐メンバ34、コ字状部材35を備えた荷重吸収部36のうち、サブクラッシュカン33は、図3に示すように、サブフレーム15の先端メンバ17の正面から、当該先端メンバ17よりも車両前後方向の前端側に突出すると共に、車幅方向外側に延長されており、このサブクラッシュカン33には、先端メンバ17よりも外側に突出し、その先端面33aが車両先端方向内側(車両前端方向内側)に傾斜して延びる傾斜面部33Sが設けられている。
上述のサブクラッシュカン33に上述の如き傾斜面部33Sを設けることで、フロントサイドフレーム11の正面で衝突物Z(図3参照)を受止めることができないスモールオーバラップ衝突時には、当該衝突物Zを上述の傾斜面部33Sで受止め、サブクラッシュカン33の荷重吸収変形と同時に横ずれ荷重Xを発生させて、これにより重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制すべく構成したものである。
図3に示すように、スモールオーバラップ衝突時の衝突物Zからの入力荷重は、横ずれ荷重ベクトルVaと、荷重吸収ベクトルVbと、後方ベクトルVcとに分解することができる。横ずれ荷重Xは連結パイプ31を介してフロントサイドフレーム11に伝達されると共に、前部クロスメンバ18を介して反対側のフロントサイドフレーム11にも伝達され、車体全体に荷重を分散して、確実に横ずれ荷重を発生させることができる。
ここで、図3に示すように、荷重吸収部36の車幅方向外端部を、車両重心に対して車幅方向外側に設定しているので、車体を横ずれ変位させるための回転モーメント発生の観点からも有効となる。
また、図3に示すように、荷重吸収部36を構成するサブクラッシュカン33は、サブフレーム15の先端メンバ17よりも前端側に突出しており、先端メンバ17のサブフレーム正面に位置する縁、すなわち、先端メンバ17正面に位置する前縁33bが、略車幅方向に延びるように形成されている。なお、先端メンバ17正面に位置する前縁33bは前方且つ車幅方向外側(車両先端方向外側)へ傾斜していても良い。
これにより、サブフレーム15正面に対する衝突時(つまり、スモールオーバラップ衝突ではない前突時)には、衝突物Zをサブフレーム15正面よりも車幅方向外側へ横ずれさせることなく、その前後方向に確実に荷重吸収を図って、吸収量を確保する一方で、衝突物Zが傾斜面部33Sに衝突するスモールオーバラップ衝突時には、確実に横ずれ荷重を発生させるように構成している。そして、スモールオーバラップ衝突時には、サブクラッシュカン33がサブフレーム15正面まで幅広く設けられる為、サブクラッシュカンを車幅方向外側前方へ傾斜して延ばす場合に比べ車体後方へ折れ曲がりにくく、後述のように車幅方向内側への座屈変形による荷重吸収と横ずれ荷重とを安定して発生させることができる。
なお、サブクラッシュカン33の前縁33bは、略車幅方向に延びる方が、断面積が広く荷重吸収量を増やせる点で好ましい。
さらに、図3に示すように、上述の荷重吸収部36は、サブフレーム15の先端部である先端メンバ17に対し車幅方向外側方に突設されて上述の傾斜面部33Sを備えた先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と、この先端側メンバ(サブクラッシュカン33)よりも車両前後方向中央側(この実施例では、車両後方側)で、サブフレーム15の車幅方向外側に突設され、先端側メンバ(サブクラッシュカン33)の車幅方向内側への変形と連動して車幅方向内側に荷重吸収変形可能に先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と連結される中央側メンバ(分岐メンバ34およびコ字状部材35)と、で構成されている。
このように、荷重吸収部36が先端側メンバとしてのサブクラッシュカン33と、中央側メンバとしての分岐メンバ34およびコ字状部材35とで構成されており、車両前突時には、サブクラッシュカン33の広い部位で荷重吸収して車体中央側つまり車体後方側の負担を増加させることなく、荷重吸収量の増大を図り、また、スモールオーバラップ衝突時には、先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と中央側メンバ(分岐メンバ34、コ字状部材35)とでフレーム先端部である先端メンバ17に集中的に横ずれ荷重を伝達し得るように構成している。
ここで、スモールオーバラップ衝突時に、先端側メンバ(サブクラッシュカン33)が荷重吸収ベクトルVbにより車幅方向内側に変形するのに伴い、セットプレート37が図3に仮想線αで示すように、また、分岐メンバ34が図3に示す仮想線βの如く車幅方向内側に変形する。この際、コ字状部材35は先端メンバ17と分離されているので、先端メンバ17には前後方向の荷重は伝わらず、横方向の荷重、つまり、横ずれ荷重のみが伝達され、これにより、車体前端部としての先端メンバ17に集中的に横ずれ荷重を伝達すると共に、荷重吸収量を確保するように構成している。
また、上述のサブフレーム15はその前後の各クロスメンバ18,19で左右のフロントサイドフレーム11,11を車幅方向に連結しており、荷重吸収部36をサブフレーム15の先端部(先端メンバ17)に設けられたサブクラッシュカン33で構成することにより、パワートレインを利用することなく、スモールオーバラップ衝突が始まった瞬間から車体の横ずれ荷重を発生させるように構成している。
さらに、図7,図8で示したように、サブフレーム15の前端部としての先端メンバ17からブラケット40を介して車幅方向外側で、かつ前端方向に延びる分岐メンバ34を設け、この分岐メンバ34の前端とサブフレーム15の前端部である先端メンバ17とを、車幅方向に変形可能なセットプレート37で連結すると共に、分岐メンバ34の車両前後方向中間部のサブフレーム15側、換言すれば、車幅方向内側に、サブフレーム15の先端メンバ17と分離して荷重を車幅方向に吸収するコ字状部材35を設けている。
これにより、スモールオーバラップ衝突時に、図3に仮想線α,βで示すようにセットプレート37および分岐メンバ34が車幅方向内側に変形する際、セットプレート37と分岐メンバ34の車両後部との間で上述のコ字状部材35が潰れ、荷重吸収量を増やすと共に、その荷重を横方向に伝達し、横ずれ荷重を高剛性のフレーム先端部としての先端メンバ17に作用して、車体を横ずれ変位させるように構成している。
すなわち、スモールオーバラップ衝突時に、高剛性のフレーム先端(先端メンバ17)に確実に横ずれ荷重を発生させて、車体を充分横ずれ変位させるように構成している。
加えて、図3,図7に示すように、連結部としてのセットプレート37が前後方向荷重吸収部材としてのサブクラッシュカン33の支持部を兼ねることで、サブクラッシュカン33特に、その基部をサブフレーム15の車幅方向外側まで支持するように構成している。
また、図8に示すように、上述の分岐メンバ34は内開きコ字状に形成されており、コ字状部材35は外開きコ字状に形成されていて、分岐メンバ34とコ字状部材35との両者で閉断面41を形成することにより、上述のコ字状部材35に横ずれ荷重をサブフレーム15の先端メンバ17に伝達する当て面35aし、かつ、上述の閉断面41により分岐メンバ34とコ字状部材35との両者の軽量高剛性化を図るように構成している。
さらに、図3に示すように、上述のコ字状部材35は、分岐メンバ34の車両中央側連結部つまり車両後側連結部(分岐メンバ接合ブラケット40の配設位置参照)よりも車両前後方向の前端側に位置する連結パイプ31または前部クロスメンバ18と車幅方向に対向する位置に設けられており、分岐メンバ34がブラケット40を介して先端メンバ17と連結された位置よりも前端側に横ずれ荷重を効果的に伝達して、連結パイプ31や前部クロスメンバ18を介して車体を効果的に横ずれさせるように構成したものである。
ところで、図3,図6,図7に示すように、上述のサブクラッシュカン33には、サブフレーム15の先端側、すなわち先端メンバ17の前端側から車両前後方向の前端側で、かつ該先端メンバ17よりも車幅方向の外側に傾斜して延びる傾斜補強部としての傾斜ステー42と、傾斜ビード43とが設けられている。
図3,図6,図7に示すように、上述の傾斜ステー42は略水平な上面部42aと、この上面部42aの後端から下方に延びる縦面部42bとを有する逆L字状に形成されており、図6に示すように、この傾斜ステー42で上パネル33Aと下パネル33Bとを上下方向に連結している。
上述の傾斜ステー42をサブクラッシュカン33の内部に設けるため、図3に示すように、上パネル33Aには溶接用の開口部33c,33cを、当該傾斜ステー42の上面部42aの配設方向に沿って開口形成し、予め縦面部42bが下パネル33Bに溶接固定された傾斜ステー42の上面部42aを、上述の開口部33c,33cの口縁に沿って連続溶接している。
ここで、傾斜ステー42の配設角度、詳しくは、セットプレート37と該傾斜ステー42の縦面部42bとの成す角度は、車両前突時にサブクラッシュカン33の耐力を過度に上昇させることなく、かつスモールオーバラップ衝突時の横ずれ荷重を車体に適確に伝達することを目的として任意の角度に設定することができるが、上記角度は約45度が好ましい。
また、上述の傾斜ステー42はサブクラッシュカン33の傾斜面部33Sに対して直角、または略直角に配置されることが、荷重伝達性能向上の観点でさらに好ましい。
上述の傾斜ビード43は、荷重吸収部の水平面部、この実施例では、サブクラッシュカン33の上パネル33Aにおける水平面部としての上面部に当該上面部から下方に突出するように形成されている。
図3に示すように、該傾斜ビード43は傾斜ステー42の上面部42aと干渉しないように該上面部42aの周縁に沿って環状に形成されているが、この傾斜ビード43に代えて、サブクラッシュカン33の下パネル33Bに傾斜ステー42の縦面部42bに沿う少なくとも1つの直線状の傾斜ビードを形成してもよい。
上述のサブクラッシュカン33に傾斜補強部としての傾斜ステー42または傾斜ビード43を設けることで、サブクラッシュカン33の大幅な形状変更や車両前後方向の耐力上昇を抑えながら、スモールオーバラップ衝突時の傾斜方向(図3に示す荷重吸収ベクトルVbの方向参照)の耐力上昇を図り、横ずれ荷重を高剛性のフレーム先端部である先端メンバ17に直接作用させ、当該先端メンバ17に充分横ずれ荷重を伝達して、衝突物Zに対して車体を確実に横ずれ変位させると共に、通常のオフセット衝突時には、その衝撃荷重をサブクラッシュカン33を介して先端メンバ17で受止めるように構成したものである。
また、上述の傾斜ステー42でサブクラッシュカン33の上パネル33Aと下パネル33Bとを上下方向に連結することで、サブクラッシュカン33の軽量高剛性化を図るように構成している。
さらに、傾斜補強部を上述の傾斜ビード43と成すことにより、当該傾斜ビード43は車両前後方向からの入力荷重に対しては比較的変形しやすく、スモールオーバラップ衝突時の斜め方向からの入力荷重に対しては耐力を有するので、サブクラッシュカン33の傾斜方向耐力を高める一方で、前後方向耐力については、その上昇を抑え、軽衝突時の車体変形を防止するように構成している。
加えて、図3に示すように、傾斜補強部としての傾斜ステー42および傾斜ビード43の車両前後方向後側は、連結パイプ31または前部クロスメンバ18と近接する位置に設けられている。
これにより、横ずれ荷重を連結パイプ31または前部クロスメンバ18を介して車体に効果的に伝達および荷重分散させるように構成している。
ここで、図3に示す構成に代えて、同図に仮想線αで示すように、傾斜ステーの後端側が連結パイプ31および前部クロスメンバ18と車幅方向に対向するように設けてもよく、傾斜ステーは1つに限定されることなく、複数の傾斜ステーを設けてもよい。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
このように、図1〜図8で示した実施例の自動車の車体構造は、車体側部において車両の前後方向に延びるフレーム(サブフレーム15参照)を備えた自動車の車体構造であって、上記フレーム(サブフレーム15)の先端部(先端メンバ17参照)に設けられる荷重吸収部36に、上記フレーム(サブフレーム15)よりも外側に突出し、その先端面が車両先端方向内側に傾斜して延びる傾斜面部33Sが設けられたものである(図2,図3参照)。
この構成によれば、荷重吸収部36に上述の如き傾斜面部33Sを設けたので、フレーム(サブフレーム15)の正面で衝突物Zを受止めることができないスモールオーバラップ衝突時には、当該衝突物Zを上記傾斜面部33Sで受止め、この荷重吸収部36の荷重吸収と同時に横ずれ荷重を発生することができ、以て、重量増加を抑えつつ、車体の変形を抑制することができる。
また、この発明の一実施形態においては、上記荷重吸収部36は、上記フレーム(サブフレーム15)の先端部(先端メンバ17)よりも先端側に突出し、フレーム15先端方向のフレーム正面に位置する縁(前縁33b参照)が、略車幅方向に延びているものである(図3参照)。
この構成によれば、フレーム正面に対する衝突時(つまり、スモールオーバラップ衝突ではない前突時)には、荷重吸収部36を横ずれさせることなく確実に荷重吸収を図って、その吸収量を確保することができ、衝突物が傾斜面部33Sに衝突するスモールオーバラップ衝突時には確実に横ずれ荷重を発生することができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、上記荷重吸収部36は、上記フレーム(サブフレーム15)の先端部に対し車幅方向外側方に突設されて、上記傾斜面部33Sを備える先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と、該先端側メンバ(サブクラッシュカン33)より車両前後方向中央側で、上記フレーム(サブフレーム15)の車幅方向外側に突設され、当該先端側メンバ(サブクラッシュカン33)の車幅方向内側への変形と連動して車幅方向内側に荷重吸収変形可能に該先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と連結される中央側メンバ(分岐メンバ34、コ字状部材35)と、で構成されたものである(図3参照)。
この構成によれば、荷重吸収部36が上述の先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と、上述の中央側メンバ(分岐メンバ34、コ字状部材35)とで構成されているので、車両前突時には、荷重吸収部36の広い部位で荷重吸収して車体中央側(この実施例では車体後側)の負担を増加させることなく、荷重吸収量の増大を図ることができ、また、スモールオーバラップ衝突時には、先端側メンバ(サブクラッシュカン33)と中央側メンバ(分岐メンバ34、コ字状部材35)とでフレーム先端部(先端メンバ17参照)に集中的に横ずれ荷重を伝達することができる。
加えて、この発明の一実施形態においては、上記フレームは左右のサイドフレーム(フロントサイドフレーム11)を車幅方向に連結するサブフレーム15であり、上記荷重吸収部は上記サブフレーム15の先端部に設けられたサブクラッシュカン33であることを特徴とする(図3参照)。
この構成によれば、荷重吸収部は左右のサイドフレーム(フロントサイドフレーム11)を連結するサブフレーム15の先端部に設けられたサブクラッシュカン33であるから、パワートレインを利用することなく、スモールオーバラップ衝突が始まった瞬間から車体の横ずれ荷重を発生させることができる。
図9は、自動車の車体構造の他の実施例を示す平面図、図10は図9の側面図である。なお、図9,図10においても自動車の車体構造として自動車の前部車体構造を例示している。また、図9,図10において前図と同一の部分には同一符号を付している。
図10に示すように、フロントサイドフレーム11の前端部にはセットプレート61および取付けプレート62を介してメインクラッシュカン63を取付け、左右のメインクラッシュカン63,63の前端部相互間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント64を横架している。
また、図10に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム11,11の前部下面から下方に延びるブラケット65を設け、該ブラケット65には分岐メンバ取付け片65aを一体的に形成して、この分岐メンバ取付け片65aには、ボルト、ナット等の締結部材66を用いて、分岐メンバ34の車両後端側を締結固定している。
さらに、図9に示すように、左右一対のブラケット65,65の下部相互間には、車幅方向に延びるシュラウドロア67を横架している。
図9に示すように、上述の左右一対のフロントサイドフレーム11,11は、シュラウドロア67を有するシュラウド部68で連結されており、傾斜補強部としての傾斜ステー42の車両前後方向後側は上述のシュラウドロア67の車幅方向端部と近接する位置に設けられている。
また、図9,図10に示すように、上述の分岐メンバ34およびコ字状部材35の前端部には、セットプレート37および取付けプレート39を介してサブクラッシュカン33を取付けている。
このように、傾斜ステー42の車両前後方向後側を、シュラウドロア67と近接する位置に設けることで、横ずれ荷重をシュラウドロア67を介して車体前部に効果的に伝達および荷重分散させるように構成している。
なお、図9,図10において、69はダッシュアッパパネル、70はフロントカウル部、71はフロントウインドガラスである。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフレームは、実施例のサブフレーム15に対応し、
以下同様に、
フレームの先端部は、先端メンバ17に対応し、
先端側メンバは、サブクラッシュカン33に対応し、
中央側メンバは、分岐メンバ34、コ字状部材35に対応し、
サイドフレームは、フロントサイドフレーム11に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては自動車の前部車体構造を例示したが、本発明の自動車の車体構造は、自動車の後部車体構造にも採用することができる。
以上説明したように、本発明は、車体側部において車両の前後方向に延びるフレームを備えた自動車の車体構造について有用である。
11…フロントサイドフレーム(サイドフレーム)
15…サブフレーム(フレーム)
17…先端メンバ(フレームの先端部)
33…サブクラッシュカン(先端側メンバ)
33S…傾斜面部
34…分岐メンバ(中央側メンバ)
35…コ字状部材(中央側メンバ)
36…荷重吸収部

Claims (4)

  1. 車体側部において車両の前後方向に延びるフレームを備えた自動車の車体構造であって、
    上記フレームの先端部の正面に突設される荷重吸収部に、上記フレームよりも外側に突出し、その先端面が車両先端方向内側に傾斜して延びる傾斜面部が設けられたことを特徴とする
    自動車の車体構造。
  2. 上記荷重吸収部は、上記フレームの先端部よりも先端側に突出し、
    フレーム先端方向のフレーム正面に位置する縁が、略車幅方向、または車両先端方向外側に延びている
    請求項1記載の自動車の車体構造。
  3. 上記荷重吸収部は、上記フレームの先端部に対し車幅方向外側方に突設されて、上記傾斜面部を備える先端側メンバと、
    該先端側メンバより車両前後方向中央側で、上記フレームの車幅方向外側に突設され、当該先端側メンバの車幅方向内側への変形と連動して車幅方向内側に荷重吸収変形可能に該先端側メンバと連結される中央側メンバと、で構成された
    請求項1または2記載の自動車の車体構造。
  4. 上記フレームは左右のサイドフレームを車幅方向に連結するサブフレームであり、
    上記荷重吸収部は上記サブフレームの先端部に設けられたサブクラッシュカンである
    請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車の車体構造。
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