JP2016141117A - 繊維ボード及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維ボードの製造方法は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材1の少なくとも一面側に、熱伝導性の高い金属部材3を配した状態にて加熱する加熱工程と、加熱工程後に、金属部材3を配した状態のまま、一対の金型5等によりプレス成形を行うプレス成形工程と、を備える。
【選択図】図2
Description
前記加熱工程後に、前記金属部材を配した状態のままプレス成形を行うプレス成形工程と、を備えることを要旨とする。
前記金属部材が配されていた側の表面には、前記繊維基材を構成する前記熱可塑性樹脂が偏在して形成された熱可塑性樹脂膜を備えていることを要旨とする。
前記金属部材が配されていた側の表面には、前記機能性シートを構成する前記樹脂が偏在して形成された樹脂膜を備えていることを要旨とする。
また、金属部材の形状が板状又はシート状であり、且つその材質がアルミニウム系金属、銅系金属又は鉄系金属である場合には、表面意匠性に優れる繊維ボードをより効率よく製造することができる。
更に、加熱工程において、繊維基材と金属部材との間に、樹脂製の機能性シートを介在させて加熱を行うことにより、目的に応じた機能性を繊維ボードに付与することができるとともに、表面意匠性及び機械的強度をより向上させることができる。
また、機能性シートが、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)から構成されている場合には、ガスバリア性を付与することができ、繊維ボードの臭いをより低減化することができる。
本願発明の繊維ボードは、特定の製造方法により製造されており、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂が偏在して形成された熱可塑性樹脂膜を表面に備えているため、表面意匠性に優れている。
また、本願発明の繊維ボードは、特定の製造方法により製造されており、機能性シートを構成する樹脂が偏在して形成された樹脂膜を表面に備えているため、表面意匠性及び機械的強度に優れているとともに、機能性シートに由来する機能を発揮することができる。
[1]繊維ボードの製造方法
本発明の繊維ボードの製造方法は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材の少なくとも一面側に、熱伝導性の高い金属部材を配した状態にて加熱する加熱工程と、加熱工程後に、金属部材を配した状態のままプレス成形を行うプレス成形工程と、を備えることを特徴とする。
上記繊維基材は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有するものである。この繊維基材としては、天然繊維同士が熱可塑性樹脂により結着されて形成された公知の基材を用いることができる。具体的には、例えば、天然繊維と熱可塑性樹脂とを混合したものに対して加熱加圧し、所定の厚みの平板状としたものを挙げることができる。
上記天然繊維は、特に限定されず種々のものを利用できる。即ち、天然繊維としては、植物繊維、動物繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、植物繊維が好ましい。
植物繊維は、植物に由来する繊維であり、植物から取り出した繊維や、これを加工した繊維が含まれる。植物繊維を得る植物としては、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、靭皮植物、即ち、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)が好ましい。靭皮植物は、一般に、成長が早く、優れた二酸化炭素吸収性を有する。このため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。更に、靭皮植物のなかでもケナフが好ましく、更には、ケナフの靭皮から採取されるケナフ繊維がより好ましい。
即ち、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。更に、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体(プロピレン・エチレンランダム共重合体等)、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。
更に、変性ポリオレフィン樹脂は、無水カルボン酸基、カルボン酸基、及び、カルボニル基のうちの少なくとも1種が導入された酸変性ポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。そのなかでも、無水カルボン酸基又はカルボン酸基が導入された酸変性ポリオレフィン樹脂であることが更に好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
この加熱温度が上記範囲内である場合、表面意匠性に優れる繊維ボードを効率良く製造することができる。
特に、この機能性シートが、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)である場合には、繊維ボードに優れたガスバリア性を付与することができ、繊維基材に由来する繊維ボードの臭いをより低減化することができる。
本発明の繊維ボードは、上述の繊維ボードの製造方法によって得られ、金属部材が配されていた側の表面には、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂が偏在して形成された熱可塑性樹脂膜を備えていることを特徴とする。
この繊維ボードは、上記熱可塑性樹脂膜を表面に備えているため、表面意匠性に優れている。
この繊維ボードは、上記樹脂膜を表面に備えているため、表面意匠性及び機械的強度に優れているとともに、機能性シートに由来する特性を発揮することができる。
また、繊維ボードの用途は特に限定されないが、例えば、自動車等の車両関連分野、船舶関連分野、航空機関連分野、建築関連分野等の広範な製品分野で用いることができ、特に車両用内装材として有用である。車両用内装材としては、例えば、ルーフトリム、ドアトリム、パッケージトレイ、デッキボード、クォータトリム、デッキサイドトリム等の各種の内装材が挙げられる。
[1−1]繊維ボードの製造(実施例1及び比較例1)
<実施例1>
図1に示すように、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材1の両面側を金属部材3(アルミニウム合金製の板状部材、厚み;2mm)で挟持した状態にて、235℃で加熱した。尚、上記繊維基材としては、植物性繊維(ケナフ繊維)と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)との混合物に対して加熱加圧を行い、平板状としたものを用いた(目付け;1200g/m2、板厚;4mm)。
その後、図2に示すように、一対の金型5を備える開放型のプレス成形機を用いて、金属部材3が配されたままの繊維基材1に対して常温下にてプレス成形を行った。
次いで、40℃まで自然冷却した後、離型し、実施例1の繊維ボードを得た。
上記実施例1と同様の繊維基材を235℃で加熱した後、その両面側にポリテトラフルオロエチレン製の離型材を介在させた状態にて、開放型のプレス成形機を用いて常温下にてプレス成形を行った。
その後、40℃まで自然冷却した後、離型し、比較例1の繊維ボードを得た。
(1)評価方法
以下の方法により、実施例1及び比較例1の各繊維ボードにおける、表面意匠性、非吸水性及び吸音性について評価した。その結果を表1に示す。
<表面意匠性>
官能評価(目視確認)により表面意匠性を評価した。この際における基準を以下に示す。
「良好」;表面が平滑なフィルム状となっている。
「不良」;表面に凹凸がある。
<非吸水性>
水中に2時間浸漬する前後のサンプル重量を測定することにより吸水率(%)を測定し、この値により非吸水性を評価した。
<吸音性>
JIS A1405−2に準じて、垂直入射吸音率を測定することにより、1000〜6300Hzの平均吸音率(%)を算出し、この値により吸音性を評価した。
表1によれば、繊維基材の両面側に金属部材を介さずに、加熱工程及びプレス成形工程を行うことにより製造された比較例1の繊維ボードでは、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂の収縮や沈み込みにより、表面に凹凸が生じており、表面意匠性が不良であった。また、吸水率は43%であり、吸音率は21%であった。
これに対して、加熱工程及びプレス成形工程を、繊維基材の両面側を金属部材で挟持した状態にて行うことにより製造された実施例1の繊維ボードでは、各表面に繊維基材を構成する熱可塑性樹脂に由来する樹脂膜が形成されており、表面意匠性が良好であった。また、吸水率は29%であり、比較例1よりも約33%低く、非吸水性を備えていることが確認できた。更に、吸音率は42%であり、比較例1の倍の値となっており、吸音性を備えていることが確認できた。
<実施例2>
図3に示すように、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材1の両面側に、機能性シート[エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる不織布(ウェブ)]7を配設した。尚、上記繊維基材としては、植物性繊維(ケナフ繊維)と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)との混合物に対して加熱加圧を行い、平板状としたものを用いた(目付け;1600g/m2、板厚;2.3mm)。また、機能性シート7の目付けは、各面において45g/m2とした。
その後、図4に示すように、機能性シート7が配設された繊維基材1の両面側を金属部材3(アルミニウム合金製の板状部材、厚み;2mm)で挟持した状態にて、235℃で加熱した。
次いで、図5に示すように、一対の金型5を備える開放型のプレス成形機を用いて、金属部材3が配されたままの繊維基材1に対して常温下にてプレス成形を行った。
その後、40℃まで自然冷却した後、離型し、実施例2の繊維ボードを得た。
繊維基材の両面側に配設するEVOHウェブの目付けを、それぞれの面において、90g/m2に変更したこと以外は、上記実施例2と同様にして、実施例3の繊維ボードを製造した。
繊維基材の両面側に配設するEVOHウェブの目付けを、それぞれの面において、135g/m2に変更したこと以外は、上記実施例2と同様にして、実施例4の繊維ボードを製造した。
上記実施例2と同様の繊維基材を235℃で加熱した後、その両面側にポリテトラフルオロエチレン製の離型材を介在させた状態にて、開放型のプレス成形機を用いて常温下にてプレス成形を行った。
その後、40℃まで自然冷却した後、離型し、比較例2の繊維ボードを得た。
(1)評価方法
以下の方法により、実施例2〜4及び比較例2の各繊維ボードにおける、表面意匠性、ガスバリア性及び機械的強度について評価した。その結果を表2に示す。
<表面意匠性>
上述の実施例1と同様にして評価した。
<ガスバリア性>
5人のパネラーにより官能評価することにより、臭い強度、及び快・不快度を測定し、これらの値によりガスバリア性を評価した。尚、評価基準は下記の5段階評価とし、表には平均値を記載した。
(a)臭い強度;「5:非常に強い」、「4:かなり強い」、「3:強い」、「2:弱い」及び「1:無臭」の5段階で評価し、値が小さい方が好ましい。
(b)快・不快度;「−5:非常に不快」、「−4:かなり不快」、「−3:不快」、「−2:やや不快」及び「−1:気にならない」の5段階で評価し、値が大きい方が好ましい。
<機械的強度(曲げ強度)>
JIS K7171に準じて、3点曲げ試験を行い、測定された曲げ強度(MPa)により機械的強度を評価した。
表2によれば、繊維基材の両面側に機能性シートを配設せず、且つ金属部材を介さずに、加熱工程及びプレス成形工程を行うことにより製造された比較例2の繊維ボードでは、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂の収縮や沈み込みにより、表面に凹凸が生じており、表面意匠性が不良であった。また、臭い強度は3.2であり、快・不快度は−1.8であった。更に、曲げ強度は、35.6MPaであった。
これに対して、加熱工程及びプレス成形工程を、機能性シートが両面側に配設された繊維基材を金属部材で挟持した状態にて行うことにより製造された実施例2〜4の繊維ボードでは、各表面に機能性シートを構成する樹脂に由来する樹脂膜が形成されており、表面意匠性が良好であった。また、実施例2〜4の繊維ボードにおける曲げ強度は、44.5〜46.7MPaであり、比較例2よりも約25〜31%大きく、機械的強度に優れていることが確認できた。更に、実施例3〜4の繊維ボードでは、臭い強度が2.9であり、快・不快度が−1.5であり、比較例2よりもガスバリア性に優れていることが確認できた。
<実施例5>
繊維基材として、植物性繊維(ケナフ繊維)と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)との混合物に対して加熱加圧を行い、平板状としたもの(目付け;1600g/m2、板厚;2.3mm)を用いたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、実施例5の繊維ボードを得た。
(1)評価方法
実施例5の繊維ボードにおける、表面意匠性、ガスバリア性及び機械的強度について、上述の実施例2と同様にして評価し、その結果を表3に示す。
尚、繊維基材(熱可塑性繊維;PP)の両面側に機能性シートを配設せず、且つ金属部材を介さずに、加熱工程及びプレス成形工程を行うことにより製造された、上述の比較例2の繊維ボードを比較対象とした。
本実施例(特に、実施例1及び実施例5)によれば、熱伝導性の高い金属部材を配した状態にて繊維基材を加熱する加熱工程と、加熱工程後に、金属部材を配した状態のままプレス成形を行うプレス成形工程と、を備える特定の製造方法によって、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂が偏在して形成された熱可塑性樹脂膜を表面に備えており、表面意匠性に優れた繊維ボードを得られることが確認できた。更には、非吸水特性、吸音特性、ガスバリア特性等を発現させることができることが確認できた。
また、本実施例(特に、実施例2〜4)によれば、熱伝導性の高い金属部材を配した状態にて、機能性シートが配設された繊維基材を加熱する加熱工程と、加熱工程後に、金属部材を配した状態のままプレス成形を行うプレス成形工程と、を備える特定の製造方法によって、機能性シートを構成する樹脂が偏在して形成された樹脂膜を表面に備えており、表面意匠性に優れた繊維ボードを得られることが確認できた。更には、吸音特性、ガスバリア特性等を発現させることができるとともに、機械的強度を向上させることができることが確認できた。
Claims (6)
- 天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材の少なくとも一面側に、熱伝導性の高い金属部材を配した状態にて加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に、前記金属部材を配した状態のままプレス成形を行うプレス成形工程と、を備えることを特徴とする繊維ボードの製造方法。 - 前記金属部材の形状が板状又はシート状であり、且つその材質がアルミニウム系金属、銅系金属又は鉄系金属である請求項1に記載の繊維ボードの製造方法。
- 前記加熱工程においては、前記繊維基材と前記金属部材との間に、樹脂製の機能性シートを介在させて加熱を行う請求項1又は2に記載の繊維ボードの製造方法。
- 前記機能性シートは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)から構成されている請求項3に記載の繊維ボードの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた繊維ボードであって、
前記金属部材が配されていた側の表面には、前記繊維基材を構成する前記熱可塑性樹脂が偏在して形成された熱可塑性樹脂膜を備えていることを特徴とする繊維ボード。 - 請求項3又は4に記載の製造方法によって得られた繊維ボードであって、
前記金属部材が配されていた側の表面には、前記機能性シートを構成する前記樹脂が偏在して形成された樹脂膜を備えていることを特徴とする繊維ボード。
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