JP6451285B2 - 繊維ボード及びその製造方法 - Google Patents
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天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材がプレス成形されてなり、天面部とその周縁から延設される側壁部とからなる凸状部を備える繊維ボードの製造方法であって、
前記繊維基材に対し、前記凸状部を形成可能な基材成形型を用いてプレス成形を行うプレス成形工程を備えており、
前記プレス成形工程では、前記繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に不織布よりなる繊維シート(但し、メッシュ体を除く)が配された状態でプレス成形を行い、
前記繊維シートには切り欠き又は切り込みによる開放部が形成されており、
前記開放部は、前記繊維基材の前記凸状部形成領域における天面部形成領域に配置されており、且つ、前記プレス成形工程で前記繊維基材の伸ばされ方をより均一化するものであることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記基材成形型は、コア型及びキャビティ型よりなり、前記プレス成形工程では、前記配設を行った後に前記繊維基材を加熱し、前記加熱の後に前記繊維シートが前記配設された側が前記キャビティ型側となるように前記繊維基材を前記キャビティ型に載置し、前記載置後に冷間プレス成形を行うことを要旨とする。
前記凸状部の前記天面部及び前記側壁部における内面又は外面の一方には不織布よりなる繊維シート(但し、メッシュ体を除く)が配設されており、
前記繊維シートは、前記プレス成形の際に、前記繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に配されたものであり、前記繊維シートの外周領域は、全周に亘って前記繊維基材の基体に配されており、
前記天面部に配設された前記繊維シートには開口部が形成されており、且つ、前記天面部の前記周縁は、前記繊維シートの前記開口部以外の部位に覆われており、
前記開口部は、前記プレス成形の際に、前記繊維基材に配された前記繊維シートにおいて、前記凸状部形成領域における天面部形成領域に配置されるように形成された切り欠き又は切り込みによる開放部に由来するものであることを要旨とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4において、
前記開口部は、前記凸状部における前記天面部の中央部に対して選択的に配置されていることを要旨とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5において、
前記開口部は、1箇所に形成されており、前記切り欠きの形状が円形状、楕円形状若しくは多角形状、又は、前記切り込みの形状が円弧状、波状、線状、十字状、S字状、V字状若しくはT字状である前記開放部に由来することを要旨とする。
また、繊維シートに切り欠き又は切り込みによる開放部が形成されており、この開放部が繊維基材の凸状部形成領域における天面部形成領域に配置されている場合には、凸状部形成領域における繊維基材の伸ばされ方をより均一化することができ、目的の繊維ボードにおける凸状部の成形性をより向上させることができる。更には、凸状部を備える繊維ボードをより効率良く製造することができる。
更に、繊維シートを繊維基材の凸状部形成領域に対して選択的に配設する工程を備える場合には、繊維基材の所定の位置に繊維シートを確実に配設することができるとともに、プレス成形時における位置合わせが容易となり、凸状部を備える繊維ボードを効率良く製造することができる。
また、本願発明の繊維ボードでは、プレス成形の際に、繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して、繊維シートが選択的に配されているため、凸状部におけるスケの発生が抑制されている。
更に、凸状部における天面部に配設された繊維シートに特定の開口部が形成されている場合には、凸状部におけるスケの発生がより抑制された繊維ボードとすることができる。
[1]繊維ボードの製造方法
本発明は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材がプレス成形されてなり、天面部とその周縁から延設される側壁部とからなる凸状部を備える繊維ボードの製造方法である。具体的には、図1及び図2に示すように、繊維基材を賦形して得られる基体3と、その一面側に形成された、天面部5及びその周縁から延設される側壁部7からなる凸状部9と、凸状部9の天面部5及び側壁部7における内面又は外面の一方に配設された繊維シート13と、を備える繊維ボード1の製造方法である。
そして、この繊維ボードの製造方法は、繊維基材に対し、凸状部を形成可能な基材成形型を用いてプレス成形を行うプレス成形工程を備えていることを特徴とする。
上記基材成形型は、通常、一対の型により構成されており、型を閉じた際に、繊維基材をプレスして凸状部を備える所定の形状及び厚みに成形できるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、コア型及びキャビティ型により構成される金型等を挙げることができる。
尚、繊維シートの配設方法は特に限定されないが、例えば、予め加熱しておいた繊維基材に圧着したり、繊維基材に繊維シートを配置した後に同時に熱融着させて圧着したりすることで、繊維基材に繊維シートを配設することができる。
上記天然繊維は、特に限定されず種々のものを利用できる。即ち、天然繊維としては、植物繊維、動物繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、植物繊維が好ましい。
植物繊維は、植物に由来する繊維であり、植物から取り出した繊維や、これを加工した繊維が含まれる。植物繊維を得る植物としては、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、靭皮植物、即ち、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)が好ましい。靭皮植物は、一般に、成長が早く、優れた二酸化炭素吸収性を有する。このため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。更に、靭皮植物のなかでもケナフが好ましく、更には、ケナフの靭皮から採取されるケナフ繊維がより好ましい。
即ち、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。更に、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体(プロピレン・エチレンランダム共重合体等)、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。
更に、変性ポリオレフィン樹脂は、無水カルボン酸基、カルボン酸基、及び、カルボニル基のうちの少なくとも1種が導入された酸変性ポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。そのなかでも、無水カルボン酸基又はカルボン酸基が導入された酸変性ポリオレフィン樹脂であることが更に好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
尚、開放部は1箇所のみ形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。
また、本発明の繊維ボードは、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材がプレス成形されてなり、天面部とその周縁から延設される側壁部とからなる凸状部を備えている。そして、凸状部の天面部及び側壁部における内面又は外面の一方には繊維シートが配設されており、この繊維シートは、プレス成形の際に、繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に配されたものであることを特徴とする。
尚、繊維基材及び繊維シートの構成については、それぞれ、前述の記載のそのまま適用することができる。
また、繊維ボードの用途は特に限定されないが、例えば、自動車等の車両関連分野、船舶関連分野、航空機関連分野、建築関連分野等の広範な製品分野で用いることができ、特に車両用内装材として有用である。車両用内装材としては、例えば、ルーフトリム、ドアトリム、パッケージトレイ、デッキボード、クォータトリム、デッキサイドトリム等の各種の内装材が挙げられる。
[1]繊維ボードの製造(実施例1)
本実施例では、繊維基材を用いて、この繊維機材が成形されてなる基体と、その基体の一面側に形成された凸状部と、を備える繊維ボードを以下のようにして製造した(図1〜図7参照)。
具体的には、図1及び図2に示すように、繊維基材を賦形して得られる基体3と、その基体3の一面側に形成されており、天面部5とその周縁から延設される側壁部7とからなる凸状部9と、その凸状部9及びその周囲に選択的に配設されており、開口部11を有する不織布(繊維シート)13と、を備える車両用内装材(繊維ボード)1を製造した。
本実施例において用いられる繊維基材は、プレス成形により賦形され、凸状部を備える繊維ボードを構成するものである。
この繊維基材としては、植物性繊維(ケナフ繊維)に熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)を混合させたものに対して加熱加圧し、平板状としたものを用いた(目付け;1200g/m2)。
本実施例における繊維基材のプレス成形には、一対の基材成形型を備える冷間プレス成形機を用いた。
この冷間プレス成形機は、図3に示すように、コア型15及びキャビティ型17により構成される一対の金型(基材成形型)19を備えており、コア型15及びキャビティ型17には、一対の凸状部形成部位16、18が形成されている。
そして、この金型19は、コア型15とキャビティ型17を閉じた際に、これらの間で繊維基材をプレスして、凸状部を備えた所定の形状及び厚みに成形できるように設定されている。
まず、繊維基材21における凸状部形成領域23(図4参照)に、不織布13(構成繊維;PET樹脂、目付け;50g/m2)を配置した後、熱融着し、繊維基材21の一面側に不織布13を配設した(図5参照)。尚、図5に示すように、不織布13には切り欠き部(開放部)27が形成されており、この切り欠き部27が繊維基材21の凸状部形成領域23における天面部形成領域(図示せず)に位置するように不織布13が配設されている。
その後、繊維基材21を180〜210℃に加熱し、図6に示すように、不織布13が配設された側がキャビティ型17側となるように、キャビティ型17に載置した。この際、不織布13の位置が、キャビティ型17における凸状部形成部位18の位置に対応するように、繊維基材21を載置した。
次いで、図7に示すように、コア型15を用いて金型19を閉じ、繊維基材21の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に不織布13が配された状態にて、コア型15及びキャビティ型17を共に25℃、冷却時間20秒の条件にて、冷間プレス成形を行った。
次いで、金型19から成形品を取り出し、繊維基材21が成形されてなる基体3(縦;約1100mm×横;約700mmの略四角形)と、その基体3の一面側に形成された、天面部5(縦;約100mm×横;約100mmの四角形)及びその周縁から延設される側壁部7(高さ;約70mm)からなる凸状部9と、その凸状部9に選択的に配設されており、開口部11を有する不織布(繊維シート)13と、を備える車両用内装材1を得た(図1参照)。
尚、この際、不織布13における外周領域(幅10〜20mm)は、プレス成形により、基体3の平板部に配された状態となっている。
本実施例によれば、繊維基材21に対するプレス成形を、繊維基材21における凸状部形成領域23に、切り欠き部(開放部)27が形成された不織布(繊維シート)13が選択的に配設された状態で行っているため、凸状部形成領域23における繊維基材21の伸ばされ方を均一化することができる。そのため、繊維ボード1における凸状部9の成形性を向上させることができ、凸状部形成領域23において、プレス成形により材料が不均一に伸ばされて低密度となることで生じるスケの発生を抑制することができる。更には、繊維基材の全面に繊維シートを配設する必要がなく、凸状部形成領域23に対して選択的に不織布13を配設すればよいため、効率良く繊維ボード1を製造することができる。
(2−1)繊維ボードの製造(実施例2及び比較例1)
<実施例2>
繊維基材における不織布が熱融着される側の凸状部形成領域及びその周囲に、一辺が10mmの方眼を描き、凸状部の寸法を以下のように変更したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の繊維ボードを製造した(図8の左側参照)。
凸状部における天面部の寸法(縦×横);100mm×100mm
凸状部における側壁部の寸法(高さ);50mm
繊維基材における不織布が熱融着される側の凸状部形成領域及びその周囲に、一辺が10mmの方眼を描き、凸状部の寸法を以下のように変更し、且つ繊維基材の一面側全体に不織布を熱融着させたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1の繊維ボードを製造した(図8の右側参照)。
凸状部における天面部の寸法(縦×横);100mm×100mm
凸状部における側壁部の寸法(高さ);50mm
実施例2及び比較例1の各繊維ボード(図8参照)における側壁部を構成する4面の立ち壁(側壁)を、図面下側(図面手前側)、図面左側、図面上側(図面奥側)、図面右側の順に、A面、B面、C面、D面とした。そして、図9(実施例2)及び図10(比較例1)に示すように、予め繊維基材に描いておいた一辺が10mmの方眼を利用して、プレス成形によって凸状部を形成する際における各面の基材材料の伸び率を測定し、その結果を表1に示した。尚、伸び率の測定位置は、各面において、上部中央付近とした。
これに対して、繊維基材に対するプレス成形が、繊維基材における凸状部形成領域に不織布が選択的に配設された状態で行われた実施例2においては、A面の伸び率が130%、B面の伸び率が110%、C面の伸び率が115%、D面の伸び率が125%であり、比較例1よりも基材材料の伸び率を低く抑えることができることが確認できた。
そして、この結果から、繊維基材における凸状部形成領域に不織布が選択的に配設された状態でプレス成形を行うことによって、凸状部における基材材料の伸ばされ方を均一化することができ、繊維ボードにおける凸状部の成形性を向上させられることが分かった。
実施例2及び比較例1の各繊維ボードについて、不織布が配設されていない側から凸状部を目視し、その際のスケの度合いを目視にて比較評価した。また、その際における、不織布が配設されていない側からの画像を図11(実施例2)及び図12(比較例1)に示した。
その結果、図11及び図12からも確認できるように、繊維基材の一面側の全体に不織布(繊維シート)が配設された状態でプレス成形された比較例1の方が、繊維基材における凸状部形成領域に不織布が選択的に配設された状態でプレス成形された実施例2よりもスケが多く、その度合いが強かった。
そして、この結果から、繊維基材における凸状部形成領域に不織布が選択的に配設された状態でプレス成形を行うことによって、凸状部におけるスケの発生度合いを抑制することができ、繊維ボードにおける凸状部の成形性を向上させられることが分かった。
Claims (6)
- 天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材がプレス成形されてなり、天面部とその周縁から延設される側壁部とからなる凸状部を備える繊維ボードの製造方法であって、
前記繊維基材に対し、前記凸状部を形成可能な基材成形型を用いてプレス成形を行うプレス成形工程を備えており、
前記プレス成形工程では、前記繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に不織布よりなる繊維シート(但し、メッシュ体を除く)が配された状態でプレス成形を行い、
前記繊維シートには切り欠き又は切り込みによる開放部が形成されており、
前記開放部は、前記繊維基材の前記凸状部形成領域における天面部形成領域に配置されており、且つ、前記プレス成形工程で前記繊維基材の伸ばされ方をより均一化するものであることを特徴とする繊維ボードの製造方法。 - 前記プレス成形工程は、前記繊維シートを前記繊維基材の前記凸状部形成領域に対して選択的に配設する工程を備える請求項1に記載の繊維ボードの製造方法。
- 前記基材成形型は、コア型及びキャビティ型よりなり、
前記プレス成形工程では、前記配設を行った後に前記繊維基材を加熱し、前記加熱の後に前記繊維シートが前記配設された側が前記キャビティ型側となるように前記繊維基材を前記キャビティ型に載置し、前記載置後に冷間プレス成形を行う請求項2に記載の繊維ボードの製造方法。 - 天然繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維基材がプレス成形されてなり、天面部とその周縁から延設される側壁部とからなる凸状部を備える繊維ボードであって、
前記凸状部の前記天面部及び前記側壁部における内面又は外面の一方には不織布よりなる繊維シート(但し、メッシュ体を除く)が配設されており、
前記繊維シートは、前記プレス成形の際に、前記繊維基材の一方の面における凸状部形成領域に対して選択的に配されたものであり、且つ、前記繊維シートの外周領域は、全周に亘って前記繊維基材の基体に配されており、
前記天面部に配設された前記繊維シートには開口部が形成されており、且つ、前記天面部の前記周縁は、前記開口部以外の前記繊維シートに覆われており、
前記開口部は、前記プレス成形の際に、前記繊維基材に配された前記繊維シートにおいて、前記凸状部形成領域における天面部形成領域に配置されるように形成された切り欠き又は切り込みによる開放部に由来するものであることを特徴とする繊維ボード。 - 前記開口部は、前記凸状部における前記天面部の中央部に対して選択的に配置される請求項4に記載の繊維ボード。
- 前記開口部は、1箇所に形成されており、前記切り欠きの形状が円形状、楕円形状若しくは多角形状、又は、前記切り込みの形状が円弧状、波状、線状、十字状、S字状、V字状若しくはT字状である前記開放部に由来する、請求項4又は5に記載の繊維ボード。
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