JP6766548B2 - 内装部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]請求項1に記載の内装部品は、基材層と、前記基材層の一面側に接合された表皮層と、を有する内装部品であって、
前記基材層は、補強繊維と、前記補強繊維同士を結着している第1の熱可塑性樹脂と、を含み、
前記基材層の前記一面に対する対面と、前記表皮層の意匠面との間で縫製された糸によって前記意匠面に設けられた糸模様を有し、
前記糸が挿通されている、前記基材層に形成された針孔が、前記針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方で閉塞されていることを要旨とする。
[2]請求項2に記載の内装部品は、請求項1に記載の内装部品において、前記針孔は、前記基材層の前記対面側の前記開口部で閉塞されており、
前記針孔を閉塞している閉塞部は、縫製時に前記縫針が、前記基材層を貫通して、前記基材層の前記対面上に生じたバリが、前記針孔の前記開口部に埋め戻されてなることを要旨とする。
[3]請求項3に記載の内装部品は、請求項1に記載の内装部品において、前記糸は、第2の熱可塑性樹脂を含み、
前記針孔は、前記孔内で閉塞されており、
前記針孔を閉塞している閉塞部は、前記第2の熱可塑性樹脂が、前記孔内で溶融固化されてなることを要旨とする。
[4]請求項4に記載の内装部品は、請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の内装部品において、前記基材層のうち前記縫製された領域は、その周囲に比べて肉厚であることを要旨とする。
[5]請求項5に記載の内装部品の製造方法は、請求項1に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
縫針の貫通によって形成された針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程と、を備えることを要旨とする。
[6]請求項6に記載の内装部品の製造方法は、請求項2に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
前記縫針の貫通によって形成された針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部を閉塞する閉塞工程と、を備え、
前記閉塞工程は、前記糸模様形成工程において前記縫針が、前記基材層を貫通することによって、前記基材層の前記対面上に形成されたバリを、加熱軟化させて前記針孔の前記開口部に埋め戻す工程であることを要旨とする。
[7]請求項7に記載の内装部品の製造方法は、請求項3に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記第2の熱可塑性樹脂を含んだ前記糸を用いて、前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
縫針の貫通によって形成された前記針孔の孔内を閉塞する閉塞工程と、を備え、
前記閉塞工程は、前記第2の熱可塑性樹脂を、前記孔内で溶融固化させる工程であることを要旨とする。
[8]請求項8に記載の内装部品の製造方法は、請求項4に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形するとともに、圧縮を開放することにより周囲より肉厚な縫製用領域を形成する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記縫製用領域を縫針が貫通するように、前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
前記縫針の貫通によって形成された針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程と、を備えることを要旨とする。
これにより、本内装部品1は、基材層11を貫通させた糸2によって形成された意匠性の高い糸模様13を有しながら、糸模様13が縫製された領域111の機械的強度を、縫製前(即ち、糸模様13を備えない場合)よりも向上させることができる。
また、基材層11のうち縫製された領域111が、その周囲に比べて肉厚である場合には、この肉厚に形成された縫製用領域111(縫製により糸模様13が設けられて縫製された領域111となる)の密度が低下されるとともに、肉厚化により周囲113よりも高い機械的強度を有することができる。従って、糸模様13を備えるにも関わらず、周囲113よりも高い機械強度を有することができる。
更に、肉厚化により縫製用領域111は、周囲113よりも低い密度となるため、縫針を貫通し易くなり、縫針の摩耗を抑制でき、基材層11に糸2を貫通させながらも、生産効率よく内装部品1を製造できる。このため、意匠性の高い糸模様13を有しながらコスト安な内装部品1となる。
第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、繊維補強ボードの一面側に表皮層12を接合し、賦形された基材層11と、その一面11a側に接合された表皮層12とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
基材層11の対面11bと、表皮層12の意匠面12aとの間で縫製を行い、糸模様13を形成する糸模様形成工程と、
縫針の貫通によって形成された針孔14のうち基材層11の対面11b側の開口部141、及び、針孔14の孔内142、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程と、を備える。
これにより、基材層11を貫通させた糸2によって形成された意匠性の高い糸模様13を有しながら、糸模様13が縫製された領域111の機械的強度を、縫製前(即ち、糸模様13を備えない場合)よりも向上させることができる。
また、賦形工程において、第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形するとともに、圧縮を開放することにより周囲より肉厚な縫製用領域111を形成する場合には、縫製された領域111の機械的強度を、更に、向上させることができる。また、周囲より肉厚な縫製用領域111を形成しながら賦形することにより、肉厚であるにも関わらず、周囲113よりも密度が低く、縫針が貫通し易い縫製用領域111を形成できる。これにより、縫針の摩耗を抑制して、製造効率よく、意匠性の高い糸模様13を有する内装部品1を製造できる。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
本発明の内装部品(1)(図1〜図6参照)は、基材層(11)と、基材層(11)の一面(11a)側に接合された表皮層(12)と、を有する内装部品(1)であって、
基材層(11)は、補強繊維と、補強繊維同士を結着している熱可塑性樹脂と、を含み、
基材層(11)の一面(11a)に対する対面(11b)と、表皮層(12)の意匠面(12a)との間で縫製された糸(2)によって意匠面(12a)に設けられた糸模様(13)を有し、
糸(2)が挿通されている、基材層(11)に形成された針孔(14)が、針孔(14)のうち基材層(11)の対面(11a)側の開口部(141)、及び、針孔(14)の孔内(142)、のうちの少なくとも一方で閉塞されていることを特徴とする。
一方、図2及び図4において、(a)図は、基材層11の対面11b側の平面図である。また、(b)図は、(a)図内のZ−Z’における断面図である。
そして、図1及び図2に示す内装部品1に対し、図3及び図4に示す内装部品1は、縫製された領域111が、その周囲に比べて肉厚である点で異なる。即ち、図3及び図4に示す内装部品1は、肉厚部112を備えている。
この基材層11は、補強繊維と、補強繊維同士を結着している第1の熱可塑性樹脂(以下、単に「第1熱可塑性樹脂」ともいう)と、を含む。また、基材層11は、補強繊維及び第1熱可塑性樹脂繊維が一括に圧縮されたプレボード(基材層の前駆体)中の第1熱可塑性樹脂を軟化させて賦形された層であることが好ましい。このような基材層11では、厚みの小さい箇所と厚みの大きい箇所とを比較すると、厚みの大きい箇所の密度を、厚みの小さい箇所の密度よりも低くできる。
尚、本明細書では、以降、閉塞前の針孔14’と閉塞後の針孔14とを区別して記載することが煩雑であるため、必要な場合を除き、これらを区別することなく、針孔14と記載する。
しかしながら、本発明によれば、例えば、内装部品1に糸模様13としてラインステッチを形成した場合であっても、糸模様13のみを設けた場合よりも高い機械的強度が得られることは勿論のこと、糸模様13を設ける前よりも、更に、高い機械的強度を得ることができる。即ち、糸模様13を設けることにより、寧ろ、内装部品1の機械的強度を向上させることが可能となる。
更に、基材層11の補強繊維として植物繊維を用いた場合には、他繊維を補強繊維として用いる場合に比べて、針孔14(貫通孔の開口径)が大きくなる傾向にあり、強度低下がより大きく表れかねない。しかしながら、本内装部品1では、このような場合においても、糸模様13を設けることによって、これを設けない場合より、寧ろ、内装部品1の機械的強度を向上させることが可能となる。
このうち、開口部141で閉塞される場合(図5参照)、針孔14を閉塞している閉塞部145は、縫製時に縫針が基材層11を貫通して、基材層11の対面11b上に生じたバリを、針孔14の開口部141に埋め戻してなる閉塞部145であることが好ましい。
バリは、上述のように、縫製時に縫針が基材層11を貫通して形成されたものである。従って、バリは、例えば、基材層11の一面11a側から対面11b側へ向かって縫針が挿通された際や、基材層11に縫針が刺し込まれた後、対面11b側から一面11a側へ引き抜かれた際、に対面11b上に突出するように形成される。
バリの大きさ及び形状等は特に限定されないが、バリは、基材層11を構成した一部であり、基材層11を構成した、補強繊維及び第1熱可塑性樹脂を含む。そして、通常、バリは、対面11b上に突出されたとしても、一部で基材層11と接続された状態となっている。
従って、本発明において、対面11b上に生じたバリが、針孔14の開口部141に埋め戻されてなる閉塞部145は、針孔14の対面11b側の開口部141を閉塞しており、基材層11と同じ補強繊維と第1熱可塑性樹脂を含んで、基材層11の対面11b側の針孔14の開口部141と一体化された閉塞部である。
但し、閉塞部145による閉塞状態は特に限定されず、例えば、針孔14の対面11b側と一面11aとの各開口間で、光の通過及び通気が遮断されない程度に閉塞されてもよいし、光の通過は遮断されるが通気は遮断されない程度に閉塞されてもよいし、光の通過及び通気の両方が遮断されるように閉塞してもよい。
この場合、第1熱可塑性樹脂と、第2熱可塑性樹脂とは、同じ熱可塑性樹脂であってもよいし、異なる熱可塑性樹脂であってもよい。より具体的には、組成が同じ熱可塑性樹脂であってもよいし、組成が異なる熱可塑性樹脂であってもよい。また、組成は同じるが、融点(融点が不明な場合には溶融開始温度)が異なる熱可塑性樹脂であってもよい。特に、第1熱可塑性樹脂の融点(融点が不明な場合は溶融開始温度)をT1とし、第2熱可塑性樹脂の融点(融点が不明な場合は溶融開始温度)をT2とした場合、−20≦T1−T2≦35であることが好ましく、5≦T1−T2≦35であることがより好ましい。特に、−20≦T1−T2≦35である場合、とりわけ、−10≦T1−T2≦10であれば、第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とを共に溶融させることが可能となる。このため、基材層11を構成する第1熱可塑性樹脂と、糸2を構成する第2熱可塑性樹脂と、を孔内142で融合させることができる。この場合には、第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とが共に溶融された閉塞部145を得ることもできる。
これらの形態では、糸2を構成する第2熱可塑性樹脂以外の糸2を構成する材料は、通常、溶融されることなく形状を維持して閉塞部145内に維持され、第2熱可塑性樹脂が溶融されて、孔内142の内壁に融着することによって、孔内142を閉塞する閉塞部145を形成できる。
更に、肉厚に形成された縫製用領域111の密度は、その周囲に比べて低くなる。換言すれば、肉厚部112(縫製された領域111)の密度が、その周囲の非肉厚部に比べて低いということになる。このため、本内装部品1を製造する際には、縫針で基材層11を貫通し易くなって、縫針の摩耗を抑制できる。そして、縫針の摩耗を抑制できるので、縫製機械に装着された縫針の交換回数を軽減し、生産効率を向上させることができる。即ち、基材層11に糸2を貫通させた糸模様13を設けながら、機械的強度が寧ろ向上された内装部品1を効率よく製造できる。このため、意匠性の高い糸模様13を有しながらコスト安な内装部品1が得られる。
尚、縫製用領域111には、予備穴を設けてから縫製を行ってもよいが、通常、その必要がない。即ち、縫針が貫通するための予備穴を形成することなく縫針を貫通させることができる。
密度X(g/cm3)及び密度Y(g/cm3)の各々具体的な範囲は特に限定されないが、例えば、密度Y(g/cm3)は、0.30≦Y≦0.90とすることができ、0.33≦Y≦0.86が好ましく、0.37≦Y≦0.83がより好ましく、0.40≦Y≦0.80が特に好ましい。
このうち、葉脈系植物繊維としては、アバカ、サイザル、アガベ等が挙げられる。また、靭皮系植物繊維としては、フラックス、ジュート、ヘンプ、ケナフ、ラミー等が挙げられる。更に、木質系植物繊維としては、広葉樹及び針葉樹等から採取された植物繊維が挙げられる。その他の植物繊維としては、ココヤシ殻繊維、オイルパーム空果房繊維、稲わら繊維、麦わら繊維、タケ繊維、綿等が挙げられる。これらのなかでは、葉脈系植物繊維、靭皮系植物繊維及びその他の植物繊維が好ましい。
植物繊維の繊維径は特に限定されないが、平均繊維径が0.01〜2.5mmであることが好ましく、0.1〜2.0mmがより好ましく、0.3〜1.5mmが特に好ましい。
尚、上記平均繊維長は、JIS L1015に準拠し、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、伸張させずに真っ直ぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した値の平均値である。また、上記平均繊維径は、平均繊維長の測定に用いた合計200本の植物繊維を利用して測定される。即ち、各植物繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を利用して測定した値の平均値である。
即ち、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。更に、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体(プロピレン・エチレンランダム共重合体等)、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。
また、上述の表層及びクッション層以外にも、他層を備えることができる。他層としては、表層及びクッション層等の層間を接合する各種の接合用層を介することができる。接合用層としては、接着剤や、接合用の熱可塑性樹脂層等が例示される。また、内装部品1の積層方向への通気を抑制する通気抑制層等も例示される。これらの層は、1層のみを用いてもよく2層以上を併用してもよい。
上記のうち、ラインステッチは、ライン状の糸条であり、直線状の糸条であってもよく、曲線状の糸条であってもよい。また、ラインステッチは、1本の糸条から形成されていてもよく、2本以上(複数本)の並列された糸条によって、全体としてライン状に視認されるように形成されてもよい。
クロスステッチは、複数本のラインステッチ同士が交差して配置されたステッチである。ラインステッチ同士の交差角度は限定されない。このようなクロスステッチによって、例えば、キルティング模様を形成できる。
刺繍は、意匠面12a上に表れた糸条の集合体であり、全体としてライン状よりも複雑な模様を形成する糸模様13である。即ち、マーク、ロゴ、文字、図形、絵柄等の糸模様13が例示される。
具体的には、例えば、自動車のドアトリムの各部、アームレスト、アッパートリム、加飾パネル、オーナメントパネル、ロアトリム、ポケット(ドアトリムポケット)、クォータートリム等の各種のトリム部品や、サイドガーニッシュ、バックドアトリム等に施したラインステッチや刺繍が挙げられる。
また同様に、糸模様13として、クロスステッチを設ける場合、肉厚部112として、クロスステッチに沿った凸条を備えることができる。即ち、基材層11が、その対面11b側へ突出された格子条に配置された畝(凸条)を有し、この畝の凸頂に沿って糸模様13としてのクロスステッチを備えることができる。
更に、糸模様13として、刺繍を設ける場合、肉厚部112として、刺繍を構成する各糸条に沿って対応した畝(凸条)を備えることもできるが、刺繍の全体が含まれるように、この領域に対応して凸領域(肉厚部112)を備えることができる。即ち、基材層11の所定領域に、基材層11の対面11b側へ突出された他部よりも肉厚に形成された肉厚部112を有し、この肉厚部112内に糸模様13としての刺繍を備えることができる。
尚、全てのラインステッチ、クロスステッチ及び刺繍に対応して肉厚な領域を有することが好ましいが、一部に対応する肉厚な領域を備えない形態であっても本発明の効果が十分に得られる場合も当然ある。
第2熱可塑性樹脂は、糸2内にどのように含まれてもよい。例えば、構造繊維と共に、第2熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂繊維が、含まれた糸2にすることができる。具体的には、複数本の構造繊維糸と、複数本の第2熱可塑性樹脂繊維糸と、が混撚された糸2が挙げられる。この場合、第2熱可塑性樹脂繊維糸は、構造繊維糸の外側を囲むように配置された糸2であることができる。
また、糸2は、芯鞘構造とすることができる。具体的には、1本の構造繊維糸を芯材として、その外周に第2熱可塑性樹脂からなる鞘材として配置された芯鞘構造の糸2とすることができる。
具体的には、上記の構造繊維や芯材として、ポリエステル樹脂(融点210℃超のポリエチレンテレフタレート等)及びナイロンなどの融点200℃超の熱可塑性樹脂を用いることができる。一方、上記の第2熱可塑性樹脂繊維や鞘材として、ポリエチレン及び低融点ポリエステル(融点190℃以下の結晶性ポリエチレンテレフタレート)などの融点200℃以下の熱可塑性樹脂を用いることができる。
また、上述のように、上糸21及び下糸22を用いて糸模様13を形成する場合には、上糸21の繊度を下糸22の繊度よりも大きくすることが好ましい。この場合、上糸21の繊度は、850dtex以上1300dtex以下が好ましく、900dtex以上1250dtex以下がより好ましく、950dtex以上1200dtex以下が特に好ましい。一方、下糸22の繊度は、500dtex以上850dtex未満が好ましく、550dtex以上825dtex以下がより好ましく、600dtex以上800dtex以下が特に好ましい。
また、このように、糸2として上糸21と下糸22とを用いる場合であって、第2熱可塑性樹脂を含んだ糸を用いる場合には、上糸21には第2熱可塑性樹脂が含まれず、下糸22のみに第2熱可塑性樹脂が含まれた形態として用いることができる。
本発明の内装部品の製造方法(第1の方法)は、前述の本内装部品(1)の製造方法であって、
補強繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボード(11x)を加熱し、第1熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程(PR1)と、
第1熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボード(11x)を賦形する賦形工程(PR2)と、
賦形工程(PR2)とともに、又は、賦形工程(PR2)後に、繊維補強ボード(11x)の一面(11a)側に表皮層(12x)を接合し、賦形された基材層(11)と、その一面(11a)側に接合された表皮層(12)とを有する積層体(1x)を得る積層体形成工程(PR3)と、
基材層(11)の対面(11b)と、表皮層(12)の意匠面(12a)との間で縫製を行い、糸模様(13)を形成する糸模様形成工程(PR4)と、
縫針の貫通によって形成された針孔(14)のうち基材層(11)の対面(11b)側の開口部(141)、及び、針孔(14)の孔内(142)、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程(PR5)と、を備える(図9〜図12参照)。
繊維補強ボード11xの加熱条件等は、その構成材料等により適宜設定できる。具体的には、例えば、含まれる第1熱可塑性樹脂がポリオレフィンである場合には、70℃以上(繊維補強ボード11xの内部の温度)にまで加熱することが好ましい。この加熱温度は、更に、80℃以上150℃以下とすることが好ましく、85℃以上130℃以下とすることがより好ましく、90℃以上120℃以下とすることが特に好ましい。
この工程は、例えば、コールドプレス機52(図9及び図10参照)を用いて行うことができる。そして、賦形厚さは、キャビティのクリアランスを変化させることで制御できる。即ち、クリアランスが大きい領域では、第1熱可塑性樹脂による補強繊維に対する拘束がより多く解放されることで、圧縮開放され、厚く形成できる。
尚、糸模様13を設ける以前の積層体1xにおける縫製用領域111と、糸模様13を設けた後の内装部品1における縫製された領域111とは、糸模様13の有無のみが異なり、形状、幅、厚さ等は、糸模様13の有無に係らず、通常、同じである。従って、縫製用領域111の形態として、前述の縫製された領域111の記載をそのまま適用できる。
また、積層体形成工程PR3は、図10に示すように、賦形工程PR2とは別の工程として行うことができる。即ち、賦形済みの繊維補強ボード11xを、吸引テーブル53上にセットし、賦形済みの繊維補強ボード11xの対面側から吸引しながら、前駆表皮層12xを賦形済みの繊維補強ボード11xの一面に吸着させ、加熱することにより、接合することができる。繊維補強ボード11xは、先に説明したように多孔性を有するために、上述のような吸引が可能である。
接合時には、繊維補強ボード11x及び前駆表皮層12xの各々に熱可塑性樹脂が含まれる場合には、これらの熱可塑性樹脂を軟化・溶融させることで、両者の熱可塑性樹脂を利用して接合できる。また、熱可塑性樹脂とは別に、接着剤を単独又は併用することができる。
この閉塞工程(PR5)は、どのように行ってもよいが、前述のように、縫製時に形成されたバリ114が針孔14の開口部141に埋め戻されてなる閉塞部145を備えた内装部品1を得る場合には、糸模様形成工程PR4において縫針が、基材層11を貫通することによって、基材層11の対面11b上に形成されたバリ114を、加熱軟化させて針孔14の開口部141に埋め戻す工程(第2の方法)とすることができる(図1(c)、図3(c)、図12参照)。
また、バリ114の加熱は、基材層11の全部を加熱してもよいが、バリ114のみが軟化すればよいため、基材層11の対面11b側のみから加熱することもできる。加熱条件等は、加熱工程PR1におけると同様である。
尚、図9及び図10では、キャビティに凹部521を設けたコールドプレス機52を記載しているが、本方法(第1の方法〜第3の方法)では、キャビティに凹部521を備えないコールドプレス機52を用いても製造できる。
即ち、加熱工程PR1と、
第1熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボード11xを賦形するとともに、圧縮を開放することにより周囲113より肉厚な縫製用領域111を形成する賦形工程PR2と、
賦形工程PR2とともに、又は、賦形工程PR2後に、繊維補強ボード11xの一面側に表皮層12xを接合し、賦形された基材層11と、その一面11a側に接合された表皮層12とを有する積層体1xを得る積層体形成工程PR3と、
縫製用領域111を縫針が貫通するように、基材層11の対面11bと、表皮層12の意匠面12aとの間で縫製を行い、糸模様13を形成する糸模様形成工程PR4と、
縫針の貫通によって形成された針孔14のうち基材層11の対面11b側の開口部141、及び、針孔14の孔内142、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程PR5と、を備える内装部品1の製造方法により得ることができる。
糸模様形成工程PR4は、縫製用領域111を縫針が貫通するように、基材層11の対面11bと、表皮層12の意匠面12aとの間で縫製を行い、糸模様13を形成する工程である(図11参照)。この工程は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。糸2を構成する材料は限定されず、例えば、ポリエステル糸、ナイロン糸等を適宜利用できる。
この工程では、周囲113に比べて肉厚にされることで、密度が低くなった縫製用領域111に、縫針を貫通させて縫製を行うため、縫製のし易さと縫針の摩耗抑制とを得ながら、糸模様13の形成箇所の機械強度を低下させないようにすることができる。
また、本内装部品1では、糸模様13がラインステッチであり、縫製された領域111が、ラインステッチに沿ってライン状に肉厚である形態とすることができるが、このために、本製造方法では、ライン状に肉厚された縫製用領域111を形成することができる。
更に、本内装部品1では、縫製された領域111は、その周囲に対して5%以上肉厚にすることができるが、このために、本製造方法では、縫製用領域111を、その周囲113に対して5%以上肉厚に形成できる。
また、閉塞工程PR5は、第1の方法におけると同様にできる。
[1]試験片の作成
補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とを質量比50:50で混繊した後、圧縮して得られた、厚さ2mmの繊維補強ボード11xを用意した{補強繊維は、平均繊維長70mmのケナフ繊維であり、熱可塑性樹脂繊維は、ポリプロピレン(非変性:変性=95質量%:5質量%の混合樹脂)を紡糸した合成繊維(6dtex、平均繊維長51mm)である}。
この際、金型内に設けられた溝深さを調整し、基材層11の対面11bにライン状の縫製用領域111(幅D111=1cm)を設け、肉厚部112の厚さが異なる下記2種の積層体1x(2)及び(3)も形成した。
積層体1x(1):周囲113の厚さ2.5mm、縫製用領域111の厚さ2.5mm
積層体1x(2):周囲113の厚さ2.5mm、縫製用領域111の厚さ3.0mm
積層体1x(3):周囲113の厚さ2.5mm、縫製用領域111の厚さ3.5mm
尚、積層体1x(1)〜(4)の周囲113(厚さ2.5mm)の領域の密度は0.60g/cm3である。
この際、比較例2及び実施例1では、およそ2〜3cmの長さを縫製した時点で、縫針が過熱し、煙が発生したため、放冷しながら縫製を完了させたのに対し、実施例2及び実施例3では、終始問題無く縫製を行うことができた。
即ち、糸模様13を備えない比較例1の最大曲げ荷重が46Nであるのに対して、縫製を行って糸模様13を設けた比較例2の最大曲げ荷重は44Nに低下していることが分かる。しかしながら、縫製を行って糸模様13を設けながら、孔埋めを行った実施例1の最大曲げ荷重は52.4Nであり、縫製前に比べて寧ろ向上されていることが分かる。
更に、肉厚部を形成して、縫製のし易さを確保した実施例2〜3では、61.2〜70.2Nと、更に高い最大曲げ荷重が得られていることが分かる。
具体的には、自動車のドアトリム、アームレスト、アッパートリム、加飾パネル、オーナメントパネル、ロアトリム、ポケット(ドアトリムポケット)、クォータートリム等のトリム系部品;ピラーガーニッシュ;カウルサイドガーニッシュ(カウルサイドトリム);サイドエアバッグ周辺部品等のシート系部品;センタークラスター、レジスター、センターボックス(ドア)、グラブドア、エアバッグ周辺部品等のインストルメントパネル系部品;センターコンソール;オーバヘッドコンソール;サンバイザー;デッキボード(ラゲージボード)、アンダートレイ;パッケージトレイ;CRSカバー;シートサイドガーニッシュ;アシストグリップ;パッシングライトレバー等が挙げられる。
11;基材層、11a;基材層の一面、11b;基材層の対面、
111;縫製された領域(肉厚な領域)、縫製用領域、112;肉厚部、113;周囲、114;バリ、
12;表皮層、12a;表皮層の意匠面、
13;糸模様(ラインステッチ)、
14;針孔、14’;針孔、141;開口部、142;孔内、145;閉塞部、
2;糸(縫製糸)、21;上糸、22;下糸、
5:押圧ローラー、
1x;積層体、
11x;繊維補強ボード、
12x;表皮層(表皮層12の前駆体である前駆表皮層12x)、
PR1;加熱工程、
PR2;賦形工程、
PR3;積層体形成工程、
PR4;糸模様形成工程。
PR5;閉塞工程。
Claims (7)
- 基材層と、前記基材層の一面側に接合された表皮層と、を有する内装部品であって、
前記基材層は、補強繊維と、前記補強繊維同士を結着している第1の熱可塑性樹脂と、を含み、
前記基材層の前記一面に対する対面と、前記表皮層の意匠面との間で縫製された糸によって前記意匠面に設けられた糸模様を有し、
前記糸が挿通されている、前記基材層に形成された針孔が、前記針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方で閉塞されており、
前記針孔は、前記基材層の前記対面側の前記開口部で閉塞されており、
前記針孔を閉塞している閉塞部は、縫製時に前記縫針が、前記基材層を貫通して、前記基材層の前記対面上に生じたバリが、前記針孔の前記開口部に埋め戻されてなることを特徴とする内装部品。 - 前記基材層のうち縫製された領域は、その周囲に比べて肉厚である請求項1に記載の内装部品。
- 基材層と、前記基材層の一面側に接合された表皮層と、を有する内装部品であって、
前記基材層は、補強繊維と、前記補強繊維同士を結着している第1の熱可塑性樹脂と、を含み、
前記基材層の前記一面に対する対面と、前記表皮層の意匠面との間で縫製された糸によって前記意匠面に設けられた糸模様を有し、
前記糸が挿通されている、前記基材層に形成された針孔が、前記針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方で閉塞されており、
前記基材層のうち縫製された領域は、その周囲に比べて肉厚であることを特徴とする内装部品。 - 前記糸は、第2の熱可塑性樹脂を含み、
前記針孔は、前記孔内で閉塞されており、
前記針孔を閉塞している閉塞部は、前記第2の熱可塑性樹脂が、前記孔内で溶融固化されてなる請求項3に記載の内装部品。 - 請求項1に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
前記縫針の貫通によって形成された針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部を閉塞する閉塞工程と、を備え、
前記閉塞工程は、前記糸模様形成工程において前記縫針が、前記基材層を貫通することによって、前記基材層の前記対面上に形成されたバリを、加熱軟化させて前記針孔の前記開口部に埋め戻す工程であることを特徴とする内装部品の製造方法。 - 基材層と、前記基材層の一面側に接合された表皮層と、を有する内装部品であって、
前記基材層は、補強繊維と、前記補強繊維同士を結着している第1の熱可塑性樹脂と、を含み、
前記基材層の前記一面に対する対面と、前記表皮層の意匠面との間で縫製された糸によって前記意匠面に設けられた糸模様を有し、
前記糸が挿通されている、前記基材層に形成された針孔が、前記針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方で閉塞されており、
前記糸は、第2の熱可塑性樹脂を含み、
前記針孔は、前記孔内で閉塞されており、
前記針孔を閉塞している閉塞部は、前記第2の熱可塑性樹脂が、前記孔内で溶融固化されてなる
内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記第2の熱可塑性樹脂を含んだ前記糸を用いて、前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
縫針の貫通によって形成された前記針孔の孔内を閉塞する閉塞工程と、を備え、
前記閉塞工程は、前記第2の熱可塑性樹脂を、前記孔内で溶融固化させる工程であることを特徴とする内装部品の製造方法。 - 請求項3に記載の内装部品の製造方法であって、
前記補強繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含んで圧縮された繊維補強ボードを加熱し、前記第1の熱可塑性樹脂を軟化させる加熱工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が軟化された繊維補強ボードを賦形するとともに、圧縮を開放することにより周囲より肉厚な縫製用領域を形成する賦形工程と、
前記賦形工程とともに、又は、賦形工程後に、前記繊維補強ボードの一面側に前記表皮層を接合し、賦形された前記基材層と、その一面側に接合された前記表皮層とを有する積層体を得る積層体形成工程と、
前記縫製用領域を縫針が貫通するように、前記基材層の前記対面と、前記表皮層の前記意匠面との間で縫製を行い、前記糸模様を形成する糸模様形成工程と、
前記縫針の貫通によって形成された針孔のうち前記基材層の前記対面側の開口部、及び、前記針孔の孔内、のうちの少なくとも一方を閉塞する閉塞工程と、を備えることを特徴とする内装部品の製造方法。
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