JP4391525B2 - 発泡成形体及び発泡成形体の製造方法 - Google Patents

発泡成形体及び発泡成形体の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、自動車の座席等に取り付けられるヘッドレスト等の発泡成形体において、複数枚の表皮材を縫着して袋状の表皮を形成した発泡成形体、及びその発泡成形体の製造方法に関するものである。
通常、この種のヘッドレストは、複数枚の表皮材を縫製糸により縫着して袋状をなす表皮を形成し、その表皮の内部にステーを挿入するとともに、発泡原料を注入して発泡させることにより、発泡材が表皮と一体に成形されている。この場合、通常、表皮材はポリエステル等の繊維よりなる縫製糸を用いて、本縫縫目または環縫縫目により縫着される。
しかしながら、このような構成のヘッドレストにおいては、発泡原料の発泡時に、図16に示すように、本縫縫目または環縫縫目61の糸挿通孔62を通して、発泡原料65が表皮63の外表面側に漏洩することがある。この場合には、ヘッドレストとしての外観が損なわれる。そのために、図16に2点鎖線で示すように、糸挿通孔62の部分を覆うように、表皮63の内面に粘着テープ64を貼着して、この粘着テープ64により糸挿通孔62からの発泡原料の漏洩を防止するようにしたことも採用されてきた。しかしながら、この場合には、粘着テープ64を貼着するための工数が増えてしまうことになる。そればかりでなく、発泡原料の発泡にともなう表皮63の緊張により粘着テープ64が表皮63の内面から剥離して、漏洩防止機能が著しく低下してしまうこともあった。
このような問題に対処するために、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されるような構成のヘッドレストも従来から提案されている。すなわち、特許文献1の構成では、複数枚の表皮材を1本針・3本糸のオーバーロック縫により縫着し、その縫いピッチを1.5mm〜3.0mmの範囲内に設定している。また、特許文献2の構成では、複数枚の表皮材の縫い代部分を帯状のフィルムで被覆し、そのフィルムを表皮材に縫着している。さらに、特許文献3の構成では、複数枚の表皮材の縫着部分に伸縮可能な帯状テープを設け、その帯状テープを表皮材に縫着している。
特許文献1の構成では、縫目の縫糸が全体として二重になり、かつ、縫いピッチが前記の値に設定されているため、発泡圧によって縫製部に張力が作用しても、縫目の縫糸にかかる張力が分散される。これにより、縫目が開きにくくなって、発泡原料が糸挿通孔を通して漏洩しづらくなる。しかし、縫製部に作用する張力によって糸挿通孔に対して拡開方向への力が作用することは避けることができず、これがために、発泡原料の漏洩を有効に防止することはできなかった。
また、特許文献2及び特許文献3の構成では、表皮材の縫着部分にフィルムや帯状テープを置いて、それらを表皮材に縫着する必要があるため、部品点数が多くなるとともに、縫製作業が煩雑になる。しかも、この場合も前記と同様に、縫製部に作用する張力によってフィルムや帯状テープ、あるいは表皮材の糸挿通孔に対して拡開方向への力が作用する。このため、発泡原料の漏洩を有効に防止することはできなかった。
特開平8−309765号公報 特開平11−225846号公報 特開2003−103076号公報
この発明の目的は、フィルムや帯状テープを縫着するという煩雑な作業を行う必要がなく、表皮材の縫着を簡単に行うことができるようにすることにある。また、この発明の目的は、発泡原料の発泡時において、縫目の糸挿通孔を通って発泡原料が表皮の外表面側に漏洩するのを有効に防止することができるようにすることにある。
以上の目的を達成するために、発泡成形体に係る請求項1に記載の発明においては、複数枚の表皮材を縫製糸により縫着して表皮を形成し、その表皮を成形型にセットした状態で、その表皮の内部に発泡原料を注入して前記成形型内で発泡させることにより成形された発泡成形体において、前記縫製糸は針糸及びルーパー糸で構成されるとともに、前記表皮材は前記針糸及びルーパー糸よりなる環縫縫目により縫着され、前記針糸及びルーパー糸のうちの針糸のみに、融点が摂氏80〜140度の範囲内の低融点熱融着繊維を用い、前記針糸の低融点熱融着繊維は、前記発泡原料の発泡時の熱によって前記成形型内で溶融して表皮の糸挿通孔内の隙間を閉塞し、前記ルーパー糸は、前記発泡原料の発泡時の熱によって溶融しないことを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、低融点熱融着繊維の重量比が縫製糸全体に対して15〜70%の範囲内であることを特徴とする
請求項に記載の発明においては、請求項1又は請求項2に記載の発明において、低融点熱融着繊維が共重合ナイロンよりなることを特徴とする。
請求項に記載の発明においては、請求項1〜請求項のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記発泡成形体はヘッドレストであることを特徴とする。
発泡成形体の製造方法に係る請求項に記載の発明においては、複数枚の表皮材を縫製糸により縫着して表皮を形成し、その表皮を成形型にセットした状態で、表皮の内部に発泡原料を注入して前記成形型内で発泡させることにより成形する発泡成形体の製造方法において、前記縫製糸を針糸及びルーパー糸で構成するとともに、前記表皮材を前記針糸及びルーパー糸よりなる環縫縫目により縫着し、前記針糸及びルーパー糸のうちの針糸のみに、融点が摂氏80〜140度の範囲内の低融点熱融着繊維を用い、前記発泡原料を加熱して発泡させる際、該発泡時の熱によって前記成形型内で前記針糸の低融点熱溶着繊維が溶融して表皮の糸挿通孔内の隙間を閉塞し、前記ルーパー糸は前記発泡時の熱によって溶融しないことを特徴とする。
(作用)
この発明においては、複数枚の表皮材を縫着するための縫製糸が発泡成形体の製造時に溶融して、表皮の糸挿通孔内の隙間を閉塞するため、この糸挿通孔を通って、発泡原料が表皮の外表面側に漏洩するのを防止することができる。
また、低融点熱融着繊維の融点が摂氏80〜140度の範囲内なので、発泡原料の発泡時の熱によって低融点熱融着繊維を溶融させることができ、ヒータ等の加熱手段による加熱は不要となる。
製糸を高融点熱融着繊維と、低融点熱融着繊維とにより構成し、低融点熱融着繊維の
溶融により糸挿通孔を閉塞するようにした場合、低融点熱融着繊維の重量比が縫製糸全体に対して15〜70%の範囲内に設定されるようにすれば、その量が適切であるため、縫目の糸挿通孔を有効に閉塞できる。
第1の実施形態のヘッドレストを示す斜視図である。 図1のヘッドレストの製造方法を示す断面図である。 表皮材の縫着部分の縫目(本縫縫目)を示す部分断面図である。 表皮材の縫着部分の別の縫目(環縫縫目)を示す部分断面図である。 表皮材の縫着に使用される縫製糸を概略的に示す部分正面図である。 図5の縫製糸の拡大断面図である。 a及びbは、第2の実施形態を示す断面図である。 図7a及び図7bに示されるマイクロカプセルの断面図である。 第1の実施形態の変形例を示す断面図である。 第1の実施形態の別の変形例を示す断面図である。 第1の実施形態のさらに別の変形例を示す断面図である。 第1の実施形態のさらに別の変形例を示す断面図である。 第2の実施形態の変形例を示す断面図である。 第2の実施形態の別の変形例を示す断面図である。 第2の実施形態のさらに別の変形例を示す断面図である。 従来例を示す断面図である。
(第1の実施形態)
以下に、この発明の第1の実施形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の発泡成形体としてのヘッドレスト11は、パッド部12と、そのパッド部12内に基端部を埋設してなる全体としてほぼU字状をなすステー13とから構成されている。すなわち、前記パッド部12においては、表皮14内にステー13が挿入されるとともに、その状態でこれらを成形型15A,15B,15Cにセットする。そして、この状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料16を注入して、その発泡原料16を発泡膨張させることにより、発泡材17を表皮14と一体に成形した構成になっている。なお、表皮14は、ファブリックの裏面に、弾性材の層と、液体を透過させない膜(ともに図示しない)とを積層して構成されている。
図1及び図2に示すように、前記表皮14は所定形状に裁断した複数枚の周面表皮材14aをその端縁において縫目18により縫着してほぼ筒状に連結するとともに、その周面表皮材14aの左右両側に一対の側面表皮材14b,14cを縫目18により縫着して、前記のように全体として袋状となるように形成されている。表皮14の底部中央には、表14内にステー13を挿入したり発泡原料16を注入したりするための開口部19が形成されている。また、開口部19の両側近傍に位置するように、表皮14の底部中央には、ステー13の脚部13aを挿通するための一対のステー挿通孔20が形成されている。
前記表皮材14a〜14cを縫着する縫目18としては、図3に示すように、上糸21及び下糸22よりなる本縫縫目18Aと、図4に示すように、針糸23及びルーパー糸24よりなる二重環縫縫目(以下、単に環縫縫目という)18Bとのいずれか一方、あるいは双方が用いられている。本縫縫目18Aと環縫縫目18Bとを併用する場合は、伸縮性を要求される部分や、表皮材14a〜14cの繊維が解れやすい部分に環縫縫目18Bを用いるとよい。そして、縫目18を構成する縫糸21,22,23,24は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロン、アクリル樹脂等の合成繊維よりなる熱融着繊維、レーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛等の天然繊維が用いられる。この実施形態では、レーヨン等の再生繊維は天然繊維として定義する。また、後述する説明から明らかになるが、前記熱融着繊維としては、低融点熱融着繊維26と、高融点熱融着繊維27とが設けられている。さらに、説明の便宜上、以降の説明においては、高融点熱融着繊維27は、合成樹脂よりなる高融点熱融着繊維及び天然繊維のうちの少なくともいずれか一方を備えたもの(高融点熱融着繊維及び/または天然繊維)と定義する。そして、この第1の実施形態においては、低融点熱融着繊維26を含む縫糸21,22,23,24を縫製糸25とする。
本縫縫目18Aの場合には、上糸21として高融点ポリエステル等の高融点熱融着繊維よりなるものが使用されている。また、下糸22としては、前記高融点熱融着繊維と、低融点熱融着繊維とよりなる縫製糸25が使用されている。環縫縫目18Bの場合には、ルーパー糸24として高融点ポリエステル等の高融点熱融着繊維よりなるものが使用されている。また、針糸23としては、前記高融点熱融着繊維と、低融点熱融着繊維よりなる縫製糸25が使用されている。
図5及び図6に示すように、前記縫製糸25は、複数本、例えば3本の細糸25a,25b,25cを撚り合せまたは引き揃えて構成されている。これらの細糸25a,25b,25cのうちで、例えば、1本の細糸25aは、多数の低融点熱融着繊維26を撚り合わせまたは引き揃えることにより形成されている。残りの細糸25b,25cは、多数の高融点熱融着繊維27を撚り合わせまたは引き揃えることにより形成されている。
そして、この実施形態では、前記低融点熱融着繊維26の重量比が、縫製糸25全体に対して15〜70%の範囲内となるように設定されている。これらの低融点熱融着繊維26としては、6ナイロン、あるいは66ナイロン等により形成されるナイロン繊維、低融点ポリエステル繊維、低融点ポリオレフィン繊維、低融点アクリル繊維等が用いられる。これらの低融点熱融着繊維26は、融点が摂氏80〜140度の範囲内であり、発泡原料16の発泡時の熱により、この低融点熱融着繊維26が溶融されて、縫製糸25の形態が変化するようになっている。
次に、前記のように構成されたヘッドレスト11の製造方法について説明する。
さて、このヘッドレスト11の製造時には、図1〜図4に示すように、まず複数枚の周面表皮材14a及び側面表皮材14b,14cを本縫縫目18Aまたは環縫縫目18B、あるいは双方の縫目18A,18Bにより全体として袋状に縫着した後に表裏反転させて、表皮14を形成する。この場合、本縫縫目18Aの下糸22または環縫縫目18Bの針糸23として、前記のように低融点熱融着繊維26を含む縫製糸25を使用する。
その後、表皮14内にステー13を通すとともに、それらを成形型15A〜15Cにセットする。この状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料16を注入して発泡膨張させることにより、発泡材17を表皮14と一体に成形して、所定形状のパッド部12を形成する。
このパッド部12の成形時には、発泡原料16の発泡に伴って摂氏120〜140度の発泡熱が発生し、表皮14がほぼ同温度で加熱される。このとき、本縫縫目18Aの下糸22または環縫縫目18Bの針糸23として、前述した融点の低融点熱融着繊維26を含む縫製糸25が用いられているため、その縫製糸25の低融点熱融着繊維26が溶融して、縫目18A,18Bにおいて縫製糸25が通る糸挿通孔28の内周面と縫製糸25の外周面との隙間や、縫製糸25の繊維間の隙間が閉塞される。このため、発泡原料16の発泡時に、その発泡圧力により表皮14が緊張されて、縫目18A,18Bに形成された糸挿通孔28が拡開され、糸挿通孔28の内面と縫製糸25との間に大きな隙間が形成されても、その隙間はナイロン等の溶融樹脂により塞がれる。従って、発泡原料16が糸挿通孔28を通って表皮14の外表面側に漏洩することを有効に防止することができる。しかも、この実施形態の構成は、前述した従来構成とは異なり、テープ等の別部品を使用するものではないため、部品点数が増えたり、工数が増えたりすることはない。
さらに、本縫縫目18Aの上糸21及び環縫縫目18Bのルーパー糸24として、高融点熱融着繊維よりなる通常の縫製糸が使用されるとともに、本縫縫目18Aの下糸22または環縫縫目18Bの針糸23にも、高融点熱融着繊維27が含まれている。このため、発泡原料16の発泡熱が発生しても、これらの高融点熱融着繊維は溶融されず、縫目18A,18Bが原形状態に保持される。よって、表皮14の縫着部分に緩みが生じるおそれを防止することはなく、締まりのよい縫目18A,18Bを得ることができる。加えて、本縫縫目18Aにおいては、比較的延びやすい低融点熱融着繊維26が下糸22に使用されて、ミシンの糸調子器や天秤等から糸調子張力が付与される上糸21には使用されていないため、縫目18Aに糸調子設定を正確に反映させて、結節点の位置や糸締まりを適切に設定できる。また、環縫縫目18Bにおいては、糸挿通孔28のほぼ全長を通る針糸23に低融点熱融着繊維26を使用したため、糸挿通孔28からの発泡樹脂の漏洩を有効に防止できる。
しかも、この実施形態では、低融点熱融着繊維26の重量比が、縫製糸25全体に対して15〜70%の範囲内となるように設定されているため、糸挿通孔28の閉塞を効果的に実行できる。これに対し、低融点熱融着繊維26の重量比が、縫製糸25全体に対して15%未満の場合は、低融点熱融着繊維26の量が少なく、前記の糸挿通孔閉塞を有効に行い得ない。また、低融点熱融着繊維26の重量比が、縫製糸25全体に対して70%を越える場合は、低融点熱融着繊維26の占める割合が高いため、低融点熱融着繊維26が溶融した後の縫目18の強度が不足する可能性がある。
さらに、低融点熱融着繊維26として、融点が摂氏80〜140度の範囲内のものが用いられているため、実施形態のように、ウレタン系の発泡材料の発泡時の熱を利用して低融点熱融着繊維26を溶融させることができる。このため、ヒータ等の専用の加熱手段による加熱は不要となり、製造装置の構成に加熱手段を設ける必要がなく、製造装置の構成が簡単になる。
(第2の実施形態)
次に、この発明の第2の実施形態を図7a〜図8に基づいて説明する。
この第2の実施形態においては、縫製糸25として、縫製時における同縫製糸25と表皮材14a,14b,14cとの間に発生する摩擦熱により膨張して形態変化する特性のものを用いている。すなわち、図7a及び図7bに示すように、この第2の実施形態の縫製糸25を構成する上糸21及び下糸22あるいは環縫の針糸23の細糸25a,25b,25cとして前記第1の実施形態の高融点熱融着繊維または天然繊維と同様な高融点熱融着繊維27が用いられ、この高融点熱融着繊維27に粒子としてのマイクロカプセル51を混入したバインダをコーティング及び/または含浸して、マイクロカプセル51がほぼ均一な密度で分散されている。ここで、図7bに示す52は、マイクロカプセル51を有するコーティング層を示す。従って、上糸21及び下糸22、あるいはルーパー糸24は多数のマイクロカプセル51を内包していることになり、マイクロカプセル51を有する糸が縫製糸25を構成する。マイクロカプセル51を接着するための接着剤としては、特に限定しないが、通常はスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)や、アクリル系共重合体、ウレタン系共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が用いられる。マイクロカプセル51は、図8に示すように、外殻51aの内部に膨張剤としての低沸点の揮発液51bが密封されて構成されている。そして、前記表皮材14a,14b,14cに対して縫製糸25による縫製が行われると、表皮材14a,14b,14cと縫製糸25との間に発生する摩擦熱により、前記マイクロカプセル51内の揮発液51bが気化して、マイクロカプセル51が膨張する。この膨張率は、膨張前の大きさに対して、寸法比で4〜30倍程度である。
このため、図7aに2点鎖線で示すように、細糸25a,25b,25cが径方向に大きく膨張して、大径になる。従って、縫製糸25の外周面と糸挿通孔28の内周面との間、あるいは細糸25a,25b,25c間に形成された隙間が細糸25a,25b,25cの膨張により閉塞される。そして、前記摩擦熱をあまり受けずに膨張しなかったマイクロカプセル51は、発泡原料16の発泡膨張行程において、その発泡熱により膨張される。従って、閉塞されずに残っていた隙間はほぼ完全に閉塞される。
よって、この第2の実施形態においても、前記第1の実施形態と同様に、発泡原料16が糸挿通孔28から外部に漏洩するのを有効に阻止できるとともに、テープ等の別部品が不要であるので、部品点数が少なく、縫製を簡単に行うことができる。なお、マイクロカプセル51の膨張圧力は、細糸25a,25b,25cの延長方向にも作用する。しかし、マイクロカプセル51の膨張圧力よりも細糸25a,25b,25cを構成する繊維の張力が勝るため、細糸25a,25b,25cが伸長することはない。従って、縫製糸25の糸締まりが緩むことはなく、表皮材14a,14b,14cの縫い合わせがずれたりするようなことはない。なお、縫製終了後に、ヘッドレストの成形が終了して、長時間経過すると、マイクロカプセル51が萎むこともあるが、この場合には、発泡原料16の発泡が終了しているため、糸挿通孔28からの漏洩は生じない。
ここで、前記マイクロカプセル51は、直径が5〜50μm程度の球殻状をなしている。そして、その外殻51aは、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリアクロルニトリル等のうちのいずれかによって構成されている。また、外殻51a内の揮発液51bは、ブタン,ヘキサン,ペンタン,イソブタン等の揮発性炭化水素よりなる。
さらに、細糸25a,25b,25cを構成する繊維とマイクロカプセル51との割合は、繊維100重量部に対して、マイクロカプセル51が3〜30重量部である。この場合、マイクロカプセル51が3重量部未満では、細糸25a,25b,25cの膨張量が不十分となって隙間の閉塞効果が低下する。一方、マイクロカプセル51が30重量部を越えると、繊維量が少なくなって細糸25a,25b,25cの強度が低下するとともに、細糸25a,25b,25cの表面が粗状になって、縫製糸25の表面の摩擦抵抗が増して、縫製に悪影響を及ぼす。
(その他の実施形態)
なお、この発明は、次のように変更した実施形態として具体化することも可能である。
・ 前記第1の実施形態において、図9に示すように、縫製糸25のすべての細糸25a〜25cを、低融点熱融着繊維26と高融点熱融着繊維27とを撚り合わせまたは引き揃えることにより形成し、低融点熱融着繊維26の重量比を縫製糸25全体に対して、15〜70%の範囲内となるように設定すること。
・ 第1の実施形態において、図10に示すように、縫製糸25の各細糸25a〜25cを、高融点熱融着繊維27を撚り合わせまたは引き揃えることにより形成するとともに、それらの外周に低融点熱融着繊維と同質の樹脂材料よりなるコーティング30を施して構成すること。この場合、各細糸25a〜25cとして、低融点熱融着繊維を含む構成にしても構わない。
・ 第1の実施形態では、発泡原料16の発泡時の熱を利用して低融点熱融着繊維が溶融されるように構成したが、ヘッドレスト製造時における他の熱源を利用して低融点熱融着繊維を溶融させること。例えば、成形型15A,15B,15Cを加熱してその熱により溶融させたり、あるいは表皮14の縫製終了時に熱プレスにより加熱して溶融させたりすること。
・ 第1の実施形態において、低融点熱融着繊維26を、本縫縫目18Aの上糸21のみに用いたり、上糸21及び下糸22の双方に用いたりすること。また、低融点熱融着繊維26を環縫縫目18Bの針糸23及びルーパー糸24の双方に用いること。
・ 第1の実施形態において、図11に示すように、縫製糸25全体の外周面に低融点熱融着樹脂よりなるコーティング31を設けること。従って、この図11の場合の縫製糸25には低融点熱融着繊維26を設ける必要がない。
・ 第1の実施形態において、図12に示すように、細糸25a〜25cを構成する高融点熱融着繊維27の外周に低融点熱融着樹脂よりなるコーティング32を設けること。従って、この図12の場合の縫製糸25にも低融点熱融着繊維26を設ける必要がない。
・ 第2の実施形態において、図13に示すように、マイクロカプセル51の膨張剤としての揮発液51bの代わりに、固形のガス発生剤51c、例えばアジ化ナトリウムを用いること。
・ 第2の実施形態において、図14に示すように、縫製糸25の細糸25a〜25cとして、マイクロカプセル51を有するもの、マイクロカプセル51を有しないものを設けること。図14では、細糸25a〜25cを3本とし、マイクロカプセル51を有する細糸を1本としたが、これに限定されない。
・ 第2の実施形態において、図15に示すように、細糸25a〜25cを一本の高融点熱融着繊維27で構成し、この細糸25a〜25c内にその長さ方向に延びる形成した孔53内に固形状のガス発生剤51cを充填すること。従って、この場合には、高融点熱融着繊維27そのものが膨張する。なお、縫製糸25を構成する細糸25a〜25cはそれぞれ1本で、長く、かつ縫製に際しては、糸挿通孔28ごとに縫製糸25どうしの絡み合い部分が形成される。このため、細糸25a〜25cの両端の切断により、孔53の両端が開放されていたとしても、発生したガスは短時間のうちにはほとんど抜けず、細糸25a〜25cを径方向に膨張させる。
・ 第2の実施形態において、マイクロカプセル51等を備えて膨張機能を有する糸を、本縫において上糸、下糸の一方のみとすること。あるいは環縫において、針糸及びルーパー糸の双方とすること。
・ 各実施形態において、縫目として、環縫縫目を採用する場合、二重環縫縫目以外の単環縫目、3重環縫縫目等とすること。この場合、少なくとも表皮材14a,14b,14cを貫通する糸に低融点熱融着繊維26を用いる。
・ 各実施形態において、表皮14として、ファブリックの代わりに、レザーまたは人工レザー、あるいはビニルを用いること。
・ この発明をヘッドレスト以外の発泡成形体、すなわち複数枚の表皮材を縫着して表皮を形成するとともに、表皮内において発泡樹脂原料を発泡膨張させて成形したもの、例えば、シートの背もたれ部や着座部等の発泡成形体において具体化すること。

Claims (5)

  1. 複数枚の表皮材を縫製糸により縫着して表皮を形成し、その表皮を成形型にセットした状態で、表皮の内部に発泡原料を注入して前記成形型内で発泡させることにより成形された発泡成形体において、
    前記縫製糸は針糸及びルーパー糸で構成されるとともに、前記表皮材は前記針糸及びルーパー糸よりなる環縫縫目により縫着され、
    前記針糸及びルーパー糸のうちの針糸のみに、融点が摂氏80〜140度の範囲内の低融点熱融着繊維を用い、
    前記針糸の低融点熱融着繊維は、前記発泡原料の発泡時の熱によって前記成形型内で溶融して表皮の糸挿通孔内の隙間を閉塞し、前記ルーパー糸は、前記発泡原料の発泡時の熱によって溶融しないことを特徴とする発泡成形体。
  2. 前記低融点熱融着繊維の重量比が縫製糸全体に対して15〜70%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
  3. 前記低融点熱融着繊維が共重合ナイロンよりなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡成形体。
  4. 前記発泡成形体はヘッドレストであることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の発泡成形体。
  5. 複数枚の表皮材を縫製糸により縫着して表皮を形成し、その表皮を成形型にセットした状態で、表皮の内部に発泡原料を注入して前記成形型内で発泡させることにより成形する発泡成形体の製造方法において、
    前記縫製糸を針糸及びルーパー糸で構成するとともに、前記表皮材を前記針糸及びルーパー糸よりなる環縫縫目により縫着し、
    前記針糸及びルーパー糸のうちの針糸のみに、融点が摂氏80〜140度の範囲内の低融点熱融着繊維を用い、
    前記発泡原料を加熱して発泡させる際、該発泡時の熱によって前記成形型内で前記針糸の低融点熱溶着繊維が溶融して表皮の糸挿通孔内の隙間を閉塞し、前記ルーパー糸は前記発泡時の熱によって溶融しないことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
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