JP2019155797A - 表皮材付き繊維含有樹脂成形体、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維含有樹脂成形体の表面に直接、表皮材が十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き繊維含有樹脂成形体等の提供。【解決手段】本発明の表皮材付き繊維含有樹脂成形体1は、植物性繊維と、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなる高強力繊維とを含む繊維含有樹脂成形体2と、繊維含有樹脂成形体2の表面2aに直接、貼り付けられる表皮材3とを備える。繊維含有樹脂成形体2における植物性繊維の含有率が、23質量%以上45質量%以下であり、熱可塑性樹脂の含有率が、38質量%以上55質量%以下であり、高強力繊維の含有率が、7質量%以上32質量%以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、表皮材付き繊維含有樹脂成形体、及びその製造方法に関する。
植物性繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造の植物性繊維複合材(以下、複合材)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の複合材は、剛性を備えつつ、軽量であり、かつ曲げ強さ等の機械的特性に優れているため、例えば、車両用の内装材(ドアトリム等)として用いられている。
前記複合材は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含むプレボードを、所定の金型を利用して成形したものからなる。プレボードは、植物性繊維と、熱可塑性樹脂からなる繊維(熱可塑性樹脂繊維)とを混繊して形成された繊維マットが、加熱圧縮されたものからなる。このようなプレボードは、成形直前に、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱されるため、それまで圧縮されて小さくまとまっていた植物性繊維が膨張等することにより、厚みが大きくなる。厚みが大きくなったプレボードは、金型によって厚み方向に潰しこまれることで、所定形状に成形される。
ところで、複合材の表面に表皮材が設けられる場合がある。このような表皮材は、例えば、プレボードの成形と同時に、プレボードの表面に貼り付けられる。成形時のプレボードの表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂が存在しており、そのような熱可塑性樹脂を利用して、表皮材がプレボード(複合材)に接着される。
プレボードの成形と同時に表皮材の貼り付けを行うと、表皮材と複合材との間の密着力が不足する場合があった。プレボードの厚みは、輸送や保管等の観点からは、小さい方が好ましいものの、成形直前に加熱された状態のプレボードの厚みは、金型のクリアランスよりも、ある程度、大きくなる必要がある。しかしながら、従来は、加熱してもプレボードの厚みが十分に大きくならず、金型がプレボード及び表皮材を挟み込む力が不足する等して、表皮材がプレボードに密着せず、表皮材が複合材から剥がれてしまう場合があった。
本発明の目的は、繊維含有樹脂成形体の表面に直接、表皮材が十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き繊維含有樹脂成形体、及びその製造方法を提供することである。
本発明に係る表皮材付き繊維含有樹脂成形体は、植物性繊維と、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなる高強力繊維とを含む繊維含有樹脂成形体と、前記繊維含有樹脂成形体の表面に直接、貼り付けられる表皮材とを備え、前記繊維含有樹脂成形体における前記植物性繊維の含有率が、23質量%以上45質量%以下であり、前記熱可塑性樹脂の含有率が、38質量%以上55質量%以下であり、前記高強力繊維の含有率が、7質量%以上32質量%以下である。
前記表皮材付き繊維含有樹脂成形体において、前記高強力繊維の引張弾性率が、4000MPa以上であることが好ましい。
前記表皮材付き繊維含有樹脂成形体において、前記高強力繊維は、高強力ポリエステル繊維であることが好ましい。
前記表皮材付き繊維含有樹脂成形体において、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
前記表皮材付き繊維含有樹脂成形体において、前記植物性繊維は、ケナフ繊維であることが好ましい。
また、本発明に係る表皮材付き繊維含有樹脂成形体の製造方法は、含有率が23質量%以上45質量%以下である植物性繊維と、含有率が38質量%以上55質量%以下である熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなり、かつ含有率が7質量%以上32質量%以下である高強力繊維とを含むプレボードを、前記熱可塑性樹脂が溶融する温度以上でありかつ前記高強力繊維が繊維状態を維持可能な温度で加熱して、前記プレボードを厚み方向に膨張させる工程と、膨張後の前記プレボードが、その表面に表皮材が重ねられた状態で、プレス成型装置を利用して圧縮されつつ、前記表皮材が前記プレボードの前記表面に貼り付けられる工程とを備える。
本発明によれば、繊維含有樹脂成形体の表面に直接、表皮材が十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き繊維含有樹脂成形体、及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態の表皮材付き繊維含有樹脂成形体1について、図1〜図5を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の表皮材付き繊維含有樹脂成形体1の断面構成を模式的に表した説明図である。表皮材付き繊維含有樹脂成形体1(以下、単に「表皮材付き成形体1」と称する場合がある。)は、繊維含有樹脂成形体2(以下、単に「成形体2」と称する場合がある。)と、成形体2の表面に直接、貼り付けられる表皮材3とを備えている。
成形体2は、表皮材付き成形体1の基材となる部分であり、所定の厚みを有する板状の部材からなる。図1に示されるように、表皮材付き成形体1は、全体的には、中央部分が上方に向かって凸状に盛り上がった形をなしている。このような成形体2の一方の表面2aを覆う形で、表皮材3が貼り付けられている。表皮材3は、成形体2の形状に倣った形をなしており、成形体2の表面2aに対して、他の層を介さずに、直接、貼り付けられている。
成形体2は、植物性繊維と、熱可塑性樹脂と、高強力繊維とを含む。なお、成形体2は、後述するように、植物性繊維、熱可塑性樹脂及び高強力繊維を含むプレボードを利用して製造される。
植物性繊維は、植物に由来する繊維である。植物性繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた繊維が挙げられる。これらの植物性繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。植物性繊維としては、ケナフ繊維が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。また、前記植物性繊維として用いる植物体の部位は特に限定されず、繊維を採取できればよく、非木質部、茎部、根部、葉部及び木質部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
植物性繊維は、通常、中実体であり、その長さ(繊維長)及び外径(繊維径)は、特に限定されない。繊維長の上限は、好ましくは150mmである。尚、上記繊維長の平均値(平均繊維長)は、好ましくは10mm〜100mm、より好ましくは30mm〜80mmである。なお、この平均繊維長は、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、伸張させずにまっすぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。また、繊維径の上限は、好ましくは1500μmである。尚、上記繊維径の平均値(平均繊維径)は、好ましくは20mm〜500μm、より好ましくは20mm〜200μmである。なお、この平均繊維径は、繊維長を測定した当該植物性繊維について、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて測定した値である。
成形体2に含まれる植物性繊維の形状は、特に限定されない。長さ方向の形状は、直線状、折れ線状、曲線状、螺旋状又はこれらの変形形状とすることができる。断面の外形は、円形、楕円形、多角形又はこれらの変形形状とすることができる。
成形体2における植物性繊維の含有率(%)は、23質量%以上、好ましくは25質量%以上であり、45質量%以下、好ましくは43質量%以下である。植物性繊維の含有率(%)がこのような範囲であると、成形体2と表皮材3とが十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き成形体1が得られる。
熱可塑性樹脂は、主に、バインダー樹脂として機能するものであり、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体)等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂として、酸変性熱可塑性樹脂を用いてもよい。なお、熱可塑性樹脂のうち、酸変性熱可塑性樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を、「非酸変性熱可塑性樹脂」と称する場合がある。
酸変性熱可塑性樹脂は、酸変性により酸変性基が導入された熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂に導入された酸変性基の種類は特に限定されないが、通常、無水カルボン酸残基(−CO−O−OC−)及び/又はカルボン酸残基(−COOH)である。酸変性基はどのような化合物により導入されたものであってもよく、その化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
更に、酸変性熱可塑性樹脂の骨格となる熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、上記のように、熱可塑性樹脂(非酸変性熱可塑性樹脂)として例示した各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。
酸変性熱可塑性樹脂の骨格となる熱可塑性樹脂と、非酸変性熱可塑性樹脂とは同種であってもよく、異種であってもよいが、同じであることが好ましく、更には、共にポリオレフィン樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、取扱いが容易であり、生産性を向上させることができる。また、高い柔軟性と優れた賦形性が得られる。ポリオレフィン樹脂のなかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、及びポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂(アロイ)が好ましい。更には、非酸変性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン又は上記混合樹脂が特に好ましく、酸変性熱可塑性樹脂の骨格となる熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂全体を100質量%とした場合、上記酸変性熱可塑性樹脂の割合は15質量%以下(通常0.3質量%以上)であることが好ましい。この範囲の配合量であれば、スムーズな紡糸を行うことができると共に、非酸変性熱可塑性樹脂との併用により、得られる表皮材付き成形体1の機械的特性を向上できる。この配合量は、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜7質量%が特に好ましい。
成形体2における熱可塑性樹脂の含有率(%)は、38質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは42質量%以上であり、55質量%以下、好ましくは53質量%以下、よりより好ましくは51質量%以下である。熱可塑性樹脂の含有率(%)がこのような範囲であると、成形体2と表皮材3とが十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き成形体1が得られる。
高強力繊維は、熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなり、JIS L 1013に準じて測定される引張弾性率が、4000MPa以上の繊維である。高強力繊維としては、合成繊維、特に熱可塑性樹脂繊維を好適に用いることができる。高強力繊維は、所定量の植物性繊維と共に所定量で使用することで、成形体2を形成するためのプレボードを所定の温度で加熱した際に、プレボードを厚み方向に大きく膨張させることができる。
高強力繊維としては、高強力ポリエステル繊維(高強力ポリエチレンテレフタラート繊維等、PET繊維と称する)、芳香族ポリアミド繊維(メタ型アラミド繊維など)、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46等)を例示することができる。ポリアミド繊維としては、脂肪族ポリアミド繊維よりも高耐熱性の芳香族ポリアミド繊維がより好ましい。また、成形体1の生産性の観点から、一般的にポリアミド繊維より廉価なPET繊維が特に好ましい。PET繊維としては、非強化のポリエチレンテレフタラート樹脂(引張弾性率:3000〜3700MPa程度)より引張弾性率が高い、エアバッグやシートベルト等にも用いられる高強力繊維を好適に用いることができる。
高強力繊維は、通常、中実体であり、その長さ(繊維長)及び外径(繊維径)は、特に限定されない。繊維長の上限は、好ましくは150mmである。尚、上記繊維長の平均値(平均繊維長)は、好ましくは10mm〜100mm、より好ましくは30mm〜80mmである。また、繊維径の上限は、好ましくは1000μmである。尚、上記繊維径の平均値(平均繊維径)は、好ましくは3μm〜500μm、より好ましくは3μm〜100μmである。
成形体2に含まれる高強力繊維は、ファイバー状の単繊維、フィラメント状の繊維束、及び、トウ状の撚り繊維のいずれの形態であってもよい。また、上記高強力繊維の形状は、特に限定されない。長さ方向の形状は、直線状、折れ線状、曲線状、螺旋状又はこれらの変形形状とすることができる。断面の外形は、円形、楕円形、多角形又はこれらの変形形状とすることができる。尚、平均繊維長及び平均繊維径等の測定方法については植物性繊維における方法をそのまま適用する。
高強力繊維の繊度は特に限定されないが、1dtex〜100dtexであることが好ましい。この範囲では、繊維同士を混繊し易い。この繊度は、1dtex〜50dtexがより好ましく、1dtex〜20dtexが更に好ましく、3dtex〜10dtexが特に好ましい。
高強力繊維の引張弾性率は、好ましくは8000MPa以上、より好ましくは12000MPa以上である。なお、高強力繊維の引張弾性率の上限値は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はない。
成形体2における高強力繊維の含有率(%)は、7質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、32質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下である。高強力繊維の含有率(%)がこのような範囲であると、成形体2と表皮材3とが十分な接着力で貼り付けられた表皮材付き成形体1が得られる。
表皮材3は、成形体2の表面2aに直接、貼り付けられるシート状の部材である。表皮材3としては、後述するように、表皮材付き成形体1の製造時に、プレボードの成形と同時にプレボードの表面に接着可能であれば、特に制限はなく、例えば、織物、編物、不織布等の布帛や、天然皮革、合成皮革等の皮革が用いられる。表皮材3としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の合成繊維からなる不織布が用いられてもよく、特に、合成繊維からなる複数の不織布を積層してニードルパンチを施したニードルパンチ不織布が用いられてもよい。なお、不織布を構成する繊維の繊度は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、4dtex〜16dtexが好ましく、6dtex〜12dtexがより好ましい。また、表皮材3の厚みとしては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、0.1mm〜1.0mmが好ましい。なお、表皮材3を構成する材料としては、加熱されたプレボードに対して接触しても溶融しない材料が用いられることが好ましい。
表皮材付き成形体1は、成形体2と表皮材3との間の接着強度に優れる。また、表皮材付き成形体1は、曲げ強さ等の機械的特性にも優れる。なお、表皮材付き成形体1の接着強度及び曲げ強さの測定方法は、後述する。表皮材付き成形体1は、例えば、ドアトリム基材、インナーパネル、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージ、天井基材、衝撃吸収材、吸音材等の乗物用内装材、建材等の様々な用途で用いることができる。
表皮材付き成形体1は、本発明の目的を損なわない限り、成形体2及び表皮材3の他に、他の層(部材)を備えてもよい。
表皮材付き成形体1の成形体2は、植物性繊維、熱可塑性樹脂及び高強力繊維を含むプレボードを利用して製造される。ここで、成形体2の製造に利用されるプレボードについて説明する。
なお、成形体2は、本発明の目的を損なわない限り、植物性繊維、熱可塑性樹脂繊維及び高強力繊維の他に成分(例えば、着色剤、フィラー、添加剤等)を含んでもよい。
成形体2用のプレボードは、植物性繊維と、熱可塑性樹脂からなる繊維(熱可塑性樹脂繊維)と、高強力繊維とを混繊して形成された繊維マットを、所定の加熱しつつ、所定の厚みとなるように圧縮されたものからなる。
熱可塑性樹脂繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造されたものである。熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長及び平均繊維径、並びに繊度については、高強力繊維と同等のものを用いることができる。
上記「混繊」とは、植物性繊維、熱可塑性樹脂繊維、及び高強力繊維を混合して繊維混合物(例えば、繊維マット)を得ることを意味する。この際の混繊方法は、特に限定されず種々の方法を用いることができ、通常、乾式法又は湿式法が用いられる。混繊方法としては、乾式法が好ましい。乾式法としては、エアレイ法、カード法等が挙げられる。なお、繊維同士を混繊した後、必要に応じてニードルパンチ等による交絡を行ってもよい。
前記繊維マットを形成する際、植物性繊維、熱可塑性樹脂繊維及び高強力繊維の各配合量は、成形体2における植物性繊維、熱可塑性樹脂繊維及び高強力繊維の各含有率(%)が、上述した値となるように設定される。
前記繊維マットを加熱する温度は、熱可塑性樹脂繊維が溶融(軟化)する温度以上であって高強力繊維が繊維状態を維持可能な温度である。例えば、熱可塑性樹脂繊維が、ポリプロピレン繊維(PP繊維)からなる場合、加熱温度は、例えば、170〜240℃(好ましくは、180〜200℃)に設定される。なお、繊維マットを加熱する温度は、繊維マット中の植物性繊維が分解等の劣化が発生しないように考慮されている。
また、前記繊維マットの圧縮には、ダブルベルトプレス機や、金型を備えたプレス機等の公知のプレス機が利用される。繊維マットが所定の厚みとなるように圧縮され、その後、適宜、冷却されると、成形体2を形成するためのプレボードが得られる。プレボードの厚みは、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されないが、例えば、2mm〜3.5mmであることが好ましい。
ここで、本実施形態の表皮材付き成形体1の製造方法を、図2〜図5を参照しつつ説明する。表皮材付き成形体1の製造方法は、前記プレボードを、前記熱可塑性樹脂が溶融する温度以上でありかつ前記高強力繊維が繊維状態を維持可能な温度で加熱して、前記プレボードを厚み方向に膨張させる工程と、膨張後の前記プレボードが、その表面に表皮材が重ねられた状態で、プレス成型装置を利用して圧縮されつつ、前記表皮材が前記プレボードの前記表面に貼り付けられる工程とを備える。
プレボードは、表皮材付き成形体1を製造する直前に、熱盤プレス装置20等の加熱装置を利用して加熱されると、熱可塑性樹脂が溶融(又は軟化)して、それまで圧縮されて小さくまとまっていた植物性繊維、及び高強力繊維が膨張等することにより、厚みが大きくなる。本実施形態のプレボードにおいて、植物性繊維、高強力繊維及び熱可塑性樹脂は、上述したように、それぞれ所定の割合で含まれている。そのため、加熱後(膨張後)のプレボードの厚みは、プレボードの成形時に利用される金型のクリアランスCよりも、大きくなる。加熱後(膨張後)のプレボードの厚みは、加熱前の厚みに対して、例えば、1.7倍以上、好ましくは1.9倍以上大きくなるように設定されてもよい。
図2は、熱盤プレス装置20を利用して、プレボード4が加熱される工程を示す説明図である。熱盤プレス装置20は、図2の下側に示される固定側の熱盤21と、図2の上側に示される可動側の熱盤22とを備えており、各熱盤21,22には、それぞれヒータ23,24が設けられている。図2に示されるように、上側の熱盤22が、下側の熱盤21の上方で待機している状態において、プレボード4が下側の熱盤21上に載せられる。その後、上側の熱盤22を下降させて、下側の熱盤21との間でプレボード4を挟むことにより、プレボード4の加熱圧締が行われる。その際、熱盤プレス装置20は、熱可塑性樹脂が溶融する温度以上でありかつ高強力繊維が繊維状態を維持可能な温度でプレボード4を加熱する。
図3は、熱盤プレス装置20によって加熱されて、厚み方向に膨張した状態のプレボード5を示す説明図である。その後、図3に示されるように、上側の熱盤22を上昇させて、熱盤プレス装置20の圧締を終了すると、下側の熱盤21上に、加熱によって厚み方向に膨張したプレボード5が現れる。このようにして、厚み方向に膨張したプレボード5を得ることができる。このプレボード5は、熱可塑性樹脂が溶融(又は軟化)している間に、プレス成型装置30を利用して成形される。
図4は、プレス成型装置30の構成を模式的に表した説明図である。プレボード5は、プレス成型装置30を利用して所定の形となるように成形されつつ、それと同時に、表面5aに表皮材3が貼り付けられる。プレス成型装置30は、凸状の型面31aを有する固定側の下型31と、凹状の型面32aを有する可動側の上型32とを備えている。図4に示されるように、上型32が、下型31の上方で待機している状態において、下型31の凸状の型面31a上に、加熱後のプレボード5が載せられる。そのプレボード5の上方には、型面32aを覆う形で上型32に取り付けられているシート状の表皮材3が待機している。上型32の型面32aには、枠状をなした面ファスナーが取り付けられており、その面ファスナーに対して表皮材3が着脱可能な状態で取り付けられている。
図5は、プレス成型装置30を利用して、プレボード5及び表皮材3が成形されつつ、プレボード5の表面5aに表皮材3が貼り付けられる工程を示す説明図である。図5に示されるように、型締め状態のプレス成型装置30において、下型31の型面31aと、上型32の型面32aとの距離(クリアランス)Cは、膨張後のプレボード5の厚みよりも小さくなるように、設定されている。このようなクリアランスを有する下型31と上型32との間で、プレボード5及び表皮材3からなる積層体が挟み付けられると、プレボード5は厚み方向に圧縮されて、厚みが小さくなるように潰しこまれた状態となり、また、表皮材3は、プレボード5の表面5aに対して強く押し付けられた状態となる。
このような状態のプレボード5及び表皮材3は、上型32と下型31との間で挟まれた状態で冷却され、プレボード5に含まれる熱可塑性樹脂の固化が行われる。その後、上型32及び下型31を型開きして、プレス成型装置30から成形物を取り出すと、図1に示されるような、表皮材付き成形体1が得られる。なお、表皮材3は、上型32に対して弱い力で取り付けられているため、型開き時に、容易に上型32から離れる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(原料)
高強力繊維として、繊度6.6dtex(平均繊維径15μm)、平均繊維長51mm、引張弾性率10000MPa、引張破断伸度18%、溶融温度260℃のPET繊維を使用した。
(原料)
高強力繊維として、繊度6.6dtex(平均繊維径15μm)、平均繊維長51mm、引張弾性率10000MPa、引張破断伸度18%、溶融温度260℃のPET繊維を使用した。
熱可塑性樹脂繊維として、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテックSA01」(商品名)を溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex(平均繊維径15μm)及び繊維長51mmの樹脂繊維(PP繊維)を使用した。
植物性繊維として、平均径50μm、平均繊維長70mmのケナフ繊維を使用した。
(プレボードの製造)
10質量部のPET繊維と、47.5質量部のPP繊維と、42.5質量部のケナフ繊維を、カード法により混合しつつ、繊維マットを形成した。得られた繊維マットを、金型温度が235℃に設定されたプレス機を用い、内部温度が210℃となるまで加熱圧縮し、厚さ2.5mmのプレボードを得た。
10質量部のPET繊維と、47.5質量部のPP繊維と、42.5質量部のケナフ繊維を、カード法により混合しつつ、繊維マットを形成した。得られた繊維マットを、金型温度が235℃に設定されたプレス機を用い、内部温度が210℃となるまで加熱圧縮し、厚さ2.5mmのプレボードを得た。
(表皮材付き繊維含有樹脂成形体の製造)
得られたプレボードを、ヒータを備えた熱盤プレス装置に挟んで加熱圧締した。この際、熱盤プレス装置では、PP繊維の融点より20〜40℃高い温度となるように加熱して、プレボード中のPP繊維を溶融した。その後、熱盤プレス装置の圧締を開放して、加熱されて厚み方向に膨張したプレボードが得られた。なお、加熱後のプレボードの厚みは、4.8mmであった。
得られたプレボードを、ヒータを備えた熱盤プレス装置に挟んで加熱圧締した。この際、熱盤プレス装置では、PP繊維の融点より20〜40℃高い温度となるように加熱して、プレボード中のPP繊維を溶融した。その後、熱盤プレス装置の圧締を開放して、加熱されて厚み方向に膨張したプレボードが得られた。なお、加熱後のプレボードの厚みは、4.8mmであった。
次いで、加熱された状態のプレボードを、上型及び下型を備えるプレス成型装置に供給した、上型の型面と下型の型面との間の距離(クリアランス)は、2.3mmに設定されている。また、上型には、その型面を覆う形で、シート状の表皮材が予め貼り付けられている。上型の型面には、枠状の面ファスナーが取り付けられており、その面ファスナーに対して、表皮材が着脱可能な状態で取り付けられている。表皮材としては、PET繊維のニードルパンチ不織布(厚み:1.0mm、繊度:3.3dtex)を用いた。上記プレボードは、表皮材と重なるように、下型の型面の上に配置した。
プレス成型装置の上型及び下型を型締めして、内部温度が25℃になるまで60秒間冷間プレスした。その後、型開きして、厚さが約2.3mmである実施例1のボード状の表皮材付き繊維含有樹脂成形体を得た。
〔実施例2〜5及び比較例1〜5〕
PET繊維、PP繊維及びケナフ繊維の各配合比(質量比)を、表1に示される値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ2.5mmのプレボードを作製した。得られたプレボードを利用して、実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜5の表皮材付き繊維含有樹脂成形体を作製した。なお、各プレボードの加熱後の厚みは、表1に示した。
PET繊維、PP繊維及びケナフ繊維の各配合比(質量比)を、表1に示される値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ2.5mmのプレボードを作製した。得られたプレボードを利用して、実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜5の表皮材付き繊維含有樹脂成形体を作製した。なお、各プレボードの加熱後の厚みは、表1に示した。
〔評価〕
実施例1〜5及び比較例1〜5の各成形体について、以下に示される評価試験を行った。
実施例1〜5及び比較例1〜5の各成形体について、以下に示される評価試験を行った。
(接着強度)
各成形体から、厚さ2.3mm、幅25mm、長さ150mmの試験片を切り出した。得られた各試験片をインストロン型の引張試験機(株式会社島津製作所製、型式「AG−X10KN」)に取り付けた。そして、引張速さ200mm/分で、表皮材を剥がす際の剥離強さ(N/25mm)を、接着強度として測定した。接着強度(N/25mm)の測定結果は、表1に示した。
各成形体から、厚さ2.3mm、幅25mm、長さ150mmの試験片を切り出した。得られた各試験片をインストロン型の引張試験機(株式会社島津製作所製、型式「AG−X10KN」)に取り付けた。そして、引張速さ200mm/分で、表皮材を剥がす際の剥離強さ(N/25mm)を、接着強度として測定した。接着強度(N/25mm)の測定結果は、表1に示した。
(曲げ強さ)
各成形体から、厚さ約2.3mm、幅50mm、長さ150mmの長方形の板状の試験片を切り出した。各試験片を、支点間距離100mmとした2つの支点(曲率半径3.2mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重を加えて、各試験片の最大曲げ荷重(曲げ強さ)を測定した(JIS K7171に準拠)。曲げ強さ(N)の測定結果は、表1に示した。
各成形体から、厚さ約2.3mm、幅50mm、長さ150mmの長方形の板状の試験片を切り出した。各試験片を、支点間距離100mmとした2つの支点(曲率半径3.2mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重を加えて、各試験片の最大曲げ荷重(曲げ強さ)を測定した(JIS K7171に準拠)。曲げ強さ(N)の測定結果は、表1に示した。
表1に示される「潰しこみ量」は、加熱後のプレボードの厚み(mm)から、プレス成型装置のクリアランス(2.3mm)を引いた値(mm)である。表1に示されるように、実施例1〜5の成形体は、成形時の潰しこみ量が、2.5mm以上となり、表皮材と、繊維含有樹脂成形体(基材)との接着強度が、48.8N以上となり、表皮材が基材に対して、十分な接着力で接着されていることが確かめられた。
比較例1は、PET繊維の配合量が少ない場合であり、加熱後におけるプレボードの厚み方向の膨張量が、各実施例よりも小さくなっている。このような比較例1では、十分な接着強度が得られなかった。
比較例2及び比較例3では、加熱後のプレボードの厚みがそれぞれ7.0mm、11.0mmとなり、成形時の潰しこみ量は大きいものの、バインダー樹脂であるPP繊維の配合量が少ないため、十分な接着強度が得られなかった。
比較例4は、PET繊維の配合量及びPP繊維の配合量は多いものの、ケナフ繊維の配合量が少ない場合である。このようにケナフ繊維の配合量が少ないと、加熱後におけるプレボードの厚み方向の膨張量が小さくなり、十分な接着強度が得られなかった。
比較例5は、PET繊維を含まない場合である。このようにPET繊維が全く配合されていないと、加熱後におけるプレボードの厚み方向の膨張量が小さく、十分な接着強度は得られなかった。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態の表皮材付き成形体1は、車両、船舶、航空機、建築等の分野において広く用いられ、これらの分野における内装材、外装材、構造材等として好適に用いられる。車両の分野では、自動車用で、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、カウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
1…表皮材付き繊維含有樹脂成形体(表皮材付き成形体)、2…繊維含有樹脂成形体(成形体)、3…表皮材、4…プレボード(膨張前)、5…プレボード(膨張後)
Claims (6)
- 植物性繊維と、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなる高強力繊維とを含む繊維含有樹脂成形体と、
前記繊維含有樹脂成形体の表面に直接、貼り付けられる表皮材とを備え、
前記繊維含有樹脂成形体における前記植物性繊維の含有率が、23質量%以上45質量%以下であり、前記熱可塑性樹脂の含有率が、38質量%以上55質量%以下であり、前記高強力繊維の含有率が、7質量%以上32質量%以下である表皮材付き繊維含有樹脂成形体。 - 前記高強力繊維の引張弾性率が、4000MPa以上である請求項1に記載の表皮材付き繊維含有樹脂成形体。
- 前記高強力繊維は、高強力ポリエステル繊維である請求項1又は請求項2に記載の表皮材付き繊維含有樹脂成形体。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂である請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の表皮材付き繊維含有樹脂成形体。
- 前記植物性繊維は、ケナフ繊維である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の表皮材付き繊維含有樹脂成形体。
- 含有率が23質量%以上45質量%以下である植物性繊維と、含有率が38質量%以上55質量%以下である熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなり、かつ含有率が7質量%以上32質量%以下である高強力繊維とを含むプレボードを、前記熱可塑性樹脂が溶融する温度以上でありかつ前記高強力繊維が繊維状態を維持可能な温度で加熱して、前記プレボードを厚み方向に膨張させる工程と、
膨張後の前記プレボードが、その表面に表皮材が重ねられた状態で、プレス成型装置を利用して圧縮されつつ、前記表皮材が前記プレボードの前記表面に貼り付けられる工程とを備える表皮材付き繊維含有樹脂成形体の製造方法。
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JP2018047683A JP2019155797A (ja) | 2018-03-15 | 2018-03-15 | 表皮材付き繊維含有樹脂成形体、及びその製造方法 |
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JP2021160118A (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-11 | トヨタ紡織株式会社 | 繊維含有樹脂成形体および繊維含有樹脂成形体の製造方法 |
-
2018
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