JP2010006030A - 植物性繊維複合材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材の製造方法を提供する。
【解決手段】植物性繊維(ケナフ繊維等)の繊維間が熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)により結着された構造を有する植物性繊維複合材の製造方法であって、酸変性熱可塑性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン等)及び第1非変性熱可塑性樹脂(エチレン−プロピレンランダム共重合樹脂等)を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸する第1紡糸工程と、低融点の第2非変性熱可塑性樹脂(エチレン−プロピレンランダム共重合樹脂等)を溶融紡糸する第2紡糸工程と、植物性繊維、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維を混繊する混繊工程と、繊維マットを、マットに含有される非変性熱可塑性樹脂繊維の融点を越え、且つ酸変性熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲で加熱し、加圧する加熱加圧工程と、を備える。
【選択図】なし

Description

本発明は植物性繊維複合材の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、加熱、加圧時に繊維マットが金属製のコンベアベルトに貼り付いてしまうことを防止することができ、優れた意匠性及び機械的特性を有し、且つ大量の植物性繊維を含有する繊維マットを用いるため、環境面でも好ましい植物性繊維複合材の製造方法に関する。
近年、ケナフ等の、短期間で成長し、且つ二酸化炭素吸収量が多い植物資源が、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の観点から注目されている。また、この植物資源を熱可塑性樹脂と複合化した材料を用いてなる複合材としての利用が期待されており、このような植物資源を用いてなる複合材に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2007−98583号公報
植物資源を用いた複合材は、例えば、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混繊してなる繊維マットを、ダブルベルト方式の熱板により加熱、加圧する等の方法によって製造されるが、加熱、加圧時に、圧縮された繊維マットがコンベアベルトに貼り付いてしまうことがある。この場合、無理に剥がすと複合材の表面が傷付き、意匠性が低下することがあり、更には複合材が破損してしまうこともある。このようにコンベアベルトに貼り付いてしまうことを防止するため、繊維マットをテトラフルオロエチレン等の優れた剥離性を有する樹脂シートにより挟持して加熱加圧する方法もあるが、このようなシートは消耗品であり、且つ高価であるため、コスト面で問題である。特許文献1には、加熱加圧と冷却加圧とが順次なされる特定の装置を用いること等により、プレス型表面と混合マット表面との付着を抑制し、複合材の表面の平滑性を高め、意匠性を向上させる繊維ボードの製造方法が開示されている。しかし、この製造方法では、特定の装置を必要とする等の理由で、コスト面で必ずしも有利ではない。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、特定の装置等を必要とすることなく、加熱、加圧時に繊維マットが金属製のコンベアベルトに貼り付いてしまうことを防止することができ、優れた意匠性及び機械的特性を有し、且つ大量の植物性繊維を含有する繊維マットを用いるため、環境面でも好ましい植物性繊維複合材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.植物性繊維の繊維間が熱可塑性樹脂により結着された構造を有し、且つ該植物性繊維と該熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、該植物性繊維が30〜95質量%含有される植物性繊維複合材の製造方法であって、酸変性熱可塑性樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して混合熱可塑性樹脂繊維とする第1紡糸工程と、上記第1非変性熱可塑性樹脂より低融点の第2非変性熱可塑性樹脂を溶融紡糸して非変性熱可塑性樹脂繊維とする第2紡糸工程と、上記植物性繊維、上記混合熱可塑性樹脂繊維及び上記非変性熱可塑性樹脂繊維を混繊して繊維マットとする混繊工程と、上記繊維マットを、該繊維マットに含有される上記非変性熱可塑性樹脂繊維の融点を越え、且つ上記酸変性熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲で加熱し、加圧する加熱加圧工程と、を備えることを特徴とする植物性繊維複合材の製造方法。
2.上記第2非変性熱可塑性樹脂がエチレン−プロピレンランダム共重合樹脂である上記1.に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
3.上記酸変性熱可塑性樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である上記1.又は2.に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
4.上記酸変性熱可塑性樹脂の酸価が5以上である上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
5.上記酸変性熱可塑性樹脂の重量平均分子量が10000〜100000である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
6.上記植物性繊維、上記第1非変性熱可塑性樹脂及び上記第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に、該第2非変性熱可塑性樹脂は5〜35質量%である上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
7.上記植物性繊維、上記第1非変性熱可塑性樹脂及び上記第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合に、上記酸変性熱可塑性樹脂は1〜10質量部である上記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
8.上記植物性繊維がケナフ繊維である上記1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
本発明の植物性繊維複合材の製造方法によれば、加熱、加圧時の温度を低く設定することができるため、酸変性熱可塑性樹脂が含有されているにもかかわらず、繊維マットがステンレス鋼製等の金属製のコンベアベルトに貼り付いてしまうことを防止することができ、植物性繊維を30〜95質量%と多量に含有するにもかかわらず、優れた意匠性及び機械的特性を有する植物性繊維複合材を製造することができる。また、貼り付き防止のため、高価な剥離シートを用いる必要がないため、コスト面でも有利である。
また、第2非変性熱可塑性樹脂がエチレン−プロピレンランダム共重合樹脂である場合は、第1非変性熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(ブロック共重合樹脂等の高融点の樹脂)を用いることができ、より優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を製造することができる。
更に、酸変性熱可塑性樹脂が酸変性ポリオレフィンである場合は、加熱、加圧された繊維マットが金属製のコンベアベルトに貼り付き易いが、本発明では、貼り付くことがなく、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を容易に、且つ低コストで製造することができる。
また、酸変性熱可塑性樹脂の酸価が5以上である場合は、酸価が低い樹脂に比べて、より少量で機械的特性をより向上させることができ、特に優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を製造することができる。
更に、酸変性熱可塑性樹脂の重量平均分子量が10000〜100000である場合は、酸変性熱可塑性樹脂を含有しているにもかかわらず、紡糸が容易であり、繊維化し易いため、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を容易に製造することができる。
また、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に、第2非変性熱可塑性樹脂が5〜35質量%である場合は、第2非変性熱可塑性樹脂の配合による機械的特性の低下を十分に抑えることができ、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を製造することができる。
更に、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合に、酸変性熱可塑性樹脂が1〜10質量部である場合は、植物性繊維の繊維間を十分に結着させることができ、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を製造することができる。
また、植物性繊維がケナフ繊維である場合は、ケナフが短期間で成長する一年草であり、且つ優れた二酸化炭素吸収性等を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の植物性繊維複合材の製造方法は、植物性繊維の繊維間が熱可塑性樹脂により結着された構造を有し、且つ植物性繊維と熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、植物性繊維が30〜95質量%含有される植物性繊維複合材の製造方法であって、酸変性熱可塑性樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して混合熱可塑性樹脂繊維とする第1紡糸工程と、第1非変性熱可塑性樹脂より低融点の第2非変性熱可塑性樹脂を溶融紡糸して非変性熱可塑性樹脂繊維とする第2紡糸工程と、植物性繊維、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維を混繊して繊維マットとする混繊工程と、繊維マットを、繊維マットに含有される非変性熱可塑性樹脂繊維の融点を越え、且つ酸変性熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲で加熱し、加圧する加熱加圧工程と、を備える。
(1)第1紡糸工程
上記「第1紡糸工程」は、酸変性熱可塑性樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して混合熱可塑性樹脂繊維とする工程である。この工程の溶融紡糸は、従来公知の種々の溶融紡糸法によって実施することができ、紡糸方法は特に限定されない。
上記「熱可塑性樹脂組成物」に含有される上記「酸変性熱可塑性樹脂」は、酸変性により酸基が導入された熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂に導入された酸基の種類は特に限定されないが、通常、無水カルボン酸残基(−CO−O−OC−)及び/又はカルボン酸残基(−COOH)である。酸基は、どのような化合物を用いて導入された酸基であってもよく、この化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸等の酸無水物、及びマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの化合物のうちでは、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
更に、酸変性熱可塑性樹脂の骨格となる熱可塑性樹脂(以下、「骨格樹脂」という。)の種類は特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。この骨格樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いてなる樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、並びにABS樹脂などが挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。
酸変性熱可塑性樹脂の具体例としては、三洋化成工業株式会社製、商品名「ユーメックス」(特に「ユーメックス1001」及び「ユーメックス1010」等が好ましい。)、三井化学株式会社製、商品名「アドマー」(特に「アドマーQE800」等が好ましい。)、三菱化学株式会社製、商品名「モディック」(特に「モディック−AP P908」等が好ましい。)、並びに東洋化成工業株式会社製、商品名「トーヨータック」(特に「トーヨータックH−1100P−P」等が好ましい。)などが挙げられる。
酸変性熱可塑性樹脂に導入される酸基の量は特に限定されないが、酸価を指標とした場合、酸価5以上(通常、80以下)であればよく、酸価15以上であることが好ましい。即ち、比較的酸価が高い酸変性熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような酸変性熱可塑性樹脂であれば、酸変性熱可塑性樹脂の含有量を抑えながら、植物性繊維等の繊度間を十分に結着させることができる。更に、後述する混繊に好適な繊度の混合熱可塑性樹脂繊維を容易に作製することができる。この酸価は15〜70であることが好ましく、特に20〜60、更に23〜30であることがより好ましい。尚、この酸価はJIS K0070により測定することができる。
更に、酸変性熱可塑性樹脂の分子量も特に限定されないが、重量平均分子量が10000〜200000、特に10000〜100000であることが好ましい。即ち、比較的分子量の小さい酸変性熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような酸変性熱可塑性樹脂を用いることにより、酸変性熱可塑性樹脂の含有量を抑えながら、植物性繊維等の繊度間を十分に結着させることができる。また、後述する混繊に好適な繊度の混合熱可塑性樹脂繊維を容易に作製することができる。重量平均分子量の下限値は15000、特に25000、更に35000であることが特に好ましく、重量平均分子量の上限値は200000、特に150000、更に100000であることが特に好ましい。また、この酸変性熱可塑性樹脂の重量平均分子量は35000〜60000であることが更に好ましい。尚、重量平均分子量はGPC法により測定することができる。
更に、酸変性熱可塑性樹脂の溶融粘度も特に限定されないが、160℃において4000〜30000mPa・sであることが好ましい。このような酸変性熱可塑性樹脂を用いることにより、酸変性熱可塑性樹脂の含有量を抑えながら、植物性繊維等の繊度間を十分に結着させることができる。また、後述する混繊に好適な繊度の混合熱可塑性樹脂繊維を容易に作製することができる。この溶融粘度は4000〜25000mPa・s、特に5000〜20000mPa・s、更に10000〜20000mPa・sであることがより好ましい。尚、溶融粘度はB型粘度計を用いて測定することができる。
上記の好ましい酸価、重量平均分子量及び溶融粘度を併せて有する酸変性熱可塑性樹脂としては、前記の三洋化成工業株式会社製、商品名「ユーメックス」が挙げられ、特に「ユーメックス1001」及び/又は商品名「ユーメックス1010」がより好ましい。
上記「第1非変性熱可塑性樹脂」の種類は特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。この第1非変性熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いてなる樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、並びにABS樹脂などが挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂としては、アイソタクチックプロピレン単独重合体(以下、「PP単独重合体」という。)、エチレン−プロピレンブロック共重合樹脂(以下、「EPブロック共重合樹脂」という。)、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、及びポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。この第1非変性熱可塑性樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性熱可塑性樹脂の骨格樹脂と、第1非変性熱可塑性樹脂とは同種の樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよいが、同種であることが好ましく、いずれもポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂は取扱いが容易であり、且つ優れた柔軟性及び賦形性等を有し、植物性繊維複合材の生産性を向上させることができる。このポリオレフィン樹脂としては、PP単独重合体、EPブロック共重合樹脂、ポリエチレン等が好ましい。更に、骨格樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂が、いずれもPP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂であることがより好ましく、骨格樹脂が無水マレイン酸を用いて変性されたPP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂であり、且つ第1非変性熱可塑性樹脂がPP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂であることが特に好ましい。
上記「混合熱可塑性樹脂繊維」の繊度等は特に限定されないが、繊度は1〜100dtexであることが好ましい。この範囲の繊度であれば、植物性繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維との混繊が容易であり、各々の繊維をより均一に分散させることができる。この繊度は1〜50dtex、特に1〜20dtex、更に3〜10dtexであることがより好ましい。尚、繊度3〜10dtexの混合熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は、酸変性熱可塑性樹脂として無水マレイン酸変性PP単独重合体及び/又は無水マレイン酸変性EPブロック共重合樹脂を使用し、第1非変性熱可塑性樹脂としてPP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂を使用した場合、3.8〜37.5μm程度となる。この繊度は長さ10000mの繊維の重量(単位;g)により表される。また、平均繊維径の測定方法は後述する植物性繊維の場合と同様である。
(2)第2紡糸工程
上記「第2紡糸工程」は、第1非変性熱可塑性樹脂より低融点の第2非変性熱可塑性樹脂を溶融紡糸して非変性熱可塑性樹脂繊維とする工程である。この工程の溶融紡糸は、第1紡糸工程と同様に従来公知の種々の溶融紡糸法によって実施することができ、紡糸方法は特に限定されない。尚、第1紡糸工程と第2紡糸工程との順序は問わず、また、異なる装置によって同時に実施してもよい。
上記「第2非変性熱可塑性樹脂」は、第1非変性熱可塑性樹脂より低融点であればよい。融点差は特に限定されないが、10〜50℃、特に15〜45℃、更に20〜40℃であることが好ましい。第2非変性熱可塑性樹脂の融点が第1非変性熱可塑性樹脂の融点より10〜50℃低ければ、後述する加熱加圧工程で、第2非変性熱可塑性樹脂を容易に溶融させることができ、非変性熱可塑性樹脂繊維によって植物性繊維を十分に結着させることができ、植物性繊維複合材の機械的特性を向上させることができる。
第2非変性熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いてなる樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、並びにABS樹脂などを用いることができる。また、第2非変性熱可塑性樹脂としては、通常、比較的融点が低い各種のランダム共重合樹脂を用いることが好ましく、特にエチレン−プロピレンランダム共重合樹脂(以下、「EPランダム共重合樹脂」という。)が好ましい。更に、このEPランダム共重合樹脂の融点は120〜140℃であることが好ましい。尚、この範囲の融点を有しておれば、第2非変性熱可塑性樹脂として、例えば、高密度ポリエチレン等を用いることもできる。この第2非変性熱可塑性樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記「非変性熱可塑性樹脂繊維」の繊度等は特に限定されないが、繊度は1〜100dtexであることが好ましい。この範囲の繊度であれば、植物性繊維及び混合熱可塑性樹脂繊維との混繊が容易であり、各々の繊維をより均一に分散させることができる。この繊度は1〜50dtex、特に1〜20dtex、更に3〜10dtexであることがより好ましい。尚、繊度3〜10dtexの非変性熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は、第2非変性熱可塑性樹脂としてEPランダム共重合樹脂を使用した場合、3.8〜37.5μm程度となる。この繊度は長さ10000mの繊維の重量(単位;g)により表される。また、平均繊維径の測定方法は後述する植物性繊維の場合と同様である。
酸変性熱可塑性樹脂、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂として用いる各々の樹脂の組み合わせは特に限定されないが、酸変性熱可塑性樹脂として酸変性ポリプロピレン、第1非変性熱可塑性樹脂としてEPブロック共重合樹脂、第2非変性熱可塑性樹脂としてEPランダム共重合樹脂、を組み合わせて用いることが好ましい。また、酸変性ポリプロピレンの製造に用いるポリプロピレンも、EPブロック共重合樹脂であることがより好ましい。このような組み合わせであれば、加熱圧縮された繊維マットがコンベアベルトに貼り付いてしまうことがなく、且つ優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材を容易に製造することができる。
(3)混繊工程
上記「混繊工程」は、植物性繊維、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維を混繊して繊維マットとする工程である。
上記「植物性繊維」は、植物に由来する材料を用いてなる繊維であればよく、特に限定されない。この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ、ヒノキ等)、各種の広葉樹及び綿花などの植物体を用いてなる繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、ケナフ繊維が好ましい。ケナフは短期間で成長する一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、ケナフ繊維を用いた場合、大気中の二酸化炭素量の削減、及び森林資源の有効利用等に貢献することができる。
また、植物性繊維として用いる植物体の部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく、2箇所以上の異なる部位を併用してもよい。
尚、本発明において用いられるケナフ繊維は、木質茎を有する早育性の一年草であるケナフの繊維である。このケナフはアオイ科に分類される植物であり、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。また、本発明の方法では、ジュート繊維も好ましい植物性繊維であり、このジュート繊維は、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、綱麻(ツナソ)、シマツナソ及びモロヘイヤを含む麻、並びにシナノキ科の植物などが含まれる。
植物性繊維の平均繊維長及び平均繊維径等は特に限定されないが、平均繊維長は10mm以上であることが好ましい。平均繊維長が10mm以上であれば、樹脂繊維との混繊が容易であり(特に、繊維間の絡み合いが形成され易い。)、植物性繊維複合材の機械的特性を向上させることができる。この平均繊維長は10〜150mm、特に20〜100mm、更に30〜80mmであることがより好ましい。この繊維長範囲であれば、混繊がより容易であり、植物性繊維複合材の機械的特性をより向上させることができる。尚、この平均繊維長は、JIS L1015に準拠し、直接法にて無作為に単繊維を1本づつ取り出し、伸張させずに直伸させ、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した各々の測定値の平均値である。
また、平均繊維径は1mm以下であることが好ましい。平均繊維径が1mm以下であれば、植物性繊維複合材の機械的特性を向上させることができる。この平均繊維径は0.001〜0.5mm、特に0.01〜0.2mm、更に0.02〜0.1mmであることがより好ましい。尚、この平均繊維径は、繊維長を測定した植物性繊維の長さ方向の中央部における繊維径を光学顕微鏡により観察し、測定した各々の値の平均値である。
一方、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維は、紡糸したままでは、通常、過度に長尺である。そのため、混繊工程で用いる混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維としては、紡糸後の繊維を予め所定の長さに調整した繊維を用いることが好ましい。即ち、本発明の製造方法は、第1及び第2紡糸工程と混繊工程との間に、紡糸後の繊維の長さを調整する繊維長調整工程を備えていてもよい。
混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維の各々の平均繊維長は特に限定されないが、それぞれの平均繊維長は10mm以上であることが好ましい。平均繊維長が10mm以上であれば、植物性繊維との混繊が容易であり(特に、繊維間の絡み合いが形成され易い。)、植物性繊維複合材の機械的特性を向上させることができる。この平均繊維長は10〜150mm、特に20〜100mm、更に30〜70mmであることがより好ましい。この繊維長範囲であれば、混繊がより容易であり、複合材の機械的特性をより向上させることができる。尚、平均繊維長の測定方法は植物性繊維の場合と同様である。
また、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維の各々の平均繊維径は1mm以下であることが好ましい。それぞれの平均繊維径が1mm以下であれば、植物性繊維複合材の機械的特性を向上させることができる。この平均繊維径は0.001〜0.5mm、特に0.01〜0.2mm、更に0.02〜0.1mmであることがより好ましい。尚、この平均繊維径の測定方法は植物性繊維の場合と同様である。
尚、混繊工程で用いる混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維は、それぞれ熱可塑性樹脂のみからなる繊維であってもよいが、表面に各種のコーティングが施された繊維であってもよい。例えば、装置の各部との滑り等を向上させるため、油剤及び親水性処理剤等がコーティングされていてもよい。
上記「混繊」とは、植物性繊維、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維の各々の繊維を混合して繊維マットとすることを意味する。混繊方法は特に限定されず、種々の方法により混繊することができるが、通常、乾式法又は湿式法により混繊することができ、これらのうちでは乾式法が好ましい。本発明の製造方法では、吸湿性を有する植物性繊維を用いるため、抄紙法等の湿式法により混繊した場合、高度な乾燥工程を必要とすることになるため、より簡易に混繊することができる乾式法が好ましい。この乾式法としては、エアーレイ法式及びカード法式等が挙げられるが、より簡易な装置で効率よく混繊することができるエアーレイ法式が好ましい。このエアーレイ法式では、それぞれの繊維を気流によって浮遊させ、その後、コンベアベルト上等に堆積させて、各々の繊維が相互に分散され、堆積されてなる繊維マットを作製することができる。
また、エアーレイ法式により混繊されてなる繊維マットは、1層のみを用いてもよいが、初回の混繊の後、1層目の繊維マット上に更に繊維を堆積させ、2層又は3層以上の積層繊維マットとすることもできる。即ち、本発明の製造方法は、マット積層工程を備えていてもよい。これにより、繊維マットの厚さを調整することができ、植物性繊維複合材の目付量を調整することもできる。更に、この積層繊維マットは、各々の繊維マットが一体化されるように交絡させることもできる。即ち、本発明の製造方法は交絡工程を備えていてもよい。交絡方法も特に限定されず、ニードルパンチ法、ステッチボンド法及びウォーターパンチ法等が挙げられ、効率のよいニードルパンチ法が好ましい。この場合、積層物の一面側のみからニードリングしてもよく、表裏両面からニードリングしてもよい。
上記「繊維マット」の目付量、厚さ及び目付量と厚さとで定まる密度は特に限定されないが、通常、目付量は400〜3000g/m、好ましくは600〜2000g/mである。また、厚さは5mm以上(通常、50mm以下)であることが好ましく、8〜40mm、特に10〜30mmであることがより好ましい。更に、密度は0.3g/cm以下(通常、0.05g/cm以上)である。尚、密度はJIS K7112(プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法)に準じて測定することができる。
植物性繊維、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維の各々の繊維は、混繊時、それぞれの繊維の合計を100質量%とした場合に、植物性繊維が30〜95質量%となるように配合される。即ち、植物性繊維複合材における植物性繊維の含有量が30〜95質量%となるように配合される。この範囲では、植物性繊維複合材に優れた賦形性が付与され、且つ優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができる。この植物性繊維の含有量は40〜85質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることがより好ましい。これらの範囲であれば、賦形性及び機械的特性がより向上する。
(4)各々の樹脂の量比
第1紡糸工程で用いられる酸変性熱可塑性樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂の各々の樹脂、及び第2紡糸工程で用いられる第2非変性熱可塑性樹脂、のそれぞれの質量割合は特に限定されないが、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に、第2非変性熱可塑性樹脂は5〜35質量%であることが好ましく、7〜25質量%、特に10〜20質量%であることがより好ましい。第2非変性熱可塑性樹脂の質量割合が5〜35質量%、特に10〜20質量%であれば、植物性繊維の繊維間を十分に結着させることができ、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができる。
また、酸変性熱可塑性樹脂の配合量は、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合に、1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部、特に1〜5質量部、更に1〜3質量部であることがより好ましい。酸変性熱可塑性樹脂の配合量が1〜10質量部、特に1〜5質量部であれば、植物性繊維の繊維間が十分に結着され、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができ、且つ加熱、加圧時に、圧縮された繊維マットがコンベアベルトに貼り付いてしまうのを防止することができる。
(5)加熱加圧工程
上記「加熱加圧工程」は、繊維マットを、この繊維マットに含有される非変性熱可塑性樹脂繊維の融点を越え、且つ酸変性熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲で加熱し、加圧する工程である。即ち、この加熱加圧工程は、繊維マットを加熱し、非変性熱可塑性樹脂繊維を溶融させ、この溶融した繊維と、混合熱可塑性樹脂繊維に含有される酸変性熱可塑性樹脂とにより、繊維マットに含有される植物性繊維等の繊維間を結着させる工程であり、その後、冷却することにより、植物性繊維複合材を製造する。
加熱加圧工程における加熱温度は、非変性熱可塑性樹脂繊維が溶融し、酸変性熱可塑性樹脂が溶融しない温度であればよく、非変性熱可塑性樹脂繊維の融点(第2非変性熱可塑性樹脂の融点)及び酸変性熱可塑性樹脂の融点等を勘案しながら、適宜設定することが好ましい。この場合、第1非変性熱可塑性樹脂は、溶融してもよく、溶融しなくてもよいが、溶融しない、即ち、混合熱可塑性樹脂繊維は溶融しないことが好ましい。第1非変性熱可塑性樹脂が溶融しなくても、植物性繊維は第2非変性熱可塑性樹脂により十分に結着され、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができる。
加熱温度は、例えば、酸変性熱可塑性樹脂として酸変性ポリプロピレン[融点は変性に用いる骨格樹脂(PP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂)の融点であり、通常、160〜170℃である。]、第1非変性熱可塑性樹脂としてPP単独重合体及び/又はEPブロック共重合樹脂(融点は、通常、160〜170℃程度である。)、及び第2非変性熱可塑性樹脂としてEPランダム共重合樹脂(融点は、通常、130〜140℃程度である。)を用いた場合、145〜155℃とすることが好ましい。この範囲の加熱温度であれば、加熱加圧時、非変性熱可塑性樹脂繊維は溶融し、混合熱可塑性樹脂繊維は溶融せず(この繊維に含有される酸変性熱可塑性樹脂は溶融せず)、圧縮された繊維マットがコンベアベルトに貼り付いてしまうのを防止することができるとともに、植物性繊維の繊維間が十分に結着され、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができる。
また、加熱加圧工程における圧力は特に限定されないが、この圧力は40〜200Pa、特に80〜160Paとすることが好ましい。この加圧による圧縮によって、圧縮しないときと比べて、植物性繊維の繊維間をより強固に結着することができる。加熱と加圧とは同時であってもよく、加熱の後工程として加圧してもよい。更に、別工程である場合は、連続工程であることが好ましい。また、この圧縮と同時に賦形することもできる。即ち、金型を用いて圧縮することにより、板状のみでなく、その他の各種の形状(製品形状)に成形することができる。板状に賦形した場合、そのまま用いることもできるが、この板状の植物性繊維複合材に更に成形を加え、最終の製品形状とすることもできる[即ち、板状に成形する予備成形工程(加熱工程と同時又は加熱工程の後工程)と、最終形状に賦形する本成形工程とを備えていてもよい。]。
本発明の方法により製造される植物性繊維複合材に含有される植物性繊維は、混繊工程で用いる植物性繊維の配合割合が、含有量として、通常、そのまま維持される。即ち、植物性繊維複合材に含有される植物性繊維と熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、植物性繊維は30〜95質量%であり、40〜85質量%、特に45〜75質量%であることが好ましい。これにより、優れた機械的特性を有する植物性繊維複合材とすることができる。更に、植物性繊維複合材の密度は特に限定されないが、0.3g/cmを越える(通常、1.0g/cm以下)。
本発明の方法により製造される植物性繊維複合材の形状並びに平面方向の寸法及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されないが、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いることができる。これらのうち、自動車用としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等として用いることができる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クォーターパネル、アームレストの芯材、ドアトリム、シート用構造材、コンソールボックス、ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、本発明の方法により製造される植物性繊維複合材は、例えば、建築物、家具等の内装材、外装材及び構造材等として用いることができる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、並びに机、椅子、棚、箪笥等の各種家具の表装材、構造材等として用いることができる。その他、包装材、トレイ等の収容材、緩衝材等の保護用部材及びパーティション部材等として用いることもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]植物性繊維複合材の製造
実施例1
酸変性熱可塑性樹脂[酸変性ポリプロピレン、三洋化成工業社製、商品名「ユーメックス1001」(表1では「酸変性PP樹脂」と略記する。)(酸価;26、重量平均分子量;40000、160℃における溶融粘度;16000mPa・s)]6.25質量部(第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合、2.5質量部となる。)と、第1非変性熱可塑性樹脂[EPブロック共重合樹脂、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックSA01」(表1では「PP樹脂」と略記する。)(植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合、40質量%となるようにした。)]と、をドライブレンドし、その後、溶融紡糸し、次いで、裁断して繊維長を調整し、混合熱可塑性樹脂繊維(繊度;6.6dtex、平均繊維長;51mm)を作製した。
次いで、第2非変性熱可塑性樹脂[EPランダム共重合樹脂、日本ポリプロ社製、商品名「WFW4」(表1では「ランダムPP樹脂」と略記する。)(融点;135℃)(植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合、10質量%となるようにした。)]を溶融紡糸し、次いで、裁断して繊維長を調整し、非変性熱可塑性樹脂繊維(繊度;6.6dtex、平均繊維長;51mm)を作製した。
その後、植物性繊維[ケナフ繊維(繊維長;70mm)]、混合熱可塑性樹脂繊維及び非変性熱可塑性樹脂繊維を、エアーレイ装置のコンベアベルト上に堆積させ、次いで、ニードルパンチを施して繊維間を交絡させ、目付量1300g/m、厚さ10mm(密度は0.13g/cmになる。)の繊維マットを作製した。その後、繊維マットを厚さ1.2mmのステンレス鋼板により挟持した状態で、235℃に調温された熱プレスにより加熱加圧し(加熱時間;20秒、圧力;118Pa、繊維マットは150℃まで昇温した。)、次いで、冷却プレスにより加圧冷却し(冷却時間;60秒、圧力;49Pa、25℃まで冷却)、目付量1200g/m、厚さ2.3mm(密度は0.52g/cmになる。)の植物性繊維複合材(ボード)を製造した。
実施例2
酸変性熱可塑性樹脂を8.4質量部(第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合、2.5質量部となる。)、第1非変性熱可塑性樹脂を30質量%、第2非変性熱可塑性樹脂を20質量%とした他は、実施例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
実施例3
酸変性熱可塑性樹脂を12.5質量部(第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合、2.5質量部となる。)、第1非変性熱可塑性樹脂を20質量%、第2非変性熱可塑性樹脂を30質量%とした他は、実施例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
実施例4
酸変性熱可塑性樹脂を7.5質量部(第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維、第1非変性熱可塑性樹脂及び第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合、1.5質量部となる。)、第1非変性熱可塑性樹脂を20質量%、第2非変性熱可塑性樹脂を10質量%とした他は、実施例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
比較例1
酸変性熱可塑性樹脂を5質量部[第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維と第1非変性熱可塑性樹脂との合計を100質量部とした場合(第2非変性熱可塑性樹脂は使用しない。)、2.5質量部となる。]とし、且つ熱プレス時の加熱加圧時間を40秒とし、繊維マットを200℃まで昇温させた他は、実施例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
比較例2
酸変性熱可塑性樹脂を5質量部[第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維と第1非変性熱可塑性樹脂との合計を100質量部とした場合(第2非変性熱可塑性樹脂は使用しない。)、1.5質量部となる。]とし、第1非変性熱可塑性樹脂を30質量%とした他は、比較例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
比較例3
酸変性熱可塑性樹脂を2質量部[第1非変性熱可塑性樹脂を100質量部とする。尚、植物性繊維と第1非変性熱可塑性樹脂との合計を100質量部とした場合(第2非変性熱可塑性樹脂は使用しない。)、1質量部となる。]とした他は、比較例1と同様にして、植物性繊維複合材を製造した。
[2]植物性繊維複合材の特性評価
上記[1]で製造した実施例1〜4及び比較例1〜3の植物性繊維複合材の加熱加圧時のステンレス鋼板への貼り付きの有無及び最大曲げ荷重を以下のようにして測定した。
(1)ステンレス鋼板への貼り付きの有無;冷却後、ステンレス鋼板を剥がすときに、複合材がステンレス鋼板に付着するか否かを目視で観察し、評価した。表1の評価結果の「○」は全く付着しなかった、「×」は複合材の一部がステンレス鋼板に付着した、である。
(2)最大曲げ荷重;厚さ2.3mm、幅50mm、長さ150mmの平面形状が長方形の試験片を使用し、試験片を、支点間距離100mmの2個の支点(上端部の曲率半径が3.2mm)により支持し、支点間の中心の作用点(上端部の曲率半径が3.2mm)から速度50mm/分にて荷重を負荷し、最大曲げ荷重を測定した(JIS K7171に準拠する。)。
Figure 2010006030
表1の結果によれば、所定量の第2非変性熱可塑性樹脂(EPランダム共重合樹脂)を用いた実施例1〜4の植物性繊維複合材では、ステンレス鋼板への貼り付きは全くなく、且つ第2非変性熱可塑性樹脂を含有せず、熱プレス時により高温で加熱した比較例1〜4の植物性繊維複合材と同様に優れた機械的特性(最大曲げ荷重)を有していることが分かる。特に、EPランダム共重合樹脂の質量割合が小さい実施例1、2及び4では、ステンレス鋼板に貼り付くことが全くないとともに、より優れた機械的特性を有していることが分かる。一方、熱プレス時により高温に加熱している比較例1〜3の植物性繊維複合材では、高温であるため機械的特性は優れているが、いずれも一部がステンレス鋼板に貼り付いてしまい、意匠性が低下する。
本発明の植物性繊維複合材の製造方法は、自動車関連分野及び建築関連分野等の広範な分野において利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等の製造に利用され、例えば、前記の各種の自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等の製造に特に好ましい製造方法である。更に、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材等の製造に利用することもでき、例えば、前記の表装材、構造材等に用いられる樹脂発泡体の製造に利用することができる。その他、包装体、収容体、保護用部材及びパーティション部材等に用いられる樹脂発泡体の製造に利用することもできる。

Claims (8)

  1. 植物性繊維の繊維間が熱可塑性樹脂により結着された構造を有し、且つ該植物性繊維と該熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、該植物性繊維が30〜95質量%含有される植物性繊維複合材の製造方法であって、
    酸変性熱可塑性樹脂及び第1非変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して混合熱可塑性樹脂繊維とする第1紡糸工程と、
    上記第1非変性熱可塑性樹脂より低融点の第2非変性熱可塑性樹脂を溶融紡糸して非変性熱可塑性樹脂繊維とする第2紡糸工程と、
    上記植物性繊維、上記混合熱可塑性樹脂繊維及び上記非変性熱可塑性樹脂繊維を混繊して繊維マットとする混繊工程と、
    上記繊維マットを、該繊維マットに含有される上記非変性熱可塑性樹脂繊維の融点を越え、且つ上記酸変性熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲で加熱し、加圧する加熱加圧工程と、を備えることを特徴とする植物性繊維複合材の製造方法。
  2. 上記第2非変性熱可塑性樹脂がエチレン−プロピレンランダム共重合樹脂である請求項1に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  3. 上記酸変性熱可塑性樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である請求項1又は2に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  4. 上記酸変性熱可塑性樹脂の酸価が5以上である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  5. 上記酸変性熱可塑性樹脂の重量平均分子量が10000〜100000である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  6. 上記植物性繊維、上記第1非変性熱可塑性樹脂及び上記第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に、該第2非変性熱可塑性樹脂は5〜35質量%である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  7. 上記植物性繊維、上記第1非変性熱可塑性樹脂及び上記第2非変性熱可塑性樹脂の合計を100質量部とした場合に、上記酸変性熱可塑性樹脂は1〜10質量部である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
  8. 上記植物性繊維がケナフ繊維である請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の植物性繊維複合材の製造方法。
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