JP7067101B2 - 繊維含有樹脂成形体 - Google Patents
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Description
上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、オレフィン系樹脂及びポリエステル樹脂であり、より好ましくは、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂である。
上記植物繊維は、好ましくは、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、椿、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹、綿花等に由来する線状繊維体である。このうち、木質茎を有し、成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有し、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献するアオイ科植物であるケナフに由来する線状繊維体(ケナフ繊維)であることが特に好ましい。このケナフとしては、学名におけるhibiscuc cannabinus及びhibiscuc sabdariffa等、通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が挙げられる。
また、上記植物繊維及び高強力繊維の合計を100質量%とした場合の上記植物繊維の含有割合は、好ましくは40~98質量%、より好ましくは70~90質量%である。
熱可塑性樹脂の成形体は、好ましくは、熱可塑性樹脂繊維であり、その形状は、直線状、曲線状、螺旋状等のいずれでもよい。
上記熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、好ましくは30mm以上、より好ましくは30~100mm、更に好ましくは30~70mmである。この繊維長が30mm以上であると、熱可塑性樹脂繊維どうしの十分な絡み合い、並びに、熱可塑性樹脂繊維と、植物繊維と、高強力繊維との十分な絡み合いを得やすく、その後の成形工程により、植物繊維及び高強力繊維が均一に分散した繊維含有樹脂成形体を効率よく製造することができる。尚、上記熱可塑性樹脂繊維の繊維径は、特に限定されないが、好ましくは5~100μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは30~100μmである。
上記繊維集積体の形成に用いる植物繊維及び高強力繊維は、既述のとおりである。
上記繊維集積体を形成する場合、エアレイ法、カード法等を適用することができ、その後、必要に応じて、交絡等を行ってもよい。
1-1.植物繊維
平均径0.05mm及び繊維長70mmのケナフ繊維を用いた。
1-2.高強力繊維
(1)PBO繊維
繊度1.7dtex及び繊維長50mmの東洋紡社製PBO繊維「ザイロン」(商品名)を用いた。JIS L 1013に準ずる引張弾性率は、180GPaである。
(2)アラミド繊維X
繊度1.7dtex及び繊維長50mmの帝人社製パラ型アラミド繊維「テクノーラ」(商品名)を用いた。JIS L 1013に準ずる引張弾性率は、33GPaである。
(3)アラミド繊維Y
繊度1.7dtex及び繊維長50mmの帝人社製パラ型アラミド繊維「トアロン」(商品名)を用いた。JIS L 1013に準ずる引張弾性率は、33GPaである。
1-3.熱可塑性樹脂繊維
(1)ポリプロピレン繊維
日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテックSA01」(商品名)を溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
(2)酸変性ポリプロピレン繊維
上記ポリプロピレン樹脂95質量%と、三菱化学社製無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂「モディックP908」(商品名)5質量%とをドライブレンドした後、溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
(1)実施例1
45質量部のケナフ繊維と、5質量部のPBO繊維と、50質量部のポリプロピレン繊維とを、カード機により積層し、繊維集積体を作製した。
次いで、この繊維集積体を熱板プレスにより加熱圧縮(235℃、60秒間)し、厚さが約3mmのマットを得た。その後、このマットの冷却プレスを60秒間行って、その温度を25℃とし、サイズが50mm×150mm×2.5mm、目付が1.5kg/m2の板状樹脂成形体(ボード)を得た。
原料として、48質量部のケナフ繊維、2質量部のPBO繊維及び50質量部のポリプロピレン繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして、板状樹脂成形体(ボード)を得た。そして、得られたボードについて、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率を測定したところ、それぞれ、27.4kJ/m2及び2780MPaであった(図6の表参照)。
PBO繊維に代えて、アラミド繊維Xを用いた以外は、実施例1と同様にして、板状樹脂成形体(ボード)を得た。そして、得られたボードについて、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率を測定したところ、それぞれ、30.5kJ/m2及び2575MPaであった(図6の表参照)。
50質量部のポリプロピレン繊維に代えて、47.5質量部のポリプロピレン繊維及び2.5質量部の酸変性ポリプロピレン繊維を用い、PBO繊維に代えて、アラミド繊維Yを用いた以外は、実施例1と同様にして、板状樹脂成形体(ボード)を得た。そして、得られたボードについて、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率を測定したところ、それぞれ、17.6kJ/m2及び2662MPaであった(図6の表参照)。
PBO繊維に代えて、アラミド繊維Yを用いた以外は、実施例1と同様にして、板状樹脂成形体(ボード)を得た。そして、得られたボードについて、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率を測定したところ、それぞれ、26.6kJ/m2及び2589MPaであった(図6の表参照)。
原料として、50質量部のケナフ繊維及び50質量部のポリプロピレン繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして、板状樹脂成形体(ボード)を得た。そして、得られたボードについて、シャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率を測定したところ、それぞれ、12.5kJ/m2及び2290MPaであった(図6の表参照)。
(1)実施例1-1,1-2
実施例1-1では、上記実施例1と同様の材料を用いて、板状樹脂成形体から、ヒンジ部を備えるとともに表皮材が接着された繊維基材を得た。具体的には、実施例1の繊維基材を再び熱板プレスにて加熱し、表面付近の熱可塑性樹脂を溶融させ、その後、成形装置にセットした表皮材と合わせて25℃になるまで40秒冷却し、ヒンジ部を形成するとともに、表皮材を接着した。表皮材としては、主にポリエチレンテレフタラート繊維からなる不織布を用いた。実施例1-2は、表皮材が接着されない他は、上記実施例1-1と同様にして繊維基材を得た。
実施例3-1では、上記実施例3と同様の材料を用いて、板状樹脂成形体から、ヒンジ部を備えるとともに表皮材が接着された繊維基材を得た。なお、実施例3-1では、実施例3よりアラミド繊維Xの含有量を10質量%増加させ、ケナフ繊維の含有量を10質量%低減させた繊維基材を用いた。ヒンジ部の形成方法及び表皮材の材質及びその接着方法は、実施例1-1と同様とした。
実施例4-1では、上記実施例4と同様の材料を用いて、板状樹脂成形体から、ヒンジ部を備えるとともに表皮材が接着された繊維基材を得た。なお、実施例4-1では、実施例4よりアラミド繊維Xの含有量を10質量%増加させ、ケナフ繊維の含有量を10質量%低減させた繊維基材を用いた。ヒンジ部の形成方法及び表皮材の材質及びその接着方法は、実施例1-1と同様とした。
比較例1-1では、上記比較例1と同様の材料を用いて、板状樹脂成形体から、ヒンジ部を備えるとともに表皮材が接着された繊維基材を得た。ヒンジ部の形成方法及び表皮材の材質及びその接着方法は、実施例1-1と同様とした。比較例1-2は、表皮材と繊維基材との間にフィルムが介在する他は、上記比較例1-1と同様にして繊維基材を得た。フィルムとしては、ポリエチレンからなるものを用いた。
上記[3]で得られた繊維基材について、次のようなヒンジ耐久試験を行った。
ヒンジ耐久試験:ヒンジ部が曲げ変形されていない状態を初期状態として、ヒンジ部を曲げ変形させて、繊維含有樹脂成形体の一部(第2ボード部17に相当する部分)を表裏に折り曲げた後に初期状態に復帰する動作を1セットとして、この動作を1000回繰り返した。そして、動作100回、150回、200回、1000回時点での、ヒンジ部の外観異常について調べた。繊維含有樹脂成形体の一部を表裏に折り曲げる動作は、ヒンジ部を軸として、当該繊維基材の一部を表皮材が接着された面側に150°回動させ、その後、ヒンジ部が接着された面とは反対側に85°回動させるようにした。
ヒンジ耐久試験の結果を図7の表に示す。図7の表では、以下のような観点で、ヒンジ耐久性を評価をした。
〇:著しい外観異常なし
△:わずかな外観異常あり
×:外観異常あり
比較例1-1のような、従来の繊維基材では、曲げ弾性率が低いことにより、150回の曲げ動作により、表皮材の裂けを生じたものと考えられる。また、比較例1-1のように、ヒンジ部を成形型により圧縮変形させつつ、同時に表皮材を繊維基材に対して直接的に接着してなる構造では、ヒンジ部における繊維基材と表皮材との接着性が周囲に比して高いため、当該部位に応力が集中して、表皮材が裂け易くなったものと考えられる。比較例1-2では、繊維基材と表皮材との間にフィルムを介在させることにより、150回の曲げ動作では、表皮材の裂けが確認されなくなったが、200回の曲げ動作では表皮材の裂けを生じており、ヒンジ耐久性という観点において十分ではなかった。一方、各実施例のように、高強力繊維(PBO繊維又はアラミド繊維)を含む繊維基材では、200回の曲げ動作で著しい外観異常を生じることがなく、比較例1-1及び比較例1-2よりヒンジ耐久性が向上することが確認できた。また、実施例1-2では、繊維基材の表面にわずかな毛羽立ちのような外観不良を生じたが、実施例1-1では、表面が表皮材で覆われているためのそのような外観不良が視認されることがなく、より一層外観不良を抑制する効果が大きいことがわかった。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態以外にも、植物性繊維、高強力繊維、熱可塑性樹脂の含有量は適宜変更可能である。また、繊維基材は、上記以外の他の成分を更に含んで構成されていても構わない。
(2)上記実施形態以外にも、繊維基材は、種々の材質の材料を用いて、様々な製造方法により製造することができる。
(3)上記実施形態では、繊維基材及びその製造方法として、乗物用内装材及びその製造方法を例示したが、繊維基材は、自動車関連分野以外にも建築関連分野などにおいて広く利用することができる。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適であり、なかでも自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、シートバックボード、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
(4)上記実施形態では、表皮材が、繊維基材由来の熱可塑性樹脂によりヒンジ部の表面に接着されている構成を例示したが、これに限られない。例えば、表皮材はフィルム等の介在層を介してヒンジ部に接着されていてもよい。また、ヒンジ部が表皮材で覆われていない構成であってもよく、繊維基材の上面又は下面のうち一方のみが表皮材で覆われていてもよい。さらに、種々の材質、性状の表皮材を適宜用いることが可能である。
(5)上記実施形態では、表裏の両側の表皮材が、ヒンジ部を形成する過程で貼着される構成を例示したが、これに限られない。例えば、裏面側の表皮材を、繊維マットからプレボードを成形する過程で貼着し、表面側の表皮材を、ヒンジ部を形成する過程で貼着してもよい(図8参照)。このような構成では、裏面側の表皮材がヒンジ部を形成する過程で貼着される場合に比して、強固に繊維基材に対して接着されるため、その剥離強度を大きくすることができる。なお、この場合には、ヒンジ部の割れ等に伴って表皮材が裂け易い構造となるが、本実施形態では、ヒンジ部の耐久性が増しているから、このような製造方法にも好適である。
(6)上記実施形態では、ヒンジ部として、第2ボード部の基端部に設けられ、ラゲージボードの搭載性や荷室内で変位させ易くするためのものについて例示したが、これに限られない。ヒンジ部は、開口部を開閉するための蓋部(例えばマップポケットの蓋)や、他部材との組み付けに供される部位等に設けられるものであってもよい。また、ヒンジ部が設けられる部位に応じて、ヒンジ部の曲げ変形量も適宜変更可能である。さらに、ヒンジ部の構成も繊維基材が薄肉化された構成に限られず、ミシン目状のスリットを有する構成や、数回の予備的な曲げ加工を施すことで、他の部分より曲げ変形し易くされた構成等であってもよい。
Claims (3)
- 曲げ変形可能なヒンジ部を備える繊維含有樹脂成形体であって、
熱可塑性樹脂、植物繊維及び高強力繊維を含有し、
前記熱可塑性樹脂が非酸変性オレフィン樹脂であり、
前記高強力繊維が、引張弾性率が27GPa以上のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であり、
前記熱可塑性樹脂、前記植物繊維及び前記高強力繊維の含有割合が、それぞれ、50質量%、45~48質量%及び2~5質量%の範囲内であり、これらの合計が100質量%である繊維含有樹脂成形体。 - 前記ヒンジ部の表面が、表皮材で覆われている請求項1に記載の繊維含有樹脂成形体。
- 前記表皮材が、前記熱可塑性樹脂により前記ヒンジ部の前記表面に接着されている請求項2に記載の繊維含有樹脂成形体。
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