JP2021098905A - 樹脂繊維、繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂繊維、繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法 Download PDF

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秀樹 川尻
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Abstract

【課題】繊維ボードや成形体の製造時に静電気に起因する不具合を抑制する樹脂繊維、繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法を提供する。【解決手段】樹脂繊維1は、芯鞘構造を有し、芯部11が、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂を含み、鞘部12が、非変性ポリオレフィン樹脂を含み、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない。本繊維ボードの製造方法は、植物繊維と樹脂繊維1とを含んだ繊維マットを形成する工程と、繊維マットを加熱して樹脂繊維1を溶融させた後、溶融された熱可塑性樹脂を固化してバインダ樹脂を得る工程とを備える。本成形体の製造方法は、本繊維ボードの製造方法により得られた繊維ボードを成形する工程を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂繊維、繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、補強繊維として植物繊維を用いる繊維ボード及び成形体の製造方法、並びに、これらの製造に用いる樹脂繊維に関する。
近年、高剛性でありながら、軽量な成形体として、補強繊維同士を熱可塑性のバインダ樹脂で結着した構造の成形体が知られている。このような成形体では、剛性を高める目的で、酸変性樹脂を利用する技術が下記特許文献1及び2に開示されている。
特開2009−234129号公報 特開2019−072973号公報
上記特許文献1には、軽量性と高機械的特性との両立を目的として、酸変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂を溶融紡糸して樹脂繊維を得る工程、植物性繊維と樹脂繊維とを混繊して繊維混合物を得る工程、繊維混合物中の樹脂繊維を溶融する工程、を順に備えた植物性繊維複合材の製造方法が開示されている。
また、上記特許文献2には、植物繊維含有ボードの効率的な製造を目的として、酸変性度が0.03〜0.09である酸変性樹脂を含有した樹脂繊維を用いた植物繊維含有ボードの製造方法が開示されている。
しかしながら、酸変性樹脂を含んだ樹脂繊維を用いて複合体やボード等の製造を行うと、樹脂繊維に起因する静電気が問題になることが分かった。例えば、帯電した樹脂繊維は、各種装置や治具等に付着し易くなり、付着・堆積した樹脂繊維塊が装置の稼働を阻害する場合があることが分かって来た。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、繊維ボードや成形体の製造時に静電気に起因する不具合を抑制する樹脂繊維、繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]本発明の樹脂繊維は、芯鞘構造を有する樹脂繊維であって、
芯部が、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂を含み、
鞘部が、非変性ポリオレフィン樹脂を含み、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことを要旨とする。
[2]前記樹脂繊維では、前記芯部を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂と、前記芯部を構成する非変性ポリオレフィン樹脂と、の合計を100質量%とした場合に、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が50質量%以下であるものとすることができる。
[3]前記樹脂繊維では、前記芯部と前記鞘部との合計を100体積%とした場合に、前記鞘部が75体積%以下であるものとすることができる。
[4]前記樹脂繊維では、前記芯部を構成する前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
前記芯部を構成する前記非変性ポリオレフィン樹脂、及び、前記鞘部を構成する前記非変性ポリオレフィン樹脂が、非変性ポリプロピレン樹脂であるものとすることができる。
[5]前記樹脂繊維では、繊度が20dtex以下であるものとすることができる。
[6]前記樹脂繊維では、植物繊維と、前記植物繊維同士を結着するバインダ樹脂と、を含む繊維ボードを構成する前記バインダ樹脂として用いられるものとすることができる。
[7]本発明の繊維ボードの製造方法は、植物繊維と、前記植物繊維同士を結着するバインダ樹脂と、を含む繊維ボードの製造方法であって、
前記植物繊維と、前記樹脂繊維と、を含んだ繊維マットを形成する繊維マット形成工程と、
前記繊維マットを加熱して前記樹脂繊維を溶融させた後、溶融された樹脂を固化して前記バインダ樹脂を得る結着工程と、を備えることを要旨とする。
[8]本発明の成形体の製造方法は、前記繊維ボードの製造方法により得られた繊維ボードを成形する成形工程を備えることを要旨とする。
本発明の樹脂繊維によれば、繊維ボードや成形体の製造時に静電気に起因する不具合を抑制できる。即ち、極性基である酸変性基を有した酸変性ポリオレフィン樹脂は、相対的に非酸変性ポリオレフィン樹脂よりも静電気を生じ易く、また、帯電し易い性質を有する。これに対し、酸変性ポリオレフィン樹脂を、樹脂繊維の芯部として繊維内部へ収容するとともに、非変性ポリオレフィン樹脂を含んだ樹脂によって鞘部を形成し、鞘部で芯部を覆っている本樹脂繊維は、静電気の発生や帯電を抑制できる。このため、樹脂繊維の開繊(繊維をほぐすこと)、混繊(異なる繊維と混合すること)、積層(この樹脂繊維を含んだウェブ、マット、ボード等を重ねること)等の際に、静電気が生じることを抑制できる。また、各種操作や環境によって外部で生じた静電気に対して帯電し難い性質を有することができる。従って、各種装置や治具等への樹脂繊維の付着を抑制したり、樹脂繊維の付着し、堆積することによる繊維塊の形成を抑制したりすることができる。そして、これらの付着や繊維塊により装置稼働阻害を解消することができる。
本発明の樹脂繊維では、芯部を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂と、芯部を構成する非変性ポリオレフィン樹脂と、の合計を100質量%とした場合に、酸変性ポリオレフィン樹脂を50質量%以下にすることができる。この場合には、芯部に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の濃度を低下させることができる。このため、樹脂繊維による静電気の発生及び帯電をより効果的に抑制できる。
本発明の樹脂繊維では、芯部と鞘部との合計を100体積%とした場合に、鞘部を75体積%以下にすることができる。この場合には、芯部体積を大きくすることができ、芯部に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の濃度を低下させることができる。このため、樹脂繊維による静電気の発生及び帯電をより効果的に抑制できる。
本発明の樹脂繊維では、芯部を構成する酸変性樹脂を酸変性ポリプロピレン樹脂とし、芯部及び鞘部を構成する非変性樹脂を非変性ポリプロピレン樹脂とすることができる。この場合には、芯部と鞘部との融点を実質的に同じ融点にすることができる。このため、繊維ボード及び成形体の製造時等に、樹脂繊維の芯部と鞘部とを共に溶融させることができる。即ち、1つの工程内で樹脂繊維の全体を溶融させることができ、静電気抑制及び帯電抑制を実現しながら、効率良く繊維ボードや成形体を製造できる。
本発明の樹脂繊維では、繊度を20dtex以下にすることができる。このように細い樹脂繊維においても十分な静電気抑制及び帯電抑制の効果を得ることができる。従って、繊維ボードや成形体の製造に際し、樹脂繊維の開繊、混繊及び積層等を伴う工程であっても活用できる。また、これらの工程を乾燥環境や乾燥時期においても活用できる。即ち、製造工程における自由度を高めることができる。
本発明の繊維ボードの製造方法及び成形体の製造方法によれば、静電気に起因する不具合を抑制できる。即ち、前述した樹脂繊維を利用するため、開繊、混繊及び積層等の際に、静電気が生じることを抑制できる。また、各種操作や環境によって外部で生じた静電気に対して帯電し難い性質を有することができる。従って、各種装置や治具等への樹脂繊維の付着を抑制したり、樹脂繊維の付着し、堆積することによる繊維塊の形成を抑制したりすることができる。そして、これらの付着や繊維塊により装置稼働阻害を解消して、効率よく繊維ボードや成形体を製造できる。
芯鞘構造を有する樹脂繊維を説明する説明図である。 繊維ボード(成形体)を説明する説明図である。 繊維ボードの製造方法を説明する説明図である。 成形体の製造方法を説明する説明図である。
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
[1]樹脂繊維
本発明の樹脂繊維(1)は、芯鞘構造を有する。そして、芯部(11)が、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂を含み、鞘部(12)が、非変性ポリオレフィン樹脂を含み、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことを特徴とする(図1参照)。
このように、本発明の樹脂繊維1は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含んだ芯部11が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない鞘部12によって覆われた構造を有する。このため、静電気に起因する不具合を抑制できる。
従来、バインダ樹脂に酸変性ポリオレフィン樹脂を添加すると繊維ボードや成形体の機械特性が向上されることが知られている。このため、必要に応じ、非変性ポリオレフィン樹脂に酸変性ポリオレフィン樹脂を加えた混合樹脂を紡糸してなる樹脂繊維をバインダ樹脂源として利用している。しかしながら、この混合樹脂を紡糸してなる樹脂繊維は、開繊(繊維をほぐすこと)、混繊(異なる繊維と混合すること)及び、積層(樹脂繊維を含んだウェブ、マット、ボード等を重ねること)等の際に、樹脂繊維が装置や治具等に付着し、やがて堆積することで繊維塊を形成し、装置を停止したり、メンテナンスしたりする必要を生じていた。また、この状況は乾燥した環境においてより顕著となることが分かっている。その一方で、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない非変性ポリオレフィン樹脂のみを紡糸した樹脂繊維では同様の問題を生じない。
これらのことから、本発明者は、樹脂繊維同士又は他繊維と樹脂繊維との擦れ合いによって静電気を生じ、帯電した樹脂繊維が装置などに付着、堆積すること、更に、静電気の発生には酸変性ポリオレフィン樹脂が関与すると考えた。そして、湿度環境に影響され難く、静電気を生じ難く、また、帯電し難い樹脂繊維が必要と考えた。そこで、鋭意検討の末、樹脂繊維の外表面に酸変性ポリオレフィン樹脂が露出されないようにすることで、静電気発生や帯電を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の樹脂繊維1が有する芯鞘構造は、鞘部12によって、芯部11が覆われた構造である。芯部11が、鞘部12に覆われることにより静電気の発生及び帯電を抑制できる。芯部11は鞘部12によって完全に覆われていることが好ましいが、発明の目的を妨げない範囲で一部の芯部11が鞘部12から露出されてもよい。
芯部11は、樹脂繊維1の長手方向に対して直交した繊維断面(以下、単に「直行断面」という)において、中央部をなす部位である。直行断面における芯部11の形状は限定されず、例えば、略円形、略多角形等とすることができる。一方、鞘部12は、直行断面において、外周部をなす部位であり、芯部11を囲む部位である。直行断面における鞘部12の形状は限定されず、例えば、略環形状等とすることができる。また、鞘部12は、機能的な要請から異形断面を有することができる。例えば、樹脂繊維1の直行断面が略星形状となるように、外へ向かって伸びる複数の突起を有する形状等にすることができる。
また、樹脂繊維1は、後述するように、繊維ボードやこれを賦形した成形体では、溶融した後、固化させることでバインダ樹脂として利用できる。この目的においては、芯部11及び鞘部12の両方が溶融可能であることが好ましく、芯部11及び鞘部12は、いずれも熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。主成分とは、その対象(例えば、芯部、鞘部)の全体を100質量%とした場合に、熱可塑性樹脂の割合が50質量%を超えることを意味する。熱可塑性樹脂以外の構成成分としては、例えば、増量剤、着色剤、無機難燃剤等の熱可塑性樹脂以外からなるフィラー類を挙げることができる。
また前述の通り、芯部11は、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂を含み、鞘部12は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まず、非変性ポリオレフィン樹脂を含む。このように、芯部11に非変性ポリオレフィン樹脂を含有させることで、酸変性ポリオレフィン樹脂を芯部11内で希釈することができる。即ち、芯部11の体積を大きくしつつ、より広い範囲に酸変性ポリオレフィン樹脂が含まれた状態を形成できる。更に、芯部11に非変性ポリオレフィン樹脂を含有させることで、芯部11と鞘部12との融点を実質的に同じものにすることができる。このため、バインダ樹脂原料として好適にすることができる。即ち、鞘部12の溶融とともに、芯部11も溶融され、尚且つ、芯部11内に広範に含まれた酸変性基が溶融によってより広い範囲に拡散させることができる。即ち、バインダ樹脂源としての利用に適した機能を付与できる。
尚、静電気抑制・帯電抑制を得る観点では、例えば、芯部11を酸変性ポリオレフィン樹脂のみから形成し、鞘部12を非変性ポリオレフィン樹脂のみから形成することができる。このように形成すると、前述のようにバインダ樹脂源として利用し難い性質を有することになる。即ち、芯部11を酸変性ポリオレフィン樹脂のみから形成し、鞘部12を非変性ポリオレフィン樹脂のみから形成すると、芯部11と鞘部12との融点差が大きくなる傾向にある。このため、芯部11と鞘部12とを同時に溶融することが難しくなる。また、通常、非変性ポリオレフィン樹脂の必要量に比べて、酸変性ポリオレフィン樹脂の必要量は少ないため、芯部11を酸変性ポリオレフィン樹脂のみから形成すると、直行断面において芯部11は、中央部の狭い範囲に存在することになるため、仮に、芯部11と鞘部12とを同時に溶融させることができたとしても、樹脂繊維を溶融させた際に、酸変性基を広い範囲に拡散させることが難しくなるという問題を生じる。
更に、樹脂繊維の帯電を抑制する観点からは、例えば、樹脂繊維に帯電防止剤を添加する方法が考えられる。しかしながら、帯電防止剤には、界面活性剤の利用が多い。界面活性剤は、製品となった繊維ボードや成形体にも残存されるが、加温により製品から、そのまま揮散されたり、分解して揮散されたりすることが危惧される。特に繊維ボードや成形体を車両用途で利用する場合、上述の揮散された成分が、車両内の臭気源や、室内窓に生じる霞の原因となり得るため、樹脂繊維の帯電は、帯電防止剤を利用することなく解消できることが好ましい。即ち、本発明の樹脂繊維には、帯電防止剤が含まれないことが好ましい。
芯部11を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂は、骨格樹脂であるポリオレフィン樹脂に対して酸変性基が導入された樹脂である。酸変性基としては、無水カルボン酸基(−CO−O−OC−)及びカルボン酸基(−COOH)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、酸変性基は、どのような化合物を用いて導入されてもよいが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等を用いて導入することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
上述した骨格樹脂は、ポリオレフィン樹脂であればよい。骨格樹脂を構成するオレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
従って、骨格樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。更に、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。
酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量は限定されないが、例えば、重量平均分子量(GPC法による)は10000〜200000が好ましく、15000〜100000がより好ましく、20000〜60000が更に好ましく、25000〜45000が特に好ましい。また、酸価(JIS K0070による)は、15以上(通常、80以下)であることが好ましく、15〜70がより好ましく、20〜60が更に好ましく、23〜30が特に好ましい。これらのなかでも、本発明においては、重量平均分子量25000〜45000且つ酸価20〜60である無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
一方、芯部11を構成する非変性ポリオレフィン樹脂としては、上述した酸変性ポリオレフィン樹脂の説明における骨格樹脂を利用できる。即ち、非変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
従って、非変性ポリオレフィン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。更に、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。
非変性ポリオレフィン樹脂の分子量は限定されないが、例えば、重量平均分子量(GPC法による)は10000〜200000が好ましく、15000〜100000がより好ましく、20000〜60000が更に好ましく、25000〜45000が特に好ましい。これらのなかでも、本発明においては、重量平均分子量25000〜45000である非変性のホモポリプロピレンが好ましい。
芯部11を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂と非変性ポリオレフィン樹脂との割合は限定されないが、これらの合計を100質量%とした場合に、酸変性ポリオレフィン樹脂の割合が50質量%以下(通常、0.1質量%以上)であることが好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%が更に好ましく、2〜20質量%が特に好ましく、3〜10質量%がとりわけ好ましい。特にこの含有割合は、本樹脂繊維を、植物繊維とそれらを結着するバインダ樹脂とを含む繊維ボードを構成するバインダ樹脂として用いる場合に好適である。
尚、芯部11は、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂のみからなってもよいが、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含むことができる。他の熱可塑性樹脂が含有される場合は、芯部11を構成する熱可塑性樹脂全体を100質量%とした場合に、他の熱可塑性樹脂は30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、酸変性基を有さない変性ポリオレフィン(酸変性基以外の基によって変性されたポリオレフィン)、ポリエステル樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂)、芳香族ビニル系樹脂(ポリスチレン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂(脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一方、鞘部12を構成する非変性ポリオレフィン樹脂としては、芯部11において示した非変性ポリオレフィン樹脂を同様に用いることができる。即ち、非変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
従って、非変性ポリオレフィン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。更に、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。
また、芯部11に含まれる非変性ポリオレフィン樹脂と、鞘部12に含まれる非変性ポリオレフィン樹脂とは、異なる樹脂であってもよいが、同じ樹脂であることが好ましい。これらが同じ樹脂であることにより、前述の通り、芯部11と鞘部12との融点差を小さくできる、又は、実質的に同じ融点にできるからである。更に、樹脂繊維を溶融した際の親和性に優れ、両樹脂を混ざり合った状態で流動させることができる。
非変性ポリオレフィン樹脂の分子量は限定されないが、例えば、重量平均分子量(GPC法による)は10000〜200000が好ましく、15000〜100000がより好ましく、20000〜60000が更に好ましく、25000〜45000が特に好ましい。これらのなかでも、本発明においては、重量平均分子量25000〜45000である非変性のホモポリプロピレンが好ましい。
尚、鞘部12は、非変性ポリオレフィン樹脂のみからなってもよいが、非変性ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含むことができる。他の熱可塑性樹脂が含有される場合は、鞘部12を構成する熱可塑性樹脂全体を100質量%とした場合に、他の熱可塑性樹脂は30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、酸変性基を有さない変性ポリオレフィン(酸変性基以外の基によって変性されたポリオレフィン)、ポリエステル樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂)、芳香族ビニル系樹脂(ポリスチレン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂(脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、樹脂繊維1を構成する芯部11と鞘部12との構成比は限定されないが、芯部11と鞘部12との合計を100体積%とした場合に、鞘部12は75体積%以下(通常、1体積%以上)であることが好ましい。鞘部12の体積割合が、75体積%を超えると、芯部11の体積割合が小さくなる。これに従い、芯部11における酸変性ポリオレフィン樹脂の含有割合が相対的に増加することになり、非変性ポリオレフィン樹脂による酸変性ポリオレフィン樹脂の希釈率が低下する。このため、静電気抑制・帯電抑制の効果は、上記体積割合が75体積%以下の場合に比べて低下する傾向にある。この体積割合は、1〜73体積%がより好ましく、20〜70体積%が更に好ましく、30〜65体積%が特に好ましく、40〜60体積%がとりわけ好ましい。
尚、この体積割合は、無作為に選択した異なる5ヶ所の直行断面における、芯部11と鞘部12との面積割合を利用するものとする。即ち、芯部11の面積と鞘部12の面積とを測定して得られる面積割合を、体積割合としてそのまま読み換えるものとする。
本発明の樹脂繊維1の繊度は限定されないが、20dtex以下である。樹脂繊維1の繊度を20dtex以下に抑えることにより、繊維ボードの原料としてより利用し易い形態を得ることができる。即ち、本発明の効果をより得易い構成とすることができる。これは、樹脂繊維1の繊度が過度に大きくなると、自重がよって静電気による影響を受け難くすることができる一方で、繊維ボードを製造する際に、エアレイ等のように、樹脂繊維の軽量性を利用した装置を利用し難くなる傾向にあるからである。また、繊度が過度に大きくなると、繊維ボードを構成する植物繊維との繊度差が大きくなり、エアレイ等の装置によって樹脂繊維と植物繊維とを所望の構成比で混繊することが難しくなる傾向にあるからである。従って、樹脂繊維の繊度は、0.1〜20dtexが好ましく、1〜15dtexがより好ましく、3〜9dtexが更に好ましい。
そして、上述のごとく、本発明の樹脂繊維1は、植物繊維と、植物繊維同士を結着するバインダ樹脂と、を含む繊維ボードを構成するバインダ樹脂として好適に用いることができる。この繊維ボードについては、より詳しく後述する。
[2]繊維ボードの製造方法
本発明の繊維ボードの製造方法は、繊維マット形成工程R1と結着工程R2とを備える(図3参照)。
繊維ボード2は、植物繊維21と、植物繊維21同士を結着するバインダ樹脂22と、を含む。即ち、繊維ボード2は、植物繊維21同士がバインダ樹脂22によって結着されることによって板状にされているものである(図2参照)。
植物繊維21は、繊維ボード2において、骨材をなす材料である。また、植物繊維21は、植物に由来する繊維である。植物繊維が含まれる植物体の部位は限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等のいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
植物から取り出された繊維は、そのまま植物繊維としてもよいし、各種加工を施したうえで植物繊維としてもよい。各種加工としては、レッティング(微生物を利用したレッティング、酵素を利用したレッティング等を含む)、ボイル、蒸煮、加熱、乾燥、裁断、叩打、洗浄、薬品処理等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
植物繊維を取り出す植物種は限定されないが、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹、綿花等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、ケナフ及び/又はジュート麻が好ましい。
尚、ケナフは、木質茎を有し、アオイ科に分類される植物である。このケナフには、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、ジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物が含まれる。
植物繊維の繊維長及び繊維径は限定されない。得られる繊維ボードやこれを用いて得られる成形体において要求される機械特性の観点から、繊維長と繊維径との比は、10〜15000が好ましい。また、繊維長は10mm以上であることが好ましい。これにより高い強度(曲げ強さ及び曲げ弾性率等、以下同様)が得られる。この繊維長は10〜150mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、30〜80mmが特に好ましい。
また、繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この範囲では高い強度を得ることができる。植物繊維として、この繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その含有量は、植物繊維全体に対して10質量%(特に3体積%)以下であることが好ましい。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
バインダ樹脂22は、前述した樹脂繊維1が溶融された後、固化されてなる樹脂であり、植物繊維21同士を結着している樹脂である。このバインダ樹脂22の詳細については、樹脂繊維1において行った説明が適用される。
また、本方法で用いる樹脂繊維1の繊維長及び繊維径は限定されないが、繊維長と繊維径との比が10〜15000の範囲であることが好ましい。より具体的には、繊維長は10mm以上であることが好ましく、10〜150mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、30〜80mmが特に好ましい。
また、繊維径は1mm以下が好ましく、0.001〜1.5mmがより好ましく、0.005〜0.7mmが更に好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。
尚、樹脂繊維1として、上述の繊維長及び繊維径を外れた形態のものを含むことができる。この外れた形態の樹脂繊維1を含む場合、その含有量は、樹脂繊維1全体に対して10質量%(特に3体積%)以下であることが好ましい。また、繊維長及び繊維径の測定方法は、植物繊維21と同様である。
繊維ボード2内における植物繊維21とバインダ樹脂22との割合は限定されないが、植物繊維21とバインダ樹脂22との合計を100質量%とした場合に、植物繊維21は、30〜95質量%が好ましく、32〜85質量%がより好ましく、33〜75質量%が更に好ましく、35〜70質量%が特に好ましい。更に、繊維ボード2全体を100質量%とした場合に、植物繊維21とバインダ樹脂22とは合計で70質量%以上含まれることが好ましく、80〜100質量%がより好ましく、85〜100質量%が更に好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。
尚、繊維ボード2は、植物繊維21及びバインダ樹脂22以外に、例えば、熱膨張カプセルや、植物繊維21以外の他の補強繊維を含むことができる。他の補強繊維としては、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、樹脂繊維(前述した樹脂繊維1を除いた樹脂繊維、例えば、ポリアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前述の通り、本発明の繊維ボードの製造方法は、繊維マット形成工程R1と、結着工程R2と、を有する(図3参照)。
このうち、繊維マット形成工程R1は、植物繊維21と、樹脂繊維1と、を含んだ繊維マット3を形成する工程である。繊維マット3は、どのようにして形成してもよい。具体的には、エアレイ及びカード等のウェブ作製装置を用いて形成できる。例えば、エアレイを用いる場合には、植物繊維21と樹脂繊維1とが所望の割合に混合されるように送風により繊維を吹き飛ばし、所望の厚さとなるように堆積させることでウェブ(粗ウェブ31A及び31B)を得ることができる。このウェブ(31A及び31B)は、そのまま繊維マット3として利用してもよいが、複数のウェブを重ねて得られる積層ウェブ(31C)を繊維マット3として利用することもできる。また、積層ウェブ(31C)を利用する場合には、積層ウェブ(31C)にニードルパンチ(ニードルパンチ機5を利用できる)を行って交絡を強化することができる。更に、得られる積層ウェブ(31C)は裁断機6を用いて所望の大きさ、形状に裁断して繊維マット3とすることができる。
繊維マットの目付及び厚さ等は限定されないが、例えば、目付は400〜3000g/mとすることができ、更には600〜2000g/mとすることができる。また、厚さは5mm以上(通常、50mm以下)とすることができ、更には8〜40mm、特に10〜30mmとすることができる。
また、結着工程R2は、繊維マット3を加熱して樹脂繊維1を溶融させた後、溶融された熱可塑性樹脂を固化してバインダ樹脂22を得る工程である。結着工程R2における加熱温度は限定されず、樹脂繊維1を溶融させることができる温度であればよい。具体的には、通常、150〜280℃である。特に、樹脂繊維1が酸変性ポリプロピレン樹脂と非変性ポリプロピレン樹脂とを用いてなるものである場合には、その加熱温度は、170〜250℃とすることが好ましく、180〜240℃とすることがより好ましく、190〜230℃とすることが特に好ましい。また、溶融した熱可塑性樹脂を固化する際には、20〜30℃程にまで冷却することが好ましい。この冷却は、強制的冷却であってもよいし、放冷にであってもよい。
更に、結着工程R2を行う際には、加熱と同時に又は別途に加圧することができる。加圧により、植物繊維同士をより強固に結着することができる。また、得られる繊維ボード2の厚さをコントロールすることができる。この際の圧力は特に限定されず、所望の特性により変化させることができるが、例えば、0.5〜8MPaとすることができ、0.7〜5MPaが好ましく、1〜4MPaがより好ましい。上述の通り、加熱と加圧とは同時であってもよく、加熱と加圧とを別に行うこともできる。別に行う場合には、通常、溶融された熱可塑性樹脂が固化される以前に加圧を行う。一方、同時に行う形態としては、熱間プレス(図3における熱間プレス機7により行うことができる)を利用できる。熱間プレスを利用することで、植物繊維21を圧縮した状態で、植物繊維21同士をバインダ樹脂22によって拘束できるため、得られる繊維ボード2の厚さをより小さくすることができる。
本方法により得られる繊維ボード2の目付及び厚さは限定されないが、例えば、目付は400〜3000g/mとすることができ、更には600〜2000g/mとすることができる。また、厚さは0.5mm以上(通常、50mm以下)とすることができ、更には1〜25mm、特に1.5〜10mmとすることができる。
[3]成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、前述の繊維ボードの製造方法により得られた繊維ボードを成形する成形工程R3を備えることを特徴とする(図4参照)。
成形工程R3の具体的な構成は限定されないが、通常、加熱により繊維ボード2内のバインダ樹脂22を軟化又は溶融させた後、必要な形状に賦形した状態で冷却することにより、成形を行うことができる。従って、本方法における成形工程3Rは、加熱工程R31と、賦形工程R32と、冷却工程R33と、を有することができる。これらの工程は、別々に行ってもよいし、可能な工程は一括して行ってもよい。具体的には、賦形工程R32と冷却工程R33とを一括して行うことができる(図4参照)。この場合、加熱工程R31(加熱装置8により行うことができる)を行った後、加熱された繊維ボード2を、冷間プレス(冷間プレス機9により行うことができる)することにより達することができる。
本発明による成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も限定されない。この成形体は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]樹脂繊維の作製及び評価
(1)実施例1
下記の非変性ポリオレフィン樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン樹脂(B)を用い、芯成分としてA:B=95質量%:5質量%となるように混合した混合樹脂を用い、鞘成分としてA=100質量%である樹脂を用い、溶融紡糸により芯鞘構造を有する樹脂繊維1(実施例1)を得た。
この樹脂繊維1は、繊度が6dtexであり、その直行断面(図1参照)における芯部11は略円形であり、鞘部12は略環形である。また、体積割合は、芯部11と鞘部12との合計を100体積%とした場合に、芯部11は50体積%となっている。
非変性ポリオレフィン樹脂:ホモポリオレフィン樹脂(融点165℃)
酸変性ポリオレフィン樹脂:酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「Modic P908」、融点150℃)
(2)比較例1
実施例1と同じ非変性ポリオレフィン樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン樹脂(B)をA:B=95質量%:5質量%となるように混合した混合樹脂を溶融紡糸し、芯鞘構造を有さない、樹脂繊維(比較例1)を得た。
この樹脂繊維(比較例1)は、繊度が6dtexである。
(3)カード発生電気の測定
上記(1)及び(2)で得た各樹脂繊維を用いてカーディングを行い、得られたウェブの表面部の発生電気量を、静電気測定器(キーエンス社製、型式「SK−H050」)により測定した。
尚、測定条件は、温度20度、相対湿度40%である。
その結果、実施例1の樹脂繊維を用いた例では「−0.04kV」であった。一方、比較例1の樹脂繊維を用いた例では「−0.15kV」であった。即ち、発生電気量は、比較例1の方が大きいことが分かる。
(4)電気抵抗値の測定
上記(1)及び(2)で得た各樹脂繊維を用いてカーディングを行い、得られたウェブの表面部の電気抵抗値を、表面抵抗計(ホーゲン社製、型式「F−109」)により測定した。
尚、測定条件は、温度20度、相対湿度40%である。
その結果、実施例1の樹脂繊維を用いた例では「1.90E+11Ω」であった。一方、比較例1の樹脂繊維を用いた例では「6.50E+09Ω」であった。即ち、電気抵抗値は、実施例1の方が大きくなることが分かる。
[2]繊維ボードの作製及び評価
(1)実施例2
植物繊維として、ケナフ繊維を用意した。ケナフ繊維は、ケナフから取り出した靭皮をレッティング処理により解繊して得た植物繊維である。ケナフ繊維の平均繊維長は70mmである。
樹脂繊維として、上記[1](1)で得た実施例1の樹脂繊維を平均繊維長50mmに切り揃えた繊維を用意した。
上記ケナフ繊維と上記樹脂繊維とをカード機を利用して積層し、ケナフ繊維と樹脂繊維との質量比が50:50となったウェブ(繊維集積物)を得た。
得られたウェブを200℃まで加熱した後、プレスしながら25℃まで冷却(冷却プレス)して、厚さ2.3mm、目付1.5kg/mの繊維ボード(成形体)を得た。
(2)比較例2
植物繊維として、ケナフ繊維を用意した。ケナフ繊維は、ケナフから取り出した靭皮をレッティング処理により解繊して得た植物繊維である。ケナフ繊維の平均繊維長は70mmである。
樹脂繊維として、上記[1](2)で得た比較例1の樹脂繊維を平均繊維長50mmに切り揃えた繊維を用意した。
上記ケナフ繊維と上記樹脂繊維とをカード機を利用して積層し、ケナフ繊維と樹脂繊維との質量比が50:50となったウェブ(繊維集積物)を得た。
得られたウェブを200℃まで加熱した後、プレスしながら25℃まで冷却(冷却プレス)して、厚さ2.3mm、目付1.5kg/mの繊維ボード(成形体)を得た。
上記(1)及び(2)で得られた実施例2及び比較例2の各繊維ボードの最大曲げ荷重をJIS K 7171に準拠して測定した。測定条件は以下の通りである。大きさ50mm×150mmの試験片を、100mmの間隔で設定した2つの支点(曲率半径3.2mm)で支持し、支点間の中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分で荷重を負荷。
その結果、実施例2の繊維ボードの最大曲げ荷重は「75N」であった。一方、比較例2の繊維ボードの最大曲げ荷重は「74N」であった。即ち、両者の最大曲げ荷重は、実質的に同じ値であった。従って、本発明の樹脂繊維1(所定の芯鞘構造を有する)を繊維ボードや成形体を製造すれば、静電気発生及び帯電を抑制しつつ、これらを製造できるうえ、得られる繊維ボードや成形体の機械特性に対して全く影響を及ぼさないことが分かる。
本発明は、自動車等の車両関連分野、船舶関連分野、航空機関連分野、建築関連分野等において広く利用される。本発明の成形体は、上記分野における内装材、外装材、構造材等として好適である。このうち上記車両関連分野のなかでも、自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
1;樹脂繊維、11;芯部、12;鞘部、
2;繊維ボード、21;植物繊維、22;バインダ樹脂、
3;繊維マット、31A、31B;ウェブ、31C;積層ウェブ、
4;成形体、
5;ニードルパンチ機、
6;裁断機、
7;熱間プレス機、
8;加熱装置、
9;冷間プレス機、
R1;繊維マット形成工程、
R2;結着工程、
R3;成形工程、R31;加熱工程、R32;賦形工程、R33;冷却工程。

Claims (8)

  1. 芯鞘構造を有する樹脂繊維であって、
    芯部が、酸変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂を含み、
    鞘部が、非変性ポリオレフィン樹脂を含み、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことを特徴とする樹脂繊維。
  2. 前記芯部を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂と、前記芯部を構成する非変性ポリオレフィン樹脂と、の合計を100質量%とした場合に、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が50質量%以下である請求項1に記載の樹脂繊維。
  3. 前記芯部と前記鞘部との合計を100体積%とした場合に、前記鞘部が75体積%以下である請求項1又は2に記載の樹脂繊維。
  4. 前記芯部を構成する前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
    前記芯部を構成する前記非変性ポリオレフィン樹脂、及び、前記鞘部を構成する前記非変性ポリオレフィン樹脂が、非変性ポリプロピレン樹脂である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の樹脂繊維。
  5. 繊度が、20dtex以下である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の樹脂繊維。
  6. 植物繊維と、前記植物繊維同士を結着するバインダ樹脂と、を含む繊維ボードを構成する前記バインダ樹脂として用いられる請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の樹脂繊維。
  7. 植物繊維と、前記植物繊維同士を結着するバインダ樹脂と、を含む繊維ボードの製造方法であって、
    前記植物繊維と、請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の樹脂繊維と、を含んだ繊維マットを形成する繊維マット形成工程と、
    前記繊維マットを加熱して前記樹脂繊維を溶融させた後、溶融された熱可塑性樹脂を固化して前記バインダ樹脂を得る結着工程と、を備えることを特徴とする繊維ボードの製造方法。
  8. 請求項7に記載の繊維ボードの製造方法により得られた繊維ボードを成形する成形工程を備えることを特徴とする成形体の製造方法。
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