JP6657831B2 - 強化繊維複合積層体 - Google Patents
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Description
(1)A1層、A2層、及びB層は強化繊維を含み、B層の強化繊維の破断伸び率が、A1及びA2層の強化繊維の破断伸び率よりも高く、B層の強化繊維の破断伸び率(%)とA1及びA2層の強化繊維の破断伸び率(%)の差は1.0〜5.0(%)である。
(2)A1層及びA2層それぞれの層について、強化繊維100重量部のうち30〜100重量部は、その繊維長が30〜200mmである。
(3)A1層及びA2層に含まれる強化繊維はPAN系炭素繊維である。
(4)A1層及びA2層は、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂を45重量部以上、200重量部以下含有する。
(5)B層は、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂を30〜400重量部含有する。
(1)A1層、A2層、及びB層は強化繊維を含み、B層の強化繊維の破断伸び率が、A1及びA2層の強化繊維の破断伸び率よりも高い。
(2)A1層及びA2層それぞれの層について、強化繊維100重量部のうち30〜100重量部は、その繊維長が30〜200mmである。
(3)A1層及びA2層に含まれる強化繊維は炭素繊維である。
なお、本発明において、強化繊維の破断伸び率は、材料に応じてJIS K7161、JIS R3420、JIS R7606に記載される試験法による測定方法により測定される値である。
本積層体を構成するA1層及びA2層(以下、これらをまとめて「A層」と称す場合がある。)は、本積層体の実質的に表裏層(外層)として存在する層であり、主として本積層体の剛性を高めると共に、プレス賦形時の均一な型追従性の向上に寄与する。
ただし、このA層中の強化繊維と熱可塑性樹脂の含有量割合において、「熱可塑性樹脂」には、A層を構成する後述の強化繊維シートがバインダー樹脂を含有する場合、この強化繊維シートに含有されるバインダー樹脂は含まれない。
後述のB層についても同様である。
A層に用いる強化繊維(以下、「強化繊維A」と称す場合がある。)としては、機械強度の観点から、炭素繊維を用いる。炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維のいずれでも良く、これらを組み合わせて用いてもよいが、強化繊維マットを作成する工程で繊維が折れにくいPAN系炭素繊維が好ましい。なお、炭素繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
繊維長が30〜200mm、好ましくは40〜150mm、より好ましくは50〜100mmの強化繊維の割合は、強化繊維100重量部中特に40〜100重量部であることが好ましく、とりわけ50〜100重量部であることが好ましい。
機械強度の観点から強化繊維Aの繊維長は連続繊維の様に長いほど好ましいが、乾式法にて強化繊維Aの不織布を作成する工程において、カード機への繊維の巻き付きが発生する傾向にあるので、強化繊維Aの繊維長は通常200mm以下である。
また、A1層の強化繊維とA2層の強化繊維とは同一のものであってもよく、異なるものであってもよいが、材料の調達の利便性と積層体の反りの面では同一であることが好ましい。
A層に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、耐熱性に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、軽量化に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して用いても構わない。
A層に用いるポリオレフィン系樹脂は、成形性と軽量化の観点から好ましくはポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であり、特に機械特性および耐熱性の観点からポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、A層に用いるポリオレフィン系樹脂は、複数のポリオレフィン系樹脂を混合して用いてもよい。
エチレン、ブテン以外のコモノマーとしては、炭素数5〜20のα−オレフィン等が挙げられる。炭素数5〜20のα−オレフィンは、例えば、1−ヘキセン、1−オクテンを例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは1種類でも2種類以上用いてもよい。
A層に用いるポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.2N荷重)は、1g/10min以上、50g/10min以下であることが好ましく、より好ましくは2g/10min以上、35g/10min以下であり、さらに好ましくは5g/10min以上、25g/10min以下である。
A層に用いるポリカーボネート系樹脂は、ホモポリマー及びコポリマーのいずれであってもよい。また、ポリカーボネート系樹脂は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。また、複数のポリカーボネート系樹脂を混合して用いてもよい。
なお、いわゆるポリエステルカーボネート樹脂(分子鎖中にエステル結合とカーボネート結合を両方有する樹脂)も、ポリカーボネート系樹脂に含む。
なお、ビスフェノールA以外のジオールを単独、又は、複数のジオールを併用したポリカーボネート系樹脂でも良く、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオールのいずれでも構わない。
A層に用いるポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミドが好ましく、ωアミノ酸の開環単独重合で得られるもの、異なるωアミノ酸の開環共重合で得られるもの、及びジアミンとジカルボン酸の共重合で得られるもの、が挙げられる。なお、芳香族ポリアミドや、芳香族−脂肪族ポリアミドを用いることもできる。
A層に用いるポリエステル系樹脂としては、耐熱性や成形性の観点から芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
A層は、通常、上述の強化繊維Aのシート(強化繊維シート)を作製し、この強化繊維シートを1枚又は複数枚積層することにより作製される。或いは、強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートとを各々作製し、これを積層することで作製される。その際、必要に応じて、強化繊維シート、或いは強化繊維と熱可塑性樹脂シートと共に耐衝撃性シートを積層して用いてもよい。
A層に用いる強化繊維シート、すなわち炭素繊維シートの作製方法は特に限定されるものではないが、炭素繊維シートは、炭素繊維ペーパー、又は炭素繊維マットであることが好ましい。ここで、「炭素繊維ペーパー」と「炭素繊維マット」はいずれも繊維束を開繊・分散し、湿式法や乾式法で成形・抄紙して平膜状としたシートである。
A層を構成する熱可塑性樹脂シートの作製方法としては特に限定されず、Tダイキャスト法、カレンダー法、プレス法など、公知の溶融製膜方法を採用することができる。
本積層体を構成するB層は、前記A1層と前記A2層との間に設けられたコア層(中間層)として存在する層であり、B層は、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂を30〜400重量部、好ましくは50〜300重量部、さらに好ましくは60〜200重量部含有することが好ましい。また、B層は、強化繊維と熱可塑性樹脂を主成分としてこれらを合計で30重量%以上、特に30〜100重量%含有することが好ましい。このB層の熱可塑性樹脂含有量が上記の範囲であることによって、本積層体について優れたプレス賦形時の均一な型追従性と機械強度と耐衝撃性バランスに優れた積層体を実現できる。
B層に用いる強化繊維(以下、「強化繊維B」と称す場合がある。)としては、プレス賦形時の型追従性と耐衝撃性の観点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。
B層に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、耐熱性に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂の中でも軽量化、成形性の観点よりポリオレフィン系樹脂を用いるのが好ましく、機械特性、耐熱性の観点よりポリプロピレン系樹脂を用いるのが特に好ましい。
B層は、通常、上述の強化繊維Bのシート(ガラス繊維シート)を作製し、この強化繊維シートを1枚又は複数枚積層することにより作製される。或いは、強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートとを各々作製し、これを積層することで作製される。
B層の作製に用いる強化繊維シートは、強化繊維Aの代りに強化繊維Bを用いること以外は、A層の作製に用いる強化繊維シートと同様に作製することができる。
B層を構成する熱可塑性樹脂シートは、前述したA層を構成する熱可塑性樹脂シートの作製方法と同様の方法で、同様の厚みに作製することができる。
本積層体は、本発明の特徴や効果を阻害しない範囲内で、A1層、A2層及びB層以外の他の層を設けてもよい。
具体的には、本積層体はA1層/B層/A2層の積層構成であればよく、例えばA1層やA2層のさらに外側に、印刷層などの意匠性を有する層や、防汚層などの表面保護層を設けることもできる。また、層間に、必要に応じて接着層などを設けることもできる。
本積層体は、前記の通り、A1層、B層、A2層を構成するシートをそれぞれ作成して、これらを積層することで製造することができる。
かかる範囲においてプレス成形することにより、プレス賦形時の均一な型追従性と機械強度と耐衝撃性のバランスに優れた積層体を作製することができる。
本積層体の厚み(総厚み)は特に限定されないが、1.0mm以上、5.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上、5.0mm以下であることがさらに好ましく、2.0mm以上、5.0mm以下であることが特に好ましい。本積層体の厚みが1.5mm以上であれば、本積層体や、本積層体をプレス成形した製品が表面外観に優れる。また、本積層体の厚みが5.0mm以下であれば、本積層体がプレス成形性に優れる。
また、B層の厚みは、本積層体の総厚みの70〜96%の範囲であることが、プレス賦形時の均一な型追従性と機械強度のバランスとコストの観点から好ましい。
本積層体をプレス賦形するには、例えば、賦型金型表面積の45〜100%、特に50%程度の面積となるように切断機等で切断し、予め160〜290℃程度に予熱した本積層体を賦型金型にセットし、所定の圧力と温度及び時間でプレス賦型を行う。即ち、プレス賦型時に本積層体中の熱可塑性樹脂と強化繊維を流動させて、賦型型に追従させる流動成形を行う。なお、上記のプレス賦形時の成形条件には特に制限はないが、通常、温度170〜200℃、圧力2.0〜10MPa、加熱、加圧保持時間5〜30分程度である。
実施例及び比較例における測定・評価は以下の方法・基準で行った。
作製した強化繊維複合積層体を500℃で1時間程度、炉内にて焼き飛ばし法を用いて樹脂を除去して強化繊維を取り出した後、無作為に採取した100本の繊維の繊維長をノギスやルーペ等を用いて測定し、強化繊維100重量部に占める繊維長30〜200mmのものの割合(重量%)を算出した。
凹凸形状高さが10mmの段差のある賦形型を用いて、作製した強化繊維複合積層体を金型面積に対して50%の表面積を持つ様に切断し、230℃で7分間予熱を行った後、表面温度170℃の金型にセットし、圧力2MPa、成形時間10分の条件でプレス成形を行い、得られた賦形成形品の表面を目視で観察して、以下の基準で評価した。
○:表面にコア層が露出せず、かつ、賦形型の絞りに積層体が追従できている状態
×:表面にコア層が露出している状態、又は、賦形型の絞りに積層体が追従できていない状態。
作製した強化繊維複合積層体を幅15mm、長さ100mmに切断し、JIS K7074に従って、支点間距離=80mm、速度=5.3mm/min、温度=23℃で3点曲げ試験を行い、曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。
また、曲げ弾性率を以下の評価基準で判定した。
○:7.0GPa以上
△:6.1GPa以上、7.0GPa未満
×:6.0GPa未満
作製した強化繊維複合積層体を、幅50mm、長さ150mmに切断し、落球衝撃試験装置の固定バイス(試験片長手方向の2辺を25mmずつ噛み込ませバイス間距離を100mmにセット)にセットし、落下錘(500g)を70cmの高さから落下させたときの、サンプルの状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:表面割れなし
△:表面・裏面に一部破壊あり
×:サンプル全体が破壊される
(1)A1層,A2層
<熱可塑性樹脂>
・ポリプロピレン樹脂(PP):モディックP908(三菱化学社製)
<強化繊維>
・PAN系炭素繊維:パイロフィルTR40(三菱レイヨン社製)、破断伸び率=2.0%、繊維径=7〜9μm
・ガラス繊維強化ポリプロピレン板:GMT(P4038)(クオドラントポリペンココンポジットジャパン社製)、ガラス繊維の破断伸び率=4%、ガラス繊維100重量部に対するポリプロピレン樹脂の割合=150重量部
(1)A1層、A2層に用いられる炭素繊維シート
(炭素繊維シート1)
乾式法による不織布の作製方法を用い、繊維長70mmの炭素繊維カットファイバーを開繊後カード機とニードルパンチ機を用いた製法で坪量200g/m2、厚み4mmの炭素繊維シートを作成した。
乾式法による不織布の作製方法を用い、繊維長70mmと6mmの炭素繊維カットファイバーを6/4(質量比)の割合で混合・開繊し、カード機とニードルパンチ機を用いた製法で坪量200g/m2、厚み4mmの炭素繊維シートを作成した。
JIS P8220に準じて、湿式抄紙法により離解機を用いて繊維長6mmの炭素繊維カットファイバーを開繊・分散し、抄紙して秤量200g/m2、厚み4mmの炭素繊維シートを作製した。この時、離解機は、プロペラの回転数=3000rpm、回転時間=10秒の条件で運転し、ガラス管に取り出し十分繊維が開繊状態となるまで、離解と確認を繰り返した。
熱可塑性樹脂100質量部に対し、滑剤等を所定の割合で混合して、東洋精機(株)製のプラストグラフミキサーに供給し、温度=230℃、回転数=50rpm、混練時間=5分の条件で溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を2枚の金属板間に挟み込み、温度=230℃、圧力=2MPa、成形時間=15分の条件でプレス成形し、厚み30μmの熱可塑性樹脂シートを作製した。
[実施例1]
炭素繊維シート1を1枚と、熱可塑性樹脂シート5枚とを、各々A1層とA2層に準備し、B層用のガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、炭素繊維シート1と熱可塑性樹脂シート(5枚)(A1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(B層)/炭素繊維シート1と熱可塑性樹脂シート(5枚)(A2層)の順で積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層の厚みがそれぞれ0.1mm、B層の厚みが3.8mm、合計4.0mmの強化繊維複合積層体を得た。作製した強化繊維複合積層体について、A1、A2層の繊維長の測定を行うと共に、プレス成形性、機械強度、耐衝撃性の評価を行い、結果を表1に示した。
なお、この強化繊維複合積層体のA1層及びA2層における熱可塑性樹脂シートの含有量は、炭素繊維100重量部に対して65重量部である。
上記実施例1のA1層及びA2層に用いる炭素繊維シート1を炭素繊維シート2に変更する以外は実施例1と同様に強化繊維複合積層体を作製した。作製した強化繊維複合積層体について、A1、A2層の繊維長の測定を行うと共に、プレス成形性、機械強度、耐衝撃性の評価を行い、結果を表1に示した。
ガラス繊維強化ポリプロピレン板について、機械強度、耐衝撃性の評価を行い、結果を表1に示した。
上記実施例1のA1層及びA2層に用いる炭素繊維シート1を炭素繊維シート3に変更する以外は実施例1と同様に強化繊維複合積層体を作製した。作製した強化繊維複合積層体について、A1、A2層の繊維長の測定を行うと共に、プレス成形性、機械強度、耐衝撃性の評価を行い、結果を表1に示した。
一方、本発明において特定する条件を満たさない比較例の積層体は、プレス成形性、機械強度(剛性)、または耐衝撃性に劣る。
Claims (4)
- それぞれ樹脂成分として熱可塑性樹脂を含むA1層、A2層、及びB層を少なくとも有し、A1層/B層/A2層の順で積層してなる強化繊維複合積層体であって、以下の(1)〜(5)の条件を満たすことを特徴とする強化繊維複合積層体。
(1)A1層、A2層、及びB層は強化繊維を含み、B層の強化繊維の破断伸び率が、A1及びA2層の強化繊維の破断伸び率よりも高く、B層の強化繊維の破断伸び率(%)とA1及びA2層の強化繊維の破断伸び率(%)の差は1.0〜5.0(%)である。
(2)A1層及びA2層それぞれの層について、強化繊維100重量部のうち30〜100重量部は、その繊維長が30〜200mmである。
(3)A1層及びA2層に含まれる強化繊維はPAN系炭素繊維である。
(4)A1層及びA2層は、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂を45重量部以上、200重量部以下含有する。
(5)B層は、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂を30〜400重量部含有する。 - 前記B層に含まれる強化繊維が、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維複合積層体。
- 曲げ弾性率が7.0GPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の強化繊維複合積層体。
- 前記A1層、A2層、及びB層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維複合積層体。
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