JP6627407B2 - 強化繊維複合積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂と強化繊維を複合した積層体に関する。
近年、大型の電化製品の筐体や、自動車や鉄道の内装材、外装材など、軽量かつ高強度で、耐衝撃性にも優れる成形品のニーズが高まっている。特に、こうした成形品は熱に対しての寸法変化の応答性が小さいこと、すなわち低線膨張性の材料であることが求められている。そのような背景を踏まえて、熱可塑性樹脂と無機繊維を複合した低線膨張性の材料が提案されている。
例えば、特許文献1(特開2014−43524号公報)には、強化繊維としての炭素繊維及び耐熱有機繊維と熱可塑性繊維とからなり、耐衝撃性と立体形状への賦形性を有する材料が開示されている。
また、特許文献2(特開2005−289056号公報)には、高強度繊維を含む耐衝撃性繊維強化プラスチックであって、曲げ弾性率の異なる層を2つ以上有する材料が開示されている。
特開2014−43524号公報 特開2005−289056号公報
特許文献1に開示されている成形用基材では、強化繊維である炭素繊維で機械特性を、耐熱有機繊維で耐衝撃性を発現しようと試みるとともに、強化繊維の繊維長と繊維径を一定の範囲に調整することにより立体形状への賦形性を確保している。しかし、この材料では低線膨張性は十分ではなく、耐衝撃性と低線膨張性の両立は難しい。
特許文献2に開示されている耐衝撃性繊維強化プラスチックでは、耐衝撃性の向上と軽量化の両立を課題として、曲げ弾性率の異なる層を2つ以上積層し、高速飛来物の衝突面側に高曲げ弾性率層を配置している。
特許文献2には、高曲げ弾性率層の繊維のヤング率が低曲げ弾性率層の繊維のヤング率よりも高いこと(請求項6)、高曲げ弾性率/低曲げ弾性率層/高曲げ弾性率層の曲げ弾性率以下で低曲げ弾性率層を超える曲げ弾性率の層の3層積層構造とすること(請求項5)の記載があるが、具体的には、繊維としてアラミド繊維を用い、樹脂付着量の調整で高曲げ弾性率層、低曲げ弾性率層等の曲げ弾性率を制御した実施例しか記載されていない。また、特許文献2には、用いる樹脂として多くの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が例示されているが、その実施例では、熱硬化性のフェノール樹脂のみが使用されている。
この特許文献2の耐衝撃性繊維強化プラスチックでは、弾性率が十分ではないことにより、プレス成形性、高剛性及び耐衝撃性の特性バランスにおいては不十分である。
このように、従来の技術においては、プレス成形性、高剛性及び耐衝撃性並びにその特性バランスに優れた積層体は提供されていなかった。
従って、本発明は、プレス成形性と高剛性と耐衝撃性のバランスに優れた強化繊維複合積層体を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題に鑑みて鋭意検討した結果、特定の強化繊維複合積層体が、プレス成形性、高剛性及び耐衝撃性といった特性バランスに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下を要旨とする。
[1] それぞれ樹脂成分として熱可塑性樹脂を含むA1層、A2層、B1層、B2層、及びC層を少なくとも有し、A1層/B1層/C層/B2層/A2層の順で積層してなる強化繊維複合積層体であって、以下の(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とする強化繊維複合積層体。
(1)B1層、B2層、及びC層は強化繊維を含み、C層の強化繊維の破断伸び率がB1及びB2層の強化繊維の破断伸び率よりも高い。
(2)A1層及びA2層は耐衝撃性シートを含む。
[2] 前記C層の強化繊維が、ガラス繊維であることを特徴とする[1]に記載の強化繊維複合積層体。
[3] 前記B1層及びB2層の強化繊維が、炭素繊維であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の強化繊維複合積層体。
[4] 前記耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーが、5〜300kgf・mmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の強化繊維複合積層体。
[5] 前記A1層及び/又はA2層が、更にガラス繊維シートを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の強化繊維複合積層体。
本発明によれば、プレス成形性、高剛性及び耐衝撃性といった特性バランスに優れ、大型の電化製品の筐体や、自動車や鉄道の内装材、外装材などに好適な、無機繊維複合積層体を提供することができる。
以下に本発明の強化繊維複合積層体の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の強化繊維複合積層体(以下、「本積層体」と称す場合がある。)は、それぞれ樹脂成分として熱可塑性樹脂を含むA1層、A2層、B1層、B2層、及びC層を少なくとも有し、A1層/B1層/C層/B2層/A2層の順で積層してなる強化繊維複合積層体であって、以下の(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とする。
(1)B1層、B2層、及びC層は強化繊維を含み、C層の強化繊維の破断伸び率がB1及びB2層の強化繊維の破断伸び率よりも高い。
(2)A1層及びA2層は耐衝撃性シートを含む。
なお、本発明において、強化繊維の破断伸び率は、材料に応じてJIS K7161、JIS R3420、JIS R7606に記載される試験法による測定方法により測定される値である。
1.B1層、B2層
本積層体を構成するB1層及びB2層(以下、これらをまとめて「B層」と称す場合がある。)は、本積層体のそれぞれ、後述のA1層とC層、A2層とC層の中間に存在する層である。B層は、強化繊維100質量部に対し、熱可塑性樹脂を40質量部以上、350質量部以下、特に40質量部以上、300質量部以下含有することが好ましい。また、B層は、強化繊維と熱可塑性樹脂を主成分としてこれらを合計で40質量%以上、特に45〜100質量%含有することが好ましい。B層の熱可塑性樹脂含有量が上記の範囲であることにより、十分量の強化繊維を確保して耐衝撃性、高剛性の効果を高めると共に、良好なプレス成形性を得ることができる。
1−1.強化繊維
B層に用いる強化繊維(以下、「強化繊維B」と称す場合がある。)としては特に限定されるものではなく、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアリレート繊維、LCP繊維(液晶ポリエステル繊維)等が挙げられる。これらの強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。この中でも高剛性、耐衝撃性の観点から、強化繊維Bとしては炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維のいずれでも良く、これらを組み合わせて用いてもよいが、耐衝撃性の観点からPAN系炭素繊維が好ましい。
本発明では、後述のC層に用いる強化繊維(以下、「強化繊維C」と称す場合がある。)の破断伸び率よりも強化繊維Bの破断伸び率が低いことを特徴とする。耐衝撃性の観点、即ち、衝撃のインパクトが本積層体の表面より発生した時に、表層側のA1層中の強化繊維の破断伸びでこの衝撃エネルギーを吸収し、さらには本積層体の裏面へ伝わった変形を裏層側のA2層の強化繊維の破断伸びで吸収することにより、亀裂等のダメージを抑制する効果の面から、強化繊維Bの破断伸び率は1.0%以上であることが好ましく、より好ましくは1.4%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。強化繊維Bの破断伸び率が1.0%未満であると、本積層体の耐衝撃性が劣る傾向にある。耐衝撃性の観点から、強化繊維Bの破断伸び率は大きい程好ましいが、上述した強化繊維の破断伸び率は通常2.5%以下である。
強化繊維Bの平均繊維長としては特に限定されるものではないが、本積層体中の強化繊維Bの平均繊維長は10〜100mm、特に10〜60mmであることが好ましい。平均繊維長が10mm未満のものは耐衝撃性の付与効果に乏しく、100mmを超えるものは強化繊維シートの作製工程において、繊維の塊等の発生を招き、シートの均質性を阻害する。また、強化繊維Bの繊維径は、通常7〜10μm程度であるが、強化繊維は、一般的に静電密度や収束剤等でこのような繊維径の強化繊維の繊維束として提供される。本積層体中の強化繊維Bの繊維束の最大径は1〜10mm、特に1〜9.5mm、とりわけ1〜9mmであることが好ましい。最大径を上記範囲とすることにより、本積層体の低線膨張性と良好な表面外観とプレス成形性のバランスを維持することができる。
ここで、強化繊維Bの平均繊維長及び最大径は、後述する実施例の項に記載の方法で測定することができる。
なお、B層には、強化繊維の1種のみが含まれていてもよく、材質や、平均繊維長、繊維径等の異なる強化繊維の2種以上が含まれていてもよい。また、B1層の強化繊維とB2層の強化繊維とは同一のものであってもよく、異なるものであってもよいが、材料の調達の利便性と積層体の反りの面では同一であることが好ましい。
1−2.熱可塑性樹脂
B層に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、耐熱性に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、軽量化に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して用いても構わない。
以下、本発明においてB層に用いることができるポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂についてそれぞれ説明する。
(1)ポリオレフィン系樹脂
B層に用いるポリオレフィン系樹脂は、成形性と軽量化の観点から好ましくはポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であり、特に機械特性および耐熱性の観点からポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、B層に用いるポリオレフィン系樹脂は、複数のポリオレフィン系樹脂を混合して用いてもよい。
ポリプロピレン系樹脂はプロピレンの単独重合体であってもよく、エチレン、ブテン等のコモノマー成分がプロピレンと共重合されていてもよい。また強化繊維との密着性、なじみやすさの点より、変性ポリマーも好ましく用いることができる。
エチレン、ブテン以外のコモノマーとしては、炭素数5〜20のα−オレフィン等が挙げられる。炭素数5〜20のα−オレフィンは、例えば、1−ヘキセン、1−オクテンを例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは1種類でも2種類以上用いてもよい。
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンとα−オレフィン等のコモノマー成分と共重合されていてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の分子量の指標であるメルトマスフローレート(MFR)については特に制限を設けないが、混練、ラミネート成形等が安定して行われるものであることが必要である。
B層に用いるポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃、21.2N荷重)は、好ましくは1g/10min以上、100g/10min以下であることが好ましく、より好ましくは5g/10min以上、75g/10min以下であり、さらに好ましくは10g/10min以上、50g/10min以下である。
B層に用いるポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.2N荷重)は、1g/10min以上、50g/10min以下であることが好ましく、より好ましくは2g/10min以上、35g/10min以下であり、さらに好ましくは5g/10min以上、25g/10min以下である。
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のMFRが上記下限以上であることで、本積層体のプレス成形時の型への追従性が容易となる。一方、上記上限以下であることで、本積層体のプレス成形時に、加圧によって成形型より流れ出るおそれがなく、強化繊維B間への樹脂含浸が容易となる。
ここでMFRは、JIS K7210−1999の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して測定された値である。
B層に用いるポリオレフィン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合方法、例えば、ラジカル重合法や、チーグラー触媒、メタロセン触媒、フィリップス触媒等を用いたイオン重合法を採用することができる。
(2)ポリカーボネート系樹脂
B層に用いるポリカーボネート系樹脂は、ホモポリマー及びコポリマーのいずれであってもよい。また、ポリカーボネート系樹脂は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。また、複数のポリカーボネート系樹脂を混合して用いてもよい。
なお、いわゆるポリエステルカーボネート樹脂(分子鎖中にエステル結合とカーボネート結合を両方有する樹脂)も、ポリカーボネート系樹脂に含む。
B層に用いるポリカーボネート系樹脂を構成する2価アルコール(ジオール)の代表例としてはビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましく用いられる。
なお、ビスフェノールA以外のジオールを単独、又は、複数のジオールを併用したポリカーボネート系樹脂でも良く、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオールのいずれでも構わない。
B層に用いるポリカーボネート系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に従い、温度300℃、荷重1.2kgfの条件で測定され、1g/10min以上、40g/10min以下であることが好ましく、2g/10min以上、35g/10min以下であることがさらに好ましく、3g/10min以上、30g/10min以下であることが特に好ましい。MFRが1g/10min以上であることで、本積層体のプレス成形時の型への追従性が容易となる。一方、40g/10min以下であることで、本積層体のプレス成形時に、加圧によって成形型より流れ出るおそれがなく、強化繊維B間への樹脂含浸が容易となる。
B層に用いるポリカーボネート系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合方法、例えば、ホスゲン法、エステル交換法、ピリジン法等が挙げられる。
(3)ポリアミド系樹脂
B層に用いるポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミドが好ましく、ωアミノ酸の開環単独重合で得られるもの、異なるωアミノ酸の開環共重合で得られるもの、及びジアミンとジカルボン酸の共重合で得られるもの、が挙げられる。なお、芳香族ポリアミドや、芳香族−脂肪族ポリアミドを用いることもできる。
B層に用いるポリアミド系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、脂肪族ポリアミドの場合、JIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定され、0.1g/10min以上、60g/10min以下であることが好ましく、0.5g/10min以上、30g/10min以下であることがさらに好ましく、1g/10min以上、20g/10min以下であることが特に好ましい。MFRが0.1g/10min以上であることで、本積層体のプレス成形時の型への含侵が容易となる。一方、60g/10min以下であることで、本積層体のプレス成形時に、加圧によって成形型より流れ出るおそれがなく、強化繊維B間への樹脂含浸が容易となる。
B層に用いるポリアミド系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合方法を採用することができる。
(4)ポリエステル系樹脂
B層に用いるポリエステル系樹脂としては、耐熱性や成形性の観点から芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
B層に用いるポリエステル系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定され、0.1g/10min以上、60g/10min以下であることが好ましく、0.5g/10min以上、30g/10min以下であることがさらに好ましく、1g/10min以上、20g/10min以下であることが特に好ましい。MFRが0.1g/10min以上であることで、本積層体のプレス成形時の型への含侵が容易となる。一方、60g/10min以下であることで、本積層体のプレス成形時に、加圧によって成形型より流れ出るおそれがなく、強化繊維B間への樹脂含浸が容易となる。
B層に用いるポリエステル系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合方法を採用することができる。
強化繊維と同様、B1層に用いる熱可塑性樹脂とB2層に用いる熱可塑性樹脂とは同一であってもよく、異なるものであってもよい。ただし、材料調達の利便性や積層体の反りの面で同一であることが好ましい。
1−3.B層の作製方法
B層は、通常、上述の強化繊維Bのシート(強化繊維シート)を作製し、この強化繊維シートを1枚又は複数枚積層することにより作製される。或いは、強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートとを各々作製し、これを積層することで作製される。その際、必要に応じて、強化繊維シート、或いは強化繊維と熱可塑性樹脂シートと共に耐衝撃性シートを積層して用いてもよい。
(1)強化繊維シート
B層の作製に用いる強化繊維シートの作製方法は特に限定されるものではないが、強化繊維シートは、強化繊維マット、又は強化繊維ペーパーであることが好ましい。ここで、「強化繊維マット」と「強化繊維ペーパー」はいずれも繊維束を開繊・分散し、湿式法や乾式法で成形・抄紙して平膜状としたシートである。この強化繊維シートには前述の強化繊維Bの1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
強化繊維シートは、繊維同士が容易に解離しないようにポリオレフィン系樹脂等の前述の熱可塑性樹脂をバインダー樹脂として含有してもよく、繊維にポリオレフィン系樹脂等の前述の熱可塑性樹脂よりなるバインダー樹脂を含浸させた所謂プリプレグなどであっても構わない。一般に「強化繊維マット」は、バインダー樹脂の含有量や厚みの点において「強化繊維ペーパー」と区別される。通常、強化繊維マットは強化繊維ペーパーに比べ、バインダー樹脂の含有量が多く、厚みが厚い。
強化繊維シートは、通常乾式不織布法と湿式抄紙法のいずれかで製造されるが、生産性と繊維の開繊がより良好となる観点から乾式不織布法で製造されたものを用いることが好ましい。
強化繊維シートは、耐衝撃性、低線膨張性の観点より、坪量(強化繊維量とバインダー樹脂)の多いものが好ましいが、シート自体の生産性とコストとのバランスを考慮して、強化繊維ペーパーの坪量(強化繊維量)は、好ましくは50〜400g/m、さらに好ましくは50〜350g/m、特に好ましくは50〜300g/mである。また、強化繊維シートのバインダー樹脂量は、強化繊維に対して30〜70質量%程度とすることが好ましい。
B層の作製に用いる強化繊維シートの厚みには特に制限はなく、強化繊維シートを単層シートとして用いるか、或いは複数枚の強化繊維シート又は強化繊維と熱可塑性樹脂シートの積層シートとして用いるかによっても異なるが、通常100〜5000μm程度である。
なお、強化繊維シートに用いるバインダー樹脂についても、以下の熱可塑性樹脂シートに必要に応じて用いられる樹脂用添加剤等が含まれていてもよい。
(2)熱可塑性樹脂シート
B層を構成する熱可塑性樹脂シートの作製方法としては特に限定されず、Tダイキャスト法、カレンダー法、プレス法など、公知の溶融製膜方法を採用することができる。
より具体的には、熱可塑性樹脂の1種又は2種以上と、必要に応じて用いられる樹脂用添加剤等の他の成分を直接混合して溶融製膜する方法や、あらかじめこれらを溶融混練して混合物のペレットを作製し、これを用いて溶融製膜する方法を挙げることができる。
B層の作製に用いる熱可塑性樹脂シートの厚みには特に制限はないが、通常50〜200μm程度である。
上記添加剤の具体例としては、難燃剤、カーボンブラック等の顔料や着色料、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤などが挙げられる。
なお、ここで、熱可塑性樹脂シートは、後述の耐衝撃改良剤を含む耐衝撃性シートと区別され、B層を構成する熱可塑性樹脂シートは耐衝撃改良剤を含まないか、耐衝撃改良剤を含む場合でも後述の耐衝撃性シートにおける耐衝撃改良剤含有量よりも少ない量で含む。
2.C層(コア層)
本積層体を構成するC層は、前記B1層と前記B2層との間に設けられたコア層(中間層)として存在する層であり、C層は、強化繊維100質量部に対し、熱可塑性樹脂を30〜400質量部、好ましくは50〜300質量部、さらに好ましくは60〜200質量部含有することが好ましい。また、C層は、強化繊維と熱可塑性樹脂を主成分としてこれらを合計で30質量%以上、特に30〜100質量%含有することが好ましい。このC層の熱可塑性樹脂含有量が上記の範囲であることによって、本積層体について優れた耐衝撃性を実現できる。
2−1.強化繊維
C層に用いる強化繊維(以下、「強化繊維C」と称す場合がある。)としては、強化繊維Bとして例示したものと同様のものの1種又は2種以上を用いることができるが、耐衝撃性改善の理由により、特にガラス繊維を用いることが好ましい。
ガラス繊維としては、一般に市販のものを適宜使用することができる。ガラス繊維の繊維径は、好ましくは8〜20μm、より好ましくは10〜15μmであり、ガラス繊維の平均繊維長は、好ましくは2〜50mm、より好ましくは5〜30mmである。ガラス繊維の直径が8μm未満では、価格が高く経済性に劣り、20μmを超えると機械的強度が不十分である。低線膨張性と耐衝撃性の観点より、ガラス繊維は、さまざまな長さのガラス繊維の混合物であることが好ましい。また、一繊維束中にこのような単繊維を100〜4,000本含む繊維束として用いるのが好ましい。
強化繊維Cの破断伸び率は3.0%以上であることが好ましく、より好ましくは3.5%以上、さらに好ましくは4.0%以上である。強化繊維Cの破断伸び率が3.0%未満であると、本積層体の耐衝撃性が劣る傾向にある。耐衝撃性の観点から、強化繊維Cの破断伸び率は大きい程好ましいが、上述した強化繊維の破断伸び率は通常10.0%以下である。
前述の通り、本積層体における強化繊維Cは強化繊維Bよりも破断伸び率が高いことを特徴とするが、強化繊維Cの破断伸び率(%)と強化繊維Bの破断伸び率(%)の差は1.5〜4.0(%)程度であることが好ましい。強化繊維Cの破断伸び率が強化繊維Bの破断伸び率よりも高いことで、本積層体表面からの衝撃エネルギーを吸収する効果と高剛性の効果のバランス良く高めることができるが、その差が過度に小さいとこの衝撃エネルギー吸収効果と高剛性の効果のバランスがとりにくくなる。逆にその差が過度に大きいと、強化繊維Bに必要な破断伸び率を満たし得なくなる。
なお、C層には、強化繊維の1種のみが含まれていてもよく、材質や、平均繊維長、繊維径等の異なる強化繊維の2種以上が含まれていてもよい。
2−2.熱可塑性樹脂
C層に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することで、成形性に優れると共に、耐熱性に優れた本積層体が得られる。これらの樹脂の中でも軽量化、成形性の観点よりポリオレフィン系樹脂を用いるのが好ましく、機械特性、耐熱性の観点よりポリプロピレン系樹脂を用いるのが特に好ましい。
これらの樹脂は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して用いても構わない。
本発明においてC層に用いるポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂としては、B層に用いる熱可塑性樹脂として前述したものをいずれも用いることができ、そのメルトマスフローレート(MFR)の好適範囲等についても同様である。
C層に用いる熱可塑性樹脂とB層に用いる熱可塑性樹脂とは同一のものでも異なるものでもよいが、B層とC層との接着性、材料調達の利便性の観点より、C層の熱可塑性樹脂はB層の熱可塑性樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。
2−3.C層の作製方法
C層は、通常、上述の強化繊維Cのシート(強化繊維シート)を作製し、この強化繊維シートを1枚又は複数枚積層することにより作製される。或いは、強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートとを各々作製し、これを積層することで作製される。
(1)強化繊維シート
C層の作製に用いる強化繊維シートは、強化繊維Bの代りに強化繊維Cを用いること以外は、B層の作製に用いる強化繊維シートと同様に作製することができる。
C層を構成する強化繊維シートとして好適な強化繊維ペーパーは、通常、乾式不織布法と湿式抄紙法のいずれかで製造されるが、生産性と繊維の開繊がより良好となる観点から乾式不織布法で製造されたものを用いることが好ましい。
この強化繊維ペーパーの坪量、バインダー樹脂量や厚みについても、B層を構成する強化繊維シートと同様の条件を採用することが好ましい。
(2)熱可塑性樹脂シート
C層を構成する熱可塑性樹脂シートは、前述したB層を構成する熱可塑性樹脂シートの作製方法と同様の方法で、同様の厚みに作製することができる。
C層を構成する熱可塑性樹脂シートについても、前述したB層を構成する熱可塑性樹脂シートが含んでいてもよい各種の添加剤として挙げたものを含有してもよい。
また、C層を構成する熱可塑性樹脂シートは、後述の耐衝撃性シートとしての耐衝撃改良剤を含む樹脂シートに含まれる耐衝撃改良剤として例示した耐衝撃改良剤を含有していてもよく、その場合、耐衝撃改良剤の含有量は、熱可塑性樹脂に対して100質量%以下であることが好ましい。
3.A1層、A2層(耐衝撃性シートを含む層)
本積層体を構成するA1層及びA2層(以下、これらをまとめて「A層」と称す場合がある。)は、本積層体の実質的に表裏層(外層)として存在する層である。外層として耐衝撃性シートを含むことにより、本積層体の耐衝撃性を高めることができる。
A層の実施形式は特に制限はしないが、耐衝撃性の観点より、熱可塑性樹脂に対して耐衝撃改良剤を含む樹脂シートを含む層であることが好ましく、耐衝撃改良剤を含む樹脂シートにおける耐衝撃吸収剤の含有量は、成形性及び耐衝撃性の観点から、耐衝撃性シート中の熱可塑性樹脂100質量部に対し、10〜120質量部が好ましく、15〜110質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。
なお、この耐衝撃性シートについても、前述の熱可塑性樹脂シートに含まれる添加剤として例示した各種の添加剤を含有していてもよい。この耐衝撃性シートは、前述の熱可塑性樹脂シートと同様の方法で作製することができる。
3−1.耐衝撃改良剤
耐衝撃改良剤を含む耐衝撃性シートに用いる耐衝撃改良剤としては、通常熱可塑性樹脂において柔軟性の向上に用いられるゴム等を用いることができる。
耐衝撃改良剤としてのゴムの種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、天然ゴム、アクリル成分、シリコーン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分等を重合させたものから構成されるゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、エチレン−ブテン系ゴム等のエチレン−α−オレフィン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム(その水素添加物も含む)、スチレン−イソプレン系ゴム(その水素添加物も含む)等が挙げられる。市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製のメタブレンSタイプ(シリコーン・アクリルゴム)、メタブレンWタイプ(アクリルゴム)、メタブレンCタイプ(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂)等が挙げられる。
また、耐衝撃改良剤としては、三井化学社製のタフマーシリーズのような、エチレン系樹脂系の耐衝撃改良剤を用いることもでき、このような耐衝撃改良剤は、特にポリオレフィン系樹脂の改質に好適である。耐衝撃改良剤としてのポリエチレン系樹脂は、低融点化、オレフィンとの相溶化剤として機能するため、ポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.2N荷重)は、0.5g/10min以上、5.0g/10min以下であることが好ましく、特に0.6g/10min以上、5.0g/10min以下であることが好ましく、とりわけ0.7g/10min以上、5.0g/10min以下であることが好ましい。
耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーは上限に関しては特に定めないが、好ましくは5〜300kgf・mmであり、より好ましくは8〜250kgf・mmであり、さらに好ましくは10〜200kgf・mmである。耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーが5kgf・mm未満の場合、脆性破壊をするため実用性がない。
耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーはJIS K7211によって測定されたものである。
これらの耐衝撃改良剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
3−2.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂に対して耐衝撃改良剤を含む耐衝撃性シートを構成する熱可塑性樹脂としては、B層に用いる熱可塑性樹脂として前述したものをいずれも用いることができる。
3−3.耐衝撃性シート
耐衝撃性シートは、前述したB層を構成する熱可塑性樹脂シートの作製方法と同様の方法で、同様の厚みに作製することができる。この場合、耐衝撃性シートに用いる熱可塑性樹脂と、B層の作製に用いる前述の熱可塑性樹脂シートや強化繊維シートに含まれる熱可塑性樹脂とは同一のものであっても異なるものであってもよいが、材料調達の利便性、A層の耐衝撃性シートとB層の強化繊維シート又は熱可塑性樹脂シートとを積層して一体化する際の密着性の面で同種の樹脂であることが好ましい。
3−4.ガラス繊維シート
耐衝撃性をより一層改善する観点から、A1層及び/又はA2層は、少なくとも1枚のガラス繊維シートを含むことが好ましい。
ここで、ガラス繊維シートとは、ガラス繊維の織布又は不織布を用いることができ、好ましくはガラス繊維の織布である。
ガラス繊維の織布としては、平織や朱子織等のガラス繊維織物が例示でき、中でも製造プロセス面の生産性の観点や衝撃エネルギーを効率よく吸収し、材料の変形を抑制する観点から平織(クロス)の織物状ガラス繊維シートが好適に使用できる。平織(クロス)とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に浮き沈みさせて織ることにより得られるものである。
ガラス繊維の織布としては、ガラス繊維の織布に含侵樹脂を織布の質量に対して20〜60質量%程度含浸させたものなどが挙げられる。ここで用いるバインダー樹脂としても、前述したB層を構成する熱可塑性樹脂などが挙げられる。
ガラス繊維シートを構成するガラス繊維の繊維径は、好ましくは8〜20μm、より好ましくは10〜15μmである。ガラス繊維の繊維径が8μm未満では、価格が高く経済性に劣り、20μmを超えると機械的強度が不十分である。ガラス繊維は、一繊維束中にこのような単繊維を100〜4,000本含む繊維束として用いるのが好ましい。
また、ガラス繊維シートの坪量は100〜300g/m、特に100〜250g/mであることが、耐衝撃性の向上効果と高剛性の観点から好ましい。
A層にこのようなガラス繊維シートを用いる場合、ガラス繊維シートは1枚のみを用いてもよく、複数枚用いてもよいが、前述の耐衝撃性シートよりも内側に設け、耐衝撃性シートが表裏層となるように設けることが、表面性状の面で好ましい。また、ガラス繊維シートは、耐衝撃性シートと耐衝撃性シートとの間に介在させるようにしてもよく、耐衝撃性シートとガラス繊維シートとの交互積層シートとしてもよい。
ガラス繊維シートを用いる場合、耐衝撃性シートとガラス繊維シートとで構成されるA層中の熱可塑性樹脂量が、A層全体に対して30質量%以上、例えば40〜70質量%となるように用いることが、成形性、耐衝撃性等の観点から好ましい。
4.その他の層
本積層体は、本発明の特徴や効果を阻害しない範囲内で、A層、B層及びC層以外の他の層を設けてもよい。
具体的には、本積層体はA1層/B1層/C層/B2層/A2層の積層構成であればよく、例えばA層のさらに外側に、印刷層などの意匠性を有する層や、防汚層などの表面保護層を設けることもできる。また、層間に、必要に応じて接着層などを設けることもできる。
5.本積層体の製造方法
本積層体は、前記の通り、A層、B層、C層を構成するシートをそれぞれ作成して、これらを積層することで製造することができる。
本積層体にA層、B層、及びC層以外のその他の層を設ける場合は、同様に、その他の層を構成するシートを作製し、これらの層中にこれを積層すればよい。C層の更に外層に他の層を設ける場合は、予め他の層を構成するシートを作製して本積層体の製造時に一体化してもよく、製造後に更に表面層を設けてもよい。
本積層体は、より具体的には、A層を構成する耐衝撃性シート、或いは耐衝撃性シートとガラス繊維シートの必要枚数を積層してA層用単層シート又は積層シートを得、B層を構成する強化繊維シート、或いは強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートの必要枚数を積層してB層用単層シート又は積層シートを得、C層を構成する強化繊維シート、或いは強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートの必要枚数を積層してC層用単層シート又は積層シートを得、これらをA層用単層シート又は積層シート/B層用単層シート又は積層シート/C層用単層シート又は積層シート/B層用単層シート又は積層シート/A層用単層シート又は積層シートの順で重ね合わせて適当な温度及び圧力でプレス成形することにより製造することができる。或いは、各層毎の積層シートを予め作製することなく、各層の構成シートを直接積層して適当な温度及び圧力でプレス成形することにより製造することができる。
ここで、積層シートを製造する場合は、強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートは、適宜1〜複数枚の強化繊維シートと熱可塑性樹脂シートを交互に積層することが好ましい。強化繊維シートを複数枚用いる場合、複数枚の強化繊維シートは同一のものであっても、強化繊維の種類や厚み等が異なるものであってもよいが、同一であることが材料調達の利便性の観点より好ましい。熱可塑性樹脂シートについても同様である。
プレス成形条件は、A層、B層、C層に用いる熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、プレス成形温度としては、170〜290℃の範囲が好ましく、170〜280℃の範囲がより好ましい。また、プレス圧力としては0.5〜6MPaの範囲が好ましく、1〜6MPaの範囲がより好ましい。
かかる範囲においてプレス成形することにより、耐衝撃性と高剛性とプレス成形性のバランスに優れた積層体を作製することができる。
本積層体の製造は、いわゆるバッチ法で行ってもよく、各層に用いる強化繊維又は熱可塑性シートを作製しつつ、これらのシートを積層すると共に連続的にプレス成形する連続プレス法で行ってもよい。
5.本積層体の厚み
本積層体の厚み(総厚み)は特に限定されないが、1.0mm以上、5.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上、5.0mm以下であることがさらに好ましく、2.0mm以上、5.0mm以下であることが特に好ましい。本積層体の厚みが1.5mm以上であれば、本積層体や、本積層体をプレス成形した製品が表面外観に優れる。また、本積層体の厚みが5.0mm以下であれば、本積層体がプレス成形性に優れる。
本積層体を構成するA1層、B1層、C層、B2層、A2層の各層の厚み比については特に制限はないが、A1層及びA2層の厚みは、それぞれ本積層体の総厚みの1〜30%の範囲であることが好ましい。A1層とA2層の厚みは同一であってもよく異なるものであってもよいが、A1層とA2層の厚みは同一であることが、本積層体の反りの観点から好ましい。
また、B1層及びB2層の厚みは、それぞれ本積層体の総厚みの1〜30%の範囲であることが好ましい。B1層とB2層の厚みは同一であってもよく異なるものであってもよいが、B1層とB2層の厚みは同一であることが、本積層体の反りの観点から好ましい。
また、C層の厚みは、本積層体の総厚みの70〜95%の範囲であることが、耐衝撃性、高剛性、プレス成形性の観点から好ましい。
主として耐衝撃性に寄与するA層と、主として高剛性に寄与するB層と、主としてプレス成形性と耐衝撃性に寄与するC層を上記の厚みの範囲で設けることにより、プレス成形性、高剛性及び耐衝撃性といった特性バランスに優れる本積層体を得ることができる。
なお、本積層体は、反りの観点から、C層を中心として、厚さ方向に対称な構成とされていることが好ましい。
以下、本発明をより具体的に説明するための実施例を示すが、本発明は以下の実施例に示される具体的態様に限定されるものではない。
1.測定・評価
実施例及び比較例における測定・評価は以下の方法・基準で行った。
(1)プレス成形性
作製した積層体について、凹凸形状高さが10mmの段差のある賦形型を用いて、金型表面温度=170℃、圧力=2MPa、成形時間=15分の条件でプレス成形を行い、積層体の表面を目視で観察して、以下の基準で評価した。
○:表面に強化繊維が露出せず、かつ、賦形型の絞りに積層体が追従できている状態
×:表面に強化繊維が露出している状態、又は、賦形型の絞りに積層体が追従できていない状態。
(2)剛性(曲げ試験)
作製した積層体を幅15mm、長さ100mmに切断し、JIS K7074に従って、支点間距離=80mm、速度=5.3mm/min、温度=23℃で3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率より曲げ剛性を計算した。
評価基準としては、以下の基準で判定した。
○:600kN・mm以上
△:500kN・mm以上600kN・mm未満
×:500kN・mm未満
(3)耐衝撃性(落球試験)
作製した積層体を、幅50mm、長さ150mmに切断し、落球衝撃試験装置の固定バイス(試験片長手方向の2辺を25mmずつ噛み込ませバイス間距離を100mmにセット)にセットし、落下錘(500g)を45cmの高さから落下させたときの、サンプル の状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:表面割れなし
△:表面・裏面に一部破壊あり
×:サンプル全体が破壊される
2.使用材料
(1)A1層、A2層
<耐衝撃性シートの熱可塑性樹脂>
・ポリプロピレン樹脂:モディックP908(三菱化学社製)、
<耐衝撃性シートの耐衝撃改良剤>
・オレフィン系樹脂:タフマーH1030S(三井化学製)、MFR(190℃、21.2N荷重)=1g/10min
<ガラス繊維シート>
・ガラス繊維シート:MFサーフェイスマットMF30P104SS(日東紡製)、坪量=30g/m
・ガラス繊維シート:ガラス繊維クロスWL230 104BS6(日東紡製)、坪量=200g/m
・ガラス繊維シート:ガラス繊維クロスKS2750(日東紡製)、坪量=100g/m
(2)B1層,B2層
<熱可塑性樹脂>
・ポリプロピレン樹脂(PP):モディックP908(三菱化学社製)
<強化繊維>
・PAN系炭素繊維:パイロフィルTR40(三菱レイヨン社製)、破断伸び率=2.0%、繊維径=7〜9μm
(3)C層
・ガラス繊維強化ポリプロピレン板:GMT(P4038)(クオドラントポリペンココンポジットジャパン社製)、ガラス繊維の破断伸び率=4%、ガラス繊維100質量部に対するポリプロピレン樹脂の割合=150質量部
3.各シートの作製
(1) A1,A2層に用いられる耐衝撃性シート
モディックP908とタフマーH1030Sを60/40(質量%)の割合で計量し、東洋精機(株)製のプラストグラフミキサーに供給し、温度=190℃、回転数=50rpm、混練時間=5分の条件で溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を2枚の金属板間に挟み込み、温度=190℃、圧力=5MPa、成形時間=15分の条件でプレス成形し、厚み100μmの耐衝撃性シートを作製した。この耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーは20kgf・mmであった。
(2) B1層、B2層に用いられる炭素繊維シート
乾式法による不織布の作製方法を用い、炭素繊維とポリプロピレン樹脂繊維を60/40(質量%)の割合で計量したものを、気流中で浮遊・解繊した後にスクリーン上に吸引してシート化するエアレイ法で、坪量300g/m、厚み5mmの炭素繊維シートを作製した。
4.実施例及び比較例
[実施例1]
上記で作成した耐衝撃性シート2枚と、炭素繊維シート2枚と、ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、耐衝撃性シート(A1層)/炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)/耐衝撃性シート(A2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層の厚みがそれぞれ0.1mm、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.2mmの積層体を得た。
[実施例2]
上記で作成した耐衝撃性シート2枚とガラス繊維シート(MFサーフェイスマットMF30P104SS)2枚と、炭素繊維シート2枚と、ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート)(A1層)/炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)/(ガラス繊維シート/耐衝撃性シート)(A2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層の厚みがそれぞれ0.15mm、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.3mmの積層体を得た。
[実施例3]
上記で作成した耐衝撃性シート4枚とガラス繊維シート(MFサーフェイスマットMF30P104SS)14枚と、炭素繊維シート2枚と、ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート4枚/耐衝撃性シート/ガラス繊維シート3枚)(A1層)/炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)/(ガラス繊維シート3枚/耐衝撃性シート/ガラス繊維シート4枚/耐衝撃性シート)(A2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層の厚みがそれぞれ0.4mm、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.8mmの積層体を得た。
[実施例4]
上記で作成した耐衝撃性シート4枚とガラス繊維シート(ガラス繊維クロスKS2750)2枚と、炭素繊維シート2枚と、ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート/耐衝撃性シート)(A1層)/炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)/(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート/耐衝撃性シート)(A2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層の厚みがそれぞれ0.4mm、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.8mmの積層体を得た。
[実施例5]
上記で作成した耐衝撃性シート4枚と、ガラス繊維シート(ガラス繊維クロスWL230 104BS6)2枚と、炭素繊維シート2枚と、ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚とを、(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート/耐衝撃性シート)(A1層)/炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)/(耐衝撃性シート/ガラス繊維シート/耐衝撃性シート)(A2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、A1層、A2層yの厚みがそれぞれ0.4mm、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.8mmの積層体を得た。
[比較例1]
ガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚をそのまま測定に用いた。
[比較例2]
上記で作成した炭素繊維シート2枚及びガラス繊維強化ポリプロピレン板1枚を炭素繊維シート(B1層)/ガラス繊維強化ポリプロピレン板(C層)/炭素繊維シート(B2層)の順に積層し、温度=180℃、圧力=5MPa、時間=15分の条件でプレス成形し、B1層、B2層の厚みがそれぞれ0.1mm、C層の厚みが3.8mm、合計4.0mmの積層体を得た。
実施例及び比較例で得られた積層体について、前述の評価を行い、結果を表1に示した。
以下の表1において、耐衝撃性シートは「IPシート」と記載する。また、ガラス繊維シートのうち、MFサーフェイスマットMF30P104SSは「MFマット」、ガラス繊維クロスKS2750は「GFクロス(100)」、ガラス繊維クロスWL230 104BS6は「GFクロス(200)」と記載する。炭素繊維シートは「CFシート」、ガラス繊維強化ポリプロピレン板は「GMT」とそれぞれ記載する。
Figure 0006627407
表1に示したように、実施例において作製した本発明の強化繊維複合積層体は、プレス成形性と高剛性と耐衝撃性のバランスに優れたものとなっている。
一方、本発明において特定する条件を満たさない比較例の積層体は、耐衝撃性又は剛性に劣る。
なお、実施例1〜4の積層体について、積層体中の炭素繊維シート部分の炭素繊維の平均繊維長及び繊維束の最大径を以下の方法で測定したところ、いずれも平均繊維長は45mmで、繊維束の最大径は5mmであった。
<炭素繊維束の最大径>
作製した積層体の厚み方向の断面を、光学顕微鏡を用いて観察し、B層の視野を任意に50箇所観察し、全視野中に存在する炭素繊維束の最大径を炭素繊維シート部分の炭素繊維束の最大径とした。
<炭素繊維の平均繊維長>
作製した積層体の厚み方向の断面を、光学顕微鏡を用いて観察した。B層の視野を任意に50箇所観察し、全視野中に存在する炭素繊維の長さを1本ずつ測り、この総和の平均を炭素繊維シート部分の炭素繊維の平均繊維長とした。
本積層体は、プレス成形性と高剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、しかも軽量性や低コスト化の要求に応えることが可能な強化繊維複合積層体であり、大型の電化製品の筐体や、自動車や鉄道の内装材、外装材などの各種成形品に好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. それぞれ樹脂成分として熱可塑性樹脂を含むA1層、A2層、B1層、B2層、及びC層を少なくとも有し、A1層/B1層/C層/B2層/A2層の順で積層してなる強化繊維複合積層体であって、以下の(1))の条件を満たすことを特徴とする強化繊維複合積層体。
    (1)B1層、B2層、及びC層は強化繊維を含み、C層の強化繊維の破断伸び率がB1及びB2層の強化繊維の破断伸び率よりも高い。
    (2)A1層及びA2層は耐衝撃性シートが積層されてなる
    (3)B1及びB2層に用いる強化繊維は炭素繊維であり、B1及びB2層は当該強化繊維100質量部に対し、熱可塑性樹脂を40質量部以上、350質量部以下含有する。
    (4)C層に用いる強化繊維はガラス繊維であり、C層は当該強化繊維100質量部に対し、熱可塑性樹脂を30〜400質量部含有する。
  2. 前記C層に用いる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維複合積層体。
  3. 曲げ弾性率が500kN/mm 以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の強化繊維複合積層体。
  4. 前記耐衝撃性シートの面衝撃エネルギーが、5〜300kgf・mmである、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維複合積層体。
  5. 前記A1層及び/又はA2層が、更にガラス繊維シートが積層されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の強化繊維複合積層体。
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