JP2021109359A - 繊維含有樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性が向上する実用的な繊維含有樹脂成形体を提供する。【解決手段】板厚の一部を薄肉化してなるヒンジ部15,19を基準として折り曲げ可能に構成された板状の繊維基材10であって、少なくともガラス繊維と、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維と、を含有すること。【選択図】図5
Description
本発明は、繊維含有樹脂成形体に関する。
従来、繊維と熱可塑性樹脂の混合物を加熱し、加圧して得られる繊維含有樹脂成形体は、乗物のドアトリム、ピラーガーニッシュ、ラゲージボード等の乗物用内装材として、広く使用されている(例えば、特許文献1)。
上記特許文献1に開示された繊維含有樹脂成形体は、例えば、板厚が他部よりも薄い部分であるヒンジ部(インテグラルヒンジ)を設けることにより、当該ヒンジ部を基準として折り曲げ可能とすることができる。しかしながら、ヒンジ部を基準として繰り返し、繊維含有樹脂成形体を折り曲げた場合、ヒンジ部が割れて繊維含有樹脂成形体が破断する虞がある。従って、耐久性が向上する種々の材料を繊維含有樹脂成形体に含有させることが考えられるが、その場合、製造コストの削減を図ることが求められる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、耐久性が向上する実用的な繊維含有樹脂成形体を提供することを目的とする。
本発明は、板厚の一部を薄肉化してなるヒンジ部を基準として折り曲げ可能に構成された板状の繊維含有樹脂成形体であって、少なくともガラス繊維と、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維と、を含有することに特徴を有する繊維含有樹脂成形体である。
このような繊維含有樹脂成形体によると、ガラス繊維を含有することにより、剛性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂を含有することで、ガラス繊維と高伸長繊維とを接着して所定の形状を保つこと(成形性を向上すること)ができる。さらに、熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維を含有することで、伸長性を向上することができ、しなやかさを得ることができる。これにより、ヒンジ部における耐久性が向上した繊維含有樹脂成形体を提供することができる。
また、上記繊維含有樹脂成形体において、前記ガラス繊維の含有率は、5質量%以上60質量%以下であり、前記高伸長繊維の含有率は、1質量%以上30質量%以下であることとすることができる。このような繊維含有樹脂成形体によると、剛性、成形性、及び伸長性を好適に向上すると共に、低コスト化を図ることが可能な繊維含有樹脂成形体を提供することができる。
また、上記繊維含有樹脂成形体は、乗物の荷室の底面を構成するラゲージボードをなすこととすることができる。種々の大きさの荷室にラゲージボードを搭載するときや、荷室の床下に収納された工具等を取り出すとき等に、ヒンジ部を基準とするラゲージボードの折り曲げが複数回生じる。上記のような繊維含有樹脂成形体によると、ヒンジ部を基準とする折り曲げ回数が比較的多かったとしても、割れにくく、耐久性が高いラゲージボードを提供することができる。
本発明によれば、耐久性が向上する実用的な繊維含有樹脂成形体を提供することが可能となる。
<実施形態>
本発明の実施形態を図1から図5によって説明する。本実施形態では、繊維含有樹脂成形体として、ラゲージボード110を構成する繊維基材10(図2(A)参照)について例示する。ラゲージボード110は、例えば、乗物としての自動車(車両)の後部に設けられた荷室100に載置される内装材である。
本発明の実施形態を図1から図5によって説明する。本実施形態では、繊維含有樹脂成形体として、ラゲージボード110を構成する繊維基材10(図2(A)参照)について例示する。ラゲージボード110は、例えば、乗物としての自動車(車両)の後部に設けられた荷室100に載置される内装材である。
図1に示すように、荷室100は、後部座席よりも後側の車内空間であり、左右側の壁部をなす側壁部120が車幅方向内側に向かってせり出すことにより、後方に向かうほど車幅方向の空間が広くなる形をなしている。荷室100の後上方には、乗員が荷物を出し入れするための開口とされる荷室開口部100Aと、荷室開口部100Aを閉じるバックドア(不図示)とが設けられている。ラゲージボード110は、荷室100の下側に凹設された収納室100Bを塞ぐ形で配されており、収納室100B内に収容された荷物(スペアタイヤや工具など)を遮蔽して荷室100の床面をなすとともに、当該ラゲージボード110上へ荷物を載置することができる構成とされる。
図2(A)に示すように、ラゲージボード110は、板状の繊維基材10と、繊維基材10の上面10Aを覆う第1表皮材111と、繊維基材10の下面10Bを覆う第2表皮材112と、を備えて構成されている。第1表皮材111は、ラゲージボード110の意匠面(表面)を構成し、第2表皮材112はラゲージボード110の裏面(収納室100B側の面)を構成する。本実施形態では、第1表皮材111及び第2表皮材112は、例えば、ポリエチレンテレフタラート樹脂からなる繊維及びポリプロピレン樹脂からなる繊維が交絡してなる軟質の不織布等で構成されるものとする。
図1及び図2(A)に示すように、繊維基材10は、板厚の一部を薄肉化してなるヒンジ部15,19を基準として折り曲げ可能に構成されている。具体的には、繊維基材10は、大部分をなす第1ボード部16と、第1ボード部16の左右側の端部から車幅方向外側後方に延設した第2ボード部17,17と、第1ボード部16の前端から前方に延設した第3ボード部18と、を備えている。第1ボード部16と第2ボード部17,17との間には、当該第1ボード部16及び第2ボード部17,17よりも板厚が薄い部分であるヒンジ部15が直線状に設けられている。同様に、第1ボード部16と第3ボード部18との間には、当該第1ボード部16及び第3ボード部18よりも板厚が薄い部分であるヒンジ部19が直線状に設けられている。ラゲージボード110は、繊維基材10がヒンジ部15,19で折り曲げられることで、前後方向及び車幅方向の長さが短くなるように変形することできる。これにより、ラゲージボード110を変形させて荷室開口部100Aから荷室100の収納室100B上に敷設しやすく、また、ラゲージボード110を荷室100内で変形させて収納室100Bを開閉しやすくなっている。
図2(A)に示すように、ヒンジ部15は、繊維基材10の上面10Aと下面10Bにそれぞれ凹設された溝部15A,15Bによって形成されたインテグラルヒンジである。第1ボード部16に対し第2ボード部17が上面10A側(意匠面側)又は下面10B側(裏面側)に曲がるように力を加えると、ヒンジ部15に応力が集中し、繊維基材10をスムーズに折り曲げることができる。繊維基材10は、第1ボード部16と第2ボード部17とが同一平面をなす平面状態(図2(A))から、第1ボード部16に対しヒンジ部15を基準として第2ボード部17を意匠面側に150°程度まで折り曲げることができ(図2(B);角度α≦150°)、裏面側に85°程度まで折り曲げることができる(図2(C);角度β≦85°)構成とされる。尚、第3ボード部18についても、上記第2ボード部17と同様に、第1ボード部16に対しヒンジ部19を基準として表裏面側に折り曲げることができる構成とされる。
繊維基材10は、ガラス繊維、熱可塑性樹脂、酸変性樹脂、及び高伸長繊維を含有してなり、ガラス繊維及び高伸長繊維が、熱可塑性樹脂及び酸変性樹脂によって接着されて板状体をなしている。ガラス繊維は、中実体であり、その長さ(繊維長)及び外径(繊維径)は、特に限定されない。繊維長の上限は、好ましくは150mmであり、繊維長の平均値は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは30〜80mmである。また、繊維径の上限は、好ましくは1500μmであり、繊維径の平均値は、好ましくは20〜500μm、より好ましくは20〜200μmである。ガラス繊維の形状は、特に限定されない。長さ方向の形状は、直線状、折れ線状、曲線状、螺旋状又はこれらの変形形状とすることができる。断面の外形は、円形、楕円形、多角形又はこれらの変形形状とすることができる。
ガラス繊維の含有率は、繊維基材10の全体の質量(ガラス繊維、熱可塑性樹脂、酸変性樹脂、及び高伸長樹脂を合計した質量)に対して、好ましくは5質量%以上60質量%以下とされる。ガラス繊維の含有率が5質量%未満の場合、繊維基材10が剛性を十分に保つことができない。例えば、板状の繊維基材10に物品を載置しようとすると、繊維基材10が撓んでしまい物品をうまく支持することができない。ガラス繊維の含有率が60質量%を超える場合、過度に剛性が高くなり、ヒンジ部15,19を基準として繊維基材10をうまく折り曲げることができない。また、ガラス繊維のコストが嵩み、高価な繊維基材10となってしまう。尚、ガラス繊維の含有率は、繊維基材10の全体の質量に対して、より好ましくは、40質量%以上60質量%以下とされる。これにより、成形性及び伸長性を確保しつつ、剛性がさらに向上した繊維基材10とすることができる。
繊維基材10に含有される熱可塑性樹脂(非酸変性熱可塑性樹脂)としては、特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセテート樹脂、ABS樹脂等のうちから選ばれる1種又は2種以上のものを採用することができる。その中でも、熱可塑性樹脂としては、成形性及び製造コストの削減等の観点から、オレフィン系樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく、オレフィン系樹脂がより好ましく、ポリプロピレン樹脂がさらに好ましい。
繊維基材10が酸変性樹脂を含有することで、ガラス繊維や高伸長繊維の表面に対する熱可塑性樹脂の親和性を向上させることができる。繊維基材10に含有される酸変性樹脂としては、特に限定されない。酸変性樹脂としては、例えば、上記熱可塑性樹脂として採用された樹脂が酸無水物変性、カルボン酸変性、エポキシ変性又はオキサゾリン変性されたものを採用することができる。その中でも、酸変性樹脂としては、先述した親和性向上の観点から、無水マレイン酸変性オレフィン樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂がより好ましい。また、酸変性樹脂の含有率は、酸変性樹脂と熱可塑性樹脂を合計した質量に対して、5質量%の割合で繊維基材10に含有されることが望ましい。
繊維基材10に含有される高伸長繊維としては、上記熱可塑性樹脂として採用された樹脂よりも破断伸度が高く、引張弾性率が高い樹脂が繊維状をなしたものとされる。伸長性向上の観点から、高伸長繊維としては、JIS L 1013に準じて測定される破断伸度が好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である樹脂や、JIS L 1013に準じて測定される引張弾性率が好ましくは4GPa以上、より好ましくは8GPa以上である樹脂が採用される。高伸長繊維の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、メタ型アラミド樹脂等のうちから選ばれる1種又は2種以上のものを採用することができる。その中でも、高伸長繊維の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂を採用することが好ましい。
高伸長繊維は、中実体であり、その長さ(繊維長)及び外径(繊維径)は、特に限定されない。繊維長の上限は、好ましくは150mmであり、繊維長の平均値は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは30〜80mmである。また、繊維径の上限は、好ましくは1000μmであり、繊維径の平均値は、好ましくは3〜500μm、より好ましくは3〜100μmである。
高伸長繊維は、ファイバー状の単繊維、フィラメント状の繊維束、及び、トウ状の撚り繊維のいずれの形態であってもよい。また、上記高伸長繊維の形状は、特に限定されない。長さ方向の形状は、直線状、折れ線状、曲線状、螺旋状又はこれらの変形形状とすることができる。断面の外形は、円形、楕円形、多角形又はこれらの変形形状とすることができる。
高伸長繊維の含有率は、繊維基材10の全体の質量に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下とされる。高伸長繊維の含有率が1質量%未満の場合、所望の伸長性を得ることができず、繊維基材10の耐久性が向上しない。具体的には、ヒンジ部15,19を基準として繊維基材10を複数回折り曲げたときに、ガラス繊維の一部が千切れてしまったとしても、適度に伸長可能な高伸長繊維が十分に含まれていないため、繊維基材10が割れやすい。高伸長繊維の含有率が30%を超える場合、高伸長繊維のコストが嵩み、高価な繊維基材10となってしまう。また、高伸長繊維の含有率が30%を超える場合であって、ガラス繊維の含有率を変更せずに、熱可塑性樹脂の含有率を低下させた場合は、ガラス繊維と高伸長繊維とをうまく接着することができず、所望の板厚を保つことができなくなる。そして、比較的柔らかい繊維基材10となってしまい、その剛性が低下する。尚、高伸長繊維の含有率は、伸長性向上の観点から、繊維基材10の全体の質量に対して、より好ましくは10質量%以上20質量%以下とされ、さらに好ましくは、15質量%以上20質量%以下とされる。
続いて、繊維基材10の製造方法について説明する。繊維基材10の製造方法は、ガラス繊維21と、高伸長繊維23と、上記熱可塑性樹脂と酸変性樹脂とからなる熱可塑性樹脂繊維31とを混繊して、繊維マット11を得る繊維マット形成工程と、繊維マット11を熱可塑性樹脂繊維31が溶融する温度以上であって高伸長繊維23が繊維状態を維持可能な温度で加熱し、繊維基材10を成形する成形工程と、を含む。熱可塑性樹脂繊維31には、上記熱可塑性樹脂と酸変性樹脂とが含有されている(互いに溶融して紡糸されている)ものとする。
上記「混繊」とは、ガラス繊維21、高伸長繊維23、及び熱可塑性樹脂繊維31の繊維どうしを混合して繊維混合物を得ることを意味する。この際の混繊方法としては、特に限定されず種々の方法を用いることができ、例えば、乾式法や湿式法が用いられるが、繊維を乾燥させる乾燥工程が不要になることから、乾式法であることが好ましい。上記乾式法としては、エアレイ法及びカード法などが挙げられるが、上記繊維混合物を好適にほぐすことができることから、カード法であることが好ましい。以下、カード法による繊維マット形成工程について説明する。
図3に示すように、繊維マット形成工程では、ガラス繊維21、高伸長繊維23、及び熱可塑性樹脂繊維31を所定の配合比率で混合し、繊維供給部41に投入する。繊維供給部41に投入された各繊維21,23,31は、繊維供給部41からカード機43へ連続的に供給され、カード機43によって積層されることでウェブ44となる。その後、ウェブ44を交絡手段(ニードルパンチ装置)45により交絡し、カッター47により裁断することで、各繊維21,23,31が交絡したマット状の繊維マット11を得る。
成形工程では、繊維マット11を熱板によって加熱圧縮したのち、冷却型によって冷却しつつ押圧することで、繊維マット11よりも剛性が高く板厚が薄いプレボード13を得る。そして、プレボード13を熱板によって再度加熱し、その表裏面側に位置する熱可塑性樹脂を溶融させた後、図4に示すように、成形型(冷却型)53の上型54と下型55との間に配する。このとき、プレボード13の上側の板面と上型54との間に第1表皮材111を配置し、プレボード13の下側の板面と下型55との間に第2表皮材112を配置する。その後、上型54を下型55に対し近接させ、成形型53を型閉じすることで、プレボード13と表皮材111,112とを冷却圧縮する。上型54と下型55には、ヒンジ部15の溝部15A,15B(図2(A)参照)を成形する図示しない突部が設けられており、成形型53は、プレボード13において、繊維基材10のヒンジ部15となる部分を、その板厚が他部よりも薄くなるように上下方向から押圧する。プレボード13に含有される熱可塑性樹脂が冷却し、固化すると、ヒンジ部15を備えた繊維基材(繊維含有樹脂成形体)10が成形される。さらに、繊維基材10から染み出した熱可塑性樹脂によって、繊維基材10の上面10Aに第1表皮材111が接着されるとともに、下面10Bに第2表皮材112が接着されることで、ラゲージボード110を得る。
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態において、繊維基材10は、板厚の一部を薄肉化してなるヒンジ部15,19を基準として折り曲げ可能に構成された板状の繊維基材10であって、少なくともガラス繊維と、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維と、を含有する。
このような繊維基材10によると、ガラス繊維を含有することにより、剛性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂を含有することで、ガラス繊維と高伸長繊維とを接着して所定の形状を保つこと(成形性を向上すること)ができる。さらに、熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維を含有することで、伸長性を向上することができ、しなやかさを得ることができる。これにより、ヒンジ部15,19における耐久性が向上した繊維基材10を提供することができる。
また、上記繊維基材10において、ガラス繊維の含有率は、5質量%以上60質量%以下であり、高伸長繊維の含有率は、1質量%以上30質量%以下である。このような繊維基材10によると、剛性、成形性、及び伸長性を好適に向上すると共に、低コスト化を図ることが可能な繊維基材10を提供することができる。
また、上記繊維基材10は、乗物の荷室の底面を構成するラゲージボード110をなす。種々の大きさの荷室にラゲージボード110を搭載するときや、荷室の床下に収納された工具等を取り出すとき等に、ヒンジ部15,19を基準とするラゲージボード110の折り曲げが複数回生じる。上記のような繊維基材10によると、ヒンジ部15,19を基準とする折り曲げ回数が比較的多かったとしても、割れにくく、耐久性が高いラゲージボード110を提供することができる。
以下、実施例に基づいて本発明の実施の形態をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[1]原料
1−1.ガラス繊維
平均径0.05mm及び繊維長70mmのガラス繊維を用いた。
1−2.熱可塑性樹脂繊維
(1)非酸変性ポリプロピレン繊維(熱可塑性樹脂)
日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテックSA01」(商品名)を溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
(2)酸変性ポリプロピレン繊維(酸変性樹脂)
上記非酸変性ポリプロピレン樹脂と、三菱化学社製無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂「モディックP908」(商品名)とをドライブレンドした後、溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
1−3.高伸長繊維
繊度1.7dtex及び繊維長50mmのPET繊維を用いた。このPET繊維について、JIS L 1013に準ずる破断伸度は、15%であり、JIS L 1013に準ずる引張弾性率は、12GPaである。
1−1.ガラス繊維
平均径0.05mm及び繊維長70mmのガラス繊維を用いた。
1−2.熱可塑性樹脂繊維
(1)非酸変性ポリプロピレン繊維(熱可塑性樹脂)
日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテックSA01」(商品名)を溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
(2)酸変性ポリプロピレン繊維(酸変性樹脂)
上記非酸変性ポリプロピレン樹脂と、三菱化学社製無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂「モディックP908」(商品名)とをドライブレンドした後、溶融紡糸して得られた、繊度6.6dtex及び繊維長51mmの樹脂繊維を用いた。
1−3.高伸長繊維
繊度1.7dtex及び繊維長50mmのPET繊維を用いた。このPET繊維について、JIS L 1013に準ずる破断伸度は、15%であり、JIS L 1013に準ずる引張弾性率は、12GPaである。
[2]繊維基材(ラゲージボード)の製造
(1)実施例1
各原料を合計した全体の質量に対し、50質量%のガラス繊維と、45質量%のポリプロピレン繊維(42.9質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び2.1質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、5質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。この繊維マットを、熱板により加熱圧縮(235℃、60秒間)したのち、冷却型によってその温度が25℃になるまで60秒間冷却しつつ押圧することで、サイズが50mm×150mm×2.5mm、目付が1.5kg/m2のプレボードを得た。このプレボードを、熱板にて加熱し、その表裏面側に位置する熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)を溶融させた後、成形型(冷却型)にセットした表皮材と合わせて25℃になるまで40秒冷却し、ヒンジ部を形成して繊維基材(繊維含有樹脂成形体)を作製するとともに、繊維基材に表皮材を接着することでラゲージボードを得た。表皮材としては、ポリエチレンテレフタラート樹脂の繊維及びポリプロピレン樹脂の繊維が交絡してなる軟質の不織布を用いた。
(1)実施例1
各原料を合計した全体の質量に対し、50質量%のガラス繊維と、45質量%のポリプロピレン繊維(42.9質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び2.1質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、5質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。この繊維マットを、熱板により加熱圧縮(235℃、60秒間)したのち、冷却型によってその温度が25℃になるまで60秒間冷却しつつ押圧することで、サイズが50mm×150mm×2.5mm、目付が1.5kg/m2のプレボードを得た。このプレボードを、熱板にて加熱し、その表裏面側に位置する熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)を溶融させた後、成形型(冷却型)にセットした表皮材と合わせて25℃になるまで40秒冷却し、ヒンジ部を形成して繊維基材(繊維含有樹脂成形体)を作製するとともに、繊維基材に表皮材を接着することでラゲージボードを得た。表皮材としては、ポリエチレンテレフタラート樹脂の繊維及びポリプロピレン樹脂の繊維が交絡してなる軟質の不織布を用いた。
(2)実施例2
実施例2では、50質量%のガラス繊維と、40質量%のポリプロピレン繊維(38.1質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.9質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、10質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
実施例2では、50質量%のガラス繊維と、40質量%のポリプロピレン繊維(38.1質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.9質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、10質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
(3)実施例3
実施例3では、50質量%のガラス繊維と、35質量%のポリプロピレン繊維(33.4質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.6質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、15質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
実施例3では、50質量%のガラス繊維と、35質量%のポリプロピレン繊維(33.4質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.6質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、15質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
(4)実施例4
実施例4では、50質量%のガラス繊維と、30質量%のポリプロピレン繊維(28.6質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.4質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、20質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
実施例4では、50質量%のガラス繊維と、30質量%のポリプロピレン繊維(28.6質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び1.4質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)と、20質量%のPET繊維とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
(5)比較例
比較例では、50質量%のガラス繊維と、50質量%のポリプロピレン繊維(47.5質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び2.5質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
比較例では、50質量%のガラス繊維と、50質量%のポリプロピレン繊維(47.5質量%の非酸変性ポリプロピレン繊維、及び2.5質量%の酸変性ポリプロピレン繊維)とを、カード機により積層し、繊維マットを作製した。その他の手順等は、上記実施例1と同様とした。
[3]ヒンジ耐久試験
上記[2]で得られたラゲージボードについて、次のようなヒンジ耐久試験を行った。
ヒンジ耐久試験:ラゲージボードを平面状態から(図2(A)参照)、ヒンジ部を基準として意匠面側に150°折り曲げ(図2(B)参照)、平面状態に戻した後に、ヒンジ部を基準として裏面側に85°折り曲げ(図2(C)参照)、平面状態に戻す動作(往復折曲動作と呼ぶ)を1セットとして、この往復折曲動作を1000回繰り返した。そして、往復折曲動作を100回、150回、200回、1000回繰り返した時点でのヒンジ部付近の外観異常を目視によって評価した。
上記[2]で得られたラゲージボードについて、次のようなヒンジ耐久試験を行った。
ヒンジ耐久試験:ラゲージボードを平面状態から(図2(A)参照)、ヒンジ部を基準として意匠面側に150°折り曲げ(図2(B)参照)、平面状態に戻した後に、ヒンジ部を基準として裏面側に85°折り曲げ(図2(C)参照)、平面状態に戻す動作(往復折曲動作と呼ぶ)を1セットとして、この往復折曲動作を1000回繰り返した。そして、往復折曲動作を100回、150回、200回、1000回繰り返した時点でのヒンジ部付近の外観異常を目視によって評価した。
[4]ヒンジ耐久性の評価
ヒンジ耐久試験の結果を図5の表に示す。図5の表では、以下のような観点で、ヒンジ部付近の耐久性を評価した。
〇:外観異常なし
△:表皮材において外観異常あり
×:表皮材及び繊維基材において外観異常あり
ヒンジ耐久試験の結果を図5の表に示す。図5の表では、以下のような観点で、ヒンジ部付近の耐久性を評価した。
〇:外観異常なし
△:表皮材において外観異常あり
×:表皮材及び繊維基材において外観異常あり
比較例では、200回の往復折曲動作で表皮材の裂けが確認され、1000回の往復折曲動作で繊維基材の破断が確認された。実施例1では、200回の往復折曲動作で表皮材の裂けが確認され、1000回の往復折曲動作で繊維基材の破断が確認された。実施例2では、1000回の往復折曲動作で表皮材が薄くなり繊維基材が透けるといったわずかな外観不良が視られたが、表皮材の裂けや繊維基材の破断等の著しい外観不良は視られなかった。実施例3及び実施例4では、1000回の往復折曲動作まで外観異常が確認されなかった。
比較例や実施例1のように、高伸長繊維を含有していない場合や高伸長繊維の含有率が比較的少ない場合では、200回の往復折曲動作でヒンジ部付近のガラス繊維が千切れてしまい、その千切れたガラス繊維が表皮材を内面側(繊維基材に接着している面側)から擦ることで、表皮材に裂けが生じたものと考えられる。しかし、実施例3や実施例4のように、PET繊維の含有率が15%以上である場合、ガラス繊維の一部が千切れてしまったとしても、その千切れたガラス繊維の周辺に位置する高伸長繊維が好適に伸長することができるため、ガラス繊維の千切れを最小限に留めることができる。これにより、1000回の往復折曲動作を行ったとしても、外観異常が視られず、高い耐久性を有する繊維基材(ラゲージボード)となったと考えられる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態以外にも、ガラス繊維、熱可塑性樹脂、酸変性樹脂、及び高伸長繊維の含有量は適宜変更可能である。また、繊維基材は、上記以外の他の成分をさらに含んで構成されていても構わない。
(2)上記実施形態では、繊維含有樹脂成形体は、熱可塑性樹脂の溶融及び固化によりその表裏面側に表皮材が接着されているものとしたが、これに限られない。例えば、繊維含有樹脂成形体は、接着性を有するシート状の接着シートを介してその表裏面側に表皮材が接着されていてもよい。また、繊維含有樹脂成形体は、その表裏面のうちいずれか一方の面側のみが表皮材で覆われていてもよく、さらには、その表裏面側が表皮材で覆われていなくてもよい。
(3)上記実施形態で例示した繊維含有樹脂成形体は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記繊維含有樹脂成形体を適用することができる。また、繊維樹脂成形体は、車両としての自動車におけるラゲージボードであることに限られず、インストルメントパネル、シートバックボード、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、及びダッシュボード等の乗物用内装材であっても良い。
10…繊維基材(繊維含有樹脂成形体)、15,19…ヒンジ部、100…荷室、110…ラゲージボード、111,112…表皮材
Claims (3)
- 板厚の一部を薄肉化してなるヒンジ部を基準として折り曲げ可能に構成された板状の繊維含有樹脂成形体であって、
少なくともガラス繊維と、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂よりも破断伸度の高い高伸長繊維と、を含有する繊維含有樹脂成形体。 - 当該繊維含有樹脂成形体において、前記ガラス繊維の含有率は、5質量%以上60質量%以下であり、前記高伸長繊維の含有率は、1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維含有樹脂成形体。
- 当該繊維含有樹脂成形体は、乗物の荷室の底面を構成するラゲージボードをなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の繊維含有樹脂成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020001850A JP2021109359A (ja) | 2020-01-09 | 2020-01-09 | 繊維含有樹脂成形体 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2020001850A JP2021109359A (ja) | 2020-01-09 | 2020-01-09 | 繊維含有樹脂成形体 |
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JP2020001850A Pending JP2021109359A (ja) | 2020-01-09 | 2020-01-09 | 繊維含有樹脂成形体 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2021109359A (ja) |
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2020
- 2020-01-09 JP JP2020001850A patent/JP2021109359A/ja active Pending
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