JP4281523B2 - 熱成形部材及びそれを用いた成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、食品包装容器や工業製品包装容器などに利用される熱成形部材、及びそれにより得られる成形体に関する。さらに詳しくは、偏心断面構造を有する熱接着性複合繊維とセルロース系繊維から構成される熱成形部材、及びそれによって得られた成形体に関する。
弁当容器、食品トレー、および青果容器といった食品包装容器や、CDケース、電気部品用ケースといった工業製品包装容器としては、プラスチック製容器が大量に用いられている。しかし近年、環境負荷低減の観点から、パルプなどのセルロース系繊維を主体とした成形体が多く提案されている。中でも、パルプスラリーを成形品形状の網型で漉き上げ、脱水、乾燥して得られるパルプモールド成形体は、あらゆる形状に成形できるので、鶏卵容器、青果容器等に用いられている。しかしながら、パルプモールド成形体は、生産性が低いので高コストになる、十分な成形体強度が得られないといった問題点がある。
パルプなどのセルロース系繊維を主体としたパルプモールド成形体以外の成形体としては、抄造法によって得られたパルプシートを熱圧加工して得られるパルプシート熱成形体が知られている。パルプシート熱成形体は生産性に優れるが、抄造法によって得られたパルプシートは伸度が小さく熱成形性が低いので、例えば皿のような、絞り深さの小さい形状の成形体は得られるが、絞り深さが大きい形状の成形体は得られないという問題点がある。
上記のような問題点を解決する手段として、パルプ繊維にポリオレフィン樹脂を均一に分散させて延伸性を付与したシートを熱成形する方法(例えば特許文献1参照)や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリプロピレン繊維といった熱可塑性繊維とパルプ繊維を混抄して延伸性を向上させたシートを熱成形する方法(例えば特許文献2参照)が知られている。しかしながら、カップ等の絞り深さが大きい形状に成形しようとする場合には、シートの破れが発生しやすくなるので成形速度が制限されてしまうなど、解決すべき課題がある。
特開平6−329142公報 特開平10−8393公報
本発明が解決しようとする課題は、カップ等の絞り深さが大きい形状や凹凸などの複雑な形状に熱成形する際にも、熱成形部材の破れなどが生じず、良好な熱成形性と高い生産性を有する熱成形部材、およびそれを用いた成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記した課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる熱成形部材が、最大降伏点伸度が大きい故に、絞り深さが大きい形状や複雑な形状に熱成形する際にも、良好な成形性と高い生産性を有していることを見出した。また該熱成形部材は、反応性官能基を有する熱接着性複合繊維がパルプと強固に接着しているので、抄造法で得られたシートに比べて比容積が大きいにも関わらず、運搬時や熱成形時のダストの発生が極めて少なく、且つ他素材及び自己接着性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を有する。
(1)2種類以上の熱可塑性樹脂からなる偏心断面構造を有する熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を用いて得られる熱成形部材であって、該熱成形部材は機械方向及び幅方向共に30%以上の最大降伏点伸度を有し、且つダスト発生率が20%以下であり、熱接着性複合繊維は、少なくとも1種の反応性官能基を有するグラフト変性の変性ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂を第1成分とし、第1成分より融点の高い熱可塑性樹脂を第2成分とし、該第1成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して形成しており、該第1成分の溶融によって、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体が熱接着されていることを特徴とする熱成形部材。
(2)熱接着性複合繊維の繊維長が2mm〜25mmである前記(1)項記載の熱成形部材。
(3)熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体が、エアレイド法で得られた前記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載の熱成形部材。
(4)セルロース系繊維がパルプである前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の熱成形部材。
(5)熱成形部材が、シート状物である前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の熱成形部材。
(6)前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の熱成形部材に、他のシートが積層された熱成形用複合シート。
(7)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱成形部材、又は前記(6)項に記載の熱成形用複合シートを用いて得られた成形体。
(8)成形体が、包装容器である前記(7)項に記載の成形体。
本発明の熱成形部材は、カップ等の絞り深さが大きい成形体を熱成形する際に、ひび割れや破れ、皺等が生じない良好な成形性と高い生産性を有する。また、本発明の熱成形部材は、変性ポリオレフィンを有する熱接着性複合繊維を含むことから、熱成形部材及びそれを用いた成形体からのダストの発生が少なく、また保形性も優れる。本発明で得られた成形体は弁当容器、食品トレー、青果容器といった食品包装容器や、CDケース、電気部品用ケースといった工業製品包装容器などとして使用することができる。成形体はセルロース系繊維を主体としており、従来のプラスチック成形体に比べてプラスチック使用量は大きく低減されるので、環境負荷をも低減することが可能である。
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
本発明の熱成形部材は、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる偏心断面構造を有する熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を熱接着させることで得られる熱成形部材であって、該熱接着性複合繊維は、少なくとも1種の反応性官能基を有する変性ポリオレフィンを含む樹脂を第1成分、第1成分より融点の高い樹脂を第2成分とし、該第1成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して形成している。
熱接着性複合繊維の第1成分中の変性ポリオレフィンに用いられる変性剤は、被接着物との接着性により適宜選択可能であり特に限定されないが、例えばカルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等から選ばれた少なくとも一種の反応性官能基を有するビニルモノマーであり、それ以外のビニルモノマーをも含むことができる。
反応性官能基を有するビニルモノマーは、他素材との接着性に直接寄与する成分である。カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては不飽和カルボン酸またはその誘導体を挙げることができ、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸、またはそのエステル、若しくはその無水物が好ましい。具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸エチル、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、同様なクロトン酸エステル類、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物類が挙げられる。また、上記カルボン酸誘導体としてアミドや対応するニトリルを使用してもよい。さらにはα、β−不飽和カルボン酸以外にも、ビニル酢酸誘導体等を使用してもよい。
カルボキシル基以外の反応性官能基を有するビニルモノマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基を有するものを使用してもよい。ビニルアルコールやビニルアミンによって変性された変性ポリオレフィンを得たい場合には、酢酸ビニルやN−ビニルアセトアミドのようにカルボン酸のビニルエステルやビニルアミドとして導入することができる。またエポキシ基は反応性官能基として有用なものであり、上記に例示の不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしてビニルモノマーに導入して用いる他、不飽和アルコールのグリシジルエーテルやジエン化合物のモノオキシドとして導入することができる。エポキシ基を持つビニルモノマーの具体例としては、アクリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等を例示することができる。
変性ポリオレフィンは、上述の反応性官能基を有したビニルモノマー以外にも、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類のビニルモノマーをも含んでよい。これらは接着成分を樹脂中に均一に分散させることにより他素材との親和性を向上させることで、間接的に接着性に寄与する成分である。
前記の変性剤を用いてポリオレフィンを変性する方法は特に限定されるものではなく、上述のビニルモノマーと主成分をなすオレフィンモノマーを用いて重合されたブロック、ランダム、ラダー等の共重合体、及びグラフト重合体、更には高分子反応により上述のビニルモノマーを導入した高分子反応物などの変性ポリオレフィンを例示することができる。
これらの変性ポリオレフィンのなかでは、一般的に使用されていて入手が容易であり、多種の他素材と親和性を有し、特に水酸基を有する他素材、例えばセルロース系素材との接着性が良好である点から、不飽和カルボン酸又はその誘導体、若しくはその無水物からなるビニルモノマーとオレフィンからなる変性ポリオレフィンが好ましい。
更に変性ポリオレフィンとしては、繊維加工性が良好であり、ポリマー強度が高く繊維強度を高くでき、また反応性官能基の接着に対する活性が高い点から、グラフト変性の変性ポリオレフィンがより好ましい。
変性ポリオレフィンの変性率(変性ポリオレフィン中の反応性官能基の含有濃度)は特に限定されるものではないが、0.025モル/kg以上であることが好ましく、更に好ましくは0.1モル/kg以上である。変性率が高いものほど接着性に直接寄与する反応性官能基を多く有するが、0.025モル/kg以上の変性率であれば変性率に相応した接着力を示し、0.1モル/kg以上であれば十分な接着力を示す。
変性ポリオレフィンの変性率は、赤外吸収スペクトルを測定することで算出することができる。例えば、ポリエチレンを無水マレイン酸でグラフト変性させた変性ポリオレフィンである場合には、以下の操作によってグラフト変性により導入された反応性官能基の量を測定することができる。
変性ポリオレフィンを沸騰キシレンに溶解させ、その溶解液を3倍量の常温アセトンに注ぎ、十分に冷却する。この液の濾過物を更にアセトンで洗浄し、真空乾燥することで、未反応の無水マレイン酸が除去された粉末状の変性ポリオレフィンが得られる。この粉末をフィルム成形し、それを用いてフーリエ変換赤外吸収スペクトルを測定する。同時に未反応無水マレイン酸除去前の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、それらの特性吸収帯(無水マレイン酸の場合にはカルボニル基のピーク)のピーク強度の比を求めることにより、無水マレイン酸の変性率が算出できる。
変性ポリオレフィンの主成分ポリマーには、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等の重合体が好ましく用いられる。ここでポリエチレンとしては、高密度、直鎖状低密度、低密度ポリエチレンの何れであっても使用できる。これらは密度0.90〜0.97g/cmの単独重合体若しくは他のα−オレフィンとの共重合体であり、融点は100〜135℃程度のポリマーであることが好ましい。ポリプロピレンとしては、融点130〜170℃程度の結晶性重合体であり、単独重合体若しくは他のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。ポリブテン−1としては、融点110〜130℃程度の結晶性重合体であり、単独重合体若しくは他のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
これらのなかでは、融点、変性の容易性、繊維加工時の偏心断面構造に由来する立体捲縮の発現性及びその制御の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましく、更には熱成形部材の強度を向上させるためには、樹脂強度が高い、高密度ポリエチレンがより好ましい。
第1成分の熱可塑性樹脂は、上記変性ポリオレフィンを含むものであれば特に限定されるものではなく、変性ポリオレフィン単体、2種以上の変性ポリオレフィンの混合物、少なくとも1種の変性ポリオレフィンと他の熱可塑性樹脂の混合物等を挙げることができる。変性ポリオレフィンは、主成分ポリマー(変性を行なっていないポリオレフィン)と比較した場合、一般的に樹脂強度が低下する傾向にあり、また繊維加工性も低下する傾向にあるため、繊維強度を高く維持し、かつ良好な繊維加工性を得るためには、第1成分の熱可塑性樹脂は高変性率の変性ポリオレフィンと変性を行なっていないポリオレフィンとの混合物とすることが好ましい。
上記変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、紡糸時の可紡性や他のポリオレフィンと混合して用いる際の両者の相溶性に影響するので高い方がよく、試験温度190℃、試験荷重21.18N(JIS−K−7210「表1」の試験条件4)におけるMFRが0.5g/10min以上であることが好ましく、更に好ましくは8.0g/10min以上である。MFRが高い場合には、紡糸時の断糸の回数が減るので生産性が向上する。また第1成分の熱可塑性樹脂を変性ポリオレフィンと変性を行なっていないポリオレフィンの混合物とした場合には、変性ポリオレフィンのMFRが高い方が両者の相溶性が良好となり、変性ポリオレフィンが均一に分散するようになるので、他素材との接着性が向上する。
第1成分の熱可塑性樹脂が上記変性ポリオレフィンを含まない場合、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を熱接着させることで得られた熱成形部材におけるセルロース系繊維は、熱接着性複合繊維によって構成されたマトリックス中に、単に構造的に保持されている状態であり、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維は十分に接着していない。これでは十分な熱成形部材の強度が得られず、また極めて多量のダストを発生するので好ましくない。
次に第2成分の熱可塑性樹脂としては、第1成分の熱可塑性樹脂よりも融点の高い熱可塑性樹脂が用いられる。例えばポリプロピレン、ポリエチレンや、プロピレン、エチレン、ブテン−1などのα−オレフィンの共重合体、またはポリエステルやポリアミド、及びそれらの共重合体などの結晶性ポリマーを使用することができる。更には、第1成分よりも融点が高ければ、1種類のみならずいくつかの熱可塑性樹脂の混合物を使用することもできる。これらの熱可塑性樹脂のなかでは、変性ポリオレフィンとの相溶性、熱成形加工時の加工性の点からポリオレフィンが好ましく、より好ましくは大きな融点差を得ることができるアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。また、該熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を熱接着させる際の加工温度幅を大きくする為には、融点差をより大きく取れるのでポリエステル又はポリアミドの使用も好ましい。
また、本発明に関わる第1成分及び第2成分に使用される熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて種々の性能を発揮させるための添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などを適宜添加してもよい。
本発明の熱成形部材を構成する熱接着性複合繊維は、偏心断面構造を有している。偏心断面構造は第1成分が第2成分を覆い囲んだ並列型偏心断面、又は鞘芯型偏心断面のいずれも選択可能である。並列型偏心断面は、並列型口金を用い、且つ第1成分にMFRの高い熱可塑性樹脂を配し、第2成分には第1成分よりもMFRが低い熱可塑性樹脂を配することで得られる。また、鞘芯型偏心断面は、偏心鞘芯型口金を用い、且つ第1成分にMFRの高い熱可塑性樹脂を配し、第2成分には第1成分よりもMFRが低い熱可塑性樹脂を配することで得られる。更には、繊維断面形状は円及び楕円の丸型、三角及び四角の角型、鍵型及び八葉型などの異型、または中空型のいずれをも用いることができる。
熱接着性複合繊維は,偏心断面構造を有していることにより、繊維加工時にスパイラル状の立体捲縮を発現する。なお、繊維の捲縮はスパイラル状の立体捲縮のみであってもよく、立体捲縮と平面ジグザグ状の機械捲縮を併せ持っていてもよい。また、立体捲縮の発現方法については特に限定されるものではなく、例えば弾性収縮率差を利用する方法、熱収縮率差を利用する方法などが挙げられる。
第1成分と第2成分の断面複合比は特に限定されるものではないが、30/70〜70/30の範囲が好ましい。第1成分の断面複合比を30%以上とすることで、他素材および繊維同士の接着性を十分に強く保つことができる。また、第1成分の断面複合比を70%以下とすることにより、熱接着性複合繊維自身の強度を十分に強く保つことができ、また繊維加工性も向上させることができる。
熱接着性複合繊維の繊維長は、特に限定されないが、2〜25mmであることが好ましい。該熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を形成する際には、繊維長が短いほど加工性に優れるが、該繊維集合体を熱接着して得られた熱成形部材の強度を高めるためには繊維長が長い方が有利である。従って該熱接着性複合繊維の繊維長は、繊維集合体を形成する際の加工性と熱成形部材の強度物性のバランスを考慮して適宜選択することができ、本発明の効果が損なわれない限り上記範囲外であることを妨げるものではない。
熱接着性複合繊維の単繊維繊度は特に限定されるものではないが、0.5〜5.0dtexであることが好ましい。熱接着性複合繊維の単繊維繊度が0.5dtex以上である場合、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維を混綿して繊維集合体を形成する際に、熱接着性複合繊維同士の極度な絡み合いが生じることがないので生産性が非常に良好となり、また熱接着性複合繊維とセルロース系繊維が均一に分散する。一方、5.0dtex以下の場合、熱成形部材中の熱接着性複合繊維の構成本数は十分に多いので、セルロース系繊維との接着力が向上してダストの発生が起こりにくく、またシート強度も向上する。
本発明の熱成形部材は、カーディング法や抄造法、エアレイド法などによって形成された、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維から構成された繊維集合体を熱処理することによって得られる。均一な混合状態、良好な風合い、更には適度な比容積を有する熱成形部材を得るためにはエアレイド法が好ましい。熱接着性複合繊維とセルロース系繊維を混綿する際の混合率は、特に限定されるものではないが、十分な熱成形部材の強度と良好な風合いを併せ持つためには、熱接着性複合繊維が5〜70重量%、セルロース系繊維が30〜95重量%で構成されていることが好ましい。また、熱接着性複合繊維は単独、あるいは2種類以上を併用して用いることができる。
エアレイド法には種々の形態のものがあるが、代表的な手法としては気流の作用により種々の繊維状物や粒状物を開繊、混綿、輸送し、スクリーンを通過させた後にコンベア上にサクション装置に吸引させて積層し、繊維集合体とすることを特徴とする方法を例示することができる。種々の素材を混綿、積層できることを特徴とし、従って熱接着性複合繊維とセルロース系繊維の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば消臭剤、抗菌剤、鮮度保持剤、発泡剤、吸水性樹脂などの機能性物品や、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの合成樹脂繊維を混合することも可能である。
エアレイド法で熱接着性複合繊維とセルロース系繊維からなる繊維集合体を形成する場合、2つ以上のスクリーンを使って積層させることで、容易に多層構造を形成できる。例えば3つのスクリーンを用いた場合、表層、中層、裏層で熱接着性複合繊維の種類を変えたり、セルロース系繊維の種類を変えたり、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維の比率を変えたり、各層の目付比を変えたりすることで、様々な物性を持つ熱成形部材の設計が可能である。
熱接着性複合繊維とセルロース系繊維から構成された繊維集合体から熱成形部材を得るための熱処理方法は、特に限定されるものではないが、例えば熱風ドライヤー、サクションバンドドライヤー等の方法が挙げられる。熱処理を施すことによって熱接着性複合繊維の第1成分が溶融し、熱接着性複合繊維同士、若しくは熱接着性複合繊維とセルロース系繊維の交点が熱接着されてシート状物となる。該熱処理温度は、熱接着性複合繊維の第1成分の融点以上、且つ第2成分の融点未満の温度域とする。熱処理の時間は、熱処理を行なう繊維集合体の目付や、熱接着させる方法等に合わせて適宜選択することができる。また繊維集合体表面、又は熱成形部材表面に種々の表面処理剤を噴霧又は塗布し、熱処理することで、シート表面に耐水性などの機能を付与することも可能である。
また上記熱処理を行った後に、熱プレス機を用いて熱処理することにより、所望の厚さ、比容積の熱成形部材を得ることもできる。また必要に応じて、皺(クレープ)や波形などの凹凸を付与することもでき、その場合にはシートの延伸性が更に向上する。皺(クレープ)や波形などの凹凸は、熱成形部材の機械方向、幅方向、斜め方向、前記の方向を組み合わせたものなどのいずれであってもよく、目的とする熱成形体の形状や構造に応じて選択することができる。
本発明の熱成形部材は、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維を主体としている。その場合のセルロース系繊維の種類は、特に限定されるものではないが、環境負荷低減、コストなどの点からはパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、例えば広葉樹木材パルプ、針葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、コットンリンターパルプ、ケナフパルプ、コウゾパルプ、ミツマタパルプなどが例示できる。なお、上記したパルプは単独で使用してもよく、または2種類以上を併用してもよい。更には、パルプはバージンパルプであってもよく、再生パルプであってもよく、バージンパルプと再生パルプの併用であっても何ら問題ない。
パルプの繊維長は、熱成形部材からのダストの発生が少なくなる、熱成形加工時の部材の破れが発生しにくくなるなどの理由から、1mm以上であることが好ましく、1.5〜6mm程度であることがより好ましく、2〜4mmであることが更に好ましい。
本発明の熱成形部材は、機械方向及び幅方向共に30%以上の最大降伏点伸度を有していることを特徴とする。これは該熱成形部材のマトリックスを形成する熱接着性複合繊維が偏心断面構造を有しており、それに由来してある曲率半径の立体的な捲縮を有しているからである。熱接着性複合繊維は、互いの交点で接着してマトリックスを形成しているが、その接着点間の状態が、図1に示すような一般的な機械捲縮のみの場合と、図2に示すような立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ場合では大きく異なる。本発明の偏心断面構造を有する熱接着性複合繊維は、その偏心断面構造に由来して、ある曲率半径の立体捲縮を形成し、接着点間が図2に示すような引張りに対して余裕のある、フレキシビリティーを持った状態をとる。
機械捲縮のみを有する熱接着性複合繊維を用いて得られた熱成形部材の応力−歪み曲線の模式図を図3に、そして立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ熱接着性複合繊維を用いて得られた熱成形部材の応力−歪み曲線の模式図を図4に示す。機械捲縮のみを有する熱接着性複合繊維を用いた場合には、接着点間のフレキシビリティーがないために、応力が急激に立ち上がり、最大降伏点に至る。それに対して立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ熱接着性複合繊維を用いた場合には、応力の立ち上がりから最大降伏点の間に変曲点を持つ。この応力の立ち上がりから変曲点までの領域は、接着点間にフレキシビリティーがあることによると考えられる。つまりこの領域は、フレキシブルな状態の接着点間が引き伸ばされ、接着点に応力が働くまでの領域であろう。本発明の立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ熱接着性複合繊維を用いて得られた熱成形部材が、機械方向及び幅方向共に30%以上の最大降伏点伸度を有するのは、熱成形部材のマトリックスを形成する熱接着性複合繊維同士の接着点間がフレキシビリティーを持った状態であり、その結果として引張に対してある伸度までは接着点に大きな応力を受けないからである。
前記した熱接着性複合繊維の立体捲縮の曲率半径については特に限定されるものではないが、0.05mm〜1.00mmであることが好ましく、更に好ましくは0.10mm〜0.60mmの範囲である。熱接着性複合繊維の立体捲縮の曲率半径は、例えば製糸時の紡糸温度、紡糸速度、延伸倍率、延伸温度、熱処理温度など、また熱接着性複合繊維の第1成分と第2成分に用いる熱可塑性樹脂の種類、及びその比率などで制御することができる。曲率半径が1.00mm以下であれば接着点間のフレキシビリティーは十分であり、30%以上の高い最大降伏点伸度を有する熱成形部材を得るのに適している。曲率半径が0.05mm以上であれば、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維を混綿して繊維集合体を形成する際に、熱接着性複合繊維同士の絡まり等が生じることはなく、地合が良好となり生産性も向上する。曲率半径が0.10mm〜0.60mmの範囲にある場合には、熱成形部材の最大降伏点伸度、繊維集合体の地合、及び生産性のバランスに優れる。
本発明の熱成形部材の目付は、目的とする熱成形体の形状や構造、及び熱成形の方法に応じて適宜選択可能であるが、熱成形部材の製造時の工程性、熱成形性、熱成形時の取り扱い性などの点から、20〜400g/mの範囲であることが好ましく、50〜200g/mの範囲であることが更に好ましい。
本発明の熱成形部材の比容積は特に限定されるものではないが、10〜80cm/gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは40〜60cm/gの範囲である。熱成形部材の比容積が10cm/g以上であれば、マトリックスを構成する熱接着性複合繊維同士の接着点の数が多くなりすぎず、接着点間のフレキシビリティーが十分であり、30%以上の高い最大降伏点伸度を有する熱成形部材を得るのに適している。また熱成形部材の比容積が80cm/g以下であれば、マトリックスを構成する熱接着性複合繊維同士の接着点の数は十分であり、熱成形に耐えうる強度が得られる。しかしながら、熱成形部材の比容積は、その最大降伏点伸度と強度のバランスを考慮して適宜選択することが可能であり、本発明の効果が損なわれない限り上記範囲外であることを妨げるものではない。
本発明の熱成形部材は、他のシートを積層し、熱処理することで、熱成形加工用複合シートを得ることも可能である。シートとしてはフィルム、不織布、紙状物などが例示できるが、熱成形加工時の成形性を害しない素材が好ましい。本発明の熱接着性複合繊維は、第1成分に反応性官能基を有する変性ポリオレフィンを含むことから他素材との接着性に優れるので、反応性官能基との反応性を有する素材からなるシート、又は含有したシートを積層した際に高い層間剥離強度が得られるという特徴を持つ。変性ポリオレフィンが有する反応性官能基と反応性を有する素材としては、セルロース又はその誘導体、ガラス、炭素、ポリアミド、ロックウール、アルミニウムなどを挙げることができる。
本発明の熱成形部材を用いて熱成形を行なうにあたっては、成形体の種類、形状などに応じて、適切な方法を採用すればよい。例えば、一般的な熱成形に用いられるオス型とメス型からなる金属製の成形型を用いることができる。熱成形時の温度は、セルロース系繊維の劣化防止、熱成形性、用いる熱接着性複合繊維の第1成分及び第2成分の融点、または軟化点などを考慮して決定することができ、100〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは130〜160℃の範囲である。熱成形温度を第1成分の融点以上の温度に設定した場合には、例えば2枚以上の熱成形部材を重ね合わせて熱成形した場合などに、シート同士を容易に接着させることができるので更に好ましい。この時の加熱方法としては、成形型のみを加熱しても、成形型と熱成形部材の双方を加熱しても、熱成形部材のみを加熱してもよい。その中でも作業性の点からは成形型のみを加熱する方法が好ましい。加熱方式は特に限定されるものではなく、例えば電熱ヒーター加熱、熱風加熱、蒸気加熱、熱オイル循環加熱などの方式が例示でき、またはこれら方式を併用して用いてもよい。
熱成形時のプレス圧力は、通常は9.8×10〜1.96×10Pa(10〜200kgf/cm)の範囲とすることが好ましい。プレス圧力が9.8×10Pa(10kgf/cm)未満であると十分に圧縮変形がなされなかったり、十分な成形体強度が得られなかったりし、プレス圧力が1.96×10Pa(200kgf/cm)を越えると、シートの破れが生じやすくなる。しかしながら、プレス圧力は目的とする成形体の厚さや大きさなど、熱成形部材の厚みや枚数など、熱接着性複合繊維の種類や量などによって適宜設定することができるものであり、上記範囲外であることを妨げるものではない。またプレス時間は特に限定されないが、作業性、成形性などの点から2〜20秒の範囲にしておくのが好ましい。
上記した熱成形で製造される成形品の大きさや厚さ、形状、構造などは特に限定されるものではなく、成形体の用途や使用目的に合わせて適宜選択することができる。熱成形部材の最大降伏点伸度を機械方向及び幅方向ともに30%に特定することによって、選択できる成形体の形状の幅が大きくなり、また破れ、絞り皺などがない良好な外観の成形体が、高い生産性で得られる。
本発明の熱成形部材を用いて得られた成形体は、弁当容器、食品トレー、青果容器といった食品包装容器や、CDケース、電気部品用ケースといった工業製品包装容器などとして使用することができる。成形体はセルロース系繊維を主成分としており、従来のプラスチック成形体に比べて燃焼カロリーが小さく、燃焼時に有害ガスを発生することもない。また熱接着性複合繊維を含んでいることから、成形体の形態保持性、強度が高いなどの特徴もある。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。なお、実施例中に示した物性値の測定方法又は定義を以下に示す。
単糸繊度:JIS−L−1015に準じて測定した。
MFR:JIS−K−7210に準じて下記の条件で測定した。
ポリプロピレンの場合:試験温度230℃、試験荷重21.18Nで測定。
(JIS−K−7210「表1」の試験条件14)
ポリエチレンの場合:試験温度190℃、試験荷重21.18Nで測定。
(JIS−K−7210「表1」の試験条件4)
曲率半径:熱接着性複合繊維の像を形VC2400−IMU 3Dデジタルファインスコープ(オムロン(株)製)を用いて取込み、画像解析によって立体捲縮の曲率半径を測定した。
目付:25cm×25cmに切断した熱成形部材の重量を秤量し、単位面積あたりの重量(g/m)で表した。
比容積:目付測定に用いた熱成形部材の厚みを測定し、以下の式によって求めた。
比容積(cm/g)=目付(g/m)÷厚み(mm)×1000
ダスト発生率:10cm角に切った熱成形部材の重量(W1)を測定し、次にカード機のフライコム部に取り付け、振幅4cm、振幅回数600rpmの条件で3分間振動させた後に重量(W2)を測定し、次式より算出した。
{(W1)−(W2)}÷(W1)×100=ダスト発生率(%)
最大降伏点伸度:熱成形部材から機械方向が15cm、幅方向が5cmと、機械方向が5cm、幅方向が15cmになるように、2水準の試験片を各3枚採取する。この試験片をオートグラフAGS500D(島津製作所(株)製)を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/minの条件で最大降伏点伸度(%)を測定し、3枚の平均値を最大降伏点伸度とした。なお、機械方向に引張試験を行なった時の最大降伏点伸度を機械方向の最大降伏点伸度とし、幅方向に引張試験を行なった時の最大降伏点伸度を幅方向の最大降伏点伸度とした。
実施例1
(1) 試験温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが26g/10minである高密度ポリエチレンと、試験温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが1.7g/10minであり、無水マレイン酸グラフト率が0.1モル/kgである無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンを重量比10/90で混合した混合物を第1成分に配し、試験温度230℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが16g/10minであるアイソタクチックポリプロピレンを第2成分に配し、第1成分と第2成分の重量比が50/50になるように、並列型複合紡糸口金を用いて、第1成分の押出機シリンダー温度が250℃、第1成分の押出機シリンダー温度が220℃の条件にて熱接着性複合繊維を紡糸した。得られた熱接着性複合繊維の断面は第1成分が第2成分を覆い囲んだ偏心並列型であった。その後、ロール延伸機を用いて、1段目ロール温度が110℃、2段目ロール温度が80℃の条件で5.0倍に延伸し、機械捲縮を付与した。その後、90℃の循環式熱風ドライヤーを通過させたところ、第1成分と第2成分の熱収縮率差により立体捲縮を発現した。なお単繊維繊度は1.7dtexであった。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を5mmにカットした。そして熱接着性複合繊維と、パルプ粉砕機にて繊維長が3mm程度になるように粉砕した広葉樹木材パルプとを、熱接着性複合繊維とパルプの重量比が20/80になるように、Dan−Web社製のエアレイド機にて混綿、積層し、繊維集合体を形成した。得られた繊維集合体を循環式熱風ドライヤーにて140℃の温度で熱処理して熱接着性複合繊維の鞘部を溶融せしめ、熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が65cm/gであった。熱成形部材は30%以上の最大降伏点伸度と十分な強度を有しており、またダストの発生も3%に抑えられていた。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、オス型及びメス型の金属型の温度がいずれも150℃である熱圧プレス機を用いて、内径が縦×横×深さ=40mm×30mm×45mmの凹部を有する直方体の成形体を、9.8×10Pa(100kgf/cm)のプレス圧で5秒間熱成形を行なって得た。得られた成形体はいずれの面にもシートの破れ等が生じておらず、またいずれの角部にも破れや薄くなった部分が見られず、良好な外観と優れた保形性を有していた。
実施例2
(1) 第1成分と第2成分の重量比を65/35にした以外は実施例1と同様にして熱接着性複合繊維を得た。第1成分の重量比が多いために、実施例1で得られた熱接着性複合繊維に比べて曲率半径の小さい立体捲縮を発現した。なお単繊維繊度は1.7dtexであった。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を3mmにカットした。そして熱接着性複合繊維とパルプの重量比を20/80とした以外は実施例1と同様にして熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が70cm/gであった。熱成形部材は30%以上の最大降伏点伸度と十分な強度を有しており、またダストの発生も5%に抑えられていた。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、実施例1と同様の方法で熱成形を行なった。得られた成形体はいずれの面にもシートの破れ等が生じておらず、またいずれの角部にも破れや皺、薄くなった部分が見られず、良好な外観と優れた保形性を有していた。
実施例3
(1) 偏心鞘芯型複合紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様にして熱接着性複合繊維を紡糸した。得られた熱接着性複合繊維の断面は第1成分が第2成分を覆い囲んだ偏心鞘芯型であった。その後、ロール延伸機を用いて、1段目ロール温度が110℃、2段目ロール温度が60℃の条件で4.2倍に延伸した。そして2段目ロールを通過した後に延伸応力を開放したところ、第1成分と第2成分の弾性収縮率差によりスパイラル状の立体捲縮を発現した。なお単繊維繊度は2.2dtexであった。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を6mmにカットした。そして熱接着性複合繊維とパルプの重量比を10/90とした以外は実施例1と同様にして熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が63cm/gであった。熱成形部材は30%以上の最大降伏点伸度と十分な強度を有しており、またダストの発生も8%に抑えられていた。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、実施例1と同様の方法で熱成形を行なった。得られた成形体はいずれの面にもシートの破れ等が生じておらず、またいずれの角部にも破れや皺、薄くなった部分が見られず、良好な外観と優れた保形性を有していた。
実施例4
(1) 無水マレイン酸グラフト率が0.1モル/kgである無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンの試験温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが9.6g/10minであることと、偏心鞘芯型複合紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様にして熱接着性複合繊維を紡糸した。得られた熱接着性複合繊維の断面は偏心鞘芯型であった。その後、ロール延伸機を用いて、1段目ロール温度が90℃、2段目ロール温度が40℃の条件で4.2倍に延伸し、機械捲縮を付与した。その後、90℃の循環式熱風ドライヤーを通過させたところ、第1成分と第2成分の熱収縮率差により立体捲縮を発現した。なお単繊維繊度は2.2dtexであった。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を6mmにカットした。そして熱接着性複合繊維とパルプの重量比を30/70とした以外は実施例1と同様にして熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が68cm/gであった。熱成形部材は30%以上の最大降伏点伸度と十分な強度を有しており、また実施例1に比べてMFRが高い無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンを用いたことにより、第1成分の相溶性が向上して反応性官能基が均一に分散しており、ダストの発生が1%と極めて低く抑えられていた。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、実施例1と同様の方法で熱成形を行なった。得られた成形体はいずれの面にもシートの破れ等が生じておらず、またいずれの角部にも破れや皺、薄くなった部分が見られず、良好な外観と優れた保形性を有していた。
比較例1
(1) 同心鞘芯型複合紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様にして熱接着性複合繊維を紡糸した。得られた熱接着性複合繊維の断面は同心鞘芯型であった。その後、ロール延伸機を用いて、1段目ロール温度が90℃、2段目ロール温度が90℃の条件で5.0倍に延伸し、機械捲縮を付与した。その後、90℃の循環式熱風ドライヤーを通過させたが、立体捲縮は発現しなかった。なお単繊維繊度は1.7dtexであった。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を5mmにカットした。そして実施例1と同様にして熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が55cm/gであった。熱成形部材の最大降伏点伸度は20%程度であり、実施例1に比べて著しく低かった。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、実施例1と同様の方法で熱成形を行なった。シートの伸度が十分でないために熱成形を行なう際に破れが生じ、成形体の角部のうち2ヶ所に破れが見られ、また平面部の1ヶ所にも破れが見られた。
比較例2
(1) 試験温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが26g/10minである高密度ポリエチレンのみを第1成分に配した以外は実施例1と同様にして、すなわち反応性官能基を有する変性ポリオレフィンを含まないこと以外は実施例1と同様にして熱接着性複合繊維を紡糸した。延伸、熱処理工程も実施例1と同様にし、単糸繊度1.7dtexの熱接着性複合繊維を得た。
(2) 上記(1)で得られた熱接着性複合繊維を5mmにカットした。そして実施例1と同様にして熱成形部材を得た。得られた熱成形部材の目付は80g/mであり、比容積が65cm/gであった。熱成形部材の最大降伏点伸度は30%以上であったが、熱接着性複合繊維が変性ポリオレフィンを含まないことからパルプとの接着が十分でなく、ダストの発生量が極めて多いと共に、シートの強度も十分でなかった。
(3) 上記(2)で得られた熱成形部材を、実施例1と同様の方法で熱成形を行なった。シートの強度が十分でないために熱成形を行なう際に破れが生じ、成形体の角部のうち1ヶ所が極めて薄くなっており、また平面部の1ヶ所に破れが見られた。また成形を行なっている際に多量のダストが発生し、得られた成形体の保形性も不十分であった。
Figure 0004281523
機械捲縮のみを有する熱接着性複合繊維の接着点間の模式図。
立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ熱接着性複合繊維の接着点間の模式図。
機械捲縮のみを有する熱接着性複合繊維を用いて得られた熱成形部材の応力−歪み曲線の模式図。
立体捲縮、又は立体捲縮と機械捲縮を併せ持つ熱接着性複合繊維を用いて得られた熱成形部材の応力−歪み曲線の模式図。

Claims (8)

  1. 2種類以上の熱可塑性樹脂からなる偏心断面構造を有する熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体を用いて得られる熱成形部材であって、該熱成形部材は機械方向及び幅方向共に30%以上の最大降伏点伸度を有し、且つダスト発生率が20%以下であり、熱接着性複合繊維は、少なくとも1種の反応性官能基を有するグラフト変性の変性ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂を第1成分とし、第1成分より融点の高い熱可塑性樹脂を第2成分とし、該第1成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して形成しており、該第1成分の溶融によって、熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体が熱接着されていることを特徴とする熱成形部材。
  2. 熱接着性複合繊維の繊維長が2mm〜25mmである請求項1記載の熱成形部材。
  3. 熱接着性複合繊維とセルロース系繊維で構成された繊維集合体が、エアレイド法で得られた請求項1〜2のいずれか1項に記載の熱成形部材。
  4. セルロース系繊維がパルプである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱成形部材。
  5. 熱成形部材が、シート状物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱成形部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱成形部材に、他のシートが積層された熱成形用複合シート。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱成形部材、又は請求項6に記載の熱成形用複合シートを用いて得られた成形体。
  8. 成形体が、包装容器である請求項7に記載の成形体。
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