JP6713873B2 - 軽量性に優れた自動車内装用のウェブ及びそれを用いたニードルパンチ不織布、それらの製造方法、ならびにそれらを用いた自動車内装部品 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量性に優れた自動車内装用のウェブ及びそれを用いたニードルパンチ不織布、それらの製造方法ならびにそれらを用いて得られる自動車内装部品に関する。詳しくは、熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維及び熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングにより均一なウェブを得て、ニードルパンチ処理して得られ、「スケ」の発生が少なく、軽量性のみならず嵩高性、意匠性及び機械的強度に優れる自動車内装用ニードルパンチ不織布に関するものである。
熱可塑性ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、その力学特性、耐熱性、成形性、耐薬品性などのバランスに優れ、かつ安価であることから、自動車内装用繊維製品として広く利用されている。実際には、紡糸段階で着色剤を混練した多様な色彩を有する原着繊維を用い、カーディングにより混合・配向させ、ニードルパンチ処理して絡合したニードルパンチ不織布が広く使用されている。最近では、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の普及や、燃料電池車の台頭により、次世代自動車の燃費向上のための軽量化が喫緊の課題となっている。
繊維の集合体で布帛状を形成する不織布は、技術的にはウェブと称するフリース状の綿集合体と、それを物理的、化学的に接合・絡合させる結合工程の組み合わせで形成される。
フリースを形成する主な方法としては、短繊維を、カード機を用いてカーディングし、エアレイと呼ばれる空気流で一定方向またはランダムに並べて形成する乾式法、短繊維を水中に分散し網状のネット状にすき上げてフリースを形成する湿式法、溶かした原料樹脂を直接ノズルの先から溶出・紡糸させ、連続した長い繊維でフリースを形成するスパンボンド法などがある。
繊維同士を結合させる方法としては、エマルジョン系の接着樹脂を含浸またはスプレーなどの方法でフリースに付着させ、加熱・乾燥させて繊維の交点を接着するケミカルポンド法、低融点の熱融着繊維を混合したフリースを、熱ロールの間を通して熱圧着、または熱風を当てて繊維同士を接着させるサーマルポンド法、フリースを高速で上下するニードルで繰り返し突き刺し、ニードルに刻まれたバーブという突起により繊維を絡ませるニードルパンチ法などがある。ニードルパンチ法は、嵩高性に富み、繊維間の剥離がないのが特徴で、この方法だけで製品化または別の結合法と組み合わせて用いられている。
繊維の軽量化の方法としては、難燃バッキング塗布の工程を削減した難燃繊維を用いる方法(例えば、特許文献1)や、目付けを減らす方法がある。しかしながら、難燃繊維を用いる方法は、難燃剤が中空繊維を製造するためのノズル孔に詰まり易いという問題があり、目付けを減らす方法では、減らしすぎると、強度低下や「スケ」が発生し、部品の外観品質や、機械的強度を著しく低下させるため、限界に来ていることが指摘されている。ここで、「スケ」とは、「不織布の繊維密度が低く、そのため不織布の下地の一部が見える現象」を言い、自動車部品では、凹凸形状のものが多く、部品の稜線や、それが会合する頂部等において顕著となる。
嵩高性や、軽量性を高めるために、特に寝装・衣料品分野において、中空繊維や、高捲縮繊維が広く用いられている。例えば、特許文献2では、ポリエステル系合成繊維およびバインダー繊維を主要構成部材とする繊維構造物において、中空繊維が配合され、かつバイダー繊維によって圧縮固定された繊維構造物が、クッション材、断熱材、吸音材などとして有用であることが開示されている。また、特許文献3では、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、捲縮数が9〜30山/インチ、捲縮率が20〜50%の三次元捲縮(潜在捲縮)を有し、かつ、捲縮弾性率が80%以上である中空捲縮ポリエステル繊維が開示されている。さらに特許文献4には、極細繊維および嵩高性を付与する中空繊維からなる2層の硬綿層の間に不織布シートを介在させて一体化させた軽量フェルト材が開示されている。さらにまた特許文献5には、立体捲縮(潜在捲縮)を発現する弾性複合繊維を構成成分とする粒状綿が開示されている。
一方、自動車用内装材として広く用いられているニードルパンチ不織布については、例えば、特許文献6は、稜線が会合する頂部を備えた成形品をインモールド成形する際に使用するもので、熱可塑性合成繊維からなるシートにニードルパンチ加工を施して得られる成形品用不織布を用いると、樹脂の表面への浸出やスケを防止できることが開示されている。また特許文献7においては、バイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維からなる高強度ニードルパンチ不織布を用いると成形時の破れやスケを防止できることが開示されている。さらに特許文献8には、中空及び非中空(中実)の機械捲縮(二次元捲縮)を付与したポリエチレンテレフタレート繊維がクッション材用ポリエステル固綿として使用されることが開示されている。
再表2010/001972 特開平8−302551号公報 特開2001−254239号公報 特開2015−37842号公報 特開2015−155586号公報 特開2004−270089号公報 特開2013−11028号公報 特開平6−220759号公報
本発明は、中空捲縮短繊維と中実捲縮短繊維との混綿によって、カード性および収率に優れたウェブ、引き続くニードルパンチ処理により、嵩高性、意匠性および機械的強度・伸度に優れ、かつ樹脂への浸出およびスケがなく、低目付で、軽量性に優れた自動車内装用ニードルパンチ不織布、それらの製造方法、ならびにそれらを用いた自動車内装部品を提供するものである。
特許文献2には、マットレスなどの寝装具、家具、自動車用内装品などの各種クッション材、ソファーや椅子などの背もたれをはじめとする断熱材や、吸音材などの用途に好適な繊維構造物が得られること、また、特許文献3には、カード通過性が良好であり、且つ、嵩高性、耐ヘタリ性に優れた不織布、詰綿、紡績糸織編物等の繊維製品を得られることが開示されているが、両者とも、中空捲縮短繊維と中実捲縮短繊維との混綿のカード性や、繊維製品の軽量化に関する記載がない。更に、特許文献4には、吸音性、難燃性が高く、柔軟であり、自動車や車両の内装材、産業資材、衣料用などに適していることが開示されているが、捲縮に関する記載はなく、特許文献5には、寝装品や衣料品に最適な中綿材料として用いられるが、軽量性や、自動車用途に関する記載がない。
また、特許文献6および7には、不織布に目付け一般部と目付け増大部を設けることや、バイオマス由来成分からなるポリエチレンテレフタレート繊維を用いることにより、樹脂表面への浸出及びスケ防止できることが開示され、特許文献8には、融点100℃以上のポリエステルエラストマー系バインダー繊維を用いて、機械捲縮付与ポリエチレンテレフタレート繊維を点接合して、風合の柔らかさ不足や、ヘタリやすさ等を解消させることが開示されているが、中空捲縮繊維と中実捲縮繊維との混綿や、自動車の軽量化については何も記載されていない。
自動車用内装用繊維製品には、その時々の流行に合致するような色彩、形状等の意匠性や、環境変化に対応しても価格アップにならないコスト・パフォーマンスが強く望まれ、寝装品等に比べ、製品規格は厳しくかつ品質の安定したものが望まれている。そのため、通常は、単一繊維を用いるのではなく、色彩、物性、コスト等の異なる複数の捲縮短繊維を混綿して、要求特性を満足させるのが一般的である。このため、捲縮短繊維の混綿の際のカード性は、製品化のための重要な因子となっている。
本発明者らは、次世代自動車の喫緊の課題である軽量化の問題を解決するために、嵩高さ(大きな比容積)及び軽量性を有するため、布団綿のような寝装・寝具類に広く用いられている三次元捲縮(潜在捲縮、立体捲縮とも呼ばれている)を有する熱可塑性ポリエステル中空短繊維の自動車用途への応用を図った。そこで、このような潜在捲縮を付与した中空短繊維と自動車内装用に用いられている機械捲縮を付与した中実短繊維とを混綿し、カーディングすることにより、自動車内装用ニードルパンチ不織布の軽量化を試みた。しかしながら、ウェブ製造時のカード性の悪化や、落綿による収率低下、不織布製造時におるスケの発生などのため利用できないことがわかった。そして、高い捲縮性能を有する機械捲縮を付与した自動車内装用中空短繊維の製造を試みたが、強い機械捲縮により中空形状が潰れ、高い中空率の中空短繊維が得られなかった。ノズル孔形状、紡糸温度、紡糸の際の吐出量、冷却速度および巻取り速度(又は引き取り速度)、ならびに延伸条件、捲縮条件等の最適化を図ったところ、高い捲縮性能と中空率とを同時に満足する中空短繊維を得ることに成功し、この短繊維が、ウェブ製造時のカード性および収率の改善、ニードルパンチ処理によって得られる不織布のスケの問題に大きく係っていることを見出した。
本発明者らは、自動車内装繊維製品の軽量化を求めて、中空捲縮短繊維の製法および中空捲縮短繊維と中実捲縮短繊維の混綿について、鋭意検討を重ねた結果、カーディング時のカード性および収率、不織布の「スケ」の原因が用いる短繊維の捲縮の形状や、捲縮性能に大きく影響することがわかり本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供するものである。
(1)繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、前記主体繊維同士が混綿、カーディングされてなり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮による捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%である自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
(2)中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である上記(1)記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
(3)前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が20〜80質量%、中実捲縮短繊維が80〜20質量%、前記中空率が10〜30%、前記捲縮数が10〜25山/インチ、前記捲縮率が10〜30%、前記残留捲縮率が7〜25%である上記(1)および(2)のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
(4)繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維同士を混綿、カーディングしてなるウェブがニードルパンチ処理により三次元的に交絡一体化されてなる不織布であって、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10質量%〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90質量%〜10質量%であり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮による捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、かつ前記不織布の目付けが180〜350g/mである自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(5)中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である上記(4)記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(6)前記主体繊維の、カット長が5〜200mm、繊維の太さが1.0〜20デシテックスである上記(4)〜(5)のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(7)前記中空捲縮短繊維が20〜80質量%、前記中実捲縮短繊維が80〜20質量%、前記中空率が10〜30%、前記捲縮数が10〜25山/インチ、前記捲縮率が10〜30%、前記残留捲縮率が7〜25%、前記主体繊維の、カット長10〜80mmおよび繊維の太さが2.0〜10デシテックスである上記(4)〜(6)のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(8)前記主体繊維が原着繊維である上記(4)〜(7)記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(9)前記中空及び/又は中実捲縮短繊維に用いる熱可塑性ポリエステル樹脂がリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂である上記(4)〜(8)記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
(10)繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングにより得られ、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮による捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブの製造方法。
(11)繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングによりウェブとし、次いでニードルパンチ処理により得られる、三次元的に交絡一体化してなる不織布の製造方法であって、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮による捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40であり、目付けが180〜350g/mある自動車内装用ニードルパンチ不織布の製造方法。
(12)上記(1)〜(3)のいずれか1項記載のウェブ、上記(4)〜(9)のいずれか1項記載の不織布、ならびに上記(10)記載のウェブの製造方法および上記(11)記載の不織布の製造方法によって得られる自動車内装部品。
本発明によれば、主体繊維として、機械捲縮を付与した熱可塑性ポリエステル中空短繊維及び機械捲縮を付与した熱可塑性ポリエステル中実短繊維を混綿として用いることによって、布団綿として汎用的に用いられている潜在捲縮を付与した中空短繊維に比べ、カード性および収率に優れたウェブ、引き続くニードルパンチ処理により、嵩高性、意匠性および機械的強度・伸度に優れ、かつ樹脂への浸出およびスケがなく、低目付で、軽量性に優れた自動車内装用ニードルパンチ不織布を提供でき、自動車内装部品として利用することによって次世代自動車の軽量化に貢献できる。
不織布のスケ性評価に用いた判定用見本である。 機械捲縮短繊維の形状を模式的に表した図面である。 潜在捲縮短繊維の形状を模式的に表した図面である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明は、繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維からなり、捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%および残留捲縮率が3〜35%である機械捲縮、ならびに中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である主体繊維を用い、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングにより混合ムラや、カード性および収率の低下のないウェブを得て、次いでニードルパンチ処理により三次元的に交絡一体化して得られる不織布であって、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、目付けが180〜350g/mある軽量化に寄与する自動車内装用ニードルパンチ不織布を提供することである。なお、本明細書において、特に注記しない限り、「〜」で示す数値範囲は上限と下限を含むものとする。例えば、「10〜30%」は「10%以上、30%以下」を意味するものとする。
<主体繊維>
本発明に主体繊維として用いる熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維は、熱可塑性ポリエステル樹脂を着色剤、難燃剤などの添加物と共に、混練溶融紡糸し、延伸、捲縮、乾燥・熱セット及びカット工程からなる自動車内装用繊維の公知の製造方法によって得られる。この際、繊維に潤滑性を付与するために、紡糸、延伸、捲縮の工程において、添加物として繊維油剤を用いることができる。本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂としては特に制限はなく、熱可塑性であればその構成成分を問わずいずれのポリエステル樹脂も使用することができる。熱可塑性ポリエステル樹脂に限ったのは、熱可塑性であれば廃棄ポリエステルを再利用、例えば、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂等として使用することができるからである。ここで、カット工程とは、乾燥・熱セット工程からでてきた長繊維を、切断機によって、一定の長さにカットする工程のことである。
(熱可塑性ポリエステル樹脂)
ポリエステルは、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体である。このような熱可塑性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸(ジカルボン酸)成分としては、特に制限されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ビス−(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、およびtrans−ヘキサヒドロテレフタル酸ならびにそれらのアルキルエステル、アリールエステル、およびエチレングリコールエステルなどが挙げられる。
一方、上記熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するポリアルコール(ジオール、グリコール)成分としては、特に制限されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールや、ビスフェノールA、およびビスフェノールSならびにそのエチレングリコール、ポリエチレングリコール付加体、ジエチレングリコールおよび、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
更に、ポリ乳酸類のようなヒドロキシカルボン酸の縮合型ポリエステル樹脂や、難燃剤成分を共重合して得られる公知の難燃ポリエステルを使用することができる。カルボン酸成分とグリコール成分の組み合わせによって、得られるポリマー(熱可塑性ポリエステル樹脂やバインダー繊維)の融点は150〜300℃の広範囲な組み合わせが可能であり、低融点ポリマーは高融点ポリマーとの組み合わせによってバインダー繊維として用いることができる。これらの中でも特に、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂としては、大量に使用され安価に入手できるポリエチレンテレフタレート(融点258℃)、ポリブチレンテレフタレート(融点243℃)及びポリエチレンナフタレート(265℃)が好ましい。また、低融点ポリマーとしては、融点が180℃以下のポリエチレンテレフタレートセグメントからなる共重合ポリエステルや、ポリ乳酸樹脂などがある。バインダー繊維としては、熱可塑性ポリエステル繊維以外に、汎用されているポリプロピレン繊維を用いることができる。熱可塑性ポリエステル樹脂は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。一般に、バインダー繊維としては中実繊維が用いられており、主体繊維100質量部に対して、5ないし20質量部用いられているが、これは本発明の主体繊維には含まれない。またバインダー繊維は、必要に応じて適宜用いられる、任意成分である。
上記熱可塑性ポリエステル樹脂の数平均分子量は特に制限されないが、1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。1,000以上であれば糸形成が可能であり、また、100,000以下であれば粘度の上昇を抑制できるため溶融紡糸が容易である。なお、上記の数平均分子量は例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。通常、上記の数平均分子量は測定が簡単な固有粘度で代用することができ、固有粘度では、0.05〜2.53であり、好ましくは、0.19〜1.40となる。固有粘度は、JISK7390(2003)に準拠した方法で求めることができる。
また、本発明では、該熱可塑性ポリエステル樹脂として使用後に廃棄されたものや、工業製品を製造する際の端材を利用することもできる。すなわち、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂は再生(リサイクル)ポリエステル樹脂(なかでもリサイクルポリエチレンテレフタレート、リサイクルポリブチレンテレフタレート及びリサイクルポリエチレンナフタレート樹脂であり、リサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂が好適である)を含みうる。なお、本発明において、廃棄ポリエステル樹脂とは、使用済みポリエステル樹脂、使用前であるが規格外れ品であって、製品として使用されないものなど、製品以外のポリエステル樹脂を広く含むものとする。このような廃棄ポリエステル樹脂としては、合繊メーカー、フィルムメーカー、ペットボトル製造業、ポリエステル重合メーカーからでる端材や基準グレードを下回るポリエステル樹脂、一般廃棄物の容器包装リサイクル法によって得られるポリエステル樹脂が例示できる。これにより本来廃棄され、または焼却処理の対象となるべき廃材をマテリアルリサイクルすることができ、環境保全に寄与すると共に経済的にも有利である。
(添加剤)
本発明に用いられる着色剤としては、有機顔料、無機顔料など公知のものが利用できる。例えば、アゾ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、シアニングリーンおよびシアニンブルーからなるシアニン系、ジオキサジン系、α型フタロシアニンおよびβ型フタロシアニンからなるフタロシアニン系、ペリノン系、ベリレン系、ならびにポリアゾ系からなる有機顔料;チタンイエロー、群青、酸化鉄、弁柄、亜鉛華、アナターゼ酸化チタンおよびルチル酸化チタンからなる酸化チタン系、ならびにカーボンブラック、グラファイト、スピリットブラック、チャンネルブラックおよびファーネスブラックからなるカーボン系の無機顔料が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。通常はこれらの着色剤の中から適切な顔料を複数選び、適切な量を混合使用することよって繊維に所望の色づけを施すことができる。また、着色剤を副資材として原料に直接配合し紡糸することによって、原着繊維にすることで、繊維の耐光性(色劣化防止効果)を付与することができる。
着色剤以外に、紡糸性および繊維特性を損なわない範囲で、更に他の添加物を含ませることができる。その他の添加物としては、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸エステル、有機リン酸金属塩、ホスファゼンなどの難燃剤、酸化アンチモン、ビスクミルなどの難燃助剤、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、タルク等の遅燃剤、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪族カルボン酸などの可塑剤、無機塩、金属石鹸などの安定剤、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノールなどの抗酸化防止剤、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、など公知の添加剤がある。
これらの添加剤の使用量に関しては、(主体繊維として用いる熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維の原材料である)熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(以下、原料樹脂ともいう)の総重量を基準として、着色剤の含有量は0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%であり、難燃剤の含有量は0.1〜12質量%、好ましくは1〜5質量%である。着色剤が0.01質量%以上であれば繊維製品を様々な色に比較的簡単に着色することができる点で優れており、5質量%以下であれば変色などの耐光性悪化の原因となることもない点で優れている。また、難燃剤の含有量が0.1質量%以上であれば十分な難燃性を付与することができる点で優れており、12質量%以下であれば簡単に紡糸が行える点で優れている。その他の添加剤の使用量については、紡糸性および繊維特性を損なわない範囲で含ませることができる。
(紡糸、延伸、捲縮、乾燥・熱セット及びカット工程)
本発明の主体繊維は、原料樹脂の混練、溶融紡糸、延伸、捲縮および短繊維へのカットなどの一連の工程を連続または不連続的に行うことにより製造され、捲縮の後、またはカットの後に、乾燥・熱セット工程を含む。これらの工程は、一般的に用いられている方法により行うことができる。
例えば、1軸あるいは2軸押出機により溶融混練された原料樹脂をノズルから押出し、給水付与または必要に応じて紡糸油剤を給油付与し、糸条を巻き取ることにより未延伸糸が得られる。その際の断面形状は任意であり、丸断面繊維、異形断面繊維、中空繊維などいずれであってもよい。ここでいう異形断面(形状)とは、中実繊維断面のうち、丸断面以外の断面形状を有するものをいう。中実繊維の異形断面や、中空繊維の中空断面については、使用用途によって様々な形状のものを用いることができる。中空断面繊維の場合、中空断面の中空率は5〜40%、好ましくは10〜30%である。中空率が5%未満であると、目的とする繊維の軽量化を達成するのが困難となるため好ましくなく、40%を超えると、孔がつぶれ易く、割れ易くなり、軽量化、吸音性、繊維の強度などの低下原因となり好ましくない。中空繊維製造に用いるノズルの孔形状は、リング状や、外気の空気取り入れ口数に対応した1C、2C、3C、4C、5Cなどがあるが、捲縮により潰れなく、本発明の中空率を維持するためには、1C、2C、3Cおよび4Cが好ましい。ここで、リング状の孔形状は芯鞘複合繊維を製造する場合のノズルを用い、鞘が樹脂、芯が空気となるノズルを用い、1Cは通常のノズルを用い、孔形状がC形状であり、リング形状孔の1部を固定した空気取り入れ口が1個のものである。2Cはリング形状のうち空気取り入れ口が2個(C形状のものが2個向き合わさってリングを形成する)、3Cは3個、4Cは4個及び5Cは5個の空気取り入れ口を有するものである。ホール数はノズル1個当たり孔数にノズルの数を乗じたものであり、紡糸における生産性、すなわち一定時間当たりの繊維の長さ及び量は、吐出量、ホール数及び巻取速度によって決まる。ノズルのホール数は、生産設備の規模によって決まるので、特に制限されるものではないが、生産性、糸切れ及び融着による品質異常(スティック発生)の観点から、好ましくは200〜2000である。中空繊維の場合、糸切れ及び融着による品質異常のため、好ましくは200〜1500である。
溶融紡糸工程は、湿式、乾式に限らず、公知の方法が利用できるが、好ましくは乾式法で、生産性、糸切れ防止及び融着による品質異常の観点から、引取速度(巻取り速度)300〜1000m/分であり、ノズル孔の目詰まり、糸切れ紡糸及び融着による品質異常の観点から、紡糸温度は200〜300℃の条件で溶融紡糸を行うことが好ましく、糸形成状態に応じて適宜条件を変化させて最適条件において行う。中空繊維の場合も同条件範囲内で行うが、樹脂、添加剤などの用いる原料の種類、製品の仕様、外気温、湿度などの外的製造環境、製造設備の特性など、いくつかの条件の掛け算により決まるので、事前に予備実験等を行うなどして、より最適条件を把握し、溶融紡糸を行うことがより好ましく、中実繊維の製造よりはより厳しい管理条件が必要となる。また、中空繊維の場合には、特にノズル出口での冷却が重要であり、最適な中空形状になるように制御する必要がある。より好ましくは、ノズル出口の雰囲気温度は、20〜50℃範囲内で、他の条件との絡みのなかで、事前に予備実験等を行うなどして決定すればよい。
未延伸糸はそのまま連続工程で延伸をおこなってもよく、あるいは一旦、ケンスへの取り込みまたはボビンに巻取った後、エージングを行ってから延伸しても良い。延伸工程は1段あるいは2段以上の多段であっても良い。繊維の最適な強度及び伸度を確保する観点から、延伸倍率は1.0〜6.0程度で行うのが好ましい。延伸倍率が1.0以上であれば十分な強度を保持することができ、6.0以下であれば十分な伸度を保持することができる点で優れている。中空繊維の場合、繊維の最適な強度、伸度、及び中空率の確保の観点から、延伸倍率は2.0〜5.0であり、2.0以上であれば十分な繊維の強度が保持でき、5.0以下であれば最適な中空率が維持できる点で好ましい。また延伸工程では接触あるいは非接触型の熱源を用いても何ら問題はない。また延伸を円滑に行うために、繊維素材に悪影響を及ぼさない範囲で繊維油剤を付与することができる。
捲縮工程では、平面的な、いわゆる二次元捲縮となる公知の機械捲縮方法を用いることができ、適切な条件を設定することによって、長期間安定的形状の維持や、混綿のカード性が良好となる。例えば、押し込みクリンパーを用いる方法では、ニップ圧およびスタフィング圧の調整や蒸気の付与などにより、繊維に適切な捲縮数、捲縮率及び残留捲縮率を付与することができる。捲縮は強い方が好ましく、ニップ圧を0.05〜0.85MPa、特に0.10〜0.55MPaおよびスタフィング圧を0.05〜0.85MPa、特に0.10〜0.45MPaにすることにより安定した捲縮を施すことができ好ましい。捲縮数、捲縮率及び残留捲縮率は、両者の微妙な調整によって決まり、ニップ圧およびスタフィング圧がそれぞれ0.05MPa以上であると捲縮数、捲縮率及び残留捲縮率が著しく低下するのを効果的に防止することができ、0.85MPa以下であると捲縮数、捲縮率及び残留捲縮率が大きくなるのを防止できる。その結果、製品のバラツキが大きくなるのを効果的に防止でき、品質の更なる安定化を図ることができる点で優れている。捲縮数、捲縮率及び残留捲縮率については、カーディング及びニードルパンチ処理を良好なものにするためには、中実繊維及び中空繊維とも、同じような捲縮条件で行うのが好ましい。
後述する乾燥・熱セット工程により得られる主体繊維の捲縮数は、5〜35山/インチ、好ましくは10〜25山/インチであり、この範囲であれば繊維同士の絡合に問題なく風合いの良いニードルパンチ不織布を得ることができる。捲縮数が5山/インチ未満であると、繊維の絡合が不十分であり、カード通過後の積層工程でウェブの素抜けが発生することがある。また、捲縮数が35山/インチを超えると、ネップが発生し易く表面品位低下の原因となる。
後述する乾燥・熱セット工程により得られる主体繊維の捲縮率は5〜40%、好ましくは10〜30%、および残留捲縮率は3〜35%、好ましくは7〜25%であれば、カード工程通過性と表面品位を両立した不織布を得ることができる。捲縮率が5%未満及び残留捲縮率が3%未満のいずれか一方でも該当すると、繊維の絡合が不十分であり、カード通過後の積層工程でウェブの素抜けが発生することがある。また、捲縮率が40%を超えるおよび残留捲縮率が35%を超えるのいずれか一方でも該当すると、短繊維間の凝集力が強くなり過ぎて、ネップが発生し易く表面品位低下の原因となる。
通常、自動車内装用繊維製造に用いられるのは機械捲縮(2次元捲縮、顕在捲縮とも呼ばれる)である。紡糸工程において、異方冷却や、2種の異なる熱収縮率の熱可塑性樹脂を用いる紡糸方法(コンジュゲート紡糸)を用いると、三次元捲縮(立体捲縮、潜在捲縮とも呼ばれる)となり、布団綿のような寝装品に適した比容積の大きな軽いウェブが得られる。本発明に用いられる中空短繊維は、機械捲縮によって得られる捲縮の強い繊維である。
後述する乾燥・熱セット工程により得られる主体繊維の摩擦係数については、平滑な金属板の上に短繊維を開繊、ウェブ化、次いでニードルパンチ化して得た不織布を敷き、その上に、前記不織布で覆った長方形の金属塊を置く。この金属塊を、曳き糸にカドを付けて直角に方向を変え万能試験機を用いて引っ張り、金属塊が水平方向に移動したときの最大荷重(最大静止摩擦力)から静止摩擦係数を、5回の平均値として求める。同じ条件下で、同時に、複数の不織布の平均静止摩擦係数を求め、相対的な数値を求めることによって、精度が高く、工数を削減できる方法を採用した。しかし、この値を標準的なものとするため、不織布作製に用いた短繊維を用いて、JISL1015:2010(8.13)に準拠して、単糸の繊維間静止摩擦係数(10〜20回測定の平均値)を求め、前記不織布の平均静止摩擦係数と単糸の繊維間摩擦係数との相関を求め補正し、繊維間静止摩擦係数とした。このようにして得られた中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数は0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である。中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35以上、かつ中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25以上であると、単糸繊維同士が素抜けることもなく、絡合性に優れカード性が向上すると共に、不織布の伸度の向上およびスケ発生の防止に大いに寄与し得るものであり、中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.50以下、かつ中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.40以下であると、すべりが良くなり(改善し)しわや浮きの発生を効果的に防止し、生産性を大幅に向上(改善)し得る点で好ましい。しかしながら、摩擦係数は主体繊維の製造時の温度や湿度、油剤の種類および量によって変化するので測定には注意が必要である。言い換えれば、摩擦係数の調整(制御)手段としては、主体繊維の製造時の温度や湿度、更には油剤の種類および量によって、調整(制御)することができる。
後述する乾燥・熱セット工程により得られる主体繊維の太さは、紡糸の際の吐出量(g/分)、引き取り速度(巻取り速度)(m/分)およびノズルのホール数、ならびに延伸倍率から求められ、繊維長さ10000m当りのグラム数であるデシテックスによって表すことができる。繊維の太さは、1.0〜20デシテックスであることが好ましく、より好ましくは2.0〜10デシテックスである。1.0デシテックス以上の太さとすると紡糸の際に糸切れの発生を防止でき、その一方20デシテックス以下であると、主体繊維の剛性が過度に強くなるのを防止でき繊維の加工性が向上(改善)し得るものである。
また、後述する乾燥・熱セット工程により得られた主体繊維のカット長(繊維長)は、好ましくは5〜200mm、さらに好ましくは10〜80mmである。主体繊維のカット長(繊維長)が5mm以上であれば繊維同士の絡みが十分に発現し、カーディングなどの操作で連続した繊維の排出を容易に成し得る点で優れており、また主体繊維のカット長(繊維長)が200mm以下であれば繊維の絡みが強くなりすぎるのを効果的に抑制することができ、均一にカーディングすることができる点で優れている。
次に、乾燥・熱セット工程は、加熱炉を用い、延伸の際に付着した水分を除去し、その後、樹脂のガラス転移温度以上、融点以下の温度でエージングすることによって繊維強度を高めることができる。熱セットされた長繊維は、最後に切断機によるカット工程によって短繊維にされ、包装・梱包される。カット長については、上述した。カット工程は、乾燥・熱セット工程のあとでも、延伸・捲縮工程の後でも良い。
繊維油剤としては、脂肪酸エステル型、ポリエーテル型等の合成潤滑油、PEG(ポリエチレングリコール)型、エステル型、アミド型等の非イオン界面活性剤、スルホネート型、ホスフェート型、カルボキシレート型等のアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤など、通常、自動車用繊維油剤として用いられているものが使用できる。繊維への油剤の付着量としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内で、繊維油剤としての特性・機能等を有効に発現し得る範囲で用いればよく、後述する乾燥・熱セット工程により得られる繊維に対して、好ましくは0.01〜1.0%、より好ましくは0.05〜0.5%である。繊維への油剤の付着量が上記範囲であれば、カード性及びパンチング性に優れる点で好ましい。
<ウェブ及びニードルパンチ不織布>
ウェブ及びニードルパンチ不織布は、公知の方法によって製造することができる。
ウェブの製造(混綿及びカード工程)
例えば、上述の主体繊維であるポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維(主体繊維同士)を所定の割合に混綿し(混綿工程)、カード機でカーディングして(カード工程)、短繊維を一定の方向に配列させてウェブを作製する。即ち、本発明の自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブは、前記主体繊維同士が混綿、カーディングされてなるものである。
ニードルパンチ不織布の製造(ニードルパンチ処理工程)
次いで、クロスラッパーを用いてウェブを積層し、所定の目付けに合わせる。その後、ニードルパンチ機でウェブをパンチングし(ニードルパンチ処理工程)、短繊維同士を絡合(詳しくは、三次元的に交絡一体化)させ不織布を得る。即ち、本発明の自動車内装用ニードルパンチ不織布は、前記主体繊維同士を混綿、カーディングしてなる(均一な)ウェブがニードルパンチ処理により三次元的に交絡一体化されてなるものである。ウェブにバインダー繊維が含まれる場合には、バインダー繊維(ポリマー)の融点以上、主体繊維の融点以下の温度で熱処理して、形状が安定した最終製品とすることができる。
混綿する捲縮短繊維の割合は、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10質量%〜90質量%、好ましくは20質量%〜80質量%であり、前記中実捲縮短繊維が90質量%〜10質量%、より好ましくは80質量%〜20質量%である。前記中空捲縮短繊維が10質量%未満である(中実捲縮短繊維が90質量%を超える)と、不織布の軽量化に繋がらず、90質量%を超える(中実捲縮短繊維が10質量%未満である)と、不織布のスケ性の著しい低下に繋がり、好ましくない。また、前記中空捲縮短繊維と前記中実捲縮短繊維がこの範囲にあれば、混綿により顧客が要望する様々な色彩に調色できるようになり、原着繊維の品番数削減や、大量生産によるコストダウンができる。
積層するウェブの量は、不織布のスケ防止、軽量化、強度等の観点から、3〜10枚が好ましく、不織布の目付けは、180〜350g/mが好ましく、200〜350g/mがより好ましく、200〜300g/mがさらに好ましい。不織布の目付けが180g/m未満であると、不織布の目付けムラが大きく、スケ発生の原因となり、かつ表面品位が悪化し、350g/mを超えると、前記中空繊維を用いても、不織布の軽量化に繋がらず好ましくない。本発明のウェブおよびニードルパンチ不織布の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。
本発明のウェブ及び不織布が持つ効果は、用いる主体繊維の組成並びに主体繊維の構造及び特性によって主に支配されるものである。しかし、主体繊維が持つ構造及び特性はウェブ及び不織布の製造工程によって微妙に変化するために、ウェブ及び不織布の構造及び特性だけで特定することはできない。
<自動車内装部品>
本発明に係る自動車内装部品は、上記した本発明のウェブ、不織布、ならびにウェブの製造方法および不織布の製造方法によって得られるものである。本発明によれば、主体繊維として、機械捲縮を付与した熱可塑性ポリエステル中空短繊維及び機械捲縮を付与した熱可塑性ポリエステル中実短繊維を混綿として用いることによって、布団綿として汎用的に用いられている潜在捲縮を付与した中空短繊維に比べ、カード性および収率に優れたウェブ、引き続くニードルパンチ処理により、嵩高性、意匠性および機械的強度・伸度に優れ、かつ樹脂への浸出およびスケがなく、低目付で、軽量性に優れた自動車内装用ニードルパンチ不織布を提供でき、自動車内装部品として利用することによって次世代自動車の軽量化に貢献できる。
以下、本発明の参考例、比較参考例、実施例および比較例により具体的に説明する。なお、各特性値の測定方法は以下の通りである。
A.短繊維の測定方法
(1)単糸繊度(デシテックス)
繊維の糸の太さを表す単位で、10,000m当たりのグラム数である。紡糸の際の吐出量(g/分)、巻取速度(引き取り速度)(m/分)およびノズルのホール数、ならびに延伸倍率から次式によって求めた。中空繊維の場合は、中空率を考慮し計算した。
(2)マイクロスコープ観察から求めた単糸繊度(デシテックス)および中空率
マイクロスコープで単糸の断面積(μm)および中空面積(μm)を測定し、PET樹脂密度を1.38g/cmとして10点の平均から、次式によって単糸繊度を、また単糸の断面積のうち、中空面積の割合から中空率を求めた。
(3)外径
マイクロメーターを用いて、単糸の外径(μm)を測定し、10点の平均から求めた。
(4)カット長(繊維長)
カット工程で得られた短繊維試料を、2箇所からサンプリングし、自然状態(図2、3参照)にしたときの短繊維の長さを測定し、それぞれのサンプリング箇所における試料5個、合計10個の測定値の平均値(mm)として求めた。
(5)強度・伸度
強伸度測定器(オリエンティックSTA−1150、2N)を用い、JISL1013(8.5.1)に準拠して測定した。短繊維から単糸1本を採取し、試料を緩く張った状態で試験機のつまみに取り付ける。掴み間距離20mm、初荷重(5.88mN×デシテックス×0.1)、そのときの伸びをC(mm)とし、引張速度20mm/分で測定を行った。切断時の強さA(cN)、切断時の伸びをB(mm)としたときの引張り強さおよび伸度を次式によって求めた。なお、(3)式に用いるデシテックスは(1)式により求めたものを使用する。
(6)捲縮試験
捲縮率、残留捲縮率及び捲縮弾性率は、単糸の代わりに短繊維束を試験片として用い、JISL1015(8.12)に準じて測定した。幅約4mm、重量約0.1gの短繊維を採取し、精密天秤を用いて正確に秤量し試験片とし、万能試験機(SHIMADZU オートグラフ、ロードセル50N)を用い、10mm/分の速度で引っ張り次式によって求めた。
ここで、Aは初荷重(自重レベルの端部に約0.001mN/デシテックスの荷重)をかけたときの長さ(mm)、Bは4.41mN×デシテックス数の荷重をかけたときの長さ(mm)、Cは荷重を除き、1分間放置後、初荷重をかけたときの長さ(mm)である。
捲縮数は、単糸の代わりに短繊維束を試験片として用い、JISL1015(8.12)に準じて測定した。幅約4mm、重量約0.1gの短繊維を採取し精密天秤を用いて正確に秤量し試験片とし、万能試験機(SHIMADZU オートグラフ、ロードセル50N)を用い、10mm/分の速度で引っ張り、ある程度伸びたところの山数(n個)を数え、次式に従って求めた。
ここで、Aは初荷重(自重レベルの端部に約0.001mN/デシテックスの荷重)をかけたときの長さ(mm)である。
(7)乾熱収縮率
JISL1015(8.12、b)に準拠し、短繊維から単糸1本づつ、10本引き抜き、片方にクリップをつけ、片方を厚紙にテープで固定し、厚紙を壁に固定して単糸長(Amm)をノギスで測る。170℃で10分乾燥させた後、再度糸長(Bmm)を測り、次式によって10個の平均値として求めた。
(8)油分
ハンドカードで短繊維をほぐし綿状にし、170℃で10分間乾燥させる。2.000〜2.020gの綿を正確に秤量(A)し、試験管に詰めて10mlのメタノールに45秒間浸漬し、予め重さを量ったカップ(B)にメタノール液を絞り出す。メタノール液をホットプレートで蒸発させカップの重さ(C)を量り、5点の平均として次式より求めた。
(9)繊維間静止摩擦係数
平滑な金属板の上に短繊維を開繊、ウェブ化及びニードルパンチ化して得た不織布を敷き、その上に、前記不織布で覆った長方形の金属塊を置く。この金属塊を、曳き糸に滑車を付けてカドで直角に方向を変え、万能試験機を用いて引っ張り、金属塊が水平方向に移動したときの最大荷重(最大静止摩擦力)から次式によって静止摩擦係数を求め、同じ操作を5回行い平均の静止摩擦係数を計算する。
同じ条件で、同時に、複数の不織布の平均静止摩擦係数を求め、不織布についての相対的な数値を求める。一方、不織布を作製するのに使用した短繊維を用いて、JISL1015:2010(8.13)に準拠して、単糸の繊維間静止摩擦係数(10〜20回測定の平均値)を求め、前記不織布の平均静止摩擦係数と単糸の繊維間摩擦係数との相関を求め補正し、繊維間静止摩擦係数とした。単糸の繊維間摩擦係数の測定には、高度な技術を要するので、簡便に求めることのできる不織布間摩擦係数との相関により、より短時間に精度の良い、汎用性のある繊維間摩擦係数を求めることができる。
B.ウェブの測定方法
(1)混綿具合
中実短繊維及び中空短繊維を、カード機を用いて開繊し、混綿具合を、当業者であれば、混綿具合の良否は目視だけで十分判定可能であることから、目視で(詳しくは、経験に基づき作成した良否見本との比較により目視で)確認し、良好な場合を○印として下記表3、4、7、9に示す。なお、本実施例を追試する場合には、当該見本に代えて、例えば、実施例1で得られたウェブを良好な場合の見本とし、比較例1で得られたウェブを良好でない見本とすることで、他の実施例、比較例の良否を判断することができる。また、他の実施例、比較例で得られたウェブも良好な場合の見本と良好でない見本に加えていくことで、より精度の高い見本(大量サンプル)を得ることができ、実施例、比較例以外の条件で行ったウェブの混綿具合の良否判定に用いることもできる。
(2)カード性
カード機から出てきた際、シリンダーへの巻きつきや、スカム及びネップの発生、ウェブのつながり具合を、当業者であれば、これらシリンダーへの巻きつきや、スカム及びネップの発生、ウェブのつながり具合の5段階評価は目視だけで十分判定可能であることから、目視で(詳しくは、経験に基づいて作成した5段階見本との比較により目視で)5段階評価を行った。5段階評価は、5:非常に良い、4:やや良い、3:良い、2:悪い、1:非常に悪い、として下記表3、4、7、9に示す。なお、本実施例を追試する場合には、当該見本に代えて、例えば、実施例11で得られたウェブを評価5(非常に良い)の見本とする。同様に実施例10で得られたウェブを評価4(やや良い)の見本とし、実施例3で得られたウェブを評価3(良い)の見本とし、比較例1で得られたウェブを評価2(悪い)の見本とし、比較例9で得られたウェブを評価1(非常に悪い)の見本とする。こうすることで、他の実施例、比較例のウェブの5段階で評価(判断)することができる。また、他の実施例、比較例で得られたウェブも5段階見本に加えていくことで、より精度の高い見本(大量サンプル)を得ることができ、実施例、比較例以外の条件で行ったウェブのカード性の5段階評価の判定に用いることもできる。
(3)ウェブ収率
カード機への短繊維の投入量及び出来上がったウェブの収量を測定し、落綿量及びウェブ収率(%)を求めた。
(4)比容積・圧縮率・回復率
比容積、圧縮率及び回復率の測定は、JISL1097(5.2、5.3法)に準拠して行った。ウェブを床面積20cm×20cmで折り畳み、約40gになるように調整したウェブ試験片を作製し、正確に重さ(W)を量る。得られた試験片にアクリル板(20cm×20cm、267.2g)を載せ、2kgのおもりAを30秒間載せ、次にこのおもりAを除き、30秒間静置する。この操作を3回繰り返し、おもりAを除いて30秒放置後、四隅の高さを測定して、その嵩高さの平均値(h)を求め、次式に従い比容積を計算する。この試験を3個の試験片について行い、その平均のウェブ比容積を求めた。
嵩高さを測定した試験片におもり4kgのおもりBを30秒間載せ、四隅の高さを測り、その平均値(h)を求める。次におもりBを除き、3分放置後、四隅の高さを測り、その平均値(h)を求め、次式に従い圧縮率及び回復率を算出する。この試験を3個の試験片について行い平均値で示した。
C.不織布の測定方法
(1)実目付(目付け)
不織布の端を縦横40cm×40cmにカットし、面積と重さから実目付けを求めた。
(2)不織布の厚さ(嵩高さ)
縦横約5cm×5cmになるように不織布をカットし試験片とし、JISL1913(6.1.1.A法)に準拠して、0.5kPaの圧力をかけ、10秒後にその厚さを測定し、10点の平均値として、不織布の厚さ(mm)を求めた。
(3)不織布の比容積
実目付(g/m)および厚さ(mm)より次式によって不織布の比容積を求めた。
(4)スケ性
ダンボール箱で周辺を囲い、底部に赤色の投光器を置き、上部を半透明のアクリル板で覆い、その上に縦横40cm×40cmの不織布を置き、赤色光を透かして、スケ性を評価した。スケのない部分が赤色、スケのあるところでは、スケの度合いにより赤味がとれてスケの度合いが高い方がより薄く(より薄い黄色に)なっているものを、白黒で表示した図1において、×部分(図中、×印の近傍の実線で囲った部分;スケの度合いが相対的に高い、より白く表示されている部分)が一部でも存在すれば、スケ性×、△部分(図中、△印の近傍の実線で囲った部分;スケの度合いが相対的に低く、若干白く表示されている部分)までに留まれば、スケ性△、○部分(図中、実線で囲った○印の部分;スケがない、或いはスケがほとんどなく、相対的に黒く(ないし灰色で)表示されている部分)のみであれば、スケ性○と評価した。なお、スケのあるところを縦横1cmの大きさに切り取り、スケ性○の最も透過率の少ない部分を透過率0%として、画像解析処理により、縦横1cm内の平均の透過率を求めスケ性の定量的な目安とした。スケ性○:透過率0%から30%、スケ性△:透過率31%から60%、スケ性×:61%から100%。
(5)不織布の強度および伸度
強度および伸度の測定は、万能試験機(SHIMADZU オートグラフ)を用い、JISL1913(6.1.2A、6.3法)に準拠して行った。縦方向(ニードルパンチング方向)および横方向(ニードルパンチング方向に対して垂直方向)につき、それぞれ幅40mmおよび長さ約200mmになるように不織布をカットし、それぞれ5枚の試験片を作製する。試験片に初荷重(試験片が手で引っ張ってたるまない程度)で試験機に150±1mmになるように取り付ける。引張速度100mm/分で試験片が切断するまで荷重を加え、最大荷重時の強度(N/mm)および伸び(%)を測定し、5枚の平均値を用いた。
参考例1ないし5ならびに比較参考例1(中実および中空短繊維の製造)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「NOVAPEX」)をエクストルーダーで混練、次いで表1に示す紡糸設定条件において、230〜285℃で溶融紡糸し、湯槽において表1の延伸倍率で延伸し、次いで押し込みクリンパーを用い、ニップ圧及びスタフィング圧を調整し機械捲縮または潜在捲縮を付与し、乾燥・熱セット後に回転式カッター(切断機)で切断し、表2に示す短繊維を得た。
参考例1は、自動車内装材用の機械捲縮を付与した原着中実短繊維であり、参考例2は自動車内装材用の機械捲縮を付与した中空短繊維であり、参考例3は自動車内装材用の機械捲縮を付与した原着中空短繊維であり、参考例5はPET樹脂の代わりに、廃PETボトルおよび廃PETフィルムから得られた固有粘度0.65のリサイクルPET樹脂を用いた自動車内装材用の機械捲縮を付与した原着中空短繊維であり、比較参考例1は布団綿用の潜在捲縮を付与した中空短繊維であり、参考例4は参考例5と同じリサイクルPET樹脂を用いた機械捲縮を付与した原着中実短繊維である。着色剤としては、含有量1質量%のカーボンブラックを用いた。油剤としては、参考例1ないし5、並びに比較参考例1は自動車内装材用の繊維油剤(PEG型及びエステル型非イオン界面活性剤並びにホスフェート型及びカルボキシレート型アニオン界面活性剤の混合物)を用いた。尚、本参考例等で使用する油剤は、通常用いられている自動車内装材用の繊維油剤であれば、以下のウェブや不織布の性能評価内容に影響を与えるものではないため、他の自動車内装材用の繊維油剤で代替えしてもよい。
また、参考例1ないし5によって得られた機械捲縮を付与した短繊維は、図2のような二次元ジグザグの捲縮形状を示し、比較参考例1によって得られた潜在捲縮を付与した短繊維は、図3のような三次元立体捲縮の形状を示した。
実施例1ないし12ならびに比較例1ないし24(ウェブの製造)
参考例1によって得られた原着中実短繊維及び参考例2によって得られた中空短繊維を、表3に示す不織布目標目付および混率になるように必要量を計量し予備開繊(混綿)してから、表3に示す投入量を決め、カード機にかけ、方向を変えながら3回開繊(カーディング)してウェブを作製した。この際の落綿を計量して収率を求め、混綿具合及びカード性を観察し、また比容積、圧縮率及び回復率を求め、比較例1ないし8並びに実施例1ないし12として表3に示した。
一方、参考例2の代わりに、比較参考例1によって得られた布団綿用の潜在捲縮を付与した中空短繊維を用い、比較例1ないし8並びに実施例1ないし12と同様に実施してウェブを作製し、比較例9ないし24として、その結果を表4に示した。
表3および4の結果より、機械捲縮を付与した中実短繊維に機械捲縮を付与した中空短繊維を加えていくと、比容積及び圧縮率が減少するが、潜在捲縮を付与した中空短繊維を加えていくと、圧縮率はあまり変わらないが、比容積は逆に上昇することがわかった。潜在捲縮を付与した中空短繊維は、比容積が高いので布団綿として優れていることがわかる。また、両者とも、投入量(不織布目標目付)を増やすほどカード性は良好となった。一方、機械捲縮を付与した中空短繊維を用いると、落綿が少なく、収率が高く、カード性及び回復率も良好であり、製品規格の厳しい自動車用途では、落綿を再利用することが難しく、自動車用途に適していることがわかる。
実施例13ないし21、比較例25ないし48および比較参考例2ないし4(不織布の製造)
表3及び4によって得られたウェブを、ニードルルーム(型式NL−380)を用いて、動巾380mm、ストローク75mm、ストローク数:190ストローク/分、ウェブピッチ幅4mm、ニードル数750本、ニードルピッチ:横12.5mm、ピッチ30列、縦10.0mmおよびピッチ25列の条件において、パンチングを行い、不織布を作製し、不織布のスケ性、嵩高性(厚み)、比容積、強度および伸度を測定して、その結果を、比較例25〜48、比較参考例2〜4および実施例13〜21として表5および6に示した。なお、本発明では、上述したように、従来にない高い捲縮性能と中空率とを同時に満足する新規な中空短繊維(機械捲縮付与した中空捲縮短繊維)を実現することで、発明の目的・効果を達成しており、当該機械捲縮付与した中空捲縮短繊維のみを用いた例のうち、実目付(目付け量)が本発明の要件を満足する例は従来例(比較例)ではないため、比較参考例2〜6(表5、8、10参照)としている。
表5および6の結果より、機械捲縮を付与した中実短繊維に機械捲縮を付与した中空短繊維を加えていくと、比容積および縦横強度は増加し、その程度は、潜在捲縮を付与した中空短繊維を加える場合よりも大きいことがわかる。一方、伸度については、潜在捲縮を付与した短繊維に比べ、機械捲縮を付与した中空短繊維の場合には、著しく高く、それぞれの中空短繊維を増やすことによって、機械捲縮を付与した中空短繊維の場合には大きな変化は見られないが、潜在捲縮を付与した短繊維の場合には著しく低下することがわかる。また、目付量によって、スケ性および比容積は大きく変化し、目付量が増えるほどスケ性は良くなるが、比容積は減少し、軽量化とスケ性は相反し、実施例13ないし21は、比較例25ないし51に比べ優れていることがわかる。自動車内装材として不織布を用いる場合には、不織布を引張りながら成形する場合が多く、特に、稜線の会合する頂点を備えた成形品をインモールド成形する際には、局部的なスケが目立つようになり、伸ばしても変化の少ない伸度の大きな不織布が望まれており、本発明が特に優れていることがわかる。即ち、実施例13ないし21では、こうした要望に適う不織布が得られることがわかる。
実施例22ないし27ならびに比較例49および比較参考例5(原着中空捲縮繊維を用いた場合)
実施例4ないし6ならびに比較例3および4において、参考例2の機械捲縮付与した中空短繊維を用いる代わりに、参考例3の機械捲縮付与し、カーボンブラックで着色した原着中空短繊維を用い、実施例4ないし6および比較例3および4に準じて、それぞれウェブおよび不織布の製造を行い、その結果を実施例22ないし27、ならびに比較例49および比較参考例5として、表7および8に示した。
表7および8の結果より、無色の中空短繊維を原着中空短繊維に代えることによって、他の物性低下を伴うことなくスケ性が著しく向上し、軽量化に寄与できることがわかった。
実施例28ないし33ならびに比較例50ないし52および比較参考例6(リサイクルPET樹脂を用いた場合)
参考例1の代わりに参考例4のリサイクルPET樹脂を用いて得られた機械捲縮を付与した原着中実短繊維を用い、単独で作製したウェブを比較例51、および不織布を比較例52とし、実施例22ないし27ならびに比較例49および比較参考例5において、参考例3の代わりに、参考例5のリサイクルPET樹脂を用い、実施例22および27ならびに比較例49および比較参考例5に準じて、それぞれウェブおよび不織布の製造を行い、その結果を実施例28ないし33、ならびに比較例50ないし52および比較参考例6として、表9および10に示した。
表7および8と、表9および10との比較によって、PET樹脂をリサイクルPET樹脂に代えても、ほとんど同様な結果の得られることがわかった。
本発明によって得られたニードルパンチ不織布は、フードカバー、トランスミッショントンネル、オイルフィルター、トランスミッションフィルター、ターボコンプレッサー等のエンジン部、カーマット、フロアー裏地、エアーバッグカバー、シートクッション、ドアー、サイドパネル、天井材、サンルーフ等のインテリア、後部棚、スペアータイヤカバー等のトランクならびに車輪外装テキスタイル、アンダーボディ、排気システム等の外装カバーなどの自動車内装部品などに利用でき次世代自動車の軽量化に寄与できる。

Claims (12)

  1. 繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、前記主体繊維同士が混綿、カーディングされてなり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮の、捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%である自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
  2. 中空捲縮短繊維の単糸の繊維間静的摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間静的摩擦係数が0.25〜0.40である請求項1記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
  3. 前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が20〜80質量%、前記中実捲縮短繊維が80〜20質量%、前記中空率が10〜30%、前記捲縮数が10〜25山/インチ、前記捲縮率が10〜30%、前記残留捲縮率が7〜25%である請求項1および2のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブ。
  4. 繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維同士を混綿、カーディングしてなるウェブがニードルパンチ処理により三次元的に交絡一体化されてなる不織布であって、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮の、捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、かつ前記不織布の目付けが180〜350g/mである自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  5. 中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である請求項4記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  6. 前記主体繊維の、カット長が5〜200mm、繊維の太さが1.0〜20デシテックスである請求項4〜5のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  7. 前記中空捲縮短繊維が20〜80質量%、前記中実捲縮短繊維が80〜20質量%、前記中空率が10〜30%、前記捲縮数が10〜25山/インチ、前記捲縮率が10〜30%、前記残留捲縮率が7〜25%、前記主体繊維の、カット長10〜80mmおよび繊維の太さが2.0〜10デシテックスである請求項4〜6のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  8. 前記主体繊維が原着繊維である請求項4〜7のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  9. 前記前記中空及び/又は中実捲縮短繊維に用いる熱可塑性ポリエステルが、リサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂である特許請求項4〜8のいずれか1項記載の自動車内装用ニードルパンチ不織布。
  10. 繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングにより得られ、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮の、捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40である自動車内装用ニードルパンチ不織布に用いられるウェブの製造方法。
  11. 繊維断面形状が中空率5〜40%の中空断面を有する熱可塑性ポリエステル中空捲縮短繊維および熱可塑性ポリエステル中実捲縮短繊維を主体繊維とし、前記主体繊維同士を混綿し、カーディングによりウェブとし、次いでニードルパンチ処理により得られる、三次元的に交絡一体化してなる不織布の製造方法であって、前記主体繊維の総量100質量%に対して、前記中空捲縮短繊維が10〜90質量%、前記中実捲縮短繊維が90〜10質量%であり、かつ前記主体繊維の捲縮が二次元の機械捲縮であり、前記機械捲縮の、捲縮数が5〜35山/インチ、捲縮率が5〜40%及び残留捲縮率が3〜35%であり、中空捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.35〜0.50であり、中実捲縮短繊維の単糸の繊維間摩擦係数が0.25〜0.40であり、目付けが180〜350g/mある自動車内装用ニードルパンチ不織布の製造方法。
  12. 請求項1〜3のいずれか1項記載のウェブ、請求項4〜9のいずれか1項記載の不織布、ならびに請求項10記載のウェブの製造方法および請求項11記載の不織布の製造方法によって得られる自動車内装部品。
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