JP2005036321A - 熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 - Google Patents
熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005036321A JP2005036321A JP2003196902A JP2003196902A JP2005036321A JP 2005036321 A JP2005036321 A JP 2005036321A JP 2003196902 A JP2003196902 A JP 2003196902A JP 2003196902 A JP2003196902 A JP 2003196902A JP 2005036321 A JP2005036321 A JP 2005036321A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- heat
- fiber
- component
- nonwoven fabric
- conjugate fiber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Laminated Bodies (AREA)
- Multicomponent Fibers (AREA)
- Nonwoven Fabrics (AREA)
Abstract
【課題】他素材との接着性に優れ、かつ不織布製造工程での加工機を汚すことのない熱接着性複合繊維、不織布またはこれらを熱バインダーとして用いた製品(積層体)を提供する。
【解決手段】以下の鞘成分(A)と芯成分(B)からなることを特徴とする熱接着性複合繊維、これを用いた不織布、熱バインダーおよび積層体。
鞘成分(A):熱可塑性樹脂からなる成分。
芯成分(B):不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種を含むビニルモノマー(以下、これらを変性剤という)をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂(b)という)を含む熱可塑性樹脂成分で、変性剤含有率は該複合繊維全体に対して0.025〜1モル/kg。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の鞘成分(A)と芯成分(B)からなることを特徴とする熱接着性複合繊維、これを用いた不織布、熱バインダーおよび積層体。
鞘成分(A):熱可塑性樹脂からなる成分。
芯成分(B):不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種を含むビニルモノマー(以下、これらを変性剤という)をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂(b)という)を含む熱可塑性樹脂成分で、変性剤含有率は該複合繊維全体に対して0.025〜1モル/kg。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、他素材と良好な熱接着性を有する熱接着性複合繊維、不織布またはこれらを熱バインダーとして用いた製品(積層体)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系の複合繊維を用いた製品としては、例えば複合繊維の芯側に高融点成分の結晶性ポリプロピレンを、鞘側に低融点成分のポリエチレンを用い、溶融複合紡糸法にて得られた該複合繊維を熱処理して製造された不織布が知られている。しかし、このような不織布は、自己同士の熱接着性に優れるが、綿布、木材、金属等の他素材との接着性に劣ることが知られている。従って上記のような他素材と接着させる場合には、新たにバインダーを使用する必要がある。
【0003】
また、近年、他素材との接着性向上を狙い、複合繊維の一成分に無水マレイン酸、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸等をグラフト重合させた変性ポリマーを使用した熱接着性複合繊維が提案され、それが高い接着性を有することが報告されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
これら熱接着性複合繊維を用い、不織布とするための熱処理方法は、サクションバンドドライヤーやサクションドライヤー等による熱風接着法と、多数の凸部を持つ加熱されたエンボスロールとフラットロール(平滑ロール)の間にウェブを導入して不織布を得る、いわゆるポイントボンド加工による熱圧着法とに大別できる。特に後者の熱圧着法は熱風接着法に比べ生産性に優れるために、コスト的にも有利である。
【0005】
しかしながら、これら変性ポリマーを使用した熱接着性複合繊維は、不織布に加工する際、変性ポリマーを含まない熱接着性複合繊維と比べ、熱圧着法では金属ロール、熱風接着法ではサクションバンドドライヤーのコンベヤーネットに付着して除去し難いという特性があり、頻繁に掃除が必要となり、連続運転には問題があった。特に、スパンボンド法におけるポイントボンド加工等、高速での連続運転を主とする製造方法では、より大きな問題である。
【0006】
また、繊維の構成が融点差を有する鞘芯型複合繊維であるため、例えば他素材同士を接着させるために該不織布を接着剤に用い、高い熱処理温度で加工を行った場合、低融点成分である鞘側の樹脂が下方に流れ出し、高融点成分である芯側が露出することになる。そのため、他素材と芯側の境界ができることで、上下層での接着性に斑が生じるという現象があった。
【0007】
更にこれらの熱接着性複合繊維及び不織布は、2種類以上の熱可塑性樹脂で構成されている関係上、製造工程中に発生した不良ロット品等を再度樹脂として使用する、いわゆるリサイクルが困難である。その結果、原単位の悪化やゴミの増大による環境悪化の問題があり、これらの問題を改善した熱接着性複合繊維が求められていた。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−054069号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上記問題点が解消された、異質材質(他素材)との熱接着性に優れた熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することにより所期の目的が達成される見通しを得て、本発明を完成するに至った。
(1) 以下の鞘成分(A)と芯成分(B)からなることを特徴とする熱接着性複合繊維。
鞘成分(A):熱可塑性樹脂からなる成分。
芯成分(B):不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種を含むビニルモノマー(以下、これらを変性剤という)をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂(b)という)を含む熱可塑性樹脂成分で、変性剤含有率は該複合繊維全体に対して0.025〜1モル/kg。
(2)芯成分(B)が、鞘成分(A)と同種の熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である前記1項記載の熱接着性複合繊維。
(3) 鞘成分(A)を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である前記1または2項記載の熱接着性複合繊維。
(4) 芯成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(b)が、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性させたものである前記3項記載の熱接着性複合繊維。
(5) 鞘成分(A)を構成するポリオレフィン樹脂が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系二元共重合体、およびプロピレン系三元共重合体から選ばれた少なくとも1種である前記3または4項記載の熱接着性複合繊維。
(6) 変性剤が無水マレイン酸、アクリル酸若しくはメタクリル酸から選ばれた少なくとも1種である前記1〜5のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
(7) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維を用いた繊維集合体。
(8) 繊維集合体がスパンボンド法で得られた長繊維不織布である前記7項記載の繊維集合体。
(9) 繊維集合体がメルトブロー法で得られた不織布である前記7項記載の繊維集合体。
(10) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または前記7〜9のいずれか1項記載の繊維集合体を用いた熱バインダー。
(11) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または前記7〜9いずれか1項記載の繊維集合体と、その他の不織布、フイルム、パルプシート、木板、ガラス板、金属板、編物、及び織物から選ばれた少なくとも1種の物品とからなる積層体。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱接着性複合繊維は、熱接着に関与する変性ポリオレフィン樹脂(b)が芯側に含まれていることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱接着性複合繊維は、それ自体のみで不織布を製造する際の繊維同士の接着は、鞘成分(A)のみで行われる。一方、変性ポリオレフィン樹脂(b)は、芯側に添加されているため、熱圧着法での金属ロール汚れ、熱風接着法でのコンベヤーネット汚れ等の製造工程でのトラブルがなく、安定生産(操業性)に優れている。
【0013】
更に詳しくは、本発明の熱接着性複合繊維は、不織布を製造する時は、変性ポリオレフィン樹脂(b)を含まない鞘成分(A)で接着が行われ、該不織布と他素材とを接着させる2次加工では、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂の融点以上の熱を与えながら圧力をかけることで、鞘側の熱可塑性樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)とが混合一体化され、全ての樹脂が他素材との接着性に寄与し、優れた接着剤(熱バインダー)となる。
【0014】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘成分(A)に用いる熱可塑性樹脂は、上述のように本発明の熱接着性複合繊維のみから不織布を製造する際に鞘成分のみが溶融して接着が可能な成分であれば特に限定されないが、実用的な観点から、ポリオレフィン樹脂が推奨される。
【0015】
本発明の鞘成分(A)がポリオレフィン樹脂である場合、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体のオレフィン系樹脂が用いられる。
【0016】
本発明で鞘成分(A)に用いられるポリエチレンとしては、通常工業的に利用されているポリエチレン樹脂が好ましい。例えば密度が0.910〜0.925g/cm3の低密度ポリエチレン、密度が0.926〜0.940g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.941〜0.980g/cm3の高密度ポリエチレンが挙げられる。なお、ポリエチレンのメルトフローレート(MI:JIS K7210 表1中の条件4に準拠して測定した値)は2〜100g/10分の範囲が好ましい。
【0017】
本発明において鞘成分(A)に用いられるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、若しくはプロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体が例示できる。なお、メルトフローレート(MFR:JIS K7210 表1中の条件14に準拠して測定した値)は2〜150g/10分、融点が120〜165℃のものが好ましい。
【0018】
本発明において鞘成分(A)に用いられる前記プロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体としては、プロピレンを主成分とし、それと少量のエチレン、ブテン−1、ヘキサン−1、オクテン−1、若しくは4−メチルペンテン−1等のαオレフィンとの結晶性共重合体が例示でき、さらに、MFRが2〜150g/10分、融点が120〜158℃の範囲のものが好適に用いられる。具体例としては、プロピレン単位を99〜85重量%とエチレン単位を1〜15重量%含むプロピレンを主体とするプロピレン/エチレンの二元共重合体、プロピレン単位を99〜50重量%とブテン−1単位を1〜50重量%含むプロピレンを主体とするプロピレン/ブテン−1の二元共重合体、あるいはプロピレン単位を84〜98重量%、エチレン単位を1〜10重量%、ブテン−1単位を1〜15重量%含むプロピレン/エチレン/ブテン−1の三元共重合体が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる鞘成分(A)には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤を適宜必要に応じて添加してもよい。
【0020】
本発明の好ましい態様は、芯成分(B)が、鞘成分(A)と同種の熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である場合である。つまり、該熱接着性複合繊維の鞘側と芯側に配する樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂(b)を除く、全てが同種の樹脂である。この場合、上記2次加工において、鞘側の熱可塑性樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)との混合一体化がより効率的に行われる。なお、本発明でいう「同種の樹脂」とは、同一のモノマーからなる樹脂のことをいい、具体的には鞘成分(A)について上に例示した樹脂から同様に選ぶことができるが、全く同一の樹脂を用いてもよく、その場合はさらに好ましい。
【0021】
上記の本発明の好ましい態様では、熱接着性複合繊維は、変性ポリオレフィン樹脂(B)を除く、鞘芯の全ての樹脂が同種の樹脂である為、溶融した際の樹脂の粘性に斑がなく、被着体に対し均一な広がりを見せる。また、その態様では、該熱接着性複合繊維は、同種の原料樹脂で構成されているため、不良ロット等で発生した繊維または不織布をペレットに再生して使用する等、いわゆるリサイクルが可能である。
【0022】
本発明の芯成分(B)中の変性ポリオレフィン樹脂(b)に用いられる変性剤は不飽和カルボン酸、その酸無水物(具体的には無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等から選択された不飽和カルボン酸、若しくはその無水物を挙げることができる)から選ばれた少なくとも1種を必須成分として含むビニルモノマーであり、それ以外のビニルモノマーをも含むことができるものである。それ以外のビニルモノマーとしては、ラジカル重合性に優れた汎用モノマーを使用することができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、或いは同様なアクリル酸エステル等を挙げることができる。これら変性剤の変性ポリオレフィン樹脂(b)全体に対する含有濃度(グラフト量)は0.05〜2モル/kgである。そのうち必須成分(不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸無水物)の変性ポリオレフィン樹脂(b)全体に対するの含有濃度(グラフト量)は、0.03〜2モル/kgである。変性ポリオレフィン中のカルボン酸若しくは不飽和カルボン酸無水物は、接着性に直接寄与する成分であり、他のビニルモノマーは酸のポリマー中への均一分散を助けることによって、接着性を側面から助けることと共に、極性の乏しいポリオレフィンに極性を付与し、セルロース系繊維との親和性を向上して、均一分散の向上に寄与するものでもある。
【0023】
これらのビニルモノマーを主鎖ポリマーにグラフト重合するのは通常の方法で行なうことができ、ラジカル開始剤を用いて、ビニルモノマーを混合してランダム共重合体からなる側鎖を、若しくは異種モノマーを順次重合することによるブロック共重合体からなる側鎖を導入することができる。
【0024】
ポリオレフィン中のグラフト重合された変性剤の量(上記グラフト量、モル/kgで表す)は、赤外吸収スペクトルを測定することで算出することができる。例えば、変性ポリオレフィンが、ポリエチレンを無水マレイン酸でグラフト重合させた変性ポリエチレンの場合には、以下の操作によって、グラフト重合された変性剤の量を測定することができる。
【0025】
変性ポリエチレンを沸騰キシレンに溶解させ、その溶解液を3倍量の常温のアセトンに注ぎ、充分に冷却する。この液の濾過物を更にアセトンで洗浄し、真空乾燥することで、未反応の無水マレイン酸が除去された粉末状の変性ポリエチレンが得られる。この粉末をフィルム成形し、それを用いてフーリエ変換赤外吸収スペクトルを測定する。同様に未反応無水マレイン酸除去前の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、それらの特性吸収帯(無水マレイン酸の場合はカルボニル基のピーク)のピーク強度の比を求めることにより、無水マレイン酸のグラフト量が算出できる。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂(b)の主鎖ポリマーは、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン−1等が用いられる。これらのポリマーの中では、融点範囲、グラフト反応の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましい。より好ましくは、本発明で用いられる鞘成分(A)と同一のモノマーを主成分として含んでいる熱可塑性樹脂を主鎖ポリマーとしたものが、溶融後に均一分散し易く、接着剤としての効果がより発揮される。
【0027】
変性ポリオレフィン樹脂(b)は、単一の変性ポリオレフィンでも、変性ポリオレフィンの2種以上の混合物でも用いることができる。異種ポリマーの混合物であった場合にもポリマー中の変性剤の含有濃度(グラフト量)が0.05〜2モル/kgの範囲に入っていれば良い。
【0028】
本発明において、芯成分(B)が、鞘成分(A)を構成する熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である場合、芯成分(B)における熱可塑性樹脂(A)と変性ポリオレフィン樹脂(b)の配合比は特に限定はないが、複合繊維全体に含まれる変性剤の含有濃度が0.025〜1モル/kgの範囲になるような配合比を用いれば良い。
【0029】
本発明のさらに好ましい別の態様として、芯成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(b)が、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性させたものである場合を例示することができる。この場合、芯成分(B)が該変性ポリオレフィン樹脂(b)のみからなっていてもよい。
【0030】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘側成分と芯側成分との容積割合(繊維断面を採用した場合にはその断面の面積割合に該当する=複合比)は、通常、鞘側成分:芯側成分の比率で5:95〜70:30、好ましくは10:90〜60:40の範囲が用いられる。しかし、鞘側成分の複合比は、不織布などに加工する際、芯成分が表面に露出して、加工機を汚すことがない限り上記範囲より少なくてもよく、また、他素材との接着力が低下しない限り上記範囲より多くてもよい。
【0031】
本発明で用いられる熱接着性複合繊維を用いた繊維集合体としては、短繊維あるいは長繊維からなる繊維集合体が挙げられる。短繊維の製造方法としては、特に限定はないが、複合繊維の場合、鞘芯型、偏心鞘芯型、海島型、芯成分多層型、芯成分もしくは海成分が異形型等の断面になる紡糸口金を用い、公知の複合紡糸法により紡糸を行い、未延伸の繊維を得、これを延伸し、さらに捲縮を付与し、適当な長さに繊維をカットする方法が例示できる。なお、繊維の複合形態は、寸法安定性に優れることから同心型が好ましい。また、前記短繊維の製造中間体である延伸された繊維を用い、これに捲縮を付与せず、ストレートカットした繊維(チョップ)や、溶融紡出された溶融ポリマーを高温の高圧空気流によりブローし、細化し、移動する捕集面上に捕集、堆積させてウェブとする、公知のメルトブロー法で得られた繊維の製造法も、短繊維の製造法の代表として挙げられる。(メルトブロー法で得られる繊維は、現在では長繊維として分類されることもある。)
【0032】
一方、長繊維の製造方法としては、特に限定はないが、複合繊維の形態を得る場合、鞘芯型、偏心鞘芯型、海島型、芯成分多層型、芯成分もしくは海成分が異形型等の断面となる紡糸口金を用い、公知のスパンボンド法により製造することができる。ただし、短繊維ならびに長繊維の繊維断面は、芯成分を鞘成分が覆う形態であれば、繊維形状については特に限定はない。要は、鞘芯形態がいかように異なっても芯成分が繊維表面に露出することなく、鞘成分によって被膜された構造となることで目的を達成できるのである。
【0033】
本発明の熱接着性複合繊維あるいはそれを用いた上記の繊維集合体を不織布とするための熱処理方法は、サクションバンドドライヤーやサクションドライヤー等による熱風接着法と、多数の凸部を持つ加熱されたエンボスロールとフラットロール(平滑ロール)の間にウェブを導入して不織布を得る、いわゆるポイントボンド加工による熱圧着法に大別できる。熱圧着する融着区域の面積(点熱圧着面積率)は不織布総面積に対し、4〜40%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜30%である。融着区域の面積が4〜40%の範囲であると不織布強度、柔軟性や通気性の点で望ましいものとなる。
【0034】
エンボスロールの凸部形状には、様々な形状に彫刻されたものが使用できる。例えば凸部先端面の平面形状が円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、菱形、三角形、六角形等様々な形状のものが使用できる。
【0035】
本発明の熱接着性複合繊維を構成する繊維の繊度は、特に制限するものではなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じて適宜に選択すればよい。例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、ハップ材などで代表される衛生材料に用いる場合には、風合いや柔軟性の点で、0.01〜11dtexが好ましい。
【0036】
本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布の目付も特に限定はなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じた目付の不織布とすればよく、一般的には10〜150g/m2の範囲であるが、好ましくは10〜50g/m2の範囲が用いられる。特に衛生材料に用いる場合には10〜30g/m2の範囲が好ましい。
【0037】
更に本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布は、他のシートを積層し、複合化不織布(積層シートという場合もある)とすることができる。シートとしては、編織物、不織布、繊維集合体、発泡ウレタン、フィルム、紙状物、羊毛成形体などが例示でき、好ましくは官能基を有するもので、より好ましくはOH基を有する他素材などが例示でき、それぞれの機能を維持することができる。例えば、熱接着性複合繊維単独あるいは親水性繊維と熱接着性複合繊維との混合からなる不織布を積層してもよい。シート以外に金属板、木板、プラスチック板等と積層(ラミネート)することもできる。これらの積層物は、バインダー付の手芸用材料、衣料用補修材、障子紙、壁紙、インテリアおよび建材用表面材料などとして適している。
【0038】
本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布を熱バインダーとして使用する方法としては、次のような例が挙げられる。例えば、衣料関係では、前記不織布をスラックスやスカートのプリーツライン(折り目)にセッティングして、アイロンや熱プレス処理を行なうことでプリーツラインをキープすることができる。建材関係では、天然銘木(ナラ、ケヤキ、チーク、ローズウッド)の0.2〜0.6mm厚スライスの表面化粧板と、合板、繊維板などとの貼り合わせ用バインダーとしてそれらの間に前記不織布を置き、熱プレスや熱風ドライヤー処理を行うことで、突き板やフラッシュパネルなどを製造することができる。この他にも各種基材の接着に優れる効果を発揮するが、該不織布は、蜘蛛の巣状の熱バインダーであるため、フィルム状バインダーや液状バインダーと比較し、接着剤の染み出しや空気膨れ、風合いを損ねることがなく、美しく仕上ることができる。
【0039】
以下、本発明の熱接着性複合繊維の製造方法について一般的製糸方法を用いた場合で説明する。原料の樹脂としては、例えば、鞘成分(A)/芯成分(B)の熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン、芯成分に添加する変性ポリオレフィン樹脂(b)として、無水マレイン酸と高密度ポリエチレンとを混合してグラフト重合した樹脂を用いる。これらの樹脂を、鞘芯型複合紡糸口金を備えた、一般的な熱溶融紡糸機により紡糸する。このとき、口金直下において、クエンチ装置の送風によって、吐出する半溶融状態の樹脂を冷却し、固化させ、未延伸状態の熱接着性複合繊維(以下、未延伸糸という。)を製造する。このとき、必要に応じて表面処理剤を付着してもよい。溶融した樹脂の吐出量及び未延伸糸の引取速度を任意に設定し、目標繊度に対して1.1〜5倍程度の繊維径の未延伸糸とする。得られた未延伸糸は一般的な延伸機で延伸することで延伸糸(延伸加工を施しているが、捲縮加工を施していない状態の繊維)とすることができる。通常の場合、30〜120℃に加熱した延伸ロールにおいて、未延伸糸の入り口側と、その出口側ロールの速度比が1:1.1〜1:5の範囲となるように延伸処理を施す。必要に応じて、延伸処理によって得られた延伸糸にタッチロールやスプレー等で表面処理剤(油剤)を付着した後、ボックス型の捲縮加工機で捲縮を付与する。捲縮を付与された延伸糸を乾燥機で、50〜120℃の温度により乾燥し、用途に合わせて任意の繊維長に押し切りカッターで切断して使用する。このようにして得られた熱接着性複合繊維を、一般的に知られるカーディング法、エアレイド法、抄紙法等の方法でウェブとして、得られたウェブを一般的に知られる熱圧着法、熱風接着法、高圧水流法、ニードルパンチ法または超音波接着法等の加工法で不織布としてもよく、さらにこれらを組み合わせてもよい。
【0040】
以下、本発明の熱接着性複合繊維を製造する方法について、スパンボンド法を例にして説明する。原料の樹脂としては、例えば、鞘成分(A)/芯成分(B)の熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン、芯成分(B)に添加する変性ポリオレフィン樹脂(b)として、無水マレイン酸と高密度ポリエチレンとを混合してグラフト重合した樹脂を用いる。2機の押出機を有する汎用の複合スパンボンド紡糸機を使用し、それぞれの押出機にそれぞれの樹脂を投入し、高温に保温した複合紡糸口金から溶融樹脂を長繊維として吐出させる。吐出した長繊維群をエアサッカーに導入して牽引延伸し、続いてエアサッカーから長繊維群を排出させ、コンベヤー上に捕集する。このときサクションコンベヤー上に、直接、長繊維ウェブとして長繊維群を捕集する方法や、コンベヤー上に捕集する前に開繊し、その後、捕集する方法がある。開繊する方法としては、例えば長繊維群の排出の途中で一対の振動する羽根状物(フラップ)の間に長繊維群を通過させる方法、長繊維群を反射板等に衝突させる方法またはコロナ帯電法により長繊維群を帯電させる方法が挙げられる。捕集した長繊維ウェブを、サクションコンベヤーで搬送し、熱処理加工を施す。熱処理加工としては、ポイントボンド加工が代表的である。
【0041】
以下、本発明に用いられる熱接着性複合繊維を製造する方法について、メルトブロー法を例にして説明する。2機の押出機を有する汎用の複合メルトブロー紡糸機を使用し、スパンボンド法と同様に、樹脂をそれぞれの押出機に投入し、高温に保温された、吐出孔が横一列に並んだ複合メルトブロー紡糸口金より吐出させ、吐出孔の両側より高温、高速の熱風を吹き付けることで、細繊化された短繊維群をサクションコンベヤーやサクションドラム上に短繊維ウェブとして捕集する。メルトブロー法で得られるウェブは、熱融着しているので、ウェブの状態でも取扱い上は問題ないレベルの強度を持つ。そのため、熱加工せずにそのまま使用することができる。しかし、用途に応じて、スパンボンド法と同様に、さらにポイントボンド加工を施してもよい。
【0042】
熱接着性複合繊維の製造方法のなかでも、特にスパンボンド法は引張強度等の機械的物性に優れた不織布を容易に得られるという特徴をもつ。また、スパンボンド法やメルトブロー法では、溶融紡糸して得られる繊維をそのまま開繊及び集積して不織布へと加工できるので、生産性は非常に優れ、安価に製造でき好ましい。さらに、スパンボンド法やメルトブロー法を用いることで、不織布と他素材とを接着させるときに、接着力を低下させる恐れのある表面処理剤(油剤)を使用せずに不織布を製造することができる。このため、表面処理を必要とする一般的紡糸方法により得られた不織布と比較して、他素材との接着力に優れる。
【0043】
また、スパンボンド法で得られたウェブと、メルトブロー法で得られたウェブとを積層し、ポイントボンド加工等で接合した不織布の積層物も本発明の製品に挙げられる。積層物としては、例えば、SM(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層物)、SMS(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層物)、SMMS(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層物)等が挙げられる。これらの他にも、スパンボンド法やメルトブロー法による不織布と、一般的紡糸法により得られる熱接着性繊維をカーディング法、エアレイド法、抄紙法等との積層した積層物も利用できる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらになんら限定されるものではない。なお実施例、比較例における用語と物性の測定方法は以下の通りである。なお、熱接着性複合繊維を用い、不織布に加工する方法として、加工機の汚れが顕著に現れ易い、スパンボンド法によるポイントボンド加工に統一して行った。
【0045】
(1)熱可塑性樹脂の融点
MP(℃):JIS K 7122に準拠して測定。
【0046】
(2)連続運転性能
スパンボンド法の不織布製造工程における、3時間の連続運転を行なった後のエンボスロール及びフラットロール汚れの状況を確認。汚れが無い場合を○、軽度の汚れがある場合を△、運転に支障が出る汚れは×とする。
【0047】
(3)他素材との接着強度(剥離強度)
各実施例、比較例で得られた試料と被接着試料(他素材)とをそれぞれ10cm×5cmの大きさに切断した。被接着試料2枚の間に試料を挟み、四隅が揃うように重ね合わせ、その重ね合わせた試料の短辺方向、つまり幅方向に細長いヒートシールを施す(ヒートシール面積1cm×5cm)。ヒートシール装置として”ヒートシールテスター TP−701”(テスター産業株式会社製)を用い、ヒートシール条件は、温度160℃(上下とも)、圧力29.4×104Pa、加圧時間5秒とした。この方法で得られた引っ張り試験用の接着試料を、ヒートシールを施した側の他辺の短辺側から開き、被接着試料のそれぞれの端辺を10cm間隔に設定したテンシロン引張試験機”ROM−100”(株式会社オリエンテック製)のチャック間に縒れなどが生じないように固定した。剥離強さの測定は引っ張り速度100mm/分で測定し、剥離強度の計算方法はJIS L1086−1983に準拠した。
【0048】
実施例、比較例に用いた、熱可塑性樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂、不織布の製造条件について表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に記載の不織布は、スパンボンド法にて作製した。具体的には、表1記載の条件により、2機の押出機にそれぞれの樹脂を投入し、同心鞘芯型の断面になる紡糸口金を用い、紡糸口金から吐出した複合長繊維群をエアーサッカーに導入して牽引延伸し、3.3dtexの長繊維群を得、続いて、エアーサッカーより排出された前記長繊維群を、帯電装置により同電荷を付与せしめ帯電させた後、反射板に衝突させて開繊し、開繊した長繊維群を裏面に吸引装置を設けた無端ネット状コンベヤー上に、長繊維ウェブとして捕集し、線圧80N/mm、圧着面積率15%のエンボスロール(凸部)/フラットロールでポイントボンド加工し、長繊維不織布を得た。
【0051】
表1に示した製造条件に於ける、連続運転性能と、得られた不織布を用いて、他素材との接着強度(剥離強度)を測定した。得られた結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から明らかな通り、本発明の熱接着性複合繊維は、長繊維不織布を得る際の、ポイントボンド加工において、エンボスロール/フラットロールの汚れが無く、連続運転性能に優れている。また、他素材同士を接着させる接着剤としての性能に優れることも、明らかである。
【0054】
比較例1は、変性ポリオレフィンを使用していないため、連続運転性能には優れるが、他素材同士を接着させる接着性は発現せず、比較例2は、連続運転性能において、3時間の連続運転後にはフラットロールに汚れが付き始めており、これ以上の連続運転に支障がある。比較例3、4は、3時間の連続運転後にはエンボスロール及びフラットロールの汚れが酷く、これ以上の連続運転は、ロール巻き付きが起こる可能性が非常に高く無理である。また、比較例2〜4は、実施例の同変性剤含有量品と比べ、低い接着性であった。比較例5は、鞘側と芯側に同じ樹脂を用いたため、実施例と同様に優れた接着性を示すが、3時間の連続運転後にはエンボスロール及びフラットロールの汚れが酷く、これ以上の連続運転は、ロール巻き付きが起こる可能性が非常に高く無理である。
【0055】
【本発明の効果】
本発明の熱接着性複合繊維及び不織布は、他素材と良好な接着性を有する。また、変性ポリマーが、芯側に添加されているため、不織布製造工程での加工機の汚れが無く、連続運転が可能である。特に繊維中の熱可塑性樹脂が同種の樹脂である場合は、製造工程中に発生した不良ロット等をリサイクルすることが可能であり、安価に製品を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、他素材と良好な熱接着性を有する熱接着性複合繊維、不織布またはこれらを熱バインダーとして用いた製品(積層体)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系の複合繊維を用いた製品としては、例えば複合繊維の芯側に高融点成分の結晶性ポリプロピレンを、鞘側に低融点成分のポリエチレンを用い、溶融複合紡糸法にて得られた該複合繊維を熱処理して製造された不織布が知られている。しかし、このような不織布は、自己同士の熱接着性に優れるが、綿布、木材、金属等の他素材との接着性に劣ることが知られている。従って上記のような他素材と接着させる場合には、新たにバインダーを使用する必要がある。
【0003】
また、近年、他素材との接着性向上を狙い、複合繊維の一成分に無水マレイン酸、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸等をグラフト重合させた変性ポリマーを使用した熱接着性複合繊維が提案され、それが高い接着性を有することが報告されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
これら熱接着性複合繊維を用い、不織布とするための熱処理方法は、サクションバンドドライヤーやサクションドライヤー等による熱風接着法と、多数の凸部を持つ加熱されたエンボスロールとフラットロール(平滑ロール)の間にウェブを導入して不織布を得る、いわゆるポイントボンド加工による熱圧着法とに大別できる。特に後者の熱圧着法は熱風接着法に比べ生産性に優れるために、コスト的にも有利である。
【0005】
しかしながら、これら変性ポリマーを使用した熱接着性複合繊維は、不織布に加工する際、変性ポリマーを含まない熱接着性複合繊維と比べ、熱圧着法では金属ロール、熱風接着法ではサクションバンドドライヤーのコンベヤーネットに付着して除去し難いという特性があり、頻繁に掃除が必要となり、連続運転には問題があった。特に、スパンボンド法におけるポイントボンド加工等、高速での連続運転を主とする製造方法では、より大きな問題である。
【0006】
また、繊維の構成が融点差を有する鞘芯型複合繊維であるため、例えば他素材同士を接着させるために該不織布を接着剤に用い、高い熱処理温度で加工を行った場合、低融点成分である鞘側の樹脂が下方に流れ出し、高融点成分である芯側が露出することになる。そのため、他素材と芯側の境界ができることで、上下層での接着性に斑が生じるという現象があった。
【0007】
更にこれらの熱接着性複合繊維及び不織布は、2種類以上の熱可塑性樹脂で構成されている関係上、製造工程中に発生した不良ロット品等を再度樹脂として使用する、いわゆるリサイクルが困難である。その結果、原単位の悪化やゴミの増大による環境悪化の問題があり、これらの問題を改善した熱接着性複合繊維が求められていた。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−054069号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上記問題点が解消された、異質材質(他素材)との熱接着性に優れた熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することにより所期の目的が達成される見通しを得て、本発明を完成するに至った。
(1) 以下の鞘成分(A)と芯成分(B)からなることを特徴とする熱接着性複合繊維。
鞘成分(A):熱可塑性樹脂からなる成分。
芯成分(B):不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種を含むビニルモノマー(以下、これらを変性剤という)をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂(b)という)を含む熱可塑性樹脂成分で、変性剤含有率は該複合繊維全体に対して0.025〜1モル/kg。
(2)芯成分(B)が、鞘成分(A)と同種の熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である前記1項記載の熱接着性複合繊維。
(3) 鞘成分(A)を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である前記1または2項記載の熱接着性複合繊維。
(4) 芯成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(b)が、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性させたものである前記3項記載の熱接着性複合繊維。
(5) 鞘成分(A)を構成するポリオレフィン樹脂が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系二元共重合体、およびプロピレン系三元共重合体から選ばれた少なくとも1種である前記3または4項記載の熱接着性複合繊維。
(6) 変性剤が無水マレイン酸、アクリル酸若しくはメタクリル酸から選ばれた少なくとも1種である前記1〜5のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
(7) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維を用いた繊維集合体。
(8) 繊維集合体がスパンボンド法で得られた長繊維不織布である前記7項記載の繊維集合体。
(9) 繊維集合体がメルトブロー法で得られた不織布である前記7項記載の繊維集合体。
(10) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または前記7〜9のいずれか1項記載の繊維集合体を用いた熱バインダー。
(11) 前記1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または前記7〜9いずれか1項記載の繊維集合体と、その他の不織布、フイルム、パルプシート、木板、ガラス板、金属板、編物、及び織物から選ばれた少なくとも1種の物品とからなる積層体。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱接着性複合繊維は、熱接着に関与する変性ポリオレフィン樹脂(b)が芯側に含まれていることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱接着性複合繊維は、それ自体のみで不織布を製造する際の繊維同士の接着は、鞘成分(A)のみで行われる。一方、変性ポリオレフィン樹脂(b)は、芯側に添加されているため、熱圧着法での金属ロール汚れ、熱風接着法でのコンベヤーネット汚れ等の製造工程でのトラブルがなく、安定生産(操業性)に優れている。
【0013】
更に詳しくは、本発明の熱接着性複合繊維は、不織布を製造する時は、変性ポリオレフィン樹脂(b)を含まない鞘成分(A)で接着が行われ、該不織布と他素材とを接着させる2次加工では、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂の融点以上の熱を与えながら圧力をかけることで、鞘側の熱可塑性樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)とが混合一体化され、全ての樹脂が他素材との接着性に寄与し、優れた接着剤(熱バインダー)となる。
【0014】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘成分(A)に用いる熱可塑性樹脂は、上述のように本発明の熱接着性複合繊維のみから不織布を製造する際に鞘成分のみが溶融して接着が可能な成分であれば特に限定されないが、実用的な観点から、ポリオレフィン樹脂が推奨される。
【0015】
本発明の鞘成分(A)がポリオレフィン樹脂である場合、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体のオレフィン系樹脂が用いられる。
【0016】
本発明で鞘成分(A)に用いられるポリエチレンとしては、通常工業的に利用されているポリエチレン樹脂が好ましい。例えば密度が0.910〜0.925g/cm3の低密度ポリエチレン、密度が0.926〜0.940g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.941〜0.980g/cm3の高密度ポリエチレンが挙げられる。なお、ポリエチレンのメルトフローレート(MI:JIS K7210 表1中の条件4に準拠して測定した値)は2〜100g/10分の範囲が好ましい。
【0017】
本発明において鞘成分(A)に用いられるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、若しくはプロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体が例示できる。なお、メルトフローレート(MFR:JIS K7210 表1中の条件14に準拠して測定した値)は2〜150g/10分、融点が120〜165℃のものが好ましい。
【0018】
本発明において鞘成分(A)に用いられる前記プロピレン系二元共重合体及びプロピレン系三元共重合体としては、プロピレンを主成分とし、それと少量のエチレン、ブテン−1、ヘキサン−1、オクテン−1、若しくは4−メチルペンテン−1等のαオレフィンとの結晶性共重合体が例示でき、さらに、MFRが2〜150g/10分、融点が120〜158℃の範囲のものが好適に用いられる。具体例としては、プロピレン単位を99〜85重量%とエチレン単位を1〜15重量%含むプロピレンを主体とするプロピレン/エチレンの二元共重合体、プロピレン単位を99〜50重量%とブテン−1単位を1〜50重量%含むプロピレンを主体とするプロピレン/ブテン−1の二元共重合体、あるいはプロピレン単位を84〜98重量%、エチレン単位を1〜10重量%、ブテン−1単位を1〜15重量%含むプロピレン/エチレン/ブテン−1の三元共重合体が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる鞘成分(A)には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤を適宜必要に応じて添加してもよい。
【0020】
本発明の好ましい態様は、芯成分(B)が、鞘成分(A)と同種の熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である場合である。つまり、該熱接着性複合繊維の鞘側と芯側に配する樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂(b)を除く、全てが同種の樹脂である。この場合、上記2次加工において、鞘側の熱可塑性樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)との混合一体化がより効率的に行われる。なお、本発明でいう「同種の樹脂」とは、同一のモノマーからなる樹脂のことをいい、具体的には鞘成分(A)について上に例示した樹脂から同様に選ぶことができるが、全く同一の樹脂を用いてもよく、その場合はさらに好ましい。
【0021】
上記の本発明の好ましい態様では、熱接着性複合繊維は、変性ポリオレフィン樹脂(B)を除く、鞘芯の全ての樹脂が同種の樹脂である為、溶融した際の樹脂の粘性に斑がなく、被着体に対し均一な広がりを見せる。また、その態様では、該熱接着性複合繊維は、同種の原料樹脂で構成されているため、不良ロット等で発生した繊維または不織布をペレットに再生して使用する等、いわゆるリサイクルが可能である。
【0022】
本発明の芯成分(B)中の変性ポリオレフィン樹脂(b)に用いられる変性剤は不飽和カルボン酸、その酸無水物(具体的には無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等から選択された不飽和カルボン酸、若しくはその無水物を挙げることができる)から選ばれた少なくとも1種を必須成分として含むビニルモノマーであり、それ以外のビニルモノマーをも含むことができるものである。それ以外のビニルモノマーとしては、ラジカル重合性に優れた汎用モノマーを使用することができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、或いは同様なアクリル酸エステル等を挙げることができる。これら変性剤の変性ポリオレフィン樹脂(b)全体に対する含有濃度(グラフト量)は0.05〜2モル/kgである。そのうち必須成分(不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸無水物)の変性ポリオレフィン樹脂(b)全体に対するの含有濃度(グラフト量)は、0.03〜2モル/kgである。変性ポリオレフィン中のカルボン酸若しくは不飽和カルボン酸無水物は、接着性に直接寄与する成分であり、他のビニルモノマーは酸のポリマー中への均一分散を助けることによって、接着性を側面から助けることと共に、極性の乏しいポリオレフィンに極性を付与し、セルロース系繊維との親和性を向上して、均一分散の向上に寄与するものでもある。
【0023】
これらのビニルモノマーを主鎖ポリマーにグラフト重合するのは通常の方法で行なうことができ、ラジカル開始剤を用いて、ビニルモノマーを混合してランダム共重合体からなる側鎖を、若しくは異種モノマーを順次重合することによるブロック共重合体からなる側鎖を導入することができる。
【0024】
ポリオレフィン中のグラフト重合された変性剤の量(上記グラフト量、モル/kgで表す)は、赤外吸収スペクトルを測定することで算出することができる。例えば、変性ポリオレフィンが、ポリエチレンを無水マレイン酸でグラフト重合させた変性ポリエチレンの場合には、以下の操作によって、グラフト重合された変性剤の量を測定することができる。
【0025】
変性ポリエチレンを沸騰キシレンに溶解させ、その溶解液を3倍量の常温のアセトンに注ぎ、充分に冷却する。この液の濾過物を更にアセトンで洗浄し、真空乾燥することで、未反応の無水マレイン酸が除去された粉末状の変性ポリエチレンが得られる。この粉末をフィルム成形し、それを用いてフーリエ変換赤外吸収スペクトルを測定する。同様に未反応無水マレイン酸除去前の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、それらの特性吸収帯(無水マレイン酸の場合はカルボニル基のピーク)のピーク強度の比を求めることにより、無水マレイン酸のグラフト量が算出できる。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂(b)の主鎖ポリマーは、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン−1等が用いられる。これらのポリマーの中では、融点範囲、グラフト反応の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましい。より好ましくは、本発明で用いられる鞘成分(A)と同一のモノマーを主成分として含んでいる熱可塑性樹脂を主鎖ポリマーとしたものが、溶融後に均一分散し易く、接着剤としての効果がより発揮される。
【0027】
変性ポリオレフィン樹脂(b)は、単一の変性ポリオレフィンでも、変性ポリオレフィンの2種以上の混合物でも用いることができる。異種ポリマーの混合物であった場合にもポリマー中の変性剤の含有濃度(グラフト量)が0.05〜2モル/kgの範囲に入っていれば良い。
【0028】
本発明において、芯成分(B)が、鞘成分(A)を構成する熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である場合、芯成分(B)における熱可塑性樹脂(A)と変性ポリオレフィン樹脂(b)の配合比は特に限定はないが、複合繊維全体に含まれる変性剤の含有濃度が0.025〜1モル/kgの範囲になるような配合比を用いれば良い。
【0029】
本発明のさらに好ましい別の態様として、芯成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(b)が、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性させたものである場合を例示することができる。この場合、芯成分(B)が該変性ポリオレフィン樹脂(b)のみからなっていてもよい。
【0030】
本発明の熱接着性複合繊維の鞘側成分と芯側成分との容積割合(繊維断面を採用した場合にはその断面の面積割合に該当する=複合比)は、通常、鞘側成分:芯側成分の比率で5:95〜70:30、好ましくは10:90〜60:40の範囲が用いられる。しかし、鞘側成分の複合比は、不織布などに加工する際、芯成分が表面に露出して、加工機を汚すことがない限り上記範囲より少なくてもよく、また、他素材との接着力が低下しない限り上記範囲より多くてもよい。
【0031】
本発明で用いられる熱接着性複合繊維を用いた繊維集合体としては、短繊維あるいは長繊維からなる繊維集合体が挙げられる。短繊維の製造方法としては、特に限定はないが、複合繊維の場合、鞘芯型、偏心鞘芯型、海島型、芯成分多層型、芯成分もしくは海成分が異形型等の断面になる紡糸口金を用い、公知の複合紡糸法により紡糸を行い、未延伸の繊維を得、これを延伸し、さらに捲縮を付与し、適当な長さに繊維をカットする方法が例示できる。なお、繊維の複合形態は、寸法安定性に優れることから同心型が好ましい。また、前記短繊維の製造中間体である延伸された繊維を用い、これに捲縮を付与せず、ストレートカットした繊維(チョップ)や、溶融紡出された溶融ポリマーを高温の高圧空気流によりブローし、細化し、移動する捕集面上に捕集、堆積させてウェブとする、公知のメルトブロー法で得られた繊維の製造法も、短繊維の製造法の代表として挙げられる。(メルトブロー法で得られる繊維は、現在では長繊維として分類されることもある。)
【0032】
一方、長繊維の製造方法としては、特に限定はないが、複合繊維の形態を得る場合、鞘芯型、偏心鞘芯型、海島型、芯成分多層型、芯成分もしくは海成分が異形型等の断面となる紡糸口金を用い、公知のスパンボンド法により製造することができる。ただし、短繊維ならびに長繊維の繊維断面は、芯成分を鞘成分が覆う形態であれば、繊維形状については特に限定はない。要は、鞘芯形態がいかように異なっても芯成分が繊維表面に露出することなく、鞘成分によって被膜された構造となることで目的を達成できるのである。
【0033】
本発明の熱接着性複合繊維あるいはそれを用いた上記の繊維集合体を不織布とするための熱処理方法は、サクションバンドドライヤーやサクションドライヤー等による熱風接着法と、多数の凸部を持つ加熱されたエンボスロールとフラットロール(平滑ロール)の間にウェブを導入して不織布を得る、いわゆるポイントボンド加工による熱圧着法に大別できる。熱圧着する融着区域の面積(点熱圧着面積率)は不織布総面積に対し、4〜40%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜30%である。融着区域の面積が4〜40%の範囲であると不織布強度、柔軟性や通気性の点で望ましいものとなる。
【0034】
エンボスロールの凸部形状には、様々な形状に彫刻されたものが使用できる。例えば凸部先端面の平面形状が円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、菱形、三角形、六角形等様々な形状のものが使用できる。
【0035】
本発明の熱接着性複合繊維を構成する繊維の繊度は、特に制限するものではなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じて適宜に選択すればよい。例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、ハップ材などで代表される衛生材料に用いる場合には、風合いや柔軟性の点で、0.01〜11dtexが好ましい。
【0036】
本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布の目付も特に限定はなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じた目付の不織布とすればよく、一般的には10〜150g/m2の範囲であるが、好ましくは10〜50g/m2の範囲が用いられる。特に衛生材料に用いる場合には10〜30g/m2の範囲が好ましい。
【0037】
更に本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布は、他のシートを積層し、複合化不織布(積層シートという場合もある)とすることができる。シートとしては、編織物、不織布、繊維集合体、発泡ウレタン、フィルム、紙状物、羊毛成形体などが例示でき、好ましくは官能基を有するもので、より好ましくはOH基を有する他素材などが例示でき、それぞれの機能を維持することができる。例えば、熱接着性複合繊維単独あるいは親水性繊維と熱接着性複合繊維との混合からなる不織布を積層してもよい。シート以外に金属板、木板、プラスチック板等と積層(ラミネート)することもできる。これらの積層物は、バインダー付の手芸用材料、衣料用補修材、障子紙、壁紙、インテリアおよび建材用表面材料などとして適している。
【0038】
本発明の熱接着性複合繊維を用いた不織布を熱バインダーとして使用する方法としては、次のような例が挙げられる。例えば、衣料関係では、前記不織布をスラックスやスカートのプリーツライン(折り目)にセッティングして、アイロンや熱プレス処理を行なうことでプリーツラインをキープすることができる。建材関係では、天然銘木(ナラ、ケヤキ、チーク、ローズウッド)の0.2〜0.6mm厚スライスの表面化粧板と、合板、繊維板などとの貼り合わせ用バインダーとしてそれらの間に前記不織布を置き、熱プレスや熱風ドライヤー処理を行うことで、突き板やフラッシュパネルなどを製造することができる。この他にも各種基材の接着に優れる効果を発揮するが、該不織布は、蜘蛛の巣状の熱バインダーであるため、フィルム状バインダーや液状バインダーと比較し、接着剤の染み出しや空気膨れ、風合いを損ねることがなく、美しく仕上ることができる。
【0039】
以下、本発明の熱接着性複合繊維の製造方法について一般的製糸方法を用いた場合で説明する。原料の樹脂としては、例えば、鞘成分(A)/芯成分(B)の熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン、芯成分に添加する変性ポリオレフィン樹脂(b)として、無水マレイン酸と高密度ポリエチレンとを混合してグラフト重合した樹脂を用いる。これらの樹脂を、鞘芯型複合紡糸口金を備えた、一般的な熱溶融紡糸機により紡糸する。このとき、口金直下において、クエンチ装置の送風によって、吐出する半溶融状態の樹脂を冷却し、固化させ、未延伸状態の熱接着性複合繊維(以下、未延伸糸という。)を製造する。このとき、必要に応じて表面処理剤を付着してもよい。溶融した樹脂の吐出量及び未延伸糸の引取速度を任意に設定し、目標繊度に対して1.1〜5倍程度の繊維径の未延伸糸とする。得られた未延伸糸は一般的な延伸機で延伸することで延伸糸(延伸加工を施しているが、捲縮加工を施していない状態の繊維)とすることができる。通常の場合、30〜120℃に加熱した延伸ロールにおいて、未延伸糸の入り口側と、その出口側ロールの速度比が1:1.1〜1:5の範囲となるように延伸処理を施す。必要に応じて、延伸処理によって得られた延伸糸にタッチロールやスプレー等で表面処理剤(油剤)を付着した後、ボックス型の捲縮加工機で捲縮を付与する。捲縮を付与された延伸糸を乾燥機で、50〜120℃の温度により乾燥し、用途に合わせて任意の繊維長に押し切りカッターで切断して使用する。このようにして得られた熱接着性複合繊維を、一般的に知られるカーディング法、エアレイド法、抄紙法等の方法でウェブとして、得られたウェブを一般的に知られる熱圧着法、熱風接着法、高圧水流法、ニードルパンチ法または超音波接着法等の加工法で不織布としてもよく、さらにこれらを組み合わせてもよい。
【0040】
以下、本発明の熱接着性複合繊維を製造する方法について、スパンボンド法を例にして説明する。原料の樹脂としては、例えば、鞘成分(A)/芯成分(B)の熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン、芯成分(B)に添加する変性ポリオレフィン樹脂(b)として、無水マレイン酸と高密度ポリエチレンとを混合してグラフト重合した樹脂を用いる。2機の押出機を有する汎用の複合スパンボンド紡糸機を使用し、それぞれの押出機にそれぞれの樹脂を投入し、高温に保温した複合紡糸口金から溶融樹脂を長繊維として吐出させる。吐出した長繊維群をエアサッカーに導入して牽引延伸し、続いてエアサッカーから長繊維群を排出させ、コンベヤー上に捕集する。このときサクションコンベヤー上に、直接、長繊維ウェブとして長繊維群を捕集する方法や、コンベヤー上に捕集する前に開繊し、その後、捕集する方法がある。開繊する方法としては、例えば長繊維群の排出の途中で一対の振動する羽根状物(フラップ)の間に長繊維群を通過させる方法、長繊維群を反射板等に衝突させる方法またはコロナ帯電法により長繊維群を帯電させる方法が挙げられる。捕集した長繊維ウェブを、サクションコンベヤーで搬送し、熱処理加工を施す。熱処理加工としては、ポイントボンド加工が代表的である。
【0041】
以下、本発明に用いられる熱接着性複合繊維を製造する方法について、メルトブロー法を例にして説明する。2機の押出機を有する汎用の複合メルトブロー紡糸機を使用し、スパンボンド法と同様に、樹脂をそれぞれの押出機に投入し、高温に保温された、吐出孔が横一列に並んだ複合メルトブロー紡糸口金より吐出させ、吐出孔の両側より高温、高速の熱風を吹き付けることで、細繊化された短繊維群をサクションコンベヤーやサクションドラム上に短繊維ウェブとして捕集する。メルトブロー法で得られるウェブは、熱融着しているので、ウェブの状態でも取扱い上は問題ないレベルの強度を持つ。そのため、熱加工せずにそのまま使用することができる。しかし、用途に応じて、スパンボンド法と同様に、さらにポイントボンド加工を施してもよい。
【0042】
熱接着性複合繊維の製造方法のなかでも、特にスパンボンド法は引張強度等の機械的物性に優れた不織布を容易に得られるという特徴をもつ。また、スパンボンド法やメルトブロー法では、溶融紡糸して得られる繊維をそのまま開繊及び集積して不織布へと加工できるので、生産性は非常に優れ、安価に製造でき好ましい。さらに、スパンボンド法やメルトブロー法を用いることで、不織布と他素材とを接着させるときに、接着力を低下させる恐れのある表面処理剤(油剤)を使用せずに不織布を製造することができる。このため、表面処理を必要とする一般的紡糸方法により得られた不織布と比較して、他素材との接着力に優れる。
【0043】
また、スパンボンド法で得られたウェブと、メルトブロー法で得られたウェブとを積層し、ポイントボンド加工等で接合した不織布の積層物も本発明の製品に挙げられる。積層物としては、例えば、SM(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層物)、SMS(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層物)、SMMS(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層物)等が挙げられる。これらの他にも、スパンボンド法やメルトブロー法による不織布と、一般的紡糸法により得られる熱接着性繊維をカーディング法、エアレイド法、抄紙法等との積層した積層物も利用できる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらになんら限定されるものではない。なお実施例、比較例における用語と物性の測定方法は以下の通りである。なお、熱接着性複合繊維を用い、不織布に加工する方法として、加工機の汚れが顕著に現れ易い、スパンボンド法によるポイントボンド加工に統一して行った。
【0045】
(1)熱可塑性樹脂の融点
MP(℃):JIS K 7122に準拠して測定。
【0046】
(2)連続運転性能
スパンボンド法の不織布製造工程における、3時間の連続運転を行なった後のエンボスロール及びフラットロール汚れの状況を確認。汚れが無い場合を○、軽度の汚れがある場合を△、運転に支障が出る汚れは×とする。
【0047】
(3)他素材との接着強度(剥離強度)
各実施例、比較例で得られた試料と被接着試料(他素材)とをそれぞれ10cm×5cmの大きさに切断した。被接着試料2枚の間に試料を挟み、四隅が揃うように重ね合わせ、その重ね合わせた試料の短辺方向、つまり幅方向に細長いヒートシールを施す(ヒートシール面積1cm×5cm)。ヒートシール装置として”ヒートシールテスター TP−701”(テスター産業株式会社製)を用い、ヒートシール条件は、温度160℃(上下とも)、圧力29.4×104Pa、加圧時間5秒とした。この方法で得られた引っ張り試験用の接着試料を、ヒートシールを施した側の他辺の短辺側から開き、被接着試料のそれぞれの端辺を10cm間隔に設定したテンシロン引張試験機”ROM−100”(株式会社オリエンテック製)のチャック間に縒れなどが生じないように固定した。剥離強さの測定は引っ張り速度100mm/分で測定し、剥離強度の計算方法はJIS L1086−1983に準拠した。
【0048】
実施例、比較例に用いた、熱可塑性樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂、不織布の製造条件について表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に記載の不織布は、スパンボンド法にて作製した。具体的には、表1記載の条件により、2機の押出機にそれぞれの樹脂を投入し、同心鞘芯型の断面になる紡糸口金を用い、紡糸口金から吐出した複合長繊維群をエアーサッカーに導入して牽引延伸し、3.3dtexの長繊維群を得、続いて、エアーサッカーより排出された前記長繊維群を、帯電装置により同電荷を付与せしめ帯電させた後、反射板に衝突させて開繊し、開繊した長繊維群を裏面に吸引装置を設けた無端ネット状コンベヤー上に、長繊維ウェブとして捕集し、線圧80N/mm、圧着面積率15%のエンボスロール(凸部)/フラットロールでポイントボンド加工し、長繊維不織布を得た。
【0051】
表1に示した製造条件に於ける、連続運転性能と、得られた不織布を用いて、他素材との接着強度(剥離強度)を測定した。得られた結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から明らかな通り、本発明の熱接着性複合繊維は、長繊維不織布を得る際の、ポイントボンド加工において、エンボスロール/フラットロールの汚れが無く、連続運転性能に優れている。また、他素材同士を接着させる接着剤としての性能に優れることも、明らかである。
【0054】
比較例1は、変性ポリオレフィンを使用していないため、連続運転性能には優れるが、他素材同士を接着させる接着性は発現せず、比較例2は、連続運転性能において、3時間の連続運転後にはフラットロールに汚れが付き始めており、これ以上の連続運転に支障がある。比較例3、4は、3時間の連続運転後にはエンボスロール及びフラットロールの汚れが酷く、これ以上の連続運転は、ロール巻き付きが起こる可能性が非常に高く無理である。また、比較例2〜4は、実施例の同変性剤含有量品と比べ、低い接着性であった。比較例5は、鞘側と芯側に同じ樹脂を用いたため、実施例と同様に優れた接着性を示すが、3時間の連続運転後にはエンボスロール及びフラットロールの汚れが酷く、これ以上の連続運転は、ロール巻き付きが起こる可能性が非常に高く無理である。
【0055】
【本発明の効果】
本発明の熱接着性複合繊維及び不織布は、他素材と良好な接着性を有する。また、変性ポリマーが、芯側に添加されているため、不織布製造工程での加工機の汚れが無く、連続運転が可能である。特に繊維中の熱可塑性樹脂が同種の樹脂である場合は、製造工程中に発生した不良ロット等をリサイクルすることが可能であり、安価に製品を提供することができる。
Claims (11)
- 以下の鞘成分(A)と芯成分(B)からなることを特徴とする熱接着性複合繊維。
鞘成分(A):熱可塑性樹脂からなる成分。
芯成分(B):不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種を含むビニルモノマー(以下、これらを変性剤という)をグラフト重合させたポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂(b)という)を含む熱可塑性樹脂成分で、変性剤含有率は該複合繊維全体に対して0.025〜1モル/kg。 - 芯成分(B)が、鞘成分(A)と同種の熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂(b)の混合物である請求項1記載の熱接着性複合繊維。
- 鞘成分(A)を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項1または2記載の熱接着性複合繊維。
- 芯成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂(b)が、鞘成分(A)の熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性させたものである請求項3記載の熱接着性複合繊維。
- 鞘成分(A)を構成するポリオレフィン樹脂が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系二元共重合体、およびプロピレン系三元共重合体から選ばれた少なくとも1種である請求項3または4記載の熱接着性複合繊維。
- 変性剤が無水マレイン酸、アクリル酸若しくはメタクリル酸から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維を用いた繊維集合体。
- 繊維集合体がスパンボンド法で得られた長繊維不織布である請求項7記載の繊維集合体。
- 繊維集合体がメルトブロー法で得られた不織布である請求項7記載の繊維集合体。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または請求項7〜9のいずれか1項記載の繊維集合体を用いた熱バインダー。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維または請求項7〜9いずれか1項記載の繊維集合体と、その他の不織布、フイルム、パルプシート、木板、ガラス板、金属板、編物、及び織物から選ばれた少なくとも1種の物品とからなる積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003196902A JP2005036321A (ja) | 2003-07-15 | 2003-07-15 | 熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003196902A JP2005036321A (ja) | 2003-07-15 | 2003-07-15 | 熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005036321A true JP2005036321A (ja) | 2005-02-10 |
Family
ID=34207203
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003196902A Pending JP2005036321A (ja) | 2003-07-15 | 2003-07-15 | 熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005036321A (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006299425A (ja) * | 2005-04-15 | 2006-11-02 | Asahi Kasei Fibers Corp | 吸水性不織布積層体 |
JP2007151449A (ja) * | 2005-12-02 | 2007-06-21 | Kureha Ltd | 緑化用マット構造体 |
JP2007308839A (ja) * | 2006-05-19 | 2007-11-29 | Chisso Corp | 無水マレイン酸含有繊維 |
JP2011047098A (ja) * | 2009-08-25 | 2011-03-10 | Toray Saehan Inc | 改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法 |
KR101229869B1 (ko) | 2009-09-21 | 2013-02-05 | 웅진케미칼 주식회사 | 토목건축 자재용 보강 복합섬유 및 이의 제조방법 |
JP2014009421A (ja) * | 2012-06-29 | 2014-01-20 | Daiwabo Holdings Co Ltd | 酸変性ポリオレフィン繊維、それを用いた繊維構造物及び繊維強化複合材 |
JP2016065357A (ja) * | 2015-12-25 | 2016-04-28 | ダイワボウホールディングス株式会社 | 酸変性ポリオレフィン繊維、それを用いた繊維構造物及び繊維強化複合材 |
WO2022181590A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | 東レ株式会社 | スパンボンド不織布および複合繊維 |
CN115516143A (zh) * | 2020-03-30 | 2022-12-23 | 宇部爱科喜模株式会社 | 带电性鞘芯结构纤维、由该纤维得到的非织造布、复合非织造布、非织造布加工品、及非织造布加工品的制造方法 |
-
2003
- 2003-07-15 JP JP2003196902A patent/JP2005036321A/ja active Pending
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006299425A (ja) * | 2005-04-15 | 2006-11-02 | Asahi Kasei Fibers Corp | 吸水性不織布積層体 |
JP2007151449A (ja) * | 2005-12-02 | 2007-06-21 | Kureha Ltd | 緑化用マット構造体 |
JP2007308839A (ja) * | 2006-05-19 | 2007-11-29 | Chisso Corp | 無水マレイン酸含有繊維 |
JP2011047098A (ja) * | 2009-08-25 | 2011-03-10 | Toray Saehan Inc | 改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法 |
KR101229869B1 (ko) | 2009-09-21 | 2013-02-05 | 웅진케미칼 주식회사 | 토목건축 자재용 보강 복합섬유 및 이의 제조방법 |
JP2014009421A (ja) * | 2012-06-29 | 2014-01-20 | Daiwabo Holdings Co Ltd | 酸変性ポリオレフィン繊維、それを用いた繊維構造物及び繊維強化複合材 |
JP2016065357A (ja) * | 2015-12-25 | 2016-04-28 | ダイワボウホールディングス株式会社 | 酸変性ポリオレフィン繊維、それを用いた繊維構造物及び繊維強化複合材 |
CN115516143A (zh) * | 2020-03-30 | 2022-12-23 | 宇部爱科喜模株式会社 | 带电性鞘芯结构纤维、由该纤维得到的非织造布、复合非织造布、非织造布加工品、及非织造布加工品的制造方法 |
CN115516143B (zh) * | 2020-03-30 | 2023-08-25 | 宇部爱科喜模株式会社 | 带电性鞘芯结构纤维、由该纤维得到的非织造布、复合非织造布、非织造布加工品、及非织造布加工品的制造方法 |
WO2022181590A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | 東レ株式会社 | スパンボンド不織布および複合繊維 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5635653B2 (ja) | 弾性不織布及びこれを用いた繊維製品 | |
US8105654B2 (en) | Thermoadhesive conjugate fibers and nonwoven fabric employing them | |
JP5716251B2 (ja) | 熱接着性不織布芯地の製造方法および使用 | |
US8951338B2 (en) | Air filter material using laminated electret nonwoven fabric | |
EP0864007B1 (en) | Low density microfiber nonwoven fabric | |
CN101506419B (zh) | 纤维束及网 | |
CN1777507A (zh) | 高强度无纺布 | |
US10463222B2 (en) | Nonwoven tack cloth for wipe applications | |
JPH1088460A (ja) | 複合長繊維不織布及びその製造方法 | |
WO2002102898A1 (en) | High-frequency active polymeric compositions and films | |
RU2206647C2 (ru) | Нетканый материал, имеющий улучшенную мягкость и барьерные свойства | |
JP2005036321A (ja) | 熱接着性複合繊維、不織布及びこれを用いた製品 | |
KR20190104338A (ko) | 수압 처리된 부직포 및 그의 제조 방법 | |
CN101641470A (zh) | 由纺粘型无纺织物制成的、高强力且轻的无纺织物,用于制造这种无纺织物的方法及其应用 | |
US20150330003A1 (en) | Patterned nonwoven and method of making the same using a through-air drying process | |
KR102605801B1 (ko) | 멜트블로 부직포, 필터, 및 멜트블로 부직포의 제조 방법 | |
JP4399968B2 (ja) | 長繊維不織布それを用いた繊維製品 | |
JPS6050595B2 (ja) | 複合材料の製造方法 | |
JP4178997B2 (ja) | 機能性繊維集合体及びそれを用いた成形体 | |
JP4438998B2 (ja) | 熱接着性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、並びに異種物体複合成形体 | |
JP4581601B2 (ja) | 潜在捲縮性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸収性物品 | |
JP4352575B2 (ja) | 熱可塑性複合化不織布及びこれを用いた繊維製品 | |
JP2003247157A (ja) | 吸収体及びこれを用いた吸収性物品 | |
JP4957434B2 (ja) | 熱接着性スパンボンド不織布およびこれを用いた繊維製品 | |
JP2006152525A (ja) | バインダー不織布及びそれを用いた積層物 |