JP3547909B2 - プレス成形用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプレス成形用紙、該プレス成形用紙を用いて加熱プレス成形を行って成形品を製造する方法、およびそれにより得られるプレス成形品に関する。より詳細には、本発明は、プレス成形によって、例えば深さが50mmにも達し且つ複雑な凹凸を有するような深絞り成形品であっても、紙の破損を生ずることなく円滑に製造することのできる、天然パルプを主原料とするプレス成形用紙、該プレス成形用紙を用いてプレス成形によって成形品を製造する方法、およびそれにより得られるプレス成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品包装用のトレー容器、電気・電子部品やその他の工業部品の包装容器などとしては、従来、発泡ポリスチレンシートをプレス成形して製造した容器、発泡ポリスチレンビーズをモールド成形して製造した容器、ポリ塩化ビニルのシートや発泡体を用いて製造した容器などのようなプラスチック製容器が、製造の容易性、大量生産が可能である点、経済性などの理由によって汎用されてきた。
しかしながら、プラスチック容器は、その使用後に焼却すると有害ガスを発生し、焼却時に高熱を発生して焼却炉の寿命を短くし、埋め立ててもいつまでも分解されずにそのまま残留するなどの種々の問題があり、使用済みのプラスチックの処理が近年大きな社会問題になっている。
【0003】
そこで、従来プラスチックから製造されていた上記したような包装容器を、パルプを用いて製造することが行われるようになっており、例えば、卵の包装容器や果物用の包装容器などでは、パルプ製の容器が実際に用いられている。しかしながら、一般に、天然パルプの紙は延伸性が殆どないために、紙を製造してからプレス成形や絞り成形を行うと、破れを生じて容器を円滑に製造することができない。そのため、紙製(天然パルプ製)の容器を製造する場合は、目的とする容器の外形に合致する窪みを有する網型(例えば卵の外形に合致する凹部を有する網型など)を作製しておき、その網型によってパルプを含む抄紙原料を湿式抄紙した後、乾燥して紙製容器を製造(成形)する方法が一般に採用されている。しかし、前記の湿式成形法は紙製容器の製造に時間および手間がかかり、極めて生産性が低く、これが紙製容器が普及しない一因となっている。
【0004】
そこで、紙製容器を生産性よく製造することを目的として、網型を用いる上記した紙製容器の製造方法に代えて、
(1) 熱可塑性樹脂の合成パルプまたはこれと天然パルプからなるシートに予め二次元のしわを与えた後、熱プレス成形して成形品を製造する方法(特開昭49−13265号公報);
(2) 樹脂加工を施した紙材から波形紙をつくり、その波形紙の波状の屈曲部を延伸させつつプレス成形を行って包装用成形品を製造する方法(特開平5−286023号公報);および
(3) 加湿処理した原紙を接着素材を介して複数重ね合わせ、それに絞り皺を付与した後、プレス成形して平皿成形品を製造する方法(特開平7−214705号公報);
が提案されている。
【0005】
そして、上記(1)の従来法では、実際にはポリエチレンやポリプロピレンなどの合成パルプを5〜100%と天然パルプを95〜0%の割合で含む原料を抄紙して得た二次元のしわを有するシートを用いて熱プレス成形が行われている。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成パルプを用いたしわを有するシートは、熱プレス成形時の延伸性が十分ではなく、深さが50mmに達し複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品を製造した場合には、成形品の角隅部などに穴や破れを生じて、深絞りの成形品を円滑に製造することができない。
【0006】
また、上記(2)の従来法による場合は、紙材に波状の凹凸を形成させて加熱プレス成形時の紙材に伸び代を付与しているが、波状の凹凸の形成だけでは、加熱プレス成形時の紙材の延伸性が十分ではなく、そのために実際には、加熱プレス成形時に波状の凹凸を付与した紙材を湿潤させてその伸びを大きくしてから加熱プレス成形を行う方法が採用されている。そのために、湿式抄紙後に乾燥させて得た紙材を再度湿潤させる工程が必要であって工程的に繁雑であり、しかも加熱プレス成形を施す紙材が湿潤状態にあることにより加熱プレス成形時または加熱プレス成形後に湿潤した紙材を乾燥する必要があり、その結果余分の熱や手間が必要である。しかも、この(2)の従来法では、上記した波状の凹凸の形成を、湿式抄紙後に乾燥して得られた紙材に対して加熱下に行っているために、波状の凹凸の形成のために余分の工程や加熱が必要である。
【0007】
そして、上記(3)の従来法による場合は、原紙をそのまま加湿処理して、または原紙の少なくとも片面側にポリエチレンラミネート層を設けた状態で加湿処理して、それを複数重ね合わせて絞り皺を付与した後、プレス成形を行うものであるために、原紙を加湿処理するという工程が必要であって工程が複雑になる。しかも、加湿状態にある原紙の積層体を加熱プレス成形しているために、加熱プレス成形時またはその後に乾燥する必要があり、工程面および熱効率の点で、生産性の低下や、コスト高を招いている。しかも、この(3)の従来法による場合は、その原紙部分は基本的に天然パルプのみからなっているので、絞り皺を付与されているとは言え、加熱プレス成形時の延伸性が充分に高いとは言えず、深さが50mmにも達するような深絞りの成形品を、破れを生ずることなく円滑に製造することは実際上困難である。
【0008】
また、プレス成形による紙製容器としては、上記した(1)〜(3)の従来技術以外にも、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維と木材パルプとを、0:1〜1:1および1:1〜9:1の2つの割合で混合・抄紙して2種類の合成パルプ紙つくり、それを2層または3層に積層して加熱プレス成形してなる紙容器(特開昭50−27878号公報);並びに(5)縦及び横方向の伸びが1.8%以上である紙基質と紙基質の両面に接着剤層を介して設けた無機填料を含有する耐熱性合成抄造紙とからなる積層体をプレス成形して紙製の耐熱性容器が知られている。
【0009】
しかしながら、上記(4)の従来技術では、紙製容器の耐水性の向上が専ら目的とされているために、プレス成形時の紙材の延伸性については全く考慮されていない。しかもこの(4)の従来技術で用いている紙材は、上記(1)の従来法と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる合成繊維を用いて製造されているために、プレス成形時の延伸性が十分ではなく、深さが50mmに達し複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品を破れなどを生ずることなく円滑に製造することができない。
【0010】
また、上記(5)の従来技術には、紙基質の製造時に有機樹脂バインダーを0〜10%の割合で用い得ることが開示されているものの、その有機樹脂バインダーの内容については具体的には記載されておらず、この(5)の従来技術で実際に製造されている紙基質は、木材パルプのみからなる紙基質である。しかも、この(5)の従来技術では紙基質の表面に伸びの極めて小さい耐熱層が形成されているので積層体全体としての延伸性が極めて小さく、したがって深さが50mmに達し且つ複雑な凹凸を有する深絞りの成形品を破れなどを生ずることなく円滑に製造することができない。
【0011】
また、上記(1)〜(5)の従来技術とは別に、(6)融点が約400℃程度の芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミドイミド繊維などの耐熱性繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの耐熱性繊維を主体繊維とし、これにバインダー繊維を混合して抄紙したものを複数枚積層して加熱、加圧して一体化した成形プレス用クッション材が提案されおり(特開平3−119198号公報)、この(6)の従来技術には、前記バインダー繊維として芯鞘型の繊維を用いることが記載されている。
しかしながら、この(6)の従来技術は、合成樹脂積層化粧板や電気絶縁板などのような平らな板状体をプレスして製造する際に、平らなプレス板と平らな被プレス材料との間に介在させて用いるクッション材に係るものであって、それ自体が絞りのあるプレス成形品に用いるプレス成形用紙に係るものではないので、プレス成形時の延伸性については何ら考慮されていない。その上、この(6)の従来技術では、天然パルプは使用されておらず、かかる点からも、天然パルプを用いてプレス成形によって容器などの成形品を製造しようとする試みとはその技術内容が大きく異なっている。
【0012】
したがって、網型を用いる湿式抄造成形によらずに、紙をそのままプレス成形して容器などの成形品を製造するための提案が、上記した(1)〜(5)の従来技術にみるように従来から色々なされているが、簡単な工程で且つ良好な熱効率で、プレス成形時に紙の破れなどを生ずることなく、成形品、特にその深さが50mmにも達し且つ複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品を製造することのできるプレス成形用紙、およびそのような紙を用いるプレス成形技術は未だが実用化されていないのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、紙を湿潤させずに乾燥したままの状態でプレス成形しても、例えば深さが50mmにも達し且つ複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品をも、紙の破損などを生ずることなく、簡単な工程で、良好な熱効率で円滑に製造することのできる、天然パルプを主体とするプレス成形用の紙を提供することである。
そして、本発明の目的は、天然パルプを主体とする紙を用いて、紙を湿潤させずに乾燥したままの状態でプレス成形して、深絞りの容器などを、簡単な工程で、良好な熱効率で円滑に製造することのできる方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、天然パルプを主体とする紙からなるプレス成形による成形品を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成すべく、本発明者らはプレス成形に適する紙についてその素材面からの検討、およびプレス成形技術の面から検討を色々行ってきた。その結果、プレス成形用紙を、天然パルプ、およびプレス成形温度において熱接着性を有し且つ特定の伸度および収縮率を有する熱可塑性重合体繊維を特定の割合で用いて製造すると、それにより得られる紙はプレス成形時に極めて良好な延伸性を有するとともに良好な強度を有していて、乾燥状態でそのままプレス成形しても破れが生じず、例えば深さが50mmにも達し複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品であっても円滑に製造できることを見出した。
【0015】
また、本発明者らは、前記の紙を用いてプレス成形を行うに当たっては、紙を一枚のみ用いてプレス成形を行ってもよいが、紙を2枚以上重ねた状態でプレス成形を行って成形品をつくると、前記したような深絞りの成形品などが一層円滑に製造できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、天然パルプと熱可塑性重合体繊維を含むプレス成形用紙であって、プレス成形用紙における天然パルプ:熱可塑性重合体繊維の含有割合が99:1〜50:50(重量比)であり、そして前記の熱可塑性重合体繊維として、熱接着性を有し、繊維伸度が20〜70%であり且つ140℃に15分間保持したときの収縮率が20〜90%である熱可塑性重合体繊維を用いた、ことを特徴とするプレス成形用紙である。
【0017】
そして、本発明は、上記したプレス成形用紙を用いて加熱プレス成形を行うことを特徴とする成形品の製造方法であり、そしてそのようなプレス成形方法の好ましい態様として、上記したプレス成形用紙を2枚以上重ねて、重ねたプレス成形用紙同士が積層一体化する温度および圧力下にプレス成形を行う方法を包含する。
また、本発明は、前記の方法に製造されたプレス成形品を包含する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のプレス成形用紙は、天然パルプおよび熱可塑性重合体繊維から主としてなっている。その場合の天然パルプの種類は特に制限されず、天然パルプであればいずれも使用できる。本発明のプレス成形用紙で用いる天然パルプとしては、例えば、広葉樹木材パルプ、針葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、リンターパルプなどを挙げることができる。また、天然パルプは、マーセル化などの処理を施してあってもよい。前記した天然パルプは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。さらに、天然パルプは、バージンパルプであっても、使用済みの古紙パルプであっても、またはバージンパルプと古紙パルプを併用してもよい。古紙パルプを用いる場合は、例えば牛乳パック、おむつ廃材、包装紙などから得られる繊維長の長いものが好ましく用いられる。
プレス成形時に紙の破れが一層生じにくくなる点から、プレス成形用紙に用いる天然パルプは、その繊維長が約1mm以上であるのが好ましく、約1.5〜6mm程度であるのがより好ましく、2〜3mm程度であるのが更に好ましい。
【0019】
そして、本発明のプレス成形用紙では、天然パルプと共に用いる熱可塑性重合体繊維が、熱接着性を有することが必要である。熱接着性を有していない熱可塑性重合体繊維を用いると、それにより得られる紙は、加熱下にプレス成形を行っても、天然パルプ間の接合、天然パルプと熱可塑性重合体繊維との接合、熱可塑性重合体繊維間の接合が熱可塑性重合体繊維によって行われないために、紙にプレス成形に耐え得る強度や延伸性を付与できず、絞りのある成形品、特に深さが50mmに達し且つ複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品を、破損などを生ずることなく円滑に製造できない。
本発明では、熱接着性を有する熱可塑性重合体繊維として、プレス成形時の加熱温度において熱接着性を有するものを使用する。それによって、プレス成形時に熱可塑性重合体繊維が軟化または溶融して天然パルプと接着し、また熱可塑性重合体繊維同士が接着して紙を構成する天然パルプや熱可塑性重合体繊維間に接合をもたらし、紙の延伸性および強度を向上させる。
【0020】
限定されるものではないが、一般に、本発明のプレス成形用紙を用いる場合は、好ましくは100〜250℃の温度でプレス成形が行われるので、本発明のプレス成形用紙で用いる熱可塑性重合体繊維は、80〜250℃の温度で少なくとも繊維の表面の一部または全部が軟化または溶融するものであるのが好ましい。また、後記するように、本発明のプレス成形用紙は通常天然パルプと熱可塑性重合体繊維を含む製紙原料を湿式抄紙した後乾燥することによって製造されるので、その抄紙工程における乾燥温度(一般に100〜140℃)で軟化して、天然パルプと接着し得るものであるのがより好ましい。
【0021】
さらに、本発明のプレス成形用紙では、天然パルプと共に用いる熱可塑性重合体繊維の伸度が20〜70%であることが必要であり、30〜60%であることが好ましい。繊維伸度が20〜70%の範囲から外れる熱可塑性重合体繊維を用いると、プレス成形用紙にプレス成形に耐え得る充分な延伸性と強度が付与されず、プレス成形時に紙が破損して成形品、特に深絞りの成形品を円滑に製造することができない。特に、熱可塑性重合体繊維の繊維伸度が20%未満であると成形品の角隅部などに破れが生じ易くなり、一方繊維伸度が70%を超えるとプレス成形用紙に強度が付与されず、いずれにしてもプレス成形が円滑に行われなくなる。
なお、本明細書でいう熱可塑性重合体繊維の繊維伸度とは、JIS−L−1015により測定したものをいう。
【0022】
また、本発明のプレス成形用紙に用いる熱可塑性重合体繊維は、「140℃に15分間保持したときの収縮率[以下これを「収縮率(140℃/15分)」という]が20〜90%である」という要件を更に備えており、プレス成形性に優れるプレス成形用紙が得られる点から、収縮率(140℃/15分)が50〜90%であるのが好ましい。
ここで、本明細書でいう熱可塑性重合体繊維の「収縮率(140℃/15分)」とは、熱可塑性重合体繊維を0.05mg/dの荷重下に140℃に15分加熱保持した時の加熱前の繊維長に対する収縮率をいう。
【0023】
本発明ではプレス成形用紙を構成する熱可塑性重合体繊維として、繊維伸度が20〜70%であるという上記した要件および収縮率(140℃ / 15分)が20〜90%であるという上記した要件を満足する熱可塑性重合体製の繊維であればいずれも使用でき、繊維を形成する熱可塑性重合体の種類、繊維の形状や複合の有無などは特に制限されない。
熱可塑性重合体繊維は、その横断面の形状が円形、異形、中空形などのいずれであってもよい。
また、熱可塑性重合体繊維は、1種類の熱可塑性重合体のみからなる繊維であっても、或いは2種以上の熱可塑性重合体を複合または混合した複合繊維または混合繊維であってもよく、複合繊維の場合は芯鞘型複合繊維であっても、海島型複合繊維であっても、サイドバイサイド型複合繊維であってもよい。
【0024】
そのうちでも、プレス成形用紙を構成する熱可塑性重合体繊維が、プレス成形時の温度で軟化または溶融する低融点の熱可塑性重合体よりなる鞘部とプレス成形時の温度で軟化または溶融しない高融点の熱可塑性重合体よりなる芯部とからなる芯鞘型複合繊維であると、低融点の鞘部がプレス成形時の熱によって軟化または溶融して天然パルプ間の接合、天然パルプと熱可塑性重合体繊維との接合、熱可塑性重合体繊維間の接合をもたらしてプレス成形用紙に深絞りなどにも耐え得る高い延伸性や強度が付与されると共に、プレス成形時の熱で軟化または溶融しない高融点の芯部が繊維強度を保ってプレス成形用紙に一層高い強度および腰が付与され、それによってプレス成形性に一層優れるプレス成形用紙を得ることができるので好ましい。その場合に芯鞘型複合繊維における鞘部:芯部との割合は、重量比で、一般に30:70〜70:30程度にしておくのが、プレス成形性により優れるプレス成形用紙を得る上から好ましく、40:60〜60:40にしておくのがより好ましい。
【0025】
本発明のプレス成形用紙で好ましく用いられる熱可塑性重合体繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維;ポリブチレンテレフタレート繊維;変性ポリエチレンテレフタレート繊維;変性ポリブチレンテレフタレート繊維;変性ポリプロピレン繊維;並びに変性ポリエチレンテレフタレート、変性ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンの少なくとも1種からなる鞘部とポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびポリアミドの少なくとも1種からなる芯部とからなる芯鞘型複合繊維などを挙げることができ、これらの熱可塑性繊維は単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
特に、熱可塑性重合体繊維が、非晶質の熱可塑性重合体からなる繊維であると、その適用範囲が広いために、プレス成形時に金型の温度に差が生じても所望の成形品を円滑に得ることができるので、好ましい。
【0026】
ここで、上記でいう「変性ポリエチレンテレフタレート」とは、主たる構造単位であるエチレングリコール単位およびテレフタル酸単位と共に、イソフタル酸単位、フタル酸単位、2,3−ナフタリンジカルボン酸単位、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位などの芳香族ジカルボン酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位などの脂肪族ジカルボン酸単位;ジエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、1,4−ブタンジオール単位などのジオール単位などを少量(通常25モル%以下)で含むエチレンテレフタレート系重合体をいい、そのうちでも特に非晶質のエチレンテレフタレート系重合体が好ましい。また、上記でいう「変性ポリブチレンテレフタレート」とは、主たる構造単位である1,4−ブタンジオール単位およびテレフタル酸単位と共に、イソフタル酸単位、フタル酸単位、2,3−ナフタリンジカルボン酸単位、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸単位などの芳香族ジカルボン酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位などの脂肪族ジカルボン酸単位;エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位などのジオール単位などを少量(通常25モル%以下)で含んでいるブチレンテレフタレート系重合体をいい、そのうちでも特に非晶質のブチレンテレフタレート系重合体が好ましい。
また、「変性ポリプロピレン」とは、主たる構造単位であるプロピレン単位とともにエチレン単位や不飽和カルボン酸単位(例えばマレイン酸単位など)を少量(通常30モル%以下)で含むプロピレン系重合体をいい、非晶質のものが好ましい。
【0027】
そして本発明のプレス成形用紙では、上記した熱可塑性重合体繊維のうちでも、全酸成分に対してイソフタル酸単位を20〜60モル%の割合で含む変性ポリエチレンテレフタレートを繊維横断面周率で40%以上の割合で含む非結質共重合ポリエステルからなる繊維、特にそのような非晶質ポリエステル共重合体からなる鞘部とポリエチレンテレフタレートからなる芯部を有する芯鞘型複合繊維を用いると、プレス成形時における繊維間の接着、繊維と天然パルプ間の接着が良好に行われて、プレス成形を極めて円滑に行うことができ、例えば深さが50mm以上でしかも複雑な凹凸を有するような深絞りの成形品であっても容易に製造できる。
【0028】
そして、上記した非晶質のポリエステル共重合体繊維としては、例えば、
(i) テレフタル酸単位を40モル%以上、イソフタル酸単位を20〜60モル%、およびエチレングリコール単位を75モル%以上有する共重合体ポリエステルであって;
(ii) テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位以外の芳香族共重合単位と、エチレングリコール単位以外の脂肪族および/または脂環族共重合単位との合計割合が、上記共重合ポリエステルにおける全酸成分単位に対して0〜25モル%であり;
(iii) エチレングリコール単位以外の脂肪族および/または脂環族共重合単位の割合が、該単位原料を[COOH]および/または[OH]型とした場合に上記共重合ポリエステルの重量に基づいて25重量%以下であり;そして、
(iv) 下記の数式(1)〜(3);
【0029】
【数1】
2.83≦logη0≦6.10 (1)
5.0(1+log[η])+0.30≦logη0≦5.0(1+log[η])+1.30 (2)
0.45≦1+log[η]≦1.0 (3)
[上記式中、η0は160℃におけるゼロ剪断応力下での共重合ポリエステルの溶融粘度(ポイズ)、[η]は共重合ポリエステルの固有粘度(dl/g)を示す]
を満足する溶融粘度η0および固有粘度[η]を有する;
非結晶性共重合ポリエステル成分が繊維横断面周率で40%以上を占めている共重合ポリエステル繊維を挙げることができる。
そして、上記した共重合ポリエステル繊維の詳細については、特開昭58−136828号公報に記載されているとおりである。
【0030】
本発明のプレス成形用紙で用いられる上記で挙げた熱可塑性重合体繊維は、上記したような熱可塑性重合体を用いて常法によって溶融紡糸することにより得ることができるが、通常の溶融紡糸条件などによっては熱可塑性重合体繊維の繊維伸度が上記した本発明の範囲を満たさない場合には、溶融紡糸時の紡糸条件、延伸条件、熱処理条件などを変化させたり、調節することによって、繊維伸度を20〜70%の範囲にし、且つ収縮率(140℃ / 15分)を20〜90%にすることができる。
【0031】
また、限定されるものではないが、本発明では、プレス成形用紙に用いる上記した熱可塑性重合体繊維の引張強度が3g/d以上であるのが好ましく、4g/d以上であるのがより好ましく、その場合には、深絞りのプレス成形などにも充分に耐え得るプレス成形に一層優れるプレス成形用紙を得ることができる。
【0032】
さらに、本発明のプレス成形用紙では、熱可塑性重合体繊維と共に用いられる天然パルプの単繊維繊度が通常0.5〜30デニール程度であることから、天然パルプとのバランスをよくして抄紙時に天然パルプと熱可塑性重合体繊維とが均一に分散するようにするために、またプレス成形用紙に強度を付与したり、プレス成形時の接着作用を良好にするために、熱可塑性重合体繊維の単繊維繊度が0.5〜5.0デニール程度であるのが好ましく、1.0〜3.0デニール程度であるのがより好ましい。熱可塑性重合体繊維の単繊維繊度が0.5デニール未満であると、特にプレス成形用紙の強度が低下してプレス成形時に破れなどを生じ易くなり、一方5.0デニールを超えると熱可塑性重合体繊維の接着剤としての機能が低下して天然パルプの接合が行われなくなり、プレス成形に適する延伸性および強度を有する紙が得られにくくなる。
【0033】
また、本発明のプレス成形用紙では、抄紙時に天然パルプと熱可塑性重合体繊維とが均一に分散するようにしたり、得られるプレス成形用紙に良好な延伸性や強度を付与するために、熱可塑性重合体繊維として繊維長が約1〜20mmのものを用いるのが好ましく、約2〜7mmのものを用いるのがより好ましい。熱可塑性重合体繊維の繊維長が1mm未満であると、プレス成形に耐え得る延伸性や強度を有するプレス成形用紙が得られにくくなり、一方20mmを超えると抄紙の分散性が不良になって熱可塑性重合体繊維が均一に分散した紙が得られにくくなり、紙の品質が不均一になり易い。
【0034】
そして、本発明のプレス成形用紙は、上記した天然パルプと上記した熱可塑性重合体繊維を、天然パルプ:熱可塑性重合体繊維=99:1〜50:50(重量比)の割合で含むことが必要であり、97:3〜70:30(重量比)で含むことが好ましい。天然パルプと熱可塑性重合体繊維の合計重量に基づいて、熱可塑性重合体繊維の割合が1重量%未満であると、熱可塑性重合体繊維による接着機能が付与されず、延伸性および強度に優れる紙が得られなくなって、プレス成形時に破れを生じ、特に深さが50mmにも達するような深絞りの成形品を得られなくなる。一方、天然パルプと熱可塑性重合体繊維の合計重量に基づいて、熱可塑性重合体繊維の割合が50重量%を超えると、プレス成形時に紙の収縮率が大きくなり過ぎて、得られるプレス成形品の形態が不安定となり易く、しかも出来るだけポリマーの使用量の少ない紙製の容器などを製造しようとする本発明の目的に合致しなくなる。
特に、本発明のプレス成形用紙において、熱可塑性重合体繊維の含有割合を、天然パルプと熱可塑性重合体繊維の合計重量に基づいて1〜7重量%程度の少量にした場合には、本発明のプレス成形用紙から製造された容器などの成形品を、その使用後に回収して水中などに入れて撹拌すると天然パルプが簡単に回収できるので、それを再度使用することができる。
【0035】
上記した天然パルプおよび熱可塑性重合体繊維を上記した割合で含む本発明のプレス成形用紙はそれ自体でプレス成形時に良好な延伸性および強度などを有していて、深絞りの成形品などをも円滑に製造することができる。しかしながら、場合によっては、微細や皺(クレープ)や、波形やその他の凹凸を付与してあってもよく、その場合にはプレス成形時における紙の延伸性を一層良好なものとすることができる。その際に、クレープや波形等の凹凸の付与は、抄紙時の湿潤状態で行ってもまたは乾燥後に行ってもよい。また、クレープや波形等の凹凸の付与は紙の長さ方向と平行な方向、紙の長さ方向に対して直角の方向(幅方向)、紙の長さ方向に対して斜めの方向、前記の方向を組み合わせたものなどのいずであってもよく、製造を目的とするプレス成形品の形状や構造などに応じて決めればよい。
【0036】
また、本発明のプレス成形用紙は、上記した天然パルプおよび熱可塑性重合体繊維と共に、本発明の目的の妨げにならない範囲で、必要に応じて、紙において通常用いられている紙力増強剤、湿潤強度増強剤、撥水剤、耐水化剤などの添加剤、上記した熱可塑性重合体繊維以外の繊維などを含有していてもよい。
また、必要に応じて加熱プレス成形の妨げにならない範囲でプレス成形用紙の表面にラミネートなどの処理を施しておいてもよい。
【0037】
そして、本発明のプレス成形用紙では、紙製造時の工程性、紙のプレス成形性、プレス成形時の取り扱い性などの点から、一枚の紙の目付けを10〜400g/m2程度にしておくのが好ましく、30〜400g/m2にしておくのがより好ましく、50〜200g/m2にしておくのがより好ましい。
また、本発明のプレス成形用紙では、プレス成形用紙のプレス成形性を一層良好なものにする点から、紙の縦方向の伸度および横方向の伸度の少なくとも一方をを20%以上にしておくのが好ましい。
さらに、本発明のプレス成形用紙では、紙の縦方向および横方向の少なくとも一方の引張強度を1.5Kgf以上としておくのが好ましく、2Kgf以上にしておくのがより好ましい。
また、本発明のプレス成形用紙の寸法は特に制限されず、目的とするプレス成形品の製造に適したサイズにしておけばよい。
【0038】
本発明のプレス成形用紙の製法や製造条件などは特に制限されず、天然パルプを用いる従来既知の抄紙方法や抄紙条件などを採用して製造することができる。限定されるものではないが、本発明のプレス成形用紙は、例えば、パルパー、ビーター、リファイナー等を用いて製紙原料を離解して天然パルプと熱可塑性重合体繊維を含むスラリーを調製し、このスラリー用いて、円網、短網、長網などの各種の抄紙用の網の1種または2種以上を使用して湿式抄造を行って湿紙を形成し、それをヤンキードライヤー、多筒式ドライヤーなどの乾燥機で乾燥を用いて一般に100〜140℃の温度で乾燥して、巻き取ることにより製造することができる。その際に、本発明のプレス成形用紙に上記したクレープや波形等の凹凸を付与しておく場合には、湿紙の段階や乾燥後に適当な方法(例えば湿紙を乾燥する際の乾燥機への導入速度を乾燥機からの取り出し速度よりも速くしたり、波形のエンボスロールなどを用いる方法)で凹凸を付与すればよい。
【0039】
本発明のプレス成形用紙を用いてプレス成形を行うに当たっては、成形品の種類などに応じて、1枚のプレス成形用紙を用いてそのままプレス成形を行ってもまたは2枚以上のプレス成形用紙を重ねてプレス成形を行ってもよい。そのうちでも、1枚のプレス成形用紙の目付けを上記した10〜400g/m2の範囲内で出来るだけ薄くしておいて、それを2枚以上、好ましくは3〜40枚程度重ねて、加熱下に、プレス成形すると同時に重ねた紙同士を接合一体化するようにしてプレス成形を行うと、プレス成形時にそれぞれの紙が良好に延伸しながら成形・接合・積層一体化されて、深絞りの成形品、例えば深さが50mmに達するような深絞りの成形品であっても、その角隅部などに破れなどを生ずることなく、極めて円滑に製造することができるので特に好ましい。
【0040】
プレス成形に用いる成形装置は特に制限されず、例えば従来のプレス成形で用いられているのと同様に、雄型と雌型とからなるプレス成形金型が用いられ得る。また、プレス成形時の温度は、天然パルプの劣化防止、熱効率、プレス成形性、プレス成形用紙の延伸性や強度を良好に保ちながらプレス成形を行うなどの点から100〜250℃の温度であるのが好ましく、110〜180℃の温度であるのが好ましい。その際の加熱方法としては、プレス成形用紙を予め加熱しておかずにプレス成形金型のみを加熱しておいても、プレス成形用紙を予め加熱しておくと共にプレス成形金型の両方を加熱しておいても、また場合によってはプレス成形用紙のみを予め加熱しておいて、それを加熱していないプレス成形金型でプレスするようにしてもよい。そのうちでも、プレス成形金型のみを加熱する方法が工程性の点から好ましい。加熱方式は特に制限されず、例えば、電気ヒータによる加熱方式、熱風加熱方式、蒸気加熱方式、加熱オイル循環方式、それらの方式の併用などを採用できるが、電気加熱が簡易性の点から好ましい。
【0041】
また、プレス圧力なども、プレス成形用紙で用いている熱可塑性重合体繊維の種類や量、目的とする成形品のサイズ、厚さ、重ね合わせるプレス成形用紙の枚数、成形品の用途などに応じて調節できるが、一般に、5〜500kg/cm2程度のプレス圧力とするのが、紙に破損などを生ずることなく成形品を製造することができるので好ましく、10〜300kg/cm2のプレス圧力がより好ましく、20〜200kg/cm2のプレス圧力がさらに好ましい。
また、プレス成形時間も、目的とする成形品のサイズ、厚さ、重ね合わせるプレス成形用紙の枚数、プレス成形用紙で用いている熱可塑性重合体繊維の種類や量などに応じて調節し得るが、一般に、上記した温度で上記したプレス圧力で行う場合や、プレス時間を約2〜20秒程度にしておくのが好ましい。
【0042】
上記したプレス成形で製造する成形品の形状、構造、大きさ、厚さなどは特に制限されず、成形品の用途や使用目的などに応じて適宜決めることができる。一般に、本発明のプレス成形品の容器壁の厚さが約0.5〜1.5mmになるようにして、上記した本発明のプレス成形用紙を所要枚数重ねてプレス成形を行うと、良好な形状保持性、高い強度、緩衝性などを有する高品質の成形品が得られる。
【0043】
本発明のプレス成形品は、電気・電子部品やその他の工業部品の包装容器、緩衝用容器、トレーや樽、その他の各種食品包装用容器、紙皿、紙コップなどとして、従来の発泡ポリスチレンシートのプレス成形、発泡ポリスチレンビーズを用いたモールド成形などによる成形品、ポリ塩化ビニルシートや発泡体を用いた成形品などのプラスチック製の成形品に代わりに、有効に使用することができる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、熱可塑性重合体繊維の繊維伸度、収縮率(140℃/15分)、引張強度、弾性率は次のようにして求めた。
【0045】
熱可塑性重合体繊維の繊維伸度:
JIS−L−1075に準じて測定した。
【0046】
熱可塑性重合体繊維の収縮率(140℃ / 15℃):
短繊維に切断する前の複数本の熱可塑性重合体繊維(フィラメント)から長さ450mmの試料をランダムに採取し、その各々の試料に0.05mg/dの荷重をかけて、温度140℃の雰囲気中に15分放置して加熱した後に取り出して、それぞれの使用の加熱後の長さ(L15)(mm)を測定し、下記の数式により熱可塑性重合体繊維の収縮率(140℃/15分)を求め、10本の試料の平均値を採った。
【0047】
【数3】
熱可塑性重合体繊維の収縮率(140℃/15分)(%)={(L0−L15)/L0}×100
[式中、L0=加熱する前の試料の長さ(450mm)、L15=140℃で15分間加熱した後の試料の長さ(mm)]
【0048】
熱可塑性重合体繊維の引張強度:
JIS−L−1075に準じて測定した。
【0049】
《実施例 1》
(1) イソフタル酸単位を45モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレートを鞘部として、またポリエチレンテレフタレートを芯部として、鞘部:芯部=50:50重量比になるようにして芯鞘型複合繊維を製造した。その結果、得られた芯鞘型複合繊維は、その鞘部は融点をもたないが110℃で軟化する、単繊維繊度が2デニール、繊維伸度が35%、収縮率(140℃/15分)が82%および引張強度が4.5g/dの芯鞘型複合繊維であった。この芯鞘型複合繊維を繊維長5mmに切断した。
(2) 上記(1)で得られた繊維長5mmの芯鞘型複合繊維5重量部と、おむつ廃材から抽出した古紙パルプ(平均繊維長2.5mm)95重量部を用い、これに水を加えてパルパーにて混合して、古紙パルプおよび芯鞘型複合繊維の合計濃度が0.5重量%である抄紙原液を調製した後、この抄紙原液を用いて長網抄紙機にて湿式抄造して湿紙をつくり、プレスロールに取り付けたドクターでクレープをつけ、その後ヤンキードライヤー、次に多筒式ドライヤーに通し、その間も前記の2種のドライヤーにおける乾燥温度を110℃の範囲に保って乾燥して、目付け200g/m2のクレープを有するプレス成形用紙を製造した。
(3) 上記(2)で得られたプレス成形用紙を6枚重ねて、雄型および雌型の温度がいずれも150℃である加熱プレス装置を用いて、100kg/cm2のプレス圧力下に3秒間熱プレス成形を行って、その内径が縦×横×深さ=50mm×30mm×20mmである直方体形状の凹部を有するプレス成形品を製造した。その結果得られたプレス成形品は、壁部分の平均厚さが0.9mmであり、その底部の4つの角隅部やその他の箇所に全く破れが生じておらず、また4つの角隅部は薄くなっておらず、良好な仕上がりであった。
【0050】
《実施例 2》
(1) イソフタル酸単位を36モル%の割合で有する変性ポリエチレンテレフタレートを鞘部として、またポリエチレンテレフタレートを芯部として、鞘部:芯部=50:50重量比になるようにして芯鞘型複合繊維を製造した。その結果、得られた芯鞘型複合繊維は、その鞘部は融点をもたないが110℃で軟化する、単繊維繊度が2デニール、繊維伸度が50%、収縮率(140℃/15分)が50%および引張強度が4.0g/dの芯鞘型複合繊維であった。この芯鞘型複合繊維を繊維長5mmに切断した。
(2) 上記(1)で得られた繊維長5mmの芯鞘型複合繊維3重量部と、おむつ廃材から抽出した古紙パルプ(平均繊維長2.5mm)97重量部を用いて、実施例1の(2)と同様にして目付け100g/m2のクレープを有するプレス成形用紙を製造し、それを用いて実施例1の(3)と同様にしてプレス成形を行った。その結果、得られたプレス成形品は、その底部の4つの角隅部やその他の箇所に全く破れが生じておらず、しかも4つの角隅部は薄くなっておらず、良好な仕上がりであった。
【0051】
《実施例 3》
(1) エチレン単位を10モル%の割合で有する変性ポリプロピレンを鞘部として、またポリプロピレンを芯部として、鞘部:芯部=50:50重量比になるようにして芯鞘型複合繊維を製造した。その結果、得られた芯鞘型複合繊維は、その鞘部の融点が140℃である、単繊維繊度が2デニール、繊維伸度が48%、収縮率(140℃/15分)が29%および引張強度が6.5g/dの芯鞘型複合繊維であった。この芯鞘型複合繊維を繊維長5mmに切断した。
(2) 上記(1)で得られた繊維長5mmの芯鞘型複合繊維5重量部と、おむつ廃材から抽出した古紙パルプ(平均繊維長2.5mm)95重量部を用いて、実施例1の(2)と同様にして目付け100g/m2のクレープを有するプレス成形用紙を製造し、それを用いて実施例1の(3)と同様にしてプレス成形を行った。その結果、壁部分の平均厚さが0.9mmのプレス成形品が得られ、その底部の4つの角隅部やその他の箇所に全く破れが生じておらず、しかも4つの角隅部は薄くなっておらず、良好な仕上がりであった。
【0052】
《参考例 1》
(1) ポリプロピレンを単独で紡糸して、融点が170℃、単繊維繊度が2デニール、繊維伸度が49%、収縮率(140℃/15分)が12%および引張強度が4.4g/dのポリプロピレン繊維を得た。このポリプロピレン繊維を繊維長5mmに切断した。
(2) 上記(1)で得られた繊維長5mmのポリプロピレン繊維5重量部と、おむつ廃材から抽出した古紙パルプ(平均繊維長2.5mm)95重量部を用いて、実施例1の(2)と同様にして目付け100g/m2のクレープを有するプレス成形用紙を製造し、それを用いて実施例1の(3)と同様にしてプレス成形を行った。その結果、壁部分の平均厚さが0.9mmのプレス成形品が得られた。その底部の4つの角隅部は破れが生じておらずほぼ良好であったが、2つの角隅部は多少薄くなっていた。
【0053】
《比較例 1》
(1) ポリエチレンテレフタレートを単独で紡糸して、軟化点が約90℃、単繊維繊度が2デニール、繊維伸度が257%、収縮率(140℃/15分)が60%および引張強度が1.7g/dのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。このポリエチレンテレフタレート繊維を繊維長5mmに切断した。
(2) 上記(1)で得られた繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維5重量部と、おむつ廃材から抽出した古紙パルプ(平均繊維長2.5mm)95重量部を用いて、実施例1の(2)と同様にして目付け100g/m2のクレープを有するプレス成形用紙を製造し、それを用いて実施例1の(3)と同様にしてプレス成形を行った。その結果、プレス成形品の底部の4つの角隅部のうちの2カ所に破れが生じており、不良な仕上がりであった。
【0054】
【発明の効果】
本発明のプレス成形紙を用いた場合には、プレス成形時に紙の破損などを生ずることなく、所望の形状および寸法のプレス成形品を極めて円滑に製造することができ、特に、従来紙のプレス成形では不可能であった深さが50mmにも達すし複雑な凹凸を有するような深絞りのプレス成形品をも円滑に製造することができる。
特に、本発明のプレス成形用紙を複数枚重ねた状態で加熱プレス成形を行う場合は、上記したような深絞りの成形品を、紙の破損など生ずることなく、極めて円滑に製造することができる。
そして、本発明のプレス成形用紙を用いる場合は、紙をプレス成形前やプレス成形時に湿潤することなく乾燥した状態でそのままプレス成形を行うことができるので、プレス成形の工程が極めて簡単であり、しかも湿潤した紙を乾燥する必要がないので、熱効率の点でも有利である。
本発明により得られるプレス成形品は良好な強度、緩衝作用を有しているので、電気・電子部品の包装容器、その他の工業用部品の包装容器、各種食品の包装容器、紙コップ、紙皿などの種々の用途に有効に使用することができる。
本発明の包装容器などのプレス成形品は、従来のプラスチック製包装容器に比べて、プラスチックの使用割合が大幅に低減されているので、使用済みプラスチックにおいて問題となっている種々の弊害を低減したり、解消することができる。
Claims (8)
- 天然パルプと熱可塑性重合体繊維を含むプレス成形用紙であって、プレス成形用紙における天然パルプ:熱可塑性重合体繊維の含有割合が99:1〜50:50(重量比)であり、そして前記の熱可塑性重合体繊維として、熱接着性を有し、繊維伸度が20〜70%であり且つ140℃に15分間保持したときの収縮率が20〜90%である熱可塑性重合体繊維を用いたことを特徴とするプレス成形用紙。
- 熱可塑性重合体繊維における表面部分の軟化点または融点が80〜250℃である請求項1のプレス成形用紙。
- 熱可塑性重合体繊維が、低融点の熱可塑性重合体よりなる鞘部と、高融点の熱可塑性重合体よりなる芯部とからなる芯鞘型複合繊維である請求項1または2のプレス成形用紙。
- 熱可塑性重合体繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維;ポリブチレンテレフタレート繊維;変性ポリエチレンテレフタレート繊維;変性ポリブチレンテレフタレート繊維;変性ポリプロピレン繊維;並びに変性ポリエチレンテレフタレート、変性ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンの少なくとも1種からなる鞘部とポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびポリアミドの少なくとも1種からなる芯部とからなる芯鞘型複合繊維から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性重合体繊維である請求項3のプレス成形用紙。
- 目付けが10〜400g/m2である請求項1〜4のいずれか1項のプレス成形用紙。
- 請求項1〜5のいずれか1項のプレス成形用紙を用いて熱プレス成形を行うことを特徴とする成形品の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項のプレス成形用紙を2枚以上重ねて、重ねたプレス成形用紙同士が積層一体化する温度および圧力下に熱プレス成形を行うことを特徴とする成形品の製造方法。
- 請求項6または7の方法により製造されたプレス成形品。
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