JP2019115982A - 複合成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】板状植物繊維基材部と板状熱可塑性樹脂基材部とをそなえる複合成形体を提供する。【解決手段】板状植物繊維基材部1が、板状熱可塑性樹脂基材部2の側へと拡幅され、板状熱可塑性樹脂基材部2が幅狭とされている箇所(幅狭部21、22)を備える複合成形体10である。また、板状植物繊維基材部の端面が、板状植物繊維基材部の両端部側から中央部へと徐々に板状熱可塑性樹脂基材部の側へと傾斜している形態とすることができる。更に、板状熱可塑性樹脂基材部の長さ方向において幅広となっている幅広部で、板状植物繊維基材部が板状熱可塑性樹脂基材部の側へとV字状又は弧状に拡幅されている形態とすることができる。これにより、板状熱可塑性樹脂基材部の板状植物繊維基材部の端面に接合された一方の端面とは反対側の他方の端面は略平坦面となる。【選択図】図4

Description

本発明は複合成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、板状植物繊維基材部の端面に接合された、板状熱可塑性樹脂基材部を備え、板状植物繊維基材部が板状熱可塑性樹脂基材部の側へと拡幅されることで、板状熱可塑性樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備える複合成形体に関する。
近年、ケナフ等の、短期間で成長し、且つ二酸化炭素吸収量が多い植物資源が、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の観点から注目されている。また、この植物資源を熱可塑性樹脂と複合化した材料を用いてなる複合材としての利用が期待されている。更に、このような植物資源を用いてなる繊維ボードの製造方法も知られており、車両用内装材等の用途に用いることが検討されている。
従来、樹脂成形体からなる車両用内装材の、車室側とは反対側となる裏面には、内装材を車両パネルに取り付けるためのリテーナーブラケット、ボス、ランナー等のアンダー形状構造物が取り付けられている。これらのアンダー形状構造物は、基材をプレス成形すると同時に、基材の裏面に熱可塑性樹脂を射出成形することにより設けられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された成形構造体では、トリムボードに溶融樹脂を射出することで、トリムボードと接合されたブラケットが成形されたドアトリムが例示されている。
特開2013−91287号公報
前述のように、プレス成形された車両内装用基材の裏面には、射出成形により各種のアンダー形状構造物が取り付けられている。また、植物繊維等の補強繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いて成形された基材は、通常、その全面が板状に形成される。そのため、表面(裏面)にアンダー形状構造物を取り付けることができるとともに、基材の外周縁の端面に樹脂成形部を連接することも考えられる。
しかし、植物繊維等の補強繊維を含有する熱可塑性樹脂と、含有しない熱可塑性樹脂とでは熱収縮率に大差があるため、基材の外周縁の端面に樹脂成形部を連接した場合、成形方法によっては樹脂成形部が変形することがある。この変形はSBI成形法等であれば抑えることができるが、熱プレスにより植物繊維等の補強繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いて基材を成形し、この基材の端面に熱可塑性樹脂を射出し、樹脂成形部を成形したときは、樹脂成形部の平面形状によっては特定の方向への変形が大きくなることがある。
例えば、植物繊維等の補強繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いて成形された基材の端面に、樹脂成形部が連設されてなる車両用内装材等では、図5の正面図、図6の斜視図のように、板状熱可塑性樹脂基材部2aの板状植物繊維基材部1の端面に接合された端面とは反対側の端面が、基材部側へとアーチ状に変形してしまうことがある(変形部3参照)。
本発明は、上述の従来の問題を解決するものであり、板状植物繊維基材部(以下、繊維基材部と略記することもある)の端面に接合された、板状熱可塑性樹脂基材部(以下、樹脂基材部と略記することもある)を備え、繊維基材部が樹脂基材部の側へと拡幅されることで、樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備え、樹脂基材部の変形が抑えられる複合成形体を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.板状植物繊維基材部と、前記板状植物繊維基材部の端面に接合された、板状熱可塑性樹脂基材部とを備える複合成形体において、
前記板状植物繊維基材部が、前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へと拡幅され、前記板状熱可塑性樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備えることを特徴とする複合成形体。
2.前記板状植物繊維基材部の前記端面が、前記板状植物繊維基材部の両端部側から中央部へと徐々に前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へと傾斜している前記1.に記載の複合成形体。
3.前記板状熱可塑性樹脂基材部の長さ方向において幅広となっている幅広部で、前記板状植物繊維基材部が前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へとV字状又は弧状に拡幅されている前記1.に記載の複合成形体。
4.前記板状熱可塑性樹脂基材部の前記板状植物繊維基材部の前記端面に接合された一方の端面とは反対側の他方の端面は略平坦面である前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
5.前記板状植物繊維基材部を構成する植物繊維がケナフ繊維である前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
6.前記植物繊維同士が、熱可塑性樹脂及び酸変性熱可塑性樹脂により結着されている前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
7.車両用内装材である前記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
本発明の複合成形体は、繊維基材部が、樹脂基材部の側へと拡幅され、樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備える。そのため、樹脂基材部が幅狭とされている箇所では、熱収縮率の大きい熱可塑性樹脂を用いてなる樹脂基材部の熱収縮による幅方向への変形が抑えられる。これにより、樹脂基材部の繊維基材部の端面に接合された端面とは反対側の端面がより平坦面となり、例えば、車両用内装材等の複合成形体の他部材への良好な組み付け性が保持される。
また、繊維基材部の端面が、繊維基材部の両端部側から中央部へと徐々に樹脂基材部の側へと傾斜している場合は、樹脂基材部が全長さに亘って繊維基材部によって幅狭とされているため、樹脂基材部の繊維基材部の端面に接合された端面とは反対側の端面を、全長さに亘ってより平坦な面とすることができる。
更に、樹脂基材部の長さ方向において幅広となっている幅広部で、繊維基材部が樹脂基材部の側へとV字状又は弧状に拡幅されている場合は、樹脂基材部の特に変形し易い個所での変形を十分に抑えることができ、樹脂基材部の繊維基材部の端面に接合された端面とは反対側の端面を、全長さに亘ってより平坦な面とすることができる。
また、樹脂基材部の繊維基材部の端面に接合された一方の端面とは反対側の他方の端面が略平坦面である場合は、例えば、車両用内装材等の複合成形体を、他部材に容易に組み込むことができ、パネル等に容易に取り付けることができる。
更に、繊維基材部を構成する植物繊維がケナフ繊維である場合は、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の観点で、より有用な複合成形体とすることができる。
また、植物繊維同士が、熱可塑性樹脂及び酸変性熱可塑性樹脂により結着されている場合は、優れた曲げ剛性等を有する複合成形体とすることができる。
更に、複合成形体が車両用内装材である場合は、他の内装材への組み付け、パネルへの取り付けなどが容易な内装材とすることができる。
本発明の複合成形体の一例である車両用内装材の正面図である。 図1の車両用内装材を幅広側からみた端面図である。 図1の車両用内装材を上方からみた平面図である。 図1の車両用内装材を幅広側の斜め方向からみた斜視図である。 成形時の樹脂基材部の形状が略長方形であった比較例の車両用内装材の正面図である。 図5の車両用内装材を幅広側の斜め方向からみた斜視図である。 本発明の複合成形体の他例である車両用内装材の正面図である。 幅広の樹脂基材部への繊維基材部の拡幅がなされていない比較例の車両用内装材の正面図である。
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本発明の複合成形体10は、板状植物繊維基材部1と、板状植物繊維基材部1の端面に接合された、板状熱可塑性樹脂基材部2とを備える(図1〜4及び7参照)。また、板状植物繊維基材部1が、板状熱可塑性樹脂基材部2の側へと拡幅され、板状熱可塑性樹脂基材部2が幅狭とされている箇所を備える(図1、3及び4の幅狭部21、22及び図7のV字状幅狭部参照)。
(1)板状植物繊維基材部と板状熱可塑性樹脂基材部との相関
本発明の複合成形体10では、繊維基材部1が、樹脂基材部2の側へと拡幅され、樹脂基材部2が幅狭とされている箇所を備える。即ち、繊維基材部1と樹脂基材部2との合計幅が同じであって、繊維基材部1が拡幅されることで、樹脂基材部2が幅狭とされている箇所を備える。
(a)樹脂基材部が長方形に近似の形状である形態(樹脂基材部が幅狭とされている箇所が樹脂基材部の長さ方向の全長さに亘る場合)
樹脂基材部2は繊維基材部1と比べて熱収縮率が大きく、成形後の冷却過程及び冷却後の養生過程において、樹脂基材部2は幅方向、長さ方向ともに寸法変化が大きい。一方、繊維基材部1は幅方向、長さ方向ともに寸法変化が小さい。特に、樹脂基材部2の長さ方向の寸法が幅方向の寸法と比べて大きい、例えば、樹脂基材部2が長方形に近似の形状である場合、長さ方向の熱収縮(Ls)が大きく、長さ方向の両端部側における幅方向の熱収縮(Es)はLsと比べて相当に小さく、長さ方向の中央部における幅方向の熱収縮(Cs)はEsと比べて大きくなる。
上述のように、樹脂基材部2が長方形に近似の形状である場合、方向及び位置によって熱収縮に差異があるが、樹脂基材部2の一方の端面は繊維基材部1の端面に接合されているため実質的に変形しない。そのため、図5、6の複合成形体20のように、樹脂基材部2aの他方の端面が、長さ方向の両端部側から中央部へと弧状に変形し(変形部3参照)、破線による仮想線で表す平坦面から離間することになる。このように端面が変形すると、複合成形体20を他の部材に組み付けたり、固定したりするときの作業性が低下するという問題がある。
そこで、本発明の複合成形体10では、予測される樹脂基材部2の端面の変形を抑えるため、予め、繊維基材部1の端面を、繊維基材部1の両端部側から中央部へと徐々に樹脂基材部2の側へと傾斜している形態とする(例えば、本発明の複合成形体10の一例である車両用内装材の正面図である図1及び斜視図である図4参照)。このように、図5、6のような樹脂基材部2aの他方の端面の変形を予測し、図1、4のように繊維基材部1を樹脂基材部2の側へと幅広となるようにすることで、樹脂基材部2の他方の端面の変形が抑えられ、端面が略平坦面となり、複合成形体10を他の部材に組み付けたり、固定したりするときの作業性が保持される。尚、図2は図1の複合成形体10を幅広側からみた端面図であり、図3は図1の複合成形体10を上方からみた平面図であり、繊維基材部1を幅広とすることで、各方向からみた場合、図2、3、4のような複合成形体10となる。
(b)樹脂基材部が一部に幅広部を有し、この幅広部で繊維基材部が拡幅され、樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備える形態
樹脂基材部2が、図8のように、長さ方向の一部において他部の幅狭部23と比べて幅広となっている幅広部25を有する場合、前記(a)に記載したような熱収縮の相関によって、樹脂基材部の幅広部25において、樹脂基材部の他方の端面が、長さ方向の幅広部25の中央部において弧状に変形し(変形部3参照)、破線による仮想線で表す平坦面から離間することになる。このように端面が変形すると、複合成形体20を他の部材に組み付けたり、固定したりするときの作業性が低下するという問題がある。
そこで、本発明の複合成形体10では、予測される樹脂基材部2の端面の変形を抑えるため、長さ方向の幅広部25(図8参照)において、予め、繊維基材部1の端面を、樹脂基材部2の側へとV字状(図7参照)又は弧状に拡幅し、幅広部25(図8参照)を幅狭とする(図7の繊維基材部1の拡幅により幅狭とされたV字状幅狭部24参照)。これにより、樹脂基材部2の他方の端面の変形が抑えられ、図7のように、端面が略平坦面となった樹脂基材部2となり、複合成形体10を他の部材に組み付けたり、固定したりするときの作業性が保持される。
(2)板状植物繊維基材部となる成形体の成形
繊維基材部1となる成形体は、植物繊維の原綿とポリオレフィン樹脂繊維の原綿とを混綿してウェブを形成し、その後、植物繊維と樹脂繊維とを交絡させ、繊維マットを形成し、次いで、繊維マットを熱プレスして形成することができる。
植物繊維の原綿と樹脂繊維の原綿とを混綿する方法は特に限定されず、種々の方法により混綿することができる。この混綿方法としては、乾式法と湿式法とがあるが、植物繊維は吸湿性を有するため、抄紙法等の湿式法により混綿した場合、高度な乾燥工程を必要とすることになるため、より簡易に混綿することができる乾式法が好ましい。また、乾式法としては、エアーレイ方式及びカード方式等が挙げられるが、より簡易な装置で効率よく混綿することができるエアーレイ方式が好ましい。エアーレイ方式では、各々の繊維を気流によって浮遊させ、その後、コンベアベルト等に堆積させて、植物繊維と樹脂繊維とが混綿され、堆積されて、ウェブが形成される。
更に、エアーレイ方式では、ウェブの形態は特に限定されず、混綿され、堆積されて、形成された1層のウェブのみからなっていてもよく、2層以上のウェブが積層されていてもよい。繊維マットの厚さは、ウェブの層数によって調整することができ、これにより形成される繊維基材部1の目付も調整することができる。また、ウェブは、植物繊維と樹脂繊維とがより十分に絡み合い、混合されるように交絡されて繊維マットが形成される。交絡方法は特に限定されず、ニードルパンチ法、ステッチボンド法及びウォーターパンチ法等が挙げられる。
熱プレスは、繊維マットを加熱し、加圧して繊維基材部1となる成形体を形成する工程である。この加熱加圧によって、繊維マットに含有された樹脂繊維及び酸変性樹脂を用いる場合は、この酸変性樹脂が溶融する。また、熱プレス後、繊維基材部1となる成形体は、環境温度、例えば、20〜30℃程度にまで冷却される。これにより、樹脂繊維が溶融した後、冷却されて固化した樹脂と、酸変性樹脂を用いる場合は、この酸変性樹脂が溶融した後、冷却されて固化した樹脂とによって植物繊維同士が結着される。
植物繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する繊維が挙げられる。この植物繊維は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有し、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献することができるケナフが有する繊維が好ましい。また、植物のうちの用いる部位は特に限定されず、非木質部、木質部、葉部、茎部及び根部等の植物を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよいし、2箇所以上の異なる部位を併用することもできる。
ケナフは木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。このケナフとしては、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等、並びに通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が挙げられる。植物繊維としてケナフが有する繊維を用いる場合、強靱な繊維を有する靭皮と称される外層部分を用いることが好ましい。
樹脂繊維を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、特にエチレン−プロピレンブロック共重合樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂は2種以上を併用してもよいが、通常、1種のみが用いられ、エチレン−プロピレンブロック共重合樹脂が用いられることが多い。
植物繊維と樹脂繊維との質量割合は特に限定されないが、植物繊維と樹脂繊維との合計を100質量%とした場合に、植物繊維は30〜95質量%であることが好ましい。この範囲であれば、優れた曲げ強度等、及び賦形性を有する複合成形体10とすることができる。この植物繊維の含有量は35〜85質量%、更に40〜75質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、曲げ強度等の物性及び賦形性がより向上する。尚、植物繊維の質量は、平衡水分率10%における測定値であるものとする。
繊維基材部1は、熱プレス時に樹脂繊維が溶融し、その後、冷却され、固化した樹脂により植物繊維が結着されて形成されるが、通常、植物繊維との親和性が高く、植物繊維間をより強固に結着されることができる酸変性樹脂が併用される。この酸変性樹脂としては、前述の各種のポリオレフィン樹脂を酸変性した樹脂を用いることができる。更に、非変性のポリオレフィン樹脂と、酸変性に用いるポリオレフィン樹脂とは同種の樹脂であることが好ましい。また、同種の樹脂であり、且つ各々の樹脂の平均分子量、密度等の物性の差が小さい樹脂であることがより好ましく、共重合体であるときは、各々の単量体単位の割合の差が小さいことがより好ましい。また、併用される酸変性樹脂の形態は特に限定されず、例えば、酸変性樹脂繊維として、予め樹脂繊維に混綿して用いることができる。
ポリオレフィン樹脂に酸基を導入する方法も特に限定されないが、通常、ポリオレフィン樹脂に酸基を有する化合物を反応させて導入する、所謂、グラフト重合により導入することができる。酸基を有する化合物も特に限定されず、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等の酸無水物、及びマレイン酸、イタコン酸、コハク酸等の有機酸が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、酸無水物が用いられることが多く、特に無水マレイン酸及び無水イタコン酸が多用される。
更に、樹脂繊維と酸変性樹脂との合計を100質量%としたときに、酸変性樹脂は1〜15質量%、更に1〜10質量%、特に1〜8質量%であることが好ましい。酸変性樹脂の配合量が1〜15質量%であれば、複合成形体10の曲げ強度等を十分に向上させることができる。また、樹脂繊維を構成する樹脂と酸変性樹脂に用いる樹脂とは同種の樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよいが、前述のように同種であることが好ましい。同種であれば、複合成形体10の製造が容易であり、生産性を向上させることもできる。
(3)板状熱可塑性樹脂基材部及び複合成形体の成形
樹脂基材部2となる成形体は、前記(2)のようにして成形された繊維基材部1となる成形体を加熱し、その後、成形型のキャビティにインサートし、加圧するとともに、繊維基材部1となる成形体の端面に向けて熱可塑性樹脂を射出し、次いで、冷却することにより成形することができる。また、これにより繊維基材部1と樹脂基材部2とを備える複合成形体10を製造することができる。
樹脂基材部2となる成形体の成形に用いる熱可塑性樹脂は、繊維基材部1となる成形体に用いる樹脂繊維を構成する樹脂との親和性を考慮すると、樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が挙げられ、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、特にエチレン−プロピレンブロック共重合樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂は2種以上を併用してもよいが、通常、1種のみが用いられ、エチレン−プロピレンブロック共重合樹脂が用いられることが多い。
(4)複合成形体の用途
複合成形体10の用途は特に限定されないが、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材などとして用いることができる。これらのうち、自動車用としては、ドアトリム、ルーフトリム、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ等が挙げられる。更に、複合成形体10は、建築物の内装材として用いることもできる。例えば、ドア内装材、及び机、椅子、棚、箪笥等の各種家具などの表装材等として用いることができる。その他、緩衝材等の保護用部材及びパーティション部材等として用いることもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
ケナフ繊維と、ポリプロピレン繊維と無水マレイン酸変性ポリプロピレン繊維とを混綿したものとを、合計を100質量%とした場合に、ケナフ繊維が50質量%、ポリプロピレン繊維が48.5質量%、無水マレイン酸変性ポリプロピレン繊維が1.5質量%の質量割合となるように混綿してウェブを形成し、その後、ニッドルパンチ法によって各々の繊維を交絡させて繊維マットを形成した。次いで、この繊維マットを210℃、300MPaの条件で加熱加圧し、その後、室温(20〜23℃程度)にまで冷却させ、繊維基材部となる成形体を形成した。
また、上述のようにして形成した繊維基材部となる成形体の、樹脂基材部となる成形体を形成するための熱可塑性樹脂を射出し、接合させる端面を、図1のように長さ方向の中央部に向かって幅広となるような形状に裁断し、裁断後の成形体を210℃に加熱し、加熱された成形体を複合成形体を製造するための所定形状のキャビティを有する成形型にインサートして加圧し、その後、成形体の端面に向けて温度200℃でエチレン−プロピレンブロック共重合樹脂を射出し、次いで、冷却し、複合成形体を製造した。
比較例1
実施例1における繊維基材部となる成形体の、樹脂基材部となる成形体を形成するための熱可塑性樹脂を射出し、接合させる端面を裁断せず、図5のように、平坦面のままとした他は、実施例1と同様にして複合成形体を製造した。
その後、実施例1及び比較例1の複合成形体に取り付けられたボス等の基準となる部品を、測定冶具の基準ブロックに載置し、常法に従って、樹脂基材部の端面の両端部を結ぶ平面からの離間寸法を測定した。
上述のようにして測定した結果、実施例1の複合成形体では、樹脂基材部の端面の両端部を結ぶ平面からの離間寸法は、最大で3.6mmであった。一方、比較例1の複合成形体では、最大で7.0mmであった。このように、実施例1の複合成形体では、比較例1の複合成形体と比べて、離間寸法が相当に小さく、車両用内装材等の複合成形体の他部材への組み付け性が保持されることが分かる。
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は、車両及び建築物等の内装材、特に車両用内装材などの技術分野において利用することができる。
10、20;複合成形体、1;板状植物繊維基材部、2、2a;板状熱可塑性樹脂基材部、3;変形部、21、22、23;幅狭部、24;V字状幅狭部、25;幅広部。

Claims (7)

  1. 板状植物繊維基材部と、前記板状植物繊維基材部の端面に接合された、板状熱可塑性樹脂基材部とを備える複合成形体において、
    前記板状植物繊維基材部が、前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へと拡幅され、前記板状熱可塑性樹脂基材部が幅狭とされている箇所を備えることを特徴とする複合成形体。
  2. 前記板状植物繊維基材部の前記端面が、前記板状植物繊維基材部の両端部側から中央部へと徐々に前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へと傾斜している請求項1に記載の複合成形体。
  3. 前記板状熱可塑性樹脂基材部の長さ方向において幅広となっている幅広部で、前記板状植物繊維基材部が前記板状熱可塑性樹脂基材部の側へとV字状又は弧状に拡幅されている請求項1に記載の複合成形体。
  4. 前記板状熱可塑性樹脂基材部の前記板状植物繊維基材部の前記端面に接合された一方の端面とは反対側の他方の端面は略平坦面である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
  5. 前記板状植物繊維基材部を構成する植物繊維がケナフ繊維である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
  6. 前記板状植物繊維基材部を構成する植物繊維同士が、熱可塑性樹脂及び酸変性熱可塑性樹脂により結着されている請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
  7. 車両用内装材である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の複合成形体。
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