以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る波形整形フィルタについて、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R1と、トランジスタM1と、容量C1と、増幅器A1と、を備える。図1における電流源Isignalは、波形整形フィルタに信号電流Isignalを入力する電流源である。
抵抗R1(第1の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R1の一端は、増幅器A1の入力端子及び電流源Isignalに接続される。これにより、抵抗R1は、一端から入力電流Isignalが入力される。抵抗R1の他端は、トランジスタM1のソース端子及び容量C1の一端に接続される。
トランジスタM1(第1のトランジスタ)は、NチャネルMOSトランジスタ(以下、「NMOS」という)であり、ソース端子(第1端子)と、ゲート端子(制御端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、を備える。ソース端子は、抵抗R1の他端及び容量C1の一端に接続される。ゲート端子は、増幅器A1の出力端子に接続される。トランジスタM1は、ドレイン端子から出力電流Ioutを出力する。
容量C1(第1の容量)は、一端及び他端を備える。容量C1の一端は、抵抗R1の他端及びトランジスタM1のソース端子に接続される。容量C1の他端は、接地される。接地とは、接地線(第1の基準電圧線)に接続することをいう。
増幅器A1(第1の増幅器)は、反転増幅器であり、入力端子及び出力端子を備える。入力端子は、抵抗R1の一端及び電流源Isignalに接続される。これにより、増幅器A1は、入力端子から信号電流Isignal又は抵抗R1の一端の端子電圧が入力される。出力端子は、トランジスタM1のゲート端子に接続される。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。
上述の通り、波形整形フィルタは、増幅器A1の出力が、トランジスタM1及び抵抗R1を介して増幅器A1に帰還される構成となっている。このため、増幅器A1の入力端子は、仮想接地点となり、電圧が略一定となる。
このとき、電流源Isignalからみた波形整形フィルタの入力インピーダンスは、増幅器A1が電圧入力型の場合、(1+gm1×R1)/{gm1(1+A1)}となる。ここで、gm1は、トランジスタM1のトランスコンダクタンス、A1は、増幅器A1の利得である。一般に、増幅器A1の利得は非常に大きいため、波形整形フィルタの入力インピーダンスは、非常に小さくなる。
このため、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R1を流れ、トランジスタM1のソース端子にIsignal×R1の電圧が発生する。ここで、Isignalは、信号電流Isignalの電流値、R1は、抵抗R1の抵抗値である。
また、トランジスタM1のソース端子に電圧が発生することにより、容量C1には、信号電流Isignalの時間微分に比例した電流Isignal×R1×sC1が流れる。ここで、sは、ラプラス変数、C1は、容量C1の容量値である。
結果として、トランジスタM1には、Isignalと、Isignal×R1×sC1と、の和であるIsignal×(1+sC1×R1)の電流が流れ、この電流がドレイン端子から出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに、信号電流Isignalの微分成分を重畳して出力する。これにより、信号電流Isignalの高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
なお、波形整形フィルタは、信号電流Isignalが有する低域通過特性の時定数と等しい時定数を有するのが好ましい。本実施形態の場合、波形整形フィルタの時定数は、C1×R1である。これにより、信号電流Isignalから低域通過特性を除去し、パルス幅を狭めることができる。
(第1実施例)
図2は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。本実施例において、増幅器A1は、電流入力型の増幅器である。図2に示すように、増幅器A1は、トランジスタM11,M12,M13,M14と、電流源Ib11,Ib12と、を備える。
トランジスタM11は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるNMOSである。トランジスタM11のソース端子は、電流源Ib11に接続され、ドレイン端子は、トランジスタM13のドレイン端子及び増幅器A1の出力端子Outに接続され、ゲート端子は、所定のバイアス電圧Vbiasを印加される。
トランジスタM12は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるNMOSである。トランジスタM12のソース端子は、電流源Ib12及び増幅器A1の入力端子Inに接続され、ドレイン端子は、トランジスタM14のドレイン端子及びトランジスタM13,M14のゲート端子に接続され、ゲート端子は、所定のバイアス電圧Vbiasを印加される。
トランジスタM13は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるPチャネルMOSトランジスタ(以下、「PMOS」という)である。トランジスタM13のソース端子は、電源に接続され、ドレイン端子は、トランジスタM11のドレイン端子及び増幅器A1の出力端子Outに接続され、ゲート端子は、トランジスタM14のゲート端子、ドレイン端子、及びトランジスタM12のドレイン端子に接続される。
トランジスタM14は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるPMOSである。トランジスタM14のソース端子は、電源に接続され、ドレイン端子は、トランジスタM13,M14のゲート端子及びトランジスタM12のドレイン端子に接続され、ゲート端子は、トランジスタM13のゲート端子及びトランジスタM14のドレイン端子に接続される。
電流源Ib11は、トランジスタM11に所定のバイアス電流Ib11を供給する。電流源Ib12は、トランジスタM12に所定のバイアス電流Ib12を供給する。
次に、この増幅器A1の動作を説明する。以下では、トランジスタM11,M12のサイズが等しく、トランジスタM13,M14のサイズが等しく、バイアス電流Ib11,Ib12の電流値がIb1に等しいものとする(Ib11=Ib12=Ib1)。
増幅器A1の入力端子Inから電流ΔIが供給されると、トランジスタM12,M14には、ΔI+Ib1の電流が流れる。この電流は、トランジスタM13,M14により構成されるカレントミラー回路により折り返される。これにより、トランジスタM13には、ΔI+Ib1の電流が流れる。
これに対して、トランジスタM11には、電流源Ib11により供給されるバイアス電流Ib1のみが流れる。
ΔI>0の場合、すなわち、増幅器A1の入力端子Inの電圧が低下し、入力端子Inから抵抗R1の一端の側に電流が流れる場合、トランジスタM13のドレイン端子から供給される電流がトランジスタM11のドレイン端子から引き込む電流より大きくなるため、出力端子Outに接続されたトランジスタM1のゲート電圧が上昇する。
トランジスタM1のゲート電圧が上昇すると、トランジスタM1のソース電圧が上昇し、抵抗R1の一端の電圧(増幅器A1の入力端子Inの電圧)が上昇する。これにより、電流ΔIが0となるように帰還がかかり、トランジスタM12のソース電圧(増幅器A1の入力端子Inの電圧)は、トランジスタM11のソース電圧と略等しくなる。
一方、ΔI<0の場合、すなわち、増幅器A1の入力端子Inの電圧が上昇し、抵抗R1の一端から入力端子Inの側に電流が流れる場合、トランジスタM13のドレイン端子から供給される電流がトランジスタM11のドレイン端子から引き込む電流より小さくなるため、出力端子Outに接続されたトランジスタM1のゲート電圧が低下する。
トランジスタM1のゲート電圧が低下すると、トランジスタM1のソース電圧が低下し、抵抗R1の一端の電圧(増幅器A1の入力端子Inの電圧)が低下する。これにより、電流ΔIが0となるように帰還がかかり、トランジスタM12のソース電圧(増幅器A1の入力端子Inの電圧)は、トランジスタM11のソース電圧と略等しくなる。
したがって、増幅器A1の入力端子Inは、上述の通り仮想接地点となり、電圧が略一定となる。これにより、波形整形フィルタを上述の通り動作させることができる。
以上説明した通り、増幅器A1として、電流入力型の増幅器を用いることができる。また、電流入力型の増幅器A1を用いた場合、増幅器A1の単体の入力インピーダンスは、1/gm12となり、電流源Isignalからみた波形整形フィルタの入力インピーダンスは、(1+gm1×R1)/{gm1(1+A1)+gm12(1+gm1×R1)}となる。ここで、gm12は、トランジスタM12のトランスコンダクタンスである。
したがって、電流入力型の増幅器A1を用いることにより、電圧入力型の増幅器A1を用いた場合よりも波形整形フィルタの入力インピーダンスを小さくし、増幅器A1の入力端子Inの電圧の変動を抑制することができる。これにより、波形整形フィルタの入力電圧の変動に起因する出力電流Ioutの誤差を小さくすることができる。
(第2実施例)
図3は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第2実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、電流源Idc1を更に備える。他の構成は図1と同様である。
電流源Idc1(第1の電流源)は、一端及び他端を備える直流電流源である。電流源Idc1の一端は、抵抗R1の他端、トランジスタM1のソース端子、及び容量C1の一端に接続される。図3において、電流源Idc1の他端は、接地されているが、電源に接続されていてもよい。電流源Idc1は、トランジスタM1をオンする任意の直流電流Idc1を供給する。
このような構成により、本実施例によれば、波形整形フィルタにパルス性の信号電流Isignalが入力される場合の応答速度を向上することができる。理由は以下の通りである。
パルス性の信号電流Isignalとは、バイアス電流にパルス性の入力信号(高周波成分)が重畳された電流である。したがって、入力信号が到来していない場合、波形整形フィルタには、信号電流Isignalとしてバイアス電流のみが入力される。このため、バイアス電流が小さい場合、入力信号が到来するまでトランジスタM1が十分にオンしない状態となる恐れがある。このようなトランジスタM1に入力信号が到来すると、応答が遅延してしまう。
しかしながら、本実施例のように、電流源Idc1によってトランジスタM1を予めオンしておくことにより、上記のような遅延を抑制し、入力信号に対する応答速度を向上させることができる。
(第3実施例)
図4は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第3実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、抵抗R1aを更に備える。他の構成は図1と同様である。
抵抗R1a(第2の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R1aの一端は、容量C1の他端に接続され、抵抗R1aの他端は接地されている。
このような構成により、本実施例では、波形整形フィルタのフィルタ特性は、{1+sC1(R1+R1a)}/(1+sC1×R1a)となる。すなわち、波形整形フィルタに信号電流Isignalが入力されると、Isingal×{1+sC1(R1+R1a)}/(1+sC1×R1a)が出力電流Ioutとして出力される。信号電流Isignalの高域成分を強調するフィルタ特性(以下、「強調特性」という)は、1+sC1(R1+R1a)により実現される。
したがって、図1及び図4の容量値C1を同一とし、図1の抵抗値R1と図4の抵抗値R1+R1aを同一とすることにより、図1及び図4の強調特性を一致させることができる。すなわち、本実施例に係る波形整形フィルタによれば、所定の強調特性を得るための抵抗値R1を、図1の波形整形フィルタより抵抗値R1aだけ小さくすることができる。
抵抗値R1を小さくすると、抵抗R1にかかる電圧が小さくなり、トランジスタM1のソース電圧が低下する。したがって、波形整形フィルタの電源電圧を低下させ、消費電力を低減することができる。
ここで、信号電流Isignalが2つの時定数を有する低域通過特性の場合について検討する。このとき、信号電流Isignalの電流値は、Isignal=Is{a/(1+sτ1)+b/(1+sτ2)}(ただし、τ1>τ2)で表される。τ1,τ2は、時定数である。
上記の式は、Isignal=(a+b){1+s(aτ2+bτ1)/(a+b)}/{(1+sτ1)×(1+sτ2)}と変形できる。ここで、τ1=C1(R1+R1a)、(aτ2+bτ1)/(a+b)=C1×R1aとなるように、C1,R1,R1aを選択すると、出力電流Ioutは、1/(1+sτ2)に比例した電流となる。
この出力電流Ioutを、1+sτ2のフィルタ特性を有する波形整形フィルタに入力することにより、信号電流Isignalから低域通過特性を除去することができる。1+sτ2のフィルタ特性を有する波形整形フィルタは、本実施形態に係る波形整形フィルタにより実現できる。例えば、図1の波形整形フィルタのC1,R1を、τ2=C1×R1となるように選択してもよいし、図4の波形整形フィルタのC1,R1,R1aを、τ2=C1×(R1+R1a)となるように選択してもよい。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、容量値や抵抗値を調整することにより、1つの時定数或いは2つの時定数の場合の低域通過特性を有する信号電流Isignalから低域通過特性を除去することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る波形整形フィルタについて、図5〜図8を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図5に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R2と、トランジスタM2,M3と、容量C2と、増幅器A2と、を備える。図5における電流源Isignalは、波形整形フィルタに信号電流Isignalを入力する電流源である。
抵抗R2(第1の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R2の一端は、増幅器A2の入力端子及び電流源Isignalに接続される。これにより、抵抗R2は、一端から入力電流Isignalが入力される。抵抗R2の他端は、トランジスタM2のドレイン端子及び容量C1の一端に接続される。
トランジスタM2(第1のトランジスタ)は、NMOSであり、ドレイン端子(第1端子)と、ゲート端子(制御端子)と、ソース端子(第2端子)と、を備える。ドレイン端子は、抵抗R2の他端及び容量C2の一端に接続される。ゲート端子は、増幅器A2の出力端子に接続される。ソース端子は、接地される。
トランジスタM3(第2のトランジスタ)は、NMOSであり、ドレイン端子(第1端子)と、ゲート端子(制御端子)と、ソース端子(第2端子)と、を備える。ゲート端子は、トランジスタM2のゲート端子及び増幅器A2の出力端子に接続される。ソース端子は、接地される。トランジスタM3は、ドレイン端子から出力電流Ioutを出力する。
容量C2(第1の容量)は、一端及び他端を備える。容量C2の一端は、抵抗R2の他端及びトランジスタM2のドレイン端子に接続される。容量C2の他端は、接地される。
増幅器A2(第1の増幅器)は、非反転増幅器であり、入力端子及び出力端子を備える。入力端子は、抵抗R2の一端及び電流源Isignalに接続される。これにより、増幅器A2は、入力端子から信号電流Isignal又は抵抗R2の一端の端子電圧が入力される。出力端子は、トランジスタM2,M3のゲート端子に接続される。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。
上述の通り、波形整形フィルタは、増幅器A2の出力が、トランジスタM2及び抵抗R2を介して増幅器A2に帰還される構成となっている。このため、増幅器A2の入力端子は、仮想接地点となり、電圧が略一定となる。
このとき、電流源Isignalからみた波形整形フィルタの入力インピーダンスは、増幅器A2が電圧入力型の場合、(1/gm2)/A2となる。ここで、gm2は、トランジスタM2のトランスコンダクタンス、A2は、増幅器A2の利得である。一般に、増幅器A2の利得は非常に大きいため、波形整形フィルタの入力インピーダンスは、非常に小さくなる。
このため、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R2を流れ、トランジスタM2のドレイン端子にIsignal×R2の電圧が発生する。ここで、R2は、抵抗R2の抵抗値である。
また、トランジスタM2のドレイン端子に電圧が発生することにより、容量C2には、信号電流Isignalの時間微分に比例した電流Isignal×R2×sC2が流れる。ここで、C2は、容量C2の容量値である。
結果として、トランジスタM2には、Isignalと、Isignal×R2×sC2と、の和であるIsignal×(1+sC2×R2)の電流が流れる。
本実施形態において、トランジスタM2,M3のゲート電圧及びソース電圧は等しいため、トランジスタM3には、トランジスタM2に流れる電流のデバイスサイズ比倍の電流が流れる。したがって、トランジスタM2,M3のサイズが同一の場合、トランジスタM3のドレイン端子から、Isignal×(1+sC2×R2)の電流が出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第1実施形態と同様、入力された信号電流Isignalに、信号電流Isignalの微分成分を重畳して出力する。これにより、信号電流Isignalの高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A2の負荷は、トランジスタM2のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A2の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第1実施例)
図6は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。本実施例において、増幅器A2は、電流入力型の増幅器である。図6に示すように、増幅器A2は、トランジスタM21と、電流源Ib21,Ib22と、を備える。
トランジスタM21は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるPMOSである。トランジスタM21のドレイン端子は、電流源Ib21及び増幅器A2の出力端子Outに接続され、ソース端子は、電流源Ib22及び増幅器A2の入力端子Inに接続され、ゲート端子は、所定のバイアス電圧Vbiasを印加される。
電流源Ib21,Ib22は、トランジスタM21に所定のバイアス電流Ib21,Ib22をそれぞれ供給する。
次に、この増幅器A2の動作を説明する。以下では、バイアス電流Ib21,Ib22の電流値がIb2に等しいものとする(Ib21=Ib22=Ib2)。
増幅器A2の入力端子Inから電流ΔIが供給されると、トランジスタM21には、ΔI+Ib2の電流が流れる。これに対して、トランジスタM21には、電流源Ib21,Ib22によりバイアス電流Ib2を供給される。
ΔI>0の場合、すなわち、増幅器A2の入力端子Inの電圧が上昇し、抵抗R2の一端から入力端子Inの側に電流が流れる場合、トランジスタM21のドレイン端子から供給される電流が電流源Ib21により引き込む電流Ib2より大きくなるため、出力端子Outに接続されたトランジスタM2,M3のゲート電圧が上昇する。
トランジスタM2のゲート電圧が上昇すると、トランジスタM2のドレイン電圧が低下し、抵抗R2の一端の電圧(増幅器A2の入力端子Inの電圧)が低下する。これにより、電流ΔIが0となるように帰還がかかる。すなわち、トランジスタM21のソース電圧(増幅器A2の入力端子Inの電圧)は、バイアス電圧Vbiasよりも、トランジスタM21にバイアス電流Ib2が流れたときのゲート−ソース間電圧Vgs21だけ、高い電圧と略等しくなる。
一方、ΔI<0の場合、すなわち、増幅器A2の入力端子Inの電圧が低下し、入力端子Inから抵抗R2の一端の側に電流が流れる場合、トランジスタM21のドレイン端子から供給される電流が電流源Ib21により引き込む電流Ib2より小さくなるため、出力端子Outに接続されたトランジスタM2,M3のゲート電圧が低下する。
トランジスタM2のゲート電圧が低下すると、トランジスタM2のドレイン電圧が上昇し、抵抗R2の一端の電圧(増幅器A2の入力端子Inの電圧)が上昇する。これにより、電流ΔIが0となるように帰還がかかる。すなわち、トランジスタM21のソース電圧(増幅器A2の入力端子Inの電圧)は、バイアス電圧Vbiasよりも、トランジスタM21にバイアス電流Ib2が流れたときのゲート−ソース間電圧Vgs21だけ、高い電圧と略等しくなる。
したがって、増幅器A2の入力端子Inは、上述の通り仮想接地点となり、電圧が略一定となる。これにより、波形整形フィルタを第1実施形態と同様に動作させることができる。
以上説明した通り、増幅器A2として、電流入力型の増幅器を用いることができる。また、電流入力型の増幅器A2を用いた場合、増幅器A2の単体の入力インピーダンスは、1/gm21となり、電流源Isignalからみた波形整形フィルタの入力インピーダンスは、1/(A2×gm2+gm21)となる。ここで、gm21は、トランジスタM21のトランスコンダクタンスである。
したがって、電流入力型の増幅器A2を用いることにより、電圧入力型の増幅器A2を用いた場合よりも波形整形フィルタの入力インピーダンスを小さくし、増幅器A2の入力端子Inの電圧の変動を抑制することができる。これにより、波形整形フィルタの入力電圧の変動に起因する出力電流Ioutの誤差を小さくすることができる。
(第2実施例)
図7は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第2実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、電流源Idc2を更に備える。他の構成は図5と同様である。
電流源Idc2(第1の電流源)は、一端及び他端を備える直流電流源である。電流源Idc2の一端は、抵抗R2の他端、トランジスタM2のドレイン端子、及び容量C2の一端に接続される。図7において、電流源Idc2の他端は、電源に接続されているが、接地されていてもよい。電流源Idc2は、トランジスタM2をオンする任意の直流電流Idc2を供給する。
このような構成により、本実施例によれば、波形整形フィルタにパルス性の信号電流Isignalが入力される場合の応答速度を向上することができる。理由は第1実施形態の第2実施例で説明した通りである。
(第3実施例)
図8は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第3実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、抵抗R2aを更に備える。他の構成は図5と同様である。
抵抗R2a(第2の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R2aの一端は、容量C2の他端に接続され、抵抗R2aの他端は接地されている。
このような構成により、本実施例では、波形整形フィルタのフィルタ特性は、{1+sC2(R2+R2a)}/(1+sC2×R2a)となる。これにより、第1実施形態の第3実施例と同様の効果が得られる。すなわち、本実施例に係る波形整形フィルタによれば、所定の強調特性を得るための抵抗値R2を、図5の波形整形フィルタより抵抗値R2aだけ小さくすることができる。したがって、波形整形フィルタの電源電圧を低下させ、消費電力を低減することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る波形整形フィルタについて、図9〜図12を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図9に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R1,R1bと、トランジスタM1と、容量C1と、増幅器A1と、を備える。図9における電流源Isignalは、波形整形フィルタに信号電流Isignalを入力する電流源である。
抵抗R1(第6の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R1は、一端が接地され、他端が増幅器A1の負入力端子、容量C1の他端、及びトランジスタM1のソース端子に接続される。
抵抗R1b(第5の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R1bは、一端が接地され、他端が増幅器A1の正入力端子及び電流源Isignalに接続される。これにより、抵抗R1bは、他端から入力電流Isignalを入力される。
容量C1(第7の容量)は、一端及び他端を備える。容量C1は、一端が接地され、他端が抵抗R1の他端、増幅器A1の負入力端子、及びトランジスタM1のソース端子に接続される。
トランジスタM1(第16のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ゲート端子は、増幅器A1の出力端子に接続される。ソース端子は、増幅器A1の負入力端子、容量C1の他端、及び抵抗R1の他端に接続される。トランジスタM1は、ドレイン端子から出力電流Ioutを出力する。
増幅器A1(第4の増幅器)は、差動増幅器であり、正入力端子(第1入力端子)と、負入力端子(第2入力端子)と、出力端子と、を備える。正入力端子は、抵抗R1bの他端及び電流源Isignalに接続される。これにより、増幅器A1は、正入力端子から抵抗R1bの他端の端子電圧を入力される。負入力端子は、容量C1の他端、抵抗R1の他端、及びトランジスタM1のソース端子に接続される。出力端子は、トランジスタM1のゲート端子に接続される。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。
上述の通り、波形整形フィルタは、増幅器A1の出力が、トランジスタM1を介して増幅器A1の負入力端子に帰還される構成となっている。この負帰還により、増幅器A1の正入力端子と負入力端子は仮想短絡(Virtual short)となり、負入力端子の電圧は、正入力端子の電圧と略等しくなる。
電流源Isignalからの信号電流Isignalが抵抗R1bに流れ、電圧に変換される。このため、増幅器A1の正入力端子の電圧は、Isignal×R1bとなる。正入力端子と負入力端子の電圧は略等しいので、負入力端子の電圧もIsignal×R1bとなる。よって、抵抗R1には、Isignal×R1b/R1の電流が流れ、容量C1にはIsignal×R1b×sC1の電流が流れる。結果として、トランジスタM1は、Isignal×R1b/R1と、Isignal×R1b×sC1と、の和であるIsignal×R1b×(1+sC1R1)/R1の電流を、出力電流Ioutとして出力する。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に、信号電流Isignalの微分成分を重畳して出力する。これにより、信号電流Isignalの高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第1実施例)
図10は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。本実施例において、増幅器A1は、電流入力型の増幅器である。図10に示すように、増幅器A1は、トランジスタMA1,MA2と、電流源Ib1,Ib2,Ib3,Ib4と、を備える。
トランジスタMA1,MA2は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるNMOSである。
トランジスタMA1のドレイン端子は、増幅器A1の出力端子であり、電流源Ib1と、トランジスタM1のゲート端子と、に接続される。トランジスタMA1のゲート端子は、トランジスタMA2のゲート端子と、電流源Ib2と、に接続される。トランジスタMA1のソース端子は、増幅器A1の正入力端子であり、電流源Ib3と、抵抗R1bの他端と、に接続される。
トランジスタMA2のドレイン端子は、電流源Ib2と、トランジスタMA2のゲート端子と、トランジスタMA1のゲート端子と、に接続される。トランジスタMA2のゲート端子は、トランジスタMA2のドレイン端子と、トランジスタMA1のゲート端子と、電流源Ib2と、に接続される。トランジスタMA2のソース端子は、増幅器A1の負入力端子であり、電流源Ib4と、抵抗R1の他端と、容量C1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、に接続される。また、トランジスタMA2は、ゲート端子とドレイン端子とが接続される。
電流源Ib1,Ib2,Ib3,Ib4は、トランジスタMA1,MA2に所定のバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3,Ib4をそれぞれ供給する。
次に、増幅器A1の動作を説明する。以下では、バイアス電流Ib1,Ib2,Ib3,Ib4の電流値がIbに等しいものとする(Ib1=Ib2=Ib3=Ib4=Ib)。また、トランジスタMA1,MA2のサイズは等しいものとする。さらに、抵抗R1b及び抵抗R1の抵抗値は等しいものとする(R1b=R1)。
抵抗R1bの他端の電圧が上がると、つまり、トランジスタMA1のソース端子電圧が上がると、トランジスタMA1のゲート・ソース間電圧が小さくなる。これにより、トランジスタMA1に流れる電流は、IbからΔIだけ小さくなり、Ib−ΔIとなる。つまり、抵抗R1bの他端から増幅器A1の正入力端子に向けて電流ΔIが流れる。Ib−ΔIは、電流源Ib1から供給される電流Ibより小さいため、増幅器A1の出力端子であるトランジスタMA1のドレイン端子電圧が上がる。よって、トランジスタM1のゲート端子電圧が上がる。
これに伴い、トランジスタM1のソース端子電圧、つまり、トランジスタMA2のソース端子電圧が上がる。トランジスタMA2には、電流源Ib2からIbの電流が供給されており、トランジスタMA2のゲート・ソース間電圧は略一定である。このため、トランジスタMA2のソース端子電圧が上がると、トランジスタMA2のゲート端子電圧も上がる。トランジスタMA1のゲート端子はトランジスタMA2のゲート端子に接続されているため、トランジスタMA1のゲート端子電圧も上がり、トランジスタMA1のゲート・ソース間電圧は大きくなり、バイアス電流Ibが再び流れるように動作する。
トランジスタMA1及びトランジスタMA2のサイズが等しく、ともにバイアス電流Ibが流れるため、トランジスタMA1,MA2のゲート・ソース間電圧は略等しくなり、その結果、トランジスタMA2のソース端子電圧はトランジスタMA1のソース端子電圧に略等しくなるように動作する。
一方、抵抗R1bの他端の電圧が下がると、つまり、トランジスタMA1のソース端子電圧が下がると、トランジスタMA1のゲート・ソース間電圧が大きくなる。これにより、トランジスタMA1に流れる電流は、IbからΔIだけ大きくなり、Ib+ΔIとなる。つまり、増幅器A1の正入力端子から抵抗R1bの他端に向かって電流ΔIが流れる。Ib+ΔIは、電流源Ib1から供給される電流Ibより大きいため、増幅器A1の出力端子であるトランジスタMA1のドレイン端子電圧が下がる。よって、トランジスタM1のゲート端子電圧が下がる。
これに伴い、トランジスタM1のソース端子電圧、つまり、トランジスタMA2のソース端子電圧も下がる。トランジスタMA2には、電流源Ib2からIbの電流が供給されており、トランジスタMA2のゲート・ソース間電圧は略一定である。このため、トランジスタMA2のソース端子電圧が下がると、トランジスタMA2のゲート端子電圧も下がる。トランジスタMA1のゲート端子は、トランジスタMA2のゲート端子に接続されているため、トランジスタMA1のゲート端子電圧も下がり、トランジスタMA1のゲート・ソース間電圧は小さくなり、バイアス電流Ibが再び流れるように動作する。
トランジスタMA1及びトランジスタMA2のサイズが等しく、ともにバイアス電流Ibが流れるため、トランジスタMA1,MA2のゲート・ソース間電圧は略等しくなり、その結果、トランジスタMA2のソース端子電圧はトランジスタMA1のソース端子電圧に略等しくなるように動作する。
したがって、増幅器A1の負入力端子であるトランジスタMA2のソース端子の電圧は、上述の通り、増幅器A1の正入力端子であるトランジスタMA1のソース端子の電圧と略等しくなり、増幅器A1の正入力端子と負入力端子とは仮想短絡となる。これにより、波形整形フィルタを、上述の通り動作させることができる。
図10では、トランジスタMA1,MA2のソース端子からバイアス電流を引く電流源Ib3,Ib4を設けているが、図11に示すように、トランジスタMA1,MA2に流れるバイアス電流を、抵抗R1b,R1に流す構成としてもよい。
(第2実施例)
図12は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第2実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、電流源Idc1を更に備える。他の構成は図9と同様である。
電流源Idc1(第6の電流源)は、一端及び他端を備える直流電流源である。電流源Idc1の一端は、増幅器A1の負入力端子と、抵抗R1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、容量C1の他端と、に接続される。図12において、電流源Idc1の他端は、接地されているが、電源に接続されていてもよい。電流源Idc1は、トランジスタM1をオンする任意の直流電流Idc1を供給する。
このような構成により、本実施例によれば、図3を参照して説明した通り、波形整形フィルタにパルス性の信号電流Isignalが入力される場合の応答速度を向上させることができる。
(第3実施例)
図13は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第3実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、抵抗R1aを更に備える。他の構成は図9と同様である。
抵抗R1a(第7の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R1aの一端は、容量C1の他端に接続され、抵抗R1aの他端は増幅器A1の負入力端子に接続されている。
このような構成により、本実施例では、波形整形フィルタのフィルタ特性は、R1b{1+sC1(R1+R1a)}/{(1+sC1R1a)R1}となる。すなわち、波形整形フィルタに信号電流Isignalが入力されると、Isingal×R1b{1+sC1(R1+R1a)}/{(1+sC1R1a)R1}が出力電流Ioutとして出力される。信号電流Isignalの高域成分を強調する強調特性は、1+sC1(R1+R1a)により実現される。
したがって、図9及び図13の容量値C1を同一とし、図9の抵抗値R1と図13の抵抗値R1+R1aを同一とすることにより、図9及び図13の強調特性を一致させることができる。すなわち、本実施例に係る波形整形フィルタによれば、所定の強調特性を得るための抵抗値R1を、図9の波形整形フィルタより抵抗値R1aだけ小さくすることができる。
抵抗値R1を小さくすると、抵抗R1にかかる電圧が小さくなり、トランジスタM1のソース電圧が低下する。したがって、波形整形フィルタの電源電圧を低下させ、消費電力を低減することができる。
(第4実施例)
図14は、本実施形態に係る波形整形フィルタの第4実施例を示す図である。本実施例において、波形整形フィルタは、容量C1aを更に備える。他の構成は図9と同様である。
容量C1a(第8の容量)は、一端及び他端を備える。容量C1aは、一端が接地され、他端が抵抗R1bの他端と、電流源Isignalと、増幅器A1の正入力端子と、に接続される。
このような構成により、本実施例によれば、抵抗R1b及び容量C1aにより低域通過特性が実現される。低域通過フィルタの遮断周波数は、1/(2π×R1b×C1a)となる。遮断周波数が、強調したい高域成分より高くなるように、容量値C1aを設定することにより、信号電流Isignalに重畳した不要な高周波ノイズを除去することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る波形整形フィルタについて、図15〜図18を参照して説明する。図15は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図15に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第1実施形態の変形例であり、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、を更に備える。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
トランジスタMcm1は、NMOSであり、ソース端子が接地され、ドレイン端子が容量C1の一端に接続され、ゲート端子が電流源Idcmと、トランジスタMcm2のゲート端子と、に接続される。また、トランジスタMcm1は、ゲート端子とドレイン端子とが接続される。
トランジスタMcm2は、NMOSであり、ソース端子が接地され、ゲート端子が電流源Idcmと、トランジスタMcm1のゲート端子と、接続され、ドレイン端子が容量C1の他端と、抵抗R1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、に接続される。
トランジスタMcm1,Mcm2は、カレントミラー回路(第1のカレントミラー回路)を構成している。カレントミラー回路の入力端子は、トランジスタMcm1のドレイン端子であり、出力端子は、トランジスタMcm2のドレイン端子である。トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタMcm1に流れる電流と、トランジスタMcm2に流れる電流と、は等しくなる。
電流源Idcmは、トランジスタMcm1,Mcm2が構成するカレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcmを供給する。
また、本実施形態において、容量C1は、一端がトランジスタMcm1のドレイン端子及びゲート端子と、トランジスタMcm2のゲート端子と、電流源Idcmと、に接続され、他端が抵抗R1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、トランジスタMcm2のドレイン端子と、に接続される。
このような構成により、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM1に流れる電流は、信号電流Isignalと、容量C1に流れる電流Isignal×R1×sC1と、容量C1に流れる電流をカレントミラー回路で折り返した(極性を反転させた)電流Isignal×R1×sC1と、の和であるIsignal×(1+2sC1R1)となる。
上記の式からわかるように、本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、容量値C1を半減することができる。すなわち、第1実施形態の半分の容量値C1で、第1実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズは異なってもよい。トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C1を、第1実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。このように、容量C1の容量値C1を小さくすることにより、回路面積を小型化することができる。
また、図15の例では、容量C1の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。
さらに、カレントミラー回路のバイアス電流として電流源Idcmが供給している電流Idcmは、トランジスタM1にも流れる。したがって、電流源Idcmは、図3を参照して説明したように、波形整形フィルタにパルス性の信号電流Isignalが入力される場合の応答速度を向上させるための直流電流として、兼用することができる。
またさらに、カレントミラー回路の入力インピーダンスは、トランジスタMcm1のトランスコンダクタンスの逆数となり、入力インピーダンスが大きいとフィルタの時定数に影響する。そこで、図16に示すように、カレントミラー回路に、トランジスタMcm3と、電流源Idcm2と、を追加してもよい。
トランジスタMcm3は、PMOSであり、ゲート端子にアイアス電圧Vbが印加され、ソース端子が電流源Idcmと、容量C1の一端と、トランジスタMcm1のドレイン端子と、に接続され、ドレイン端子がトランジスタMcm1,Mcm2のゲート端子と、電流源Idcm2と、に接続される。電流源Idcm2は、トランジスタMcm3を動作させるためのバイアス電流Idcm2を供給する。
このような構成により、トランジスタMcm1のドレイン端子電圧の変化を増幅して、トランジスタMcm1のゲート端子に加えることができる。これにより、カレントミラー回路の入力インピーダンスを下げ、フィルタの時定数に対する影響を低減することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態に係る波形整形フィルタについて、図17を参照して説明する。図17は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図17に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第2実施形態の変形例であり、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、を備える。他の構成は、図5と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、により構成されるカレントミラー回路(第1のカレントミラー回路)の構成は、図15と同様である。本実施形態における容量C2は、図15の容量C1に相当する。
このような構成により、本実施形態によれば、第2実施形態に比べて、容量値C2を半減することができる。すなわち、第2実施形態の半分の容量値C2で、第2実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態に係る波形整形フィルタについて、図18を参照して説明する。図18は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図18に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第3実施形態の変形例であり、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、を備える。他の構成は、図9と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、により構成されるカレントミラー回路(第3のカレントミラー回路)の構成は、図15と同様である。
このような構成により、本実施形態によれば、第3実施形態に比べて、容量値C1を半減することができる。すなわち、第3実施形態の半分の容量値C1で、第3実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第7実施形態)
第7実施形態に係る波形整形フィルタについて、図19〜図22を参照して説明する。図19は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図19に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第2実施形態の変形例であり、低入力インピーダンス回路Zを更に備える。以下、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態において、容量C2は、他端がトランジスタM3のドレイン端子に接続される。
低入力インピーダンス回路Zは、トランジスタM3のドレイン端子と、容量C2の端と、に接続される。低入力インピーダンス回路Zは、トランジスタM3のドレイン端子から出力される出力電流に、容量C2の他端から流れる電流を加算する。
このような構成により、低入力インピーダンス回路Zに流れる電流は、容量C2の一端からトランジスタM2に流れ込む電流Isignal×R2×sC2及び信号電流Isignalの和をコピーした電流Isignal×(1+sC2R2)と、容量C2の他端から容量C2に流れ込む電流Isignal×R2×sC2と、の和となる。つまり、低入力インピーダンス回路Zには、波形整形フィルタの出力電流として、Isignal×(1+2sC2R2)が流れる。
上記の式からわかるように、本実施形態によれば、第2実施形態に比べて、容量値C2を半減することができる。すなわち、第2実施形態の半分の容量値C2で、第2実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、図19の例では、容量C2の他端をトランジスタM3のドレイン端子に接続したが、容量C2を分割し、その一部だけをトランジスタM3のドレイン端子に接続した構成も可能である。
(第1実施例)
図20は、図19の波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。図20において、低入力インピーダンス回路Zは、ゲート接地増幅回路により実現されている。ゲート接地増幅回路は、トランジスタMCを備える。
トランジスタMCは、NMOSであり、ゲート端子にバイアス電圧Vbが印加され、ソース端子が容量C2の他端と、トランジスタM3の他端と、に接続され、ドレイン端子から出力電流Ioutを出力する。
ゲート接地増幅回路の入力インピーダンスは、トランジスタMCのトランスコンダクタンスの逆数でほぼ決まる。したがって、トランジスタMCのチャネル幅/チャネル長を大きくすることにより、トランスコンダクタンスを大きくし、入力インピーダンスを下げることができる。
(第2実施例)
図21は、図19の波形整形フィルタの第2実施例を示す図である。図21において、低入力インピーダンス回路Zは、レギュレーティッドカスコード回路により実現されている。レギュレーティッドカスコード回路は、トランジスタMCと、反転増幅器ACと、を備える。
反転増幅器ACは、入力端子が容量C2の他端と、トランジスタM3のドレイン端子と、に接続され、出力端子がトランジスタMCのゲート端子に接続される。反転増幅器ACは、トランジスタMCのソース端子電圧を反転増幅してトランジスタMCのゲート端子に印加する。反転増幅器ACの利得はACである。他の構成は、図20と同様である。
このような構成により、低入力インピーダンス回路Zの入力インピーダンスは、トランジスタMCのトランスコンダクタンスのAC倍の逆数となる。すなわち、図21の例では、低入力インピーダンス回路Zの入力インピーダンスを、図20の1/AC倍とすることができる。
(第3実施例)
図22は、図19の波形整形フィルタの第3実施例を示す図である。図22において、低入力インピーダンス回路Zは、トランスインピーダンス回路により実現されている。トランスインピーダンス回路は、反転増幅器ACと、抵抗RTと、を備える。
反転増幅器ACは、入力端子が容量C2の他端と、トランジスタM3の他端と、抵抗RTの一端と、に接続され、他端が抵抗RTの他端に接続される。すなわち、抵抗RTは、反転増幅器ACの入力端子と出力端子との間に接続される。このような構成でも、低入力インピーダンス回路Zを実現することができる。
(第8実施形態)
第8実施形態に係る波形整形フィルタについて、図23及び図24を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態及び第7実施形態を組み合わせた波形整形フィルタについて説明する。図23は、カレントミラー回路及び低入力インピーダンス回路Zを、第1実施形態に適用した波形整形フィルタを示す図である。
図23に示すように、波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、低入力インピーダンス回路Zと、を備える。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
トランジスタMcm1は、PMOSであり、ソース端子が電源線(第2の基準電圧線)に接続され、ゲート端子がトランジスタMcm2のゲート端子に接続され、ドレイン端子がトランジスタM1のドレイン端子に接続されている。また、トランジスタMcm1は、ゲート端子とドレイン端子とが接続される。
トランジスタMcm2は、PMOSであり、ソース端子が電源線に接続され、ゲート端子がトランジスタMcm1のゲート端子に接続され、ドレイン端子が容量C1の他端と、低入力インピーダンス回路Zと、に接続される。
トランジスタMcm1,Mcm2は、カレントミラー回路(第2のカレントミラー回路)を構成している。このカレントミラー回路の入力端子は、トランジスタMcm1のドレイン端子であり、出力端子は、トランジスタMcm2のドレイン端子である。トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタMcm1に流れる電流と、トランジスタMcm2に流れる電流と、は等しくなる。
低入力インピーダンス回路Zは、容量C1の他端と、トランジスタMcm2のドレイン端子と、に接続される。低入力インピーダンス回路Zは、トランジスタMcm2のドレイン端子から出力される出力電流に、容量C1の他端から流れる電流を加算する。
本実施形態において、トランジスタM1には、信号電流Isignalと、容量C1に流れる電流Isignal×R1×sC1と、の和の電流Isignal×(1+sC1R1)が流れる。これは、図1と同様である。
ここで、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタMcm2に流れる電流は、トランジスタMcm1に流れる電流、つまり、トランジスタM1を流れる電流であり、Isignal×(1+sC1R1)となる。一方、容量C1の他端から流れ出る電流は、Isignal×sC1R1である。
したがって、低入力インピーダンス回路Zには、トランジスタMcm2に流れる電流Isignal×(1+sC1R1)と、容量C1の他端から流れ出る電流Isignal×sC1R1と、の和の電流Isignal×(1+2sC1R1)が流れることになる。
上記の式からわかるように、図23の構成により、第1実施形態に比べて、容量値C1を半減することができる。すなわち、第1実施形態の半分の容量値C1で、第1実施形態と同様の時定数を実現することができる。
図24は、カレントミラー回路(第4のカレントミラー回路)及び低入力インピーダンス回路Zを、第3実施形態に適用した波形整形フィルタを示す図である。カレントミラー回路及び低入力インピーダンス回路Zの構成は、図23と同様である。すなわち、図24のカレントミラー回路の入力端子は、トランジスタM1のドレイン端子であり、出力端子はトランジスタMcm2のドレイン端子である。また、他の構成は、図9と同様である。
図24の例では、図23と同様に、低入力インピーダンス回路Zに流れる電流は、トランジスタM1に流れる電流Isignal×(1+sC1R1)と、容量C1の他端から流れ出る電流Isignal×sC1R1と、の和となる。これは、図23と同様である。
したがって、図24の構成により、第3実施形態に比べて、容量値C1を半減することができる。すなわち、第3実施形態の半分の容量値C1で、第3実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、本実施形態において、容量C1の他端はカレントミラー回路に接続されたが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続する構成も可能である。また、低入力インピーダンス回路Zは、図20〜図22で説明した、ゲート接地増幅回路、レギュレーティッドカスコード回路、及びトランスインピーダンス回路などで実現できる。
(第9実施形態)
第9実施形態に係る波形整形フィルタについて、図25〜図30を参照して説明する。図25は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図25に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R11、容量C11、電圧バッファVB11と、を更に備える。他の構成は、図9と同様である。
抵抗R11(第8の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R11は、一端が、トランジスタM1のソース端子と、容量C11の一端と、に接続され、他端が、抵抗R1の他端と、増幅器A1の負入力端子と、容量C1の一端と、電圧バッファVB11の入力端子と、に接続される。
容量C11(第9の容量)は、一端及び他端を備える。容量C11は、一端が、トランジスタM1のソース端子と、抵抗R11の一端と、に接続され、他端が、電圧バッファVB11の出力端子に接続される。
電圧バッファVB11は、入力端子と出力端子とを備える。電圧バッファVB11は、入力端子が、抵抗R1の他端と、容量C1の一端と、抵抗R11の他端と、増幅器A1の負入力端子と、に接続され、出力端子が、容量C11の他端に接続される。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。
上述の通り、波形整形フィルタは、増幅器A1の出力が、トランジスタM1及び抵抗R11を介して増幅器A1の負入力端子に帰還される構成となっている。この負帰還により、増幅器A1の正入力端子と負入力端子は仮想短絡となり、負入力端子の電圧は、正入力端子の電圧と略等しくなる。
電流源Isignalからの信号電流Isignalは、抵抗R1bに流れ、電圧に変換される。このため、増幅器A1の正入力端子電圧は、Isignal×R1bとなる。正入力端子と負入力端子の電圧は略等しいので、負入力端子の電圧もIsignal×R1bとなる。よって、抵抗R1には、Isignal×R1b/R1の電流が流れ、容量C1にはIsignal×R1b×sC1の電流が流れる。
この抵抗R1と容量C1に流れる電流は、抵抗R11を流れるので、抵抗R11の一端の電圧(トランジスタM1のソース端子電圧)は、Isignal×R1b[1+(1+sC1R1)R11/R1]となる。容量C11にかかる電圧は、Isignal×R1b[1+(1+sC1R1)R11/R1]−Isignal×R1b=Isignal×R1b×R11×(1+sC1R1)/R1となり、容量C11に流れる電流は、Isignal×R1b×R11×sC11(1+sC1R1)/R1となる。
結果として、トランジスタM1には、抵抗R11と容量C11に流れる電流の和であるIsignal×R1b×(1+sC1R1)(1+sC11R11)/R1の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
さらに、図26に示すように、容量C1,C11に直列に抵抗R1a,11aをそれぞれ接続して、抵抗値R1,R11を小さくし、抵抗R1,R11にかかる電圧を小さくして、トランジスタM1のソース端子電圧を下げてもよい。これにより、波形整形フィルタの電源電圧を低下させ、消費電力をさらに低減することができる。
(第1実施例)
図27は、本実施形態の波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。本実施例において、電圧バッファVB11は、トランジスタMB11a,MB11bと、電流源Ib11a,Ib11bと、を備える。
トランジスタMB11aは、PMOSであり、ドレイン端子が、電流源Ib11bと、トランジスタMB11bのゲート端子と、に接続され、ソース端子が、トランジスタMB11bのドレイン端子と、電流源Ib11aと、容量C11の他端と、に接続され、ゲート端子が、抵抗R1の他端と、容量C1の一端と、増幅器A11の負入力端子と、抵抗R11の他端と、に接続される。トランジスタMB11aのゲート端子が電圧バッファVB11の入力端子であり、ソース端子が電圧バッファVB11の出力端子である。
トランジスタMB11bは、NMOSであり、ソース端子が、接地され、ゲート端子が、電流源Ib11bと、トランジスタMB11aのドレイン端子と、に接続され、ドレイン端子が、電流源Ib11aと、トランジスタMB11aのソース端子と、容量C11の他端と、に接続される。トランジスタMB11bのドレイン端子が電圧バッファVB11の出力端子である。
電流源Ib11a,Ib11bは、トランジスタMB11a,MB11bに、バイアス電流Ib11a,Ib11bをそれぞれ供給する。
トランジスタMB11aには、電流源Ib11bから供給されるバイアス電流Ib11bが流れるように、トランジスタMB11bにより帰還がかかっている。例えば、トランジスタMB11aのゲート端子の電圧が上がる(下がる)と、その瞬間は、トランジスタMB11aのゲート・ソース間電圧が小さく(大きく)なり、トランジスタMB11aに流れる電流がバイアス電流Ib11bより小さく(大きく)なる。
その結果、トランジスタMB11bのゲート端子電圧が下がり(上がり)、トランジスタMB11bに流れる電流が減り(増え)、電流源Ib11aからトランジスタMB11aに供給される電流の割合が増え(減り)、トランジスタMB11aのソース端子電圧が上がり(下がり)、トランジスタMB11aにバイアス電流Ib11bが流れるようになる。
このように、トランジスタMB11aに流れる電流がバイアス電流Ib11bとなるように帰還がかかっているため、トランジスタMB11aのゲート・ソース間電圧は、略一定となる。したがって、トランジスタMB11aのソース端子電圧は、ゲート端子に印加された電圧に従い、ゲート・ソース間電圧だけレベルシフトした電圧となる。これにより、電圧バッファVB11の機能が実現される。
なお、トランジスタMB11aに流れる電流が、バイアス電流Ib11bとなるように帰還がかかっているため、容量C11の他端から流れ出る電流は、トランジスタMB11bに流れる。
(第10実施形態)
第10実施形態に係る波形整形フィルタについて、図28及び図29を参照して説明する。図28は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図28に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R12と、容量C12と、電流バッファIB12と、を備える。他の構成は、図9と同様である。
抵抗R12(第9の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R12は、一端が、増幅器A1の負入力端子と、容量C12の一端と、に接続され、他端が、抵抗R1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、容量C1の一端と、電流バッファIB12の出力端子と、に接続される。
容量C12(第10の容量)は、一端及び他端を備える。容量C12は、一端が、増幅器A1の負入力端子と、抵抗R12の一端と、に接続され、他端が、電流バッファIB12の入力端子に接続される。
電流バッファIB12は、入力端子と出力端子とを備える。電流バッファIB12は、入力端子が、容量C12の他端に接続され、出力端子が、抵抗R1の他端と、トランジスタM1のソース端子と、容量C1の一端と、抵抗R12の他端と、に接続される。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。
上述の通り、波形整形フィルタは、増幅器A1の出力が、トランジスタM1と抵抗R12を介して増幅器A1の負入力端子に帰還される構成となっている。この負帰還により、増幅器A1の正入力端子と負入力端子は仮想短絡となり、負入力端子の電圧は、正入力端子の電圧と略等しくなる。
電流源Isignalからの信号電流Isignalは、抵抗R1bに流れ、電圧に変換される。このため、増幅器A1の正入力端子の電圧は、Isignal×R1bとなる。正入力端子と負入力端子の電圧は略等しいので、負入力端子の電圧もIsignal×R1bとなる。容量C12の他端は、電流バッファIB12の入力端子に接続されており、電流バッファIB12の入力インピーダンスは低いので、容量C12にはIsignal×R1b×sC12の電流が流れる。
この電流は、抵抗R12を流れるので、抵抗R12の一端の電圧は、Isignal×R1b+Isignal×R1b×sC12R12=Isignal×R1b×(1+sC12R12)となる。よって、抵抗R1には、Isignal×R1b×(1+sC12R12)/R1の電流が流れ、容量C1には、Isignal×R1b×(1+sC12R12)×sC1の電流が流れる。
抵抗R12を流れる電流Isignal×R1b×sC12は、同じ大きさを持ち、極性が反対の電流バッファIB12の出力電流により、抵抗R12の一端で相殺される。よって、トランジスタM1には、抵抗R1と容量C1に流れる電流の和であるIsignal×R1b×(1+sC12R12)(1+sC1R1)/R1の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した信号の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第1実施例)
図29は、本実施形態の波形整形フィルタの第1実施例を示す図である。本実施例において、図29に示すように、電流バッファIB12は、トランジスタMB12a,MB12bと、電流源Ib12a,Ib12b,Ib12cと、を備える。
トランジスタMB12aは、PMOSであり、ドレイン端子が、電流源Ib12bと、トランジスタM1のソース端子と、容量C1の一端と、抵抗R1の他端と、抵抗R12の他端と、に接続され、ゲート端子が、トランジスタMB12bのドレイン端子と、電流源Ib12cと、に接続され、ソース端子が、電流源Ib12aと、トランジスタMB12bのゲート端子と、容量C12の他端と、に接続される。トランジスタMB12aのドレイン端子が電流バッファIB12の出力端子であり、トランジスタMB12aのソース端子が電流バッファIB12の入力端子である。
トランジスタMB12bは、PMOSであり、ドレイン端子が、電流源Ib12cと、トランジスタMB12aのゲート端子と、に接続され、ゲート端子が、トランジスタMB12aのソース端子と、電流源Ib12aと、容量C12の他端と、に接続され、ソース端子が電源線に接続される。トランジスタMB12bのゲート端子が、電流バッファIB12の入力端子である。
電流源Ib12a,Ib12b,Ib12cは、トランジスタMB12a,MB12bに、バイアス電流Ib12a,Ib12b,Ib12cをそれぞれ供給する。
このような構成により、本実施形態における電流バッファIB12を構成することができる。
(第11実施形態)
第11実施形態に係る波形整形フィルタについて、図30を参照して説明する。図30は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図30に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R11(第10の抵抗)と、容量C11(第11の容量)と、電圧バッファVB11と、を備える。他の構成は、図1と同様である。また、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11の構成は、図27と同様である。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R1を流れ、抵抗R1の他端の電圧は、Isignal×R1となる。よって、容量C1には、Isignal×R1×sC1の電流が流れる。抵抗R11には、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC1R1)の電流が流れる。
よって、トランジスタM1のソース端子電圧は、Isignal×R1+Isignal×R11×(1+sC1R1)となる。容量C11の他端の電圧は、電圧バッファVB11を介して、Isignal×R1の電圧が印加されている。よって、容量C11には、Isignal×R11×(1+sC1R1)の電圧がかかっており、流れる電流は、Isignal×sC11R11×(1+sC1R1)となる。トランジスタM1には、抵抗R11に流れる電流と、容量C11に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC1R1)(1+sC11R11)の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第12実施形態)
第12実施形態に係る波形整形フィルタについて、図31を参照して説明する。図31は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図31に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R11と、容量C11と、電圧バッファVB11と、を備える。他の構成は、図5と同様である。また、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11の構成は、図27と同様である。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R2を流れ、抵抗R2の他端の電圧は、Isignal×R2となる。よって、容量C2には、Isignal×R2×sC2の電流が流れる。抵抗R11には、抵抗R2に流れる電流と、容量C2に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC2R2)の電流が流れる。
よって、トランジスタM2のドレイン端子電圧は、Isignal×R2+Isignal×R11×(1+sC2R2)となる。容量C11の他端の電圧は、電圧バッファVB11を介して、Isignal×R2の電圧が印加されている。よって、容量C11には、Isignal×R11×(1+sC2R2)の電圧がかかっており、流れる電流は、Isignal×sC11R11×(1+sC2R2)となる。トランジスタM2には、抵抗R11に流れる電流と、容量C11に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC2R2)(1+sC11R11)の電流が流れる。
本実施形態において、トランジスタM2,M3のゲート端子電圧及びソース端子電圧は等しいため、トランジスタM3には、トランジスタM2に流れる電流のデバイスサイズ比倍の電流が流れる。したがって、トランジスタM2,M3のサイズが同一の場合、トランジスタM3のドレイン端子から、Isignal×(1+sC2R2)(1+sC11R11)の電流が出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。これにより、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
本実施形態において、増幅器A2の負荷は、トランジスタM2、M3のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A2の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第13実施形態)
第13実施形態に係る波形整形フィルタについて、図32を参照して説明する。図32は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図32に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R13と、容量C13と、電流バッファIB13と、を備える。他の構成は、図1と同様である。
抵抗R13(第11の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R13は、一端が、抵抗R1の他端と、容量C13の一端と、に接続され、他端が、容量C1の一端と、トランジスタM1のソース端子と、電流バッファIB13の出力端子と、に接続される。
容量C13(第12の容量)は、一端及び他端を備える。容量C13は、一端が、抵抗R1の他端と、抵抗R13の一端と、接続され、他端が、電流バッファIB13の入力端子に接続される。
電流バッファIB13は、入力端子が容量C13の他端に接続され、出力端子がトランジスタM1のソース端子と、抵抗R13の他端と、容量C1の一端と、に接続される。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R1を流れ、抵抗R1の他端の電圧は、Isignal×R1となる。容量C13の他端は電流バッファIB13の入力端子に接続されており、電流バッファIB13の入力インピーダンスは低いので、容量C13にはIsignal×R1×sC13の電流が流れる。この電流は抵抗R13を流れるので、抵抗R13には、抵抗R1に流れる電流と、容量C13に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC13R1)の電流が流れる。
よって、トランジスタM1のソース端子電圧は、Isignal×R1+Isignal×R13×(1+sC13R1)となり、容量C1には、Isignal×sC1R1+Isignal×sC1R13×(1+sC13R1)の電流が流れる。トランジスタM1には、容量C1に流れる電流と、抵抗R13に流れる電流と、の和から、電流バッファIB13を介して容量C13に流れる電流を引いた、Isignal×(1+sC1R1)+Isignal×sC1R13(1+sC13R1)の電流が流れる。ここで、C13=C1とすると、トランジスタM1に流れる電流は、Isignal×(1+sC13R1)(1+sC1R13)となり、この電流がドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第14実施形態)
第14実施形態に係る波形整形フィルタについて、図33を参照して説明する。図33は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図33に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R13と、容量C13と、電流バッファIB13と、を備える。他の構成は、図5と同様である。また、抵抗R13、容量C13、及び電流バッファIB13の構成は、図32と同様である。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R2を流れ、抵抗R2の他端の電圧は、Isignal×R2となる。容量C13の他端は、電流バッファIB13の入力端子に接続されており、電流バッファIB13の入力インピーダンスは低いので、容量C13には、Isignal×R2×sC13の電流が流れる。この電流は抵抗R13を流れるので、抵抗R13には、抵抗R2に流れる電流と、容量C13に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC13R2)が流れる。
よって、トランジスタM2のドレイン端子電圧は、Isignal×R2+Isignal×R13×(1+sC13R2)となり、容量C2には、Isignal×sC2R2+Isignal×sC2R13×(1+sC13R2)の電流が流れる。トランジスタM2には、容量C2に流れる電流と、抵抗R13に流れる電流と、の和から、電流バッファIB13を介して容量C13に流れる電流を引いた、Isignal×(1+sC2R2)+Isignal×sC2R13(1+sC13R2)の電流が流れる。ここで、C13=C2とすると、トランジスタM2に流れる電流は、Isignal×(1+sC13R2)(1+sC2R13)となる。
本実施形態において、トランジスタM2,M3のゲート端子電圧及びソース端子電圧は等しいため、トランジスタM3には、トランジスタM2に流れる電流のデバイスサイズ比倍の電流が流れる。したがって、トランジスタM2,M3のサイズが同一の場合、トランジスタM3のドレイン端子から、Isignal×(1+sC13R2)(1+sC2R13)の電流が、出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A2の負荷は、トランジスタM2,M3のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A2の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第15実施形態)
第15実施形態に係る波形整形フィルタについて、図34を参照して説明する。図34は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図34に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R11(第12の抵抗)と、容量C11(第13の容量)と、電圧バッファVB11と、を備える。他の構成は、図1と同様である。また、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11の構成は、図27と同様である。
図34からわかるように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第11実施形態の変形例である。第11実施形態では、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11からなる帰還回路が、トランジスタM1と抵抗R1との間に接続されていたのに対して、本実施形態では、抵抗R1と電流源Isignalとの間に接続されている。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R11を流れる。抵抗R11の他端は、仮想接地点である増幅器A1の入力端子に接続されているので、抵抗R11の他端の電圧は略一定である。一方、抵抗R11の一端の電圧は、Isignal×R11となる。容量C11の一端も仮想接地点である増幅器A1の入力端子に接続されており、容量C11の他端には、抵抗R11の一端の電圧Isignal×R11が、電圧バッファVB11を介して印加されている。
よって、容量C11には、Isignal×R11×sC11の電流が流れる。抵抗R1には、抵抗R11に流れる電流と、容量C11に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC11R11)の電流が流れる。よって、トランジスタM1のソース端子電圧は、Isignal×R1×(1+sC11R11)となり、容量C1の一端に印加される。容量C1の他端は接地されているので、容量C1には、Isignal×R1×(1+sC11R11)の電圧がかかる。よって、容量C1を流れる電流は、Isignal×sC1R1×(1+sC11R11)となる。その結果、トランジスタM1には、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC11R11)(1+sC1R1)の電流が流れ、この電流がドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A1の負荷は、トランジスタM1のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A1の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第16実施形態)
第16実施形態に係る波形整形フィルタについて、図35を参照して説明する。図35は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図35に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R11(第12の抵抗)と、容量C11(第13の容量)と、電圧バッファVB11と、を備える。他の構成は、図5と同様である。また、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11の構成は、図27と同様である。
図35からわかるように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、第12実施形態の変形例である。第12実施形態では、抵抗R11、容量C11、及び電圧バッファVB11からなる帰還回路が、トランジスタM2と抵抗R2との間に接続されていたのに対して、本実施形態では、抵抗R2と電流源Isignalとの間に接続されている。
このような構成により、電流源Isignalから信号電流Isignalが入力されると、信号電流Isignalは抵抗R11を流れる。抵抗R11の他端は、仮想接地点である増幅器A2の入力端子に接続されているので、抵抗R11の他端の電圧は略一定である。一方、抵抗R11の一端の電圧は、Isignal×R11となる。容量C11の一端も、仮想接地点である増幅器A2の入力端子に接続されており、容量C11の他端には、抵抗R11の一端の電圧Isignal×R11が、電圧バッファVB11を介して印加されている。
よって、容量C11には、Isignal×R11×sC11の電流が流れる。抵抗R2には、抵抗R11に流れる電流と、容量C11に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC11R11)が流れる。よって、トランジスタM2のドレイン端子電圧は、Isignal×R2×(1+sC11R11)となり、容量C2の一端に印加される。容量C2の他端は接地されているので、容量C2には、Isignal×R2×(1+sC11R11)の電圧がかかる。よって、容量C2を流れる電流は、Isignal×sC2R2×(1+sC11R11)となる。その結果、トランジスタM2には、抵抗R2に流れる電流と、容量C2に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+sC11R11)(1+sC2R2)の電流が流れる。
本実施形態において、トランジスタM2,M3のゲート端子電圧及びソース端子電圧は等しいため、トランジスタM3には、トランジスタM2に流れる電流のデバイスサイズ比倍の電流が流れる。したがって、トランジスタM2,M3のサイズが同一の場合、トランジスタM3のドレイン端子から、Isignal×(1+sC11R11)(1+sC2R2)の電流が、出力電流Ioutとして出力される。
以上説明した通り、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力された信号電流Isignalに比例した電流に信号電流Isignalの微分成分を重畳した電流と、重畳した電流の微分成分に比例した電流と、の和を出力する。このような構成により、信号電流Isignalが1次の低域通過フィルタを2回通過した周波数特性を持つ場合に適した、高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態において、増幅器A2の負荷は、トランジスタM2,M3のゲートのみである。ゲートは小さな容量性負荷と近似できる。したがって、増幅器A2の電流駆動能力を高める必要がなく、波形整形フィルタの消費電力を低減できる。
(第17実施形態)
第17実施形態に係る波形整形フィルタについて、図36及び図37を参照して説明する。図36は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図36に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、トランジスタMB11cと、を備える。他の構成は、図27と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、により構成されるカレントミラー回路の構成は、図15と同様である。
本実施形態において、容量C1は、一端が、カレントミラー回路の出力端子であるトランジスタMcm2のドレイン端子に接続され、他端が、カレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm1のドレイン端子に接続されている。
このような構成により、抵抗R11に流れる電流は、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、容量C1に流れる電流をカレントミラー回路で複製した電流と、の和となる。例えば、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、抵抗R11に流れる電流は、Isignal×R1b×(1+2sC1R1)/R1となる。よって、第9実施形態に比べ、容量値C1を半減することができる。すなわち、第9実施形態の半分の容量値C1で、第9実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズは異なってもよい。トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C1を、第9実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、図36では、容量C1は、他端をカレントミラー回路に接続されたが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。
一方、トランジスタMB11cは、NMOSであり、ソース端子が接地され、ゲート端子が、電流源Ib11bと、トランジスタMB11aのドレイン端子と、トランジスタMB11bのゲート端子と、に接続され、ドレイン端子が、トランジスタM1のソース端子と、容量C11の一端と、抵抗R11の一端と、に接続される。
このような構成により、トランジスタMB11cのゲート・ソース間電圧とトランジスタMB11bのゲート・ソース間電圧は等しい。ここで、例えば、トランジスタMB11b,MB11cのサイズを等しくすると、トランジスタMB11cには、トランジスタMB11bに流れる電流を複製した電流が流れ、この電流が容量C11の一端に流れ込む電流に加算される。その結果、容量C11の一端に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタM1に流れることになる。よって、第9実施形態に比べ、容量値C11を半減することができる。すなわち、第9実施形態の半分の容量値C11で、第9実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMB11b,MB11cのサイズは異なってもよい。トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11bのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第9実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、本実施形態において、図37に示すように、カレントミラー回路に電流源Idcm2を追加したり、電圧バッファ11VBに電流源Ib11dを追加したりしてもよい。電流源Idcm2を追加することにより、トランジスタMcm2に流れるバイアス電流の一部又は全部を、抵抗R11に流れないようにキャンセルし、抵抗R11にかかる直流電圧を小さくすることができる。また、電流源Ib11dを追加することにより、トランジスタMB11cに流れるバイアス電流の一部又は全部を、トランジスタM1に流れないようにキャンセルし、トランジスタM1に流れるバイアス電流を小さくしたりすることができる。
(第18実施形態)
第18実施形態に係る波形整形フィルタについて、図38及び図39を参照して説明する。図38は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図38に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1〜Mcm7と、電流源Idcmと、を備える。他の構成は、図29と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、により構成されるカレントミラー回路は、図15と同様である。
本実施形態において、電流バッファIB12は、トランジスタMcm3〜Mcm7を更に備える。
トランジスタMcm3は、NMOSであり、ソース端子が接地され、ゲート端子がトランジスタMcm4,Mcm5のゲート端子に接続され、ドレイン端子がトランジスタMB12aのドレイン端子に接続されている。また、トランジスタMcm3のゲート端子とドレイン端子とは接続されている。
トランジスタMcm4は、NMOSであり、ソース端子が接地され、ゲート端子がトランジスタMcm3,Mcm5のゲート端子に接続され、ドレイン端子が電流源Ib12bと、増幅器A1の負入力端子と、抵抗R12の一端と、容量C12の一端と、に接続さている。
トランジスタMcm5は、NMOSであり、ソース端子が接地され、ゲート端子がトランジスタMcm3,Mcm4のゲート端子に接続され、ドレイン端子がトランジスタMcm6のドレイン端子に接続されている。
トランジスタMcm6は、PMOSであり、ソース端子が電源線に接続され、ゲート端子がトランジスタMcm7のゲート端子に接続され、ドレイン端子がトランジスタMcm5のドレイン端子に接続されている。また、トランジスタMcm6は、ゲート端子とドレイン端子とが接続されている。
トランジスタMcm7は、PMOSであり、ソース端子が電源線に接続され、ゲート端子がトランジスタMcm6のゲート端子に接続され、ドレイン端子が容量C1の他端に接続されている。トランジスタMcm7のドレイン端子が電流バッファIB12の出力端子である。
トランジスタMcm3〜Mcm7は、カレントミラー回路を構成する。電流源Ib12bは、このカレントミラーが動作するためのバイアス電流Ib12bを供給する。
図29を参照して説明した通り、容量C12の他端から電流バッファIB12に流れ込む電流は、トランジスタMB12aのソース端子に入力され、トランジスタMB12aのドレイン端子から出力される。トランジスタMB12aのドレイン端子から出力された電流は、トランジスタMcm3のドレイン端子からカレントミラー回路に入力され、トランジスタMcm4,Mcm5で複製される。
また、トランジスタMcm5で複製された電流は、トランジスタMcm6,Mcm7で折り返され(極性を反転され)、トランジスタMcm7のドレイン端子から出力される。ここで、一例として、トランジスタMcm3〜Mcm5のサイズが等しく、トランジスタMcm7のサイズがトランジスタMcm6のサイズの2倍とすると、容量C12の他端から電流バッファIB12に流れ込む電流と同じ大きさの電流が、トランジスタMcm4から引かれ、抵抗R12には、容量C12に流れる電流の2倍の電流が流れる。
一方、容量C12の他端から電流バッファIB12に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタMcm7から抵抗R12の一端に供給され、抵抗R12の他端から供給される電流(容量C12に流れる電流の2倍の電流)を相殺する。これにより、抵抗R12の一端の電圧は、Isignal×R1b×(1+2sC12R12)となる。よって、第10実施形態に比べ、容量値C12を半減することができる。すなわち、第10実施形態の半分の容量値C12で、第10実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm3〜Mcm5のサイズが等しく、トランジスタMcm7のサイズがトランジスタMcm6のサイズの2倍の場合を例に説明したが、本実施形態において、各トランジスタのサイズはこれに限られない。例えば、トランジスタMcm4のチャネル幅を、トランジスタMcm3のチャネル幅のk倍とし、トランジスタMcm7のチャネル幅を、トランジスタMcm6のチャネル幅の(1+k)倍とすることにより、容量値C12を、第10実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、本実施形態において、容量C1は、一端がカレントミラー回路の出力端子であるトランジスタMcm2のドレイン端子に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm1のドレイン端子に接続されている。また、電流源Idcmが、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcmを供給している。
このような構成により、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM1には、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、の和であるIsignal×R1b×(1+2sC12R12)(1+2sC1R1)/R1の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。よって、第10実施形態に比べ、容量値C1を半減することができる。すなわち、第10実施形態の半分の容量値C1で、第10実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズはことなってもよい。例えば、トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C1を、第10実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、図38では、容量C1の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。
さらに、図39に示すように、カレントミラー回路に電流源Idcm2を追加して、トランジスタM1に流れるバイアス電流を大きくしてもよい。
(第19実施形態)
第19実施形態に係る波形整形フィルタについて、図40〜図42を参照して説明する。図40は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図40に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、低入力インピーダンス回路Zと、を備える。他の構成は、図28と同様である。また、電流バッファIB12の構成は、図39と同様である。さらに、トランジスタMcm1,Mcm2で構成されるカレントミラー回路及び低入力インピーダンス回路Zの構成は、図23と同様である。
このような構成により、トランジスタM1には、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、の和であるIsignal×R1b×(1+2sC12R12)(1+sC1R1)/R1の電流が流れる。低入力インピーダンス回路Zには、カレントミラー回路によりトランジスタM1に流れる電流を複製した電流と、容量C1に流れる電流Isignal×R1b×(1+2sC12R12)×sC1R1/R1と、の和であるIsignal×R1b×(1+2sC12R12)(1+2sC1R1)/R1の電流が流れる。よって、第10実施形態に比べ、容量値C1,C12を半減することができる。すなわち、第10実施形態の半分の容量値C1,C12で、第10実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、図40では、容量C12に流れる電流の2倍の電流の相殺を、トランジスタM1のソース端子で行っていたが、トランジスタM1のドレイン端子で行ってもよい。これは、図41に示すように、電流バッファIB21の出力端子であるトランジスタMcm7のドレイン端子を、トランジスタM1のソース端子に接続することにより可能である。
また、トランジスタMcm5のサイズをトランジスタMcm3のサイズの2倍とし、容量C12に流れる電流の2倍の電流の相殺を、低入力インピーダンス回路Zの入力端子で行ってもよい。これは、図42に示すように、電流バッファIB12からトランジスタMcm6,Mcm7を除き、トランジスタMcm6のドレイン端子を電流バッファIB12の出力端子として、低入力インピーダンス回路Zの入力端子に接続することにより可能である。
さらに、本実施形態において、電流バッファIB12は、電流源Ib12a,Ib12dの少なくとも一方を備えなくてもよいし、図29と同様の構成であってもよい。
(第20実施形態)
第20実施形態に係る波形整形フィルタについて、図43を参照して説明する。図43は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図43に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcm1,Idcm2と、を備える。他の構成は、図30と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び電流源Idcm1,Idcm2で構成されるカレントミラー回路の構成と、電圧バッファVB11の構成と、は図37と同様である。
図43において、容量C1は、一端がカレントミラー回路の出力端子であるトランジスタMcm2のドレイン端子に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm1のドレイン端子に接続されている。電流源Idcm1は、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcm1を供給している。電流源Idcm2は、トランジスタMcm2に流れるバイアス電流の一部又は全部をキャンセルし、抵抗R11に流れるバイアス電流を小さくして、抵抗R11にかかる直流電圧を小さくしている。
このような構成により、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、抵抗R11に流れる電流は、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、容量C1に流れる電流をカレントミラー回路で複製した電流と、の和となる。例えば、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、抵抗R11に流れる電流は、Isignal×(1+2sC1R1)となる。したがって、第11実施形態に比べ、容量値C1を半減することができる。すなわち、第11実施形態の半分の容量値C1で、第11実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C1を、第11実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、図43では、容量C1の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。
また、図43において、トランジスタMB11cのゲート端子は、トランジスタMB11bのゲート端子に接続され、トランジスタMB11b,MB11cのソース端子は接地されている。したがって、トランジスタMB11cのゲート・ソース間電圧と、トランジスタMB11bのゲート・ソース間電圧は等しい。
ここで、例えば、トランジスタMB11cのサイズをトランジスタMB11bのサイズと等しくすると、トランジスタMB11cには、トランジスタMB11bに流れる電流を複製した電流が流れ、この電流が容量C11の一端に流れ込む電流に加算される。その結果、容量C11の一端に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタM1に流れることになる。したがって、第11実施形態に比べ、容量値C11を半減することができる。すなわち、第11実施形態の半分の容量値C11で、第11実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMB11b,MB11cのサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11cのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第11実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、本実施形態では、電流源Ib11dにより、トランジスタMB11cに流れるバイアス電流の全部又は一部が供給される。これにより、トランジスタM1に流れるバイアス電流の設計自由度を向上させることができる。
(第21実施形態)
第21実施形態に係る波形整形フィルタについて、図44を参照して説明する。図44は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図44に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcm1,Idcm2と、を備える。他の構成は、図31と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び電流源Idcm1,Idcm2で構成されるカレントミラー回路の構成と、電圧バッファVB11の構成と、は図37と同様である。
図44において、容量C2は、一端がカレントミラー回路の出力端子であるトランジスタMcm2のドレイン端子に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm1のドレイン端子に接続されている。電流源Idcm1は、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcm1を供給している。電流源Idcm2は、トランジスタMcm2に流れるバイアス電流の一部又は全部をキャンセルし、抵抗R11に流れるバイアス電流を小さくし、抵抗R11にかかる直流電圧を小さくしている。
このような構成により、抵抗R11に流れる電流は、抵抗R2に流れる電流と、容量C2に流れる電流と、容量C2に流れる電流をカレントミラー回路で複製した電流と、の和となる。例えば、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、抵抗R11に流れる電流は、Isignal×(1+2sC2R2)となる。したがって、第12実施形態に比べ、容量値C2を半減することができる。すなわち、第12実施形態の半分の容量値C2で、第12実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C2を、第12実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
また、図44では、容量C2の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C2を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。
また、図44において、トランジスタMB11cのゲート端子は、トランジスタMB11bのゲート端子に接続され、トランジスタMB11b,MB11cのソース端子は接地されている。したがって、トランジスタMB11cのゲート・ソース間電圧と、トランジスタMB11bのゲート・ソース間電圧と、は等しい。ここで、例えば、トランジスタMB11cのサイズをトランジスタMB11bのサイズと等しくすると、トランジスタMB11cには、トランジスタMB11bに流れる電流を複製した電流が流れ、この電流が容量C11の一端に流れ込む電流に加算される。その結果、容量C11の一端に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタM2に流れることになる。したがって、第12実施形態に比べ、容量値C11を半減することができる。すなわち、第12実施形態の半分の容量値C11で、第12実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、トランジスタMB11b,MB11cのサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11bのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第12実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。
(第22実施形態)
第22実施形態に係る波形整形フィルタについて、図45を参照して説明する。図45は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図45に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcmと、を備える。他の構成は、図32と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び電流源Idcmで構成されるカレントミラー回路の構成は、図15と同様である。
さらに、電流バッファIB13は、トランジスタMcm3〜Mcm7と、電流源Ib13a〜Ib13dと、トランジスタMB13a,MB13bと、を備える。電流バッファIB13は、図39の電流バッファIB12と同様の構成であり、電流バッファIB13の電流源Ib13a〜Ib13d及びトランジスタMB13a,MB13bは、電流バッファIB12の電流源Ib12a〜Ib12d及びトランジスタMB12a,MB12bにそれぞれ対応する。
図45において、トランジスタMcm3のゲート端子及びドレイン端子は、トランジスタMcm4,Mcm5のゲート端子に接続されている。また、トランジスタMcm5のドレイン端子は、トランジスタMcm6のゲート端子及びドレイン端子と、トランジスタMcm7のゲート端子と、に接続されている。電流源Ib13aは、トランジスタMcm4にバイアス電流を供給する。
図29を参照して説明した通り、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流は、トランジスタMB13aのソース端子に入力され、ドレイン端子から出力される。トランジスタMB13aのドレイン端子から出力された電流は、カレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm3のドレイン端子からカレントミラー回路に入力され、トランジスタMcm4,Mcm5で複製される。
また、トランジスタMcm5で複製された電流は、トランジスタMcm6,Mcm7で構成するカレントミラー回路で折り返され(極性を反転され)、トランジスタMcm7のドレイン端子から出力される。
ここで、一例として、トランジスタMcm3〜Mcm5のサイズが等しく、トランジスタMcm7のサイズがトランジスタMcm6のサイズの2倍とすると、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流と同じ大きさの電流が、トランジスタMcm4から引かれ、抵抗R13には、容量C13に流れる電流の2倍の電流が流れる。
つまり、抵抗R13には、Isignal×(1+2sC13R1)の電流が流れる。よって、トランジスタM1のソース端子電圧は、Isignal×R1+Isignal×R13×(1+2sC13R1)となる。そして、容量C1には、Isignal×sC1R1+Isignal×sC1R13×(1+2sC13R1)の電流が流れる。
一方、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタMcm7から抵抗R13の他端に供給され、抵抗R13の一端から供給される電流(容量C13に流れる電流の2倍の電流)Isignal×2sC13R1を相殺する。
また、容量C1は、一端がカレントミラー端子の出力端子であるトランジスタMcm2のドレイン端子に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子であるトランジスタMcm1のドレイン端子に接続されている。電流源Idcmは、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcmを供給している。
このような構成により、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM1には、抵抗R13に流れる電流と、容量C1に流れる電流の2倍の電流と、の和から、容量C13に流れる電流の2倍の電流を引いた、Isignal×(1+2sC13R1)(1+2sC1R13)+Isignal×2sR1(C1−C13)の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
ここで、C13=C1とすることにより、Iout=Isignal×(1+2sC13R1)(1+2sC1R13)となる。したがって、本実施形態において、C13=C1とすることにより、第13実施形態に比べ、容量値C1,C13を半減することができる。すなわち、第13実施形態の半分の容量値C1,C13で、第13実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第23実施形態)
第23実施形態に係る波形整形フィルタについて、図46を参照して説明する。図46は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図46に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、低入力インピーダンス回路Zと、を備える。他の構成は、図32と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び低入力インピーダンス回路Zの構成は、図23と同様である。さらに、電流バッファIB13の構成は、図45と同様である。
図46に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、図32の波形整形フィルタの出力端子(トランジスタM1のドレイン端子)を、トランジスタMcm1,Mcm2で構成されたカレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm1のドレイン端子)に接続するとともに、カレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)を低入力インピーダンス回路に接続する。また、容量C1の他端をカレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)及び低入力インピーダンス回路Zに接続する。
前述の通り、容量C13に流れる電流の2倍の電流であるIsignal×2sC13R1は、抵抗R13の他端で相殺されているので、トランジスタM1には、Isignal×(1+2sC13R1)(1+sC1R13)+Isignal×2sR1(C1−C13)の電流が流れる。低入力インピーダンス回路Zには、カレントミラー回路によりトランジスタM1に流れる電流を複製した電流と、容量C1に流れる電流Isignal×(1+2sC13R1)×sC1R13と、の和であるIsignal×(1+2sC13R1)(1+2sC1R13)+Isignal×2sR1(C1−C13)の電流が流れる。
ここで、C13=C1とすると、低入力インピーダンスに入力される電流は、Isignal×(1+2sC13R1)(1+2sC1R13)となる。したがって、本実施形態において、C13=C1とすることにより、第13実施形態に比べ、容量値C1,C13を半減することができる。すなわち、第13実施形態の半分の容量値C1,C13で、第13実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第24実施形態)
第24実施形態に係る波形整形フィルタについて、図47を参照して説明する。図47は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図47に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1、Mcm2と、電流源Idcmと、を備える。他の構成は、図33と同様である。また、トランジスタMcm1、Mcm2及び電流源Idcmで構成されるカレントミラー回路の構成は、図15と同様である。さらに、電流バッファIB13の構成は、図45と同様である。
図47において、トランジスタMcm3のゲート端子及びドレイン端子は、トランジスタMcm4,Mcm5のゲート端子に接続されている。また、トランジスタMcm5のドレイン端子は、トランジスタMcm6のゲート端子及びドレイン端子と、トランジスタMcm7のゲート端子と、に接続されている。電流源Ib13aは、トランジスタMcm4にバイアス電流を供給する。
図29を参照して説明した通り、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流は、トランジスタMB13aのソース端子に入力され、ドレイン端子から出力される。トランジスタMB13aのドレイン端子から出力される電流は、カレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm3のドレイン端子)に接続され、トランジスタMcm4,Mcm5で複製される。また、トランジスタMcm5で複製された電流は、トランジスタMcm6,Mcm7で構成されるカレントミラー回路で折り返され(極性を反転され)、トランジスタMcm7のドレイン端子から出力される。
ここで、一例として、トランジスタMcm3〜Mcm5のサイズが等しく、トランジスタMcm7のサイズがトランジスタMcm6のサイズの2倍とすると、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流と同じ大きさの電流が、トランジスタMcm4から引かれ、抵抗R13には、容量C13に流れる電流の2倍の電流が流れる。つまり、抵抗R13には、Isignal×(1+2sC13R2)の電流が流れる。したがって、トランジスタM2のソース端子電圧は、Isignal×R2+Isignal×R13×(1+2sC13R2)となる。容量C2には、Isignal×sC2R2+Isignal×sC2R13×(1+2sC13R2)の電流が流れる。
一方、容量C13の他端から電流バッファIB13に流れ込む電流の2倍の電流が、トランジスタMcm7から抵抗R13の他端に供給され、抵抗R13の一端から供給される電流(容量C13に流れる電流の2倍の電流)Isignal×2sC13R2を相殺する。また、容量C2は、一端がカレントミラー端子の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm1のドレイン端子)に接続されている。電流源Idcmは、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcmを供給している。
このような構成により、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM2には、抵抗R13に流れる電流と、容量C2に流れる電流の2倍の電流と、の和から、容量C13に流れる電流の2倍の電流を引いた、Isignal×(1+2sC13R2)(1+2sC2R13)+Isignal×2sR2(C2−C13)の電流が流れ、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
ここで、C13=C2とすると、Iout=Isignal×(1+2sC13R2)(1+2sC2R13)となる。したがって、本実施形態において、C13=C2とすることにより、第14実施形態に比べ、容量値C2,C13を半減することができる。すなわち、第14実施形態の半分の容量値C2,C13で、第14実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第25実施形態)
第25実施形態に係る波形整形フィルタについて、図48を参照して説明する。図48は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図48に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、低入力インピーダンス回路Zを備える。他の構成は、図33と同様である。また、電流バッファIB13の構成は、図45と同様である。
図48に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、図33の波形整形フィルタの出力端子であるトランジスタM3のドレイン端子を、低入力インピーダンス回路の入力端子に接続する。また、容量C2の他端を低入力インピーダンス回路に接続する。
本実施形態では、前述の通り、容量C13に流れる電流の2倍の電流であるIsignal×2sC13R2が、抵抗R13の他端で相殺されているので、トランジスタM2には、Isignal×(1+2sC13R2)(1+sC2R13)+Isignal×2sR2(C2−C13)の電流が流れる。低入力インピーダンス回路Zには、トランジスタM3に流れる電流と、容量C2に流れる電流Isignal×(1+2sC13R2)×sC2R13と、の和であるIsignal×(1+2sC13R2)(1+2sC2R13)+Isignal×2sR2(C2−C13)の電流が流れる。
ここで、C13=C2とすると、低入力インピーダンス回路Zに入力される電流は、Isignal×(1+2sC13R2)(1+2sC2R13)となる。したがって、本実施形態において、C13=C2とすることにより、第14実施形態に比べ、容量値C2,C13を半減することができる。すなわち、第14実施形態の半分の容量値C2,C13で、第14実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第26実施形態)
第26実施形態に係る波形整形フィルタについて、図49を参照して説明する。図49は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図49に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcm1,Idcm2と、を備える。他の構成は、図34と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び電流源Idcm1,Idcm2で構成されるカレントミラー回路及び電圧バッファVB11の構成は、図37と同様である。
図49において、トランジスタMB11cのゲート端子は、トランジスタMB11bのゲート端子に接続され、トランジスタMB11b,MB11cのソース端子は、接地されている。したがって、トランジスタMB11cのゲート・ソース間電圧と、トランジスタMB11bのゲート・ソース間電圧と、は等しい。
ここで、例えば、トランジスタMB11cのサイズを、トランジスタMB11bのサイズと等しくすると、トランジスタMB11cには、トランジスタMB11bに流れる電流を複製した電流が流れ、この電流が容量C11の一端に流れ込む電流に加算される。その結果、容量C11の一端に流れ込む電流の2倍の電流が、抵抗R1に流れることになる。よって、抵抗R1には、Isignal×(1+2sC11R11)の電流が流れる。
一方、図49において、容量C1は、一端がカレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm1のドレイン端子)に接続されている。電流源Idcm1は、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcm1を供給している。電流源Idcm2は、トランジスタMcm2に流れるバイアス電流の一部又は全部をキャンセルし、トランジスタM1に流れるバイアス電流を調整している。
このような構成により、トランジスタM1に流れる電流は、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、容量C1に流れる電流をカレントミラー回路で複製した電流と、の和となる。例えば、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM1に流れる電流は、Isignal×(1+2sC11R11)(1+2sC1R1)となり、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。したがって、第15実施形態に比べ、容量値C1,C11を半減することができる。すなわち、第15実施形態の半分の容量値C1,C11で、第15実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しく、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、各トランジスタのサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11bのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第15実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のm倍とすることにより、容量値C1を、第15実施形態に比べて1/(1+m)倍にすることができる。
また、図49では、容量C1の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。さらに、電圧バッファVB11が電流源Ib11dを備えない構成も可能である。
(第27実施形態)
第27実施形態に係る波形整形フィルタについて、図50を参照して説明する。図50は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図50に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、低入力インピーダンス回路Zと、を備える。他の構成は、図34と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2で構成されるカレントミラー回路及び低入力インピーダンス回路Zの構成は、図23と同様である。さらに、電圧バッファVB11の構成は、図37と同様である。
図50に示すように、トランジスタM1のドレイン端子は、トランジスタMcm1、Mcm2で構成されるカレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm1のドレイン端子)に接続されている。また、カレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)は、低入力インピーダンス回路Zに接続されている。さらに、容量C1は、他端がカレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)及び低入力インピーダンス回路Zに接続されている。
図49を参照して説明した通り、トランジスタMB11cのサイズをトランジスタMB11bのサイズと等しくすると、抵抗R1には、Isignal×(1+2sC11R11)の電流が流れる。よって、トランジスタM1のソース端子電圧は、Isignal×R1×(1+2sC11R11)となり、この電圧が容量C1の一端に印加される。
容量C1の一端からトランジスタM1に流れ込む電流は、Isignal×sC1R1×(1+2sC11R11)となる。よって、トランジスタM1には、抵抗R1に流れる電流と、容量C1に流れる電流と、の和であるIsignal×(1+2sC11R11)(1+sC1R1)の電流が流れ、ドレイン端子より出力される。この電流は、トランジスタMcm1,Mcm2で構成されるカレントミラー回路で複製される。そして、複製された電流と、容量C1の他端から流れ出る電流Isignal×sC1R1×(1+2sC11R11)と、の和であるIsignal×(1+2sC11R11)(1+2sC1R1)の電流が、低入力インピーダンス回路Zに流れることになる。
したがって、第15実施形態に比べ、容量値C1,C11を半減することができる。すなわち、第15実施形態の半分の容量値C1,C11で、第15実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しく、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、各トランジスタのサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11bのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第15実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のm倍とすることにより、容量値C1を、第15実施形態に比べて1/(1+m)倍にすることができる。
また、図50では、容量C1の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C1を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。さらに、電圧バッファVB11が電流源Ib73を備えない構成も可能である。
(第28実施形態)
第28実施形態に係る波形整形フィルタについて、図51を参照して説明する。図51は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図51に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、トランジスタMcm1,Mcm2と、電流源Idcm1,Idcm2と、を備える。他の構成は、図35と同様である。また、トランジスタMcm1,Mcm2及び電流源Idcm1,Idcm2で構成されるカレントミラー回路及び電圧バッファVB11の構成は、図37と同様である。
図51において、トランジスタMB11cのゲート端子は、トランジスタMB11bのゲート端子に接続されている。また、トランジスタMB11b,MB11cのソース端子は、接地されている。したがって、トランジスタMB11cのゲート・ソース間電圧と、トランジスタMB11bのゲート・ソース間電圧と、は等しい。
例えば、トランジスタMB11cのサイズをトランジスタMB11bと等しくすると、トランジスタMB11cには、トランジスタMB11bに流れる電流を複製した電流が流れ、この電流が容量C11の一端に流れ込む電流に加算される。その結果、容量C11の一端に流れ込む電流の2倍の電流が、抵抗R2に流れることになる。よって、抵抗R2には、Isignal×(1+2sC11R11)の電流が流れる。
一方、図51において、容量C2は、一端がカレントミラー回路の出力端子(トランジスタMcm2のドレイン端子)に接続され、他端がカレントミラー回路の入力端子(トランジスタMcm1のドレイン端子)に接続されている。電流源Idcm1は、カレントミラー回路を動作させるためのバイアス電流Idcm1を供給している。電流源Idcm2は、トランジスタMcm2に流れるバイアス電流の一部又は全部をキャンセルし、トランジスタM2に流れるバイアス電流を調整している。
このような構成により、トランジスタM2に流れる電流は、抵抗R2に流れる電流と、容量C2に流れる電流と、容量C2に流れる電流をカレントミラー回路で複製した電流と、の和となる。例えば、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しいとすると、トランジスタM2に流れる電流は、Isignal×(1+2sC11R11)(1+2sC2R2)となる。トランジスタM2に流れる電流は、トランジスタM3で複製され、ドレイン端子より出力電流Ioutとして出力される。
したがって、第16実施形態に比べ、容量値C2,C11を半減することができる。すなわち、第16実施形態の半分の容量値C2,C11で、第16実施形態と同様の時定数を実現することができる。
なお、以上では、トランジスタMB11b,MB11cのサイズが等しく、トランジスタMcm1,Mcm2のサイズが等しい場合を例に説明したが、本実施形態において、各トランジスタのサイズは異なってもよい。例えば、トランジスタMB11cのチャネル幅を、トランジスタMB11bのチャネル幅のk倍とすることにより、容量値C11を、第16実施形態に比べて1/(1+k)倍にすることができる。トランジスタMcm2のチャネル幅を、トランジスタMcm1のチャネル幅のm倍とすることにより、容量値C1を、第16実施形態に比べて1/(1+m)倍にすることができる。
また、図51では、容量C2の他端をカレントミラー回路に接続したが、容量C2を分割し、その一部だけをカレントミラー回路に接続した構成も可能である。さらに、電圧バッファVB11が電流源Ib11dを備えない構成も可能である。
(第29実施形態)
第29実施形態に係る波形整形フィルタについて、図52を参照して説明する。図52は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図52に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、低入力インピーダンス回路Zを備える。他の構成は、図35と同様である。また、電圧バッファVB11の構成は、図37と同様である。
図52に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、波形整形フィルタの出力端子(トランジスタM3のドレイン端子)を低入力インピーダンス回路Zに接続する。また、容量C2の他端を低入力インピーダンス回路Zの入力端子に接続する。
図51を参照して説明した通り、抵抗R2には、Isignal×(1+2sC11R11)の電流が流れる。容量C2には、Isignal×sC2R2×(1+2sC11R11)の電流が流れる。よって、トランジスタM2には、Isignal×(1+sC11R11)(1+2sC2R2)の電流が流れる。トランジスタM2,M3のサイズが等しいとすると、トランジスタM3には、トランジスタM2に流れる電流と等しい電流が流れる。その結果、低入力インピーダンス回路Zには、トランジスタM3に流れる電流Isignal×(1+sC11R11)(1+2sC2R2)と、容量C2の他端から流れ出る電流Isignal×sC2R2×(1+2sC11R11)と、の和であるIsignal×(1+2sC11R11)(1+2sC2R2)の電流が流れる。
したがって、第16実施形態に比べ、容量値C2,C11を半減することができる。すなわち、第16実施形態の半分の容量値C2,C11で、第16実施形態と同様の時定数を実現することができる。
(第30実施形態)
次に、第30実施形態に係る波形整形フィルタについて、図53を参照して説明する。図53は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図53に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、入力端子Inと、電圧電流変換器Gmと、低域通過フィルタLPFと、を備える。
この波形整形フィルタは、入力端子Inから信号電流Isignalが入力される。図53における電流源Isignalは、波形整形フィルタに信号電流Isignalを入力する電流源である。波形整形フィルタの出力は、入力端子電圧V1となる。
電圧電流変換器Gmは、負入力端子と出力端子とを備える。負入力端子は、低域通過フィルタLPFの一端に接続され、出力端子は入力端子In及び低域通過フィルタLPFの他端に接続される。電圧電流変換器Gmは、負入力端子から入力された電圧を電流に変換して出力端子から出力する。図53に示すように、電圧電流変換器Gmは、トランジスタM4により構成することができる。
トランジスタM4(第3のトランジスタ)は、ソース端子、ゲート端子、及びドレイン端子を備えるPMOSである。トランジスタM4のソース端子(第1の端子)は、電源に接続され、ドレイン端子(第2の端子)は、入力端子In及び低域通過フィルタLPFの一端に接続され、ゲート端子(制御端子)は、低域通過フィルタLPFの他端に接続される。トランジスタM4のドレイン端子は、電圧電流変換器Gmの出力端子となり、ゲート端子は、負入力端子となる。
このように、電圧電流変換器GmをトランジスタM4によって構成することにより、波形整形フィルタを小型化することができる。
低域通過フィルタLPFは、入力端子Inと電圧電流変換器Gmの負入力端子との間に接続されている。すなわち、低域通過フィルタLPFは、一端が入力端子Inに接続され、他端が電圧電流変換器Gmの負入力端子に接続される。低域通過フィルタLPFは、入力端子電圧V1の低域成分を電圧電流変換器Gmの負入力端子に印加する。図53に示すように、低域通過フィルタLPFは、抵抗R3と、容量C3と、により構成することができる。
抵抗R3(第3の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R3の一端は、入力端子Inに接続され、他端は電圧電流変換器Gmの負入力端子及び容量C3の一端に接続される。抵抗R3の一端は、低域通過フィルタLPFの一端となり、他端は、低域通過フィルタLPFの他端となる。
容量C3(第2の容量)は、一端及び他端を備える。容量C3の一端は、抵抗R3の他端及び電圧電流変換器Gmの負入力端子に接続され、他端は、接地される。容量C3の一端は、低域通過フィルタLPFの他端となる。
このように、低域通過フィルタLPFを、受動素子である抵抗R3及び容量C3によって構成することにより、波形整形フィルタの消費電力を低減することができる。
次に、本実施形態に係る波形整形フィルタの動作を説明する。以下では、信号電流Isignalの電流値をIsignal(s)、入力端子電圧V1の電圧値をV1(s)、低域通過フィルタLPFの伝達関数をHLPF(s)、電圧電流変換器Gmの電圧電流変換係数をGmとする。また、HLPF(s)=1/(1+sτ)とする。ここで、τは、低域通過フィルタLPFの時定数である。図53のように、低域通過フィルタLPFを抵抗R3及び容量C3で構成した場合、τ=C3×R3となる。
この波形整形フィルタに信号電流Isignalが入力すると、入力端子電圧V1は、V1(s)=Isignal(s)/{Gm×HLPF(s)}=Isignal(s)×(1+sτ)/Gmとなる。すなわち、入力端子電圧V1は、信号電流Isignalに応じた電圧に、信号電流Isignalの高域成分に応じた電圧を重畳した電圧となる。これにより、信号電流Isignalの高域成分を強調したフィルタ特性を実現することができる。
また、本実施形態に係る波形整形フィルタは、信号電流Isignalしか消費しないため、消費電力を低減することができる。
(第31実施形態)
次に、第31実施形態に係る波形整形フィルタについて、図54〜図59を参照して説明する。図54は、第31実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図54に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R4と、容量C4と、増幅器A3と、抵抗R5と、を備える。
抵抗R4(第4の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R4は、一端から信号電圧Vsignalが入力される。抵抗R4の他端は、容量C4の他端及び増幅器A3の負入力端子に接続される。
容量C4(第3の容量)は、一端及び他端を備える。容量C4の一端は、抵抗R4の一端に接続される。これにより、容量C4は、一端から信号電圧Vsignalが入力される。容量C4の他端は、抵抗R4の他端、増幅器A3の負入力端子、及び抵抗R5の一端に接続される。
抵抗R5(第5の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R5の一端は、抵抗R4の他端、増幅器A3の負入力端子、容量C4の他端に接続される。抵抗R5の他端は、増幅器A3の出力端子に接続される。
増幅器A3(第2の増幅器)は、負入力端子と、正入力端子と、出力端子と、を備える。負入力端子は、抵抗R4の他端、容量C4の他端、及び抵抗R5の一端に接続される。正入力端子は、所定の電圧Vcを印加される。出力端子は、抵抗R5の他端に接続される。増幅器A3の出力端子から出力される電圧が、波形整形フィルタの出力電圧Voutとなる。
本実施形態において、増幅器A3は、図54に示すように、インバータ回路Invと、電圧発生回路Gen1,Gen2と、を備える。
インバータ回路Inv(第1のインバータ回路)は、入力端子VinMと、出力端子VoutPと、トランジスタM31,M32と、を備える。入力端子VinMは、増幅器A3の負入力端子である。出力端子VoutPは、増幅器A3の出力端子である。
トランジスタM31(第4のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、後述するトランジスタM33のソース端子及びトランジスタM35のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、出力端子VoutP及びトランジスタM32のドレイン端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinMに接続される。
トランジスタM32(第5のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、後述するトランジスタM34のソース端子及びトランジスタM36のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、出力端子VoutP及びトランジスタM31のドレイン端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinMに接続される。
電圧発生回路Gen1(第1の電圧発生回路)は、電流源Ib31と、トランジスタM33,M35と、を備える。
電流源Ib31(第2の電流源)は、一端をトランジスタM33のドレイン端子に接続され、トランジスタM33に所定の電流Ib31を供給する。
トランジスタM33(第6のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM31のソース端子及びトランジスタM35のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、電流源Ib31及びトランジスタM35のゲート端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinP及び後述するトランジスタM34のゲート端子に接続される。入力端子VinPは、増幅器A3の正入力端子である。したがって、トランジスタM33は、ゲート端子に所定の電圧Vcを印加される。
トランジスタM35(第7のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、接地される。ドレイン端子は、トランジスタM31,M33のソース端子に接続される。ゲート端子は、電流源Ib31及びトランジスタM33のドレイン端子に接続される。
電圧発生回路Gen2(第2の電圧発生回路)は、電流源Ib32と、トランジスタM34,M36と、を備える。
電流源Ib32(第3の電流源)は、一端をトランジスタM34のドレイン端子に接続され、トランジスタM34に所定の電流Ib32を供給する。
トランジスタM34(第8のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM32のソース端子及びトランジスタM36のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、電流源Ib32及びトランジスタM36のゲート端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinP及びトランジスタM33のゲート端子に接続される。したがって、トランジスタM34は、ゲート端子に所定の電圧Vcを印加される。
トランジスタM36(第9のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、電源に接続される。ドレイン端子は、トランジスタM32,M34のソース端子に接続される。ゲート端子は、電流源Ib32及びトランジスタM34のドレイン端子に接続される。
次に、本実施形態に係る増幅器A3の動作を説明する。以下では、トランジスタM34とトランジスタM32のサイズ比と、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比と、は等しいものとする。また、電流源Ib31が供給する電流Ib31と、電流源Ib32が供給する電流Ib32と、は等しいものとする(Ib31=Ib32=Ib3)。
電圧発生回路Gen1は、インバータ回路InvのトランジスタM31に流れる電流にかかわらず、電流源Ib31の電流Ib31がトランジスタM33に流れるように帰還がかかっている。
例えば、トランジスタM33に流れる電流がIb31より小さくなった場合、トランジスタM35のゲート電圧が上昇し、トランジスタM33に流れる電流が増加する。
また、トランジスタM33に流れる電流がIb31より大きくなった場合、トランジスタM35のゲート電圧が低下し、トランジスタM33に流れる電流が減少する。
結果として、トランジスタM33には、電流Ib31が流れることになる。
これと同様に、電圧発生回路Gen2は、インバータ回路InvのトランジスタM32に流れる電流にかかわらず、電流源Ib32の電流Ib32がトランジスタM34に流れるように帰還がかかっている。
このため、インバータ回路Invの入力端子VinM(増幅器A3の負入力端子)に、増幅器の正入力端子VinPに印加される電圧Vcが印加された場合、トランジスタM31には、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比倍された電流Ib3が流れ、トランジスタM32には、トランジスタM34とトランジスタM32とのサイズ比倍された電流Ib3が流れる。
このように、インバータ回路Invは、増幅器A3の正入力端子VinPに印加される電圧Vcを動作点とした反転回路として動作する。動作点におけるインバータ回路Invのバイアス電流は、電流Ib31の、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比倍の電流となる。
増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が電圧Vcより高い場合、トランジスタM31に流れる電流は、上記のバイアス電流より大きくなり、トランジスタM32に流れる電流は、上記のバイアス電流より小さくなる。結果として、トランジスタM31に流れる電流とトランジスタM32に流れる電流の差分が、増幅器A3の出力端子VoutPから出力され、増幅器A3の出力電圧Voutが低下する。
また、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が電圧Vcより非常に高い場合、トランジスタM32はオフし、トランジスタM33,M34,M36には、電流Ib3が流れる。そして、負入力端子VinMに印加された電圧に応じた大電流は、トランジスタM31,M35にのみ流れる。
一方、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が電圧Vcより低い場合、トランジスタM31に流れる電流は、上記のバイアス電流より小さくなり、トランジスタM32に流れる電流は、上記のバイアス電流より大きくなる。結果として、トランジスタM31に流れる電流とトランジスタM32に流れる電流の差分が、増幅器A3の出力端子VoutPから出力され、増幅器A3の出力電圧Voutが上昇する。
また、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が電圧Vcより非常に低い場合、トランジスタM31はオフし、トランジスタM33,M34,M35には、電流Ib3が流れる。そして、負入力端子VinMに印加された電圧に応じた大電流は、トランジスタM32,M36にのみ流れる。
以上説明したように、増幅器A3は、入力交流信号が0のときの動作点電圧を、正入力端子VinPに印加した電圧Vcにより設定することができる。また、増幅器A3は、インバータ回路Invのバイアス電流を、電流Ib31,Ib32、トランジスタM31,M33のサイズ比、及びトランジスタM32,M34のサイズ比、を調整することにより設定することができる。さらに、増幅器A3は、大電流を出力する場合に、大電流の経路がトランジスタM31,M35又はトランジスタM32,M36に限定されるため、消費電力を低減することができる。このため、効率のよいAB級増幅回路を実現することができる。またさらに、増幅器A3がインバータ回路Invによって構成されるため、増幅動作を高速化することができる。
図55は、本実施形態に係る増幅器A3の変形例を示す図である。図55に示すように、この増幅器A3は、レベルシフト回路LS1,LS2を更に備える。他の構成は、図54の増幅器A3と同様である。
レベルシフト回路LS1は、トランジスタM33のドレイン端子とトランジスタM35のゲート端子との間に接続される。レベルシフト回路LS1は、トランジスタM33のドレイン電圧が、トランジスタM35のゲート電圧より高くなるように電圧をレベルシフトする。
レベルシフト回路LS2は、トランジスタM34のドレイン端子とトランジスタM36のゲート端子との間に接続される。レベルシフト回路LS2は、トランジスタM34のドレイン電圧が、トランジスタM36のゲート電圧より低くなるように電圧をレベルシフトする。
図54の増幅器A3では、トランジスタM33,M34のドレイン電圧は、トランジスタM35,M36のゲート電圧と一致する。このため、例えば、電源Vddとグラウンドとの間の電圧が高い場合、トランジスタM33のゲート−ソース間電圧は一定なので、トランジスタM33のソース電圧が高くなり、トランジスタM35のドレイン−ソース間電圧が高くなる。
トランジスタM35のゲート−ソース間電圧は、トランジスタM35のドレイン−ソース間電圧と、トランジスタM33のドレイン−ソース間電圧と、の和となるため、トランジスタM35のドレイン−ソース間電圧が高くなると、トランジスタM33のドレイン−ソース間電圧が低くなる。
結果として、トランジスタM33のドレイン−ソース間電圧がオーバードライブ電圧より低くなり、電圧発生回路Gen1が所望の動作をしなくなる恐れがある。電圧発生回路Gen2についても同様である。
これに対して、図55の増幅器A3では、トランジスタM35のゲート−ソース間電圧と、レベルシフト回路LS1,LS2により昇圧された電圧と、の和が、トランジスタM35のドレイン−ソース間電圧と、トランジスタM33のドレイン−ソース間電圧と、の和となる。これにより、トランジスタM33,M36のドレイン−ソース間電圧を確保し、トランジスタM33,M36が飽和領域で動作する電源電圧Vddの範囲や動作点の設定範囲を拡大することができる。
(レベルシフト回路の第1実施例)
図56は、図55のレベルシフト回路LS1,LS2の第1実施例を示す図である。図56に示すように、レベルシフト回路LS1(LS2)は、抵抗R31(R32)と、電流源Ib33(Ib34)と、を備える。
抵抗R31(R32)は、一端及び他端を備える。抵抗R31(R32)の一端は、トランジスタM33(M34)のドレイン端子及び電流源Ib31(Ib32)に接続される。抵抗R31(R32)の他端は、トランジスタM35(M36)のゲート端子及び電流源Ib33(Ib34)に接続される。電流源Ib33(Ib34)は、抵抗R31(R32)に所定の電流Ib33(Ib34)を供給する。
このような構成により、トランジスタM33(M34)のドレイン電圧は、トランジスタM35(M36)のゲート電圧よりR31×Ib33(R32×Ib34)だけ高く(低く)なる。
(レベルシフト回路の第2実施例)
図57は、図55のレベルシフト回路LS1,LS2の第2実施例を示す図である。図57に示すように、レベルシフト回路LS1(LS2)は、トランジスタM37(M38)と、電流源Ib33(Ib34)と、を備える。
トランジスタM37(M38)は、PMOS(NMOS)である。トランジスタM37(M38)のソース端子は、トランジスタM33(M34)のドレイン端子及び電流源Ib31(Ib32)に接続される。トランジスタM37(M38)のドレイン端子は、トランジスタM35(M36)のゲート端子及び電流源Ib33(Ib34)に接続される。トランジスタM37(M38)のゲート端子は、所定の電圧を印加される。電流源Ib33(Ib34)は、トランジスタM37(M38)に所定の電流Ib33(Ib34)を供給する。
このような構成により、トランジスタM33(M34)のドレイン電圧は、トランジスタM35(M36)のゲート電圧より、トランジスタM37(M38)のドレイン−ソース間電圧だけ高く(低く)なる。
(レベルシフト回路の第3実施例)
図58は、図55のレベルシフト回路LS1,LS2の第3実施例を示す図である。図58に示すように、このレベルシフト回路LS1(LS2)は、図57のレベルシフト回路LS1(LS2)のトランジスタM37(M38)のゲート端子を、トランジスタM33(M34)のゲート端子と接続したものである。トランジスタM37,M38のゲート端子には、電圧Vcが印加される。このような構成により、トランジスタM37,M38のゲート端子に電圧を印加するための新たな電圧源が不要となり、回路構成を簡略化できる。
(レベルシフト回路の第4実施例)
図59は、図55のレベルシフト回路LS1,LS2の第4実施例を示す図である。図59に示すように、レベルシフト回路LS1(LS2)は、トランジスタM39(M40)と、電流源Ib33(Ib34)と、を備える。
トランジスタM39(M40)は、NMOS(PMOS)である。トランジスタM39(M40)のソース端子は、トランジスタM35(M36)のゲート端子及び電流源Ib33(Ib34)に接続される。トランジスタM39(M40)のドレイン端子は、電源(グラウンド)に接続される。トランジスタM39(M40)のゲート端子は、トランジスタM33(M34)のドレイン端子及び電流源Ib31(Ib32)に接続される。電流源Ib33(Ib34)は、トランジスタM39(M40)に所定の電流Ib33(Ib34)を供給する。
このような構成により、トランジスタM33(M34)のドレイン電圧は、トランジスタM35(M36)のゲート電圧より、トランジスタM39(M40)のゲート−ソース間電圧だけ高く(低く)なる。
(第32実施形態)
次に、第32実施形態に係る波形整形フィルタについて、図60を参照して説明する。図60は、第32実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。図60に示すように、本実施形態に係る波形整形フィルタは、抵抗R6と、容量C5と、増幅器A3と、を備える。
抵抗R6(第6の抵抗)は、一端及び他端を備える。抵抗R6の一端は、増幅器A3の負入力端子及び容量C5の一端に接続される。抵抗R6の他端は、増幅器A3の出力端子に接続される。
容量C5(第4の容量)は、一端及び他端を備える。容量C4の一端は、増幅器A3の負入力端子及び抵抗R6の一端に接続される。容量C4の他端は、接地される。
増幅器A3(第3の増幅器)は、負入力端子と、正入力端子と、出力端子と、を備える。負入力端子は、抵抗R6の一端及び容量C5の一端に接続される。正入力端子は、信号電圧Vsingalが入力される。出力端子は、抵抗R6の他端に接続される。増幅器A3の出力端子から出力される電圧が、波形整形フィルタの出力電圧Voutとなる。
図60に示すように、増幅器A3は、図54と同様の構成を有し、インバータ回路Invと、電圧発生回路Gen1,Gen2と、を備える。
インバータ回路Inv(第2のインバータ回路)は、入力端子VinMと、出力端子VoutPと、トランジスタM31,M32と、を備える。入力端子VinMは、増幅器A3の負入力端子である。出力端子VoutPは、増幅器A3の出力端子である。
トランジスタM31(第10のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM33のソース端子及びトランジスタM35のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、出力端子VoutP及びトランジスタM32のドレイン端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinMに接続される。
トランジスタM32(第11のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM34のソース端子及びトランジスタM36のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、出力端子VoutP及びトランジスタM31のドレイン端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinMに接続される。
電圧発生回路Gen1(第3の電圧発生回路)は、電流源Ib31と、トランジスタM33,M35と、を備える。
電流源Ib31(第4の電流源)は、一端をトランジスタM33のドレイン端子に接続され、トランジスタM33に所定の電流Ib31を供給する。
トランジスタM33(第12のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM31のソース端子及びトランジスタM35のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、電流源Ib31及びトランジスタM35のゲート端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinP及び後述するトランジスタM34のゲート端子に接続される。入力端子VinPは、増幅器A3の正入力端子である。したがって、トランジスタM33は、ゲート端子に信号電圧Vsignalを印加される。
トランジスタM35(第13のトランジスタ)は、NMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、接地される。ドレイン端子は、トランジスタM31,M33のソース端子に接続される。ゲート端子は、電流源Ib31及びトランジスタM33のドレイン端子に接続される。
電圧発生回路Gen2(第4の電圧発生回路)は、電流源Ib32と、トランジスタM34,M36と、を備える。
電流源Ib32(第5の電流源)は、一端をトランジスタM34のドレイン端子に接続され、トランジスタM34に所定の電流Ib32を供給する。
トランジスタM34(第14のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、トランジスタM32のソース端子及びトランジスタM36のドレイン端子に接続される。ドレイン端子は、電流源Ib32及びトランジスタM36のゲート端子に接続される。ゲート端子は、入力端子VinP及びトランジスタM33のゲート端子に接続される。したがって、トランジスタM34は、ゲート端子に信号電圧Vsignalを印加される。
トランジスタM36(第15のトランジスタ)は、PMOSであり、ソース端子(第1端子)と、ドレイン端子(第2端子)と、ゲート端子(制御端子)と、を備える。ソース端子は、電源に接続される。ドレイン端子は、トランジスタM32,M34のソース端子に接続される。ゲート端子は、電流源Ib32及びトランジスタM34のドレイン端子に接続される。
次に、本実施形態に係る増幅器A3の動作を説明する。以下では、トランジスタM34とトランジスタM32のサイズ比と、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比と、は等しいものとする。また、電流源Ib31が供給する電流Ib31と、電流源Ib32が供給する電流Ib32と、は等しいものとする(Ib31=Ib32=Ib3)。
上述の通り、電圧発生回路Gen1は、インバータ回路InvのトランジスタM31に流れる電流にかかわらず、電流源Ib31の電流Ib31がトランジスタM33に流れるように帰還がかかる。また、電圧発生回路Gen2は、インバータ回路InvのトランジスタM32に流れる電流にかかわらず、電流源Ib32の電流Ib32がトランジスタM34に流れるように帰還がかかる。
このため、インバータ回路Invの入力端子VinM(増幅器A3の負入力端子)に、増幅器の正入力端子VinPに印加される信号電圧Vsignalと同じ電圧が印加された場合、トランジスタM31には、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比倍された電流Ib3が流れ、トランジスタM32には、トランジスタM34とトランジスタM32とのサイズ比倍された電流Ib3が流れる。
増幅器A3の出力電圧は、抵抗R6を介して負入力端子に帰還されるため、負入力端子VinMの電圧は、正入力端子VinPに印加される信号電圧Vsignalに追従する。これにより、増幅器A3は、非反転増幅回路として動作する。インバータ回路Invのバイアス電流は、電流Ib31の、トランジスタM33とトランジスタM31とのサイズ比倍の電流となる。
増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が信号電圧Vsignalより高い場合、トランジスタM31に流れる電流は、上記のバイアス電流より大きくなり、トランジスタM32に流れる電流は、上記のバイアス電流より小さくなる。結果として、トランジスタM31に流れる電流とトランジスタM32に流れる電流の差分が、増幅器A3の出力端子VoutPから出力され、増幅器A3の出力電圧が低下する。
また、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が信号電圧Vsignalより非常に高い場合、トランジスタM32はオフし、トランジスタM33,M34,M36には、電流Ib3が流れる。そして、負入力端子VinMに印加された電圧に応じた大電流は、トランジスタM31,M35にのみ流れる。
一方、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が信号電圧Vsignalより低い場合、トランジスタM31に流れる電流は、上記のバイアス電流より小さくなり、トランジスタM32に流れる電流は、上記のバイアス電流より大きくなる。結果として、トランジスタM31に流れる電流とトランジスタM32に流れる電流の差分が、増幅器A3の出力端子VoutPから出力され、増幅器A3の出力電圧が上昇する。
また、増幅器A3の負入力端子VinMに印加される電圧が信号電圧Vsignalより非常に低い場合、トランジスタM31はオフし、トランジスタM33,M34,M35には、電流Ib3が流れる。そして、負入力端子VinMに印加された電圧に応じた大電流は、トランジスタM32,M36にのみ流れる。
以上説明したように、増幅器A3は、負入力端子VinMの電圧が、正入力端子VinPの電圧と等しくなるため、インバータ回路Invのバイアス電流を設定することができる。また、増幅器A3は、インバータ回路Invのバイアス電流を、電流Ib31,Ib32、トランジスタM31,M33のサイズ比、及びトランジスタM32,M34のサイズ比、を調整することにより設定することができる。さらに、増幅器A3は、大電流を出力する場合に、大電流の経路がトランジスタM31,M35又はトランジスタM32,M36に限定されるため、消費電力を低減することができる。このため、効率のよいAB級増幅回路を実現することができる。またさらに、増幅器A3がインバータ回路Invによって構成されるため、増幅動作を高速化することができる。
なお、以上の説明において、増幅器A3は、図54と同様の構成であったが、図55から図59のいずれの構成であってもよい。
(第33実施形態)
次に、第33実施形態に係る放射線検出装置について、図61〜図66を参照して説明する。図61は、本実施形態に係る放射線検出装置を示す概略図である。図61に示すように、放射線検出装置は、光子検出器と、フィルタ回路と、を備える。
光子検出器は、入射した放射線光子のエネルギーに比例した電荷量を、パルス性の信号電流Isignalとして出力する。図61に示すように、光子検出器は、シンチレータと、光電子増倍器と、を備える。
シンチレータは、入射した放射線光子のエネルギーに応じたシンチレーション光を発生させる。シンチレータは、シンチレーション光の減衰時間に起因した低域通過特性を有する。以下では、シンチレータの時定数をτ1とし、低域通過特性を1/(1+sτ1)とする。
光電子増倍器(SiPM)は、シンチレータが発生させたシンチレーション光のエネルギーに応じた電荷量を、パルス性の信号電流Isignalとして出力する。一般に、光電子増倍器は、低域通過特性を有する。以下では、光電子増倍器の時定数をτ2とし、低域通過特性を1/(1+sτ2)とする。
フィルタ回路は、光子検出器から入力された信号電流Isignalの波形を整形して出力する。フィルタ回路は、第1実施形態から第32実施形態に係る波形整形フィルタを少なくとも1つ備える。フィルタ回路は、同一の構成の波形整形フィルタを複数備えてもよいし、異なる構成の波形整形フィルタを複数備えてもよい。
また、フィルタ回路が第31実施形態や第32実施形態に係る波形整形フィルタを備える場合、フィルタ回路は、信号電流Isignalを、信号電圧Vsignalに変換する電流電圧変換回路を備えてもよい。
さらに、フィルタ回路は、光子検出器の各構成が有する時定数と等しい時定数を有する波形整形フィルタを備えるのが好ましい。
例えば、図61の放射線検出装置のように、光子検出器が、時定数τ1のシンチレータと、時定数τ2の光電子増倍器と、を備える場合、フィルタ回路は、時定数τ1を有する1段目の波形整形フィルタと、時定数τ2を有する2段目の波形整形フィルタと、を備えるのが好ましい。このとき、1段目の波形整形フィルタの強調特性は1+sτ1となり、2段目の波形整形フィルタの強調特性は1+sτ2となる。
このような構成により、信号電流Isignalが有する低域通過特性を、フィルタ回路の各波形整形フィルタが有する高域強調特性によって相殺し、低域通過特性によって鈍った(パルス幅が拡大した)信号電流Isignalの鈍りを除去し、パルス幅を狭めることができる。
ここで、図62は、このような構成のフィルタ回路を備える放射線検出装置のシミュレーション結果を示す図である。図62に示すように、光子検出器の出力電圧は、放射線光子のパルスに対して2次の低域通過特性を付与した波形となっている。これに対して、2段目の波形整形フィルタの出力電圧は、信号電圧Vsignalの低域通過特性が除去され、元の放射線光子のパルスに比例した波形となっていることがわかる。
なお、1段目の波形整形フィルタの時定数をτ2とし、2段目の波形整形フィルタの時定数をτ1としても同様の効果を得られる。また、フィルタ回路は、信号電流Isignalが有する低域通過特性の次数に応じた段数だけ波形整形フィルタを備えればよい。例えば、信号電流Isignalが1次の低域通過特性を有する場合、フィルタ回路は波形整形フィルタを1段だけ備えればよい。
(第1実施例)
図63は、本実施形態に係るフィルタ回路の第1実施例を示す図である。図63に示すように、このフィルタ回路は、波形整形フィルタWSF1,WSF2と、比較器Compと、を備える。
波形整形フィルタWSF1は、図3及び図4の波形整形フィルタを組み合わせた1段目の波形整形フィルタであり、トランジスタM1と、抵抗R1と、容量C1と、増幅器A1と、電流源Idc1と、抵抗R1aと、を備える。波形整形フィルタWSF1の時定数は、C1(R1+R1a)である。
波形整形フィルタWSF1は、光子検出器(電流源Isignal)から信号電流Isignalが入力されると、トランジスタM1のドレイン端子から、Isignal×{1+sC1(R1+R1a)}の電流を出力する。
波形整形フィルタWSF2は、図53の波形整形フィルタを変形した2段目の波形整形フィルタであり、トランジスタM4と、抵抗R3と、容量C3と、を備える。以上の構成は、図53と同様である。波形整形フィルタWSF2は、電流源Idc3と、容量C31と、抵抗R7と、を更に備える。
電流源Idc3は、トランジスタM4のゲート端子(電圧電流変換回路Gmの負入力端子)と、容量C3の一端と、抵抗R3の他端と、抵抗R7の一端と、に接続される。電流源Idc3は、トランジスタM4、抵抗R3,R7に所定の電流Idc3を供給する。これにより、入力信号が到来しないとき、すなわち、光子検出器により放射線光子が検出されていないときであっても、トランジスタM4をオンすることができる。
容量C31は、一端及び他端を備える。容量C31の一端は、容量C3の他端と、比較器Compの負入力端子と、抵抗R7の他端と、に接続される。容量C31の他端は、接地される。波形整形フィルタWSF2の時定数は、容量C3及び容量C31を直列接続した合成容量に依存し、R3×C3×C31/(C3+C31)となる。
抵抗R7は、一端及び他端を備える。抵抗R7の一端は、トランジスタM4のゲート端子と、抵抗R3の他端と、容量C3の一端と、電流源Idc3と、に接続される。抵抗R7の他端は、容量C3の他端と、容量C31の一端と、比較器Compの負入力端子と、に接続される。
比較器Compは、負入力端子と、正入力端子と、出力端子と、を備える。負入力端子は、容量C3の他端と、容量C31の一端と、抵抗R7の他端と、に接続される。正入力端子は、トランジスタM1,M4のドレイン端子と、抵抗R3の一端と、に接続される。
比較器Compは、負入力端子に印加された参照電圧と、正入力端子に印加された波形整形フィルタWSF2の出力電圧(入力端子電圧V1)と、を比較し、2値の信号を出力する。ここでは、比較器Compは1又は0を出力するものとする。比較器Compは、波形整形フィルタWSF2の出力電圧が参照電圧より低い場合、すなわち、入力信号が到来した場合、1を出力し、それ以外の場合、0を出力する。すなわち、図63のフィルタ回路は、信号電流Isignalの波形を整形するとともに、入力信号の到来を検出することができる。
上述の通り、信号電流Isignalの波形を整形することにより、入力信号のパルス幅を狭めることができる。これにより、図62に示すように、信号電流Isignalにおいてパイルアップした入力信号を、それぞれ分離することができる。このため、フィルタ回路は、個々の入力信号の到来を精度よく検出することができる。
また、比較器Compの負入力端子に印加される参照電圧は、容量C3及び容量C31の分圧点の電圧であるため、交流成分が低減される。これにより、参照電圧の揺らぎを抑制することができる。参照電圧の直流成分は、抵抗R7により設定される。
比較器Compの正入力端子に入力される波形整形フィルタWSF2の出力電圧は、トランジスタM4のゲート電圧を、R3×Idc3だけレベルシフトした電圧となる。したがって、Idc3を調整することにより、入力信号の到来を検出する(1を出力する)閾値を容易に設定することができる。したがって、トランジスタM4の閾値電圧の変動や比較器Compの入力オフセットがある場合でも、入力信号の到来を精度よく検出することができる。
なお、本実施例では、比較器Compによって入力信号の到来を検出したが、フィルタ回路は、比較器Compを備えず、波形整形フィルタWSF2の出力電圧(トランジスタM4のドレイン電圧)を出力してもよい。これにより、入力電流Isignalを、パルス幅の狭い信号に整形することができる。また、フィルタ回路Idc3は、電流源Idc3、抵抗R7、及び容量C31を備えない構成も可能である。
(第2実施例)
図64は、本実施形態に係るフィルタ回路の第2実施例を示す図である。図64に示すように、フィルタ回路は、波形整形フィルタWSF1,WSF2と、AD変換器ADCと、を備える。
波形整形フィルタWSF1は、図63の波形整形フィルタWSF1と同様の構成を有する1段目の波形整形フィルタである。
波形整形フィルタWSF2は、図7の波形整形フィルタと同様の構成を有する2段目の波形整形フィルタであり、トランジスタM2,M3と、抵抗R2と、容量C2と、電流源Idc2と、増幅器A2と、を備える。波形整形フィルタWSF2の時定数は、C2×R2である。
AD変換器ADCは、抵抗Rvと、トランジスタM5と、増幅器A4と、抵抗Rref1〜Rref7と、比較器Comp1〜Comp7と、電流源Irefと、を備える。
抵抗Rvは、一端及び他端を備える。抵抗Rvの一端は、トランジスタM3のドレイン端子と、抵抗Rref1の一端と、増幅器A4の入力端子と、に接続される。抵抗Rvの他端は、トランジスタM5のドレイン端子及び比較器Comp1〜Comp7の各正入力端子に接続される。
波形整形フィルタWSF2の出力電流、すなわち、トランジスタM3に流れる電流は、抵抗Rvにより電圧Voutに変換され、比較器Comp1〜Comp7の各正入力端子に印加される。
トランジスタM5は、NMOSであり、ソース端子と、ドレイン端子と、ゲート端子と、を備える。ソース端子は、接地される。ドレイン端子は、抵抗Rvの他端及び比較器Comp1〜Comp7の各正入力端子に接続される。ゲート端子は、増幅器A4の出力端子に接続される。
増幅器A4は、非反転増幅器であり、正入力端子と、負入力端子と、出力端子と、を備える。正入力端子は、トランジスタM3のドレイン端子と、抵抗Rv,Rref1の一端と、に接続される。負入力端子は、接地される(図示省略)。出力端子は、トランジスタM5のゲート端子に接続される。増幅器A4の入力は仮想接地点となっており、この仮想接地点の電圧に基づいて、比較器Comp1〜Comp7の各参照電圧Vref1〜Vref7が生成される。
抵抗Rref1〜Rref7は、それぞれ一端及び他端を備える。抵抗Rref1の一端は、トランジスタM3のドレイン端子と、抵抗Rvの一端と、増幅器A4の正入力端子と、に接続される。抵抗Rref1の他端は、抵抗Rref2の一端と、比較器Comp1の負入力端子に接続される。抵抗Rref7の一端は、抵抗Rref6の他端及び比較器Comp6の負入力端子に接続される。抵抗Rref7の他端は、比較器Comp7の負入力端子及び電流源Irefに接続される。
抵抗Rref2〜Rref6は、抵抗Rref1とRref7との間に直列に接続される。抵抗Rref2〜Rref6の一端は、抵抗Rref1〜Rref5の他端及び比較器Comp1〜Comp5の負入力端子にそれぞれ接続される。抵抗Rref2〜Rref6の他端は、抵抗Rref3〜Rref7の一端及び比較器Comp2〜Comp6の負入力端子にそれぞれ接続される。
電流源Irefは、直流電流源であり、抵抗Rref7の他端及び比較器Comp7の負入力端子に接続される。これにより、比較器CompN(N=1〜7)の参照電圧VrefNは、増幅器A4の仮想接地点の電圧より、Iref×(Rref1+・・・+RrefN)だけ低い電圧となる。
このように、増幅器A4の仮想接地点の電圧に基づいて比較器CompNの参照電圧VrefNを生成できるため、素子のばらつきにより仮想接地点の電圧がばらついた場合であっても、比較器CompNに適切な参照電圧VrefNを印加することができる。
比較器CompN(N=1〜7)は、それぞれ負入力端子と、正入力端子と、出力端子と、を備える。比較器CompNの正入力端子は、抵抗Rvの他端と、トランジスタM5のドレイン端子と、にそれぞれ接続される。比較器Comp1〜Comp6の負入力端子は、抵抗Rref1〜Rref6の他端と、抵抗Rref2〜Rref7の一端と、にそれぞれ接続される。比較器Comp7の負入力端子は、抵抗Rref7の他端と、電流源Irefと、に接続される。
比較器CompNは、正入力端子に印加される出力電圧Voutと、負入力端子に印加される参照電圧VrefN(閾値)と、をそれぞれ比較し、2値のデジタル信号DNを出力する。ここでは、比較器CompNは1又は0を出力するものとする。
比較器CompNは、出力電圧Voutが参照電圧VrefNより低い場合、1を出力し、それ以外の場合、0を出力する。すなわち、AD変換器ADCは、出力電圧Voutの波高に応じたデジタル信号を出力する。本実施例のように、比較器CompNを7つ備える場合、AD変換器ADCは、入力信号の波高を7階調にAD変換することができる。
以上説明した通り、図64のフィルタ回路は、信号電流Isignalの波形を整形するとともに、信号電流Isignalの波高をAD変換し、波高に応じたデジタル信号を出力することができる。
なお、図64において、AD変換器ADCは、7個の比較器CompNを備えるが、Nは任意に選択可能である。N=1の場合、すなわち、AD変換器ADCが比較器CompNを1つだけ備える場合、図63のフィルタ回路と同様に、フィルタ回路は、入力信号の到来を検出することができる。N≧2の場合、フィルタ回路は、信号電流Isignalの波高をN階調にAD変換することができる。
(第3実施例)
図65は、本実施形態に係るフィルタ回路の第3実施例を示す図である。図65に示すように、AD変換器ADCは、カウンタCnt1〜Cnt7を更に備える。他の構成は図64と同様である。
カウンタCntN(N=1〜7)は、比較器CompNの出力端子にそれぞれ接続され、比較器CompNの出力結果をカウントする。カウンタCntNは、例えば、比較器CompNが1を出力した回数、すなわち、参照電圧VrefNより低い出力電圧Voutが比較器CompNに入力された回数をカウントする。そして、カウンタCntNは、カウント値CntNに応じたデジタル信号DNを、所定の時間間隔で出力する。
このような構成により、フィルタ回路の後段の回路は、カウント値CntNと、カウント値Cnt(N−1)と、の差を計算することにより、波高が参照電圧VrefNと参照電圧Vref(N−1)との間の入力信号の数を求め、入力信号のヒストグラムを作成することができる。
(第4実施例)
図66は、本実施形態に係るフィルタ回路の第4実施例を示す図である。図66に示すように、AD変換器ADCは、オフ期間発生回路OFFを更に備える。他の構成は図65と同様である。
オフ期間発生回路OFFは、フィルタ回路が入力信号の到来を検出した後、所定のオフ期間の間、波高の観測(AD変換)を停止させる。理由は、以下の通りである。
上述の通り、信号電流Isignalにおいて入力信号がパイルアップしている場合、パイルアップした入力信号は、波形整形フィルタWSF1,WSF2によって分離される。しかしながら、分離された入力信号(例えば、図62の2番目及び3番目の入力信号)の波高には、パイルアップの影響により誤差が生じる恐れがある。
そこで、本実施例では、入力信号が検出された後、オフ期間発生回路OFFによって、カウンタCnt2〜Cnt7によるカウントを停止させる。これにより、波高の検出誤差を抑制することができる。オフ期間は任意に設定可能である。
オフ期間発生回路OFFは、例えば、図66に示すように、オフ信号発生器offと、アンド回路と、を備える。
オフ信号発生器offは、比較器Comp1の出力信号が入力され、当該出力信号に応じた2値の信号を出力する。具体的には、オフ信号発生器offは、比較器Comp1から1が入力された後、オフ期間の間、0(オフ信号)を出力し、それ以外の期間は、1(オン信号)を出力する。
アンド回路は、比較器Comp2〜Comp7と、カウンタCnt2〜Cnt7と、の間にそれぞれ設けられる。各アンド回路は、比較器CompNの出力信号及びオフ信号発生器offの出力信号が入力される。アンド回路は、比較器CompNから1が入力され、かつ、オフ信号発生器offから1が入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。各アンド回路の出力信号は、カウンタContN(N=2〜7)に入力される。カウンタCntN(N=2〜7)は、アンド回路から1が入力された回数をカウントする。
次に、オフ期間発生回路OFFの動作について説明する。このフィルタ回路に入力信号が到来していない場合、オフ信号発生器offは1(オン信号)を出力し、比較器Comp1〜Comp7は、0を出力する。このため、カウンタCnt1〜Cnt7は、カウントしない。
フィルタ回路に入力信号が到来すると、比較器CompN(N=1〜7)が、出力電圧Voutと参照電圧VrefNとの比較結果に応じて1又は0を出力する。この時点で、オフ信号発生器offは1を出力しているため、比較結果がカウンタCntNによりカウントされる。
その後、比較器Comp1から1が入力されたことにより、オフ信号発生器offの出力信号が0(オフ信号)となる。オフ信号発生器offは、オフ期間の間、0を出力し続ける。このため、オフ期間の間、アンド回路の出力が0となり、カウンタCnt2〜Cnt7によるカウントが停止する。
オフ期間の経過後、オフ信号発生器offの出力信号は1(オン信号)となる。以降、次の入力信号が到来するまで、オフ信号発生器offは1を出力し続ける。
以上のような構成により、オフ期間の間にパイルアップした入力信号が到来しても、波高が検出されない。したがって、パイルアップした入力信号の波高の検出誤差を抑制することができる。
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。